本部

日本の冬

紅玉

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/12/24 21:05

掲示板

オープニング

●日本の冬
 白い庭園、木造の平屋、そして熱々の鍋を中心とした和食。
 しんしんと降る雪を眺めながら、熱々の鍋を小皿に取り分けて息を吹き熱を冷まさす。
 それは冬ならではの贅沢であり、鍋を一番美味しくいただける時期だ。
 と、圓 冥人は語る。
「まぁ、それが日本式の贅沢なのですわね」
 ティリア・マーティスは、パチンと両手を合わせサファイアの様な瞳を輝かせる。
「毎年、行ってる……あの旅館?」
 弩 静華は目を閉じる。
「教えなさい。冥人ちゃん、今年の慰安旅行先にします」
「おいおい、確かに旅館の女将とは同級生だから話は通るけど、部屋が空いているかは分からないよ?」
 トリス・ファタ・モルガナは冥人に穴が空きそうな位に凝視する。
「スキー、お城巡り、旅館でお鍋、皆で露天風呂、女子会はポロリもあるよ?」
 静華は指折り数えながら言う。
「今、戦いで大変なエージェントの皆さんを癒すため」
「いざ! 日本で慰安旅行ですわね!」
 ティリアはビシッと世界地図の日本を指で示す。
「と、いう事で既にパンプレットは制作済みです。後は、参加するエージェントを集めるだけです」
「マジかよ……後は場所を決めるだけで完成するまで完成しているの、ね」
 いつもの様にパンプレットを既に制作していたトリスは、冥人から旅館名と観光地を聞き出してHOPEに申請をした。

●いざ慰安旅行へ!
「いつも皆さん、お疲れ様です。そんな、疲れてる皆さんに、HOPEから慰安旅行をプレゼントです」
 本部のロビーでトリスがパンプレットを掲げる。
「冬の日本で観光、老舗旅館でお泊まりして温泉で日頃の疲れを取ってもらう内容となっております。参加希望の方は用紙に名前を記入して下さい」
 と、声を上げるトリスはアナタに参加希望用紙を差し出した。

解説

●目的
慰安旅行を楽しむ!

●NPC
誘えば一緒に行動してくれます。
・ティリア:スキーは初心者。迷子になりやすい
・トリス:スキーは出来ない。地図さえあれば大丈夫
・冥人:スキーは出来る。何度も来ているので慣れています。
・静華:スキーは出来る。美味しいお店を知っています。
・双子:呼べば連れだせれます。

●場所
長野県A市

●観光
※1人1ヶ所を選んで下さい
・スキー
・お城巡り
・日本酒の倉見学

●旅館
料理は、お鍋を中心とした和食です。
露天風呂(男女別)
夜の行動(女子会等)

リプレイ

●いざ、慰安旅行へ!(城巡り編)
 長野県といえば有名なのは松本城だ。
 エージェント達の先頭には『エージェント御一行』と書かれた旗を持っている弩 静華。
「なんじゃ守矢の奴! 慰安旅行くらい別行動したいなどと言いおってぇ……。ふーん! 私は城巡りに行く者達と一緒に夜の女子会? とやらの食料(お菓子)を補給に向かうのじゃ!」
 と、地団駄を踏んでいるのはD・D(aa4755hero001)だ。
「女子会? よくわからないけど、楽しみなの」
 泉 杏樹(aa0045)は一緒に行動している友人達と話しながら言う。
「美味しいお菓子を買って、夜にまりあと一緒に食べたいなーって。おにーさん、おねーさん達、よろしくお願いします☆」
 と、明るく挨拶するのは一ノ瀬  雪那(aa1667hero002)だ。
「バルトさんと一緒じゃなきゃいやー!」
「そんなんで俺いない依頼どうすんだよ」
 セレティア(aa1695)はバルトロメイ(aa1695hero001)の服をギュッと掴み首をぶんぶんと横に振る。
「私達よりも、もっと休息が必要なベテランに席を譲るべきではないの?」
「ううん、僕も最初はそう思ったんだけど……」
 Jennifer(aa4756hero001)の問いに小宮 雅春(aa4756)は途中で言葉を濁す。
 英雄の言葉を聞いて言えなくなった雅春は、キュッと唇を噛んで俯く。
「Jennifer君、責めない。皆、等しく」
 そんな2人を見て静華は首を傾げた。
「しかし……」
「戦うより、思い出、必要」
 困惑した表情のJenniferを見上げると、静華はコツンと旗の棒で頭を軽く叩いた。
「気にしないで弩さん」
「うん、元から気にしてない。ほら、行く」
 雅春の言葉に無表情のまま答える静華。
「何故妾が旅行など……」
 スマホ片手に神鳥 紅梅(aa3146)がぼやく。
「温泉っ温泉♪楽しみだなぁ。えーいいじゃんいいじゃん!」
 アルブレヒト・シャノワール(aa3146hero002)が無邪気な笑顔で言う。
「そんなに行きたければリンと来れば良かったろう」
「引きこもりを外に出すのもボク等の仕事だからね」
 と、答えるアルブレヒトに紅梅は小さくため息を吐く。
「余計なお世話すぎる」
 カチカチとスマホでゲームをしながら会話する光景は母と娘の様だ。
「観光はどうしようかな~紅梅が如何にもアウトドア~なのとかする訳ないし、お城巡りとかいいかも? よーし! 行こ行こ!」
「妾は旅館で引きこもっ……おいっ何をする引き摺るな!」
 旅館の方向へ踵を返す紅梅の首根っこをガシッと掴み、アルブレヒトはお城巡りする仲間の元へと向かった。

「ほわー、お城の周りに池があるの!」
 杏樹が水堀を覗くと大きな鯉がゆらゆらと泳いでいる。
「忍者に、侵入されないように、ネズミ返し、蓋を開けて大石を落とす」
 静華が石垣の上に建っている城の底に近い部分を指す。
「って、忍者が本当にそんな事が出来るのに驚きです」
 雅春はスマホでお城の情報を調べながら驚きの声を上げる。
「妾は日本の城より欧州の豪邸に住みたいわ」
 と、言いながらスマホでゲームに夢中の紅梅。
「こういう和風のお城っていいよねぇ。もーまたソシャゲ? 好きだよねぇ本当」
 城を見上げながらアルブレヒトはチラッと、隣にいる紅梅を見て肩を竦ませた。
「お腹空いた、お店、行こう?」
 と、お腹の虫を鳴らしながら静華は木造のお店が立ち並んでいる場所の指す。
「まって、お城の写真撮っておきたいよ」
 雪那はスマホで何枚か写真を撮ると仲間の元へと駆け出した。
「五平餅、丸ごとりんごパイ! と……唐辛子マカロンは実在したのですね!」
 セレティアは目を輝かせながら次々と購入する。
「セレティアさん、それが、長野の名物です? 物知りですね……すごいの」
 杏樹は感嘆の声を漏らす。
「なんなら、山葵フィナンシェ、あるよ?」
「じ、地雷を踏みそうなお菓子……(蜂の子とざざ虫は買わないので試すのも手ですが……)」
 静華が持ってきたお菓子を見て悩むセレティアは、飲み会用の馬刺しと山葵漬けをかごに入れる。
「あ、これ美味しそう……」
 雪那はくるみそばを試食する。
「資金もたっぷりとあるしのぅ、くふふ♪」
 能力者の財布を手にDはお菓子を大量に買い込む。
「食べれなくもないですね。思ったより山葵の主張が控えめで美味しいです」
 と、山葵フィナンシェを口にした雅春は微笑む。
「ね?」
「試しに、です!」
 セレティアは目に付いたお菓子もカゴに入れてレジへと向かった。
「これで、足りる……です?」
 会計を済ませようとするセレティアの横から杏樹はスッと万札を出す。
「おつりがくる位です!」
 セレティアは目を丸くして口元に手を添える。
 お城巡りというより、お土産巡り状態になり皆でおやきを食べたりして楽しんだ。

●レッツ、慰安旅行!(スキー編)
「ふふっ。旅行なんて何時ぶりでしょう? 楽しみですね、ブラッド」
「えぇ。偶の休息を満喫しましょうね、サキ」
 花邑 咲(aa2346)が微笑みながら言うとブラッドリー クォーツ(aa2346hero001)も楽しそうに答える。
「圓さん、初めまして。オレはブラッドリー クォーツです。こっちは能力者の花邑 咲」
「ん? あぁ、初めまして。圓家の剣術師範をしている冥人です」
 ブラッドリーは資料に目を通している圓 冥人に声を掛ける。
「お願いがありまして、スキーを教えて頂けないでしょうか?」
「そういう事なら、良いよ」
 ブラッドリーのお願いに冥人は快く承諾した。
「あ、俺も! 冥人さん教えて下さい」
「はいよ」
 守矢 一道(aa4755)の言葉に冥人は笑いながら返事をする。

 眩しい、ゲレンデが太陽の光を浴びてキラキラと眩しい位に輝いている。
「颯佐お兄ちゃんっ! スキーです、スキーですっ!」
 スキーウェアに身を包んだ新爲(aa4496hero002)は声を上げる。
「ああ。……はしゃぎ過ぎて転ばないように」
 黒鳶 颯佐(aa4496)ははしゃぐ新爲を眺める。
 2人はゴンドラに乗り上級者コースへ。
「颯佐お兄ちゃんっちゃんと見ていてくれていますかー?」
 下の人が見えない位に高い場所で新爲は振り返ると手を振る。
「……ああ」
 颯佐は英雄の言葉に小さく頷いた。
 慣れた動作で新爲は雪の上を滑り出すと、地面の雪を宙に舞いあげながら冷たい風を切って滑り下りる。

「んじゃ、基礎的な事から説明するね」
 冥人はスキー板を手に咲、ブラッドリー、一道の3人に説明を始める。
「わたしにもできますか?」
「うん、最初は板の説明と歩く練習から始めるからなんとかなるよ」
 咲の問いに冥人は明るく答える。
「まず、靴裏の雪を取って、ストックを雪に突き立ててからすると楽かもね」
「ふんふん、こうして……こうですか?」
 一道は片足だけブーツを板に付ける。
「サキ、大丈夫?」
 ブラッドリーは心配そうに咲を見つめる。
「はい、まだ片足だけなので」
 英雄の言葉に咲は笑顔で答える。
「で、外すときはストックの先を踵の後ろにある部分をグッと押すだけ」
「へー、こうなっているんですね」
 カチャ、と軽い音を立て板からブーツが離れるのを見て一道は付け外しを繰り返す。
「それじゃ、両足に板を付けて軽く練習をするよ」
 と、冥人が言うと3人は両足に板を装着した。
 板での移動、歩き方、リフトの乗り降りの説明を一通り受けると次は実践だ。
「よーし、行きます!」
 初心者コースの頂上から滑り下りる一道は、順調に滑っているかと思えば前に居る人を避けるために慌てて曲がる。
「って、おわわわわっ!」
 曲がった先にも人、慌てて曲がろうにも初心者なので横に倒れるとごろごろと斜面を転がり落ちる一道。
「……あら?」
 咲はスキーの止め方が分からずそのまま真っ直ぐ止まらずに進む。
「やれやれ」
 一道を助けた冥人は、肩を竦ませながら咲の方へと向かう。
「あぁ、結構スピードが出るんですね……」
 コツを掴みつつあるブラッドリーは滑り終えると感想を述べる。
「うん、でも後ろに重心を置いたり、ストックでスピードを出さなければ大丈夫だよ」
「もう一回!」
 雪塗れの一道は両腕を上げながら言う。
「ブラッドリーは大丈夫そうだし、一道は打たれ強い……心配なら、咲と俺が一緒に滑ろうか?」
「はい、心配なのでお願いします」
 冥人の言葉にブラッドリーは頷くと咲に視線を向けた。
「ふふっ。慣れてくると、楽しいものですね」
 冥人に手を引かれながらゆっくりと滑る咲は、隣で滑っているブラッドリーに手を振る。
「あ、花邑さん楽しいですか?」
「はい、守矢さんは上手に滑れて羨ましいです」
 恐る恐るだが滑れる一道に咲は微笑んだ。

「圓さん、今日はありがとうございました」
 咲がぺこりと冥人にお辞儀をする。
「どーいたしまして」
「夜に飲み会があるんですが、よろしければ、圓さんも一緒にいかがですか?」
 と、ブラッドリーが冥人を誘う。
「良いよ。確か、酒蔵見学にいっている人もいるから楽しみだね」
「俺も参加します」
 相変わらず雪塗れの一道は元気よく言う。
「お腹空きました。料理が楽しみですね」
「どんな鍋か楽しみですね、サキ」
 オレンジ色に染まるゲレンデを眺めながらスキー組は旅館へと向かった。

●楽しい慰安旅行(酒蔵見学編)
 古めかしい木造の蔵の中を案内されているエージェント達。
(バルトから噂に聞いてたが、ティリアさん……良い女だな。上品だけど色っぽい感じがぐっとくる。これを機会に仲良くなりたいぜ)
 普段は結い上げている髪を下し、メガネを外し私服姿のティリア・マーティスを眺める榊 守(aa0045hero001)。
「あらら?」
「ティリアさん、大丈夫か?」
 躓きそうになったティリアの腰に腕を回し助ける守は笑顔で言う。
「はい、榊様。助けて頂きありがとうございますわ」
 テxリアは守に恭しく一礼をすると明後日の方向に歩き出す。
「ティリアさんそっちは反対です」
 眺めていたバルトロメイは慌ててティリアの前に立つ。
「あら~? ココ広いので迷いますわね」
 広いというより、木樽が沢山置いてあり薄暗いので迷路に近い。
「あ、あの、皆さん大丈夫でしょうか?」
 見学ルートから外れた3人を偶然見かけた桜乃まりあ(aa1667)が心配そうに言う。
「まったく、ティリアは……」
 その隣でトリス・ファタ・モルガナが呆れた声色で言う。
「大丈夫ですかー?」
 案内をしてくれていた女性がエージェント達の様子に気が付いて声を掛ける。
「さ、足元に気を付けてな?」
 守はティリアの手を取り元の通路まで案内をする。
「作っている日本酒を試しに飲ませていただけるそうです」
 お酒は二十歳を過ぎて数年経つが、ワインや果実酒しか飲んだことが無いまりあは日本酒は初めてだ。
「どういう酒が好みだ?」
 ティリアが迷子にならない様にしながら守は問う。
「そうですわね。甘すぎないモノが好きですわ」
 楽しそうに話す二人の後ろでバルトロメイはただ眺めるしか出来ない。
(俺も榊の様に女性の扱いができれば……)
 と、心の中で思いつつもセレティアから来るメールの類にちゃんと返答するバルトロメイ。
「日本酒は腐りませんが、火落ち菌という乳酸菌が発生したら白く濁り臭くなります。この酒蔵では……」
 酒蔵の歴史、日本酒のあれこれを案内役の女性は分かりやすく説明をする。
「なるほど、ワインとは違い日本酒は酸っぱくないのはそういう事なのですね」
 ほのかは大きな木樽を見上げ手を当てる。
「日本酒って、儀式的な使い方もされるんです。例えば、神前式では新郎新婦が杯に口をするのとか、地方等によるかもしれませんがお葬式で日本酒を口にしてからするとか色々です」
(白無垢のティリアさん……神秘的だろうが……)
 ふわーと脳内で白無垢姿のティリアを想像したバルトロメイはちょっと悲しくなった。

「実は日本酒はあまり飲んだ事がなくて、良ければ飲みやすくて美味しいものを教えてもらえると嬉しいのだけれど……」
 様々な銘柄の日本酒を見回しながらほのかは仲間に言う。
「まりあは日本酒飲んだ事ないのか? 試飲でも酔うから気をつけろよ」
 と、言いながら守は日本酒初心者でも飲めそうな銘柄をほのかに勧める。
「これは、良さそうです」
「これも良さそうですわね」
 ほのかとティリアは量は少ないが様々な日本酒の試飲をする。
「あ、トリスさん、ティリアさん。寒いかと思いましてホットコーヒーでも買ってきました」
 日本酒を買い終えたティリア達にバルトロメイなりの気遣いをする。
「ありがとう。バルトロメイちゃんは優しいですね、守ちゃんとは違う意味で」
 と、言ってトリスはバルトロメイに目配せをし、ティリアの脇を肘で突いた。
「え? はい、バルトロメイ様はお優しい方ですわ」
 眩しい位の笑顔で褒めるティリアを見てバルトロメイは、心の中で天にも昇るくらい嬉しさで満ち溢れる。
「羨ましいことだ」
「榊さんも優しいです」
 ぼやく守を見てほのかは笑いながら言う。

●美味しい慰安旅行!(鍋編)
 宴会用の広い和室を一部屋に能力者と英雄が約20名が楽しそうに談笑している。
 そんな中、鍋奉行バルトロメイが2つの鍋を真剣な眼差しで灰汁を取ったりしていた。
「えっと……箸を汚していいのは、箸先3cm、なの」
 杏樹が手元にある箸を袋から取り出しセレティアに和食マナーに関して説明をする。
「こ、細かいです。これも淑女になる一歩です!」
 セレティアはお膳料理から手に付ける。
「お刺身の醤油は、こう手に持って使うの」
「あ、そうなのですか! テレビとかで、こう掌を添えて口に運んでいるイメージです」
 杏樹が醤油が入った小さな皿を持ち上げ、刺身を醤油に浸し口にそっと運ぶ。
「ティリアさんの魅力は育ちの良さです。あんな風にキレイにお食事が取れるようになりたいです」
 目の前で慣れた動作で和食を食べるティリアを見てセレティアは将来の自分を想像する。
「「はじめてのにほんのごはーん」」
 アキとハルが両手を合わせて子供用の量のお膳料理を食べようとするが、冥人とトリスがそれを阻止すると正しい食べ方を教える。
「紅梅の家も呉服屋さんだからか和食多いけど、旅館のご飯も華やかでいいねっ」
 紅梅を横目にアルブレヒトは器用に好きなモノだけを口にパクパクと運ぶ。
「紅梅の器に鍋の野菜入れとくね!」
 アルブレヒトがお玉で鍋の具を深めの小皿に入れる。
「……おい、妾の器は野菜だらけなんだが……?」
 ドン、と紅梅の目の前に置かれた小皿の上には野菜が山盛り。
「お肉とお魚はボクが食べてあげるよ」
 と、言ってアルブレヒトの小皿には器用に魚の切り身だけが。
「肉と! 魚を! 寄越せ馬鹿者!」
 怒声と共に紅梅はアルブレヒトの小皿から魚の切り身を奪う。
「肉食えよ、筋肉つかねーぞ」
 バルトロメイは男性陣の皿に鍋の肉を盛る。
「バルト……俺は酒のつまみに少しあればいいって。それ以上筋肉付けてどうすんだ」
 守は日本酒が入ったコップを片手にバルトロメイの肉攻めを見てため息を吐く。
「やけ食いですよ!」
 一道が涙目になりながら料理を口に運ぶ。
 原因はDが両手一杯にお菓子を買ってきたかと思えば、ポイッと半ば捨てる様に渡されたサイフの中身は羽が生えたように軽くなって帰ってきたからだ。
「あちこち歩いて疲れちゃったわ。お人形だもの」
 笑顔で食べる仲間を眺めながらJenniferは小さく呟いた。
「あ、食べ終わったら一緒にお風呂に入りましょう」
 セレティアが女性陣に提案をする。
「良いですね! 運動した後なので丁度いいです」
 新爲が笑顔で答える。

●温泉
 露天風呂は雪に囲まれており、月の光やオレンジ色の街灯で輝く光景は幻想的だ。
「ふぃー……良い湯だ」
 一道は温泉に浸かり、湯に体が包まれる感覚は何処か落ち着く。
「やっぱり、冬の夜空は綺麗ですねぇ」
「そうですね。それに星もよく見える」
 露天風呂の仕切りを背にして咲とブラッドリーは空を見上げながら話す。
 冬の澄んだ空気で、いつもよりも星が見えるので小さな星もいつもより輝いて見えた。
「ランカーは辛いな」
 防水加工して露天風呂の中にもスマホを持ち込む紅梅。
「まぁ、お風呂の中でもゲームだなんて没頭出来る趣味があって良いですわ」
 と、紅梅の後ろからティリアが覗き込む。
「うむ、これが生きがいだからな」
 紅梅は胸を張るが、ぷかぷかと露天風呂に浮くティリアの胸から視線を逸らす。
「わ、私だっていつかはっ!」
 セレティアは自分の胸に手を当てつつ首を横に振る。
「混浴じゃないのがちょっと残念……いや、期待してたわけじゃないですよ」
 一道が本音をポロリするが、仲間に聞こえる様に言葉を付け加える。
「あれー? ティリア姐のポロリを見たのはどこの誰だったかなー?」
 と、ワザと大声で冥人が言う。
「お酒の場で詳しく聞かせてもらおうか」
 一道の前にぬっと現れたのはバルトロメイだ。
「ちょ、ちょっと! 冥人さん! 誤解を招く様な事を言わないでください!」
「俺は嘘つかないよー」
 慌てる一道を面白そうに見ながら冥人は言う。
「わー、おねえさんのおおきーい!」
「きゃっ!」
 女風呂から聞こえる会話に耳を立てる一部の男性。
「さ、触らせてください! ……柔らかい!」
 まぁ、想像は掻き立てられてしまうもので……煩悩を払うかの様にエージェント達はそそくさとお風呂から出る。

●飲めや! 食えや!
「颯佐くんも一緒にお喋りしませんかー?」
 部屋に戻って来た新爲は声を掛ける。
「俺はいい。お前も、あまり遅くまで話し込まないようにな」
「はいっ!」
 颯佐が小さく首を振ると新爲は笑顔で部屋を出て行った。

「女子会? ……何をするのかな?」
 一番広い部屋にちょこんと座っている杏樹は小さく首を傾げた。
「まりあ、まりあ、美味しいお菓子を買ってきたから一緒に食べようね?」
「まぁ……それは楽しみね。雪那、ありがとう」
 雪那はドサッと大きな袋をまりあの前に置く。
「ハルさんはおけがはだいじょうぶですか? ズタズタのボコボコにされたって聞いてますけど」
「うん、へーき。みんながてあてしてくれたからすぐになおりました」
 セレティアがハルを心配そうに見つめるが、ハル自身は全然気にしてない様子で答える。
「おぉー! 広いのじゃ! 大きいのじゃ! お菓子が沢山じゃ!!」
 青藍の様な瞳を輝かせながらDは嬉しそうに声を上げる。
「お菓子、食べながら、どんな話し、する……です? わからないから、おべんきょ、なの」
「わーい! おかしー! おいしくたべましょう?」
 そんな杏樹を見てハルが手を取って笑顔で言う。
「りんごパイは切り分けますね」
 セレティアは自分が買ってきたりんごを丸ごとパイに包んで焼いたモノを切り分ける。
「あ、中にカステラが入っているんですかー。美味しいです!」
 新爲はりんごパイを頬張る。
「お昼は雪那がお世話になったみたいでありがとうございました。ご迷惑をかけなかったかしら……?」
「もう、まりあってば。僕何も変な事してないよ」
 仲間に不安げな表情で問うまりあに対して、雪那は頬を赤らめながら首を横に振る。
「大丈夫、ほら、撮ったよね?」
「あ、そうそう! まりあの為にお城の写真を撮ったんだよ」
 雪那はポケットからスマホを取り出し、慣れた手つきで操作をしてお城の写真をまりあに見せる。
「皆さんは何処を回られたんですか?」
「お城巡りという名の買い出しです!」
 咲の問いにセレティアが元気よく答える。
「酒蔵見学です。日本酒の歴史等が知れて楽しかったです」
「私はスキーで、もう意外と体を動かしたので特に足が痛いです」
 お菓子を口にしながら今日の事を話す女性陣は楽しそうだ。
「じゃ、おねーさんたちにあげるっ」
 お菓子の話だと分かったアキは、ポケットからコインチョコを取り出しす。
「うん、ありがとうなの。アキさん」
 杏樹は優しく微笑むとアキからコインチョコを受け取った。
「~♪美味、美味じゃの! 女子会とは良いものじゃ♪」
 Dはお菓子を頬張り女子会=お菓子食べ放題と刷り込まれてしまったのであった。
(本当は颯佐くんも一緒にお話出来れば良かったんですけど……)
 と、思いながら新爲は雪に覆われた庭園に視線を向けた。

(乗り気じゃなかったのかな?)
 飲み会の輪に加わる雅春はJenniferの事を気にしていた。
(浴衣のティリアさん、なんと神々しい……)
 バルトロメイは、温泉で少し赤くなった肌に普段とは違う髪型の浴衣姿のティリアに目を奪われていた。
「私なんか、居てもよろしいのかしら?」
 戸惑いつつも輪に加わるティリア。
「これ昼間好きだって言ってたよな?」
 すっと、守はティリアに日本酒が入ったコップを差し出す。
「はい、そうですわ」
「この酒ならつまみは……」
 山の様にあるおつまみの中から守はお酒に合うのを探す。
「ほら、そちらさんも」
 守はブラッドリーにも日本酒を渡す。
「あぁ、ありがとうございます。このお酒は……?」
「それは、その酒蔵限定の日本酒だね。俺もよく飲んでいるから味は保証するよ」
 ブラッドリーの問いに冥人が既に一本空ける勢いで飲んでいる。
「おいおい、そんなペースで大丈夫なのか?」
「へーき、ザルだからね」
 守の心配するの横目に冥人は手をひらひらを振る。
「……俺の財布が……生活費が……ちくしょう! 飲まずにやってられますかぁ!!」
 と、声を上げながら一道は一升瓶を掴みラッパ飲みする。
「僕だって好きでもやしっ子やってんじゃないの、分かる?」
 お酒が進むにつれ、全員がアルコールに強いわけではないので必ず一人は雅春の様な酔っ払が出てくる。
「見てこの上腕二頭筋? 何これ凄くない? 僕のと全然違くない?」
 ブラッドリーの二の腕と比べる雅春。
「ほら、水でも飲んで落ち着け」
 守が雅春のコップに白湯を注ぐ。
「ありがと、う……ぐぅ……」
 白湯を一気に飲むと雅春はその場で倒れスヤスヤと寝息を立て始めた。
「はい、榊様、バルトロメイ様。私はこんな事しか出来ませんわ。お役に立てているでしょうかしら?」
「役に立つ立たないは別として、お酌してくれるだけでも嬉しいです」
 女神だ、とバルトロメイは思いながらも大人の色気や、ティリアから感じる気品に目を奪われていた。
 その背後からトリスが、ロシアの極寒よりも冷たい視線を大きな背中に突き刺さる。
「馬鹿か! 僕だけ盛り上がってどうする!」
 唐突に声を上げ両頬を叩くと雅春は立ち上がる。
「ぼくはもうねます!!」
 と、言って雅春は足早に割り当てられた部屋へと向かった。

 バタン、とドアが開く音と共に人が倒れた。
「…なんなんだ? この男は。こんなところでまで態々醜態を晒して」
 呆れた声色で言うとJenniferは、雅春を部屋に敷かれた布団に運び介抱をする。
(何故『ジェニー』とやらに固執する? それも知るのもまた一興、か。ふふふ、当分退屈せずに済みそうだ)
 Jenniferは口元を緩め寝息を立てている雅春を見つめる。
「ん、あれ? いつのまに……?」
 目が覚めた雅春は頭を抱えながら軽く首を振った。
「あ……。ごめんね……一人で空回ってたみたいだ」
 少しふらつく頭を上げ、雅春はJenniferを見上げるとそっと手を重ねる。
「いいえ、とても楽しかったわ。ありがとう」
 Jenniferは小さく微笑むと首を横に振り、雅春の腕に抱き着いた。
 窓の外には雪がしんしんと降り始め、宴会場で飲み会や女子会モドキをしているエージェント達の声が遠くから響いてくる。
 今だけ、時間が遅くなれば良いのにと思いながら雅春はJenniferの頭を優しく撫でた。
 冬の日本も悪くない、と思いながら明日になればエージェントとしての仕事が待っている。
 だけども今は、この時だけは普通の人として楽しみたいから時よ、出来るならば今の時をどうかゆっくりと進んで欲しいと誰もが願った。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • 花の妖精
    桜乃まりあaa1667
    人間|23才|女性|生命
  • エージェント
    一ノ瀬  雪那aa1667hero002
    英雄|12才|男性|ドレ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 筋金入りの引き籠り
    神鳥 紅梅aa3146
    獣人|20才|女性|攻撃
  • 世話焼き英雄
    アルブレヒト・シャノワールaa3146hero002
    英雄|20才|女性|バト
  • 孤高
    黒鳶 颯佐aa4496
    人間|21才|男性|生命
  • 端境の護り手
    新爲aa4496hero002
    英雄|13才|女性|バト
  • ラッキーな青年
    守矢 一道aa4755
    人間|25才|男性|回避
  • 大食い少女
    D・Daa4755hero001
    英雄|14才|女性|ブレ
  • やさしさの光
    小宮 雅春aa4756
    人間|24才|男性|生命
  • お人形ごっこ
    Jenniferaa4756hero001
    英雄|26才|女性|バト
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