本部

広告塔の少女~今年よさよなら~

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
8人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
4日
完成日
2017/01/08 15:40

掲示板

オープニング

●ネタラシヌワヨ
 
 それは今年も終わろうとする年の瀬のこと。
 あなた達は悲しいことに雪山の天辺にいます。
 吹きすさぶ風、揺れる窓、窓には雪が張り付いてコテージの中は真っ暗である。
 そうあなた達はグロリア社の持つ山頂コテージにいた。
 本当であれば大晦日の三日前くらいには家に変えれる予定だったが、雪に閉ざされ、今では扉が雪に埋もれてあかないという大参事。
「せめて、晴れればヘリが飛ばせるのだけどね……」
 そう遙華は蝋燭片手に告げた。
 ちなみに電源は落ちている、外にある発電機も限界を迎え壊れたらしい。
 食料の備蓄もある、石炭の備蓄もあるので、死ぬことはないだろうが心細さは増していく。
 そう、これはもはや遭難である。
「去年も同じようなことになっていた気がするわ」
 遙華は告げて、今のソファーの上に横たわった。ロクトが膝を貸してくれる。
「遙華、遭難したときの鉄則は覚えてる?」
「寝たら死ぬ……」
 もそりと起き上がった遙華は君たちを見渡し、こう告げた。
「今年の振り返りをしましょう」
 そう遙華が告げた時、時計は午後十時をちょうどさしたころだった。
 
● みんなで今年の振り返りをしよう
 今回はコテージの今で毛布にくるまりながらみんなで話をするというだけのお話です。これを気にみんなに話しておきたかったこと、聞いてみたかったこと、仲良くなりたかったあの人と交流を深めるといいと思います。
 ちなみにコテージには一人一人の部屋があり、そちらで過ごすことも可能です。
 一人に一つ、ライトか蝋燭があたり、今は暖炉に火が灯っています。
 ひたすらにトランプを繰り返しており若干飽きてきたところ。
 キッチンは広く火もつかえ、食材もたっぷり余ってます。 
 施設は好きに使っていいので、好きに年末を演出してください。

●今年の振り返り

遙華Ver
 今年はいろいろあったわね。まず、ルネの件。あれって実は私が去年遭難するちょっと前の話だったわ。
 今年はずっと、彼女に振り回される形になったわね。
 もちろん他にもいろいろあったわよ。仕事では主にアイドルプロデュースかしら。
 歌に、ドキュメンタリー。いろんな施設を回ったりしたわね。孤児院、遊園地。すごく大変だったけど、最後は楽しくなれたから全部いい思い出ね。
 みんなの活躍のおかげで、業界でも結構名がしれてね。そのおかげでECCOや光夜と仕事もできるようになったわ。
 また、一緒に仕事がしたいわね。
 そして特に印象深いのは36時間テレビ、みんなの努力のおかげで成功したと言える、本当にありがたい話だわ。
 36時間テレビの打ち上げをやってないわね、時期としては遅いけど、お礼がてら、何かやってもいいかも?
 そして忘れられない事件としては、エリザの一件かしらね。
 私の耳にはまだ、あの子が目覚めた時の言葉が残ってる「おはよう、私の世界」
 私の未熟が、みんなにつらい思いをさせた、彼女につらい思いをさせた。
 私個人としての戦いは、エリザを早く起動させること、そして彼女にもっと沢山の世界を見せたい。

来年の抱負『エリザを起動させる』


ロクトVer
 一年中遙華のおもりだったわ。自分で作った試作実験機に捕まるし、アルスマギカをリリースしたいって喚くし、本当に大変だったわ。
 去年は翼の運用実験も沢山したわね。あれは私の自信作の一つよ。
 来年こそは実用化させて見せる。それが私の来年の抱負。
 まぁ、この世界の技術に興味があって研究に参加させてはもらったけど。
 本来私は遙華の家庭教師だったのだけど、最近にはあの子に何も教えられてない気がする。
 でもいいのかもね、一番大切なことをみんなと、学んでいるから。
 最近は危なくなったときのフォローくらいにしか呼ばれなくなったのは進歩よ。
 昔なんてちょっと外に出るだけでも私を呼んでいたのだけど。
 今では一人でなんでもできるようになったわ。
 みんなありがとうね。

来年の抱負『翼を実用化する』
 

解説

目標 みんなで今年を振り返る。
   来年の抱負を設定する


●会話フック
 皆さんが会話に困らないように会話フックを作りました。
 これについて話題を膨らませるようにするといいでしょう。

 今年に関する話題はこちら。
「今年一番印象に残った事件は?」
「今年一番の失敗と言えば?」
「今年の抱負ってなんだった? 達成できた?」
「今年の春にお花見を企画したらくる?(遙華さんが単純にききたいだけです)」
「遙華の最初の印象と今の印象(ロクトが遙華さんをいじって遊びたいだけです)」

来年に関する話題はこちら。
「来年の抱負 仕事編」
「来年の抱負 私生活編」
「来年の抱負 恋愛編」

リプレイ

●山小屋で年越し。
「も、もう限界です…………」
 ここは山荘、山の頂上にあるリゾートコテージ、任務の終わりにささやかな休日を過ごしていた。
「だめですよ凛道、ねたら…………」
 そうリュカの膝の上で伸びきった猫のようになりながら『凛道(aa0068hero002)』の膝を揺する『紫 征四郎(aa0076)』
「ちょっと、寝たら死ぬって…………!
 同じように『木霊・C・リュカ(aa0068)』がガクガクと凛道の肩を揺する。
 そんなじゃれ合う小僧っ子を一瞥すると『ユエリャン・李(aa0076hero002)』は窓の外に視線をうつした。
「窓から見えるのに外には出れぬ。なんだかひどく懐かしい景色であるな」
 そうグラスを揺らして見えないはずの物を観よう視線を漂わせた。
「ユエリャン、窓際寒いですよ。こっち来るといいです」
「暖炉あったかいよ?」
 リュカも告げる。
「そう言う色男はあたたかそうであるな。女児は体温が高いと聞く。しかしこの山荘は温かい、窓際でも寒くはないよ、しかし」
 そう言葉を継げユエリャンは三人に歩み寄る。そして
「おい、寝るなよ眼鏡置き」
 そう凛道のほっぺたをぺしぺしと叩くユエリャン。
「起きてますよ!」
「……もはや恒例行事だな」
 そんな光景を微笑ましく眺めながら『麻生 遊夜(aa0452)』はそう告げた。
「……ん、合言葉は……『ネタラシヌワヨ』」
『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』はそう微笑むと隣でへばっていた遙華の頭をぐりぐりと弄ぶ。
「きゃーーーー」
 遙華は楽しそうな悲鳴を上げた。そんな遙華にマグカップが手渡される。
「遙華さんもいかがですか?」
 そう大量のマグカップを両手に抱えていたのは『黒金 蛍丸(aa2951)』
「ありがとう」
 そう遙華が一つコーヒーを受け取ると、残りのカップを蛍丸は『橘 由香里(aa1855)』と『飯綱比売命(aa1855hero001)』に手渡した。
「ありがとう、蛍丸君」
 そう由香里は溜息をついた。
「冬になるとだいたい面倒臭いことに巻き込まれるのよね。去年はサンタに殴られて病院送りだったし」
「別に冬に限らんじゃろ。今年の春には愚神に幻影見せられて危うく同士討ちじゃったし、夏には腹に風穴開けられて死にかけたし、秋には妙なキノコ騒動で貞操の危機じゃったろ」
 飯綱比売命はそう言葉を返す。
「最後のは別に危機じゃないし……それに今年の冬はいいことあったもの。来年はきっと良い年になるから」
 それを聞いて蛍丸は苦笑いを見せた。そんな二人から離れた地点、ソファーに寝そべるのは一見童女。
「うむ、ここまで長い期間押し込められると、さすがに気がめいる」
 そうため息をついたのは『ナラカ(aa0098hero001)』だった。
「はは、ナラカさんとカゲリさんも閉じ込められちゃったか」
 そんなナラカにソファーの背もたれ側から奇襲を仕掛けつつ『志賀谷 京子(aa0150)』が手を伸ばした。
「京子も親しい方がいてホッとしてるんですよ。…………そうは見えなくてもね」
『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』はエプロンを揺らしてそう微笑んだ。
「さあて、ほんとのとこはどっちだろうねえ」
 不敵に笑う京子。
「ふふふ、私達としても京子やアリッサがいてくれると心強いよ」
 そうナラカも不敵に笑う。そんな二人を残してアリッサはキッチンに向かった
「鍋対決で引き分けになった腕を振る舞ってあげてよ」
「そんな大したもんじゃないですからね、あまり期待せず」
 そう告げる京子もキッチンへ向かった。
「では、我々も手伝うとしようか、なぁ覚者よ」
 『八朔 カゲリ(aa0098)』も手持無沙汰なのだろう、ソファから腰を上げ三人の後を追う。
「今年の忘年会は、マジで思い出に残りそうです」
『雪ノ下・正太郎(aa0297)』がそう部屋から降りてきて代わりにソファーに座り、あたりを眺めた。
「しかも、暇です」
 その言葉に反応したのは遙華。
「でも寝たら死ぬのだから、何かを話さなければならないわ。そうね」
「思い出話でもしましょうか」
 その言葉に反応したのは『月鏡 由利菜(aa0873)』である。
「思えば、今年もあっという間でしたね」
 そう優雅にカップを揺らす由利菜は雪に閉じ込められているとは思えない優雅さだった
「積もる話もあろう。この機会に色々話したいことを話そうか」
 『リーヴスラシル(aa0873hero001)』が口火を切ると、その場にいた全員が、ポツリポツリと話を始める。

● 戦の狼は新年も戦いの夢を見るか。
「今年、今年かあ。振り返ってみればいろいろあったよね」
 そうアリッサが手早く具材をきざむ横で、京子は鍋を見つめていた。
「印象に残ったことは今年の前半後半で一つずつあるんだ」
「ほう?」
 ナラカはテーブルに腰掛けて問いかける。アリッサの指示で食材や道具を手渡して。
「前半は【東嵐】の終局から古龍幇との和平プロセス」
「そして追悼式典まで関わったこと。わたしたちがこれから愚神たちとどう戦っていくのかがそこで見えた気がする」
「結局は人同士の連帯に鍵があると」
 アリッサがそう尋ねた。
「うん、それがきっとわたしたちの強さなんだ」
「ほう、京子は東嵐であったか」
 ナラカが楽しげに告げた。
「カゲリさんは?」
「俺は特にない」
「覚者の場合は【神月】だろうとも」
 ナラカは謳うように告げた。
「愚神十三騎が神無月を討った事実、その褒賞を以て覚者も一躍名を馳せただろう?」 
 そうナラカはカゲリをちらりと見た。
「尤も、彼に取っては不本意ではあろうが」
「……本当にな」
「なんでそんな風に思うの?」
 京子は問いかける。
「別にあそこまで大げさに…………担ぎ上げられるほどのことはしてないってだけだ」
「またまた、謙遜して」
 そう京子は笑いながら昆布を取り出した、次にやることがなくなってしまった。
「謙遜では、ないのだろうよ」
 彼はすべてを顧みない。だからこそどんな褒章もふさわしくない。
 それどころか自分が放つ熱はすべてを破壊してしまう可能性もアル。
 不滅の劫火、燼滅の王。
 そうあることは受け入れた、それ故に、そのリスクも承知の上、そしてそのあり方をどうしようもなく貫くしかない自分にそんな輝かしい称号はふさわしくないと思ってる。
「年末なのにそんな顔しちゃだめだよ」
 京子はそうお玉を向けた。
「お行儀が悪いですよ」
「はーい。ねぇナラカさんは今年どうだったの?」
「ああ、そうさな。一番楽しかったと思えたのは、邪英化した時だったか」
「邪英化?」
 京子は首をひねった。
「夢落ちだったがね。ただ皆の輝きを引き出す為の試練として在れたのは彼女の本懐にも等しいだろう?」
「ああ、うん、そうかもね」
「まぁ、やりすぎたが、後悔はしていない。反省もしていない」
 京子はは思わず苦笑いした、参加者には悪いがナラカらしい。
「何故ならあの程度の困難を越えられないようではこの先、人類に未来はない、って?」
 京子はナラカの考えていること代弁する。
「その通り、京子もだんだんわかってきたじゃないか。ちなみに京子は……」
「私はあとは、ほら、ビックボーナスステージに関するあれ」
「…………負けられない戦いになりましたね」
「うん。それにわたしたちが引き金を引いた部分もある気がするんだ。最後まで責任持って見届けなきゃ」
「少し面白そうじゃないか、決めた、次の回には参加しよう」
 そう不敵に微笑むナラカ。 

● 妖精はミカンを好む
 『アイリス(aa0124hero001)』は羽をパタパタさせながらテーブルについていた。位置としては遊夜の隣ユフォアリーヤの前。
 四人は取り留めもない話をしながら黙々とみかんを食べていた。
 そんな一同の前にふらふらの『イリス・レイバルド(aa0124)』が現れる。
「おねーちゃーん」
「ははは、知らない仲でもないのだから」
 そう言って笑うアイリス、そんなアイリスのもとへ走ろうとしたイリスを持ち上げて自分の膝の上に座らせる遙華。
「あの…………」
「あ、ごめんなさい、一度やってみたくて」
「椅子もないしね」
 アイリスが告げるとイリスは大人しくご飯を食べ始めた。
「そう言えばイリスたちと本格的に仕事をするようになったのは今年ね」
「ルネさんの件が今年初めての依頼だっけ?」
 イリスは告げた
「ああ、そんな具合だったか」
「あれからいろいろと関わっていったよね」
「出会いもあれば別れもあるというやつだね」
「…………決着をつけるべき敵もできた」
「来年こそはガデンツァを倒したいものね」
 遙華がそう告げる。
「俺達はゾンビの一件と決着をつけたいが」
 そう遊夜は言った。
「麻生さんもご一緒でしたが四国で受けた、映画まんまのゾンビ退治の仕事ですか」
 ゾンビという単語に反応した正太郎が、机の前に立った。一緒にミカンの皮をむき始める。
「……ん、今年の振り返り……ゾンビ? ゾンビ以外なにかあった?」
 そう首をかしげるユフォアリーヤ、
「いかんな、色々あったはずなのにゾンビばかりが頭に……」
「……最近の四国、忙しかったから……ね」
 そう微笑むと、ユフォアリーヤは遊夜の手を取って頬に当てた。
「おかげでゾンビ物に出る自信がつきました」
 正太郎が告げる。
「あとは空飛んだり水上走ったり狩りに行ったり温泉行ったり幽霊に会ったりしたが……」
「空を飛ぶ依頼も今年どっと増えたね」
 アイリスがみかんを向いて、イリスに手渡す。
「翼もそこそこ使わせてもらったよね」
 そのみかんをイリスはひたすらに食べていた。
「まぁ、まだ実用化にはいたっていないようだがね」
「空を飛べるようになるとは思ってなかったなー」
「でも愚紳事件の解決のためってことだからよく考えると腹立たしいよね」
「まぁ、イリスの考えならそうなるかな……当たり前に飛べるようになればそういうジレンマはなくなるのだろうけどね」
「可能な限り『利用』することは受け入れた……けど、『娯楽』は受け入れない」
「そう決めたんだから、今後は飛べてもできるだけはしゃがないよ」
「数少ない夢中になれる事なんだから素直に楽しんで欲しいのだがね」
「あれの研究データのおかげで、疑似的に飛行できるアイテムを作れたしね」
 遙華が告げた。
「無駄にはなってないんだね」
 イリスはしみじみとそうつぶやいた。
「ま、でもやっぱり一番はエリザの件だろ。来年の抱負だな、一番におはようという」
「……ん、抱っこしてあげるのは、ボクが先」
 そう両手を腰にあててユフォアリーヤは気合一つ告げた。
「その為にはエリザ担当班もといグロリア社、西大寺さんの手伝いだな」
「ええ、頼りにしてるわ。みんなのこと」
「何でも言ってくれ、多少無茶でもこなしてやろう」
「……ん、おかーさんと、おとーさんは……とても、強いの」
「ボクもです」
 イリスは遙華を振り返って見上げた。
「ありがとう、みんな、来年はもっと戦いが楽になるようなアイテムを作っていくわね。そう言えば他にあったんじゃないの? 遊夜」
 その問いかけには
「……んー、あとは……指輪貰ったり、キスしたり?」 
 指輪をなぞりその指を口に当てるユフォアリーヤ。
「……」
 その口にみかんを突っ込む遊夜。
「……ん、あとは……結婚?」
 やや不服げにみかんを食べきるとユフォアリーヤは告げた。
「あー……聞こえない聞こえない」
「素敵ね、結婚式には呼んでね」
「わるのりだ」
 遊夜はミカンを遙華の口に詰め込んだ。
「家族というと私達もだね」
「家族も増えたよね、ルゥにバルムンク」
 バルムンクとはAI搭載型の件であるが、何の事故かキャラクターが生まれてしまい今ではイリスの友達である。
「クリューとメリーも合わせて7人家族か……大所帯になったものだよ」
「普通だったら不思議に思うのかな?動物や剣が家族って」
「さてね、私達は私達だよ。家族を幸せにするのに種族の差など些細な事さ」
「そう言えば正太郎の来年の抱負は?」
「習い始めたボビナムを上達したいですね」
 話しかけられた驚きで若干むせながら正太郎は告げた。
「あとは身長を伸ばしたいですね」
「ボビナムとは?」
 若干興味があるのかアイリスが問いかける。
「ベトナムの武道で空手に似てますね」
「ほう、見られる日が楽しみだ」

● 暖炉前で

赤々と燃える炎の前にテーブルを持ち出して由利菜は紅茶を飲んでいた。
「ラシルも休んだらいいのに」
「ではお言葉に甘えよう」
 そう向かいの椅子に腰かけるリーヴスラシル。
「今年は大変でしたね。アル=イスカンダリーヤの戦いでしょうか。仲間のエージェントの方を助ける為に異世界に向かったり、第二英雄と出会うきっかけになったり……」
「……私個人としては、ユリナの大規模作戦における受勲が記憶に残っている。成長した姫を私は誇りに思う」
「みなさんは今年どうでしたか?」
 そう由利菜が問いかけると、トランプで遊んでいた蛍丸や由香里が反応した。
「今年は…………」
 蛍丸が考えている間に由香里が答えた。
「印象に残った事件といえば半年以上かけて戦った九尾の狐戦。蛍丸と出合ったり、決戦において死に掛けたのもあるし」
「まぁ、同族だったしのう」
 飯綱比売命が告げる。
「ふん、復活するのであれば手向けの花なぞやらなければよかったのう」
「それは失敗でしたね」
「失敗と言えば月鏡さんは?」
 由利菜は尋ねた。
「ラシルやリディスのマナを確保したくて依頼を多く受けすぎ、秋の一時期PTSDが再発して依頼参加やコミュニケーションに支障をきたしてしまったことですね……」
「今はリディスの体調管理の協力もあって収まってきたが……無理はしないでくれ」
 その時、蛍丸のカップを置く音がやけに耳に響いた。全員が蛍丸を見つめる。
「僕は印象に残ったのは、忘れられないのは彼方さんの件です」
「ぼくは救えませんでした、彼女の本当の笑顔が見れたのに、僕は」
「それにヴィランの迎撃任務では多くの命が失われてしまいました。僕が強ければ、こんなことには」
 由香里は震える蛍丸の手を取った。
「お主が、最近笑わぬのは、そのような理由だったんじゃな」
 飯綱比売命が告げる。
「僕はずっとみんなの笑顔のために戦ってきまして、でもその裏では悲しませてしまった人もいて。来年こそはすべての人の笑顔を」
「それは、な……常について回る問題だ」
 リーヴスラシルが告げた。
「我々は誰もを守らなければならない、その実誰もを守るというのは、とても難しい」
「そうですよね。はは……なんだか暗い話が続いてしまって、ごめんなさい。嬉しかったこともありますよ」
「それは見たい人の笑顔が見られたことです」 
 そう言ってほほ笑む蛍丸、赤くなる由香里。混乱する由利菜、なるほどと納得するリーヴスラシル。
 総じて沈黙が場を満たした。
「失敗といえば、やはり同士討ちの件が」
 あわてて話題を変える飯綱比売命。
「あっ……あの頃は! あの頃はまだ未熟だったのよ! だって親からの期待に応える事だけが全てで、でも]
由香里があわてて取り繕った。
「友人や蛍丸が助けに来てくれたから嬉しかったんじゃろ? 敵視して斬り掛かっても受け止めてくれて」
「……そうよ。あれがあったから、私は自分を見つめ直す事ができた。感謝してる」
 そう視線を蛍丸へ。
「ら、来年は遙華の依頼に入れなかったから、たくさん入りたいわね」
「え? 呼んだ?」
 その言葉に反応する遙華、蛍丸と由香里がびくりと背を震わせたところで。
「鍋ができましたよ!」
 アリッサに救われた由香里であった。

● 鍋を囲って
 アリッサが鍋を持ってくることによって暖炉の前に集まる一行。
「みんな何の話をしてたの?」
 京子が尋ねた。
「今年一年いろいろあったって話かな」
 アイリスが答える。
「ふふーふ、凛道達が来たこと自体が一番覚えてる事件だよね」
 そう楽しげに笑うリュカに征四郎は箸を握らせた。
「失敗と言えば?」
 それには凛道が答えた。
「失敗……はっ、この前ですが、ユエさんのお化粧が上手だと褒めたらハイヒールで強く踏まれました。あれは言い方が失敗したんでしょうか」
「化粧が上手だということは、本来化粧から伝わってはならぬのである。貴様はなんにもわかってないであるな…………!」
 ユエリャンはそう睨んだ。
「ユエはどうだったんだい?」
「我輩の世界は小さな部屋と大きな窓、そこから見える景色だけであった」
「リライヴァーになってからは幾分健康になったし、新鮮な経験ばかりしておるよ」
「特に食の経験は貴重だな」
 鍋を啜るユエリャン。
「いい味だ」
「ありがとうございます」
 アリッサがそう微笑んだ。
「この間記名の確認を怠り、そこの眼鏡置きの冷凍ピザを食べてしまったのが失敗であるな」
「ピザ?」
 あれはなぁと、言いたげな表情で征四郎とリュカはなべを啜る。
「あとは今年の抱負?」
「そうだな……ユリナの通う学園の正式な教師になったから、目標は達成したか」
「私の夢は異界の学者……でも、今年で達成できる目標ではないですね」
「総合してだけど、今年もお兄さんたちは頑張りましたーっ。ねっ、一緒に頑張ったもんね! せーちゃんっ」
「頑張りました、ね! リュカ」
「あなた達は覚えていないかもしれないけど、征四郎とリュカが助けた女の子が今、笑ってアイドル活動をしているわ」
「アイドル活動?」
 二人は首をひねる。
「ほら、36時間テレビで」
「テレビで? 最後に出てきた子が、昔あなた達の助けた」
「盛り上がってねぇ。36時間TVは」
 ブッと鍋を噴きだすイリス。
「あのときにはお世話になったね」
 アイリスは征四郎とリュカ告げる。
「にしてもあなた達が音楽活動なんて驚いたわ」
 そう告げると征四郎は瞳を閉じた、思い出すように言葉をゆっくり紡いでいく。
「1年前のクリスマス、サンタさんに電子ピアノを貰ったのですよ」
「少しずつ練習して、弾けるようになったんだよね?」
 リュカが嬉しそうに告げる。
「この間36時間テレビで弾いて歌ったのはとても…………緊張しましたが、すごく楽しかったです」
 二人は共鳴し、36時間テレビでデビューを飾った。あの時の興奮は今でも覚えている。
「テレビで見てたアイドルさんと、一緒に歌えたのも嬉しかったなぁ」
「あ、そうだ、遙華さんのブロマイドください」
 手を上げる凛道、遙華がびくりと反射的に凛道から距離を取った。
「説明がたりぬ」
 そうユエリャンが凛道の頭を小突く。どうやら凛道はアイドルのブロマイドを集めているらしく、遙華とイリスの物が欲しいらしかった。
 快くアイリスがイリスのブロマイドを手渡した。
「なんで持ってるの!! お姉ちゃん!!」
「イリスがアイドル活動を始めたのも今年からだったか」
「アイドル、ちがう。お手伝い」
「まぁ、そういうことにしておこう」
「……希望の歌絡みでいっぱい歌ったよね」
「来年も沢山アイドル活動しましょうね」

● グロリア社談義
「ちなみに、お花見やるとしたみんな来るかしら?」
 そう遙華は空のお椀の上に端を置いて告げた。
「ぜひ行きたいです!」
 蛍丸が言った。正太郎も告げる。
「楽しそうですね、予定が合えば行きたいです」
「いくよー! アリッサとリディア、どっちも連れていきたいなあ」
「じゃあ、一枚で三人まで入場できるように、招待状を送るわ」
 そう遙華は京子に告げる。
「お花見! 行きたいなーっ。でもお花見の時期もやたらお仕事(依頼)多いのがちょっとスケジュール的に不安かも」
 リュカが言うと征四郎も同意する。
「みんなで見る桜は、きっと綺麗ですよ」
 由利菜も開催時期が不安なようで簡単には頷けないようだった。
「参加したいですね。でも、開催時期や形式の調整は必要だと思います」
「ああ……入りたい者が他の依頼に縛られて入れない、という事態は避けて欲しいからな」
「おぅ、もちろん行かせて貰うぜ」
「……ん、子供たちも一緒」
「ふふふ、じゃあ、特別に子供たちにも招待状を送りましょう」
「前は結局行けなかったからな……」
「……風邪の子がいた、仕方ない」
 しょんぼり尻尾を振るユフォアリーヤである。
「そういえば、お花見に誘われたんだっけ」
 イリスは思い出したように手を叩く。
「話題に出すというからには、やってくれるんだろうね」
 アイリスもそう告げた。
「人も増えてるんだろうね…………エリザさんって人も来るのかな?」
「頑張るわ」
「由香里は?」
「お花見? 勿論行くわ。前回のお花見で貰った遙華を1日自由にできる券がまだ残ってるから」
「それは社員証よ!!」
「盛り上がってるわね」
 その時、階段を踏み鳴らしてロクトが登場した。上で仕事をしていたらしい。ブランケットを羽織ってメガネだった。
「みんなでお話し? 私も混ぜてくれないかしら」
 そう告げると、正太郎がややずれて席をつくり、アリッサがお椀を差し出した。
「ありがとう。じゃあ、毎年恒例、遙華の印象タイムよ」
「印象タイム?」
 イリスが首をひねる。
「遙華が最初どんな印象だったかって話よ」
「それ聞く必要ある?」
 遙華はあからさまに嫌そうな顔をした。
「初めは冷静で厳格、近寄りがたい印象がありました」
 正太郎が告げる。
「乗るのね……」
「最初は固い感じの人でしたね」
 蛍丸も告げる
「うう」
 遙華は顔を伏せ由香里を見た、機体の眼差しで。
「遙華の印象? そうね、最初は自分に良く似てると思ったかな」
「由香里?」
「規模こそ違えど立場に縛られていたし、心に壁がありそうだし。今は随分と変わったわね。お互いに」
「今は可愛らしいお嬢さんで運動嫌いを直したらなお良いと答える」
「今はこうやって気さくに話せていますから、問題はないと思います」
「う、うん、ありがとう」
「僕も、最初は冷たい人だと思ってました」
 蛍丸が言う。
「でも今はこうして友人と話、楽しそうにしている遙華さんを見てて嬉しいです」

● 年越しそばを食べながら。

 年越しまであと三十分程度。その時計を見あげたロクトが告げる。
「来年の抱負を立てましょう」 
 すると、遊夜が手を挙げた。
「ま、そこそこ稼げたし装備の更新も出来たからな」
「……ん、ボク達に、当てれないものは、ないの」
「あと欲しいのは……ゴーグルと角かな?」
 遊夜が京子を見ると、意地悪く笑っていた。
「交渉中だからな、上手く行くといいが……」
「……ん、だねぇ」
 そうユフォアリーヤが告げると隣に座る正太郎を見た
「やはり、特撮ヒーロー番組は出たいですね特オタとしては」
「特オタだったのね」
 遙華が呆れてつぶやいた。
「仕事はわかりやすいよね。ドーラと武力王関連の一切に決着を着けること!」
 京子が元気よく手を当ててそう答えた。
「ええ。魔女さんをはじめ、頼りがいのある仲間たちと関わっていますから、きっとできるでしょう」
 アリッサがしみじみとつぶやいた。
「あとは偉くなるキッカケを掴むことかな」
「それは諦めていないんですね」
「あはは、だいぶ先の予定だけど、ね」
「カゲリさんは?」
 京子が尋ねる
「俺は変わらない、妹をこの世界に近づけさせない」
 そして守る。
 その言葉を口にしなかったのは、それが魂に刻み込まれた、生きる意味にも似た目標。
「ただ……」
 しかしそれ以外にも何かあるらしい、カゲリの生きる意味、絶対にそうしようと決意したこと。
 だがカゲリの言葉は一行の言葉にかき消される。
 だから自分の胸にだけその言葉をきざみつけた。
 もしその時に鉢合わせる事が出来たなら、己はその為に剣を執ろうと。
「私はそうだな」
 そんなカゲリのかわりにナラカが答える。
「皆の、仲間の輝きを近くで見て、更なる輝きを見たいと言う想いが胸にはある」
「いつものカゲリさんらしいね」
 そして隣に座る凛道へバトンタッチ。
「抱負、ですか。……夢や目的、という意味なら、特には設定していなかったです。必要なら、次の年の分は考えておきたい、です」
 そう告げるとみなと同じように隣に座る人、つまり由利菜へと視線を送る、由利菜の番である。
「私は……学業とバイトをしながらエージェント業を続けたいと思います。ラシルは?」
「教師としての目標は、ユリナが将来の夢の勉強に集中しやすい環境を作ることと、リディスをテール・プロミーズ学園に入学させることだな」
「彼女と一緒なら、学園生活ももっと賑やかになりそうですね。……でも、こちらに来て間もないのに勉強は大丈夫でしょうか?」
「ああ見えて学業への順応は早い。……彼女も前世の記憶が残っているのだろう」
「ふふふ」
 そんな一同の話を聞いていると由香里が小さく笑ったのが聞こえた。遙華は視線を向ける、すると由香里ははにかんでこう告げる。
「来年も厳しい戦いが続くだろうけれど、また大切な人……人達と、こうのんびりと1年を振り返れるようにしたい。それが抱負かしらね 」
「そう言えば由香里さん」
 そんな由香里にロクトは嫌らしい視線を向ける。 
 遙華は一瞬で理解した。これはロクトが面白いものを見つけた目だった。


● 今年もよろしく
「最近、どうかしら、その恋愛的な意味で」
 一瞬で由香里の頬が赤く染まった。
「語っちゃおうよ! 何々? 恋バナ? 恋バナ言っちゃう?」
 リュカのテンションが上がった。征四郎もその様子を見て同じように手を上にあげた。
「俺もご縁は欲しいですね、女性にもてるタイプではないので」
 正太郎がそう告げると、遙華が必死にその話に食らいついていく。
「だったら、この中ではだれがいいの? 由利菜さんなんてすごく美人じゃない?」
 そう遙華は由利菜を指さした。
「い! いえそんな」
 真っ赤になって顔を伏せる由利菜。
「わ、私、一緒にいてもつまらない女ですよ。異性の恋人なんてできるんでしょうか……?」
「……私は側にいてそうは思わない。そろそろ考えてもいい頃ではないか?」
「ぜ、善処します……」
 そう話す元気を失ってしまった由利菜をよそに遙華は別の人間を指さす。
「京子さんとか」
「んー、まだいいかな……。わたしが惚れるくらい、いい人がいたら別だけど!」
 京子はそう告げる。
「京子の本質を知ってなおひかない相手だといいですね。……いるんでしょうか」
「アタックしないとわからないじゃない? ま、仮定の話だけどね」
「蛍丸さんは、ライトノベルの主人公みたいですよね」
 コーヒーを吹きだす蛍丸。テンションが上がるリュカ。
 そして青ざめる由香里。
「蛍丸は沢山の女性を引き付けますが、結局誰にするか決めたんですか?」
 沈黙する一同、にやにや笑うロクト、たまらず遙華が口を開いた。
「え? そこくっついたんじゃないの?」
 顔を見合わせる蛍丸と由香里。
「知ってたんですか!」
「さすがにこの雰囲気でわからなければ病気よ」
 今までの苦労はなんだったのか、そうため息をつく由香里と蛍丸であった。
 そんな一行の前にケーキの乗った皿を差し出す遊夜。
「ガキどもと作ったお菓子だ。夜食にどうだ?」
「……ん、自信作、だって」
 そう囁くユフォアリーヤ、次いで大時計の針が十二時を打った。
 全員がボーンと時をうつ音を聞き、それが収まって、そして全員で新年のあいさつを告げたのだ。 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 敏腕スカウトマン
    雪ノ下・正太郎aa0297
    人間|16才|男性|攻撃



  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中



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