本部

広告塔の少女~睡蓮の枕売り~

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
寸志
相談期間
4日
完成日
2016/11/04 14:38

掲示板

オープニング

● パジャマパーティーだ。
 グロリア社、グッドナイトミュージアム。
 そこは世界の安眠を守るため、日夜研究と開発が繰り返される、世界最高峰の安眠研究所である。
 そこに君たちは招かれた。
「これからあなた達には眠ってもらうわ」
 遙華はすでに紫のパジャマに三角帽子というスタイルに着替えて君たちの前に立っている。
「これは新しいグロリア社の試みで、この百メートルマットレス空間がどれほど世界にとって有益か示すために、テスターになってもらうわ」
 そう、君たちは百メートル四方の床がマットレスで。しかもやたら枕が溢れている場所に連れてこられているのである。
「ここはとても快適な場所、そうくつろぐあなた達をカメラに収めてCMで使うわ」

「うんとくつろいで行ってね」

 そう遙華は微笑んで、マットレスの上に飛び込んだ。

● シナリオ趣旨
 このマットレス空間。厳密に言うと、沢山のマットレスが敷き詰めてあるだけでの空間だ。低反発、高反発、ばね、もみ殻、いろいろ。沢山のマットレスと、沢山の種類の枕がある。
 ここで今回はパジャマパーティーをしてもらう。
 
 パジャマパーティーとは
 夜中にみんなで集まって。枕などで楽な体制を取りながら、お話したり、遊んだりすることである。
 皆さんには純粋にパジャマパーティーを楽しんでいただきたい。
 枕を投げて遊ぶもよし、お話しするもよし。
 日頃の疲れをいやすもよし。
 ちなみにみなさんパジャマは持参でお願いします。
 楽しいパジャマ、待ってます。
 カワイイパジャマ待ってます。
 ちなみに、枕の中には危険な物も多数あるので注意。
 爆発したり、張り付いたり、アルスマギカが内蔵されている枕もあるらしい。
 なぜこんな枕があるかは謎である。

● 夜食について。
 夜更かしをしていればお腹がすくだろう。
 そんな君たちのために、カップラーメン各種と、キッチン、一通りの食材を用意してある。
 満腹になって眠って欲しい。
 お夜食のラーメン。それは殺人的うまさだろう。
 それを見せびらかして飯テロをしたっていい。
 楽しんでいただきたい。
 ただしマットにはこぼさないでいてほしい、マットにこぼすとロクトに怒られる。

● 会話フック
 雑談系恒例、会話フック。
「いつまで、両親と一緒に寝ていた?」
 会話に困ったらこれについて書いていただきたい。
 場の空気が重くなるかもしれないが書いていただきたい、遙華が死に物狂いで拾う。

遙華も皆さんと話してみたいことがあるらしい。
「初恋っていつ? 相手はどんな人だった?」
「夜寝る時何を考える?」
「夜食食べたい……」

 他にも遙華と話したいことがある人は積極的に寝たふりどうぞ。
 ロクトはキッチンでワインとつまみを並べて読書してます。彼女と絡みたい場合もどうぞ。


解説

目標 パジャマパーティーを楽しむ
 今回は完全なる日常回です。
 トラブルもありません。
 いや、たぶん皆さんが起こしてくれる気がしますが。
 かくことが特にないので要点をまとめます。
 
・夜、パジャマで、平和に騒ぐ。
・パジャマ持参。
・夜食はキッチンで。

 あ、重要なことを言い忘れてました。男部屋とか女部屋は無いので。
 みなさん、常識は守ってくださいね。
 暴走した男子にはきついロクトのお仕置き。アルスマギカの刑が待ってます。

リプレイ

プロローグ

「当ててあげましょうか」
 バスから降りると『朔夜(aa0175hero002)』が不敵に微笑んで『御門 鈴音(aa0175)』に視線を向けた。
「私との仲を深めようとわざわざ輝夜でなく私を呼んだのでしょう? 無駄よ。私は人間に媚びへつらうつもりはないわ。私が力を貸すときはお互いの利害が一致した時だけよ」
 その言葉を聞いて固まる鈴音。
(見た目は可愛いのにほんと可愛くないわね)
 あまりの脱力に鈴音の肩から鞄がずり落ちた、朔夜が重いのが嫌だからと荷物を鈴音に預けていたのだがそれを放り投げてやろうかと少し思った。
 だが悩んでいる間にずり落ちた荷物を遙華が支える。
「あなた可愛いわね」
 次に言葉を失うのは朔夜の方だった。
「な……」
「本当は嬉しいくせに」
 そう笑うと颯爽と遙華は去っていった。その物言いに朔夜は納得いかないようでその背をじっと眺めている。
(でもいくら元ヴィランだといっても今は私の英雄。輝夜の時もそうだったけど少しずつ慣れてかなきゃ)
 そう鈴音は思いを新たにして遙華の後を追う。
「はい、みんな『グロリア社、グッドナイトミュージアム』へようこそ、施設の案内から先にするからついてきて、荷物置くのはちょっとだけ我慢してね」
 そんな遙華の隣を駆け抜けていく青い少女が一人。
「ルゥのテンションが始めからMAXです」
『イリス・レイバルド(aa0124)』がそう少女を紹介すると『ルゥナスフィア(aa0124hero002)』は振り返り、元気に遙華へと手を振った。
「はぁい! ルゥだよ!」
「それにしてもパジャマってなつかしーなー」
 ご機嫌なのはイリスもらしく二人は遙華を追い抜いてずんずん先を進んでいく。
「つか、英雄の爺さん以外は男いねぇ」
『赤城 龍哉(aa0090)』はあたりを見渡しため息をついた、なんとなくの居心地悪さを感じる。
「肩身狭いですわねー」
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』がからかって笑った。
「やれやれだぜ」
 そうため息をつきつつ遙華の案内に従って一行は館内を散策する。
 エントランスを通り、管理人室やトイレやシャワールーム、キッチンを紹介し、ロッカールームで全員が着替えた。
「あ、澄香! またジャージなんて持ってきて!」
『蔵李・澄香(aa0010)』はその言葉にばつが悪そうに肩をすくめた。そんな澄香の旅行鞄から飛び出したのはは学校で使っているジャージである。
「え? だってパジャマパーティーだよね?」
「寝間着という意味では問題ないのかしら」
 遙華が言う。
「だめだよ、CMなんだよ!」
『小詩 いのり(aa1420)』が抗議の声を上げる。そして一度仕舞った自分の荷物を再度ロッカーから取り出した。
「こんなことだろうと思ったよ、まったく」
 そういのりは自分のボストンバックを漁る。そこから取り出したるは、ふりふりの淡いピンクのパジャマである。
「用意周到ね」
 遙華がそうつぶやいた。
「でもイリスちゃんも私と同じ派閥のはずだ」
 澄香は主張する、寝間着に可愛さなど必要ないと。そしてイリスに同意を求め視線を向ける、すると。
「ボクも機能的な方が好みですけど、今日はお姉ちゃんにパジャマを持たされてますか」
 そうイリスは猫になれるパジャマを広げて見せた。
「ほら、みんな可愛い」
「わかったよぅ、いのり、それでいいよう」
 そう罰が悪そうに着替え直す澄香。だがそんな彼女を理不尽な不幸が襲う。
「きついけどゆるい」
「あー、あー」
「お腹まわりがきつくて、胸元が……ゆるい」
「あーあー」
 澄香はすっかり忘れていたのだ、いのりのスタイルの良さを。いつもの生活で気にすることはないが、こうやって服を借りると服に比較されているようで大変落ちつかない。
 落ちつかないというより服にバカにされているレベルで腹立たしい気持ちになって。
 澄香の瞳から光が消えた。 
 死んだ魚の目で腹ペコゾンビ『クラリッサ(aa0010hero002)』に旅館の浴衣を着させると。 
 一行はやっと更衣室からマットルームへ移動できた。
「わー、ひろーい」
 そう女子力満点の反応をいのりが返すと澄香といのりはマットに遠慮なく飛び込んだ。
「あらあら、げんきですわね」
 そうヴァルトラウテが微笑む、ヴァルトラウテは薄紫のツーピースシルクパジャマに袖を通していた。
 ハリウッドスターのように美しい造形をしている彼女からは衣服と相まって気品が溢れている。
 それは少女二人の視線すら釘付けにするほどである。
「ヴァルトラウテさんもどう? たのしいよ?」
 そういのりが手を差し伸べるもヴァルトラウテはもじもじと何やら言い訳をしている。
 この中では唯一大人、その意識が彼女にためらわせる。しかしその理性も長くはもたなかった。
「ふかふかだ!?」
 ルゥが言った。
「腐葉土はないよ」
 イリスが説明した。
「やわらかい土よりもっとふかふかだ!?」
「でも確かにふかふかかも」
 そんな楽しそうな少女たちを見てついにヴァルトラウテは折れることになる。
「では、私も」
 大の大人もマットの誘惑に耐え切れず、うずまったところで。パジャマパーティーが開始された。


第一章

「あー……クソ、結局1人で来る羽目になるわ体は思うように動かねーわ、ったく災難ですな」
 そう包帯グルグル巻きの腕や足をなげだしロン毛のお姉さんは溜息をついた。
「うわわわわ、フィーさんあんまり無理しちゃだめだよ」
 いのりがいたわるように『フィー(aa4205)』の手を取る。フィーは一件灰色のスウェット、その裾を引っ張り傷跡を隠そうとするがゆったりした生地なのであまりうまくいかない。
「今日は特に動く予定もありませんのでゆっくりしていてください」
 そんなフィーを見て『フィリア(aa4205hero002)』が釘をさす。
「せーぜーゆっくりのんびりしましょーかね」
 そうフィーが力なく手をプラプラと振ると、フィリアは溜息をついて廊下の奥に消えた。
 そんなフィリアとフィーをいのりは交互に見つめながらおろおろしているとその顔面に枕が激突した。
 犯人は遙華である。
「鈴音、この硬い枕中に何が入ってると思う? 投げても大丈夫かしら」
「硬いってわかった時点でなげないほうがいいんじゃ……」
 そう鈴音に相談しつつもその枕を投げることに決めたようで枕を大きく振りかぶる遙華。
「鈴音もやらないとやられるわよ」
「え! こ、こうですか?」
 そして手当たり次第、そこらへんに転がっている枕全て、いのりに投げまくる遙華。まぁ腕力が無いのでまともに届いたのは最初の一発くらいなのだが。
「もう! 遙華ってば」
「とまぁ、枕はこうやって楽しむものなのよ」
 そう遙華は正しくない教えをイリスやルゥに教授していく。
「これが……伝説の儀式枕投げ!?」
「まくら投げ!?」
 イリスの瞳が徐々に年相応の輝きを帯びてきたことを遙華は見逃さない。
「そうよ。枕による闘争まくら投げ、そしてあなたは私達側の守護天使になるのよ」
「それなぁに? なになになぁに?」
 ルゥはひたすらにイリスを揺さぶっている。
「なんでも相手を再起不能にするまで枕を投げつけるとか」
 イリスも間違った知識をルゥに植え付けていく。
「ええええええ!」
 そしてイリスのその発言にいのりは命の危険を感じ声を上げたが時すでに遅し。
 三体一となりいのりを逃さない包囲網が完成しつつあった。
 そんな時颯爽と駆けつけてくれたのは親友澄香。
「任せていのり!」
 そういのりを守るべく射線上に躍り出て枕をはじく。
「く、澄香ね、相手にとって不足はないわ」
「不足どころか、過剰だったりするかもよ」
 そう澄香は不敵に微笑むと、その陰からミニスミカと新たないのりの相棒ミニいのりがおどりでてきた。
「はろろん」
「ぐぎゃー」
「うわ、片方がすげー可愛くないなきごえなんですが」
 フィーが言う。
「二人並ぶと際立つわね」
 遙華がそう告げる。
「うるさいな! もう容赦しないよ遙華」
 遙華と澄香のにらみ合いが続く、その二人の耳に謎の呪文が届いた。
「カップ麺の中身を鍋に入れて、ソーセージと卵、ごま油とラー湯をちょびっと! 台湾風煮込みラーメンです!」
「…………今キッチンの方から変な声が」
 あまりに場違いな料理解説に反応した遙華。一瞬廊下の向こうにアルキッチンへ意識を取られた瞬間である、澄香が動いた。
「隙あり!」
 澄香砲撃部隊が遙華とイリスめがけて枕を投げ始めた。
 鈴音はほぼとばっちりの形で枕の中に埋まっていく。遙華も僅かばかりの抵抗を続けるが、どんどん枕に埋まり動きが取れなくなってしまう。
「く、ここまでなの?」
 対して運動神経のいい、イリス、ルゥペアは華麗に枕を回避したり叩き落としたりしてよけ続けている。
「はいっと」
 イリスはそう飛んでくる枕をキャッチ、枕で枕を叩き落とすが踏んづけた枕から時計の音が聞こえる。
 チクタクチクタク。
 そこでイリスは気が付いた。
 これは定番の爆発するやつだと。
「いい加減! 爆発なんて! 受けなれたって言ってんだろぉぉーーーー!
 イリスの脳裏にいろんな思い出が走馬灯のように流れる。
 ルゥをあんなめに合わせるわけにはいかない、だったら。
 そうイリスは枕を蹴り上げそして、盾を叩きつける要領でパンチ、澄香めがけて吹き飛ばす。
「えええ! ちょっとこっち」
 そして澄香に着弾する前にその枕は爆発した。
 ちなみに爆発と言っても枕の中身が周囲に飛び散るだけなので、澄香といのりは鳥の羽まみれになるだけで済んだ。
 お腹を抱えて笑うヴァルトラウテ。
「なーに、やってやがるんですか」
 一足先に避難していたフィーは上半身だけ落してそう皮肉った。
「おおー! ルゥもやる! ルゥも投げたい♪ 投げたい♪」
「第二ラウンド行く?」
 楽しそうな遙華。
「全く、騒がしいわね、もう少しおとなしくできないものかしら」
 そんな騒動を尻目に朔夜がそうぼやいた。
 先ほどから大人しくしている朔夜はというと、テレビを見ていた『名探偵フムフム』という番組で、朔夜のお気に入りである。
「騒がしくとも、お姉さまがいるのといないのとでは大違いね」
 いつもはテレビのリモコンを駆けて争いを繰り広げている朔夜も、ここでは穏やかにテレビを見ることができる。
 良い気分に浸っているせいか、朔夜の緊張は緩みっぱなしである。
「はぁ……なんて素敵なのかしらフムフム様♪ 一度是非生でお会いしたいわ♪」
「あの子めちゃくちゃ可愛いわね」
 枕でメガネが吹っ飛ばされつつ、遙華は朔夜を指さして鈴音に言った。
「持ち帰り牛丼をネギと一緒にフライパンで炒めたら、牛チャーハンです!」
「また、キッチンから謎の声が」
「芳醇なかおりと、上品な油の味が!」
 今度は食レポ付きである。
 その声につられて朔夜が立ち上がった。
 たった今終わった番組のクレジットを見届けると、足早にキッチン向けてかけていく。
「あ、朔夜」
 それを追いかけようとする鈴音だったが、それを遙華が止めた。
「大丈夫よ、鈴音、あっちにはロクトがいるし、それより鈴音が抜けると私達不利になっちゃうわ」
 まくら投げの話である、しかし残念ながら澄香はまくら投げに飽きたようで、枕に当たることも構わず接近。
「きゃー」
 感極まった奇声を上げながら、澄香がはイリスとルゥを抱きしめてマットにダイブした。
「笑い転げる三人」
 もはや深夜のテンションである。
 深夜のテンションとは、少女たちをペンが転がっただけでも面白く変えてしまう魔法のテンションのことである。
 そして深夜のテンションは下がるのも一瞬だ。
 澄香は死んだ目で起き上がると告げた。
「マットは柔らかいね。私の胸と違って」
 そう低反発のスペースになだれ込む。
 そして仲良くおしゃべりする、鈴音と遙華を見た。どこをとは明言しないがみた。
「遙華って着やせするんだなぁ」
「どうしたんですか?」
 イリスが言う。
「いやパジャマかわいいなぁって」
 澄香はとっさにそうごまかして言った。
「イリスちゃんの猫パジャマも可愛いよ」
「お姉ちゃんが用意してくれたきぐるみ猫パジャマ……どこで手に入れたんだろう?」
「というわけでおそろいのパジャマがあるから、ルゥは脱いじゃだめだよ?」
「だって、寝る時にスカートとかひらひら邪魔なんだよ?」
「だから寝やすいのを用意してくれたんだよ。お姉ちゃんが」
「プレゼント? アイリスママからのプレゼント?」
 嬉しそうにマットに額を押し付けるルゥ。
「こういう機会が中々ないので楽しいですわ」
 ヴァルトラウテは膝を抱えて憂うつげにつげた。
「ねぇコイバナしましょう?」
 そんなヴァルトラウテに遙華が告げた。
「唐突だね」
「いいじゃない、お膳立てにつかれたの、たまにはズバッといきたいのよ」
 いのりは小さなカバンからトランプを取り出しながら話を聞いてる。
「でも、このメンバーだしね」
「鈴音はないの?」
「……聞かないでください」
 さっそく地雷を踏みしめて沈黙する二人。
「初恋っていつだった?」
 そんな静まり返った場に、、会話のプロいのりさんが助け船を出してくれた。
「たとえばフィーさん」
「初恋、ねえ? 今までんな余裕なんざなかったですかんなあ」
「本当に?」
「嘘なんかつかねーですよ。特に必要とも思わなかったですしな、それにあったとしてもわざわざこんなとこで話す訳ねーでしょーよ」
「いちばん恋愛経験豊富なヴァルトラウテさんに聞いてみよう」
「初恋……」
 深刻に考え込んでしまう。
「カップのバニラアイスを半分食べて、コーヒーを入れて練り練り。カフェオレ風です!」
「わ、わぁ。まさかこんなにおいしくなるなんて……」
 おそらく食べ物を報酬に飯テロに参加することを強制されたのだろう。棒読みの朔夜の飯テロが廊下に響き渡った。
「かつて導いた勇者の中には眩く感じる魂もいましたわね」
 そんな向こうの出来事を無視してヴァルトラウテは話を続けた。
「それは本当にコイバナなんでしょーか?」
「あ、ところで何をしてるのいのり?」
カードを配っているいのり。
「みんなでトランプをしよう」
「秋の夜長と言ったらこれ」
 澄香といのりの間では日常茶飯事なんだろう。
 種目はブラックジャック
「甘いわね、私はカウンティングができるわ」
「イカサマ発覚」
 ミニスミカ、ミニいのりに連行されかける遙華、 カウンティングはしないと誓約書まで書かされてゲームは始まった。

第二章

 キッチンではいい香りが漂っている『セバス=チャン(aa1420hero001)』がコーヒーを淹れいているのだ。
 その傍らで佇むフィリアの隣に、ロクトが座る。
「そう言えば、初めまして、でしたかね?」
「そうね、こうして話すのは初めて」
「これからよろしくお願いします、あ、よければ日本酒と、するめと、鮭とばと……」
「いいわね、私は日本酒も好きよ、そっちを先にあけましょうか」
「お、俺もいいか?」
 龍哉が椅子を寄せてきた。フィリアは快くそれを受け入れる。
「どうぞどうぞ、せっかくですから皆で飲んだ方が楽しいでしょう」
「そういやロクトさんは何を読んでたんだ?」
「え? マネージメントの本よ」
「遙華さんのために?」
 フィリアが問いかける。
「ええ、手のかかる子だから、ひねくれてるし」
「お互い苦労しているみたいですね。私の能力者……性格もどうにかして欲しいものです」
「フィーさんね。不思議な方だと聞いてるわ、あと怖いって」
「遙華さんですかね、そう思われても無理はないです。殆ど他人に関心がないから、ぶっきらぼうになっちゃうんです。そして自分が誰かに好かれてるなんて事は考えもしない、気づきもしない。そんな考えだから自分の体も大切にしない」
 思いつめるようにフィリアは自分のグラスに視線を落とした。
「耳がいてぇ」
 龍哉は苦笑いを浮かべた。
「龍哉さんは無茶をする側だものね」
「ああ、まぁな。強くなることが最優先だからな」
「傷つけば悲しむ人がいることを自覚した方がいいですよ?」
 フィリアがぴしゃりと言った。
「どうにかなりませんかねえ……全く」
 その話を聞きながら龍哉はぼんやりと相棒の姿を思い浮かべる、彼女も心配したりするのだろうか。
「どうにかしてくれそうな人に見当はついていますが……今のままでは到底不可能でしょうね」
 そうフィリアが告げると、コーヒー片手にセバスがロクトの隣に座った。
「まぁこんな事を話していても仕方がないですね、別の話題に移りましょう」
「ではお仕事の話を」
「いいわよ」
 龍哉は肩を落とした。
「本当にロクトさんは仕事の人だな、休んでる姿が想像つかないぜ」
「ふふふ、ミステリアスでしょう?」
 そしてセバスは書面をロクトの前に差し出した、そこには新たな曲《カナタ》の利権について書かれていた。
「この曲、そして企画で得た収入を孤児院や医療関係の発展に」
「なるほど。面白いわね」

第三章
 ブラックジャックの成績が発表された。
「最下位はダントツで遙華!」
「何でよ!」
 澄香が続けて告げる。
「恥ずかしい秘密を一つ暴露(ガチ)」
「なによ(ガチ)って」
「もう、知らない!」
 倒れ込む遙華。
「ほら遙華」
 そう澄香が膝を叩いた、遠慮なく遙華は澄香の膝に頭を乗せる、そして澄香は歌を謳ってくれた。
「何の曲?」
 いのりが言った。
「靴音は響いて、だよ」
「いのりも歌ってくれると嬉しいわ」
 そういのりに手を伸ばす遙華、その手を取るいのり。
「安心する、いつ以来かしら。こうやって穏やかな気持ちでいられるのは」
 そううとうとしながらも、遙華は言葉を続けた。
「ねぇみんなはいつまでその、お父さんとお母さんと寝てた? 私そう言う記憶があんまりなくて」
「何時まで両親と、ですか」
 澄香は目を細めて淡々と話しだす。そのころを思い出すように、声に甘さが宿った。
「お母様、寝相悪くて小学校に入学した頃には一人で寝てました。プロレス技かけて来るんですもん」
 そしてその風景が見えるとでも言うように視線をずらし告げる。「お父様は寝てるとこ見たことありませんでした」
 そして澄香がイリスを見つめる。その瞳は氷点下をぶっちぎって冷え切っていた
「……二年くらい前までかな」
「ルゥはママたちといつも一緒だよ!」
「うん、ルゥも、お姉ちゃんも今はいるね」
「だから、強くなるよ……ルゥにひとりの夜を過ごさせないためにも」
 二人を抱きしめる澄香、投げ出される遙華。
 そんな少女たちに替わってフィーが語り始める
「両親と? そもそも一緒に寝た事すらねーですがな、私には興味すらねー奴等だったもんで」
 そう冗談めかして語るフィーの言葉を、またキッチンからの声が遮った
「フライドポテトにバターです!」
「あら、おデブ御用達ね。この時間から脂肪をため込んでどうするつもりかしら」
「もうやめて! 腹ペコゾンビ!! シリアスぶち壊し」
 そう澄香が抗議しに行こうと断つと、その瞬間を狙っていたとばかりにいのりが、アルスマギカ入り枕を押し付けた。
「もが」
「どさくさに紛れて罰ゲーム無視は、ギルティーだよ」
「もがもが」
「さぁ白状して」
 そういのりが遙華の服の背中に枕を押し込むと、それでも効力を発揮するアルスマギカは、遙華に真実を話させる。
「み、みんなのために、今日クッキーを」
「おお、クッキー」
 場が沸き立った。
「作ろうと思ったけど、黒焦げに……」
「それはどこにあるの?」
 鈴音が尋ねた。
「キッチンの冷蔵庫」
「さぁてキッチンに行きましょーかーね」
 そうフィーが言うとその場にいる全員が立ち上がる。
「だめよ。ちょっとまって」
 あわてて追いかける遙華。
 キッチンでは酔っ払いたちすでに盛り上がっていた、そのおかげでパジャマ組が来たことに気が付かないようだった。
「そう言えば、気になってたんですけど、これはなんですか?」
 鈴音がテーブルの上に置いてある鉢植えを指さす、それは花を植えるには大きすぎる。プランターで、かなり異質だ。
「ルゥが入る大きさのだよ!」
 そう言うとおもむろにルゥは脱ぎ始めた。
「パジャマは汚れないように脱がせましょう」
 あわてたヴァルトラウテは龍哉に目つぶしを、セバスは察していたのかすでにキッチンにいなかった。
 そしてそのプランターにルゥが収まるとイリスがせっせと土を入れる。
「月明りの差し込む窓辺に置きます」
「ぴかー」
 なんと驚き、やんわりルゥが光り出したではないか。
 少女たちから歓声が上がる。
「……あげないよ?」
 イリスはそういたずらっぽく笑った。
「いやルゥって花の妖精っていうか、花が妖精って感じだから……土から養分取れるんだよ?」
「あと月光からもライヴス吸収するんだって」
  生き埋めになっているルゥだったが、いつもと同じように笑っていた。
「うらやましい」
 クラリッサがそう告げる。
「私はそっちの方がうらやましいわ」
 澄香が声を上げて指さす方には。ファミリータイプのアイスを大きなスプーンですくって食べてるクラリッサと朔夜がいた。
「うわ、胸やけが……でも、何か胃に入れたい気分よ」
 そう遙華が言うと、ヴァルトラウテが冷蔵庫を開ける。
「夜食ですか。寝る前ですしホットミルクか、ヨーグルトあたりが良いと思いますわ」
 だが。彼女の視線に真っ先に飛び込んできたのは牛乳でも、ヨーグルトでもないクッキーだった。
「見つけましたわ!」
「きゃー、見ないで!」
 そうクッキーの争奪戦を繰り広げる遙華とヴァルトラウテ。
 これを皮切りにキッチンは一気に騒がしくなった。
「朔夜、私にも頂戴」
「奪い取ってみなさい」
「甘いものが好きなのはお姉ちゃんと一緒ね」
「あんなあ頭空っぽの馬鹿鬼とは違うわ!」
 そうにらみを利かせる鈴音と朔夜。
「ルゥさん、私もそこに入れてください」
「大きさが合わないでしょう?」
 クラリッサを必死に止めるイリス。
「あ、じいや仕事してる」
「ちょうど今企画書を確認していただいていたところでして」
 そう新曲<カナタ>のお話をするいのりとロクト。
 こうして思い思いに夜を消費していく一向、しかしこれが元あるべき、皆の姿なのかもしれない。
 この、間違いなく平和と呼べる日常をリンカーたちは噛みしめ、そして今日は眠りについた。


結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • エージェント
    クラリッサaa0010hero002
    英雄|15才|女性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • エージェント
    ルゥナスフィアaa0124hero002
    英雄|8才|女性|ソフィ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 残酷な微笑み
    朔夜aa0175hero002
    英雄|9才|女性|バト
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • Dirty
    フィーaa4205
    人間|20才|女性|攻撃
  • ステイシス
    フィリアaa4205hero002
    英雄|10才|女性|シャド
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