本部

ブッチュで鬼を増やしましょ

落花生

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~10人
英雄
5人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/10/12 13:47

掲示板

オープニング

●もうちょっと考えてやろうよ文化祭
 喜多野高校の巨大な体育館。
 その体育館のステージ上に七人のヒロインたちが、勢揃いする。普段は目立たない家庭部が徹夜に徹夜を重ねて作った美しいドレス。それに身を包むのは、七人の屈強な運動部員。
「しゃららん、私は白雪姫よ」
「そして、私はシンデレラ」
「太いおみ足、カグヤ姫」
「シックスパックな赤ずきん」
「背筋自慢な人魚姫」
「腕の筋肉むっきむき、眠り姫」
 七人の姫たちは、それぞれに思い思いのポーズと取っていた。主に、マッスルボディを強調する方向性のポーズを。
「今年も来たか……地獄の文化祭」
「我が出身校ながら、これだけは気がくるってるとしか思えない」
 卒業生も息をのむ。
 喜多野高校の文化祭は、出し物などはお粗末になる傾向がある。皆部活で忙しく、文化祭で弾けようとは思っていないからだ。それでは高校時代の思い出とあんまりだと生徒会が三年前より文化祭にこのイベントを開催したのである。
「えーと、今年の姫たちは陸上部、弓道部、サッカー部、野球部、相撲部、ラグビー部、卓球部より選出しました。この人たちが鬼になり、逃げまくる生徒および一般来訪者の皆様にあっついベーゼをかまします。ベーゼを受けた人は、姫の奴隷になってしまいます」
 とどのつまりは、増やし鬼である。
 キッスを受けた人は鬼の一員になって、別の人間にキッスしなければならないのである。参加する生徒のほとんどがごつい男子学生であることを考えると、まさに狂気の祭典である。だが、この狂気の騒ぎが懐かしくなって参加する卒業生もいるのだから世も末である。
 姫たちは、投げキッスをする。
 それだけで、生徒たちは震え上がった。
 ちなみに、旧校舎では女子たちが同じようなイベントを行っている。だが、こちらは不審者が入り込むことを懸念して一般客参加禁止となっている。
「さぁ、姫代表のシンデレラ。今年の意気込みは?」
「地獄の底まで追い回します!」
「はーい、では始業ベルが鳴ったら姫たちが皆さんを追いかけます。鬼にキッスされた人は、さっき配ったティアラをかぶって逃げる人にキッスしてくださいね。よーい、スタート!」

●負けたくないというより、ブッチュされたくない
「今年も始まったな、恐ろしいゲームが」
 教室内で、黛少年はクラスの男子生徒を集めていた。
「ルールは単純。クラスの過半数が、一時間生き残れていれば勝ち。その間は、逃げ回っても隠れてもいい……。この文化祭、クラスが一チームとしてカウントされるのを忘れるな」
 ほとんどのクラスが、バラバラに逃げ回ることを選択する。
 だが、黛のクラスは違った。
 勝つために作戦を練ったのである。
「おとり組と隠れている組。ひきつけ組にわかれる。おとり組は序盤に姫を隠れている組から引き離す。ひきつけ組は、それでも姫が隠れている組に近づいたら、逃げて引き離してくれ」
「OKリーダー。今年こそ、生き残るぞ。ところで、HOPEのリンカーにも招待状を送っているって本当か?」
「ああ、かわいそうだろう。たぶん、体育館の説明を聞いて呆然としているはずだ」
「じゃあ、利用しよう」
 さらり、と黛少年は言った。
「一般客は必ず、体育館に集められる。だから、始まったら当初は一階にいるはずだ。だから、最初は姫を一階におびき寄せる。姫は見つけた人間を追わなきゃいけないルールだから、HOPEのリンカーが逃げれば逃げるほど時間稼ぎができるはずだ」

解説

増やし鬼に参加してください。
※参加するPLが全員が一チームとしてカウントされ、参加人数の半分以上が生き残れば勝利。
(このシナリオではリンクは禁止です)

鬼……ムキムキな姫。発見されるとひたすら追ってきて、熱いベーゼをかます。キッスされた人は、ティアラをかぶって鬼になり他の人にキッスしなければならない。キッスの場所はどこでも可。姫は、女性はほっぺた、男は唇を狙う。スタート五分後に、姫は体育館を出て校舎へと向かう。

・黛少年のクラス……姫を一階に誘導し、リンカーたちと鉢合わせさせる作戦をとる。男子総勢二十人。二人が囮り、三人がひきつけ役。十五人が、四階の教室に隠れている。発見されると、驚いて黛以外がバラバラに逃げ出す。

・他の生徒(六十人)及びOB(二十人)……各フロアでそれぞれ逃げ回っているが、一定時間が経つごとにキッスされて鬼へと変化していく。鬼になると見つけた人間にキッスしてくる。

高校――四階建ての建物。
 一階――理科室や保健室などのクラス教室以外の部屋がある。どの部屋も物が多く、身を隠すことができる。シンデレラ、白雪姫、かぐや姫、出没。開始二十分で、フロア全員が鬼化する。
 二階――一年生のクラスがある。机や椅子が多い。赤ずきん、人魚姫、出没。開始四十分でフロア全員が鬼化する。
 三階――二年生のクラスがある。二階と同じ条件。眠り姫出没。開始五十分で、フロア全員が鬼化する。
 四階――三年生のクラスがあり、二階と同じ条件。クラスの一つに黛少年たちが隠れており、彼ら以外は終了時までには全員鬼化する。
 階段――二階から四階まで続いている階段が、建物の中央にある。二階から一階に続いている階段は左端にあり、正門も建て物の左端にある。
 体育館――スタート時の場所。ゲーム開始五分後には、体育館と校庭には入れなくなる。

姫および参加生徒たちは、フロア全員が鬼になると段々と上にあがってくる。

リプレイ

●恐怖の前の静けさ
 体育館で、今年の文化祭の説明がなされる。その説明を聞いていた凛道(aa0068hero002)の表情筋は、ひきつけを起こしていた。どこをどうすれば、筋肉むっきむきの姫の「ぶっちゅ」によるふやし鬼という狂気のアイデアが浮かんでくるのだろうか。
『酷い……酷すぎる』
 ステージで筋肉を自慢する姫たちの唇は、思いのほか厚め。リップクリームまで塗っているのか、テラテラしている。あの唇からイチゴの香りなんかがしたら、気絶してしまいそうである。
「この学校だと結構いつも通りだよ」
 木霊・C・リュカ(aa0068)は実にのんびりと説明を聞いていた。成人男性だからというわけではないのだが、大騒ぎするほどにキスに抵抗感はない。男同士だしノーカウントぐらいしにか思っていなかった。
「くそっ! 何が招待だ。呈の良い生贄だろうが!」
『なっ……何で好きでも無い人から接吻を受けないといけないんだよ!』
 リュカの隣では、御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)が戦々恐々としていた。
 伊邪那美など、男物の財布をぎゅっと握りしめる。
『文化祭って聞いたから、せっかく恭也のお金で美味しいものを食べようと思ってたのに』
「……財布は返せ」
 恭也は、財布だけは回収する。
「あ、あのあれ……モンスターだよね!? どうしよう、リデル! お姫さま食べられちゃったの!?」
 梵 すもも(aa4430)は、大きな目をさらに見開いていた。お姫様を夢見るすももには、女装するムキムキな高校生はモンスターにしか見えなかったのであろう。
『この世界にはハロウィンという行事があると聞きます。きっと食べられたのではなく、化け物も仮装がしたかったのでしょう』
 リデル・ホワイトシェード(aa4430hero001)の夢を壊さないような説明もだいぶ酷い。
 だが、客席に向かって投げキッスをする姫たちの姿は……良心的に表現してもナマハゲレベルのモンスターである。
「ぶんかさいとな! がっこうでもよおすまつりときくぞ! まつりとあらばほんきをだすしかあるまいてー!」
 振袖を着こなす泉興京 桜子(aa0936)は、祭りと聞いて小さな鼻を鳴らしていた。祭りと勝負事には本気になるのが、日本人である。
『そうね、桜子……。お祭りは本気を出さないといけないわよね……』
 穏やかな保護者の顔をして、ベルベット・ボア・ジィ(aa0936hero001)は内心舌なめずりをする。アスリートとして日々鍛える男子筋肉の小麦色の筋肉が、ベルベットにとっては非常に目の保養だったのである。ミントの香りの歯磨き粉で、しっかり歯磨きをしてきたかいがあったというものだ。
(ふふふ、いい体してんじゃないのぉよぉ!! ぐへへへじゅる)
 生徒会の実行委員会に見つかったら、警察が呼ばれそうである。
「なんて恐ろしい行事……!」
 紫 征四郎(aa0076)は、がたがたと震えた。男子生徒の悪乗りを、残念ながら征四郎は笑って受け流せない。
「これが勝負であるなら、負けるわけには……」
『ほう。これがかの噂に聞くハロウィンというやつであるな』
 ユエリャン・李(aa0076hero002)の声に驚いた征四郎は「ぴゃあああああ!!!!!」と甲高い悲鳴をあげる。まだゲームは始まっていないのに、ユエリャンの声が姫のものに思えてしまった征四郎だった。
「き……キスはやっぱり好きな人としたいの……かもです」
 顔を赤くしながら、征四郎はつぶやく。
『よろしい、おチビちゃん。君の唇は、吾輩が守ってやるぞ』
 心強い年長者の顔でユエリャンは、笑う。
 なんとなくだが、征四郎は嫌な予感がした。

●恐怖の本番
 一階は大混乱であった。
 ぎゃあぎゃあと生徒やOBが逃げるはるか後方では、鬼としての行動を開始しはじめた姫たちの恐慌が始まる。
「絶対に逃げ切ってやる。何が悲しくて男からキスをされないといけないんだ」
 比較的後方のほうにいた恭也は、ちらりと後ろを見た。さっきまで逃げていたはずの生徒が、シンデレラの魔の手にかかっていた。
 おびえる生徒は、シンデレラの逞しい腕のなかで「ぶちゅーん」とされていた。
 心なしかシンデレラの唇から伝う、唾液の糸。
 自分に視界にモザイクがかからないことを、恭也はとても無念に思った。
『うん、今回は流石に恭也を生贄に捧げられないね』
 あれは視力の暴力、と伊邪那美はうなずく。
「・・・どんな時でも俺を生贄にしようとするな」
 げんなりとする恭也。
『逃げるけれども、途中で無理そうならあたしから唇頂いちゃっても構わないんでしょ?』
 ベルベットが、じゅるりと唾液をすすった。
 恭也の背筋が寒くなる。
 どうしよう、身近な人間も敵に見えてくる。
「フィールドの割に敵数が多いのです、これは誘導されている可能性があるのですよ。こういう頭のいい動きをさせてるのは、マユズミに決まってるのです!」
 小さな体で逃げ回りながら、征四郎は叫ぶ。
「どうやら、黛少年のたくらみみたいだね。ほら、先に行ってここはお兄さんが足止めしておくよー」
 リュカの言葉に、リデルは「どうやって?」とは聞かないことにした。
 自分を犠牲にして仲間たちを逃がすリュカの姿が、リデルには名高い騎士のように見えた。
「わかった。リデルと一緒に上に逃げるね」
『リュカ様……本当にありがとうございます!』
 すももを担いだリデルは、全速力で階段を駆け上がった。自分だけならまだいいが、すももの唇が犠牲になるのは何としてでも阻止しなければならない。
「わー、プリンたべたい! プリン!!」
『姫様、あとで一緒に作りますから。今は、逃げましょう!!』
 凛道は皆が二階に上がった後に、手近なものでバリケードを作った。
 バリケードの向こう側に残されたリュカに、凛道は手を伸ばす。
『早く、こっちに!』
「ふふふ。さぁ、大人の経験値を舐めないでよね」
 リュカは、鬼を捕まえた。
 そして――。
『だ、だだ大丈夫ですか皆さん!! 僕が!! 責任をとって貴女たちを悍ましい唇からお守りしますからね!!』
 すべてを目撃してしまった哀れな凛道は、涙目になりながらも生き残りを先導していく。自分のパートナーのあんな一面など、見たくはなかったのである。
『マユズミたちののおかげで、上の階には鬼が少ないです。カーテンを外して武器を作りましょう!』
 征四郎が精いっぱい背を伸ばして、カーテンを外そうとしていた。
『おっ、どうやら足止めは失敗したようだな』
 ユエリャンの言葉に、全員の視点が廊下の端に注目した。
 現れたのは、赤ずきん。
 周りには、鬼となった生徒たち。
「まずは、逃走経路の確保である!」
 桜子は、びしっと指をさす。
 だが、すももは、赤ずきんを見つけた瞬間に火が付いたように泣き出す。
「い、いや。ああああああ!! ずっごい、形相だよ!? うああああん、おばけええええ!!」
 無理もない。
 真っ赤なミニスカートから飛び出ているのは、ムキムキなおみ足である。黒いすね毛が、もっさり生えた。
『ああ、姫様落ち着いて……! 逃げきれなさそうなら、仕方ありませんね……』
 すももを背に隠したリデルは、剣を抜く。
 その剣に、さすがに赤ずきんもたじろぐ。
 ただの高校生に剣を出すのはやりすぎたか、とリデルは思い始めた。王族に使えていた騎士のプライドが、ちくりちくりと痛み出す。
『お許しください。姫様の純潔は私がお守りします』
 剣を振り上げて、リデルは高校生に立ち向かおうとしていた。
『さすがに、高校生に剣はやりすぎじゃないの?』
 ベルベットの一言に、リデルも『やっぱり、そうですよね』と剣をしまう。過剰防衛で通報される前に、気が付いてよかった。
 恭也は、伊邪那美を小脇に抱える。
 このまま窓から逃げて、ワイヤーを使って上の階に映る予定であった。
『ちょっと、もっと大事に扱ってよ』
 荷物として扱われる伊邪那美は、頬を膨らませる。
「我慢しろ。お前だってあいつ等からキスなんぞされたくないだろ」
 段々と近づいてくるムキムキな赤ずきんと鬼の一同。
 もはや、ホラー映画に近い雰囲気である。
 あれにブチューとされる自分を伊邪那美は想像してみる。
『……我慢するから、必ず逃げ切ってね』
「善処はする……にげろ!」
 恭也と伊邪那美は、上へとあがっている。
「ユエリャン、こっちも逃げるですよ」
 征四郎は、ユエリャンの裾を引っ張る。
 だが、ユエリャンの目は違う方向性に燃えていた。
『……違う。違うぞ!!』
 ユエリャンの情熱に、征四郎は一歩引いた。
 今のユエリャンの情熱は、ちょっと怖い。
『よくわからんがチェンジであるな、美しくない』
 赤ずきんは、呆然とした。
『ミニドレスにトランクスを合わせるな、見苦しい、脱げ』
 いやー!
 と、赤ずきんは悲鳴を上げる。
 赤ずきんはスカートを握り、ユエリャンはスカートを引っ張る。
 今世紀最大に、よくわからない光景が展開されていた。
『この秋流行りのチークは、これであるぞ。むむ、肌の色からピンクは合わないか。ならば、オレンジ。こちらの方が、健康的に見える。頬骨より高い位置に入れるのが、コツだぞ! 見よ、おチビちゃん。メイクで女はここまで変わるのだぞ!!』
 参考にするがよい、とユエリャンはおお威張りだ。
『わははは! 姫とやらも大したことがないな。今日び一番美しいのは我輩だ、異論は認めぬ!』
 スカートをはぎ取られて、最新のメイクを施された赤ずきんは手を伸ばした。鬼としての矜持……最後の仕事を果たすために。
 むちゅ。
 赤ずきんは、ユエリャンにキスをした。
『ん? 積極的であるな』
 ぶちゅーん。
 ユエリャンも赤ずきんにキスをした。
「ユエリャン! 上です! 上に姫を誘導するのです!」
 別にユエリャンは、操られているわけではない。
 ならば、こちらの味方をしてくれるはずだ。
『ほう? あい、わかったぞ。……貴様ら、上だ。上に乗れ』
「誰の! 何のですか!!」
 征四郎は、わっと泣き出してしまった。鬼はムキムキだし、ユエリャンは暴走気味だしで、征四郎の追い詰められた精神は限界だった。
『あ……あんまり必死で動くと化粧落ちますよ、ユエさん!』
 それってあんまり重要な助言じゃないよね、という言葉を選ぶ凛道もやはり冷静ではなかったのだろう。
 リデルは、すももの目を覆いながら逃げた。
「ねぇ、二人はなにしているのかな?」
 リデルは、すももに親がされたら困る質問ナンバーワンを奇しくもされていた。
『あー、プロレスごっこです。プロレスごっこ!!』
 リデルの言い訳は、これまたされつくされた古めかしいものだった。
「ワシもやりたいぞ。プロレスごっこ!」
『あと、十数年はやらなくて大丈夫!』
 わはははは、ベルベットは大笑いながら逃げ出した。
「なんだ、この地獄絵図……」
 恭也は、窓の外から大混乱な二階を見ていた。
「二手にわかれて様子見であるぞ!」
 桜子は、ベルベットのもとを離れる。
『コラッ! 待ちなさい!!』
 ベルベットの側を離れて、桜子はちょこまかと逃げ回る。
 ちんまい体を生かして狭いところに入り込む、桜子。
 おいて行かれる、ベルベット。
『まったく……』
 だからといって、桜子のように隙間を縫うように逃げることはできない。ベルベットの体格は、桜子と違ってかなり大柄だ。スポーツで汗を流す高校生にまみれても、頭一つ分はみ出る。
「わしのこーなりんぐをみよ!」
 気が付くと桜子の姿は、はるか遠くにあった。あの分ならば、桜子の唇は無事だろう。
『流石にファーストキスが、ムキムキなのはかわいそうよね。でも、ああいうのが趣味だったら、将来の恋人はムキムキなの?』
 こればっかりは、神様しかわからない。
『やばっ。囲まれてるわ』
 ベルベットは、自分を囲む人魚姫と鬼たちを見た。
 ふざけた格好ではあるが、普段から鍛えている高校生の筋肉は素晴らしい。
『……あたしから唇頂いちゃっても構わないんでしょ?』
 怪しいほほえみを振りまきながら、ベルベットは自ら人魚姫に近づいた。
『さぁ、あたしのデザートちゃんたち』
 いただきまーす、とベルベットは食事に取り掛かった。
「あー、ベルベット君。人魚姫と結婚するのかな? ちゅーしてるよ」
 すももが、リデルの肩ごしに「結婚だぁ、結婚だぁ」と騒ぎ立てる。とても嬉しそうな雰囲気は、桜子にも伝染する。
「ベルベットが婿を迎えるのか! めでたいのぉ」
『あわわわ、結婚はしません。たぶん、しませんからぁ!!』
 もう、めちゃくちゃです。
 と、リデルは泣きたかった。
「あ、ベルベット君がティアラをもらってるー! いいなぁ、いいなぁ、あたしも欲しいな」
『あれは、もらってはダメな商品なんです!!』
 唇を奪われてもらう景品なんて、悲しすぎる。
「あー、見覚えがある人を発見です! あの人はマユズミのクラスの人です!! 征四郎たちを囮にしようとした人たちです」
 征四郎の声に、外にいた恭也が「とう」と窓を割って乱入する。
「人を呪えば穴二つ……報いを受けると良い」
 ふふふ、と恭也が笑う。
『安心してね。他の人達も直ぐに合流するから』
 ふふふ、と伊邪那美が笑う。
 まるで、二人で共同で呪いをかけているかのような光景だった。
『さぁ、黛はどこにいるのかな?』
 その時、その場にいた全員が伊邪那美の笑顔の邪悪さを忘れなかったという。

●うんと濃いやつお見舞いします
 凛道には、決意があった。
 自分のファーストキスを犠牲にしてでも、小さな女の子たちを守るつもりであった。幸いなことに、ファーストキスはまだ無事だったのだが――……。
『ああ、これが地獄なんですよね』
 凛道はつぶやいた。
 最上階で隠れていた黛少年を見つけたリンカーたち。
 それに追いついた鬼――もとい姫たちと鬼化したリュカとユエリャン、ベルベットたち――頭にはキラキラのティアラが乗せられ、ちょっと顔色がいい――。それに囲まれる、黛とそのクラスメイトたち。
 その光景をなんと表現すればよいのだろう。残念ながら、凛道にはこの地獄を的確に表現する言葉をしらない。
「さすがにねぇ。小さい女の子まで囮にするのは、やりすぎだったと思うんだよね」
 リュカは、にこにこ笑っている。
『吾輩もロリコンは許さないぞ』
 ユエリャンも笑う。
 口紅の色が、心なしか薄くなっているような気がする。
『小さな女の子のファーストキスは大事にしたいわね』
 ベルベットは、舌なめずりをする。
『壮観って、こういうときに使う言葉なんだねー。恭也、震えてる?』
「震えてない、武者ぶるいが止めらないだけだ」
 ロリ代表の伊邪那美は、膝を抱えていた。
 恭也は、自称武者震いが止まっていなかった。
「じゃあ、罰として黛ちゃんにはお兄さんたちからの熱いベーゼをプレゼントしまーす。最初っから、三人にキスされるなんて贅沢だね」
 リュカは「一番いきまーす」と元気に宣言する。
 その元気さはいらない。
「まぁ、気を落とさないでよ。ほら、可愛い子の写真あげるから……」
 リュカは懐から取り出した写真を、そっと黛に手渡す。
「ひっ!!」
 ひきつけを起こしたような短い悲鳴と共に、床に落ちる写真。その写真に写っていたのは、某紫家の英雄ブルマの戦士であった。
「リュカ!! こんな写真をまだ持っていたのですね!!」
 捨ててくださーいと叫ぶ征四郎が次の瞬間に見たものは、知り合いが繰り広げる至近距離でのディープキスだった。
 夢見にみる、絶対に夢に見る……征四郎は倒れそうになった。
「ぬははは! 十人中三人しか鬼にならなかったぞ。わしらの勝ちであるぞ」
 桜子はおお威張りであったが、隣ではベルベットは「ぶちゅー」と一発濃いやつをかましている。
 色々な意味で対照的な二人だな、と恭也は現実逃避した。
 知り合いのディープキスだなんて、俺は見てない。俺は見てない。あそこにいるのは、別人。リュカじゃないし、ベルベットでもない……。
『恭也、気持ちはわかるけど心の声がでてるよ』
 伊邪那美は、乾いた笑いをもらす。
「そっか、ちゅーすれば助かるんだね。化け物にちゅーされる前に、あたしがちゅーして。みんなを助けてあげる!」
 ようやくルールを半分ほど理解したすももは、自分をだっこしていたリデルのほっぺたにチュと唇を押し付けた。
『えっ?』
 その清涼剤のような光景は、阿鼻叫喚のなかで誰も見ていなかったが。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • もふもふは正義
    泉興京 桜子aa0936
    人間|7才|女性|攻撃
  • 美の匠
    ベルベット・ボア・ジィaa0936hero001
    英雄|26才|?|ブレ
  • Hoaloha
    梵 すももaa4430
    人間|9才|女性|生命
  • エージェント
    リデル・ホワイトシェードaa4430hero001
    英雄|24才|男性|カオ
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