本部

広告塔の少女~月明かりの章~

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
寸志
相談期間
4日
完成日
2016/10/23 10:26

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掲示板

オープニング

● 世界再生の物語~ECCOの場合~
「ECCOさん初めましてだね」
そう春香はひざにerisuを抱えながらECCOと向き合った。
ここはグロリア社の会議室。ここでECCOの新しい以来である。PV撮影をどのように行うかを決めていく。
「あ……」
 その時ECCOは壁の向こうのにぎやかさを気に留めた、ギターの音と甲高い少女の声。
「光夜君やな……。また遙華ちゃん怒らせてるんか、ほんま子供やなぁ」
 そう微笑むECCO。
「私たちの方は大人にことを進めていこうね」
 そう春香が言うと。眠りこけていたerisuがずるりと春香の腕からあふれでて、取り落しそうになる。
 しまらない。
「でな、みんなに集まってもろうたからには、すんごいのを、飛んだり跳ねたりまわったり……と思ったんやけど。それは光夜君の両分やからやめとくわ。うちらはしっとりいこか」
「しっとりってどんなノリ?」
「そもそもこのPV、ゲームの予約特典のIFストーリーやねん、パッケージにクリア後見てくださいって書いて入れておいて。ハッピーエンドを迎えたプレイヤーがこれを見ると余韻が増し増しになるっていう」
「具体的には?」
「世界が終る一か月、それを演出する」
 ECCOは続けて告げた。
「世界の端っこの南国の島、そこはデリートが最も遅い地域やから、そこに住んでる住民は、海が端っこからじわじわ消えてくのが見えてわかっとんねん」
「なるほど」
「その最後の一か月を思い思いに過ごしている人たちを取ることによって、世界を救ってよかったなって思わせられへんかなって」
 春香は一瞬悲しそうな表情をしたが、一瞬目を瞬かせるとECCOに向き直って笑顔を浮かべた。
「うん、それってすごくいいことだと思う。よし私もがんばっちゃうぞ、演技苦手だけど!」
「ららら、春香、がんばって」

● 『世界の終りの物語』
 グロリア社ゲーム部門。去年春に発足の宣言をされたゲーム業界に現れた新鋭。
 そんな彼らが今年の冬さっそく初タイトルをリリースすることになっていた。
 名前を『世界の終りの物語』
 ジャンルはRPG、テーマは『君は世界を愛することができるか』
 この物語はいわゆるハイファンタジー。現実の要素が全くない、多種族魔法、剣魔物。そして魔王がいるオーソドックスなファンタジーの世界。
 一つだけ従来の世界観と違うとすれば。
 シナリオ進行に当たって徐々に世界の真実が行進される点だろう。
 このゲームは主人公の選択によって二つの世界の内容が変わる。
 二つの世界とは現実世界とこのファンタジー世界の歴史や未来である。
 主人公のもともと生きていた現実世界。
 そして主人公が今生きているファンタジー世界。
 このどちらの世界で生きるのか、またどちらの世界が本物なのか葛藤しながら主人公は物語を進めていき、最後にはファンタジー世界は何度も崩壊のすえ作り直されていることを知る。
 それを阻止するには現実世界を犠牲にする必要があるが……
 主人公ははたして何を選び、何を捨てるのか。

 それがこの物語の大体のあらすじ。


● 企画書提出~春香の場合~


目的 ED曲にマッチした、PVを作成する
曲名 ブレス・ユー
曲調 遠くで戦う君に、祝福あれと願う曲。
 自分は今君と同じ戦場には立っていないけど、いつも心配しているし、戻ってきたときにはお祝いがしたいよ。
 だから無茶だけはしないで。
 そう願っていたけど、君の傷つく声が聞こえて、苦悩する声が聞こえて。
 でも私の声は届かないよ。
 ある日送られてきたその花に本当の意味を見たよ。
 君はもう私のもとには帰ってきてくれないんだね。
 それは生なのか死なのかはわからない。
 けど祈らせて、君に、ただただ祝福あれと。
 そんな歌。

舞台 南国の島
台本 台本は大まかな起承転結のみ。ちなみにこのPVに出てくる南国の島は勇者が最初に目を覚ました始まりの地という設定、ここで数年の時を過ごすことになる第二の故郷。
起 魔王と勇者が最後の戦いを始めたと島中に知れ渡る。
承 世界が端っこから消え始めるが、戦いがどうなったかはわからない。
転 勇者の死体が送り返されてくる、ここで初めて世界のデリートは避けられないと知る。
結 海が、人が消えていく。そして最後に君たちが消える

 演技としては、あなたがもし、最後の一か月を迎えるならどうするか、書いてプレイイングとして提出してほしい。
 一応ECCOはこの世界の神ということであなた方を見守る立場にあるが、ECCOと積極的に絡む必要はない。
 PLどうしで物語を作って合わせても良い。

解説

目標 PVを作成する。

 今回はECCOと春香のペアです。春香は皆さんの要望に従いますが特に何もなければ。消えてしまう前に死んでしまった親友のために歌を残そうと奮闘する女子高生をやりたいそうです。
 今回は皆さんが作った小さな台本を混ぜて大きな台本を作る形になり、あまり例がないと思いますが、うまくいくとすごく楽しいと思いますので頑張りましょう!!


 ● 後日談
 このPV撮影はほぼ同時リリースされる広告塔の少女~天晴れの章~と同じ島でPVを撮影している設定です。
 なので、このPV撮影が終わった後の打ち上げ。BBQは天晴れの章の人たちと一緒にやってる設定です。

リプレイ


《顔合わせ》

『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』は美しい島の風景を写真に収めている。
 これはプライベートな一枚、今回はカメラマン件スタッフとしてグロリア社にやとわれているので。両方の撮影現場を行ったり来たりしないといけない、ハードスケジュールである。
「ECCOさん今日はよろしくお願いします」
 そしてそのレンズの先にはECCOがいた。これは彼女のオフショット。そう一つシャッターを切る。
「月鏡さんやんか、今回もありがとうなぁ」
 そう『月鏡 由利菜(aa0873)』そして『リーヴスラシル(aa0873hero001)』と言葉を交わすECCOはとても楽しそうだ。 
 そんな彼女に歩み寄るのは『杏子(aa4344)』
「初めましてECCOちゃん! 映像で見るよりずっと美人ねえ」
「ありがとうなぁ。今日はよろしゅうな」
「うわ、本物なのねぇ」
 『まほらま(aa2289hero001)』はまだ信じられないと言った調子でECCOを遠くから見ている、その手を引いて『GーYA(aa2289)』はECCOの前に立った。
「G-YAさんやんなぁ? 初めまして、まほらまさんも今日はよろしゅうな」
「この世界に来てすぐの頃心に響いた声が聞こえて、歌っていたのがECCOさん。会えるなんて光栄だわぁ」
「初めまして、前いた施設の来賓歓迎で劇や歌やったくらいなので緊張します」
 そうECCOと視線を合わせられないGーYAは視線を泳がせた。
 そんな和気あいあいとした一団からはなれたところで少女が一人佇んでいる。
「水瀬さん何を気にしてるの?」
 空を見ている『水瀬 雨月(aa0801)』を見つめて春香は声をかけた。
「いえ、何でも。あの子向うでも頑張ってるかしらって、眺めていただけ……」
「あのこ……」
 そう春香が雨月の視線をたどるとそこにはヘリが飛んでくる、それはあちらの撮影で使うヘリだろう、荒れに遙華も乗っているはずだ。
「それにしても、元気になったようでよかったわ春香さん」
 そうヘリから視線を下ろして雨月は遥かに告げた。
「春香でいいよ、うん。ルネの一件以来かなぁ、あの時はありがとうね」
「ああ!」
 そう穏やかに話している二人の隣を駆け抜けていくECCO。まるで少女のように無邪気に笑いECCOは二人の少女の手を取った。
「久しぶりやんなぁ、二人とも」
『アル(aa1730)』と『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』である。
「台本見たけど、何というか……独特の世界観ね」
「まぁ、うちが作った世界感やないしなぁ」
 三人の纏う雰囲気は穏やかだ。仕事を重ねるものもう何度目だろうという具合なので、きがねはないようだ。
「今日は沙羅さんは何やるん?」
「私はこの世界を滅亡へと導く者……魔王の役を担当するわ」
「アルちゃんは?」
「ボクはね。春香ちゃんと一緒に歌を作る役だよ!」
「あらぁ。沙羅。そろそろ時間よ?」
 『榊原・沙耶(aa1188)』がボイスチェンジャーを手渡す。そしてひらっひらな衣装も欠かさない。
「……沙耶、何これ。前にも見た事あるんだけど……」
「勿論、ガデンツァの衣装よ」
「はぁあ!? 今回もあの性悪ぼっちの真似しなきゃなんないの!?」
「そ、そんな、まさかあれをやるの?」
 春香が青ざめた顔で尋ねる。
「や、やめて衣装は本当に勘弁して、あんなの上から布かぶったパンツ一丁じゃない。絶対無理よ」
 連行される沙羅を春香がげんなりした表情で見送った。
(人間は面白い生き物だな。ゲームとは所詮データの集まりだろう?そんな物の為にこんなにも労力を使うのか?)
 そんな一行を『テトラ(aa4344hero001)』がぼんやりと見守る。


《プロローグ》

「その程度でわらわに勝とうなどと、片腹痛いわ」
 そう魔王が告げる。
 場所は次元の狭間、夜のような闇が四方に広がるが、しかし暗くはない、そんな空間の中心に、ひらっひらな布をかぶりパンツ一丁の沙羅がいる。
「魔王様、勇者を倒せばこの世界のデリートは目前です」
 そんな魔王に、魔法使い風の沙耶が告げる。彼女は露出控えめのがちがちな衣装であった。
「また、最初から始めればよい、何度でもかかってくるがよい」
 そう沙羅は、慣れた感じのわらわ口調で告げる。
「そうか、もうここで終わり……なんだな……」
 そう勇者GーYAの体が傾いでいく。
 とっくに刃は折れ鎧もひび割れている、アイテムはつき、MPもない全力を出し切った結果の敗北。
 だがそれも仕方がないのかもしれない。
 繰り返されてきた、定められた結末がこれならば。
「ごめん、まほらま……」
 そう最後に逢いたかった人の名を呼んで、そして彼は過去に思いをはせた。

   *   *

 空に舞い上がる木剣。
 見上げた空は青く、風は温かい、そんな南の島の砂浜にGーYAは倒れ込んだ。
 その手には木剣が握られている。つまり今砂に突き刺さった剣は自身の物ではなく、師匠杏子の剣であった。
 目を丸くしている杏子。
「驚いたな」
「やった、やっと師匠から一本とれた!」
 喜びに打ち震えるGーYA、両手を天に突き刺して無邪気に笑う。
「そんな……」
 そうつぶやいたのはまほろまだった。彼女もまた目を見開き、杏子とは違う複雑な心境でそれを見守っている。
「免許皆伝だ、お前なら大丈夫。魔王も倒せるさ!」
「ほんとうか!?」
「ああ、本当に……」
 そう杏子は砂に突き刺さった木剣に歩み寄る、砂から抜き取ろうと手を伸ばしたが、その手を遮ってまほらまが剣を抜いた。
「まだ、だめよ」
 そう告げたまほらまの目は座っているGーYAはその目をみて一瞬ですべてを理解した。
「その程度じゃ、魔王は倒せない……」
 まほらまが剣を構える、その切っ先に一切のぶれがない。
 GーYAは微笑む。
「最後の試練か……」 
 この世界に召喚され、はや数年毎日剣術を磨き続けてきたが、それでも彼女の隙を見つけることはできなかった。
「体は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、それに私を超えるくらいでないと勇者は務まらない。本当の勇者を越えて見なさい」
「やれやれ、素直にGーYAを島から出したくないと言えばいいのに」
 そう杏子は首を左右に振る。
 そして気を打ち合わせる音は高らかに太陽が海の彼方に沈んでも続いた。
 と言っても、結局夜遅くまでまほらまから一本とることはできなかったのだが。
 そして、打ち据えられたGーYAの体は砂にまみれ擦り傷だらけだ。
「そんなボロボロなのにどうしてまた立ち上がるの?」
 まほらまが横たわるGーYAに尋ねた。
「夢をあきらめなくちゃいけなかった君の夢を叶えたいからさ」
 顔を真っ赤にして自分の体を抱くまほらま。
「じょ、冗談は顔だけにして」
「隙あり」
 そう喉元に木剣を押しあてるGーYA。その瞬間体の力が抜けて、倒れ込むまほらま。その体を抱き支えるGーYA。
「卑怯よ……」
「一本は一本だ……」
「……わかってるの? あなたの旅路は楽な物じゃない。きっと心を折るような絶望にまみれてる」
「誰かのカラクリで決められた運命なら希望を描いて新しく継ぎ足しちゃえばいいんだ。だからきっと大丈夫」
「強く……なったね」
 そう笑って勇者GーYAは旅立った。夜明けとともに、皆の機体を背負って。

《再構築》

 魔王は朦朧とした意識のGーYAの胸ぐらをつかみあげ、その耳に良く聞こえるように顔を使づけた。
「そうじゃな、お前のかつてを再構築してやろう、この世界に来たての無力であわれな卑屈少年、そのころにお前を返してやろう、見物じゃな。お主が非力な自分の身を一体どうするのか……」
「そんなものいらない」
「なに?」
 次の瞬間、GーYAの短刀が伸ばされ魔王の顔面に迫る。
 
  
    *    *


 その時紅茶に口をつけていた由利菜は何かを感じて空を仰ぎ見た。
「また、この世界は終わりを告げるのですね」
 そう告げた瞬間世界から音が消えた。念話。神々にのみゆるされた空間を超越した会話法である。
「呼び出し? 誰から?」
「そう簡単に運命は覆らないよ」
 由利菜があたりを見渡すと影が集まり、自分の目の前に邪神が出現する。邪神テトラはこの世界を終末に導く者だった。
「さらにこれはもっとたちが悪い。システムみたいなものだ。物は上から下に落ちる、それくらい自然なことなんだよ」
 テトラが告げる、だがその言葉を遮るように蛍のような光が沸き立った。
 その光が合わさり女神ECCOが生まれる。
「へぇ、君もいたのか、なんだか君たち、今回の世界は思いやりが強いみたいだね、今までのループは傍観してきたのに。どうしたの? ずいぶん抵抗するね」
 由利菜は無言でテトラを睨む。ECCOが代わりに言葉を継いだ。
「それでも私は願うはわ、誰もが幸せになれる未来がどこかにあると信じて」
――<未来へ託す 輪廻の記憶 幾千の思い 世界に託して>…旧き希望の歌の一節だ。
 そう由利菜の中のリーヴスラシルが告げた。
――世界を護れずして、何が守護女神だ。私は最後まで抗う。
「そう? だったらご勝手に」
 そう告げてテトラは消える。
――ECCO。どう見るこの世界は……。
 リーヴスラシルはECCOに尋ねた。
「……覚悟だけはしておいてください」

 そこは勇者が旅立って数か月の世界。そして最終決戦が今終わってしまった世界。
 由利菜は今回は騎士の一人だった。勇者と様々な困難を乗り越えて進んだが・
 最後の決戦には一人で赴く、そう勇者は告げた。
 由利菜をはじめとした仲間たちを置いて、彼は一人魔王のもとに旅立ってしまった。
 由利菜は結局勇者を見つけることはできなかったそして由利菜はここにいる。
 この島は魔王の侵略が一番及んでない地域、勇者が旅立った場所。かりそめの平和がここにあった。
 現に少女たちは走りまわり、笑い声を奏でている。

   *   *

「あ! 春香、あんなところにいた。水瀬先輩も早く」
 そうアルは雨月を置いて、坂道をひた走る。目指すは灯台。
 その打ち捨てられた灯台の上に春香は座っている。
 アルは急いで塔を上ると、本とにらめっこししている姿に出くわした。
 楽譜を広げてオンプを刻んでる。
「なにしてるの春香ちゃん?」
「あの、アルちゃん、私一応先輩」
「あ、水瀬先輩やっときた」
「あ、雨月ちゃんは先輩なんだ……」
「ふふふ、春香は貫禄が無いものね」
 そういって少女たちはひとしきり笑うとアルは春香の楽譜をつまみあげて、これは何かと問いかけた。
「これはね、親友が残した楽譜なんだ……」
 その楽譜を眺めながら塔を下りて、診療所まで歩いていく三人。
「あら、先客がいるみたいね」
 雨月が指さした先には由利菜、そして最近ついに寝たきりとなってしまったまほらまがいる。
「まほらま先輩、体調どう?」
 アルが問いかけた。
「今日はずいぶん楽よ」
 そう答えるとまほらまは椅子の上から本をどけて三人を座るように促した。
「いま。由利菜さんからGーYAの話を聞いていたところよ」
 するとその場の全員が興味深げに由利菜に視線を向けた。
「あの人と冒険していた時間は楽しかったけれど、私には彼が別の使命との板挟みになっているように見えて……それが辛くもありました」
 そう淡々と話し始める由利菜。
 中には彼が女湯に突っ込んだだとか、モンスターと間違えて一般人を切りかけたと言った笑い話が続いた。
「私には祈ることしかできないけど。魔王を倒して帰って来ってくるまで私は病気と闘うよ」
 久しぶりに明るい気分になったのかまほらまもそう言って笑った。
 それが彼女たちの日常、毎日笑って、必要なことを勉強して。
 そうやって日々を過ごしている。
「ね、春香ちゃん、一緒に作っていい?」
 だがその日常がもう終わってしまうことを彼女たちは知らない。
「え? いいの?」
 診療所からの帰り道。少女たちは戯れながら帰路につく。
 満点の夜空の光に照らされて。
「アルちゃんが手伝ってくれるならすごく助かるよ」
「うん、頑張ろうね」
 アルは穏やかな表情でそう言った。
「音はずっとずっと残るものだもん」
「残る? 私が死んでも?」
「うん、世界が滅んでも」
 アルと春香は頷く。
「この世界が、君が、大好きだから。何かを残したいんだ」
「この世界って、大げさね」
 そう二人の会話に雨月は微笑んだ。
「まるで歌が世界を超えると言っているようよ」
 その言葉にアルはあいまいに微笑んだ。
(おおげさじゃないんだよ、ね。ECCO様……)
 アルはECCOにそう念を送った。そして間髪入れずに告げる。
(ねぇ、ECCO様。勇者君。負けちゃったんだよね)

   *   *

「なに、元老院と連絡がつかなくなった? 世界の端から消えている?」
 この世界にも魔法由来の通話機が存在する、それを通じ杏子は定期的に各国の重役に定期的に連絡を取っているのだが。
 元老院と呼ばれる組織からの定期連絡が滞っておりその調査をしていたのだ。
「世界の消去……」
 まさかと、杏子は壁に背を預ける、額の汗が止まらない。
「負けてしまったのか。GーYA」
 
  *  *

「こんな物を見せられて、私達は一体、どうしろって言うのかしらね……」
 その日地平線が消滅した。青空の端に黒が見えるようになり、それをみんなで見守った。
「全部無駄だったのかな」
 そう春香の手から零れ落ちそうになる楽譜を掬い取ってアルは告げる
「そんなことない!」
 アルは力強く言った。
「さよならは言わない。また会おう、の約束を」

「そんな歌を、未来に繋がる歌を春香ちゃんと作れたら嬉しい」
 『未来への音~Promise~』そう書かれた楽譜にまた二人はペンをいれる。
 

《再会》

 翌朝海辺に棺桶が一つ流れ着いた。
 それを杏子がこじ開ける。
「おかえり。GーYA」
 その棺桶の中にはGーYAがいて今にも目覚めそうだけど、脈は止まっていた。
「GーYA、あなたは(お前は)……負けないのではなかったのですか」
 由利菜とリーヴスラシルの悲痛な声が海に溶けていく。
「私に……みせて」
 そうふらつく足でまほらまが棺桶に歩み寄る。そしてGーYAの体を抱き上げた。
「こんな、ぼろぼろに……」
 まほらまは彼の最後の笑顔と言葉を思い出す。
 
 夢をあきらめなくちゃいけなかった君の夢を叶えたいからさ。

 まほらまは。愛おしそうにその胸に頬を当て、そして告げる。
「お疲れさまと……ありがとうを君に」
 噛みしめた慟哭と、溢れ続ける涙。
 悲しみが島を覆った。
「彼を弔ってやろう」
 雨月がタンカーを運んできて、それにGーYAを乗せ運び出す。
「お疲れ様、あなたは素敵だったわよ」
 そう穏やかな表情で雨月は告げる。
 その瞬間、世界から音が消え去った。
 由利菜の目の前にテトラが現れる、テトラに手を引かれて現れたのは魔王沙羅。
「それ以上寄るな。魔王……」
 魔王めがけて剣を振るう由利菜。由利菜の体を操作してリーヴスラシルが刃をつきつける。
「ここは思念の海であろう?。そのようなこと無意味じゃ、それともやるか? たたかってみるかの? しんくろにてぃ・でーす」
「おふざけは大概にしてください」
 由利菜が吐き捨てるように告げた。
「わらわはECCOに逢いに来た、呼べ」
「私はここにいるわ」
 その瞬間、光が集まってECCOが形成される。。
「そろそろあきらめる気になったかの?」
「なにが?」
「信じ続けることがじゃ。何度繰り返してもそなたの望むハッピーエンドなど存在はせぬ。そろそろあきらめ軍門に下るがよい、女神の一人は頷いたぞ」
「あの子が……でも私は最後まで信じ続ける」
「何の意味もないのに? 時が繰り返すだけで何の意味もなかろうに」
「違うな。この世界が滅びても……記憶は次の世界へ受け継がれる。…小さな記憶が積み重なり、因果を変える時を迎える為、私は何度でも抗う」
 ラシルが告げた。
「お主こそ違うじゃろう? 人間を苦しめているのはECCO自身じゃ。駒のように扱い、ありもしない希望を抱かせ、無駄な血を流し、世界を破滅させる」
「そんなことはない!」
 リーヴスラシルが告げるが、それに耳を貸さない魔王。
「悪魔なのはわらわか、お主か。お主こそ魔王に相応しい事をしているではないか」
 そう魔王が指をさした先には、土で着物を汚した杏子がいた。
 これは投影だ。杏子のいる風景をここにうつしているのだ。
 それは痛ましい光景だった。
 彼女は脱力したようにその場に座り込み、周りに誰もいないことを確認すると、さめざめと涙をこぼす。
 そして墓に手向ける花を探しに雨月とアルは森を進んでいた。
「水瀬先輩はあんまり動じてないんですね」
「だって、信じて送り出したのよ。勝手に期待して勝手に失望して、そんなのあの子が可哀そうよ」
「悲しい時は素直に悲しいでいいんだよ?」
 アルは雨月の手を取った。
「私にはすこし、難しい相談ね」
 雨月はそう告げて海の向こうを見た。黒が迫ってくる。
 世界は終焉を迎えようとしていた。


《世界最後の日》
 やがて世界は闇に飲まれていく、全てが分解されていく。
「最後に、したいことを全部しましょう」
 そう雨月が告げると 
 そう少女たちは集まって普段と同じように遊ぶことを選んだ。
「結局、完成しなかったね」
 アルが譜面をなぞる、それに春香は苦笑いで返した。
 由利菜がまほらまに一冊のノートを手渡した。
「渡すかどうか迷ったのですがこれを」
 それは勇者が最後まで大事に持っていた、前の世界0のノートだった。
「世界を救うと誓ってくれた君はまだ、闘ってるのね」
 まほらまにとって知らない文字で書かれたそれ。
 しかし最後のページにだけこの世界の文字が書かれている。
「つぎは一緒に闘いましょう、希望を叶えるために」
 それは希望の文字だった。それを胸に抱きしめて、そして。少女たちは消えていく。
「これが、世界の終末か……」
 そう杏子も静かに瞳を閉じ消えていく。
「そんな、私は、また……」
 そう茫然とつぶやく由利菜、彼女は神と同化している故に消えることはできないのだ。
 そんな彼女の目にテトラが現れる。
「今回もダメだったな。この世界も直に壊れる」
 歯を食いしばる由利菜。
「良い加減、諦めたらどうだ? 何度繰り返そうが、この結末が変わる事は無い」
「嫌よ! 私は生き続けたい……! この、世……界……で!! だから!!」
 由利菜はもがく、闇に閉ざされる世界から何かを救うように手を伸ばす。
「生まれ変わっても、この記憶は…」
 そして世界には原初の混沌のみが残った。
 その混沌にはテトラとECCOのみが存在する。
 その世界の中心で項垂れるECCO。彼女に光の粒となったアルが歩み寄り。
 そして告げた。
「……大丈夫。必ずまた逢えるもの」
「本当に?」
 ECCOが縋るように尋ねた。
「あの歌が、次の世界の希望になるから」
 そう、アルが指さす先には一枚の楽譜。
 それだけが消えずにそこに残っていた。

「信じていれば、また逢えるから」

《打ち上げ!》
 
 すべての撮影が終了しBBQ、すいたお腹に物を詰め込むように、少女たちは肉をかきこんでいく。
「後輩さんと舞台に立ったんだよ!」
「あ、リリア……やんなぁ。なんか言って……た?」
 罰が悪そうなECCOである。
 その隣で優雅にティーブレイクしているのは由利菜とリーヴスラシル。
「ECCOさんも元気そうで何よりね。前は楽譜が暴れ出して中々に困った事になったけど」
 雨月がECCOを見ながらそう言った。
「ECCOさんの自宅に言った奴?」
 春香が問いかける。
「あれは、お世話になったわぁ」
「お父さんとは和解できた」
「あれは……たぶん一生むりやわぁ」
「今日は素晴らしい経験が出来て嬉しかったよ。ありがとね♪」
 そうテトラに肉を手渡していく杏子。テトラは手渡された先からそれを食べている。
「早々、その以来もだけどね。子供たちがお世話になっているみたいだね」
「子供たち?」
 ECCOが首をひねる。
「子供って誰かって? 私と同じ「杏」の字を持っている奴さ。」
「え! まさかあなた杏」
 ECCOがあまりにびっくりしすぎて標準語に戻っている間に。
 天晴れの方も撮影が終了したようだ。
 アルは笑顔でその一団に混ざる。友達を見つけてきゃいきゃいと笑いあった。
「 お疲れさま。空戦超カッコよかった! PV完成楽しみにしてるね、ゲームも買うよ!」
「テレビで見たアイドルが、知ってる顔がいっぱい……あとでサイン貰えるかな」
 そうソワソワし始めるGーYA、そんな彼を放っておいて肉を食べるまほらま。
 会場は大人数になり騒がしさを増した。
 楽しそうに笑いあう一行。そんな風景を見て春香は思うのだ。
 これが戦ってきた意味や価値であるなら。
 これからも戦い続けていこうと。
「春香ちゃん!」
 テンションの上がったアルが後ろから抱き着いた。
「歌。完成しなかったけど、今度は完成させてデビュー作にしようね」
「うん、アルその時は一緒に歌ってくれる? 私とアルで作った未来の音。一緒に歌ってくれる?」
「いいよ! 楽しみだね」

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
  • ハートを君に
    GーYAaa2289

重体一覧

参加者

  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命



  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
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