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無礼な賽銭泥棒を捕獲せよ!
掲示板
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相談卓
最終発言2015/10/08 07:51:06 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言
オープニング
●
「えっ!?」
M町の神社にて、巫女さんの驚く声が響いた。
「ど、どうかしましたか?」
トントン、と階段を上がってきたもう一人の女性が尋ねる。
「ない!賽銭箱の中身がない!」
「……え?」
巫女さんの言葉に、女性は言葉を失った。
この神社の前にある空き地では、昨夜祭りが行われていた。その時に、お賽銭を投げていく人は少なからずいたはずである。それ以前に、賽銭箱を開けるのはおよそ半年ぶりだ。賽銭箱にはぎっしりとお金が入っている……はずなのだ。
だが、巫女さんの前にある賽銭箱には、お金と呼べるものは何一つ入っていなかった。言葉のままの、空っぽなのである。
「ど、どうしてこんなことに……昨日覗いた時は確かにたくさんのお金が入っていたんだけれどなぁ……」
「勤務中にそんなことをしていたのですか……」
頭をかかえる巫女さんに、女性は呆れた声で呟いた。
「とにかく、私のお小遣い……じゃなかった、お賽銭を盗んだ奴を探し出さないと!」
はりきる巫女さんに、女性は思った。お賽銭があなたのところにくることはないですよ、と。
「じゃあ、聞き込みだよ!」
「……警察に言った方が絶対いいですって」
「……だよねー。あーあ、お金がぁ……」
通報したらお金がなくなるとでも思っているのだろうか……。
女性は、巫女さんの欲ぶかさに苦笑しかできなかった。
●
「聞き込みから、賽銭泥棒の犯人の一人が相沢達吉であると断定されました」
警察官の一人が、警部に報告する。
「相沢達吉は能力者で、以前にも能力を使用して犯行を行っています」
「どんな犯行を行っていたんだ?」
報告書を再度読み直す警察官の顔が歪む。
「……どうかしたか?」
「いえ、行った犯行が、下着の盗みですので……」
「……」
警部は呆れて声が出なかった。
「犯行のすべては、計画的に行われているところをみると、かなりの慎重派のようです」
「その頭の使い道がひどすぎるな……相沢の能力はなんだ?」
「風を起こして物を吸い寄せる能力のようです。賽銭も、この能力を応用して盗んだものだと思われます」
「そうか……」
便利な能力なのだから、くだらないことに使わずに他の良いことに使用すればよいのに……と警部は思ったのだった。だが、自分の欲のためにしか力を使えないのが人間というものだ。
「それで、次に狙われる可能性が高い場所は?」
「S町の東にある神社があやしいかと。明日の晩、納涼祭が行われるため、賽銭がたまりそうですので」
「なるほど」
「相沢の部下に関しては情報が少ないですが、相沢と似た能力を持つ能力者が2名ほどいることがわかっています。
「そうか……よし、H.O.P.Eに依頼しよう」
警部は報告書類を手に取り、その場を後にした。
解説
S町の神社にて、賽銭泥棒である相沢達吉とその部下二人を捕獲してください。賽銭箱や神社を壊してはいけません。また、相沢らを殺してしまうと報酬が減ります。
敵ステータス
・相沢達吉
過去に下着の窃盗罪で逮捕されたヴィラン。
風を起こす能力を持ち、威力は自分の体を浮かす程度。風を起こせる時間は10秒ほどで、再度起こすには1分ほどの休憩が必要になる。応用性に長けており、特に風の威力のコントロールはかなりのもの。
戦闘技術は全くと言ってもいいほどなく、能力を戦闘に活かせるかどうかも怪しい。ただし、逃げ足だけは速い模様。発見したらすぐに捕獲することをお勧めする。
・部下(二人)
金が欲しくて相沢に協力するヴィラン。
能力は相沢の劣化。コントロールも苦手である。
戦闘技術は、相沢より少し高め。といっても、一般人よりほんの少し高い程度。
相沢との関係はそれほど深いわけではないので、危機的な状況に陥れば自分らだけ逃走する可能性が高い。
戦闘フィールド
神社の構造は、まずは100段ほどの階段があり、鳥居をくぐると空き地が存在。50メートル先に神社の建物があり、その目の前に賽銭箱がある。神社と空き地の周りは木で囲まれていて、無理をすれば階段を上らずとも空き地へ侵入することは可能。神社の後ろはきつい坂になっているので、そこから侵入することはまず不可能。空き地には納涼祭のあとのため、花火等、ゴミが散らかっている。照明は鳥居に一つ付いている程度。
時間帯は深夜、天候は晴れ。満月が出ているため、照明なしでも人を認識することができる。
リプレイ
●神社の真夜中
満月の真夜中。
賑やかだった神社も、今は静寂と闇に包まれている。誰かが神社の空き地内を歩けば、足音が全体に響き渡るであろう。
そんな中、5人の能力者が共鳴状態でそれぞれ神社の敷地内、もしくは周囲の木々の合間に息を潜めていた。
「神様に悪いことした分、ちゃんと捕まえないとね」
神社内で誰にも聞こえないようにつぶやくのは、赤金色の瞳をもった青年、木霊・C・リュカ(aa0068)。
「まったくどうしようもないですね……」
ため息をつくのは、共鳴して青年の姿となった少女、紫 征四郎(aa0076)。彼……彼女もまた、他の能力者と手分けして神社内に潜んでいた。
「相沢は現れるのであろうか……」
小さい体を活かして賽銭箱の影に身をひそめる泉興京 桜子(aa0936)がぽつりとつぶやく。尻尾がひょん、と揺れたような気がした。
それを階段脇で黙って見つめる穂村 御園(aa1362)。手には弓が握られていた。
森の中でも、蝶埜 月世(aa1384)が、相沢が現れるのを静かに待っていた。
●捕獲への準備、賽銭箱の周囲
時を少し遡る。
祭りが終わり、人々が立ち去った神社にて、相沢を捕獲するため、能力者たちは様々な罠を仕掛けていた。
「これは瞬間接着剤といいます」
「……」
リュカが言った言葉に、彼の英雄のオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は沈黙する。
見るからにやばそうな接着剤。それを彼は賽銭箱の周囲に大量に仕掛けていた。
「わしも仕掛けるぞ!それと、ここにワイヤーの罠を張るから、気をつけての!」
「そういう桜子こそ気をつけてよね」
張り切る桜子に、彼女の英雄のベルベット・ボア・ジィ(aa0936hero001)は呆れ気味に言った。
「……それで、あなた様は何をしているのでしょうか?」
桜子は、賽銭箱に何かを詰めている御園に首を傾げながら尋ねた。
「相沢は風を操る能力者らしいですから、お賽銭が吸われないよう、目にタオルを詰めておくんだよ。……これでいいかな」
「御園、少しタオルが見えているぞ」
「おっと、ごめんごめん」
御園の英雄、ST-00342(aa1362hero001)の言葉に、再度タオルを詰め直す。
「……さて、賽銭箱周辺はこれくらいでいいかの!」
「そうだね。さて」
リュカは神社へ向けて一礼する。
「悪人を捕まえるためとはいえ、神社にこのような行為をしてしまったこと、お許しください」
彼の行動を、他の人は静かに見つめていた。
●捕獲への準備、森
同じ頃、森の中では。
「ガルー、ここも抜けられそうですよ」
「そうか」
征四郎が指差しているところに、子供が抜けられそうな隙間があった。
そこに、彼女の英雄のガルー・A・A(aa0076hero001)がワイヤーを用いて罠を仕掛ける。
「次を探します」
作業を始めたのを確認し、征四郎はさらなる抜け口となりうる場所を探し始める。
「ちいと隙が出来りゃ捕まえられるだろ。こんなもんか」
罠を仕掛け終えたガルーは小さくつぶやいた後、自分の能力者を追いかけて行った。
●現れる目標
罠を仕掛け終わり、相沢が現れるのを待つこと1時間。
「っ!」
何かに反応したのは、木の陰に潜んだ征四郎。
「……きたようです!」
小さく呟くと同時に、ズシーンと何かが倒れる音がした。
「うげっ、なんだ!?ワイヤー!?」
征四郎の潜んでいた場所から30メートルほど離れた場所に、慌てて立ち上がる男の姿があった。
「相沢……ではないですね。相沢の部下……でしょうかっ!」
その方法へ走って行く征四郎。それに気づいた男は慌てて神社の敷地内へ飛び出した。
年齢は40歳前半、少しだけ頼りなさを感じる姿であった。服装はどこにでもいそうなサラリーマンの格好。
相沢の部下の出現に、当然他の能力者たちも気づき、目がいってしまう。それが相沢の作戦の一つであるとも知らずに。
「ちっ、H.O.P.Eの奴らが構えていやがったか!」
男がわざとらしく大声で叫ぶ。それと同時に賽銭箱からタオルが勢い良く飛び出した。
「っく、なんだこれは!?」
いつの間にか空き地の隅へ姿を見せていた相沢が、驚きで声を上げた。姿は何度かワイヤーにかかっていたのか、所々に傷があった。隣にはもう一人男が立っている。20歳後半のどこにでもいそうな男。
相沢の姿を確認したリュカが、いち早く行動に出た。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と嫌な音が神社内に響く。
「ぐあぁあっ!?なんだ、この音は!?」
相沢の横にいる男がたまらなく耳をふさぎながら叫んだ。相沢も耳を塞いで入るが、賽銭箱に向けて走り出していた。
「少しでも賽銭を……っておいっ!?」
相沢は叫んでいたが、部下の姿を見て大きく焦ることになった。
●部下1の捕獲
相沢が焦ることになった理由。
それは、嫌な音を聞かされたことにより、部下は恐怖のあまり、石段へ向けて逃げ出していたのである。その姿は、酷いものだった。
もともと、彼は幽霊やお化けといったものが大の苦手であった。
そのため、二人いた部下のうち、相沢と共に行動することになったのが彼になった。彼がこの真夜中に一人で行動させるのには無理があると、相沢が判断したのだ。
「逃げられると思っていないよね?」
「っ!!?」
階段脇から素早く姿を見せる御園。部下が気づいた時には、彼の足のすぐ隣に矢が刺さっていた。それを確認した部下の顔から、血の気が引いた。
「次は外さないよ?」
次の矢を構えてにっこり笑う御園に、部下は慌てて自身の能力を発動する。
ぶおっ、と強い風が発生する。それは、御園へ向けたものではない。あまりに慌てすぎて、どこに向けて放つわけでもなく、ただ適当に発動しただけだった。
そんな風なのだから、人を飛ばすどころか、人を退かせるほどの威力すらない。だが、その風を真正面へ受ければ、大体の人間は一瞬動きが止まる。止まらなくても、風が瞳に触れ、誰もが目を閉じるであろう。その間、部下の動きを捉えられるものは近くにいない。
その一瞬で、部下は一気に石段へ向け走ろうとする。
しかし、部下は走ることはできなかった。
銃声が響いたと思えば、部下へ向けて何かが飛び込んでくる。部下はたまらず背中から大きく倒れこんだ。
「……やるね」
御園は弓を構えながらも感心した風に言った。
「これで、一人捕獲完了っと」
縄で部下の手足を縛り、小さく呟くリュカ。
部下は能力を発動し、強風を起こし、御園の動きを一瞬止めた。だが、例の嫌な音を流した後に相沢たちの逃走する可能性が高い石段へ走っていたリュカにはほとんど威力がなかった。
適当に放った風が、遠くまで威力を残したまま届くはずがない。
そのため、リュカは部下の攻撃をほとんど受けることなく、射程範囲まで近づくことが可能になったのである。
ふう、と一息つき、部下を押さえ込みながらリュカは周囲を見渡した。
●部下2の捕獲
一方、最初に飛び出してきた相沢の部下は征四郎に追いかけられていた。
空き地内を適当に走り回りながら、部下は悔しそうに叫ぶ。
「くそっ、逃げ道はないのか!?」
「そんなもの、作ってあるわけないでしょう!」
征四郎はそう叫び、部下の肩をつかんだ。
こちらの部下は、度胸はあるものの、年齢ゆえか、それほど体力が多くない。若いのか幼いかはわからないけれども、征四郎が部下に追いつくのは容易かった。
「っ、捕まってたまるかよっ!」
部下は能力を使用し、征四郎へ向けて強風を起こした。
彼は自分の体を能力で浮かすことはできない。だが、それは自分の体がある程度重いからであり、大人よりも軽い征四郎の体を多少なりとも飛ばす程度の威力はあった。
「っ!?」
弾き飛ばされる、程ではないが、征四郎の体が少しだけ後ろへ飛ばされる。当然、部下の肩から手が離れることになった。
「っ!そのまま逃げるっ!」
そのまま逃走を図る部下。もう、賽銭や相沢のことなどどうでもいいかのように、ただ逃げることだけを考えていた。
彼は、お金は欲しいものの、危険を冒してまで手に入れたいものではなかった。賽銭泥棒という、簡単にできそうなもので、楽をして金を手に入れたかっただけである。今まで通りの生活をしても、まとまった金は手に入らない、と年齢ゆえに悟ったのだろうか。
「逃がさないわよ」
逃走を許さなかったのは、森で待機していた蝶埜 月世(aa1384)。罠を張るなどのことはしていないが、相沢の捕獲に協力していた。
一度能力を使用し、すぐには能力を再発動できなくなった部下に対し、彼女は部下の腹へ向けて拳をぶつけ、よろけた部下を一気に捕獲した。
「元下着ドロに協力してしまったあなたもかわいそうに」
小さく、月世はつぶやいた。
●相沢の捕獲
部下二人に裏切られた相沢は、思い切り焦っていた。
相沢の作戦は、部下が一人で敷地内に入り、何もないことを確認して相沢ともう一人の部下が侵入、その後賽銭箱にあまり近づかずに能力で一気に賽銭を盗み取るものだった。
もし何者かが見張っていた場合でも、最初に飛び出た部下に目を向けさせ、その隙に相沢の能力で一気に賽銭をかっさらい、そのまま逃走すればよい。飛び出た部下は見捨てることも、相沢は承知だった。下着ドロだ、人を見捨てるという汚いことも簡単にできる。
だが、部下を見捨てて能力を発動し、吸い出したのはタオル。発動可能な10秒の間に賽銭を吸い出すことができなかった。あと1分待たなければ能力の発動はできず、賽銭を吸い出すこともできない。だが、それを待っている時間はないし、待ってくれる人などどこにもいない。協力してくれる部下ももういない。
それでも賽銭を諦めきれない相沢は、無鉄砲に賽銭へ近づいた。作戦実行前までは、賽銭箱に罠が張ってあることを考慮していた。だから、賽銭箱を遠くから吸い出すというやり方を選んだのだった。
だが、今の相沢にそんなことを考える余裕などなかった。
相沢は慎重な人間だ。しかし、それは予想外なことが起こった時に対処できないから、作戦をちゃんと立てるのである。つまり、作戦を砕いてしまえば、慎重な人間など簡単に壊れてしまう。作戦あってこその慎重なのだ。
相沢が慌てて賽銭に近寄った途端、相沢の足から「ねちょっ」と不快な音が響く。
「っ!?な、なんだ、これ!?」
踏んだものが何かを確かめようと足を上げようとするが、足が上がらない。
瞬間接着剤の威力はかなりのものだったようだ。
「あー、マニキュアの除光液(接着剤の溶解剤)持ってきておいてよかったよ」
部下の手足を縛りながら、リュカがポツリとつぶやいた。
「くっそ、これじゃあ逃げられねぇ!」
「覚悟するのじゃぁ!」
戸惑う相沢へ追い打ちをかけるかのように、桜子が何かをぶん投げた。
「ぶっばぁあっ!?何ダァ!?」
悲鳴をあげる相沢。
桜子が投げたのは、ポーラである。ポーラとは、糸に強いよりをかけて平織りにした夏向きの薄地毛織物であり、それが相沢へ巻きつく。
横腹だけでなく、顔までもぐるぐる巻きにされてしまった相沢。彼の頭は真っ白になってしまった。こうなった相沢に、彼女の攻撃を避けられるわけがない。というか、視界を封じられているのだから、避けられるわけがないのだが。
「食らうのじゃぁ!」
「がはぁ……」
相沢へ向けてタックルをかます桜子。\がつーん!/と効果音が出たような気がした。
ポーラでぐるぐる巻きにされた相沢に何かができるわけでもなく、相沢は勢い良く倒れこむ。足の裏は接着剤でくっついてしまっているので、普通に倒れることはできず、ブリッチするような形となった。しかも、相沢の上に桜子が乗る形になるのだから、相沢の苦痛は半端ではない。
「いでででででっっ!!!!!!!!!」
相沢の悲鳴が、神社内へ響く。その間に他の能力者が相沢を捕獲した。
「神がいるかいねぇかはこの際置いとくよ。これはおめぇらのもんじゃねぇだろ? なぁ?」
「……くそぉ……」
ガルーの言葉に、相沢は涙目で悔やみ言葉を絞り出した。
これで、相沢とその部下二人が捕獲されたことになり、相沢の作戦は完全に失敗という形となったのだった。
●その後
「ほら! 何をやってるのですか! 手が止まってますよ!!」
ブンブンと竹刀を相沢たちへ思い切り振るう征四郎。その姿を他の人たちは苦笑しながら眺めていた。
「くっそ、なんで俺がこんなことを……」
「……協力するんじゃなかった」
「……」
「祝祭を汚したのだ、それなりの罰を受けるのは仕方のないことだ」
ぶつぶつ言う相沢とその部下(笑)に向けて言うのは、月世の英雄、アイザック メイフィールド(aa1384hero001)。
「ゴミが多いとお兄さん困るんだよね、躓きそうで」
「……神様とやらのお怒りも、少しは冷める」
「その通りです。ほら、早くやりなさいっ!」
「がはぁっ……」
相沢たちを拘束した縄を持ちながら、リュカとオリヴィエは言い、それに同調するように征四郎がバシーンと相沢の尻を思い切り叩いた。その様子を、リュカたちは苦笑いと共に眺めている。
「成る程これは名案だ。労働奉仕で神社を訪ねた人々の想いを知る。いまの彼等にとって必要な事だと思う」
「御園そろそろ帰りたいな。明日、ドーナツ屋さんに行く約束してるし」
彼らの脇で、感心する御園と、あくびと共に御園へ訴えるST-00342。遠くではわっせ、わっせと清掃活動を続ける桜子とベルベットの姿があった。その姿は若々しい。
夜も更けてきて、朝日が昇ってくる兆しが見える。
大量に落ちていたゴミも、綺麗さっぱり無くなって、神聖な神社が戻ってきていた。
ほんの少しだけ残るゴミを拾いながら、こっくり、こっくりと船をこぐ征四郎。
彼女が罠を仕掛けながらつぶやいた言葉。
「神さまはきっと、だれかを助けることも、罰することもできないのだと思うのです。……だから、征四郎たちがやらねばならないと」
東の山から、太陽が昇る。きらきらと輝き、能力者たちを明るく照らした。
神様がお礼を言っているかのような、優しい光だった。