本部
掲示板
-
Trick or Treat!
最終発言2016/11/05 21:05:23 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/11/04 17:41:03
オープニング
●共通OP
秋晴れの十月中旬、ここは大英図書館。そしてH.O.P.E.ロンドン支部でもある。
長い廊下にコツコツと響く靴音。
一人の職員が扉の前で立ち止まって大きく息を吸う。静かに吐いて気持ちを落ち着かせたところでノッカーを叩く。女性の返事が聞こえてきたので入室すると、そこは小部屋だ。テーブルの向こうで微笑む応対の秘書へと用件を伝える。
「お待ちくださいませ」
秘書が内線で連絡した。
職員はいつものように報告書を秘書に預ければすむと考えていた。しかし支部長が直接会うとの返答に何度も瞬きを繰り返す。
秘書に導かれて館長室へ。奥の非常に広い机にはたくさんの書類や本が積まれていた。その向こう側で席についている支部長キュリス・F・アルトリルゼイン(az0056)に報告書を手渡す。
一分にも満たないはずの、しかし長い時が経過する。
「プリセンサー能力者三名によれば緊急性はないようですね。それにしても十月末から十一月初旬にかけて、多数の従魔、もしくはH.O.P.E.に仇なす者が出没ですか」
「はい。警戒すべきはイギリス全土になります。他の地域に関しても注意が必要とのことです。ご存じの通り、その時期はヨーロッパ各地でハロウィンとガイ・フォークス・ナイトが催されます。仮装した人々の間に紛れられると大変ではないかと――」
キュリスが片眼にかけたモノクルに触りながら、職員の前でもう一度報告書に目を通した。
「……リンカーのみなさんにはあらかじめ各地に潜入してもらいましょう。それと、せっかくのお祭りです。従魔などの敵さえ倒せたのなら、仕事一辺倒ではなく楽しんでもらって大いに結構。そのように計らってください」
キュリスが話した内容を職員はメモに認める。仕事場に戻ると依頼文章を作成。リンカー達の目に触れるよう配信するのだった。
●街にて
今日は待ちに待ったハロウィン。街の至る所で仮装した人が行き交い、飾り付けだって派手で可愛らしい。時折「トリック・オア・トリート」と、子供達の元気な声が聞こえてくるのがまた楽しい。
そんな賑やかな夜であった。
ふわふわと、南瓜が浮かんでいるのだ。
ジャック・オ・ランタンだ。
南瓜をくり抜き、顔をしたそれがふわふわと漂っている。
初め、街の人は何の演出かしらと思った。浮いている、凄いねと。
しかし、それは一転する。
浮かんだそれが通行人目がけて飛んでくるのである。
幾ら中身が空洞であるとはいえ、南瓜は固い。そんなものがぶつけられでもしたらただでは済まない。
中にはジャック・オ・ランタンが壁にぶつかる場面も見受けられたが、どういうことか不自然なまでに頑丈なそれは傷一つなくまた人へと襲いかかるのであった。
街は楽しいムードから一転。一気に恐怖の悲鳴に溢れるものとなった。楽しげな悲鳴から、逃げ惑う人達が上げる悲鳴へとなった。
今宵はハロウィン。
賑やかな夜。
彼方此方の家庭や店先で飾られたジャック・オ・ランタンが無数に浮かび、ここぞとばかりに楽し気に舞うのであった。
解説
●目的
→ジャック・オ・ランタンについた従魔を払うこと
●補足
→ジャック・オ・ランタンに憑いた従魔はミーレス級。ライヴスを流込めば剥がれるような、ハッキリ言って雑魚です。
攻撃手段も体当たりの一点張り。
但し、従魔が憑りついているので、どんなにぶつかろうと傷が憑きません。それ故、凄いスピードでぶつかってきて、共鳴した状態でも当たると大したダメージではないものの「いたっ」というくらいの威力はあります。
しかし、住民にとっては脅威そのもの。住民に当たれば骨が折れる程の威力ですので、当たりそうな人がいないか注意は払ってください。
→弱い従魔ではありますが、とにかくその数は多いので骨が折れます。
しっかりと全部従魔は払って、住民達を脅威から守りましょう。
また、これらは全て、住民達が作ったジャック・オ・ランタンなので、壊さないようにしましょう。
従魔が憑いている間はぶつかろうと何ともありませんが、憑りついているのが離れた瞬間から強度は通常に戻ります。その為、ぶつかったりしたら傷がついたり、壊れる可能性もあるので注意が必要です。
→終わった後はハロウィンを楽しみましょう。
バッチリ仮装して、お菓子を貰い歩いても楽しむのも良いかもしれませんね。
リプレイ
●街にて
ふわふわと浮いているジャック・オ・ランタンの姿が目に付く。
これが通常だったとしたら、演出として大いに雰囲気づくりに買って出てくれたことだろう。しかし、これはそんなに甘いものではない。ただ漂っているばかりならまだしも、人を発見次第猛スピードで突っ込んでくるからだ。
ハロウィンのお菓子を大量に買いに来た灰田 倫(aa0877)は、宙に浮かんでいるそれに「ハロウィン! ジャックオーランタンも可愛いですよねー!」と声を上げた。
そんな倫の横でノエル・スノー(aa0877hero001)は目を見開く。
『あの、倫。ジャック…ってあれですよね? あれ、豪速球で飛んできてますけど…』
その言葉と共に南瓜が飛んでくる。
「いたっ! でもかわいい!」『怪我します! 共鳴しましょう!』
浮遊する南瓜たちを前に、「手加減は苦手なんだけど…しょうがないよね…」と高天原 凱(aa0990)は、その大きな体躯に似合わないおどおどとした態度で溜息を吐いた。
住民達手作りのジャック・オ・ランタンが暴れ回っているとはいえ、流石に壊すわけにはいかず、それが不安何思っているのである。
しかし、凱とは裏腹に堂島 涼風(aa0990hero002)は『大丈夫よ、高くん。私は得意だもの』とポジティブに笑んだ。
『おのれ従魔め。且つて、スペシャルゴールデンゴールキーパーと呼ばれたこのボクのキャッチ力を見せてやる!』と、やる気も露わに、高らかに宣言したストゥルトゥス(aa1428hero001)に、ニウェウス・アーラ(aa1428)は「ほんとに、呼ばれてたの……?」と首を傾げる。
それにストゥルトゥスは決め顔で『略してSGGK』と言うが、その略し方に「略は聞いてない……っていうか、危険な匂いがするよ、その略し方っ」ニウェウスは突っ込んだ。
ハロウィンを楽しむ気満々のアリソン・ブラックフォード(aa4347)は、「ちゃちゃっと済ませてハロウィンを楽しみましょ! いっそ、退治しながらハロウィンしてもいいわね」とテンションが高い。それに反し、ホワイト・ジョーカー(aa4347hero001)は『Trouble or treatとでも言いながら家を回るつもりかい? あ、ところでボクこの後、12画面でドラマ一気見の予定があるんで、それまでに片がつかないと帰るよ』とどうでも良さそうだ。
その姿を見て、アリソンは「帰らないで!! ちゃんと最後まで楽しみなさいー!!」と声を上げた。
浮かんでいるジャック・オ・ランタンは住民達の手作りである。つまりは、南瓜の中身をくり抜き、皮を切り抜いて顔に見えるようにしたものである。
それを見て、食べ物で遊ぶということを良く思えない楪 アルト(aa4349)は、「あたしさぁ…正直食材で遊ぶのってどうかって思うんだよねー…まぁ、後で食べるんだろうけどさー」とぼやいた。
常の礼儀正しい姿とは打って変わり、『ああ、なつかしのロンドンですわ!! ヴィクトリア朝時代から何も変わっていない…って言おうとしたのに結構変わってますわね。でも、アレとアレとアレとか100年前からの建物はちゃんとありますわ。イギリスは古いものを大切にしますの!』とBridget・B(aa4635hero001)のテンションは高い。
それに付き合わされるトリーシャ・C・メンドーサ(aa4635)は、呆れたように「お前異界から出てきたんだから歴史一致しねーんじゃねーの…? はあ、ダッリイ、ハロウィンナイトっつってもあたしらはそんなにハロウィンしないし…イギリス人のこいつがひたすら喜ぶために来たようなもんじゃねーか…。そもそもイギリスきたことないし」と突っ込んだ。
●追い払い作戦開始
「南瓜をさくさく回収しますねー!」『壊しちゃいけないんですね。難しそうですね』と共鳴した倫と、彼女をカバーする役として共鳴したニウェウスも一緒に行動する。
倫はまずリンクコントロールを発動する。その後、多数宙に浮いているジャック・オ・ランタンの前に躍り出た。
すると、倫の姿を認めたジャック・オ・ランタン達は一目散に向かってくる。まるで砲弾だ。もしくは、ボールが無制限でドッヂボールの集中砲火でもされているようなものである。しかし、そのボールの大きさは実にピンからキリで、中にはボーリング大のものも飛んでくるのだから実に笑えない。
それを、倫は見極めの眼を発動し、「捕まえますよー! かぼちゃ採集―。クリスマスを前に、大切に取っておいたサンタ捕縛用ネットを使う時ですね!」『しまいっぱなしにしてただけでしょう』と、タイミングを見計らって効率よくネットに絡め取る。
そして捕まえられるだけ捕まえると、ネットの中でデコピンをし、南瓜を壊さないよう優しく、しかし従魔は容赦なく駆除していく。
そんな風に倫が奮闘している横で、ニウェウスはネットを逃れたジャック・オ・ランタンの進行方向に回り込み、一気に距離を詰めてライヴスを流し込むと、剥がれた従魔に止めを刺した。
従魔が剥がれたジャック・オ・ランタンは元の強度に戻っている為、「壊さないように、壊さないように……」とそっと置いた。
その様を見ていたストゥルトゥスから『ふと思ったんだけどさ、マスター。戦旗を使えば受け止めやすくね?』と提案があり、「あ、そうか。旗の部分を使えば……」とその案を採用する。
成程、これは効率が良い。
旗の布の部分で包み込むようにしてキャッチし、そのままライヴスを流して引き離した後は柄の部分で従魔を殴って止めを刺した。
「よしっ、この調子で従魔を倒して、手が空いてきたら、従魔がいなくなったジャック・オ・ランタンは安全な場所に移動させよう」
凱、アリソン、アルトはアリソンを通じての友人関係というのもあって、一緒に行動する。
「やれやれ…面倒くさい。辛気臭いコートで出席する事になる私の身にもなって欲しいわ」
共鳴した凱は美女以外の何者でもない。自身の言葉通り、黒いコートを靡かせ、目に付くジャック・オ・ランタンを次から次へと片っ端から片付けていく。
その様は、まるで映画のワンシーンのようである。
黒い髪とコートが動きに合わせて舞い、ダンスでも踊っているかのような優美さである。しかし、戦闘に関しては容赦などない。
飛んできたジャック・オ・ランタンを避け、その避けると同時に払う。
従魔を剥がし、それを童子切で斬り、迷いのない動作で次の敵に向かっているからこそ無駄がなく実にスムーズだ。
逃げ遅れた住民を発見したアリソンは、インタラプトシールドを発動する。それによって、構成された多数の武器が、飛んできたジャック・オ・ランタンを防いだ。
それと同時に、アリソン自身にも向かってくるものに関しては、ナイトシールドで受けて防御すると、盾を持っていないもう片方の手で拳を握ると、ぐーで殴って倒した。
気持ちの乗った良い一撃である。
「ハロウィンを乱す従魔は許さないわ! 鉄槌よ、鉄槌!」
周囲の従魔に警戒しつつも、仁王立ちで威風堂々と言い放った。
そんな彼女に、ジョーカーは『しかしまぁ、ザコばかりだねぇ、くだらん、つまらん。これで、実は不死身だったり、倒したところから新たな種が生まれて新たなカボチャ従魔が生まれるとかだったら爆笑物なんだけどね』と言葉通りつまらなさそうに呟いた。
そんなジョーカーに向かい、アリソンは「ジョーカー君、退屈なら後で一緒にカボチャ当てゲームしましょ?」と提案した。
そしてその横で、同じく住民を助けるべくフォローに入ったアルトは、ジャック・オ・ランタンの無力化を図り、手持ちのアイテム防虫電磁ブロックを使用する。簡単に言うのならベルト型虫除け機ではあるが、人間に害はなく、その上周囲に微弱ながらライヴスが張り巡らせられる為、今回は従魔を剥がすのにとても有効的である。
向かってくるジャック・オ・ランタンを避け、距離を詰めて抱え込むようにして密着した状態でライヴスを流し込む。
そして従魔は銃で撃ち抜いて止めを刺し、新品のダストスポットを取り出すと、ただの南瓜へと戻ったそれを袋の中に入れて回収する。
その様はある意味ゴミ回収をしているように見えなくもない。それに自身で気が付いたのだろう。アルトは顔を真っ赤にすると「べ、別に清掃活動とか、人として当たり前の行動なんだからね!!」と、誰も聞いていないのにそんなことを口走る。
目に入る範囲のジャック・オ・ランタンを殲滅すると、助かったとばかりに溜息を吐いた住民へのフォローも忘れず、凱はウィンクをし「失礼。しかし今宵のハロウィンを彩る余興だとでも考えて頂けると恐悦至極。どうか楽しんでいって頂ける? まあ…道化にしては華に欠けるかも知れないけれどね?」と、微笑みなを浮かべた。そして、三人はまた次の従魔を退治する為に颯爽と立ち去るのであった。
共鳴したトリーシャであるが、今回ばかりはBridget主体である。ここはイギリス。即ち、彼女の世界だ。
周囲を見回し、店の前に立てかけてあったモップと物干し竿をカオティックで増やし、ジャック・オ・ランタンに向かって飛ばしていく。
『ノーダーメージということは100%愚神ですわね! 容赦いたしませんわ!』
そんな風に言うBridgetはやはり活き活きとしている。普段の貞淑さが鳴りを潜め、ここぞとばかりにはっちゃけている。
メンサ・セクンダを発動し、イギリスの各種伝統的なお菓子を出現させて次々に飛ばす。
本日はハロウィン。今日に似つかわしい、ピッタリな攻撃だ。
「さあ、ロンドンの町を守りますわ! もうセレスティア様はいらっしゃる時代でないけれど、100年経っても200年経っても、イギリスは私が守りますから…」
「きゃーっ!」と悲鳴を聞き、そこに駆け付けた倫はすかさずハイカバーリンクを発動。そして素手でジャック・オ・ランタンをキャッチすると、ネットの中に放り込んだ。
『早く従魔を倒して、楽しいハロウィンを取り戻しましょう』「トリックオアトリート! お菓子をくれない従魔はネットで捕まえちゃいますー!」と、周囲のジャック・オ・ランタンも牽制していると、その向こう、建物の影に特徴的な仮面――ガイ・フォークスを元にしたそれを被っている人物の姿が見えたが、ハロウィンの仮装だろうと倫が一瞬視線を外し、再びそちらに向けた時にはその姿はどこにもなかった。
●ハロウィンを楽しもう
あれだけ宙に浮かんでいたジャック・オ・ランタンの姿はすっかりとなくなり、その攻撃によって壊れてしまったところを適度に片付け、再び仕切り直しである。ジャック・オ・ランタンも其々の家の前に大人しく鎮座している。
街は再び、ハロウィンとして、正しい意味での賑わいを見せていた。恐怖のハロウィンなんていうB級映画にありそうなタイトルよりも、楽しいハロウィンの方が絶対に良いに決まっている。
倫とノエルは当初の予定通り、沢山のお菓子を購入した。この時期特有のラッピングや、形をしたお菓子はとても可愛らしい。そんなそれが、バスケットからこぼれんばかりに山を作って溢れている。
倫は本を手に持った魔女、ノエルは赤頭巾の格好に身を包む。二人とも、可愛らしい衣装がとても良く似合っている。まるで、絵本から出てきたような姿だ。
上機嫌の倫の隣で、ノエルも鼻歌でも歌いそうな程楽しそうにしている。そして、先程大量に買ったお菓子の入ったバスケットを片手に街へと繰り出す。
そして、飛び跳ねるようにして、楽しそうに駆け回る子供達に「ハッピーハロウィンですね!」『お菓子をどうぞ!』と、配っていく。幸せのお裾わけだ。
貰った子供達は「お姉ちゃん達、ありがとう」と笑顔を浮かべ、倫とノエルも顔を見合わせて笑みを浮かべた。
「うう…結局仮装させられた…」と、肩を落とす凱を涼風は『いいじゃない、ハロウィンなのだから。楽しみましょう?』と宥める。
二人は揃ってヴァンパイアの格好である。凱は往生際が悪く最後まで抵抗したものの、周りから焚きつけられて結局この格好に落ち着いたのである。
しかし、ヴァンパイアと言っても、凱はドラキュラで涼風はカーミラといった風に違いがある。そして、その格好が実に良く似合っている為、とても目を惹いている。
二人とも整った容姿で高身長、スタイルが良いというのと、色白の肌に化粧を施した姿は、本物よりも余程らしい為、尚更のことだ。
それでもおどおどと自信がない凱を、魔女の仮装をしたアリソンが「おぉ、似合っている、似合っている」と、二人に衣装を押し付けた張本人はご満悦である。
アリソン自身、トンガリ帽子に黒いドレス、箒を持った魔女ルックがとても良く似合っている。おどろおどろしい魔女というよりは、可愛い魔女姿だ。
そんなアリソンの横で、いつも通りの格好をしたジョーカーであるが、そのいつもの服装が服装なだけに下手な仮装よりも余程それらしくこの場の雰囲気に溶け込んでいる。
ジョーカーは戦闘中にアリソンが言っていたゲームが気になるようで、カボチャ当てゲームについて尋ねる。
すると、「沢山あるカボチャの中から、本物のカボチャを見つけ出すゲームだよ」という言葉に、何を思ったのか少し席を外すと『因みに偽物は99個作っておいた! その方が退屈せんで済むだろう!』とドヤ顔で言ってのけた。これはもう、退屈云々以前に探すのが困難であろう。
そんな時、衣装を自作したアルトが戻って来た。
目元に穴を空けた簡易な仮装であるが、白い幽霊というポイントは抑えているから特に問題はない。ちゃんと幽霊に見える。
アルトは、大量という言葉では収まらない量の南瓜を前に「何これ……」と、目を瞬かせた。
「取り敢えず、カボチャ当てゲームしようか……」と、アリソンが苦笑いを浮かべ、一同はゲームをしてから街を歩くことに決めた。
ゲームが終わり、5人は賑わいを見せる街を歩いて行く。
家を訪問してお菓子を貰っている街の人たちに倣い、家を訪れて開口一番テンションが高いジョーカーの言葉を『やぁ、諸君。ボクだよ、ホワイトジョ―ry』「Trick or treat!」と、アリソンが遮ってお菓子を受け取る。
その横で、「はいはい…トリックオアトリート………」と言いながら、小声で「あたしそんな歳でもねーんだけどな」と付け足したアルトではあるが、持参した袋にお菓子を詰め込んでお持ち帰りの姿勢を見せている。
そんな三人の姿を、少し離れた所から凱と涼風は見ていた。
これでも何だかんだで、結局の所凱はハロウィンを楽しんでいるのだ。涼風と並んで街を歩きながら、心なしかいつもより目を開いて周囲を見ている。
凱と涼風の元へ戻って来た3人から戦利品を見せつけられ、「次は高天原君も一緒に行きましょう」と誘われるものの、「流石にお菓子を貰いに行くのはちょっと……」と抵抗を見せると、にんまりと笑顔を浮かべたアリソンとジョーカーが凱の腕を其々掴み、からかうようにして連れ回す。
それを、涼風はお姉さんの顔でくすくすと見守った。
そんな風に、楽しそうにしている後姿を見て、アルトは溜息を吐言いた。
「はあぁ…あたしにも英雄がいればなぁ…」
その暗い表情と言葉は誰にも聞かれることはなかったが、アルトはここに自身の英雄がいないことが実に残念でならなかった。
しかし、その考えを振り払うと、4人に追いつき、擦れ違った小さな子供にお菓子をプレゼントしてあげた。それをじっと見ていたアリソンにもプレゼントをし、高天原にもおまけで渡せば、彼は更に2人からからかわれるのであった。
そんな風に楽しそうにして5人は街を練り歩く。街を練り歩きながら、アルトはひっそりと「余ったジャック・オ・ランタンはもらえないかな?」と思案した。
『こんな事もあろうかと、衣装を用意してきましたヨ』と、じゃじゃーんと効果音でも付きそうなテンションでストゥルトゥスは衣装を取り出した。
その姿を見て、やれやれといった風にニウェウスは「……最初から参加する気満々だったでしょ、ストゥル」と言えば、『そりゃもう、当然ですよ何言ってるんですかっ』と断言された。
そして着替えを済ませれば、ニウェウスは戸惑いの声を上げた。
「ねぇ、ストゥル。魔女の仮装って聞いたんだけど……」
そんな声に含まれたニュアンスに全く気が付いていないのか、ストゥルトゥスはその場で『そうだよ。ほらほらー、似合うでしょ?』とくるくる回る。
そんな彼女の衣装は同じ魔女は魔女であっても普通に分類されるものであるが、「いや、その……私の、コレは?」とニウェウスは自身の纏ったフリフリの衣装に困惑の声を上げた。
『あー、うん。マスターのはね、魔女は魔女でも魔女っ子だから!』
良い笑顔で言い切ったそれに、「はぃ!?」とニウェウスは困惑の声を上げた。
それに分が悪いと思ったのか、ストゥルトゥスは『ふはははは! さー、トリックとかトリートとかしにいくぞーニゲロッ!』と全力で駆け出し、ニウェウスも「こ、こら……待ちなさい……!」とその後を追って街へと繰り出すのであった。
仮装もせず、普段通りのメイド服姿のトリーシャとBridgetであるが、今日に限っては周囲によく溶け込んでいる。周りから見れば、メイドの仮装をしているとでも思うのだろう。誰にも気にされることがないというか、メイド服姿で楽しそうに走り回る子供達の姿も見受けられる。
本来なら今日はお菓子を貰いに行っても良いのであろうが、否、こんな日だからこそBridgetのメイド魂に火でも点いたのかイギリス各種の伝統的なお菓子を用意して子供達に配っている。
それに今日も今日とて付き合わされたトリーシャは、Bridgetから『笑顔ですよ、笑顔』と念押しされ「めんどくせぇ……」と言いつつも付き合い、子供達にお菓子を配るのであった。
沢山の笑顔と笑い声が夜の街に響いている。
今日はハロウィン。大人も子供も楽しむ日。
ハロウィンの夜は長い。その長い夜を、みんな全力で楽しむのであった。