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薩摩芋の料理を作ろう
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打ち合わせ(相談)場所
最終発言2016/10/24 23:31:53 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/10/24 23:26:43
オープニング
●街のスーパーにて
※オープニングに限り、自分の視点のつもりで読んでください。
「無い、無い、無い!」
街の彼方此方のスーパーや、八百屋を覗いてみたものの、目的の物が全く置いていないということに絶望の声を上げた。
今日は薩摩芋を使った料理をみんなで作り、ちょっとしたパーティーをしようということになっていたのだ。
それを一人で全部用意するのは大変だから、みんなで持ち寄ろうね。それだったら色々な薩摩芋も楽しめて、それもそれで楽しいよねと企画していたのだ。
今日をとても楽しみにしていただけに、薩摩芋が無いというのは絶望的である。何故今日に限り、何処も薩摩芋が置いていないのだろうか。これは何かの陰謀か? それとも、同じようなことを企画している人たちでもいたのだろうか?
薩摩芋が手に入らないことに絶望し、項垂れた。肩も落とし、これならいっそ、地面に足と手を着いて、漫画でもあるような絶望のポーズでもしてしまいたい気分だ。
そんな自分の隣で、矢張り主婦たちも疑問に思ったのか「えっ、ここにも薩摩芋が無いの?」と声を上げている。店員に確認している人たちもいたが、「申し訳ありません。何故か薩摩芋の入荷が無く……」と困り顔でしきりに頭を下げている。
そんな時、店にあるテレビにニュースが映った。
「速報です。数日前から××街付近の薩摩芋畑では、薩摩芋が従魔化した影響を受け、近隣の街に出荷できないという事態が発生しています。このことにより、街の至るところの店から薩摩芋の姿が消しております……………」
それを聞き、立ち上がった。
おのれ、従魔め。許しがたいことをして!
すぐに成敗し、こうなったらとことん薩摩芋を堪能してやる――と。
解説
●目的
→薩摩芋に憑依した従魔を払い、薩摩芋を入手すること
●補足
→ミーレス級の従魔が薩摩芋に憑りつきました。……とはいっても、薩摩芋の個体全部に憑いているわけではありません。
その繋がった蔓の個体に一つだけ憑りつき、それが抜かれようとすると地中深くに潜って、抜かれないようにと抵抗している感じです。
なので、蔓一つ一つにライヴスを流していけば簡単に払うことができます。
但し、こうなったのは、ある雷の酷い晩、それが落ちたのが引き金となってこの畑の付近にライヴスの乱れが生じたのが原因ですので、そちらも対処しなければ今後また同じようになることはあり得ますので、そちらの対処も必要となります。これはそれ程大きなものではないので、ライヴスの乱れを落ち着かされば簡単に収まります。
蔓一つ一つにライヴスを流すのは骨が折れるので、何か纏めて送れる手段が確率できるのならそちらの方が効率が良いかもしれませんね。
→メインは薩摩芋の料理です。焼き芋にしたり、スイートポテトにしたり、その他、作りたい料理を作って楽しみましょう。
今回はオープニングが一人称視点であったこともあり、自主的に動いている為に報酬らしい報酬はでません。
しかし、農家の方が好きなだけ薩摩芋を持って行って良いと言っているので、好きなだけ引っこ抜いて持って行くことができます。
沢山薩摩芋を手に入れて美味しい料理を作り、薩摩芋パーティーをしましょう。
リプレイ
●畑にて
この畑の持ち主の農家の夫婦は、やって来た一同を前に、お願いしますと頭を下げた。
しかもそのお礼に、好きなだけ薩摩芋を収穫して持って行って良いそうだ。
これで頑張らないわけにはいかない。元々の目的は薩摩芋の入手なのだから、好きなだけ持って行けるのなら盛大な薩摩芋パーティーが開けるというものだ。
畑を見回し、「以前からどこにでも湧くもんだとは思ってたが」と溜め息混じりに、呆れた声を上げた赤城 龍哉(aa0090)にヴァルトラウテ(aa0090hero001)も、『わざわざ薩摩芋の茎に憑くというのも変わり種ですわね』と同意を示す。
「さて、どうしたものか。力尽くで行くと芋自体をダメにする危険性がありそうだな」
伊邪那美(aa0127hero001)に前触れも何もなく連れて来られ、畑の持ち主である農家の人からの話を聞くに至り、御神 恭也(aa0127)は溜息を吐いた。
「緊急事態だと聞いて来たら、こんな理由だとは……」と呆れた視線を向けるが、伊邪那美はそれを気にせず、『御芋を取り戻すぞ~!』と元気よい声と共に握り拳を上げた。
「市場に出回らないのは問題だなー」と呟く鴉守 暁(aa0306)に、キャス・ライジングサン(aa0306hero001)は『農家サン困っちゃいマスネー』と頷く。
先程の様子を見る限り、この現状に一番困っているのはやはり農家の方なのであろう。
「食い扶持だからねー。秋の味覚が1つ減っちゃう。パティシエも困っちゃう」
「なん…だと…」『神よ』と、大げさな程の声が響いた。
鋼野 明斗(aa0553)とドロシー ジャスティス(aa0553hero001)だ。手に持ったスケッチブックを震わせて天を仰ぐ。
薩摩芋が手に入らない八つ当たりと、あわよくば数個失敬しようかと目論んでいたというのに、何と正々堂々と持って帰って良いのである。生活が決して豊かであるとは言えない苦学生と、その英雄にとって「好きなだけ持って帰って良い」とはこれ程有り難い言葉はなかった。それ故に、神の恵みにも等しい程の有り難さにさえも感じられた。
「やるぞ、ドロシー」『合点!』と、今度は気合の入った言葉が響いた。
『薩摩芋に取り憑くとは卑怯な従魔め』と、声を荒げるナイン(aa1592hero001)に楠葉 悠登(aa1592)は「えっと、卑怯かどうかは分からないけど迷惑だよね。せっかく秋の味覚、薩摩芋を味わおうと思っていたのに…!」と控えめに同意する。
その言葉に目を見開き、『食べ物のウラミはオソロシイのだ。行くぞ、悠登!』とナインは気合というよりは気迫十分に従魔討伐に臨むのであった。
「という訳で芋狩りすんぞー」と、逢見仙也(aa4472)から脈絡なく始まった言葉でその全貌を何となく察したディオハルク(aa4472hero001)は、『そんな理由でわざわざ家まで俺を呼びにくるのかお前は』と呆れた声を上げた。
しかし、薩摩芋入手後の調理で料理の出来ない仙也だけを行かせるわけにもいかず、ディオハルクも参加を決めるのだった。
「なんで薩摩芋が欲しい時にこんな従魔が発生するんだよ!」と日暮仙寿(aa4519)苛立たし気に呟いた。
そう、それも全て従魔が悪いのである。「ささっと倒して薩摩芋パーティしよう!」と、やる気を見せる姿に、不知火あけび(aa4519hero001)も『薩摩芋の為に!』とやる気を現すのであった。
「薩摩芋を食べたいというだけだったのに、こんなことになるとは思いませんでしたね」と、トリーシャ・C・メンドーサ(aa4635)が気だるげにぼやく。アンニュイな色気が漂う姿からは、トリーシャが女装していると見抜ける者はそれ程多くないだろう。
それをBridget・B(aa4635hero001)は、まぁまぁと『これを頑張れば沢山薩摩芋が食べられますね』と宥めるのであった。
●畑へ
龍哉は得た情報から、実際に手を出すまでは特に動かないって事が事実なのだとすれば、ある程度までならライヴスゴーグルでその流れを追えるかもしれないと考える。それに、ミーレス級の居場所がわかれば幾らかでも手間は省けそうだということだ。
「こうなれば潜られる前に掘り起こして、取り纏めてから一気にライヴスを流すか」と、メトロニウムシャベルを取り出す。
そこでふと、龍哉はこのままシャベルを突き込み、そのまま従魔の憑いてる茎にライヴスを流すってのは出来るんだろうか……という疑問を抱いた。それが出来れば、シャベルを突き込んでそのまま従魔退治&薩摩芋収穫って感じで一石二鳥なのである。
「まぁ、それが無理でも引っ張り出す事が出来れば良しとするか」『急がば回れ、とは良く言ったものですわね』と、人海戦術宜しく、横一列に並んで其々が一畝を担当し、終わったらまた次の列それが終わったらまた次……という感じで地道な作業に臨むのであった。
「はぁ……やる気が出ん」と、溜息を零す恭也に『もう! ヤル気出してよ。ボクの御芋が従魔達に取られちゃうでしょう』と伊邪那美はむくれた。
「何で当日に、材料を集めをしているんだ……いつも、言ってるが準備は最低でも前日までに済ませて置け」『いいから、早く!』「まあ、農家の人達も困っている様だからちゃんとやるが……」
畑を前にすると、これからする作業の大変さが予期させられるようではあるが、まずは蔓の皮を剥いて、内部組織を露出させる。そして、露出させた部分を絡めてライヴスが流れる様に細工することで、蔓を絡ませて一度の流出で終わるという寸法だ。
それを手分けしてこなし、自身が割当たった畝の従魔を払い終わったら、根元が絶縁体の避雷針を立てて電導性の高い素材で作ったワイヤーで結び、ワイヤーの端を周囲に影響が及ばない地面に埋めてアースの役割を持たせるようなこともしてみよう……と恭也はこれからの作業に目途を付けるのだった。
暁とキャスは、蔓の一つ一つを取ってはライヴスを流し込み、そして従魔が消えたら薩摩芋を掘る……ということを繰り返していた。
『デモー1本1本やるのは面倒ヨー』と、ある程度繰り返した頃に、キャスがそうぼやいた。流石にこの途方もない数を地道にやっていくのは大変だ。
暁自身も多少の飽きが出てきて「土にライヴス流し込んで一気に殲滅とかできないかなー」と、考える。
そこから、「それっぽいのあったらやってみよう」と、他の人の様子を見てみることにする。「皆に案があればそれもやってみよう」という訳だ。
「さて、キャス、何か良い方法探すよー」
大規模作戦以上の気合を入れ、明人とドロシーは畑という名の戦場に足を踏み入れた。その背中は戦士の背中であるかのように、気迫に満ちていた。それ程にまで、食が関わっている時の二人は凄いのである。
まず手近な場所にある薩摩芋を掘り返し、それにライヴスを流して反応を探ってみたが、数度もすればさっさとライヴスを流してしまう方が楽であるということに気付いた。
反応を探りながら、蔓ごとにライヴスを流して追い詰める。
「ドロシー、逆からグルリと攻めていけ」『合点!』
ドロシーと二人で、挟み撃ちをする要領で追い込んでは、畑の外側から満遍なくライヴスを流し、逃げられないように攻めていった。
やる気を見せるナインに、悠登は「食べ物のことになると真剣になるよね、ナインは」と、多少の呆れも込めて肩を竦めた。それにナインは、何を言っているのだというような怪訝そうな表情で『当然だろう? 腹が減っては戦はできぬ…!』と力強く断言した。
悠登はナインと手分けして従魔を払うことにより、作業時間の短縮と作業効率のアップを目論む。折角薩摩芋料理を作るのだから、その時間を長くとる為にだ。
二人も他のメンバー同様、1人1列担当で、順番に蔓を触ってライヴスを流していく。
全ての苗に従魔憑き芋があるのか不明だが、調べるよりは流した方が早そうなので、自身が担当している列に関しては手当り次第、目に付くものに流す。
もしも効率の良いやり方をしている人がいたら真似しようかとも考える、悠登は「さて、どうしたものか」と思案しながら、周囲にも目を向けた。
仙也とディオハルクは、重りを付けた糸を用意する。そして、綱にライヴスを流すことにより、纏めてライヴスの送信が可能なのか試みた。
「サンタ型にも効いてたらしいし、ライヴス流せんだろこれ。血とかも入ってそうだし撒けば」『馬鹿かお前? ああすまん馬鹿だったな』
戦闘というわけではないので、共鳴はせずに観察と捜索と実働といった感じで動く。
綱にライヴスを流し、放出は有効のようで、問題の無いようだ。
そんなこんなで薩摩芋にライヴスを流し込む傍ら、土の流れにも気を向ける。
『芋全体でなく一部だけに憑くとすれば芋自体には関係ないのではないか? 攻撃して来ないのも本体ではないならまあ納得出来そうだしな。それに土経由でまとめて狙えるかもしれんぞ?』という言葉に、仙也は「よし試すか」と即決する。そのあまりにも躊躇いの無い姿に、提案したディオハルクの方が『適当に言っただけなんだが?』と首を傾げた。
「芋づる式って言葉もあるし、蔓を辿っていけば大元に近づけるんじゃないか?」と結論づけた仙寿は、「ある程度の所まで蔓を纏められたらまとめてライヴスを流そう」と決めてまずは蔓を纏めるところから始める。
しかし、この作業はハッキリと言って「……地味な作業だな」というこの一言に尽きる。仙寿が思わずぼやいてしまっても無理からぬことであろう。しかし、対照的にあけびは『仙寿様、薩摩芋の為だよ!』とそのやる気を維持して元気良く作業をこなしている。
その途中、近くの畝を担当していた仙也とディオハルクに「久しぶりだな。お前達も薩摩芋目当てか?」『(ディオハルクって料理が得意らしいけど……本当なのかな?)』と挨拶をすると、「まぁな。も……と言うのなら、そういう仙寿達も薩摩芋が目当てか」と仙也は頷き、ディオハルクはあけびの視線からその心の声を感じ取って睨みつけもしたが、あけびは笑顔を浮かべてそれをあっさりと受け流した。ディオハルクの料理の腕前は果たしてどうなのか……それは、従魔を退治し薩摩芋を手に入れられればわかることである。
薩摩芋自身が暴れているわけではないが、初依頼なので、トリーシャは少し戦闘の練習をしてから臨む。練習といっても、ストームエッジでメイドのモップやデッキブラシを大量精製し、それを愚神にぶつけられるかどうか試してみた……という程度だ。
その後、他のメンバー同様に蔓を掴んでライヴスを流してみるものの、効率の悪さに気が付いた。その上、腰まで痛くなってきた。
そこで、トリーシャは考える。その代案その1として、電線みたいにワイヤーで全部の薩摩芋の蔓と繋いでライヴスを流してみる……ということを考えたのだが、そもそも流れるかどうかわからないし、電線を張り巡らせる手間の方がかかるだろう。
その2は、水浸しにして寝そべってみて流してみる……ということも考えたが、これは何よりも見栄えが悪い。その上、これで流れるとも思えなかった。
その3は、両手両足を広げ、できるだけ身体が多くの蔓に触れるようにして流すのも有りかと思ったが、これはかなり馬鹿っぽいだろう。
そんなこんなで、トリーシャの思案にして試案は続く。
『取り敢えず、何かやってみましょう。他の方は随分と遠くまで進んでいるようですよ』とBridgetに促され、トリーシャは再び蔓にライヴスを流すのであった。
その後、どうにか地道な作業を頑張った結果、何とか薩摩芋に憑いたすべてのミーレス級の従魔を払い終えた。後は、再発しないようにライヴスの流れを整えてやればもう安心である。
龍哉は、原因となったと思われる落雷の際の状況を確認する。それでもし落雷を対策すうのなら、避雷針を数カ所立ててみて、周囲への無作為な影響を抑えるように図ってみるのも有りだと考える。畑のライヴスも整えるつもりのメンバーもいるようだし、それと並行してやるのも良いだろうと、自身は自身の案を実行するのであった。
暁とキャスは、放置していても何れは修復されるとは思うものの、念の為にライヴスの乱れの修復を考える。
効率の良い方法があるのならそれを採用しようと、HOPEに連絡を入れた。
明斗とドロシーは、明斗が薩摩芋料理の準備をしている間に、「料理が出来るまで、遊んでこい、変なの見つけたら適当にやってこい」と送り出し、ドロシーはびしっと敬礼して『了解!』と応えた。
意気揚々と周囲の捜索と異常の解明に向かうドロシーを見送り、明斗はさぁやるぞと言わんばかりに腕まくりをした。
悠登とナインは、畑にライヴスを流して調整するのを、「畑の四隅&真ん中から一度に流せば調整しやすいかも?」と提案する。
それについては、同じように畑のライヴスを気にしていた仙寿とあけびの協力の元、『せぇの!』と言うあけびの元気良い言葉と共に四方から一気にライヴスを流し込んでいくのだった。
トリーシャは、落雷のところのライヴスエネルギー修正については、地面を這うような感じでよく探し、直接ライヴスの乱れている中心点に両手をついてエネルギーを流し込んで修正を試みた。
他のメンバーがライヴスの調整をしている間、仙也とディオハルクは農家の人に手伝いを買って出て、出荷の為の準備や、初めに「好きなだけ持って行って良い」と言う言葉をもらってはいるが、実際に作物を頂戴することについて交渉し、少しでも供給の手助けになればと働くのであった。
●調理開始、そして薩摩芋パーティーへ
「で、今度はサツマイモをどう料理するか、だな」と、薩摩芋を前にして龍哉は思案する。
薩摩芋といえば真っ先に思い付く定番の焼き芋は、濡れ新聞紙とアルミホイルで包んで焚き火で焼くことは龍哉の中で決定事項である。
それなら「俺は手軽な所で芋けんぴを作ろう。甘さ控えめの香ばしい感じで。それと、スイーツ系ばかりは飽きるので、材料を予め準備・調達して炊き込みご飯&豚汁にも挑戦しようか」と提案すると、周囲を見回したヴァルトラウテは『本格的に食事会の様相を呈してきましたわね』と呟いた。
「この程度ならまだ手間は掛からない方だろ」
天ぷらとかしようと思うとそれなり手間だしな……と、付け加えて龍哉も調理を始めるのであった。
持ってきた多量の薩摩芋を誇らしげに出しながら、『さあ、どんどん持って来るからジャンジャン作ってね』と伊邪那美は催促した。それを呆れたような感心した声音で、「相変わらず食べる事に関しては良く動くな」と恭也は言う。
まずは芋ケンピだ。芋をスティック状に切り、油で二度揚げしてから砂糖を溶かした蜜に潜らせて乾燥させる。乾燥させている間に、今度は乱切りした芋を同じように揚げて、砂糖、醤油、味醂で作った蜜に絡ませて作った大学芋に、茹でた物をペースト状にしてスポンジケーキの上に乗せたモンブランの完成だ。
『お~、お願いした通り御菓子を作ってくれたね』と感嘆の声が上がり、それに「……お前と契約してから剣の腕以上に料理の腕が上がった気がするぞ」と呟けば、『やったね、恭也。これで何時でもお嫁さんになれるよ』と伊邪那美はサムズアップする。
それを見ながら恭也は、「なんで俺が嫁になるんだ……」と脱力した。
暁は、好きなだけ持っていっていいと言われてはいるが、調理に必要な分だけに手を付ける。それは一重に、農家の人の食い扶持であるというところが大きい為の暁の気遣いだ。
キャスは、『切って炒めるだけだからすぐできるよー』と薩摩芋と人参を千切りして水洗いし、フライパンにごま油とオリーブオイルを加えて強火で炒める。それに砂糖醤油入れて水気飛ぶまで炒め、七味と胡麻混ぜて完成の金平芋を作った。
その横で、暁は本命であるデザートづくりだ。
薄力粉、砂糖、卵、油を混ぜ、出来上がったそれを搾り袋で円を作ると、その上に搾って卵黄を塗り、180度のオーブンで焼けばポテトクッキー完成である。
焼いている傍ら、薩摩芋を茹で、ゆで上がった薩摩芋をマッシュする。
「キャスー出番だー」と声をかければ、『力仕事はマカセロー』とキャスが潰している間、卵白をメレンゲにして砂糖を加える。そしてキャスが作ったマッシュポテトにメレンゲを加えて混ぜ、搾り袋に入れる。そのまま絞って焼けばスイートポテトを仕上げた。
明斗が作るのは、まずは薩摩芋ご飯だ。芋をサイコロ状に切り、ご飯と一緒に飯盒で炊きあげるというお手軽なものであるが、薩摩芋の甘さがご飯にマッチして美味な一品である。
炊いている間に、薩摩芋のレモン煮も作る。芋を輪切りにし、茹で、そこに蜂蜜とレモン汁、少々の醤油といった隠し味を混ぜた調理液を入れて味を含ませた自慢の一品だ。
最後に、味噌汁。薩摩芋と他の根菜を小さく切った物をいれた味噌汁は、ボリュームもあって満腹感の得られる満足な一品だ。
これまで作っているのが全て食事系の辺り、明斗とドロシーがいかに腹を満たしたいと思っているのかが伝わってくるようである。
出来栄えに満足すると、「できたぞ、ドロシー」と周囲を捜索中のドロシーに声をかけるのだった。
3苗分の薩摩芋を貰い、抱えきれないそれに農家の人へ笑顔で礼を告げると、悠登は「やっぱり、薩摩芋といえば焼き芋だよね~」と上機嫌だ。
まずは薩摩芋の汚れを落として水に浸し、水分を吸わせた後、アルミホイルで包む。
アルミホイルで包んだそれを落ち葉に埋めて、そこに焚き火を熾す。様子を見ながら枝でごろごろ転がして、焼けすぎないように、または生にならないように注意深く見守る。
一見地味な作業であるものの、大事な過程だ。量が量の為になかなかに目が離せない。
そして出来上がった焼き芋は、バターを乗せてトロッとした触感を楽しながら食べるのが悠登の食べ方だ。
「薩摩芋の国(鹿児島)の人に教えてもらった食べ方なんだ~。おいしいよ!」
その美味しさは楽しみにしておいて、パーティーの為に他の人の料理の手伝いや、飲み物の用意などといったセッティングを率先して行うのだった。
仙也は大き目の籠一つ分に薩摩芋を収穫すると、それをディオハルクが調理する。
小さなタルト生地にクリーム状の薩摩芋ペーストを入れてオーブンで焼き、スイートポテトを作る。そして焼きあがるまでに、薩摩芋を混ぜたケーキ生地を小さなホットケーキの要領で焼いていく。流石に普段から家事をしているだけあって、手慣れたものである。
ケーキが焼けたらチーズ等のクリームを乗せ、周りにさつまいもペーストを絞って覆い、最後に蒸したサツマイモを乗せてモンブラン(芋版)の完成である。
お次は芋天だ。味付けは芋が甘いので砂糖控えめにし、天麩羅自体は塩であっさりと食すのが良いだろう。
『やる分には手は抜かん』と、真剣な様のディオハルクを見てながら、仙也は「おー出来てんなー(抜いた後の葉貰って焼いて、その火で焼き芋してた)」と楽しげな声を上げた。
実際に薩摩芋を前にし、仙寿は「焼き芋位しか考えてなかったな」と呟き、それにあけびが『薩摩芋パーティなのに!?』と突っ込む。
「秋っぽくて良いだろうが。それとも他に思いつくのか?」『うーん、ここはスイートポテトでも作りますか! 作ったことないけど!』「ないのかよ」
呆れ顔の仙寿を尻目にレシピを検索したあけびは、その際に見つけた薩摩芋のクッキーも簡単だからと作り始める。
『お菓子は作ったことないけど、寮生活で自炊してたからいけるはず』と自信満々の姿に、料理経験0の仙寿は「へぇ」と感心した声を上げる。
あけびが主導の元、次々に指示が飛び、『仙寿様は茹で上がった芋を潰して。いやーこういう時男手って良いよね!』「英雄なんだから疲れねーだろ」とやり取りしながらも、手際よく料理を進めて行く。
普段は仙寿が主導権を握っている為、ある意味あけびに指示されるのは新鮮ではあったが、「……割と人使いが荒いことが発覚した」というのが正直な感想であった。
トリーシャの料理の腕は並みではあるものの、Bridgetは貴族仕えのセミプロ級の腕前の持ち主の為、期待が持てる筈だと調理を開始する。但し、フィリピンの食材に関してはやはりトリーシャに軍配が上がる為に、トリーシャ主導の元で行う。
フィリピン料理ではウベ(紫芋)の料理がよくあるので、そのシェイクの応用で、サツマイモと砂糖とミルクでシェイクを作る。それとは別に、サツマイモのデザートとして、サツマイモを輪切りにして串刺しにし、焦がし砂糖などのタレをかけたカモテキューを。それから、フィリピンなどで使う料理用バナナの性質がイモに近いので、バナナ料理をサツマイモで作ってもみる。
そこまで作って、他には……と思案し、カキ氷とかナタデココ、ココナッツなどを全部のせしたハロハロはイモのアイスなどが良く使われるので、サツマイモでアイスも作る。キャッサバケーキがよくあるので、サツマイモでケーキ作ったら美味しいのではないかというのがトリーシャの考えだ。
其々が作ったものがテーブルに並べられていく。「乾杯」の合図の元、薩摩芋の料理を堪能する。
ここぞとばかりに輝く笑みを浮かべて給仕に回るBridgetに促され、トリーシャも適度に料理を摘まみつつも、仕込まれたメイドの作法で給仕の手伝いをさせられるのだった。
「うおっ、これ美味いな」と声を上げた龍哉に、『えぇ、本当に美味しいですね』とヴァルトラウテもスイーツに舌鼓を打つ。
色々な料理を堪能する伊邪那美の横で、料理を食べつつも、余ったものを蒸かしてワイヤーでスライスした後、乾燥させて干し芋を作ってお土産にする恭也に『また、渋い物を……』と伊邪那美は突っ込む。
「自然な甘さが緑茶に良く合うんだぞ」『いや、もっと若者らしい物を好もうよ』
暁は美容に良い物が出来たと思っている横で、キャスは『焼き芋パーティーデスネー』と楽しげな声を上げる。
そこで暁の豆知識を一つ。「そうそう、薩摩芋の皮を一緒に食べるとおならの原因になるガスを減らしてくれるそうだよ。腹持ちがいい消化されにくいのがおならの原因」
明斗はご飯をよそってドロシーに渡しつつ、「いまのうちに、腹に溜め込んでおけ」と囁けば、頷いた後にドロシーはご飯を掻き込む。
「なんかあったか?」と一応、成果を確認するが、ハムスターの頬袋並みに口に詰め込んだ顔を横に振る。それに「そうか」と頷き、自身も掻きこむようにして食べる。
この二人にとっては勿論、食事も戦場ではあるが、終わった後も戦場だ。ドロシーに持ち帰る芋を袋に詰めるように指示し、明斗も一応周囲を軽く捜索する。そして戻ってきて、ドロシーの戦果を見て頭を撫でると「帰ったら芋羊羹を作ろう」と提案するのだった。
笑顔で他のメンバーの料理を堪能していた悠登とナインであるが(特に、ナインは悠登の2倍は食べているであろう、良い食べっぷりだ)、自分たちの横にこんもりと積まれたそれに、『焼き芋、少し数が多くないか?』と首を傾げる。
「えへへ、ばーちゃんのお土産にしようと思ってさ。昔は焼き芋をよくしたって言ってたし、喜んでくれるかなって」『いいんじゃないか。あ、私の夜食の分も取っておいてくれ』「ナインは食べ過ぎ!」
やるべきことはやったとばかりに、ディオハルクは幻想蝶の中に引っ込んでしまったが、仙也は色々な料理をつまんで歩いている。
色々楽しみ、「食ったなー」と呟けば、ディオハルクが良い笑顔を浮かべ『さて覚悟は良いな? 無駄に掘りおった分がなくなるまで、お前の食事は三食薩摩芋飯と芋天とサツマイモ入り味噌汁だ』と言う。
「えー?なんで『なんでじゃないわ馬鹿たれ。後を考えず掘りおってからに。しかもタダ働きとはどういう事だ?』」
料理は確かに美味しいが、それでも料理初心者の仙寿からすると、キッチンを動き回った疲れがあり、「世の中の料理を作る奴はすげーな」と感心さえした。
仲間達の料理に舌鼓を打って、各々に「美味しい」という言葉を伝えるその横で、あけびも『本当に美味しいです』と満面の笑みだ。
パーティーをするまでの過程が長すぎて疲れたが、スイートポテトもクッキーも上手く出来て満足な仙寿であった。
薩摩芋が無いためにとんだパーティーとなってしまったが、結果としては料理を楽しみ、そして困っている農家の人も助けることが出来て一石二鳥である。
みんなのお腹が満腹になるまで、パーティーは続くのであった。