本部

【初夢】恋愛ゲーム『好き!HOPE学園』

紅玉

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2017/01/20 20:38

掲示板

オープニング

 この【初夢】シナリオは「IFシナリオ」です。
 IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
 シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。

●プロローグ
 頑張って入学した『私立HOPE学園』!
 桜が舞う通学路に同じ新入生達が緊張した面持ちで歩く中、アナタは出会う。
「遅刻、遅刻」
 抑揚の無い声が後ろから聞こえた。
「ぶっ」
 ぽん、と背中に何かが当たり振り返るとそこには中性的な小学生(?)がいた。
「ごめん」
 と、言ってするりと避け、中性的な子は通学路を駆け抜けて人混みに消えていった。
 春だ、これも何かの縁だろうと思いつつアナタは再び歩き出す。
 その子の言葉をアナタは後で知ることになった。
 そう、入学式が始まるの予鈴を聞いたからだ。

●出会い
 見事に遅刻してしまった軸のアナタは、学園の門前で力無く地面に膝を着く。
「あらら、お寝坊さん?」
 そんなアナタの背後から優しい声がした。
 その声を聞いたアナタは振り向くと、そこにはブロンドの髪にサファイヤの様な瞳を持った女性が居た。
「ふふ、なら裏から入れて差し上げますわ」
 と、女性は微笑むと職員出入り口と書かれたドアを開けて、入るようにアナタを背を押した。
「ギリギリですわね。まだ点呼を取ってる時間だから間に合いますわ!」
 と、言って女性はアナタに向かってガッツポーズを取る。
 なんやかんやトラブル等はあったが、アナタは無事に『HOPE学園』に入学する事が出来た。
 これから、アナタにどんな学園生活が待ち受けているのだろう。
 恋愛あり、笑いあり、戦いありのHOPE学園でどんな生活をするかはアナタ次第です。

解説

●目標
学園生活を楽しむ

●NPC
ティリア→副担任(英語)
トリス→保健室の先生
冥人→担任(歴史)
静華→3年生
その他、1度出てき敵NPCも要望があれば出せれます。

●HOPE学園
皆さんは高校生です。
OPは新入生として入った場合の描写でので、学年や所属委員、クラブは自由に決めて下さっても構いません。
NPCとの恋愛、敵NPCとの戦闘はOKです。

●注意
PC同士で恋愛等をする場合は、しっかりと話し合ってプレイングを合わせてください。

●エンディング
希望の内容がありましたら、指定していただけると書きやすいです。
完成するまで分からない方が良い方は『ED結果お任せ』の一言を書いてください。

リプレイ

●いっけなーい! 遅刻、遅刻ぅ!
「HOPE学園……甘っちょろそうなお坊ちゃん学園だな。だからこそ支配する価値がある」
 HOPE学園校門前におじ、いや転入生として精悍な顔つきの高校2年五々六(aa1568hero001)が仁王立ちで立っていた。
「さあて、フーテン・ライオン伝説の幕開けだ。ちゃちゃっとテッペン獲っ――」
 新入生達のからの視線をものとせずに、五々六は学園内に足を踏みれてようとした瞬間。
「……ちこく、ちこく」
 何故かじゃじゃ馬ならず、じゃじゃシマウマに跨って登校するのは獅子ヶ谷 七海(aa1568)だ。
「あっ」
 調教されているワケもなく、人を飛び越えさせるという芸を教えていないのだろう。
 筋骨隆々のシマウマは五々六を軽々と吹き飛ばす。
「ぬわーっ!?」
 突然、背中で受けた衝撃により五々六はロケットの様にビューンと飛び、ばっしゃーん! と学園内にぽつんとある池へダイブ。
 恋(?)は突然に、漫画でよく見る男女がぶつかってトゥンクするシーンにまさか自分がなるとは思ってなった七海は胸に手を当てる。
(このトキメキは恋? それとも過失致死を犯したことによる動悸と息切れ? ドキドキが止まらない)
 瞳は恋する乙女、遠目から見たら戦国時代の武士の如くおっさん(17歳)をやっつけた武将。
 そんな事を思っていると、池から光が溢れ出し凄くイヤそうな表情の女神が2人の五々六の首根っこをトングで掴みながら出てきた。
「あなたが突き落としたのは、この金のオッサンですか? それとも銀のオッサンですか?」
 と、女神は台本通りに嫌々ながら言葉を紡ぐ。
「……し、しらない。私、つき落としてないもん。弁護士よんでください」
 七海は両手を突き出し、それ以上近付けないであーんどそんなおっさん知りませんと顔に出しながら首を横に振る。
「正直者のあなたには、色取り取りのオッサンを差し上げましょう」
 女神が半分投げやりで杖を振ると、おっさじゃなく各色に染め上げられた五々六達が虹の様に並べられた。
「うわぁカラフル」
 両手を口元に当てながら七海は、現れた選択の『いいえ』を連打するにも関わらず「無限ループって怖くない?」と言いつつ観念して『はい』をぽちり。
(逃げるが、吉!)
 七海はシマウマを盾にし、さっさと下駄箱へと駆け出した。
(他人デス。他人……知らない、知らない)
 カラフル五々六達を偶然にも出会った教師に報告し、七海は割り当てられてる教室へ入り使い慣れた席にドスンと座った。
「おい、貴様。何をしているんだ。ここは名高いHOPE学園高等学部だ」
「転入してきた五々六だ。吹き飛ばされて池に落とされたら、こうなっていただけだ!」
 七海が置いて行ったシマウマのお陰でもあり、本物の五々六以外は蜘蛛の子散らすかの様に広い学園の何処かへと逃げてしまった後だった。
「あぁ、話は聞いているが……初日から早々指導室行きだな」
 真田 雪はファイルを開き、五々六の書類を見ながら淡々と話す。
「指導室行っている暇はない! 俺はテッペン獲って学園の頂点へと昇らなければならないんだ!」
「元気でよし、そんな悪い子には良い事を教えてやろう……簡単だ、生徒会長を倒せばテッペンを取れるぞ」
 五々六に向かって雪はニッと不敵に微笑むと踵を返し、足早に校舎の中へ消えて行った。
(生徒会長、か……面白い。倒してやる!)
 ぎゅっと拳を握りしめ、口元を吊り上げ怪しく微笑む五々六の耳にホームルームの予鈴が鳴り響いた。
「遅刻だぁぁぁ!」
 五々六は慌てて下駄箱へと向かった。

「はーい、ホームルーム始めるよ」
 ぴかぴかの高校一年生達が騒めき合う教室に担任の圓 冥人が入ってきた。
「ひゃっほー! 女子高生じゃ! 女子高生じゃあ~!! 長生きはするもんじゃぁ~」
 それに気付かない嵐山(aa3710hero001)は嬉々とした声を上げながら女子生徒に夢中だ。
「ちょっと、そこの君。静かにしてくれないかしら。まったく高校生にもなって……」
 眼鏡を上げなおしながら新座 ミサト(aa3710)は嵐山を注意する。
「おっほー! ミサトちゃんの制服姿! たまらんのぅ!!」
 嵐山は聞いたことある声に気が付き振り向くと、そこには女子高生のミサトが居た。
「いくらIF世界とはいえ、私と老師が同級生とは……。設定に無理があるのではないでしょうか」
 呆れた表情で嵐山から視線を逸らし、ミサトは英雄のおじいちゃんといった感じの見た目に学ランを着ている姿に違和感しか感じない。
「それを言ったら、ミサトちゃんが女子高生というのもずいぶん無理がっ! ぐはぁっ!」
 舐める様に見る嵐山は感想を口にすると、素早い身のこなしでボディブローを叩きこむと何事も無かったかのように椅子に座る。
「なにかおっしゃいましたか、嵐山君?」
 にっこりと微笑むミサトだが目が笑ってない。
「はいはい、友好を深めるのは良いけどー今、ホームルームだよ?」
「なんじゃ担任は男か」
 つまらなさそうに嵐山が言うと、背後から殺気という名の無数の刃物が背中に向けられている。
「はい……」
 嵐山は、パッと手品の様に自分の机にワープすると大人しく教室にいる女子高生を眺めるだけにした。
「では、ホームルームを開始します。委員長」
 何事も無かったかのようにホームルームは進められていく。
「ミサトちゃん、副担任はどうなんじゃ?」
 と、隣の席のミサトに嵐山は小声で話しかける。
「副担任は英語のティリア先生らしいですが……あ、ちょっと!」
 ミサトはクラス分けに書かれていた名前を思い出しながら答えると、嵐山は適当に身代わりを作りそっと教室から抜け出していた。
「女教師のティリアさんか~さぞかし、うひょひょひょ」
 普段はHOPEの制服姿しか見たことが無い嵐山、女教師という響きだけで思春期の少年の様に心を躍らせながら準備室へと向かう。
「うひょー! 金髪ぼいんのティリア先生! ちょっと質問じゃ~」
 ガラッと準備室のドアを開けて入ると、そこには女性教師姿のティリア・マーティスが居た。
「あら? 今はホームルーム中のはずではないかしら?」
 ティリアは小さく首を傾げた。
「手伝いに来たんじゃ。ティリア先生に英語でわしの想いを伝えるには、なんと言えばよいのじゃ~」
 嵐山は準備室に置いてあった教材を手にすると、ティリアの隣にぴったりと引っ付きながら視線はブラウスの間から見える絶景の谷。
「その前に、英語での命乞いを教わったらいかがですか」
「ひっ!」
 殺気を感じた嵐山の背中がビクッと飛び跳ねる。
「じょ……冗談じゃミサトちゃん。ちょっと羽目を外してしまっただけなのじゃ……」
「問答無用!」
 ミサトはガシッと嵐山の頭を鷲掴みし、ゆっくりと指に力を入れ頭部を潰す勢いだ。
「ぎゃあぁああ~」
 嵐山の悲鳴が廊下まで響き渡った。
 ミサトは嵐山の首根っこを掴むと、半ば引きずるように準備室から出て静かな廊下を歩く。
「ミサトちゃん、保健室へ連れて行っておくれ。さっきのボディブローがだいぶ効いておるわ」
 と、嵐山は腹部を抱える様なポーズを取りながら言う。
「……仕方ありませんね。先程は私もやり過ぎたかもしれません。付き添いましょう」
 やれやれと呆れた様子でサトミは嵐山に肩を貸す。
「おぅおぅ、すまないのう」
 なんて言いながら嵐山はサトミのお尻をすりすりと撫でまわす。
「……変な事をしたら、引導を渡しますからね?」
 にっこりと微笑みながらサトミは嵐山に言う。
「はい」
 ミサトの声色は『ボディーブローより恐ろしい目に合わせますよ』と、言っているのを感じ取った嵐山は大人しくなった。
「失礼します」
 ノックをし保健室に入ったサトミと嵐山。
「どうしました?」
 白衣姿のトリス・ファタ・モルガナは椅子を回転させ、サトミ達の方へと振り向いた。
「おほっ! 青い瞳のトリス先生! もうたまら~ん!」
 パッとサトミから手を放し、嵐山の目は白衣姿のトリスに釘付け。
 保険医とのランデヴー、それは一度は夢見て妄想が止まらない産物の一つである。
 白衣、タイトスカートから覗く艶めかしいストッキングに覆われた脚、夢しか詰まってない保健室で個人授業。
「……」
 パァン! と、派手な打音とがしたかと思えば嵐山の頭部から鮮血が散る。
「すまぬ、トリス先生。腹が痛かったのじゃが、たったいま頭部からの流血も追加された。ちょっと看てはくれまいか」
 だらだらと血を流しながら嵐山は言う。
「サトミちゃん、あまりしすぎるとクセになってしまいます。嵐山ちゃんみたいな子は、男の園に投げ入れれば良いと思います」
 と、言ってトリスは立ち上がり、薬品棚からおもむろに取り出したのは紫色の液体。
「そ、それは?」
「大丈夫、ちょーっと苦いだけです。はい、あーん」
 トリスは笑顔で口を開ける様に促す。
「はい、あーん」
 思わず釣られて口を開ける嵐山。
 容赦なく紫色の液体を口にぶち込む!
「っ!?!?」
 あまりの苦さに嵐山はぴょーんと飛びゴンッと天井に頭をぶつける。
「老師は大丈夫でしょうか?」
「はい、ティリアにセクハラした仕返しです」
 ミサトの問いにトリスは笑顔で答える。
「あ~……女子高生……おおっ……ティリア先生、トリス先生もいる……ハーレム、じゃ」
 気絶した嵐山はグヘヘヘと不気味に笑いながら呟いた。
「こ~んな感じの楽しい高校生活になりそうじゃのぅ」
「私の身が持ちません、老師」
 と、嵐山の初夢を聞いてミサトは頭を抱えた。

●三角のバランス
 早朝、歩道にちらほらと仕事に向かう人や部活生が歩いている中でキョロキョロと辺りを見回しながら路地裏へ入る少年。
「例のAV(アニマルビデオ)だ」
 テジュ・シングレット(aa3681)は丁寧に布で包んだ長方形のモノを差し出した。
「いいか、この事(動物好き)は誰にも言うんじゃねえぞ」
 モノを受け取ると佐藤 鷹輔(aa4173)はデジュに顔を近付け、睨みつけながら低い声で言う。
「わ……分かった!」
 デジュは目を丸くし、冷や汗をかきながら小さく頷いた。
 ふと、路地裏に視線を向けたにルー・マクシー(aa3681hero001)は、鷹輔がデジュに向かって凄む瞬間を目撃してしまった。
(……!! もしかして、カツアゲ?)
 ルーは口元に手を当て、困惑した表情でその光景を見ながら歩いているとドンと誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい!」
 驚いてルーはぶつかってしまった相手にぺこぺこと頭を下げながら謝る。
「大丈夫だよ。あれ? もしかして1年生? 初めましてだね。リボン解けてる……」
 結び方が緩かったのか、ぶつかった拍子で胸元のリボンが解けたのだろう慌ててルーは直そうとするが、それよりも早く五十嵐 七海(aa3694)が慣れた手つきでリボンを結び直す。
「ん♪可愛く結べた、よ」
 と、言って笑顔を向けると七海は足早に学園へと向かった。
 綺麗に結ばれたリボンに、ルーはそっと手を添えながら後姿をぼーっと見つめた。
 歩いてきたのに、暑くもないのに、胸の激しい鼓動が耳の鼓膜を震わせた。

 その頃、鷹輔は受け取ったモノを大切に鞄に入れると思わず口元が緩む。
「礼と言っちゃなんだが今日の昼飯は奢るぜ」
「了解、むしろ助かるよ」
 鷹輔が拳を差し出すと、デジュは拳をコツンと軽く当て口元を緩めた。

「はい、静かになー。転校生が、まぁ……偶然にも2人来てだな。入れ」
 担任の雪は名簿を教壇にぽんと置くと教室のドアに視線を向けた。
 教室に入って来た美女と野獣。
「ルー・マクシーです。皆さん宜しくお願い……あ!」
 ルーが視線を向けた先には七海。
「五十嵐と知り合いか? なら隣、な」
「え? あ、はい!」
 雪の言葉にルーは少し戸惑いつつ返事をする。
「!!……年下と思ってた……。は、恥ずかしい」
 ルーと目が合った七海は両手で顔を覆いながら呟いた。
「ふーん、朝に会ったって新入生らしき子がアノ子なんだ」
 鷹輔は興味なさそうに答えながら七海の後姿を見る。
「よろしくね」
 と、ルーは席に着くと七海に向かって微笑んだ。
「あ、あぁ、宜しくね」
 七海が花開く様に笑みを浮かべると、ルーの心臓が少し早く脈打つのを感じる。
(き、聞こえてないですよね……)
 胸に手を当てるとルーは、日の光を浴びて輝く七海をチラッと盗見すると余計に心臓の鼓動が大きくなった。
 偶然?
 必然?
 近いようで遠い距離。
 机一個分の距離。
 性別なんて飾り、高鳴る思いと純粋な好意だけが原動力。
 恋する乙女は走り出す。
「教室移動だよ~。一緒に行こう♪」
「っひゃ!?」
 ルーは声に気付くと七海の顔が数センチ先にある。
 口からなんてもんじゃない、直接胸から心臓がぴょーんと飛び出そうになる。
「え、えっと、次はどの教室でしょか?」
「音楽室だよ」
 七海がルーの問いに答えると、手を取りいわゆる恋人つなぎをして教室を出る。
(ひ、ひゃ~……こ、これって!?)
 繋がれた手を見てルーは、茹でられたタコの様に顔を真っ赤にして頭からは湯気がもわーと出る。
「おはよう!」
 制服の姿の生徒、スーツ姿の先生達が行きかう廊下に全身は皮の様なモノで包まれている語り屋(aa4173hero001)に挨拶をする。
 だが、この学園では褌一丁、赤とオレンジのまだら模様、トナカイの着ぐるみ等々の個性的を通り過ぎて前衛的なファッションの者も少なからず居る。
「おはようございます」
 そんな人達と積極的に接する人間は一人は現れるモノで……生物部部長のエレオノール・ベルマン(aa4712)がその部類だ。
「おはよう」
 と、軽く挨拶をして語り屋は通り過ぎようとするが、エレオノールは素早く回り込み進路を妨害する。
「部長。授業が始まりますゆえ、彼を縛らずに私を縛りなさい」
 2人の間に入って来たデニールは、制服の上着を脱ぎ捨てエレオノールの前にひれ伏す。
「そうですね。早く教室に戻りましょう」
 と、エレオノールはデニールの背中をムチで叩きながら教室へと戻る。

 午前最後の授業が終わる予鈴が鳴り響き、昼休みへと入る学園で教室から一斉に学生達が我先にと購買や食堂へと駆け出した。
 鷹輔が教室から出ようとする、が。
「七海ともっと仲良くなりたいな……」
 と、言ってルーは自分の机を七海の机にくっ付けると手をそっと重ねる。
「テジュ、すまん。俺の分も頼む。ちょっと用事ができた!」
 その瞬間を目にした鷹輔は、一緒に教室から出ようと駆け出したデジュにお金を手渡すと踵を返し七海の元へ。
「わかった、後で届ける」
 こくりと頷き、お金を受け取るとデジュは流れに乗って駆け出した。
「もしかして、七海が他の男に告られて断ってた理由って」
「七海に何か用? 七海は騙されています!」
 七海に話しかける鷹輔にルーはキッと睨みつけた。
「ううん、意地悪言うけど、とっても優しいんだよ」
 七海は鷹輔を庇うように両手を広げ首を振る。
「でも……え、あれはっ!」
 ルーは廊下を歩く語り屋を指しながら声を上げた。
「七不思議!」
 ルーは立ち上がり、てくてくと歩く語り屋に向かって走り出した。
 ぽつん、と残された鷹輔はぎゅっと拳を握りしめながらルーを見送った。
「それ以上は身を滅ぼすぞ。我が纏うは過ぎたる力を抑える拘束具。いかな我とてこれを失えば闇の力を抑えることができぬ」
 語り屋は追いかけてくるルーに言う。
「っ! たとえ闇に飲まれても……」
 ルーは語り屋を突き飛ばし倒れたところを捕獲しようとするが、首根っこをデジュに掴まれて宙に吊るされた子猫の様だ。
「お願いだから仕事を増やすな」
「せめて仮面だけでもっ!」
 じたばたするルーはデジュに羽交い絞めされており、立ち上がって何も無かったかのように歩き出す語り屋の背中をただ恨めしそうに見つめた。
「七海、ちょっと話が」
「何かな?」
 鷹輔は七海の手を取り体育館裏へと連れて行くが。
 きょとんとしている七海に対し、鷹輔は口を開き言葉を紡ごうとするが魚の様に口をパクパクさせる中で昼休みが終わる5分前の予鈴が鳴り響いた。

●青いレモンの様に?
 午後、胃も満たされ文系の授業で先生が口にする言葉は子守歌の様に心地良い。
 だけども、そこは思春期であり何も知らない少年少女達の瞳には先生も『異性』として淡い恋心を抱く事もある。
「はい、教科書の5ページから始めますわ」
 ティリアが教える英語の授業では何故か男子の英語の成績が良いのは……。
(manglobe……an elephant……! six environment issues!!)
 バルトロメイ(aa1695hero001)は、教科書の隙間からティリアを見つめながら聞こえてくる単語をイケナイ方向に空耳をしていた。
「次、この文法を使って別の形容詞にすると……」
 タイトスカートから伸びるティリアの脚はストッキングに覆われているが、そんなの思春期でドッキドキの少年達にすれば思わず前屈みになる。
(あぁ、今日もfascinatingです!)
 チョークで黒板に文字を書く姿、滑らかな曲線を描き腰からお尻に流れるラインに少しムッチリとした感じはたまらない様子でバルトロメイは視線を動かす。
「ティリア先生、ストッキングが伝線しています」
 と、手を上げながら小さい方の七海は言う。
「え? うそっ!?」
 慌てた様子でティリアは自分の脚に手を滑らせる。
(先生のozone holeで僕のAntarcticがhotです!)
 見えそうで見えないスカートの中は不思議な力でブラックホール状態だが、その仕草だけでも、前屈みになった拍子に見える谷もバルトロメイからしたら熱くなるモノがある。
(くっくっくっ……)
 意味もなく眼帯を付け、黒い表紙のノートにペンを走らせるセレティア(aa1695)は高校生になってまでも中二な病気が止まらない。
『前世の名は聖那・リィンエステル・グレートヒェン。戦舞姫<ブリュンヒルデ>の称号を持ち癒しの大天使ラファエルの加護を受けた戦乙女。真名は泪の慈雨に濡れし祈りを捧げる姫巫女<ウンディーネ>、悲恋の業を背負いし咎人』
 と、図書館で読んだ神話等を元にして書く設定は、セレティアの歴史を確実に黒くしていっているのであった。
「先生ー今日もお気に入りの下着?」
 男子生徒からヤジが飛ぶ。
「え? はい、いつも勝負していますからですわ」
 そんな下心満載な問いにもティリアは笑顔で答える。
(て、ティリア先生のmountain valleyがgreat viewです)
 バルトロメイの鼻から流れる一筋の血。
 楽しい時間は直ぐに過ぎ、無慈悲にも予鈴が授業の終わりを知らせると先生は教室から出て行ってしまった。

(やっと六限目が終わったんだな)
 瑠璃宮 明華(aa4795)は授業をサボって静まり返った屋上で太陽の温かい光を浴びていた。
「終わらんなぁ一服しよ……ぁ……」
 校内のゴミ拾いをしていた美化委員長のジェフ 立川(aa3694hero001)は、屋上のドアを開けると口にタバコを咥えた。
「タバコはダメだ……見なかった事にしておく」
 ひょい、とデジュがジェフの手からタバコを奪いポケットに入れる。
「カルラ君!」
「なんじゃ?」
 エレオノールが声を掛けるとカルラ(aa4795hero001)は一輪の白い薔薇が花開く様な微笑みを向けた。
「お美しいです……私のモノになっていただけないでしょうか?」
 エレオノールはそっとカルラの手を取るが、そうは写真部の部員達が許すわけがない。
「私達のカルラ様です!」
 ドンッ! とエレオノールを押し出すのは写真部部長ファンクラブ会長である少女。
「いいじゃないですか。エレオノールがカルラ君をつい口説いてしまう程に美しいのですから」
「おまえも美しいのう」
 カルラはニコッと微笑みを浮かべると、エレオノールをカメラのフレームに収めるとシャッターを下す。
「え、ありがとうございます……」
 予想外の回答に頬を赤らめながらエレオノールはカルラを見つめる。
「エレオノール、そろそろ部活の時間じゃ。顧問に怒られるぞ?」
 フェンリル(aa4712hero001)が恐る恐るエレオノールに言う。
「仕方がないです……また、明日」
「あぁ、またの」
 恭しく一礼するエレオノールにカルラは変わらず美しい笑顔で返事をする。

●トゥルーEND
 小さい七海の頭上には爆弾が一個、導火線に火花を散らせながらゆらゆらと揺れていた。
「ぬぉぉぉぉぉ!」
「なんのぉぉぉぉぉ!」
 獅子の様な五々六と熊の様なバルトロメイが、オレンジ色に染まりつつある校庭で拳を交える。
「テッペンというモノが欲しいのでしたら、生徒会の防衛チームを倒してから私に挑む権利をあげます」
 月下美人は戦う2人を優雅に眺める。
「や、やめなさい!」
 騒動を聞きつけたティリアが傷だらけのバルトロメイの腕を掴む。
「ティリア先生、ここは危険です! 離れて下さい!」
「いや! こんな事……したって……ぐすっ」
 ティリアの青い瞳から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。
「月下、終わらせようね」
「はい、兄さま!」
 冥人の一言で月下美人は嬉々として返事をすると、五々六の前に立ちはだかる。
「この戦、兄さまの為に終わらせます!」
「テッペンを取るのは俺だ!」
 生徒会長『月下美人』を見つめ、五々六は口元を吊り上げると校庭の地面を強く蹴り駆け出した。
 テッペンは取れなかった五々六。
 しかし、会長が卒業した後に席を奪う為に壮絶な争いに巻き込まれるのは1年後の話。

●仲良しEND
「俺は、お前の事が……」
 バランスを崩し、思わず壁に手を着く鷹輔は七海にいわゆる『壁ドン』状態になっていた。
「好きだ。七海、付き合ってくれ!」
「ぇぇ、ぇ、ぇと……私……も……あの」
 顔が近い、自分の頬が熱を帯びてきて胸の鼓動がうるさい位に耳元で鳴り響く。
「ぅっ……な、何でもないよっ」
 七海は鷹輔を突き飛ばすと駆け出した。
「七海、鷹輔が好きなんだろう? 今のままじゃ逆効果だぞ」
 現場を見ていたジェフは七海の腕をガシッと掴むと睨む。

「鷹輔、焼きそばパンを貰った、ありがとうな」
 その頃、デジュが鷹輔に買ったパンとお釣りを渡す。
「あ~!! ご飯買い忘れた!」
「転校生、飯を買い損ねたのか?」
 お腹を押さえながら席に座るルーを見て鷹輔は、手に持っているメロンパンを差し出した。
「メロンパンいいの?! ……え?! テジュもパン貰ったの?!」
 差し出されたメロンパンを受け取るとルーは、鷹輔とデジュを交互に見つめた。
「メロンパン!!! 私も食べる~。ねぇ分けて」
 ひょこ、と顔を出すのは七海。
「昼の購買は戦争だからな。しょうがねえ、今日はサービスだぞ」
 と、言って鷹輔は七海にもメロンパンを渡す。
「……あのね、みんなで食べたくて、お弁当、作ってきたんだ」
 七海が大きな鞄からお弁当箱を取り出す。
「お邪魔するのじゃ」
「わー、美味しそうですね」
 顔が広い七海は、写真部のマドンナであるカルラ、生物部で女王として君臨しているエレオノールとそのマスッコ的な存在のフェンリルも呼んでいた。
「うむ、食事の呼び出し感謝する」
「んゆー☆ 皆でお弁当とかとても楽しそうなの♪」
 教室の机を並べて一つの長テーブルにすると、和気あいあいとしながら美味しいお弁当に舌鼓を打つ。
「えっとね」
 七海はルーと鷹輔の間に入り2人を交互に見つめる。
「二人とも大好き♪」
 と、言うと七海はルーと鷹輔の肩に腕を回し笑顔で言った。
(悪くない、かな?)
 ルーは照れ笑いを浮かべながら2人を見る。
(うん、卒業までには言えれば……)
 鷹輔はメロンパンを口に頬張る。
 三角は円形になり、和となった。
 まだ、高校生活は始まったばかりだ。
 3人の先に何かがあるかは、彼ら次第である。

●青春END
「あら、セレティア様。勉強熱心ですわね」
 すれ違いにティリアはセレティアに声を掛けるが。
「ふふっ……命拾いしましたね」
 と、不気味に笑いながらそそくさと屋上へと逃げ込んだ。
「ティリア先生」
「はーい」
 バルトロメイがティリアの手を取り、誰も居ない夕暮れでオレンジ色に染まる廊下を歩く。
 中二な病気の少女は自分の黒歴史を紡ぎ、思春期真っ盛りな少年は憧れの人と未来を紡ぐために歩き出す。
 これからどんな困難も、仲間や好きな人が居れば歩んでいけるだろうと信じて前へと突き進む。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • エージェント
    獅子ヶ谷 七海aa1568
    人間|9才|女性|防御
  • エージェント
    五々六aa1568hero001
    英雄|42才|男性|ドレ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 絆を胸に
    テジュ・シングレットaa3681
    獣人|27才|男性|回避
  • 絆を胸に
    ルー・マクシーaa3681hero001
    英雄|17才|女性|シャド
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • ローズクロス・クイーン
    新座 ミサトaa3710
    人間|24才|女性|攻撃
  • 老練のオシリスキー
    嵐山aa3710hero001
    英雄|79才|男性|ドレ
  • 葛藤をほぐし欠落を埋めて
    佐藤 鷹輔aa4173
    人間|20才|男性|防御
  • 秘めたる思いを映す影
    語り屋aa4173hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • エージェント
    エレオノール・ベルマンaa4712
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