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空に月、冬に花
掲示板
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/12/03 22:11:05 -
相談卓
最終発言2016/12/06 18:27:30 -
質問場所。
最終発言2016/12/04 14:36:06
オープニング
● スキー場には雪だるまがいっぱい
日本国内とある小さなスキー場、そこにはとある伝説があった。
雪女が出るという伝説だ。
「えー。この時代に雪女?」
「時代遅れだよね」
そう楽しげに語る女子高生四人組、四角いゴンドラ型のリフトに乗りながら。スキーストックをもてあそびながら山頂を目指していた。
「たしか、私達と同じくらいの歳なんだっけ?」
「えー、わたし黒髪ロングのお姉さんだって聞いたよ?」
「私、チャイナドレスの人だってきいたよ?」
「えー。この雪山でチャイナドレス?」
「さむそー」
「雪女だから平気なんじゃない?」
「私、和服の小さな女の子ってきいたなぁ」
「うっそだぁ」
そう、女子高生たちが何気ない会話に花を咲かせていると、頂上まであっという間にたどり着いてしまった。
「ついちゃったね」
そう全員が腰を上げ、タイミングを見計らってリフトから滑り降りると。
そこは吹雪の中心だった。
「あれ? こんなにふぶいてたっけ?」
「というよりついさっきまで晴れてたのに」
さすがの異変を感じ取った高校生たち。しかし振り返ったところで帰るためのリフトはその両目に映らなかった。
まるで白い壁が目の前押し付けられているかのような圧迫感、だがそれはありえない、彼女たちはゴンドラから少し離れた程度の位置にしかいなかったはずだから。
「え。なになに、なんで?」
「ねぇ、みて、あれ!」
女子高生の一人が白い闇の中を指さした。
そこには。三人の女性が立っていて。
そして。
「氷の世界へようこそ」
そう吹雪の中で異様に響く声次いで、次いで凍り付いていく女子高生の体。
「きゃああああああ!」
「いやあああああ」
そして悲鳴と共に吹雪が晴れる、すると、山頂に並んでいたのは無数の雪だるま。
「さぁ。次の獲物を待ちましょう、月、花」
そう三人の愚神は頷きあい、山頂の林の中に消えた。
● 討伐部隊編成
この事態が発覚してから三十分でこのスキー場は閉鎖されたH.O.P.E.は素早く愚神の討伐部隊を組織し、ヘリで山頂へと降下させられた。
「うわ、H.O.P.E.だよ…………雪ねぇ」
そう和服の幼女が目を細めて嫌そうな顔で出迎えてくれた。
全身真っ白な少女、彼女こそ愚神三姉妹の末妹。『花』である。
「あら。意外と早かったわね」
そう告げながら現れたのはチャイナ服の女性、彼女がおそらく『雪』なのだろう。
「適当に霊力を集めて逃げるつもりだったのだけど。けどあなた達も来たからには、素直に返してくれるはずないわよね」
そう告げると雪を中心に吹雪が発生し始める。
そして。君たちの背後からまた声。
「今ならあなた達も生きて帰れる」
突如現れたのはセーラー服の少女『月』。
その時、夜空から星と月が消えた。心なしかあたりが一気に暗くなる。
闇が視界を閉ざす。
「私たちはね三人で一つなんだよ、だからみんなに勝ち目なんてないと思うな」
そう、告げる『花』彼女は踊るようにリンカーたちから距離を取る。
遠のけば当然だが闇に包まれ、そして彼女の声だけが響くようになる。
「リンカーのみんなも私たちの養分にしてあげるね、安心して、寒さっていうのはね、じっと耐えてると、ぐえ!」
その時である突如、暗闇が晴れ吹雪がやんだ。
「「花!」」
雪と月が叫ぶ、見れば彼女はリフトに絡め捕られて超高速で麓まで運ばれているではないか。
「あーーーーー」
花の声が山にこだまする。
さっそく分断されてしまった三姉妹。
「花と合流するわ」
そう告げた雪の眼前に立ちはだかる君たち。
戦いの幕が上がる。
●雪月花姉妹
愚神雪月花
一応三体で一体の愚神らしい、性格もバラバラで個性も豊かだが一つの存在。
その証拠に雪月花どれかでもとり逃せば、姉妹全員を蘇生させられる。
それぞれで役割が違い、三人そろうと本来のポテンシャル以上の戦闘力を発揮するので注意。
・雪
愛称雪ねぇ、長女、頭脳担当。この寒いのになぜかチャイナドレス、黒髪ロングにスレンダーな体つき。魅惑の生足。そして裸足。
鉄扇による近接戦闘を得意とするが、本業は姉妹が戦いやすいフィールドを作り出すこと。
単体である程度完成した能力を持つが、びっくり性能に乏しいため、各上の相手に下剋上できないのが悩み。
<コキュートス> 常時
自身を中心に半径200SQを吹雪で閉ざす。寒さに耐性のないキャラクターはターンの終わりに微量のダメージを受け。姉妹の戦闘能力を増加させる。
さらに吹雪内ではPCの命中力、回避力が-150される。
<チャーム> 三回使用可能
麗しき美貌で、男性を虜にする。
意外と雪ねぇしかこのスキルは使えない。
虜になったキャラクターは雪ねぇへ与えるダメージが-70%される。
・月
ぼんやり系次女。あんまり人の話を聞いていないし、突っ立っているだけで反応が薄い。
しかし姉や妹がしてほしいことは雰囲気で感じ取る。
白を基調としたセーラー服を身に纏い、パッと見十六歳程度の少女。メガネをかけている。
緩い三つ編みから、大人しげな印象を受けるが、攻撃は苛烈。
遠距離は魔法攻撃、近距離は射程1~3の太刀で攻撃してくる。
<月欠ける戦場> 常時
光を奪い去る。まったくの暗闇になるわけでは無いが、かなり見えにくくなる。自身を中心に範囲45SQ内の光を吸い込む、愚神側に影響はないが、PCは命中、回避が-300される。
<フロストブラスト>
回数制限のないメインウエポン。言ってしまえばサンダーランス。
直線15SQを対象無差別に攻撃する、大威力の魔法攻撃。攻撃を受けると。体の一部が氷り移動力が-2される、これは温かいところで氷を解かすまで回復しない
・花
小さい、外見年齢12さい、白い和風の着物だが、だぼっとしていて肩が出てる。白い髪の毛、まつ毛まで白く、ふぶいてしまうと保護色になってまったく見えない。
三姉妹の騒がしい担当。つららを生成して打ち出すのが基本戦法。中距離範囲魔法が得意。
<つららららら> 三回使用可能
360度無差別につららを発射する。大変よけにくい。
<冬の怒りを思い知りなさい!> 一回使用可能
自分の前方になだれを作り出す、これに飲み込まれると雪だるま状態となり、仲間に助けてもらわない限り一切の行動ができなくなる。さらにターンの終わりに微量のダメージを受ける。これは割合固定ダメージなので軽減することはできない。
合体攻撃 <雪月花は黄泉こそふさわしい>
三人の霊力を結集して周囲を200SQを凍てつかせる。ダメージはほとんど受けないだろうが、範囲内にいるだけで、確定で雪だるま状態にする。
雪だるま状態は、味方に救出してもらわない限り一切の行動を起こせず、ターンの終わりに微量のダメージを受ける。
三人が隣接するマスにいなければ使用できない。
解説
目標 愚神三姉妹の撃破。
戦闘フィールド
状況は途轍もなくシンプルですが、戦闘フィールドが広大です。
標高五十メートル程度の人工的な山は二本のスキーコースに分かれています。スキーコースを吐けているのは樹の密集地帯、大型の武器をしまえば問題なく通れるでしょう。
山頂までは暴走したリフトに乗ればいけます、このリフト現在はリミッターを解除してあるので、最大時速80kmまで出ます。
また、このスキーコース激しく滑りますので注意が必要です。
このリフトは山頂と麓にある管理小屋で、停止から速度調整までできます。
このリフトにのったり飛び降りたり、つかまったりして山を移動してください。
ちなみに、雪と月は山頂 花は麓にいます
雪月花姉妹について。
彼女たちはスキルこそ豊富ですが、素の能力は高くありません。それこそリンカー二人で十分対応できるほどですが。一塊になられると、はめ殺される可能性があります。
一応分断した状態からスタートですが、別の分断方法。もしくは合流させない方法を考えた方がいいかもしれません。
リプレイ
プロローグ
毎度おなじみ、戦地へ赴くH.O.P.E.輸送ヘリの中で『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』は真新しい段ボールを開封していた。
その中から取り出したるは防寒具。普通に気温が寒いだけであればリンカーたちは、あまり影響を受けないが、霊力の寒さとなれば話が違う。クラリスはある程度の防寒具をH.O.P.E.に支給して、H.O.P.E.は予算内でそろえてくれたのだ。だが
「……寒い! 予想以上! ……なんで朔夜はそんなに元気なの!?」
歯の根をがちがち言わせてクラリスから受け取った防寒具に袖を通す『御門 鈴音(aa0175)』そんな彼女は平然と槍を磨く『朔夜(aa0175hero002)』へと視線を向けた。
「あら、言わなかったかしら? 大昔私はクリスマスの日に子供たちにプレゼントではなく罰を与えていたのよ。今まさにその悪い子に罰を与えに行くところだしね♪」
「……」
何から何まで発想の外にある朔夜の行動に、いい加減金色の鬼の方とは違うバカなんじゃないかと思い始めた鈴音である。
その暗黙の白目が抗議の証であることは言わずもがなだろう。
そんな騒がしい少女たちを放っておいて『大門寺 杏奈(aa4314)』毛布にくるまり身を寄せた。
「ノア、私があいつの攻撃受けるつもりだから。絶対に守るよ」
その言葉に、頷くと『Noah(aa4701)』はぼんやりとした調子で口を開く。
「そんなことより。寒いです……」
「そんなのこと……」
少なからずショックを受ける杏奈。
「別に寒いのが嫌いなわけではありませんがかといって長居したいわけでもありません」
そうしらっと視線を泳がせているNoahしかし杏奈の不服そうな顔が視線に入った時、その頭を撫でた。
「冗談です、頼りにしてますよ、杏奈」
「早く終わらせて、早く帰ろう」
そう二人大きな毛布に二人してくるまった。。
「同い年くらいの子たちの連絡が途絶えたと聞きます…………早く倒して探したいですね」
『卸 蘿蔔(aa0405)』は息を凍らせながらもスコープを覗く。
長距離の精密射撃にとって、わずかでもレンズが歪んでいればそれは致命的ミスにつながりかねない。だから、氷のように冷たく冷えるスコープをひたすらに少女は覗いていた。
「そうだな。蘿蔔も寒くないようしっかり。寒くて動きが鈍ったら大変だ」
そう『レオンハルト(aa0405hero001)』はスコープを取り上げ、かじかんだ指を温めてやる。
おかげで蘿蔔の顔面温度は上昇したが、レオンハルトの貴重な体力は奪われてしまった。
「そろそろつきます、みなさん準備を」
そうクラリスが告げる声に合わせて蘿蔔とレオンハルトは共鳴するとレオンハルトの中に蘿蔔は溶けて消えた。
――なんで…………。外見だけ俺。
そこに出来上がっていたのは、レオンハルト主体の共鳴姿。
しかし中身は蘿蔔である。
「雪女と言ったら若い男に甘いイメージなので、油断してもらえそうかと。まぁ悪いようにはしませんよ」
この時の決断が、あんな悲劇を生むことになろうとは、この時レオンハルトは思いもしなかったのである。
第一章
そして時は流れて、リンカーと雪月花姉妹がぶち当たるシーンから物語は再会する。
まぁ、実際にぶち当たったのは雪だけで、なにに当たったのかというとリフトだから、このたとえはふさわしくないのだが。
「きゃあああああ助けてお姉さま!」
「くそ! 人間」
月が叫ぶ。
「私たちを謀ったな!」
誰がそのような緊張感のないことをしたか知らないリンカーたちは唖然と花を見送るしかなかった。
「って、私達がやったことにされてますか!」
蘿蔔がやっと反応する、その小脇をかけぬ稀有。
「ん、子供は風の子。びゅうびゅう、……寒い」
風の子『エミル・ハイドレンジア(aa0425)』はそうつぶやくと、信じられない速度でリフトに駆けより、そしてそのゴンドラに手をかけた。
「猛スピードで、下って行くの、楽しそう。ずるい。ワタシもやる」
そうだばっとゴンドラに捕まって後を追うエミル。なぜ乗れるゴンドラにわざわざ捕まったかは謎だが、本人が満足げなので良しとしよう。
「あ、待ってください!」
そしてその後に続く、風の子その二『美空(aa4136)』と『ひばり(aa4136hero001)』
彼女たちは一跳躍、華麗にフュージョンし『美空・タオツー』となりゴンドラへと飛び乗った。
呆けてる一同へそう激をとばすのは『十三月 風架(aa0058hero001)』
――とりあえず小さいのはほかの人に任せて二人、止めますよ。
その声で我に返った一同を先導し『零月 蕾菜(aa0058)』は敵を見据える。
「了解です」
「卑劣な」
雪が苦虫をかみつぶしたような顔を下。
「こ、これは私たちにとっても想定外だから」
『蔵李・澄香(aa0010)』は苦笑いを浮かべて額を抑えた。
「倒し辛い相手だなぁ」
――犠牲者が出ておりますよ。
クラリスの言葉に、澄香は一瞬瞼を下ろす、そして見開いた瞳には、止めるという意志の強さが感じられた。
「うん。ごめん。容赦なく倒すよ」
澄香の周囲を舞う経典。戦闘開始である。
* *
ちなみに風の子組はというと、止める人間がいなくなったのでやり放題だった。
ゴンドラをひたすらに撃つ美空。
「ちょおおお、何で公共物破壊するのに何の抵抗もないの、あのちびっこ!」
「貴女に言われたくないです!」
美空が叫んだ。その言葉にさらにイライラを募らせた花はつららを生成、それを放って迎撃する。
それが美空の乗っているゴンドラを迎え撃ったが、彼女は無傷だった。
「美空の目の黒いうちは雪女な愚神さんは許さないのであります」
そう告げると美空が取り出したるはRPG。
花の表情が恐怖で染まった。
「あれはまずいわ!!」
直後何のためらいもなく発射される弾頭。スキー場に一輪の花が咲いた。
その砕け散るゴンドラの破片ともども落下する花。
そして頭から雪山に突っ込んだ。
そんな彼女が頭を出すと。そこには真紅の槍を構えた鈴音が立っていた。
――確かに貴女達の能力は美しいわ……だけど恐怖が足りない!
そう高らかに宣言する朔夜。
(山を背にしたポジションを取らないと)
朔夜の茶番を無視して戦略を立て直している鈴音。
「人間は追い詰められた時の恐怖に心折れた魂が最高に旨みを増すの……私なら氷詰けじゃなくて一人、また一人と攫って美味しく料理するわねぇ……」
「はぁ」
生返事の花そして苦笑いを浮かべる。
(普通に怖い!! 冗談に聞こえない!! 鬼か悪魔なの!? ……鬼ですね……しかも悪魔……)
「さすが、噂に聞く鬼女鈴音ね、言うことが違うわ」
花が告げる。
「まって! 今の私のセリフじゃない」
その瞬間だった。
ひゅっと風切り音がしたかと思った刹那。花は振り返る。そして。
「てんちゅー」
どこからともなく飛んできたエミルが花の後頭部にドロップキックを決めた。
「ごは!」
前のめりに吹っ飛ぶ花。そのおかげで鈴音は山を背にすることができた。
「楽しい」
そういって走り去るエミル、その背中に花は叫び声をぶつけた。
「あんたら、悪魔か何かか!」
そう鼻血をぬぐって起き上がる少女。その姿に何か親近感めいた感情を覚える鈴音であった。
第二章
『ヘルガ・ヌルミネン(aa4728)』はスキーヤーである。それこそ長い間雪山にいて、ひたすらに滑り、滑りに滑っているうちに、雪山のなんたるかを知った。
たとえば視界が誤認しやすい景色、冬の雪山ではある目標が突然見つけられなくなることがある。
その潜伏術と潜伏といスキルと駆使しながら、ヘルガは雪をかぶり機会をうかがっていた。
「雪と月の連携を止めないといけない」
――何か策はあるのか?
『スカジ(aa4728hero001)』が問いかける
「…………」
答えないヘルガ、黙っている間に闇は深くなる
「対策は、特に何も」
「…………」
次に黙るのはスカジの番だった。彼女の策が通用すること祈りながら、二人は息をひそめることに没頭する。
そんな二人の目の前で、唐突に戦いの火ぶたはきって落とされた。
――オナカスイター
『メルト(aa0941hero001)』の声が闇に響き、その言葉に雪と月は反応を示した。
闇の向こうで蠢く気配。二人はリンカーたちから距離を取ろうとバックステップ。
それがいけなかった。
「逃すか!」
ぎしりと雪を踏み鳴らす音。それが敵への道しるべ、そう『彩咲 姫乃(aa0941)』は雪道をかけた。
速さとは何か。少なくと姫乃の足の速さはそこそこと行ったところである
しかし0からトップスピードにまでいく瞬間的な加減速。
世界が止まっているように錯覚する感覚の鋭さ。姫乃はそういう方向においては人外の領域へと突入していた。
「俺の前でその一瞬は……致命的なミスだ!」
一瞬で肉薄、暗闇に閉ざされる前の雪と月の立ち位置から、ざっと敵の陣形を予測、二人を巻き込むようにフリーガーを放った。
火焔に包まれる二人、そして明るみにでた月、その目の前に陣取ったのは杏奈。
「光を奪い去る……か」
杏奈は静かに盾を構える、そして広げた翼は黄金の輝きを纏っていて。
――ならば彼女が吸いきれない程の光を出せばいいのですわ。
不安げにつぶやく杏奈へと『レミ=ウィンズ(aa4314hero002)』言葉を向けた。
「大丈夫なの?」
――ええ。それに、この程度の愚神に負けるようなわたくしたちではないでしょう?
「ん、そうだね」
直後周囲に舞い散る光の因子、輝きの羽、高まるリンクレート。
その行動に驚き硬直した月へと、Noahが迫る
「いくよ、ノア!」
Noahは頷くと、月を一気に押し出して雪から引きはがした。
「この耀き、眩しい」
月がつぶやいた。
「喰い切れるかしら、私の光を」
また、守るべき誓いを使用し月を挑発、攻撃を全て受け切るつもりです。
雪は闇に溶けて消えたが、月はまだ見えている。
その背後から蕾菜は付きめがけて杖を振るった。
「がっぁ!」
「月!」
雪が叫ぶしかし彼女も人を心配していられる場合ではなかった。
直後、雪の周囲に光弾がばらまかれる、澄香の魔術である、そしてその一瞬浮かび上がった雪のシルエットを目に焼き付け。
(大丈夫、真っ暗なわけじゃない。すぐに慣れるから、落ち着けば見えるはず)
蘿蔔はトリガを絞る。
銃声が鳴り響く。
その瞬間、澄香の肩をえぐろうとしていた鉄扇が弾き飛ばされた。
「この暗闇の中で一体誰が……どこから。くっ、月!」
「シロ! こいつ早い! 気を付けて」
そう、澄香の脇をすり抜けて蘿蔔の元へと向かおうとした雪。その足を五本の指がからめ捕った。
そして。
「な!」
雪は炎を飲むことになる、ヘルガが足元から火炎放射を浴びせたのだ。
暗闇に浮かび上がる火だるま。
闇に響く悲鳴
「鎮火する」
そんな姉を救うべく、月がいったん距離を取り、そして。
「ヘルガさん、月が動きます!」
蘿蔔の叫び声の後、月はフロストブラストを放った。
狙いはヘルガ、そして澄香。
「わわわわわ」
――エンジェルスビットのコントロールは私が! 澄香ちゃん!!
「滑るのは得意!」
その両足はビットを寄せ集め板のようにして雪から逃れていた、そのため咄嗟の回避もうまくいった。
――転ぶのもですがね。
「うるさいよ!」
むしろ、一瞬でもあんなに不安定な物に乗れただけすごい方である。
「火回り早いぞ。火傷すんなよ!」
かがり火状態の雪は鎮火されたがそこにしつこく着荷しようとするのが姫乃である。
ある種のハイになった姫乃はあたりをフリーガーで爆撃していく。
「俺の熱はこの程度の寒さじゃ消せねえな!」
戦況は有利に見える。実際姫乃は元気だし、杏奈もNoahもぴんぴんしてる、しかし雪と風の恐ろしさを澄香はよく知っている。
「長期戦は不利だ」
――先制攻撃をせずに降伏勧告に、不慮の事態への反応と緊張感がありません。戦闘に不慣れ、こちらを見下しているかのどちらかです。揺さぶりましょう。
「どうするのさ」
――あの計画を実行に移しましょう。
そうクラリスは悪役っぽい笑みを作った。
第三章
スキー場麓、リフトの管理小屋にて。
エミルはリフトの説明書とにらめっこしていた、小さな数ページの冊子を凝視し、不親切な説明に身をゆだねると、業を煮やした美空は勝手にリフトの捜査をし始める。
「大丈夫?」
「こういうのは、フィーリングです!」
がしょんがしょんとつまみをあげたり下げたりひねったりする美空。
それに合わせてリフトの動きが激しく変わる、ゴンドラが激しく揺れる。
「むしろ逆再生しましょう」
その操作である程度うごきを掴んだ美空は、グインとレバーをひねるとリフトの動きが逆回りになった。
「これで追ってこられません」
そう胸をはる美空、感嘆の声を上げるエミル
「おおおおお」
――……意味がないだろうな。
『ギール・ガングリフ(aa0425hero001)』が唐突に声を上げた。
「え?」
美空は首をひねる。
――右回りになろうが左回りになろうが、リフトとは回転している物だ、のぼりと降りが左右逆転したにすぎな。
「……」
「……」
黙りこくる美空とエミル。そして二人は顔を見合わせて言った。
「止めましょうか」
「うん」
こうしてリフトは停止した。
* *
「さあ……あなたが倒される前に私を倒せるかしら?」
月が歯噛みした、激痛をかみ殺しながらも、自分に張り付く杏奈を完全に振りきれないでいる。
本来であれば雪と合流し戦った方が連携も取れ、対応しやすくはなるのだが、自分がマークされている以上、雪との合流は彼女を攻撃の危険にさらすことになる。
「しょせんは3人で1つ。あなた1人じゃ何もできないのね」
「それは誇り。嘲り笑われることじゃない」
杏奈は目を見開いた。
「私たちは三人で一人、私の力を引き出して何倍にもしてくれる人が二人もいる。あなたにはそんな大切な人がいる?」
そう杏奈に太刀を叩きつける月、その背後から躍り出たNoahは告げる。
「いる」
デ・ラ・リュースの奥で瞳がわずかに光をともした。
「杏奈は一人じゃない」
その直後月を焼くようにブルームフレアがさく裂する。
蕾菜である。
「くそ!」
その体制が崩れたところで姫乃が躍り出てその手の刃で月を切り上げた。
それを月は身をひねり、太刀で受ける。体が宙に浮いた。
その勢いを利用し回天、雪を巻き上げながら斬撃を放つも、姫乃には回避される。
直後着地、そのタイミングを見計らったように杏奈が月の目の前に立つ。
その直後だった。キィンと雪山に響くハウリング音、リンカーの目は闇に閉ざされているため見えないが、雪と月の周囲にエンジェルスビットが展開されている。
「なに?」
「音声?」
困惑を浮かべる雪と月。
――どうやら、わたくしが効いた噂は本当のようですね。
そしてそのビットから聞こえた声は紛れもなくクラリスのもの。
――雪山の…………痴女。
「痴女!?」
思わず声を上げたのは澄香。
自分の相棒がこれから何をするつもりなのか、わからなさすぎて恐ろしくなった。
――その者、長い黒髪を吹雪に踊らせ現れる。
チャイナドレスから伸びる魅惑の生足は、男と見れば何処までも追いかけて来るそうです。鳴き声はヌクモリオイテケ。
戦場に笑い声が溢れる、性格には笑いを必死にかみ殺そうとするくすくす声だが、その笑い声も相まって。雪の顔が真っ赤に染まる。
まぁ、リンカーたちからは見えないが。
「いや、え、マジで?」
「マジじゃない!!」
雪は裏返った声でそう告げた。
――被害者は、5歳の幼児から85歳の老人まで幅広く。
ついに耐え切れなくなった誰かが笑った。
――追い付かれたら最後(ぴーーー)な運命から逃れられぬとのこと!
「変態だ!!」
「違う!」
必死に否定する雪。
――ええ、変態です。被害届も多数出されております。
「お前、なんてでたらめを!」
そう雪上を駆けだす雪。もちろん狙いは澄香。鉄扇を振り上げ、目尻に涙をためて次の瞬間、澄香の視認できる距離まで躍り出た
その鉄扇攻撃に当たったふりをして、澄香は後ろに倒れ込む動作そのまま虚空にブルームフレアを放った。
それはわずかな時間燃焼を続ける太陽のような存在として機能する。その結果、暗闇の中にありありと雪の姿を映しだす。
「しまっ」
――今です! シロ!
「赤いタイツ履きませんか…………みたいな怪談話。昔ありましたよね」
――それはちゃんちゃんこだな。
直後轟く銃声、冗談みたいなことを言いつつもきっちりと、右足をうち貫く蘿蔔。
体性を崩す雪、しかし残った左足でバランスをうまくとる。
今倒れてしまうのは危険だ、そうできる限りの力で耐える雪だったが。
「スカジは狩猟の神でもある!」
そうヘルガが、毒矢を放った。それは見事左足に突き刺さり、その勢いで雪は空中で回転、背中から地面に打ち付けられることになる。
「く、H.O.P.E.め……」
そう歯噛みする雪、その顔を覗き込む澄香。
澄香はマフラーで口元を覆っていて、それを寒そうに直して目を細める。
その仕草がなんとなく様になって見えるが、その実やりたいこととしては雪への追撃である。
起き上がろうとしたところに二発目の銀の魔弾。そして。
空中のエンジェルスビットを利用し跳弾した鉛玉がありえない方向から飛び、雪の顔面に突き刺さった。
「これでおあいこ」
少し引いた表情の澄香、インカム越しに不気味な声が聞こえてくる。
「私の目が!」
その参事に気が付いた月が、叫んだ。
「雪ねぇ!」
第三章
鈴音のブレスレットが星の輝きを宿す。
それが飛来し駆ける花の足元を吹き飛ばした。
飛び散る氷塊、しかし、それを華麗にかわして、雪は巨大なつららを投げつける。
それを鈴音は身をひねって回避、槍で叩き伏せた。
濛々と上がる粉雪。
「冷たい」
――何をぼやいているの、もっとやる気を出しなさい。
寒さに負けつつある鈴音を叱咤激励する鈴音。
そう言えば朔夜もちびっこだもんな。
そう覚りの境地に至る鈴音。
「なんなのよ!! あんた達、私を雪ねぇのところに行かせないで! イライラする!」
そう叫び花は弾かれたように後退。雪の塊を生成し射出するが、それを切り捨てる鈴音。
――ちょっと、接近できないじゃない。
朔夜は不服そうにそうつぶやいた。
「戦い方が、うまいわ……」
鈴音はそうつぶやいた。
先ほどから鈴音は花を分析していた。ただ単純に寒さに震えていたわけでは無かった。
どういうわけか花の足は雪に沈まないのだが、こちらの足は雪に取られほうだい。
そのせいで接近できず、接近できたとしても花はすぐに自分の得意な距離に逃げてしまう。
どうするべきか、そう考える鈴音であったが、突如訪れた風の子によって戦局が大きく変わる。
「さむい!」
そう八つ当たり的に叫んでエミルが来襲した。
ライブススラスターをふかせて飛ぶように花に接近するエミル。後ろからその頭を大剣の腹で殴りつけた。
「ごは」
前のめりに倒れる花。
雪まみれの顔をほろって、雪は立ち上がり怒りの表情を見せた、そして花は背後を一瞥。かけてきた美空も巻き込むべく、つららを放つ。
「つらららららら!!」
全方位に放たれるつらら、これを起点に包囲網を脱出しようとしたのだがうまくいかない。
つらら攻撃をものともせずに接近する鈴音。その槍の刺突を首をひねってかわすも。円を描くように振り上げられた石突が腹部をえぐる。
その軽い体は吹っ飛ばされ、その背後で待つエミルと美空の追撃を浴びる。
メインで戦っている鈴音はともかく、遊撃を主とするエミルが戦場を管理していて思うように突破口が見いだせないのだ。
逆に山から遠ざけられているふしさえある。
「しゅばばばー…………」
さらに距離を詰める鈴音。花には接近戦で対応できる術がないため、鈴音の槍の射程に入ると厳しい。
そう鈴音の攻撃の合間を縫ってさらに攻撃。
それに連携し、死角から鈴音が迫った。
「なるほど、こういう戦い方もあるのね」
――相手が子供でも悪い子には本気でお仕置きが必要よ、どんな汚い手を使ってもね。
波状攻撃を受けつつも、隙があれば回復する。強大な攻撃力を持っている敵だが、徐々に追い詰めることができている自信が鈴音にはあった、しかし。
「冬の怒りを思い知れ!」
切り札とばかりに増大する花の霊力。突如花を中心に雪崩が発生した、あたりの雪が隆起する様は嵐の海の津波の様で、全方位に逃げ場はないことを知る。
「あわわわわわ」
逃げ惑う鈴音、その背中を飲み込む雪崩。
「これでみんな雪だるまだ」
そう高らかに宣言して、スキー場の斜面を登ろうとする花。
これを受けて氷漬けにならなかった人間はいない。
そうこれを受けて氷漬けになった人間は。
しかし、この攻撃から逃げおおせた人間が一人いる、その人物はちらりと花の視界の端を横切ると、エミルへと迫り、そしてその小さな体を掘り起こし始めた。
「な!」
直後目覚めたエミルは花へ急接近、その手の刃を振るうこと、一瞬にして三度。その刃から逃れることのできなかった花はその体をやすやすと切り裂かれた。
「そんな、雪ねぇ……」
断末魔は無い。その死は姉妹に伝わり、きっと悼んでくれるから。
そう悲しみに表情を歪ませて、花は、体を霊力の粒へと変えた。
* *
「……!」
月は反射的にスキー場の麓に視線を向けた。
「どこを見ているの?戦場でぼんやりとは随分余裕ね」
その声にはじかれたように振り返ると、そこには蕾菜が迫る。反射的に月は立で刺突。それを杖で払うと蕾菜は杖の先端を月へと向けた。
まずいと思った直後には回避が間に合わず爆音。吹き飛ぶ月だが、四つん這いになって着地。
地面に突き刺さった太刀を抜き取り蕾菜へと刃を振るわせるが杏奈の盾にはじかれた。
その両脇から躍り出た蕾菜が追撃。そしてNoahによるダメ押しの一撃。
またも交代する月。そして月は痛みに耐えながらも雪へと声を張り上げた。
「雪ねぇ! 花が!」
しかしその声に返答が帰ってくることもなく、即座に蕾菜からの攻撃を受ける。
振るわれた杖。それを月は柄を握って受け止める。
直後放たれる魔術、それをものともせずに太刀を振り上げる、通常であれば蕾菜に対して致命的な一撃となっただろう。
だがそれは杏奈が許さない。
盾に太刀がはじかれる、半歩後退。そこには。
「いらっしゃい」
姫乃が待ち伏せていた
「擬態系の生物って全体的に遅いよな。――でも、射程内の獲物を攻撃(捕食)する動きに限っては神がかった速さだと思うんだ」
不意打ちの一撃は月の腹部を大きく切り裂いた。
まずい、そう月は感じ、その手に霊力を集める、軽々しく放てる技ではないが、フロストブラストでいったん体制を立て直すしかない、そう狙いも定めずに氷の光線を放とうとした直後。
「あなたの力は、音を奪えますか?」
蕾菜は月の耳元でささやいた。
「雪へその攻撃を……」
雪を見る月、その視線の先では雪が組み伏せられていて。
「雪ねぇ」
支配者の言葉に耐え、動きを止めたその隙が命取りだった。
「今です!」
杏奈の号令で腹部を貫く刃。
「一つ! 二つ!! ……三つ!!! 焔の恐怖に舞い踊れ!」
――ちょっと痛いかもねっ!
姫乃と杏奈が左右に挟み込むようにライヴスリッパーそして、疾風怒濤。
「私達三姉妹、滅びる時も共に」
そう告げた雪へ、澄香はリーサルダークを放った。
直後雪はやみ。スキー場の空には星が輝き始めるのだった。
エピローグ
「せっかくの友達との楽しいスキーだったのに…………間に合って、欲しい…………けど」
そう戦闘が終わった直後手近な雪だるまへと駆け寄る蘿蔔。
その表面を撫でると、中には本当に人がいた。
そして、まだ息がある。
「よかったです……」
そう安堵のため息を漏らす蘿蔔。そのままヒーターシールドを取り出して、スキーヤーたちを温めた。
その直後蘿蔔の背後で動き出すリフト。
「シロ! こっち」
そう澄香の指示に従って、リンカーたちは一般人解放作業を続けていく。
* *
「はい。ならんで。全員にあたるから」
そうリフトに乗って麓に戻ってみれば、いち早く戻っていたヘルガが大なべをかきまわしていた。
中にはヘラジカのシチューが入っていたフィンランド式にバターを多く足したもので、ヘルガが普段から食べている物だった。
「ありがとうございます……」
そう、先ほどまで氷漬けにされていた鈴音がシチューを受け取る。
その隣では、別の鍋で作ったうどんを口に運ぶエミルがいた。
「ちゅるちゅる。うまうま」
そして、シチューを食べ終わった人間にはNoahと『理(aa4701hero001)』でカイロと毛布を回していく。
これでH.O.P.E.の輸送車が来るまで、十分に持つだろう、そうNoahは判断した。
実際に、震えて衰弱している者は多かったが、すぐさま入院しなければならない者はいなかった。
その様子を眺める蕾菜。その隣で。
「雪月花時最憶君、でしたか……」
守護獣が思い出すはいつの覚醒者かそう、風架は瞼を下ろした。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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