本部

閉鎖都市からのSOS

布川

形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/11/13 14:09

掲示板

オープニング

●飛び出してきた男
 深夜。
 公道に、クラクションとブレーキ音が響き渡る。

 道に飛び出してきた男を避け、トラックの運転手は急ハンドルを切る。トラックは、一回転しつつかろうじて男をかわした。
「おい、気をつけろよ!」
「す、すみませ」
 飛び出してきた男は、心ここにあらずといったように短く謝ると、雪に足を取られながら、一目散にその場を去って行った。
 あまりにあっさりとしていて必死な様子だったので、運転手は呆気にとられた。

 男にとっては、今自分の身に起こった危機は、些末なことだったのだ。
 そう。先ほど知ってしまったことに比べれば。

『――ノリリスクの市長は、愚神と取引している。』

●通報者
 ノリリスク市長の第二秘書エレメイは、早鐘を打つ心臓を押さえながら、必死の思いで道を走っていた。

(嘘、だ……)

 それは、つい先ほどのことだった。
 夜も遅く、やり残した仕事を思い出し、資料を取りに戻ったエレメイは、市長の執務室に明かりがついていることに気が付いた。
 声が聞こえる。部屋の中には、とっくに帰ったはずの市長と、第一秘書のマラートが居た。
 市長は、誰かと電話をしているようだった。
「ああ、私だ……そうだ。問題ない。指揮官は私の古い友人だ。何も疑われてはいない……」
――取引?
 その内容の不穏さに、エレメイは、二人の前に姿を現さず、じっとその場に立つことしかできなかった。
「ああ。……そうだな。早速だが、明日、私は指揮官を尋ねる。だから次は……3日後、こちらから詳細な情報を渡す。そちらにとっても大いに役に立つはずだ。だから、……”条件”の方はなんとしても、守ってくれ……それじゃあ」

 通信が終わったようだったった。

「要求は?」
「軍隊のデータだ、幸いなことに人命ではない。直接的には……な」
 市長は自嘲気味に言った。
「分かっている、あんな連中と取引をすることが、どれだけ愚かかということは。だが私は……どんなに愚かであろうと、この町を守りたい。自分の命よりもこの町が大切だ」
「……」
「マラート、私は、ノリリスクの市長だ。ノリリスクの市民とほかの町の住民の命を天秤にかけたなら……どちらが傾くかは自明だ。この町には、豊かさは何もない……。だから、だから私は……」
「市長。それがノリリスクのためというならば……何も言うことはありません」
「そうか……喋りすぎたな」
 市長は深く深くため息をつくと、思い出したように言った。
「エレメイは知っているのか?」
 名を呼ばれたエレメイは、心臓を鷲づかみにされたような気分になった。
「彼は知りませんね。彼には、耐え切れないでしょう。愚神と、市長が取引をしているということは……」

 カタン。
 エレメイが立ち上がると、小さな音が立った。
「誰だ?」
 マラートは迷うことなく壁から猟銃をはずした。
 そこには、エレメイの姿はなかった。
「誰か……いたのか?」
「分かりませんが、……気のせいかもしれませんね」
 風が雪を吹き上げて、窓を叩いている。雪が屋根から滑り落ちて、どしゃりと音を立てた。

 それから。
 エレメイはどうやって家に帰ったのか、覚えていない。とにかく必死で、走って逃げた。
 誰かに見られたかもしれない。見られていないかもしれない。足跡は、痕跡は、ノリリスクの強い風が、雪を吹き散らしている。

 自宅に戻ったエレメイは、受話器を取った。しかし、その動きは止まった。盗聴――エレメイの頭に、その2文字がよぎった。
 知ってにしろ知らずにしろ、市長と駐屯軍の指揮官が親しいのは事実だ。どうするべきか。頼れない。いや、もしかすると、自分が消される可能性すらあった。
「どうしたの?」
 恋人が、エレメイに声をかけた。
「いや、……なんでもない」
 どうするべきか。どうするべきなのか。エレメイの頭に、様々な思いが去来する。
「ほんとうに、なんでもないんだ……」
 エレメイは腹をくくった。
 すぐには助けはこない。助けを求めて、助けが来るまでは、すがたを見られていないと信じて、――いつも通りに振る舞うしかない。

●この黒煙上げる黒い町では
 並び立つコンビナートが、今日も空に黒煙を吐き続けている。降り注ぐ煤が、白い雪を黒く染め上げている。

 ロシア連邦クラスノヤルスク地方、ノリリスク。
 ノリリスクは、いわゆる閉鎖都市である。たとえ同国人であろうとも、ノリリスクを旅行するには旅行許可が必要となる。
 排他的な町。
 一言でいえば、ノリリスクはそんな街だった。

「匿名の通報が入っています。ロシア連邦のクラスノヤルスク地方の都市、ノリリスクの市長が愚神と取引をしているというものです。詳細は現地にて……通報者は、市長の関係者とのことですが、情報や発信元と合わせて考えるに、発信者は市長の秘書と思われます」
 H.O.P.E.の職員は、緊急招集されたエージェントたちに向かって早口で告げる。
「あなた方の任務は、通報の真偽を確かめ、もし、それが本当であれば、ノリリスク市長からの情報流出を防ぐことです。また、その確証が得られるのであれば、市長の身柄を拘束した上でロシア当局に引き渡してもらいたいと考えています。
さしあたりのところ、プリセンサーはノリリスク周辺で大きな危険を感知しておりませんが、ノリリスクは非常に閉鎖的な都市です。軍部の動きも不明。どう動けば何がどうなるか予想が付きません。
……もしも、こちらの動きを相手方に悟られれば、とくに通報者には危険が及ぶでしょう」
 別の職員が、エージェントたちに防寒着やその他の物品を支給する。
「我々は、あなた方に、ノリリスクを訪れる身分を用意しました。ノリリスクは閉鎖的な鉱山の町です。ノリリスクの鉱山に投資を検討している投資家とその付き添いの身分を用意しました。
軍部の動きが不明ですから、くれぐれも、能力者、とくにエージェントであることは、基本的には隠したほうが良いかと思われます。ノリリスクは閉鎖的な町ですから、調査がやりづらくなる可能性があります。もしを身分を明かす場合は、相手をよく見極めて、市長側の人間でないかどうかに注意してください。
難しい任務になるかと思いますが、どうか……」
 H.O.P.E.の職員は、ふと通報者の言った一言を思い出した。奇しくも、その言葉は、今自分が言おうとしている言葉と同じだった。
「どうか、ノリリスクを救ってください」

解説

●目標
・2日後までに愚神への情報流出を断つ(第一)。ほか、通報者の保護など。

●場所
ノリリスク。
重工業的な趣のある閉鎖都市。平均気温が極めて低く、強風が吹き荒れる。

●状況
「市長が愚神と取引している」との通報。
市長及び関係者を連行し、ロシア当局に引き渡す。

●登場
・市長
ノリリスクの市長。険しい顔つきの男。
「有能で痛みを伴う政策も市民のためとなれば実行する」という評判。
忙しい人物。妻と現在は国外留学中の娘が一人。

・マラート(第一秘書)
市長の長年の秘書。
独身。郊外の施設に年老いた母親が一人。

・エレメイ(第二秘書)
通報者。秘書になって半年。雑務ほか。
肝は据わっているがただの人。近々結婚を考えている恋人がいる。

・指揮官
ロシア軍の指揮官。個人的に市長と親しい。
評判は、情に厚く義理堅い。

●主な施設
・市長官邸
部外者に対しては厳重な警備だが、日中の許可のある立ち入りはそれほど制限されない。夜間の警備は厳重。

・ロシア軍駐屯地
一般人の立ち入りは厳しく制限。

・その他、鉱山、ノリリスク町内

●市長側の動き
調査開始から2日目に市長は愚神と接触、情報を引き渡す。
場所、取引の詳細は調査開始時点で不明。
市長側の人間が勘づくと取引を変更・中止することも考えられる。

市長:
一日目~執務、夕方ごろに料亭の個室で指揮官との会食
二日目~執務、施設視察

マラート(第一秘書):
主に市長に同行。

エレメイ(第二秘書):
市長に同行するがしばしば雑務などで席を外す。

指揮官:
市長と会食の他は駐屯地にいる。

●その他(PL情報)
・市長、秘書二人、その家族ら、指揮官は人間。愚神ではない。
・市長側に「エレメイに二人きりで会いたい」と言えば、意外なほどすんなり受け入れられる上に見張りもつかない。
・登場人物の家族は人質などにはされていない。彼らは特に事情を知らない。話の展開よっては危険。

なにか質問があれば、アーヴィン(az0034)がお答えします。

リプレイ

●迫る期限
 ノリリスクは閉鎖的な町だ。ぐるりと見渡してみれば、よそ者を見る目がこちらに突き刺さる。

「通報の真偽、情報流出の阻止、通報者の保護……大変そうだね。愚神が絡んでるとなると、余計に見過ごせないよ」
(藍は人助けとなると、張り切りすぎていけねェな)
 真剣な面持ちの稲田藍(aa3140)を、天狼心羽紗音流(aa3140hero001)は少し俯瞰した視点で見ている。
「ま、時間はねェが焦ってもしょうがねェ。さーて、どこから手を付けたもんか」
 わざと気楽な調子で口にしてみれば、稲田の肩の力はほんの僅か抜ける。

「おおっぴらに共鳴できねェのが面倒くせえな。スキルも使えねえ」
「不用意な発言は慎んでよ、サネルさん」
「お父さんだ、バカ」
 彼らは投資家の父子といった装いだ。
 天狼心羽は、派手さを持つ服装を難なく洒落者として着こなしている。対して、稲田は落ち着いた装いである。ぴしりと襟を立てたシャツは、見る人間が見れば仕立ての良いものだと分かるだろう。

●祈る聖女は
「もうよろしいのですか?」
 ステンドグラスから漏れる日を浴び、祈りをささげていた月鏡 由利菜(aa0873)に声をかけた牧師は、修道服から覗く金髪に一瞬心を奪われた。
 一体何を祈っていたのか問いかける牧師に、月鏡はこう返す。
「例え宗派の相違があっても、神を信じる心は同じです」
 何か使命を帯びた風にも思えて、それ以上は問いかけられなかった。

 月鏡は、正教会との交流のために町を訪れたプロテスタント信者という立場で潜入にあたっていた。
『今回市長さんと取引しようとしてる愚神って『楽園』? ……それとも、愚神商人?』
 ひょっこりと顔を出すウィリディス(aa0873hero002)の問いかけに、月鏡はゆるゆると首を横に振る。
「……分かりません。ただ……愚神勢力は一枚岩ではありません」

 極寒のノリリスクといえども、市街地にはそれなりの生活がある。穏やかな町に、愚神の魔の手が迫っている。ところが、それがなんだか分からない。
(関係者は他の方が守ってくれる……。私達は、市長や彼の息のかかった者の拘束に動きましょう)
 頼りになる仲間たちがいるからこそ、任せられる。保護状況を確認しながら、ほっと喫茶店で息をつく。
『何かあった?』
 仲間からの知らせをやり取りするスマートフォンを覗きこむウィリディス。ちょうど、店員が二人分の紅茶を運んできた。
「そうそう、この町の喫茶店の紅茶は良い茶葉を使っていまして」
『先生……紅茶飲み歩きツアーに来たんじゃないんだよ』
 周囲に怪しまれないよう無関係な話も混ぜている。とはいえ、月鏡は紅茶を楽しんでいるようだ。紅茶好きは母の影響だ。

 向かいの喫茶店にも、奇しくもエージェントのすがたがあった。彼は背中越しにひらひら手を振る。

●ティータイム
 任務は<緊急>。手がかりは一本の通報のみ。
「二日後までに市長逮捕して、民間人も保護して……って。いくら十人いるとはいえムリゲーじゃない?」
 天宮 愁治(aa4355)の言うことはもっともである。許された時間はあまりに少ない。
『お仕事です。ご主人様』
 ヘンリカ・アネリーゼ(aa4355hero001)はメイドであるから、天宮と並んで歩けば自然と投資家とその付き人であるという形になる。
 ヘンリカは家事の腕前こそ壊滅的だが、その身のこなしは只者ではない。
 羽振りのよさそうな金持ちに獲物を見定めていたスリは、ヘンリカの油断のなさにそそくさと引き上げる。
 喫茶店に顔を出した天宮は、スイーツを大量に注文し、その場にいた女性たちに声をかける。
「こんにちわ。雪の妖精のようなお嬢さん。その肌の白さは、やっぱり北国だからかな?」
 一瞬遅れて、どうやら自分たちのことを言っているのだと気が付いた女性たちは、きゃあと嬉しそうな声を上げた。若い女性からマダムまで、天宮は態度を変えない。
 首尾よくテーブルに招き入れられた天宮は、にこにこと相槌を打つ。それっぽいことを並び立てる天宮に、ヘンリカは冷ややかな視線を向けている。
 最初はおずおずといった調子の女性たちだったが、どんなささやかなことでも愛想良く聞いてくれる天宮に、次第にお喋りを進めていく。
(女性にばかり話を聞くのは、まあ当然だよねぇ?)
 椅子に身を預けた天宮は、慎重に言葉を進める。今日の天気から――町の発展について。

●鉱山、町の血脈とは
 歩いていくうちに、ふと、遠くに市長官邸が見えた。そこには、リジー・V・ヒルデブラント(aa4420)をはじめとして、市長たちと面会する仲間がいることだろう。
(真偽を確かめるなら全部を疑ってかかんなきゃ駄目だよ姉様? 市長も秘書2人も指揮官も、そも愚神かどうかも。舞台に要らないものは存在しないんだからさ…って姉様に言ったら舞台じゃありませんわって怒られそうだから黙っとこ)
 オーリャ(aa4420hero002)は、お菓子を配りつつ町を歩いていた。警戒心を抱かせない人懐こさは、綿密に演じられているものであるのだが、町の人間にはそうは思われない。
『ハッピーハロウィーン!』
 迷子を見つけて、お菓子を差し出してみれば――同じように菓子を差し出す不知火 轍(aa1641)とかちあった。
『ねえ、これからどこいくの?』
 聞いてみたものの、オーりゃは、なんとなく彼がどこに行くかはなんとなくわかっていた。
『「……鉱山」』
 同時に言って、頷きあう。

 ノリリスクの主力産業はなんといっても鉱山である。町の人間は、天気の話のように、鉱山からの黒煙を嘆く。かと思えば、主力産業であることは理解しているようで、その語り口はどこか誇らしげでもある。

「市長の人物像から見ると私情で取引はしなさそうです……ね。そうなると取り次いだ人間が身近にいることになりますか?」
 辺是 落児(aa0281)は市井を見て回る仲間たちからの町の情勢を聞き終えると、鉱山の関係者にぺこりと一礼をした。
「お世話になります。状況を見させていただいても構いませんか?」

 ルーペで鉱石を覗きこむ辺是は、構築の魔女(aa0281hero001)となにやら商談を始める風に真剣に話し込んでいる。内容は、この鉱山の内情についてだった。
「あちらもことを荒立てないなら潜入するすべが必要なはずです」

 気になるのは新たな大口の取引先、採掘量の変動の有無、鉱石の質や評判。
 注意深く辺りを見回す構築の魔女は、それとなく人を観察する。
『ああ、そいやここってマグマ鉱床だっけぇ?』
 と、そこへやってきたのがオーりゃと不知火だ。オーリャはひょいと作業の手元を覗きこむ。見事なニッケル鉱石だ。
 不知火は、霊石について慎重に調べを進める。
 ライヴスストーンは、ごくまれに鉱石に紛れて発見されることもあるらしい。ただ、ほとんど価値のないクズ鉱石で、実用化の範囲ではないようだ。
「……使われ方によっては投資に値する、かもしれません」
 不知火は几帳面にデータを探る。

 事前に叩き込んだ情報と、おおむね乖離はない。気になるのは、市長の視察が例年よりも多いというところだろうか。
「お疲れ様です」
 辺是らは、一仕事を追えてくつろいでいる鉱山関係の労働者に近づいた。
「初めて訪れましたが、壮観ですね、ここは。昔から替わらず国を支えてきた重みを感じます」
 ブルジョワジーへの敵対心から一行を警戒していた労働者たちは、その一言に嬉しそうな顔になった。ウォッカの駄目押しがあれば、固く結んだ口を開く。これしかできないという労働者や、ふらふらとやってきたよそ者について。
(……なるほど、ここでは訪問者はとても目立ちますね)
 辺是は、細心の注意を頭に思い描いた。

 ここでは、ずいぶんと以前は汚職もいくらかあったようだが、現市長が市長になってからは改善の兆しがあるとのことだ。

 ノリリスクの価値。第一の候補がこの鉱山だった。
「市長と愚神と取引する……愚神が差し出す条件はなんでしょうね? やはり、鉱山関連がこの街の生命線だとは思うのですけれど」
 辺是の言葉に、一同は頷く。

 鉱山は、環境汚染で甚大な被害をもたらしつつ、それでも頼らざるを得ない。生活に必要なものの大半は、他からの輸入に頼っている。
 ノリリスクの現状はシビアだ。

 この都市だけで孤立してしまった場合、経済活動は継続できるのか?
 答えは、否。
(物流が潰されてしまえばどっちにしろ終わりだよ)
 不知火は町が無事でも”生活”が無事では済まない。

 ”鉱山”がなくなれば、ノリリスクは立ち行かない。
 この都市は、危ういバランスで保っている。

●新聞社にて
 新聞社へとやってきた天宮とヘンリカは、社会面の記者を訪ねる。握手を交わして、笑顔の下で天宮は思案する。
(この街が経済的にひっ迫してるのか? 大体、愚神の望む情報を渡して、その対価として得るものはなんだ?)
 ようこそ、と、記者は短く言って、二人に茶を差し出し、何でも聞いてくださいと請け負う。
(金か? 人か? 考えろ、この街が抱える問題が分かれば市長説得の鍵になるんだ)
 鉱山には、とくに変わった様子がないようだ。
 鉱山がなければどうしようもない。しかし、町の人間は、鉱山がなくなったときのことを考えてはいない。過酷な環境か、それを考えろというのは酷かもしれない。

「市長がいれば、なんとかしてくれる気がするんです」

 つまるところ、この町の病理とは――そういうところなのかもしれない。

●市長との邂逅
「市長さん方の真意はさておき余所に飛び火したらどうしますの。母国で勝手な事をされては困りましてよ」
 ビスクドールのような容姿を持つリジーの故郷はロシアである。彼の都市は話こそ聞いたことがあるものの、ここへ来るのは初めてだ。
「まぁ市長自身が悪党の類でないのが救いではあるけどな」

「市長さん、評判が、良い方なのに、どうしてかな」
『それを知る事がお嬢様の勉強でございます』
 心配そうに目を伏せる泉 杏樹(aa0045)に、榊 守(aa0045hero001)は言った。そうだね、と、入り口を見つめる泉の目には、強い意志が宿っている。

「行きましょうか」
 穏やかな笑みを浮かべる雪道 イザード(aa1641hero001)。御代 つくし(aa0657)とカスカ(aa0657hero002)はその付き人として任務を果たす。
「取引するくらい、追い詰められてるってこと……なのかな」
【分からない、けど……その……助けなきゃ、って、思ったりする……よっ】

 ようこそと、市長はおのおのに握手を求めた。エージェントたちは、次々と自己紹介をする。
「ナジェージダです」
 御代の言葉に、エレメイはぴくりと反応した。ナジェージダとは、ロシア語で希望を意味する。

「ヴォルクシュタイン財閥のご令嬢とお聞きしましたが」
「ええ。よろしく」
 レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)が進み出ると、狒村 緋十郎(aa3678)が傅く。
「ノリリスクへの投資を検討しているのだけれど、財閥内部には反対意見の者もいるの。彼らは、市長が冷たいところもあることを気にしているのよ。だから、家族が仲良く映っているところの写真とか、インタビューを行わせて欲しいのよね。そうしたら、安心するでしょう?」
「なるほど……」
「恐ろしい人だと思われてますよ、市長」
「あら、あなたの方もお聞きしたいのだけれど」
 油断をしていたマラートとエレメイは驚いたようだ。
「政務の中枢に携る人間に親しい人物からの生の声を聞きたいわ」
「私は……エレメイ、お前は婚約者がいるんじゃないか」
「あ、ははは」
「あらそう。ぜひ聞きたいわね」
 レミアの凛とした声に、狒村はそっと息を飲む。
「可能なら市長官邸に関係者を集めて、取材許可を取付けたいのだけれど」
「市長もお忙しいですからね。明日はちょっと……ご家族には、それぞれ勝手にインタビューしてもらっても構いませんが……」
「そう。「勝手に」」
 レミアは嗜虐的な笑みを浮かべた。

「この街に愛情があるから市長を?」
 御代の質問に、市長はにっこりと笑って答える。
「もちろん。私は、この町がとても好きなんだ。こんな環境でもね。住んでみると、意外と温かい。ナジェージダとは、良い名前ですね」
「私は……」
 御代は視線をさまよわせ、ぎゅっと胸元をつかむ。
「私の故郷は愚神に襲われて、それで、生き残ったんです。家族はみんな、いなくなってしまったけど……この名前を貰いました」
「それはそれは……お気の毒です」
 心から言っているようだった。少しだけ震えているような気がする。カスカはぎゅっと御代の手を握った。
「ひょっとすると、そちらのお嬢さんも?」
【あの、えっと……】
 カスカはこくんと頷く。
 水面下では、高度な心理戦が行われている。第一秘書は市長と視線を酌み交わし、慎重に発言した。
「愚神とは……ある意味、自然災害のようなものです。誰も悪くはありません」
「愚神は……自分の欲求の為にしか動かないと聞かされましたから……」
 コホン、という咳ばらいを聞いて、雪道は場を引き戻す。
「まあ、身の上話はそのくらいにしておきましょうか」

 雪道は経済活動の視点から、とうとうとビジネストークを始める。株価の変動や物流の動き。仲間の情報は、こういったところでも役に立った。
「よく観察していらっしゃいますね」
「ありがとうございます」

「帝王学を勉強中……なのですか?」
「市長さんは、優秀な方だと、お聞きしてるの」
 鉱山の話を軽く終えたあと。ぺこりとお辞儀をして、泉は言った。
 父からの課題と前置きして、泉は市長に問いかける。
「ヴィランから犯罪者匿う依頼があったとするの」
 ヴィランからの見返りは、まだ認可されていないが、効果は絶大の非合法薬。そして、泉家の人間には手出ししないという約束が為された。
 薬で泉家の人間が多数助かる。
「このような取引を、提示されたら、どう対応したらいいです?」
 ふむ、と、市長は考え込む様子を見せた。
「ヴィランは信用できないし、私はもちろん、犯罪者を匿うようなことはできないね」
「杏樹は」
 世間知らずと思われた彼女の目に、きらりと光がよぎった。
「杏樹は、薬で助かっても、犯罪で手に入れた物と知ったら、傷つくの」 
『お嬢様、感情論はいけません。犯罪が露見した場合、泉家全てが社会の敵になる事が問題です』
 榊がやんわりと泉をいさめた。
「面白いことを言うね。そうだな。……もし、泉家というのが、君にとって大切な存在であるなら……そして、君が、泉家を背負うのであれば。君はなんとしても薬を手に入れなくてはならない」
「市長!?」
 第一秘書が焦った様子を見せたが、市長は、秘書を押しとどめる。
「もしもの話だよ。君の言う通り、犯罪が露見した場合家の人間は傷つく。だから、誰にも気が付かれないように、私は薬を手に入れなければならない。そして、そうやって薬を手に入れたことは誰にも話さない」
 辺りはしんとしていた。
「それが、人の上に立つ者の責任だ。そういう強い人間など、どこにもいやしないのだがね」
 それは違う、と、泉は思う。それは、自分が世間知らずだからではない。

 彼の正義はどこか歪んでいる。
(この都市を想えばの判断……ってところかしら)
 なれば取引はこの都市の為になる何か。有益なものか被害を防ぐ為か。その様子を見ていたリジーは思う。ノリリスクにとっての、『薬』とは何か。

●通報者
 泉が市長に質問している間、榊は秘書らを観察していた。
 ここまでの感触で、通報者がどちらかは確信が持てた。
「あの、秘書さんにちょっと話したいことがあるの」
「それはよろしいのですが、ご用件……」
 泉の言葉に、第一秘書が答えようとしたとき、リジーが不意に指輪に振れた。
「ご結婚はしてないんですの?」
「へ?」
 リジーの言葉に、マラートは少し虚を突かれたようだった。

 コツコツと足音が響いている。他者いない場所まで行きつくと、泉はくるりと振り返った。
「な、なんでしょうか?」
「明日も、市長さんと話したいの」
「明日ですか」
「明日、重要な相手と、取引あって、お忙しい?」
「……ナジェージダ」
 エレメイに、泉はエージェント登録証を見せた。目を見開いたエレメイは、かすかな声で漏らした。榊がスマートフォンを差し出す。
『以後連絡はこれで。盗聴の心配はありません』

 今市長から離れれば怪しまれる。明日までは、いつも通りの仕事。周辺の人間は順調に保護している。それを聞いたエレメイは、こくりと頷くと、再び市長室へと戻っていた。
 そこでは、雪道が和やかに市長らと観光について話していた。
「ありがとうございます。さっそく行ってみたいですね」
「おすすめですよ」
(せっかくだから、名物を、食べ盛りのお嬢さん方に食べて頂きたいですね)
 そう言って振り向く雪道に、御代らは嬉しそうに顔を輝かせる。

●観察と保護
「愚神と取引か……」
『碌な結末にならない予感しかしませんわ』
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)の言葉に、赤城 龍哉(aa0090)は頷く。
「愚神は正体知れずで目的も明らかでない……」
 そこまで言って、赤城はぱちんと拳を打ち鳴らす。
「何だ、いつもの事か」
 赤城の瞳に、きらりと光が宿る。
『市長たちの方はお仲間に任せるとして、万が一に備えましょう』
 目標は、市長周辺の人物の保護だ。狒村らからの情報で、おおよそ押さえておけば良い人物は浮かび上がってきた。
「それじゃあ」
『ええ』
 赤城は第一秘書の母親のいる施設へと向かい、ヴァルトラウテは妻を見張る。安全のためだ。今回のことには、秘書も絡んでくる。
「わざわざ取引を潰す真似をしてくるかどうか、だな」
『先に家族の身柄を押さえて、力づくで市長に言う事を聞かせるという可能性がありますわ』
「……愚神がその気ならもうそうしてたんじゃねぇか?」
『それをしないと言う事は、取引が市長にとって避けえない内容なのかもしれませんわね』

●ノリリスクの空にて
 一足早く市長官邸を離れていた狒村とレミアは、留学中の市長の娘の下へと向かっていた。
 最初は不思議そうな顔をしていたが、市長のことでと話すと、一緒に来ることに同意した。
「娘のあなたから見て、父親はどんな人?」
「お父さんは……町が大好きなんですよ。ひょっとすると、私たちよりも大事なのかもしれませんけれど」
「そう……」
「すみません、面白くないですよね」
「いいえ。もっと聞きたいわ」
 レミアの声はどこか優しかった。
 親というものを知らぬレミアにとって、家族の情愛は憧れでもある。そんな様子を眺めて、狒村はふうと息を吐いた。

 空港へと降り立ち、ノリリスクへ。長いようで短い時間だった。

「来たか。こっちは問題ない」
 赤城らと合流した狒村らは、関係者の位置を確認して護衛に備える。仲間からの連絡によれば、そろそろ、市長が会食に出かける。

●軍部との会議
「さすがに予約もなしに入れねーわな」
 会食の場所は、それなりに良い場所だけあって、プライベートは厳重に守られているようである。稲田はきょろきょろと辺りを見回しながら、それとなく外側から潜入できそうな出入り口や窓のチェックしていく。――隠れられそうな場所も重要だ。
 ゴミを出しに来た店員がふと稲田を見とがめたが、そこへ天狼心羽がやってくる。
『気は済んだか? 観光もほどほどにしとけよ。寒いんだから』
「すみません。いろいろ珍しくて。悪いね、”父さん”」
『おう』

 エレメイからの情報によると、軍の指揮官と、市長が会食を果たす予定らしい。共鳴を果たした稲田の頭から獣耳が覗く。体が少年のように縮んだかと思えば、尻尾が揺れる。
 派手な和装。ともすれば、この姿は紗音流が一番気に入っていた年頃の藍の姿だそうである。メガネはもう必要ない。ガラスに映った姿を満足げに眺めながら、脳内で突っ込む稲田をかわす。
 きらりと輝く緑の目が、セキュリティーをむき出しにする。――罠師。
 監視カメラと通報装置。
「順調だ」
 派手な衣装にも拘わらず、ライヴスを纏い潜伏した彼は、夜の闇に紛れた。逃走経路と表は、天宮が見張っているだろう。

 市長と司令官の会合は、和やかに進んでいく。 全て聞き取れるわけではなかったが、おおむねなにを言っているかわかる。
「どうだい、最近。何か軍の方で動きはあるのか? この前は大変だったそうじゃないか……」
 軍隊の規模、どこに駐屯しているか――。長年の気安さがあるのか、司令官は市長にぽろぽろと機密情報を漏らしてしまっているようだ。
 よもや市長が愚神と取引をしているとは考えていないようだ。
「身柄を拘束するにしても、取引きの証拠として……現行犯逮捕、しかないかな。問題は、市長がどこで愚神と接触するのか、だ」
 明日の重要な取引。
「それで、次はどこに引っ張り出されるんだい?」
 それが本題に思えた。

 その時だった。

「お父様?」
 そこに現れたのは、市長の娘だ。
「な、ど、どうして?」
「おお、お嬢ちゃんじゃないか! 久しぶりだな!」
「娘さんが無事に到着したのを伝えに来たんですよ」
 赤城はしれっと言ってのける。
「お前が呼んだのか、マラート?」
「い、いえ、そんなはずは……」
「勝手に、と言ったでしょう。無事に到着したって、言っておかないといけないかと思ったのよね。ほら、笑って」
 ぱしゃり、とシャッターが切られる。
「まあ、いいじゃないか、飲もう」
 呆気に取られているうちに、話は進んでいく。さりげなく、レミアは机の裏に小型盗聴器を仕掛ける。

●夜
「そうですか、そんなことが……」
 仲間たちは、ホテルで現状をやりとりする。
「プリセンサーから、今のところ、異変はなしですわ。良い方向に動いていると良いですわね」
 リジーが言う。
「軍はシロ、ってところかな。エレメイが渡りをつけている。場合によっては、保護を頼んでもいいかもしれない」
「……H.O.P.E.ととロシアの関係に亀裂を作ることが目的の可能性がありますね……」
 辺是が慎重に言った。

『関係者の場所も分かっていますわ。取引の前には安全に保護できますわね……』
「何かあれば任せてくれ」
 ヴァルトラウテと赤城が請け負う。
 エレメイの話とスケジュールを考えあわせるに、おそらく、取引は明日の夕方だ。視察のあと、市長は大事な用事を持っている。

「軍の内情を愚神に渡すのは、下手すりゃ街そのものを無血開城するのと同義にもなりえる。今人死にが出なくとも、それで本当に良いのかは再考して貰いたいとこかね」
 赤城の言葉に、一同は頷く。

 これらの情報をもとに、考えられる対価は。
「やはり、市の為の何かですわ。環境でもなければ、金銭でもない、即ち……」
 安全。
 エージェントたちの意見は一致した。
「……脅されている、ということか」
 任意にしろ、暗ににしろ。おそらくは、ノリリスクの安全のために。
(なぜ軍隊のデータを欲するのでしょう? 人間同士の諍いの火種にとかでしょうか)
 辺是は、静かに思いを巡らせる。

●市長室にて
「ヴォルクシュタイン財閥というのは架空の財閥ではないようです。確かに存在します」
「そうか……今日は騒がしい一日だった」
 実のところ、それは不知火が作り出したものだったのだが、マラートは疑う様子はない。
「市長……。お嬢様のことも心配ですし、取引は、後に伸ばすというのは」
「今更、引けはしない。ただ、警戒するというのは伝えたほうが良いかもしれないな……」

●包囲網
「ええ、……今、出発したようです」
 無人のビルの屋上から、辺是は市長官邸を眺めていた。
「情報取得は市長しか無理かも知れませんが……拡散は秘書でも可能ですよね」
 注意しなければならないのは、市長だけではない。
 朝早く夜勤を追えて出発する警備員の車。この時間なら店も開いていないであろうに、そっと郊外へと外れていく。それを見た辺是は、見張りのために用意していたレンタカーで後を追う。停車したところで、コンコンと窓をノックする。
「すみません、お話よろしいですか?」
 警備員は、思い切りアクセルを踏んで車を発進させようとした。しかし辺是は予備動作を見逃さず、ひねりあげると、車のキーをとりあげる。

『突然の事で驚かれたと思いますが、ご同行願いますわ』
 レミアたちにより、インタビューと聞かされてやってきた近親者たちは、さらにヴァルトラウテに言われ、市長らの近親者は駐屯地に集められていた。市長からもしも連絡が来ても、普段通りに対応するように言われている。
 市長とその側近の家族が愚神に狙われている――彼らには、そう説明されている。近親者の家族は顔を見合わせていた。
『あなた方を守るのが、私たちの任務です。良からぬ事を目論んでる連中が盗聴していないとも限りませんので』
「そうだったの……」
 震える市長の娘を、エレメイの恋人が慰めている。
「しかし、本当なのかね? その……」
 司令官は、まだ信じられないといった様子だ。
「今日分かる。……信じなくてもいい。どちらが正しいかその目で判断することだ」
 赤城の言葉に、司令官は頷いた。
「うむ……」

●取引
 朝早く起きてチェックアウトを済ませた月鏡は、ホテルの浴室で共鳴を果たす。今日が始まる。

 視察は、鉱山の近くの精錬所だ。
 稲田はぺこりと市長に会釈をすると、何が起きても良い体制を整える。

【ぁ、の……その……ここ、はどういう……施設、なんです、か……?】
 市長は厳しい顔をしていて、マラートとエレメイが応対している。
「精錬所ですよ。本来なら、ご案内したいところなのですが……今日は少し、大事な打ち合わせがあるんです。何か用があれば、エレメイにでも」
【それ、は……今日じゃ……ないとだめ……ですか?】
 市長は答えなかった。代わりに、マラートが答える。
「……すみません、市長はお忙しいのです」

 刻一刻と時間は迫っている。

 ”客人”がやってくる様子を、持ち場に戻った辺是が眺めていた。裏口から通され、警備員に挨拶をされる男――。
 それは、ただの男に思えた。影が、濃いように思える。痩身の、険しい顔をした男だ。
 エレメイは、書類をとってくるように言いつけられて、その場を離れる。泉の姿を見て、エレメイはその場にへたり込んだ。エレメイの無事を、泉はエージェントたちに伝える。
 第一段階は、これで問題ないだろう。

「それで、市長。軍の情報は頂けるのですよね?」
「ああ……こちらだ」
 市長の手から書類が渡されそうになったところで、人間は動きを止めた。
「ぐっ……」
「……そこまでです。我らが神は全てを見ておられます」

 セーフティーガス。共鳴した月鏡による聖女の一撃が振り下ろされた。稲田がスマートフォンで、様子を撮影する。決定的な証拠。
 そして、――充満するガスにもかかわらず、立っているものが一人。
「おや、おやおやおや……取引、不成立といったところでしょうか?」
 にやりと笑う口元は、耳まで裂けているかのようだ。ライヴスゴーグル越しの反応が膨れ上がる。
「残念です、市長……我々の庇護を失ったこの町を、守るものなどもはやいない! 誰も、鉱山だけが取り柄の、こんな辺境の町など気にはしない。この町はもはや手に堕ちたも同然」
「そんなことはないよ」
 御代のセリフは、冷静だった。黒髪に青い瞳と獣の耳。カスカと共鳴した、彼女のすがた。
「私たちは……H.O.P.E.! ロシアにも、私たちがいる!」

「こっちだよ」
『逃げるぜ!』
 その頃。天宮と天狼心羽の声で、市長とマラートは我に返る。身動きの取れない中、彼らは軽々と持ち上げた。
「愚神と戦う気なんてさらさらないけどね。尻尾撒いてスタコラ逃げるさ!」
 エージェントたちが、官邸から人々を避難させている。放たれた一撃を、エージェントらは難なく受け止める。
「ふん……いいでしょう、ここは退きましょう」
 愚神はくるりと背を向けると、その場から消えた。

「……」
 共鳴を解いた何人かのエージェントたちに、市長は目を見張る。ガスの効果が切れた。マラートがよろよろと立ち上がり、続いて、市長が立ち上がる。
 毅然と同行する意思を見せる。

「愚神と取引だなんて……恥を知りなさい」
 レミアのスパークが、ゆっくりとなりを潜めた。レミアの表情はほんのわずかに、同情を帯びていた。

 その声で、市長は悟る。あれは慈悲だったのだと。
 もしも市長が当局へ引き渡されれば、娘とも当分会えなくなる。だから、その前に一目会わせて親子の会話をさせてあげたいと――そういうことなのだ。

「残念だ……」
 長年の友を失った司令官が言った。

●ノリリスク
 天宮は、HOPEから愚神の報復がある危険性を示唆し、街に能力者を置くように進言していた。愚神が出没したとあって、おそらくは警戒が置かれるだろう。
 100%安全というわけではないが、それでも、大きな進歩と言える。

 市長逮捕のニュースは、ノリリスクに大きな衝撃を与えた。これからどうなるか、先行きの不安を見せるこの町。見方を変えれば、ようやく。立ち向かうことができるようになるのかもしれない。
【この町も、もっと……よくなったり、して……】
 カスカの言葉は、断定を避けている。けれど、希望があった。
「きっとそうなるよ」

 ノリリスクの雪は、鉱山から立ち上る黒煙に染まり、辺りはさびれていて、人が住むのには、やはり難しい町だけれど。
 閉鎖都市。それでも、そこには人々の生活がある。
 かりそめの平穏ではない。
 エージェントたちは、人々の本当の平和を守る。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • エージェント
    稲田藍aa3140
  • エージェント
    天宮 愁治aa4355
  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
    人間|18才|女性|防御
  • 想いの蕾は、やがて咲き誇る
    カスカaa0657hero002
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • その血は酒で出来ている
    不知火 轍aa1641
    人間|21才|男性|生命
  • Survivor
    雪道 イザードaa1641hero001
    英雄|26才|男性|シャド
  • エージェント
    稲田藍aa3140
    獣人|35才|男性|回避
  • エージェント
    天狼心羽紗音流aa3140hero001
    英雄|45才|男性|シャド
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
  • エージェント
    天宮 愁治aa4355
    獣人|25才|男性|命中
  • エージェント
    ヘンリカ・アネリーゼaa4355hero001
    英雄|29才|女性|カオ
  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420
    獣人|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    オーリャaa4420hero002
    英雄|11才|女性|ソフィ
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