本部

ボクのプリン喰べたアラン君シメる!

電気石八生

形態
ショートEX
難易度
易しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/11/16 16:59

掲示板

オープニング

●礼元堂深澪(az0016)side
 ボクも社会人だし、お給料もらったらいろいろ考えるよ?
 アメリカ行って24時間耐久バイクレース見たいなぁとか、イタリア行ってカルチョ・ストーリコに参加しちゃう~とか。
 でもね、イベントは開催する日が決まってるし、ボクはボクで結構いそがしかったりするしねぇ。
 だからさ。
 お家でマウンテン・ダウンヒル――山の上からマウンテンバイクでだーって駆け下りる超やばい自転車競技だよぉ――のBDでも見ながらプリン食べよっかなって、そう思ったんだ。
 ……なんでスポーツからのプリンかって?
 そんなの決まってるよぉ。一週間に一回カロリー・フリーダムな日を作っとかないと、体が低燃費になって痩せにくくなっちゃうからさぁ。ま、言い訳なんだけどさ~好きなだけなんだけどさ~プリンラヴさ~。
 で。買っちゃったんだよでっかいプリン!
 Bigじゃないよ、Biggestだよ? 内容量の表示がgじゃなくてKgだよKg!
 これ食べ切っちゃったら、うん。痩せるどころか絶対太るねぇ~。
 だがしかし!!
 ボクは決めたんだ。
 お休みの前の晩――明日の夜に絶対こいつを食べ尽くすんだって!

●アラン・ブロイズ(az0016hero001)side
 まず始めに。
 私がいつにも増して疲れていたことは申し述べておきたいと思います。
 エージェントの皆様に適正価格で不動産のご紹介をする……そのために働くことをこそ喜びとし、おかげさまで日々幸福に包まれている私ですが、その夜ばかりは個人的な理由から荒んでいたのです。
 このままでは眠れない。しかし眠りを誘うために飲酒してしまえば、翌日の笑顔が曇ってしまう。
 悩みながら私は冷蔵庫を開けました。なにか少しでも食べれば気持ちも和らぐだろうと考えて。
 そして。
 見つけてしまったのです。
 冗談のように巨大な、プリンの容器を!
 あの方――深澪様は、私に隠れてこんなお楽しみを!
 悲しみが私の理性を痺れさせました。怒りが私を突き動かしました。そして気がつけば私は、レードルをプリンに突き込んでいたのです。

 と。ここでひとつ告白をさせてください。
 私が荒んでいた理由は深澪様です。
 あの方が最近、私に無理矢理スポーツをさせようと……私の時間は有限だと言うのに。

 プリンを食べ尽くした私はその場に倒れ込みましたね。
 ――あれほど充実した眠り、いったいどれほどぶりでしたでしょうか。

●礼元堂深澪(az0016)side
 ボクはね、目をね、疑っちゃったね。
 プリンが待ってるからお仕事がんばろぉ~って起きて、顔洗いに行ったら寝てやがったんだよアラン君が……プリンの空容器抱っこして。
 仕事仕事ぉ~って座りっぱなしなのに運動もしない不健康野郎が、ボクが夢とご飯代を代償にして獲得した幸せを食べちゃうって。
「どゆことぉ!?」

●アラン・ブロイズ(az0016hero001)side
 深澪様は私の胸ぐらをつかんで振り回し、いろいろと言ってくださいましたよ。思い返すだけで不愉快ですので、ここで述べることはしませんが。
 ――ともあれ深澪様は私に、深澪様がこうだと決めた身勝手な価値観を押しつけようとしていただけなのです。
 私は私なりに深澪様へ言いたいこともあったのですがね。言えないまま終わってしまいました。なぜなら――

●深澪&アラン
「アランくぅん! ボクのたったいっこの幸せ潰してくれたお礼参りしたげるよぉ!?」
「生憎だけどよぉ、私の時間は一秒だってお嬢ちゃんにくれてやれねぇよ!?」
「地が出てんだけどぉ!? あんときみたいにシメらんないとわかんないかなぁ!?」
「お嬢ちゃんこそ昔のお顔が見えてんぞ!? 今度こそあっち側に送ってやんぞアァ!?」
「……いいよぉ。決着つけよっか。場所はわかってるよねぇ?」
「私がHOPEにハナシつけといてやらぁ。オペレーターがひとりいなくなるんで夜露死苦ってな」
「そんなのよりさぁ、話のわかる次期社長、見つけといたほうがいいんじゃないのぉ?」
「おお。ハナシのわかるエージェントの次になぁ」

●HOPEより緊急募集
 本日、礼元堂深澪(エージェント/オペレーター)から有給の申請がありました。
 HOPE東京海上支部はこれを受理しましたが、HOPEの協力企業である万来不動産社長、アラン・ブロイズ氏からの『礼元堂深澪・退職届』が届いたことから不穏な気配を察知。プリセンサーを緊急動員する運びとなりました。
 その結果、19時ごろに、東京海上支部近くの埠頭にある資材倉庫で両者がタイマンを張ると判明。それに伴い、この界隈をシマとする珍走団の皆様に避難をお願いしたのですが、一大勢力のひとつである『耶魔兎』様より「礼元堂深澪につく」、そのライバル勢力の『霧鎖死』様より「アラン・ブロイズ氏につく」との旨、ご連絡をいただきました。
 とはいえ、タイマンに巻き込まれてお命を落とされるであろう珍走団の皆様のご遺族方へ賠償金をお支払いするのは、心情的にも財政的にも厳しいものです。よって熟考の末、ふたつのチームは先ほど殲滅させていただきました。
 そこで、大変恐縮ではありますが、珍走団の皆様に成り代わり、礼元堂深澪とアラン・ブロイズ氏のタイマンをほどよいところで収めていただけますエージェントの方を募集いたします。
 詳細は依頼書にて。
 それでは、よろしくお願いをいたします。

解説

●依頼
 珍走団(旧称:暴走族)に成り済まし、埠頭倉庫にて開催されるタイマンをほどよいところで止めてあげてください。

●ルール等
・深澪とアランが非共鳴状態であることから、皆様も非共鳴状態でお願いいたします。
・同数での対決状況を演出するのが自然と思われますので、リンカーと英雄はそれぞれ『耶魔兎』と『霧鎖死』のいずれかに分かれてご参加ください。
・珍走団を演じていただく関係上、それっぽい格好を指示していただければ貸与いたします(変装必須です!)。
・言葉づかい、行動等、珍走団員の一員として振る舞ってください。
・メロディホーン付きの改造バイクや車両等は、珍走団より押収いたしましたものを貸与いたします(相乗り、ハコ乗り等自由です)。
・得物も珍走団から押収したもの(バールのようなもの、改造モデルガン等)が貸与されます。
・バイク等でぶっ込んで相手を轢いたりしても可です。

●備考
・よくある暴走族抗争もののテイストです。
・せっかくの機会ですので、リンカーと英雄とでお互いの不満を言い合ってすっきりしましょう。
・因縁のある他のエージェントと言い合ったり闘ったりするのも歓迎です。
・レベルや体の状態は気にせずご参加ください。
・外にHOPEのバトルメディック集団が待機していますので、このシナリオによってダメージを負うことはありません。
・ただルールどおりにケンカする/ケンカを止めるだけのプレイングですと、描写が減ってしまう危険性があります。

リプレイ

●ぶっ込みぶっ込み
 19時。HOPE東京会場支部の灯が見える埠頭を、野太く低い爆音が揺るがせた。
 ファイヤーパターンに彩られた黒の単車に跨がる金髪リーゼントのグラサン男。サラシを巻きつけただけの上体からグログロと重いライヴスを噴き上げ、鬼ハン(ななめに絞り上げられたハンドル)を引き絞る。
「深澪ぉぉぉぉぉぉ!!」
 加速した単車の上から仇の名を呼ぶグラサン男、その正体はまあ、みなさんお気づきのとおり、万来不動産社長であるところのアラン・ブロイズ(az0016hero001)だ。
「アラ公ぉぉぉぉぉ!!」
 マフラーを鉄パイプに、カウルをロケットカウルに換えたクソうるさいスクーターでアランにぶっ込んでいくのは、ビリビリと鋭いライヴスを噴き上げる礼元堂深澪(az0016)。ちなみに彼女の衣装は赤の特攻服。背中に『ぶっこみ屋さん』と金糸で刺繍が入っていたりする。
「死ねやゴラぁ!!」
 アランが鉄条網巻き鉄パイプを深澪の頭に振り下ろせば。
「死ぬかダラァ!!」
 深澪はボッコボコの金属バットでアランの顔面をフルスイング。
 パキィン! 金属が打ち合わされる甲高い悲鳴が響き。ふたりは馬上槍試合にのぞんだ騎士よろしくすれちがってターン。倉庫へ向けてもつれ合い、どつき合いながらの並走を開始した。

「その、始まったようですけれど……」
 少し離れた場所から深澪とアランが倉庫へ向かうのを見届けて、月鏡 由利菜(aa0873)がエージェントたちへ困った顔を振り向けた。
「プリンのために殺し合いとはあきれたものだがな」
 ため息まじりに漏らすリーヴスラシル(aa0873hero001)に、御神 恭也(aa0127)が深くうなずいてみせ。
「まったく理解できん。始めから2個買っておけばいいだろうに――」
「楽しみにしてたものを横取りするなんて横暴、ゆるすまじだよね~!」
 埠頭のコンクリートをぺしぺし叩きながら恭也の言葉を遮ったのは伊邪那美(aa0127hero001)。
「そーだー。プリンの恨みは恐ろしいんだぞー」
 木霊・C・リュカ(aa0068)が思いを重ね併せ。
「単に弁償すればいい話なのではとも思うんですが」
 相棒の凛道(aa0068hero002)に首を傾げられたり。
「そうだゼ。レアチーズの恨みは根深いぜェ……」
 昨日、楽しみにしていたレアチーズケーキを食べられてしまった長田・E・勇太(aa4684)がギチギチ奥歯を噛み締め。
 犯人である契約英雄の碑鏡御前(aa4684hero001)も「ええい! たかが菓子のひとつでワシに反旗を翻す気じゃったか! ――灸を据えてやらねばならんのう」などと怒りを燃やす。
「食い物の恨みは恐ろしい、とはよく言ったもんだな」
 深澪たちと仲間たちのただならぬ殺気に、赤城 龍哉(aa0090)は苦笑した。
「それはそうですわ。伊邪那美さんが言うとおり、楽しみを横取りされてしまうなど、ゆるせるものではありませんもの」
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)が腰に手をやりながら、にっこり。
 どう見ても剣を探っているようにしか見えない彼女の様に、龍哉は「……それ、食い物の話じゃねぇだろ?」。
 それを横で聞いていた不知火 轍(aa1641)が小さくうなずいた。
「……だな」
 半ば閉じられた橙の瞳に煙る薄暗い光。
 ここで雪道 イザード(aa1641hero001)が轍に声をかける。
「いったいなにが「だな」なんです?」
 轍は答えず、瞼を引き下ろしてその場を離れた。
 ――目を隠すとは。自分に含むところがあるわけですか。
 などと、契約主と契約英雄同士で危ういやり取りを見せる組があれば。
「なかなかに楽しそうであるぞ」
 ロングセーラーのスカートの裾をひらひらさせるユエリャン・李(aa0076hero002)
に「あそびにきたんじゃないのです!」とぷんすかする紫 征四郎(aa0076)がいたり。
「しゃすぞラァ! アアん!?」
 アメリカン・クルーザーに跨がり、『酒池肉林』を背に刺繍した特服姿でチンピラ丸出しの威嚇を吐き散らす五々六(aa1568hero001)と、その横で電動立ち乗り二輪車に乗ったまま寝落ちしかけている――夜だから! まだ7時だけど!――『不労所得』の刺繍を背負ったダボダボの特攻服姿の獅子ヶ谷 七海(aa1568)や。
「ハマの暴走黒馬! 鹿島和馬! 夜露死苦ぅ!」
「和馬氏、名乗っちゃったら正体バレちゃうよ? シカトウワバとかにしとけ?」
 格好はともかくいつもどおりな鹿島 和馬(aa3414)と、額には『俺氏様』、背中には『暴走鹿天使』の刺繍を縫いつけ、頭巾の目の部分を丸から三角に変えた俺氏(aa3414hero001)がいたりして。
「突貫突貫! バリバリぶっ込んでくんで死苦夜露!」
「待て朝霞! まだ皆の準備が終わっていないぞ!」
 がまんしきれずにスクーターで倉庫へぶっ込んじゃう大宮 朝霞(aa0476)と、あわててヤン車(ヤンキー仕様の単車)で追いかけるニクノイーサ(aa0476hero001)。
「おぅ、せいしろーじゃん。なに着てもかっこかわいいじゃん? ぶりばりミンチにしちゃってハンバーグ作っちゃうぞ?」
「アサカはすごくワルっぽいのです、だぜ! ハンバーグはいっぱいやくのですのぜ!」
 ともあれ。作戦の幕が開いたりなんだりしたんだった。

●火種(フラグ)
 深澪とアランの戦場は倉庫の内へと移動する。
「これはボクの怒りの端っこの端っこの端っこだぁっ!」
 飛び降りた後のスクーターをミサイル代わりにアランの単車へ向かわせておいて、深澪がアランに横から襲いかかる。
「知るかボゲぇ!! こっちは仕事邪魔されてハラワタ煮えてんだよ! お客様の笑顔置き去りにしてきた私の苦しみ、教えてやんよぉ!!」
 バイクに跨がったままヤクザキック。スクーターを片足であっさり止めたアランが、そのまま深澪へスクーターを蹴り返した。
「バカがバカ力自慢ってクソだっさ!」
 スクーターを跳び越え、空中で二回転して着地した深澪が、その反動を使って前へ。アランがバイクから降りるタイミングに合わせてその臑へバットを振り込んだ。
「プリンの食い過ぎで鈍ってんじゃねぇかよお嬢ちゃんんん!?」
 アランの鉄パイプがバットを上から叩き落としたが、深澪はすばやくバットを手放して床に手をつき前転。踵落としでアランの腕を打って鉄パイプを取り落とさせる。
「くっ!」
 アランの左拳が深澪に振り下ろされた。
「ちぃっ!」
 深澪の右拳がアランに振り上げられた。
 ふたつの拳が激突し、共に大きく弾かれて。
「ボクのプリンに地獄で詫び入れろぉ!」
「ボクにプリンおそなえろ~!」
「そーだそーだー」
 伊邪那美とリュカが深澪に荷担し。
「っせぇ! 私の消えちまった残業代、てめぇの血で払え!」
「俺氏に逆らう奴はたとえ神でも仏契(ぶっちぎり)」
「HEYババア! レアチーズの恨み晴らさせてもらうゼ!?」
 アランに俺氏と勇太が荷担――はしていなかったが、とにかくやる気だけは見せた。
 と。
「……んだこのメンツの偏り。幼女率高ぇし?」
 自分に加勢する10人と深澪に加勢する10人を見比べ、アランが眉をひそめた。
「そういや加勢って、もっといっぱい来るんじゃなかったっけ?」
 昔の縁で彼女とアランについたゾクは、それぞれ有名な大勢力だったはず。それがたった10人ずつ。しかもやけに見覚えがあったりなかったりするような……。
「わ、ワルにとしは、かんけいねーのです、なのだぜ? なめないでくださいですだぜ?」
 背中に『下克上』の刺繍をしょったキッズ特攻服姿の征四郎がたどたどしく言い募り、つるつるの眉間にきゅーっと皺を寄せてみせた。
「せ、世界にはよく似た人が3人はいると言います……ぜよ。ケンカ上等、なのですことよ。お友――ダチは、マッポにパクられて、今は鉄格子の向こう側にいらっしゃ、いら、いますぜよ」
 マスクで顔を隠した由利菜もまた、慣れない高知弁を使おうとして失敗、お嬢様になったりして。
(これじゃさすがにごまかせねぇか)
 よりにもよって、いちばんヤンキーから遠いふたりががんばってしまった。龍哉はどうにもならない場へ、最終兵器とともに割り込もうとしたが。
「思えば私も餓鬼生まれの修羅育ち……ワルに歳は関係ねぇ、よな」
 アランは妙に納得しながら征四郎の顔にはしる傷痕を見やり、なぜか五々六を見た。
「ンにガミれっだアアン!?」
 なにガン見してくれてんだ、アアン!? 的な怒りを燃やす42歳(おそらく介護保険は未加入)。
 ちなみにアランはサングラスで、今は夜。いろいろと都合のいいところしか見えやしない。
「だよねぇ。パツキンなんてどっこにでもいるしねぇ」
 深澪は人を全体の雰囲気で区別するタイプ。服装が大きく変わると判別できなくなるのだ。
 以上。問題なしということで、両陣営、ヤン車を駆っての激突と相なった。

「じ、自分たちのシマを荒らす霧鎖死のみなさ、奴原――ヤツら、シメますわ、ぜよ!?」
 スクーターの上で無闇にチェーンを振り回す、外国人助っ人スケバンな由利菜。
「争いごとは好きまへんどすけどなぁ。戦争いうんやったら肚くくりますえ?」
 由利菜の敵役を務めつつ彼女を乱闘からかばうため、和装極妻仕様のリーヴスラシルが単車のエンジンを派手にふかして襲いかかった。
「ヤマトのみなはん、命が大事やったら出なおしてきいや!」
 由利菜のチェーンを木刀で絡め取り、引き込む。
「くっ! やりますぜよ! でも、私の後ろにはチームのみなさんがいるから、退けないのですぜよ!」
 ふと。リーヴスラシルが木刀を引いた。
「――なんや、えらく肝の据わったお嬢はんやないか。その心意気に免じて、ここはうちらの負けで収めまひょ」
 早っ! 参加エージェント一同、心の中で一斉にツッコんだ。
 あわてた由利菜が、殴りかかるふりでリーヴスラシルの耳元へ唇を寄せて。
(ラ、ラシル! 強引すぎ!)
(いやしかしユリナは深手を負っているのだぞ。少しでも早く切り上げねば)
(礼元堂さんたちに怪しまれるから! ――でも、ありがとう)
 笑みを交わし、ふたりは打ち合いを再開した。

「ば、バイクにのるとあしがぶらぶらするので、リンドウ、うしろのせてくれますか……?」
 同じ霧鎖死側の凛道に両手を伸ばし、征四郎が抱き上げてくれるようアピールした。
「はいはい。それでは敵チームへカチコミと参りましょうか。マスターを倒して、ね」
「きゅ」
 妙な声をあげて硬直する征四郎。
 凛道はあえて問わず、固まった征四郎をバイクの後ろに乗っけて走り出す。
「それにしてもこの服装、悪意を感じるのですが多分気のせいじゃないですよね――?」
 短ランに自転車通学してる中学生がかぶらされてるみたいな白ヘルメット、背中に『夜露死苦』の幟……どう見ても押収品からのチョイスではない衣装コンセプトに、凛道は眉をしかめたが。
「あー、せーちゃん! ねぇ似合う似合うっ!? こういうのお兄さん憧れだったんだー!」
 バイクの音でこちらの接近に気づいたのか、向こうで白杖代わりの釘バットをぶんぶん振りまわすリュカ。
 衣装はいつものサングラスに、裏地ではなく表側に昇り龍を刺繍しまくった長ラン姿。遺憾ながらそれは、熟考の末に彼が選び取った至高の一着だったのだった。
「……あくいではないのでは?」
「ですね。笑えないことに」
 顔を見合わせる征四郎と凛道。
「はっはっは。意外と様になっておろう。憧れちゃってもよいのだぞー」
 リュカのとなりで、これまた釘バットを振っているユエリャン。
 おしばい! おしばいするのです! 口パクで征四郎が伝えてくるのを見たユエリャン、すぐに顔をしかめて「怖く」なり。
「今日こそ白黒はっきりつけてやるから、覚悟しろや霧鎖死のおチビちゃん!?」
 深澪を真似て釘バットをフルスイング! が、履いているピンヒールと致命的な運動神経のなさがユエリャンの体を不思議なゼスチャーゲームよろしく泳がせて、足首まで届くスカートがひらり。毛糸のパンツがモロり。
「ああん、我輩のやらかしちゃったサービスで殿方もれなく鼻血ブーであるな!」
 きゃーっと辺りに照れた顔を巡らせたりするユエリャンだったが。
 リュカと凛道が“無“の顔を向けていた。
 征四郎が「けいとはあたたかいのです!」とがんばってフォローしていた。
 そもそも他の連中は見てすらいなかった。
「――おいグラサンと眼鏡置き。なんだそのツラぁ?」
 鬼の形相で赤黒い殺気を放つユエリャンに、リュカと凛道がなんとも気まずい感じで。
「いやー、ねぇ。お兄さんほら、よく見えなかったし。見たくなかったっていうか」
「どんな顔をしたらいいのかわからなくて……なんとも言い難い絶望感を前に」
 ユエリャンのこめかみにビキビキと血管が浮き立つ。
「なんだ? 見たくなかったのは我輩が性別不詳だからか? 絶望するほど年増だからか? 怒んねぇからツラ貸せやゴラ」
「えー! お兄さんおケガが痛くてお医者さんから抗争は禁止されてるんだけど!」
「口ゲンカですませる約束では!? あの、ユエさんすごく似合ってます! 年齢的にアレですし毛糸がそれをいや増しているというだ――」
 年増の釘バットが眼鏡置きの頭に振り下ろされた。

「待ってたぜぇ!! このトキをよぅー!!」
 巨大なピコピコハンマーの先をコンクリートにズリズリしながら、ロングセーラー姿の朝霞がニクノイーサへ向かう。
 その途中、一発であそこの単車だとわかるライムグリーンの400ccを駆る和馬に。
「おぅ鹿島ぁ。鹿せんべいパリパリだぜぃ。夜露死苦愛羅武勇ぅ」
 今は一応敵なれど、同じ【駄菓子】の仲間ということであいさつをかましていくが。
「鹿せんべい……」
 朝霞の後ろから、車体に白布をかぶせた俺氏カスタム・クルーザーでぶっ込んできた俺氏がなにやら思い出したように言った。
「食われて困るもんなら名前書いとけってんだよ! プリンも鹿せんべいもよぉ!」
 できればガチのケンカを避けて口ゲンカで濁したい。ここぞとばかりに和馬が俺氏へふっかけた。
「――まさか、俺氏秘蔵の鹿せんべいがなくなったのは」
「へ?」
「句点の向こう側に逝ってもらうよ和馬氏。俺氏の死花パンチでね?」
 1500ccオーバーのクルーザーが急加速し、和馬へ迫る。
「ま、待てオイそんなのに轢かれたら危ないぜ!? 連れてかれちまうぜ!?」
「言い訳は閻魔氏にどうぞだよ?」
 もう死ぬ! さっそく死ぬ! 絶望する和馬の目に、世界でいちばん愛死天流(あいしてる)スケ――恋人の笑顔が閃いた。
「死んでる場合じゃねぇーっ!」
 胴にまいたサラシの背中に突き立てた幟、そこへひと針ひと針和馬が心を込めて縫いつけた恋人の名がはためいて。
 共鳴していないはずの和馬が、人を超えた反応速度でバイクから跳び降り、転がった。
 果たしてバイク同士が衝突し、大爆発。
「――こんなぬるい炎じゃ、俺氏の怒りは飛ばせないよ?」
 どす黒いライヴスで炎を押し割り、歩み出る俺氏。
 その迫力に和馬は息を飲み。肚を決めた。
 俺が全部殺される前にあいつを半分殺す!

 一方こちらは先ほど行き過ぎた朝霞。
「悪い子は消毒だぜぃ!」
 ピコン! 『聖霊紫帝闘士』を刺繍した黒特服姿のニクノイーサの頭でピコハンが跳ねる。
「ノリノリだな朝霞……」
「シャバいこと言ってないでちゃんと珍走団のロールプレイしなさいよ! ……ここは迫力的にやっぱりレインメーカーで」
「シャバい? いや、それ以前にレインメーカーで殴られたら普通に死ぬからやめろ。というか、こんな格好までしているだろうが。だいぶ朝霞の要求に応えていると思うぞ」
 憮然とするニクノイーサを「でもシャバ僧くさいんだよなぁ」などと見回す朝霞。いやだから、シャバ僧とはいったいなんなのだ?
「だいたいニックは変身ポーズもシャバいのよ! なぜおれわこんなことをしているのだーみたいな感じ? 心が足りてない!」
 いきなり雲行きが怪しくなってきた。
「ときに珍走団はどうした。ワルのロールプレイは」
「世界でいちばん大事なのは正義ですけど!? はいニック、変身ポーズやってみて!」
 これが大宮朝霞という女――! あらためて思い知るニクノイーサなんだった。

●抗争等々
「寿命が尽きる前に地獄に叩き落としてやるゼPlonkerババァ!!」
 サングラスの奥の黒瞳をギラギラ輝かせ、勇太が碑鏡へ改造モデルガンを撃ち込んだ。
「ワシはババアではないと何度言えばわかるのじゃ! 菓子ひとつで猿のように騒ぎたてる餓鬼めが、天誅を喰らうがよい!」
 上をはだけた長襦袢の下にサラシを巻き、肩へ着物を引っかけた「姐さん」仕様の碑鏡は、勇太の弾を薙刀代わりの鉄パイプで捌き、鋭く薙いだ。
 この一閃に合わせて跳んだ勇太、そのままパイプを踏みつけて碑鏡へ前蹴り。
「Dam Dam Fuck! あれは限定品だったんだゾ! それを全部食いやがっテ! それにババアをババアって言ってなにが悪いんダ!? なあ、ババア!!」
 頭を振って蹴りをかわした碑鏡は黒髪を怒りで逆立て。
「だまれクソガキ!! ――もう容赦ならん! もう容赦せぬぞ!!」
 養母の指導が祟り、異様なまでの“ババア属性”恐怖症を患っている勇太は反射的にひれ伏しそうになるが……踏みとどまって引き金を引き絞った。
 ミーは今日、ババアをボコってトラウマを踏み越える!

「……クズ。ヒゲ。パチンカス。私のお金でキャバクラ行くのやめて。トラもそう思うよね」
 ぽそぽそつぶやきながら、押収品の特服に着られた七海が疾走する二輪車の上で、なぜかこちらも特服姿のぬいぐるみにうなずきかけた。
「あァ!? おまえの小遣いって、もともと俺が稼いだ金だろうが! 陰険! 犯罪者予備軍! クズ! ヒゲ!」
 クルーザーで並走する五々六も、オトナ気を出玉といっしょに置いてきたかのような有様で言い返すが。
「ヒゲではない」
「確かに――!」
 七海からのごもっともなツッコミを喰らい、口をもごつかせた。
 それにしても七海さん、その他は否定しなくていいんだろうか?
「最悪の場合は殺すこともあるし仕事と思っているから」
 ネットに出回ってるコラ映像みたいな顔とセリフを決め、二輪車の速度を上げた。
「知りすぎてて忘れてたわ……こいつガチやべぇんだった」
 殺らねぇと殺られる! だってこいつ、多分最悪じゃなくても殺すし!
 五々六がクルーザーを傾け、その重量で七海の二輪車を弾きにかかる。
「俺が死ぬ前に死ねやぁ!」
「ジジイになると死にたくなくなるってほんとだね。見苦しいよね、トラ」
 クルーザーの幅寄せや五々六の蹴りを、急旋回やスピードのアップダウンで華麗にかわし、七海は五々六の臑に尖った石をゴツゴツ叩きつける。地味なのに超痛い。あと酷い。
「くっそ! 陰険毒舌クズ小娘が!」
「ヒゲではない」
 激しく臑を連打された五々六の絶叫が倉庫を揺るがせる。
「ヒゲなんざ言ってねぇええええええええ!!」

「だらァ!!」
 ビュオウ! アランの鉄パイプが空気を力任せに引き裂き。
「っしゃぁ!!」
 パグン! 深澪のバットが鉄パイプをななめに振り、いなしながら打ち返す。
 その深澪の横につき、彼女が攻める隙をつくるのが轍の仕事だ。
「……姉御、今なら行ける、ぜ」
 轍のフォローを受けた深澪が反撃に転じるが。
「っと。凶器はいけませんよ。思いの丈をぶつけたいならステゴロで」
 深澪へやわらかく言い聞かせながら、下から掌打で突き上げたバットを蹴り返す雪道。
「チョーシくれてんじゃねぇ!」
 窮地を救ったはずの雪道に吐き捨て、アランが再び深澪へパイプ攻撃。
「横の子ジャマだよぉ!」
 互いに間合を失い、ついにはガツリと額を打ち合わせる深澪とアラン。
「――大将、一度仕切りなおしを」
 霧鎖死の参謀役というポジションで参加している雪道が、素手で殺し合いかねないふたりの間に割って入ろうと踏み出した――足を引き戻して飛び退いた。
「……邪魔を、排除する」
 騒ぎに隠れて忍び寄っていた轍が、たった今まで雪道のいた場所から貫手を引き戻してささやいた。
「この騒ぎが始まる前に自分から目を隠したでしょう? 考えを読まれないように。だから、来るだろうなとは思っていましたよ」
 雪道の両手がゆっくりと持ち上がり、胸の前で右手を前、左手を後ろに置いて構えられた。古流柔術や合気道に見られる基本の型である。
「自分を襲ったのはなぜです?」
「……わかるんだよ。気持ちが。奪われる者の、な」
 なるほど。プリンを奪われた深澪と昼寝の時間を奪われ続けている自分を重ねたか。
 言葉少ない契約主の気持ちを察し、雪道はため息をつく。
「でしたら寝る時間を考えてください。夜に充分な睡眠を」
 ジャリっ。床をにじる轍のつま先が雪道の言葉を止めた。
「……そろそろ、いいだろう、が。仕事は、してる」
 轍が求めるものはあくまでも昼寝。ただそれだけなのだ。
「だから夜眠ればいいでしょうに。――しかたありませんね。いつでもいいですよ。接近戦で自分に勝てる気なら」

「なんでこいつらはこんなに派手な格好をしているんだ? 警察に追われるなら、目立たない服装のほうが逃げやすいだろうに」
 押収品の中から適当に選んできた特服を見やり、恭也はため息をついた。
 彼の目的は、陣営に関わらず争いを鎮圧することなのだが。
「まったく。本気の奴らが多すぎる」
 あちこちで巻き起こっているリンカーと契約英雄の抗争。果たしてどこから止めに入ればいいものか。
 と。
「日ごろの恨みを思い知れ~」
 なんとものんびりとした声とともに、伊邪那美が降り来たる。
 あっさりとこれをよけた恭也が、伊邪那美の姿を見て絶句した。
「お友だちに聞いてそろえてみたんだよ! ゾクっぽいかっこ~」
 オーバーサイズの衣装を着込んだ小さなナースさんがそこにいた。それも今どきのじゃなく、メンソール配合軟膏のフタに印刷されているアレっぽい、エプロンドレスのやつ。
「なんかダブダブで~、ケガして~、お腹に包帯巻くんだ~って」
 恭也に胸を張ってみせた伊邪那美が、ここでぷっと吹きだした。
「恭也ヘンなかっこ~。ぷぷ」
 恭也は伊邪那美からイラっと目を反らし、深澪とアランへ向かう。
「食べ物ひとつでこんな騒ぎを起こすとは、あいつら本当に社会人か。飢え死に寸前でもなければまた買ってくればいいだろうが」
「む~し~す~ん~な~!」
 しがみついた伊邪那美がわめき散らすが、無視。ただでさえ頭の痛い状況なのに、これの相手なんかしていられるか。
「恭也はぜんぜんわかってないんだよ!」
 なにをだ? 立ち止まった恭也に、伊邪那美が半泣きで訴えた。
「大事な人が死んじゃった次の日にお見合いすればいいの!?」
「……いいわけがない」
「ほんとに大事なものはいっこしかない。代わりなんてないんだよ」
「それはそうだろうが、でもな」
「深澪ちゃんの恨みはお小言なんかじゃ止めらんない……それにボクの恨みは」
 ボクの恨みは――?

●故意
「深澪とアラン、まさに技と力の対決だな。どっちもセンスだけでやり合ってんのが惜しいとこだけどよ」
 少し離れた場所から両者の死闘を見物していた龍哉が鼻を鳴らす。
「共鳴せずにあれだけ闘えるオペレーターと社長がいるなんて思いもしませんでしたわね。どちらも品行に問題ありという気はしますけれど」
 それを聞いたヴァルトラウテが肩をすくめてみせる。その様がやけにかわいらしくて、龍哉は思わず笑ってしまった。
「なんですの?」
「いや。俺もケンカに混ざりてぇなと思っだだけさ」
「深手を負った体でまだ闘いたがるあたり、さすがと言えばさすがですわね」
 言いながら、ヴァルトラウテが和馬と俺氏を指し。
「でも、やろうと思えばやれるようですわよ?」
 ――和馬のパンチが俺氏を打ち、俺氏のキック(鹿的には前脚なので)が和馬を突く。
 どちらもノーガードで、凄絶なまでのどつき合いなわけだが。
「ケガさせらんねぇしケガできねぇんだけど!」
 倉庫の外に詰め寄せたHOPEバトルメディック団の尽力により、和馬も俺氏もダメージを負った瞬間に癒やされ、無傷をキープさせられているのだ。
 正直なところ、お互いに怒りも覚悟もどうでもよくなっていたのだが、しかし。
『キースもういい! 共鳴を繰り返すな! すぐに代われ!』
『倉庫の中の連中を無傷で帰せって言ったの、隊長じゃないっすか……交代が来るまで保たせまガハァ!』
『キースーっ!!』
『た――隊長。あいつに伝えて――俺――もう1回――』
 とかいうやり取りが外から聞こえてきたりするので、個人の都合でやめるにやめられないんだった。
「……ああなるのわかってて、愉快にやり合えっかよ」
 げんなりと言う龍哉。
 対するヴァルトラウテは済ました顔で。
「先に外のみなさんへお断りしてから混ざればいいのですわ。十全を尽くして倒れたなら、そのときは龍哉の魂を喜びの野へ誘いましょう」
「ヴァル。おまえ俺のことどんだけ連れてきてぇんだ?」
「それが嫌なら自重なさい。私たちが目ざす先は未だ遙か彼方にあって、影すらも見えてはいない有様なのですから」
 龍哉は大容量のクーラーボックスを見やり、苦い笑みを漏らして体を伸ばした。
「結局混ざる気ですの?」
「終わらせに行こうってだけさ。そしたら果てしない旅とやらへ戻ろうぜ」

「ふっ!」
 由利菜のチェーンの先が、大きなカーブを描いてリーヴスラシルの胸元を狙う。
「足元がお留守ですよってに!」
 リーヴスラシルはチェーンを腕に巻きつけて動きを奪い、木刀を由利菜が踏み出したつま先へと突き下ろす。
「そこを狙ってくるのはわかっていたわ――ぜよ!」
 チェーンを引かれる力を利用し、横合いに踏み込んだ由利菜が、裏拳で攻撃。
 その手首を肩で受けていなし、続く体捌きでチェーンごと由利菜を放り出したリーヴスラシルが笑んだ。
「この機会に戦技の指導でもと思い上がっていたが、ユリナはすでに教えを受ける段階を越えているようだな」
 対する由利菜も笑みを返し。
「――伊達にラシルのつ、ツレをやっているわけではありません。のぜ」
「そうだな……我が君」
 ぽうっと赤くなった由利菜が目線を泳がせる。その視線の端に、ぐだぐだと争うエージェントたちから離れ、状況を見定めていた龍哉とヴァルトラウテが引っかかった。
「龍哉さんたちもお誘いしてティータイムにしましょうか」
「賛成だ。さすがに疲れた」
 いそいそと紅茶を淹れる準備を始めた由利菜に、リーヴスラシルが薄笑みを向けて。
「対立する立場からすれば、紅茶でティータイムはなく、抹茶で茶会をするのだと反対するべきかな」
「ケンカはもういいわ。怒るふりをするだけでもこんなに疲れるのだもの」
 由利菜は手を止めて深澪たちを見て眉を八の字に困らせる。
「なのに、あんなに怒り続けられるなんて……あのふたり、お互いのことが嫌いになってしまったのかしら?」

 竹刀をピシピシ床に打ちつけながら、征四郎がなぜか正座中のリュカへ。
「リュカはすぐカゼひくくせにおなかだしてねるし、いつもみててヒヤヒヤなのですだぜ! もっとじぶんをだいじに、ですだぜ! おねがいですから、だぜ……」
「ごめんねせーちゃん、いっぱい心配かけちゃって。お兄さん気をつけるよ」
 しょんぼりするリュカに征四郎があわあわと。
「き、きにすんなぜ! おたがいさま! こういうのはおたがいさまなのです! いつもまもってくれてありがとうなのですぜ!?」
「せーちゃん」
 なにやらほんわりした空気の脇では、リュカ同様に正座させられた凛道がユエリャンに踏まれていた。
「あの、ユエさん? あちらも仲なおりしているようですし、こちらもそろそろお互い様なのでありがとうございます的な」
「うるせぇ! 眼鏡置きの分際で俺を年増呼ばわりしてくれたロリコンはぜってぇゆるさねぇ……!」
 ヒールの先で凛道をぐりぐり。
「あ、我輩おチビちゃんには特に不満がない。誓約上、これ以上対立するフリはできぬ。これで仲なおりであるぞ」
 凛道をぐりぐりしながら征四郎とがっちり握手するユエリャン。
「いい物語だねぇ。お兄さんほろりとしちゃうよ」
 サングラスの上から涙をぬぐうリュカであった。
「なぜ僕ひとりだけその輪の中にいないのでしょうか……? それから僕は眼鏡が本体でもロリショタ好きでもありません。凛道です――って、眼鏡は! 眼鏡グリグリだけはやめ」
 ゴリっ。凛道の悲鳴が唐突に途切れた。
 ヒールで踏み倒された凛道の登頂部を、七海の二輪車が轢いていったのだ。
「……同じほうによけちゃったのが悪かったね。不幸な事故だよね、トラ」
 戻ってきた七海はユエリャンから目を逸らしつつぽそぽそ。その間にゆっくりと凛道を轢きなおした。ゴ、ギ、リ。
 句点の向こう側へ逝きそうになる凛道を地上に連れ戻すため、倉庫外のバトルメディック3組が死亡フラグの設置と回収を行うことになった……。
「っておまえ……そいつ、踏まれててよけるもクソもなかったろうが。それにさっきまでの華麗な二輪車テクはどこいったんだよ」
 凛道の乗っていた単車から慣れた手つきでガソリンを抜き取り、自分のクルーザーに飲ませながら、五々六がツッコんだ。
「ハードラックがダンサブった」
「意味わかんねぇわ!」
「みんな星になってしまえ」
「古すぎて通じねぇわ!」
「その臑、石で叩き折る」
「直球すぎて震えるわ!」
 すてきな笑顔で失神した凛道を置き去り――征四郎はユエリャンに「なかなおりはしましたけど、おうちでガルーとケンカするのはダメなのですぜ!」と、第1英雄との関係性についてお説教中。リュカはそれをにこやかに観察中――七海と五々六のデッドヒートが再開した。
「その二輪車スピード出過ぎじゃねぇ!? あとその石! なんかすげぇ痛ぇんだけど!?」
「改造したから。あと、この石ライヴス結晶だから。即席AGW(アンチ・ゴゴロク・ウェポン)」
「大事な結晶なに下らねぇことに使ってくれてんの!? バカなのアホなのシリアルキラーなの!?」
「ヒゲではない」
「いやだからヒゲとか言ってねぇッー!!」

●主張
 朝霞とニクノイーサは変身ポーズの特訓を続けていた。いや、正確には朝霞がニクノイーサを付き合わせているだけなんだが。
「ほらそこ! 腰のひねりはもっと――こう! なのよ!」
「朝霞の言うことは理解しているが、このほうが決まっていると思わないか」
 しゅっと背筋を逸らしてポーズを決めるニクノイーサ。
「あ~わかってない! ニックはぜんっぜんわかってない!!」
 朝霞さん絶叫。激怒である。
「私の「へん!」はしゅばって感じでしょ? そしたらニックがバチっと「しん!」なの。なのに今のニックはズビシィ! で、独りよがり。ふたりの心がひとつになって初めて「変身」。ふたりってとこが大事なんだから!」
「待て朝霞。それはおまえの考えるベストであって、結局は独りよがりだろう。朝霞のベストと俺のベストが重なる変身こそがベスト・オブ・ベストのはずだ。はっきり言うぞ。朝霞はまちがっている」
「理屈ばっかりこねこねしてるからダメなのっ! 形ばっかりなぞるだけで、ガチでもマジでもないじゃない! トラックスーツの黄色い人だって言ってたでしょ!? 考えるんじゃない、感じるんだ! って!!」
「考えない者ほど感覚だの習うより慣れろだのと連呼する。元の世界で、俺は自分の才覚ひとつでのし上がった。それは感覚のおかげではない。効率を読み、計算を積み上げた結果のことだ」
「正義の心は効率や計算じゃ測れない! ……私のポーズを見て。感じて。私の内で燃える正義を」
「ならば朝霞も俺のポーズを見て考えろ。俺の深慮が織りなす黄金律をな」
 額を突き合わせて言い合っていたふたりが同時に身を翻して離脱。互いに自分の変身ポーズを見せつけるため、入念なストレッチに入った。

「朝霞たち、なに話してんだろうな?」
「ふふふ。きっとふたりにしかわからない素敵なお話だよ」
 無傷にして疲労困憊の和馬と俺氏が微笑みを交わした。
 外ではキースに続いて亮子が、セルゲイが、ンジャホが散った。
「俺氏。おまえの鹿せんべい、カビ生えてたから捨てたんだよ。俺氏が腹壊したらやだもんな」
 和馬が俺氏を殴り、ジェーンが逝った。
「和馬氏……実は俺氏、鹿せんべい温存した過ぎて和馬氏のお菓子食べちゃったから……お詫びにアップルパイ、お取り寄せしたんだ。クーポルンで」
 俺氏が和馬を蹴り、ピエールが逝った。
「クーポルンっておま、お取り寄せおせちがしょぼすぎて炎上したサイトじゃねぇか! ……いや、大丈夫だよな。おまえがお取り寄せしてくれたアップルパイだもんな」
 裕己が逝った。
「ふふ。いっしょに食べようね」
 セランが逝った。
「いや。せっかくだからよ、みんなで食おうぜ。まだ家族じゃねぇけど、さ。もう家族みたいなもんだしな」
 もうやめてくれよ! もういいだろう!? おまえらは俺から部下を……家族を全部奪うのか!? 外から隊長の悲痛な叫びが聞こえるが、だめだ。今の和馬と俺氏には届かない。
「もう帰ろうぜ。俺たちの家べっ」
「和馬しぶっ」
「死亡フラグ立てる人のせいだよね。道交法で決まってるもんね、トラ」
 七海の二輪車に轢き潰された和馬と俺氏の横に、五々六が一時停止。
「……事故るヤツぁハードラックとダンサブるらしいぜ?」
 新たな獲物へ向かったキラー七海を追い、去って行った。

 誰にも邪魔をされることなく。
 負った瞬間にダメージが消滅するため、動きを鈍らせることもなく。
 勇太と碑鏡は死闘を演じ続けていた。
「お迎えがそこまで来てんじゃねぇカ!? ババア!」
 鉄バイプをかいくぐって碑鏡に肉迫した勇太が、両手の改造モデルガンを連射しながら横回転。頭部を狙った回し蹴りから胴を薙ぐ後ろ回し蹴りへと繋ぐ。
「動きが荒い。息がもうあがっているのではないか? はてさておかしきことよの。ババアより先にお疲れか?」
 一発めの蹴りは体を逸らし、二発めの蹴りはかがんでかわした碑鏡が嘲笑った。
「Shit worm!」
 吠える勇太。
 体術や得物扱いで碑鏡に劣っているつもりはない。しかし、なんと言うかもっと根本的な部分で上を行かれているような――いったいなにが悪くて、届かない?
 迷う勇太にふと。碑鏡が真剣な目を向ける。
「心が強ばり、体が縮こまっておる。かような有様でワシを脅かせると思うてか」
 鉄パイプを下段に構え、踏み込んだ碑鏡が勇太の臑を打つ。
 これを後ろに転がってよけた勇太はサングラスを顔からむしり取り、モデルガンといっしょに投げ捨てた。
「認めるゼ。ミーはババアが怖い。染みついてるんだヨ、あの恐怖が」
 彼の心の真ん中には養母ステラがいる。
 その恐怖を越えるつもりでいた。
 その恐怖を忘れるつもりでいた。
 越えて忘れて、ついでに自分を尻に敷いて秘蔵のレアチーズケーキまで食い尽くした契約英雄をシメるつもりでいた。
 でも。
「ミーはまだまだ未熟だナ。認めるヨ。その上で、挑ませてもらう。行くゼ、バ」
「みなまで言わせるか」
 勇太の頭に鉄パイプがめり込み。顎の先を払われ。鳩尾を突かれ。最後に臑を打たれてうつ伏せにぶっ倒れた。
「……あれほど長々と考え込んだりしゃべり倒したりしておいて、その隙を見逃してもらえると思うたか」
 壁越しにバトルメディック集団から癒やされる勇太を見下ろし、碑鏡は悪い笑みを浮かべた。
「養母がこやつに刻み込んだように、ワシも刻みつけておかねばならんかの。二度とワシに逆らえんよう、心身の芯に」
 どうせダメージは残らない。だから、どれだけ折檻しても大丈夫。

 スカジャンのポケットに手を突っ込んだまま、轍は無造作に雪道へと歩み寄る。
 まさか無防備で、真正面から来るとは。轍にはそれを推して選ぶだけの意図があるはずなのだが、読めない。
 ――どう来ようと捌ききるだけですけどね。
 考えても無駄なら考えるのを止める。なにがいつ、どう跳ねるか知れない闘いにおいて、思索は迷いであり、隙だ。
 轍の両手がポケットの内で握り込まれた瞬間。
「ふっ」
 その唇からなにかが噴き出された。仲間が私闘の中で生み出した、コンクリートのカケラだ。
 雪道は突きだした左掌で散弾と化したカケラを受けながら踏み込み、その掌で轍の視界を塞ぐ。
 轍は左に回り込んでこれを逃れるが、これは掌をわずかに轍の右目に寄せておいた雪道の誘導。轍が回避のために踏み出す一歩の先に左拳を打ち込んだ。
「……そう来るだろう、な」
 轍もまた読んでいたのだ。雪道の動きを。
 ――雪道は気配を読むとか勘で動くってのより、積んできた戦闘の経験で動くから、な。
 雪道の拳を上から押さえ、掌を払う轍。
 果たして互いの間に置かれた障壁は取り払われ、視線が交錯する。
 と。
 轍の視線が横に流れた。
 なにを狙う!? 雪道が彼の視線の先を先まわりし、意図を測ろうとした。……それこそが轍の意図であると気づかぬままに。
 視線とは逆の方向へ跳んだ轍が雪道の背後を取り。彼の着たスカジャンの右脇に裁縫針をはしらせた。
「なるほど」
 右脇を縫われたことで右腕は高く上がらなくなったが。
「でも、振りかぶる必要なんてありませんから」
 雪道は体を返しながら右掌を轍の鳩尾にあてがい、弾いた。古流で“通し”と呼ばれるその打撃法は、服どころか鎧すらも無視して敵の肉体にダメージを与える。
「……それを、待ってた」
 口の端に薄笑みを浮かべた轍は崩れ落ち――意識を失った。
「自分に打たせて、失神からの寝に移行する気だったとは……」
 轍の寝息を聞きながら、雪道は静かに戦慄した。

「――で、なんだ。伊邪那美の恨みってのは」
 涙を目の奥に引っ込め、妙にもったいぶる伊邪那美に、待ちきれなくなった恭也が訊いた。
「そう訊かれるとなんだろな~って」
 えへ~。てれてれと笑ってごまかす、自称・神世七代の一柱さん。
「……思い出してからかかってこい。それまで憶えていられたらな」
 脚にしがみついていた伊邪那美を無慈悲に引き剥がして放り出し、恭也は深澪たちのほうへ踏み出した。
「そういうとこだよ! 恭也はいっつもムッツリで! だからタレもできないんだよ~!」
「タレ?」
「芸人さん用語で彼女のことだよ」
 いったいどこからそんな単語を仕入れてくるんだおまえは。恭也はため息をつき、まとわりついてくる伊邪那美をつまみ上げた。
「だとしても、おまえが困ることなんかないだろう?」
「そういうとこなんだってば~! 恭也かわいくない!」
 ズビシ! 宙づり状態の伊邪那美が、ぷくっとした人差し指を恭也の鼻先に突きつけて。
「恭也はリュカちゃんみたいにもっと女装するべきなんだよ! ヴァルトラウテちゃんも由利菜ちゃんも征四郎ちゃんも和馬ちゃんも、み~んなかわいい恭也が見たいんだから~」
「おい、最後にひとり男が混ざってなかったか?」
「ボクが写真とったげる! 恭也のかわいい一瞬を永遠にするのがボクの使命だよ~!」
「いや待て。おまえの使命、愚神の駆逐だっただろうが」
「女装! 女装! JOSOU!」
 伊邪那美の口をとりあえず塞ぎ、恭也は深くため息をついた。

●笑ンド(エンド)
「ボクのプリンー!」
「私の仕事ー!」
 飽きる様子もなく殴り合い続ける深澪とアラン。
「まだまだ終わりそうにありませんわよ?」
「いや、セリフが人間語になってきてんだろ。潮時ってやつさ」
 ヴァルトラウテを後ろに乗せた龍哉がフルスロットル。ヤン車を元凶のふたりの間に割り込ませて灸ブレーキをかけ。
「と!」
 龍哉がアランのオーバーハンドフックを腕ですくいあげ。
「もう!」
 ヴァルトラウテが深澪のソバットを十字受けで弾く。
「ンだラァ!?」
「ヤるんならヤっちゃうよぉ!?」
 当然憤る深澪とアランだったが。
「いいかげんにしなさい! どれだけの人に迷惑がかかったと思っているのですか!」
 ラプサンスーチョン・ミルクティで気力を充足させた由利菜が英国式ハイキックをアランの側頭部へめり込ませ。
「ふたりに職務を放棄されて、句点の向こう側とやらへ行かれては困るのでな」
 リーヴスラシルがヴァニル騎士戦技の当て身を深澪の腹に打ち込んだ。
「アカギたちにきをとられているすきに……ツキカガミたちはオニなのです」
「英国式ハイキックってどんなキックなのかな?」
 容赦ない由利菜とリーヴスラシルのやりように戦く征四郎と、英国式の意味がわからず首を傾げるリュカ。
「やってくれてんじゃねぇかオオ!?」
「敵も裏切り者もまとめてぶっちめ~る!!」
 並の人間なら3日は起き上がれないだろう痛撃を食らっておいて、気を失うどころか燃え上がる深澪とアラン。
「しかたない。俺がブロイズをやる。龍哉は礼元堂を」
 伊邪那美を小脇に抱えたままやってきた恭也が龍哉に声をかけたが、「そいつはもうちょい待て」と龍哉は笑みを返し。
「……よう、ご両人。もう言い合うこともねぇんだろ? そもそもプリン食ったアランをシメる、仕事邪魔する深澪はゆるさねぇ、それだけの話なんだからよ」
「……この声は、まさか赤城様?」
「そう言われてみたら、全体の感じが龍哉くんとヴァルトラウテちゃん?」
 ようやく気づかれたふたりは顔を見合わせ。
「俺らってそんな影薄いか?」
「だとすれば明日から、夜露死苦の代わりに名前を縫いつけた服を着なければなりませんわね。――ですが今は」
 ヴァルトラウテが深澪を、そしてアランを見やり。
「喧嘩を止めるつもりはありませんけれど、これ以上長引くとせっかく用意したものがぬるくなってしまいますから」
 抱えていたクーラーボックスを床へ置き、フタを開ける。
 中に入っていたものは――巻きつけられた保冷剤で冷やされたバケツプリン!
「礼元堂が欲しかったヤツじゃねぇのはわかってるけどよ。やっぱプリンの恨みはプリンで落とし前つけるしかねぇだろ」
 折りたたんで持参した巨大な紙皿を広げながら龍哉が言い。
「私と龍哉で作りましたわ。形が崩れないよう寒天を入れてありますから、食味はプリンそのものとはいきませんけれど」
 その皿でバケツの口を塞ぎ、ヴァルトラウテが思い切りよく反転させると。
 果たして紙皿の上にそびえ立つ10キロ超の巨大プリンが現われた。
「カラメルにホイップに、ソースもいくつか用意してきた。好きに食ってくれ、どうせならふたりでよ」
 深澪が龍哉を見て、アランを見た。
 アランが深澪を見て、プリンを見た。
 問題はなにひとつ解決していない。でも、まわりには自分たちのケンカを止めに来たらしいエージェントたちがいて、目の前にはプリンがある。
「こんなの……食べるしかないよねぇ」
「……ですね」
 深澪とアランはうなずき合い、ヴァルトラウテが渡してくれたスプーンをプリンに突き入れた。
 どれだけ昔悪かろうと、今も実は荒ぶっていようと、ふたりとも一端の社会人なのだ。ここまでお膳立てされた落としどころを無視するわけにはいかなかった。
「レイゲンドウもブロイズもよかったのです!」
 今も凛道を踏みつけ続けるユエリャンへ征四郎が笑いかける。
 その横では、恭也の腕を逃れた伊邪那美が「ボクもプ~リ~ン~!」と突撃をかましかけて、あらためて恭也に拘束されていた。
「伊邪那美は月鏡や征四郎を少しでも見習え。特に征四郎はおまえと同い歳なのに、わがまままも言わずにしっかりしたものだ」
 どうやら今日の説教タイムは長引きそうだ。

「ガチで憎んでるんなら誓約切りゃいいだけだ。そうしてねぇんだから、ま、頭が冷えたらなんとなく元どおりになんだろうよ」
 クルーザーのハンドルに肘をつき、五々六が吐き捨てた。
「ともあれ、これで一件落着ですね」
 その傍らで雪道がやさしく微笑み、うなずいた。
 足元には今も轍が寝こけている。そろそろ起こさないと、また夜眠らなくなる。

「あちらは片づいたようじゃな。ワシらの夜はまだまだこれからじゃが」
 白目を剥いて倒れている勇太の背を鉄パイプの先でつつき、碑鏡は妖しい笑みを浮かべた。
「ワシが喰ろうた菓子と同等の贖いをくれてやるからのう……クソガキ」

『おまえらやっとケンカ止めたのかよ。能力者と英雄はなかよくしねぇとダメだぜ?』
『そうそう。ふたりの絆が俺氏たちの力の源なんだから』
 倒れ伏した和馬と俺氏が、ちょっと体から抜け出した魂的ななにかから声を発した。
 もちろん彼らの姿は誰にも見えないし、声は誰にも聞こえない。
 向こうのほうには綺麗な花畑があって、川が流れてて――うふふ。

 本当になんとなくではあったが、騒ぎは収束した。誰もがそう信じていた。
「――みんな星になってしまえ。トラもそう思うよね」
 プリンを中心に集まる人々のただ中に、獲物の悲鳴と血に餓えた七海がぶっ込む瞬間までは。

 朝霞とニクノイーサのポージングが重なり、得体の知れないハーモニーを奏でた。
「――それよニック! やればできるじゃない!」
「むしろ狭量だった朝霞の心が拡がったのだろう。俺をあるがままに受け入れられる度量が備わった」
 満足気に言うニクノイーサへ朝霞がサムズアップ。そして。
「ニック、今こそ共鳴よ! あのふたりのタイマンを止めに行くの!」
「この状況だ、しかたないな」
「変身! ミラクル☆トランスフォーム!!」
 かくして共鳴し、聖霊紫帝闘士ウラワンダー(自称)となったふたりは見ることになる。
 折り重なる仲間の骸と、その真ん中で特服を着込んだぬいぐるみを抱いてうずくまる少女の姿を。
 少女はゆっくりと顔を上げ。
「どうしようか、トラ。……そうだよね、決まってるよね」
 笑んだ。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • エージェント
    獅子ヶ谷 七海aa1568

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • エージェント
    獅子ヶ谷 七海aa1568
    人間|9才|女性|防御
  • エージェント
    五々六aa1568hero001
    英雄|42才|男性|ドレ
  • その血は酒で出来ている
    不知火 轍aa1641
    人間|21才|男性|生命
  • Survivor
    雪道 イザードaa1641hero001
    英雄|26才|男性|シャド
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 喰らわれし者
    長田・E・勇太aa4684
    人間|15才|男性|攻撃
  • うら若き御前様
    碑鏡御前aa4684hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
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