本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】ハイカン

雪虫

形態
ショートEX
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 5~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/10/07 21:42

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愁仁

掲示板

オープニング

●出立
「パンドラがいただと……何処に!」
「李永平、落ち着け。そう興奮されては話そうにも話せない」
 オペレーターの声に永平は歯を食い縛った。今にも噛み付きそうな猟犬の目から手元の書類に視線を落とし、オペレーターは息を吐く。
「例の『この世界』と『異世界』の狭間に出来た……テーブルトークRPGのルールブックを媒体に一般人の精神体が拉致されているというドロップゾーンだ。何故そんな所にいたのかは分からないが……パンドラは巻き込まれたと言っていたらしいが嘘ではない証拠はないしな。
 とりあえず今後パンドラに出くわすかは分からないが、新たな任務だ。今回はここに行って欲しい。一般人がいた場合は救助、一般人が敵NPC化していたら精神体を解放するために戦闘、その他霊石やドロップゾーンの探索……適宜状況を判断して行動して欲しい。ちなみに通信機だが、通常のもの、ライヴス通信機共に使える場合と使えない場合があるそうだ。それもまた『ルール』なのだろう……とりあえず無理はするな。頼んだぞ!」
 オペレーターの言葉を背にエージェント達はコンソール型機材『VR-TTRPGシステム』へ乗り出した。ホログラムとして浮かび上がる目的地は、ホラー映画に出てくるような寂れ果てた洋館だった。

●邂逅
「ッ……! パンドラ!!」
 永平は自分達の前に立つ愚神の姿を認めると、即座に花陣と共鳴し釘バット「我道」を出現させた。エージェント達が永平を掴み暴走を止めようとするその向かいで、当の愚神は友人にそうするように手をヒラヒラと振ってみせる。
「あ、永平さんお久しぶりどす~」
「やっぱり本物かよっ……テメエッ! なんでこんな所に!」
「そんな怒鳴らないで欲しいどす。僕も今回は巻き込まれて困ってるんですってば。……えーと、とりあえず、僕ここの『NPC』なんでお仕事してもええですか?」
 そう言ってパンドラは何やらメモを取り出した。仮面を被っているため表情は分からないが、その言動はとても困っているそれには見えない。しかし前回の報告で、パンドラを攻撃するとペナルティーが発生する可能性があるという情報がある。それによって任務が困難になる危険性はゼロではない。エージェント達はいきり立つ永平をなんとか宥め、パンドラはイントネーションのおかしい京都弁で話し始める。
「えっと、この洋館のメインホールに、僕のお姉ちゃんって設定の……姉Pが囚われているんどす。僕はお姉ちゃんを幽霊に奪われたって設定の、弟Pどす! どうぞよろしゅう~」
「テメエ、マジでフザケんな……」
「だからそんなに怒らないでおくれやす。僕は本当に巻き込まれただけどすのに~。……えーと、それでですね、洋館のメインホールにお姉ちゃんがいるんどすが、扉には鍵が掛かってまして、洋館の各部屋にある電気スタンドを全部消さないと開かない仕組みになってる……みたいどす。なんで灯り消したら鍵開くんでしょうね。不思議ですわ~。洋館の中では変な物音がしたり物が勝手に動いたりしますけど、頑張って僕のお姉ちゃんを『開放して』あげて下さいね!」
 そう言ってパンドラ、もとい弟Pは折れた柱の上に腰掛けた。それからエージェント達にマガツヒのマークの仮面を向ける。
「あ、ちなみに僕を攻撃するとペナルティーが発生します。ペナルティーはやってみてのお楽しみどす! それと、僕は館の中に連れて行ってもええどすよ。その時はおてて繋いで下さいね! はい!」

●洋館1F地図
 ■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■EEEE      D   ■
 ■EEEE      ■  ○■
 ■■■■■■   ■■■■■■■
 ■    ■   ■    ○■
 ■    ■   ■     ■
 ■    B   C     ■
 ■    ■   ■     ■
 ■    ■   ■     ■
 ■■■■■■■A■■■■■■■■

■:壁
○:電気スタンド
A:玄関の扉
B:メインホールの扉
C:荒れ果てた庭園の扉(スタンドは枯れた植物の茂みの中)
D:髪の毛が散乱している浴室の扉(スタンドは黒い水の溜まった浴槽の中)
E:二階への階段(大きな鏡あり)

●洋館2F地図
 ■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■EEEE      F   ■
 ■EEEE      ■  ○■
 ■■■■■■   ■■■■■■■
 ■    ■   ■    ○■
 ■    ■   ■     ■
 ■    G   H     ■
 ■    ■   ■     ■
 ■○   ■   ■     ■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■

F:個室が三つあるトイレの扉(スタンドは一番奥の個室のトイレタンクの上)
G:乱れた書斎の扉(スタンドは奥の机の影)
H:薄汚れた寝室の扉(スタンドはタンスの上)

●ミッションタイプ:【エリア探索】
 このシナリオはクリアと成功度に応じて様々なボーナスが発生します。
 詳細は特設ページから「ミッションについて」をご確認ください。

解説

●状況
 PC達は洋館の玄関扉前にいる/ここからリプレイスタート

●洋館情報【PL情報】
・扉の立て付けがめちゃくちゃ悪い
・全体的に荒れている。暗い
・たまに物が勝手に動く
・たまに変な音がする
・たまに白い影がよぎる
・たまに影から手が出てくる
・たまに窓や鏡に変なものが映る
・通信機は使えるが、たまに変なノイズや人の声が入る
・全てのスタンドを消すと怪奇現象が5割増す
・電気スタンドは持ち出し不可
・姉Pのいるメインホールにテーブルなどの障害物はない

●NPC
 李永平&花陣
 パンドラの監視役をすると強行に主張/共鳴は解かない。パンドラの呪いにより特殊抵抗が著しく低下している。お化け屋敷は行った事はない
 スキル:怒涛乱舞/ストレートブロウ
 武器:釘バット「我道」

●敵情報
 姉P×3【PL情報】
 幽霊にさらわれたという設定だが、実は仮面を被った女性姿の従魔。全部倒すと「クリア」という紙が出る。身体が妙な具合にねじれている。回避が高い。すばやい
・チリウガチ
 前方5スクエアにブリッジ状態で突進する
・ショクエキ
 半径2スクエアにライヴスを乱す体液を撒き散らす。【封印】付与
・カイオン
 全体に悲鳴のような音を発する。距離・精神状態によって影響度が変化。【衝撃】付与
・アネノキョウジ
 パッシブスキル。二回連続で攻撃を行う事がある 例:チリウガチ後ショクエキ

 弟P
 「NPC」を主張しており、PCが何もしなければ特に何もしてこない/攻撃されれば回避・防御・逃亡はする
【PL情報】
・姉Pは弟Pも攻撃する
・弟Pを攻撃するとペナルティーとして姉Pがその都度一体増加/ペナルティーは姉Pが弟Pを攻撃した時も発生
・仮面を取ろうとするのも「攻撃」と判定される 
・長時間放置するといなくなる
 
●その他
・灯りは懐中電灯(配布)しか使えない
・洋館地図はPL情報

リプレイ

●今にも崩れそうな廃洋館前
「楽しい所に行く依頼だって聞いてたのに~。騙されたぁぁぁ!!」
「お化け屋敷、一度行ってみたかったんだ。折角来たんだから楽しもうぜアニキ!」
 嬉々とするエリック(aa3803hero002)に世良 霧人(aa3803)は引きずられる様に登場した。空は黒く、月は朧、その下に浮かぶのはいかにも「何か出ます」感全開の真っ黒な廃洋館。しっかり者だが怖がりな霧人はそれだけですでに血の気が引いており、エリックは大好きな絵を描く時と同じぐらい目をキラキラとさせている。
「うはーww お化け屋敷とかマジうけるーw」
「これはまた怪しい洋館でござるな」
「待って……また、ホラー……?」
「いかにもという場所ねぇ」
 虎噛 千颯(aa0123)と白虎丸(aa0123hero001)、木陰 黎夜(aa0061)とアーテル・V・ノクス(aa0061hero001)も思い思いの反応を見せた。千颯はお化けには抵抗なし、お化け屋敷とかは特に可もなく不可もない、怪現象も普通に楽しむタイプだし、白虎丸は抵抗なしを通り越して認識すらしていない。そして黎夜はホラーが大の苦手である。
「……次は何処に来たってことだ、こりゃァ……」
「おや、ホラーは苦手かい? 怖がりさんだねぇ」
 からかうような贔屓(aa0179hero001)の声にげんなりしていた始麻(aa0179)は「うるせェよ」と睨みを利かせた。人が重い条件を背負い全うする姿勢を至高と考え、同時に苦悩する様を見るのを楽しみとする贔屓は、しかし今はその緑眼を別の所に向けていた。目当ての存在との再会に嬉しさを滲ませつつも、しかし彼を取り巻く別の誰かの存在に無念そうに肩を竦める。
「出来ればゆっくり話したい所だったけれど……これじゃ色気も出ないね」
 贔屓の呟きに始麻は僅かに眉を上げた。先日の依頼以降、この性悪の様子が普段と違う事には気付いている。が、恐らく聞いてもはぐらかされるだけだろう。始麻はふうと息を吐くと、意識を逸らすように洋館へと視線を向けた。

「まさにホラーって感じね」
「敵意ある生者に勝るホラーはありません、さっさと終わらせましょう」
 リリアン・レッドフォード(aa1631hero001)はコロコロと楽し気な笑みを漏らしたが、クレア・マクミラン(aa1631)の言葉は実にそっけないものだった。リリアンはホラーをエンターテインメントとして楽しめるタイプで、びっくりしてもそれは楽しんでいるびっくりだが、クレアは基本的にホラーには反応せず、死人は最後の審判を待つのみの存在と心得ている。
 即座に共鳴したクレアは館に足を踏み入れる前に、パンドラ……今は弟Pと名乗る存在へと歩み寄った。自分に気付きマガツヒの仮面を向ける愚神に、クレアは紫色のオダマキの花を無言で差し出す。
「? 僕にくれるんですか?」
「宣戦布告だ。花言葉は『勝利への決意』。お前と比良坂清十郎、そしてエネミーへの、私達からのメッセージだ」
 首を傾げるパンドラをクレアは静かな瞳で見据えた。自分の主義思想と真っ向から対立する、マガツヒへの、述べた通りの宣戦布告。
「こういうことは立場上口にしないがな、お前達マガツヒだけは必ず殺してやる。たとえ世の果て、いや世を越えようとも、貴様らの在り方を否定してやる」
 パンドラは花をクレアの手から受け取ると、それを胸のポケットに刺した。そして表情は見せぬまま、クレアを挑発するように斜めに仮面を傾げてみせる。
「楽しみにしてますよ」
 その声と態度はクレアの癇に障ったが、今回は宣戦布告とクレアは愚神に背を向けた。そこに今度はグラディス(aa2835hero001)が近付き、左手のひらを上にして愚神の眼前へ差し向ける。
「お手をどーぞ」
 お姫様の手を取りエスコートする騎士のように、グラディスは手を差し出しながらにっこりと笑みを浮かべた。グラディスは女性の身であるが、手のひらを上にするのは矜持ゆえ譲るつもりはない。弟Pは仮面の一つ目をグラディスに合わせると、「よろしゅうお願いします」と差し出された手のひらに自分のそれを重ね合わせた。

「ヴィランと仕事をする羽目になるとはな……今日はツイてない」
 Chris McLain(aa3881)は永平の姿を視界に映すと、嫌悪を誤魔化そうともしない尖った声音で毒づいた。それを聞いたシャロ(aa3881hero001)は「クリスさん駄目ですぅ!!」と、白く小さな拳を握りながら制止に入る。
 永平はChrisに一度だけ視線を向けたが、特に何を言う事もなく瞳を弟Pへと戻した。佐倉 樹(aa0340)はシルミルテ(aa0340hero001)と共鳴し、グラディスと手を繋いだ弟Pを一瞥した後、弟Pを睨み続ける永平の隣へと立つ。
「……手、繋ぐ?」
 そう言って右手を出してきた樹に永平は目を見開いた。「何馬鹿な事言ってやがる」と断ろうとする永平に、樹はそっと目線を下げて押しの言葉を口にする。
「実は怖いのが苦手だから、手を繋いでくれるとありがたい」
『樹ハ怖がリサンなのヨー、永平チャンお願いでキル?』
 共鳴状態からシルミルテがさらにダメ押しのコメントを述べ、永平が「ぐっ」と声を詰まらせながら瞳を迷うように揺らした。そこに弟Pがグラディスと手を繋いだまま斜めに体を傾ける。
「永平さん、可愛い女の子のお願いを断ったらあきませんよ」
「っ、テメェ、フザけ……」
「あのヤンキー、暴走されると面倒そうね」
 声を荒げる永平に志々 紅夏(aa4282)は呟いた。即座に保志 翼(aa4282hero001)と共鳴し、「ちょっとあんた」と永平の背中に向けて声を掛ける。
「お化け屋敷にいるこいつが本物って証明出来んの? お化け全部ぶちのめしたら本物出てくるってのはお化け屋敷にはよくあんのよ。初心者の子猫ちゃんなのねぇ」
 鼻で笑うオプションまで付属させてきた紅夏に、永平は「あ?」と睨みを利かせた。頭に血が上りかけの永平に、「あら、図星」と(凄くわざとらしいが)挑発を上乗せする。
「テメエ、いい加減に……」
「あんたがこのお面野郎とどんだけ因縁あんのか私は知らないけど、あんたが単独で突っ走って、あんたと同じ因縁出来ちゃった奴が出てきたら、死ぬ程後悔すんのは分かるわよ。だって、あんた、こいつのこと凄い憎そうに見えるし。なら、こいつを1番突き落とすやり方でぶちのめしなさいよ。今じゃないでしょ」
 紅夏の言葉に永平は一瞬で顔を歪めた。単独で突っ走り、その結果何が起きたか忘れてしまった訳ではない。腕を下ろして視線を彷徨わせる永平の様子に、麻生 遊夜(aa0452)がユフォアリーヤ(aa0452hero001)を前に推しつつ参入する。
「永平さん、ここは志々さんの言う通りだぜ。人の心配は素直に受け取っておきな」
「突っ走って大怪我したら大変とか心配してる訳じゃないわよ。任務への悪影響阻止よ」
「はいはい。……まあとりあえず落ち着け、チャンスはある。『NPC』である以上手が出せん……が、ゲームが終われば話は別だ。前回NPCでなくなった旨の発言があった、帰還までに若干の猶予があるのも確認できてる。力を蓄えろ、チャンスを逃すな……俺達も援護してやるからよ」
「……ん、我慢して……ね?」
 遊夜が永平の腕を引きながら愚神に聞こえぬよう耳打ちし、ユフォアリーヤは追い打ちと泣きそうに目を潤ませた。永平が「分かったから泣くな」と口にしようとした瞬間、千颯が永平の背後にスッと近付き胸筋に両手を添える。
「はーい永平ちゃんちょっち落ち着こうか~? 思うとこがあるだろうけど今はまだその時じゃないんだぜ~」
 そのままもみもみと揉みしだく千颯に永平の動きが止まった。そして背後に視線を向け、ニッと凶悪な笑みを浮かべる。
「そうだな、先にぶちのめさないといけない相手がいるようだし」
「……ん?」

「よっし! そろそろ行くぜアニ……?」
 初めてのお化け屋敷を楽しもう! と拳を上げたエリックは、そこで初めて霧人が一言も発していない事に気が付いた。エリックは よこを むいた。へんじがない。キリヒトは たましいが ぬけて しまった ようだ。
「……え~」
 「怖いの苦手とは聞いてたけど、まさかここまでとはなぁ……」と、エリックは困ったようにふるふると首を横に振った。

●玄関~個室が三つあるトイレ
 立て付けの悪い玄関の扉をギギィと開くと、行動を見計らったように「ピシャァァンッ!」と雷が鳴り響いた。ホラー苦手勢は「ひい!」「ビクッ」などの反応を示し、ホラー平気勢は平然としている。「雨とか降ってませんでしたけど」などとツッコミを入れてはならない。
「やれやれ、また面倒な……いや、チャンスか?」
「……おー、洋館ー……暗いねぇ、よんぴょー大丈夫?」
「ハッ、この程度でビビるワケ……うぉっ!」
 首をこてんと傾げるユフォアリーヤに永平は平然と答えたが、その肩をつうっと撫でられ大きく体を跳ねさせた。驚かしに成功した千颯は、何故かすでに軽傷の身で愉快そうに声を上げる。
「ハハハー永平ちゃんビクッとして面白い……待って! 生身にこれ以上の釘バットはちょっと待って!」
「李殿、申し訳ないでござるが、千颯をこれ以上殴るのは任務が終わってからにしてもらってもいいでござろうか」
「殴られる事自体は止めないの!?」
「……チッ、分かったよ」
 白虎丸の説得に永平は渋々得物を仕舞った。一方、共鳴し意識のみの存在となった霧人は「早く依頼を終わらせて退散したい」と念じつつ、エリックの瞳を通して洋館内をこわごわ見渡す。
「やっぱり、出るんだよね? ……今物凄く掃除機が欲しいよ」
『何で掃除機?』
「そういう映画があってね。……で、何でエリックはインスタントカメラなんて持ってるの?」
『え? カメラで撮れば幽霊をやっつけられるんじゃないのか?』
「〇かよ! あれはゲームだから!!」
 「また変な事教えられたな!」と霧人は胸の内で叫びを上げた。一応このドロップゾーンもゲームの世界、などとツッコミを入れてはならない。
「見たとこ完全にホラーゲームだな」
「最近……ホラーに遭遇するの、多いん、だけど……」
 遊夜の呟きに黎夜は半ば涙声で呟いた。共鳴し黒の猟兵までしっかり装備しているが、怖いものは怖い。いつでも動けるようにはしているがそもそもお化けから逃げきれるのか、反撃出来るかも分からないし……
『運命の悪戯には抗えないわ』
「……1個は、アーテルのせい……」
『その件は置いといて、早くクリア出来るように集中しましょう?』
 何も告げず黎夜をお化け屋敷に連れていった件は棚に上げ、アーテルはクールに呟いた。ぐうと唸りつつ、いかに精神的ダメージを少なくクリアするかにいっぱいいっぱいになる黎夜の頭をユフォアリーヤがなでなでする。
「……ん、大丈夫?」
「任せときな、フォローならしてやるさ。……心配なら手でも繋ぐか?」
 言いつつ遊夜はユフォアリーヤをずいっと前へ押し出した。慣れた者でも恐怖を拭いきれない黎夜の男性恐怖症については知っている。『解放』までは非共鳴で行くつもりだからユフォアリーヤを貸し出す事は問題ない。黎夜は少し戸惑いつつ「……よろしく」とユフォアリーヤの手に右手を添えた。

 始麻は弟Pを見続ける贔屓の事を眺めていた。一応探索に参加している風ではあるが、その瞳は弟Pと、その仮面の先にいる永平とを往復している。今は付かず離れずの距離を取り観察に徹している様だが……始麻は面倒そうに息を吐き贔屓の傍で言伝る。
「周りに迷惑だけは掛けンなよ。……先に二階に行って来らァ」
 始麻は愛想なくそう告げると一人奥へと歩いていった。外観から廃洋館に二階がある事は分かっている。いつの間にか持っていた懐中電灯を頼りに歩いて行くと、背後から二人分の足音が聞こえてきた。
「単独行動は感心しませんね」
『オレ達も行くぜ!』
 見れば共鳴済みのクレアとエリックがこちらへと向かってきた。単独を気取った訳ではないが、言い訳する理由もない。人当たりは言う程悪くもないが口があまり良くなく、所作も粗雑な始麻は「ああ」と短く声を返し、計三人で奥にあった階段へと辿り着いた。一応通信機で階段の場所、今から登る事を告げた後、妙にギシギシと音を立てる階段を揃って上がっていく。なお踊り場の鏡に何か白いものが映ったが、霧人は「ひい!」と声を上げ、リリアンは『きゃあ!』と楽しそうに声を上げ、エリックは『おお!』と興味深そうに声を上げ、始麻とクレアは無視をした。
「とりあえず……ここか」
 階段を上がってすぐ扉を発見した始麻はノブに一度右手を掛け、立て付けが悪いと見て取るや躊躇なく蹴り飛ばした。「ガタァッ!」と派手に蹴り開けられた扉には一切見向きもせず、定番ホラースポットであるトイレの個室もガンガン容赦なく足で開ける。流しの鏡に何か映ったり便器から手が覗いたりした気がするが、始麻は綺麗に全て無視した。
「これだな」
 一番奥の個室にスタンドを発見した始麻は、スタンドがガタガタ揺れているのも構わず無表情で電気を消した。そして通信機で連絡……しようとした所で「うう……ああ……」「誰か……誰か助けて……」という声やノイズが入ってくる。
「……あの野郎が頭でうるせェよりマシだっての、邪魔だコラ」
 始麻は苛立だしげに吐き捨てると「二階トイレのスタンドを消した」と端的に述べ、通信を切り、そのまま出口へと歩いていった。途中の鏡に何か映ったような気がしたが、もちろんそれも綺麗に無視した。

●荒れ果てた庭園
『ひいいいいぃいやあああああぁぁぁ!!!!』
「頭の中で騒ぐな! せめて共鳴を解除してから叫べ!」
 頭蓋に響きまくったシャロの声をChrisは鋭く叱り飛ばした。とは言っても(共鳴しているためChrisと感覚を共有する形とは言え)、扉を開けようとした瞬間、手首を青白い手で掴まれたらまあそういう反応にもなるだろう。これが今後も続くのかと思えば共鳴を解除したくもあるが、いざという時のためにやはり備えはしておきたい。Chrisは嫌そうに息を吐いた後ソウドオフ・ダブルショットガンを出現させ、立て付けの悪い扉をショットガンで撃ち壊した。これで妙なものに手首を掴まれる事はない。
「ここは庭園……かな? 枯れてるけど草伸び放題だな。人海戦術で虱つぶしに探すか~」
「じゃあ俺達は木陰さんらと一緒に別の所を探してくるぜ。地図無しは近場から潰してくのが定石だが、この人数ならここは任せて大丈夫だろ?」
 遊夜の言葉に千颯は「まかせとけ」と片手を振った。「僕もお手伝いしましょうか?」と弟Pが足を踏み出し掛けたが、グラディスが繋いだ手を強く掴んで引き留める。
「パンドラちゃんはお姉ちゃんと仲いーのー?」
「はい、すっごく仲良しですよ!」
「パンドラちゃんはさー、普段何食べてるー?」
「最近はクリームパンがお気に入りどす~。おいしいですよねー、あれ」
 《セッション》上の設定と、会話成立度合いの確認のためグラディスはひたすら話しかけた。一応受け答えは成立する、と判断した所でグラディスは一歩話を進める。
「あ、さっきのメモ見せてー見せてーどんな字書くのー? ちょっとちょーだーい」
「ええですよー、はい」
 手渡されたメモを受け取り、「ありがとー! じゃ、はい樹ちゃん」とグラディスは即座に樹の手にメモを流した。樹はメモの筆跡を、前回パンドラが関っていた依頼のそれと比較する。見た所は同じ筆跡のようだが、持って帰って前回回収したメモとの照合を頼んだ方がいいだろう。
「……」
 永平は噛み付くような視線で弟Pを見つめていた。その眉間の皺がさらに深くなった瞬間、樹は掴んでいた永平の手に力を込めた。永平の肩が揺れ、傍らに立つ樹を見る。
「なんだ?」
「……怖かっただけ」
 本当は永平の意識を弟Pから逸らすためだが樹はそう言い訳した。それからスマートフォンを手に取り出し庭園の様子をパシャリと収める。館に入った時と、庭園に入る前マジックアンロックを使用し魔法による罠がない事は確認したが、マジックアンロックは物理的な罠までは発見出来ない。罠がなかったとしても後々画像が何かの役に立つかもしれないし……
「お、スタンドってこれだな。消すぜー」
 庭園の一番奥でスタンドを発見した千颯は断ってから紐を引いた。これで一つクリア、とシャロは心の中の汗を拭った。その視界に、足の辺りがぼやけている白い影がスッと入る。
『ひいっやぁぁあ!!!』
「だから頭の中で騒ぐな!」

●1階廊下
「ねー! すごいすごい! なんか聴こえるよー!」
 通信機から聞こえるグラディスの声に秋原 仁希(aa2835)は苦笑した。開きっぱなしのチャンネルから「庭園のスタンドを消した」との報告を貰ったのだが、それよりも通信機に入るノイズや人の声に大喜びしているグラディスの様子の方が情報量としては大きい。
「しかし《セッション》か……アノ人がGMじゃないから希望は十分にあるな」
「君らは普段どんな風に遊んでるのさ……」
 仁希からは見えないが、グラディスは珍しく胡乱な瞳で言葉を返した。二言三言会話した後仁希は通信機を脇に下げ、廊下部分の探索とマッピング作業を再開した。ホラーで隠し部屋や地下室は定番、その考えからインスタントカメラで撮影しつつ、さらにラジカセを稼動させながら移動する。特にノイズ等がひどくなった箇所は隠し部屋の可能性が高いと重点的に探索する。
「そっちはどうかな、何か異常は?」
「今の所は特にないわよ」
 1階ホール前に陣取る紅夏は通信機へと言葉を返した。オフラインだがノートパソコンは使えるため、メモ帳と表計算ソフトを活用し簡易地図を作成する。後で仁希のマッピング結果と照らし合わせ、隠し部屋等がないかを見取り図上から再確認する算段だ。
 懐中電灯で床の継ぎ目を見ていた紅夏は、ドアの破片を発見するとティッシュで包んで回収した。このドロップゾーンは特殊らしいが、ドロップゾーンが健在の状態でそこから構成物を持ち出したらどうなるか、というのは調べる価値はあると思う。
「とは言っても頼むしかないけどね。私は工学部だからコレ微妙に専門じゃないし」
 小さく呟く紅夏の様子に、翼はいつものように無反応を貫いていた。共鳴した後も意識は存在しているため、内部で紅夏と会話する事は可能だが、意識があった所で翼が反応する事はほとんどない。共鳴している時であっても、共鳴していない時であっても。
(オレも、この館の様に朽ち果てれば幸せだったのに)
 ただ、翼は紅夏の視界越しにぽつりとそのような事を思った。だが、やはりそれだけだ。それ以上の事は思わない。紅夏に伝える気もない。紅夏の起動装置として、翼はただ黙して存在するだけだった。

●髪の毛が散乱している浴室
「……!」
 ユフォアリーヤはノブを開けようとした瞬間、ぬっと出てきた青白い手にブワワッと毛を逆立てた。それ庭園でもありましたねなどとツッコミを入れてはならない。
「っ! おい、大丈夫か?」
「……ユーヤぁ」
 遊夜に声を掛けられながらユフォアリーヤはぷるぷるした。音や物、影は平気だがびっくり系は自信がない。特にユフォアリーヤが。黎夜の手を取りながら遊夜の背中にへばりつく、という器用さを披露しながら、ユフォアリーヤは扉の向こうをおそるおそる覗き込む。
「浴室、の脱衣所……か。暗い中で光ってんなら見つけやすいか?」
「……ん……狭いのに、見当たらない?」
 首を傾げるユフォアリーヤの手をしっかりと握りつつ、視線を彷徨わせた黎夜はガラス戸を発見した。二人に声を掛けた後開いて懐中電灯の光を向けると、そこには長短様々の黒い髪の毛がびっしりと。
「……なんか……うちが、この髪型にした時と、似てる、気がする……」
『似てないわ』
 早く済ませたいが散らばった髪の毛に怯える黎夜にアーテルが即座に突っ込んだ。髪の毛に嫌な顔をしつつ浴室の床を歩いた遊夜は、浴槽の中に何かがぼんやり沈んでいるのを発見した。暗闇で疲れた目では瞬時に判断出来なかったが、
「……もしかして、これか? 電気スタンド」
「麻生……取れる……? あんまり、触りたく、ねー……」
 苦い顔をする遊夜に黎夜はふるふると首を振った。汚れた水が溜まった浴槽やトイレは定番、とは言え確かにこれはあまり触りたいものではない。
「ま、やるしかねぇか。任せときな木陰さん」
「……ん」
 腕まくりした遊夜にユフォアリーヤは即座にタオルを準備した。もちろん遊夜とて喜んで、という訳にはいかないが、流石に黎夜達にはやらせられない。見ている方が気が滅入りそうだ。
 いざ、と遊夜は気合いを入れ、真っ黒な水の中に剥き出しの腕を突っ込んだ。途中で髪の毛やら何やら触れてきた気がするがあまり気にしない事にする。中でスタンドを消すよりスタンドを回収する事を選び、水から引き上げたと同時に紐を引いて電気を落とす。
「よし、他の班に連絡だ」
「まかせて……ひっ!」
 通信機を耳にした黎夜は聞こえてきたノイズに固まった。さらに「助けて……」とか細い女の声まで聞こえた気がして黎夜の硬直が酷くなる。アーテルは一時的に、と主導権を半ば奪い、スタンドを消した旨を告げ無表情で通信を切る。
『ノイズが入るのは迷惑だわ』

●乱れた書斎
「ここは、書斎ですかね」
 白衣の幻影を翻し、豪快に扉を蹴破ったクレアは部屋の内装に息を吐いた。霧人はエリックと視界を共有しつつ、薄暗く荒れた書斎の様子におっかなびっくり声を漏らす。
「うわあ……いかにもって感じ……」
「虱つぶしに探しましょうか。それと本棚を物色したいです。そもこの館がどういったものであるかを探りたいので」
 クレアの提案に始麻とエリックはスタンド探しに足を踏み出し、クレアは適当な本を拾ってはパラパラとめくっていった。もっとも意味のあるものが見つかるとは限らないが、念には念をという言葉もある。
「……ダイアリー? 日記……ですね」
 「Diary」と書かれた背表紙を本棚に発見したクレアは、無造作に抜き取った後パンパンと埃を払った。それから懐中電灯を調整し、適当なページを開いてみる。

 壊す壊す壊す壊壊したい壊殺したい壊壊すのが好き壊壊れたモノが好き壊壊したい壊壊れたい壊壊して直してみんなみんなみんな壊壊すのが好き壊壊れるのが好き壊壊れるのがいい壊壊してしまうのが好き殺壊したら壊して愛して愛愛愛壊して殺して全部壊して好き壊壊したい壊愛したい壊壊壊れ壊壊壊して壊壊したいしたした壊

 そんな言葉がびっしりと書いてある紙の束に、クレアは思わず顔を歪めた。これもお化け屋敷の演出だろうか。それとも。
 眩暈と吐き気を覚えつつクレアはメモを片手に開いた。重要な文章や、暗号の可能性もある。何の意味もなければただの徒労だが、それでも。
『あ、あったぜスタンド。部屋の奥の机の影に』
「それ、貸して頂けますか。光源が欲しいので」
 クレアはスタンドを受け取るとふうと重く息をついた。改めて見るとこれはまるで狂人の頭の中身のようだ。そんなものを、ましてやこんな暗い中、わずかな光源だけを頼りに一字一句漏らさず紙に書き留めるのは。
 だがクレアは歯を食い縛ると、戦場の衛生兵として培った強い精神力と自己を律する理性を以て、狂った頭の中身をぶち撒けたような文字の羅列を書き写した。

●階段~
「うはははw めっちゃうけるーw」
 千颯はビデオ片手に楽し気に声を上げていた。目の前には階段の踊り場に掛かった大きな鏡。そこに白い影が映った瞬間シャロは『いやあああっ!』と悲鳴を上げ永平は肩を揺らしたが、千颯は口元を歪めつつ古ぼけた鏡を覗き込む。
「こういうのマンネリだよねー芸が無いって感じ?」
「千颯。このお化け屋敷は中々従業員が張り切っているでござるな。どろっぷぞーんの中であるのにお勤めご苦労様でござる」
 白虎丸は武人の仕草で丁寧に鏡に頭を下げた。お化けを抵抗なしどころか認識すらしていない白虎丸にとっては、起こる怪現象は「昔千颯家族と一緒にいったお化け屋敷のアトラクション」である。天然って怖い。
「ドロップゾーンに従業員っているのか?」
「永平ちゃんそこ突っ込まなくていいから。ほらさっさと上行くよ~」
 天然(確定)と天然(疑惑)を絡ませると話が先に進まない、そう判断した千颯は天然達を先へと急かした。樹は再びマジックアンロックを使い魔法製の罠がない事を確認した後、弟Pを睨んでいた永平の腕を引っ張る。階段を上がりきると仁希が懐中電灯で足下を照らしながら待っていた。
「左側が寝室っぽいよ」
「どうする? みんなで行く?」
「僕達はここで待ってようかなー」
 弟Pを監視する役目を負うグラディスの言葉に、永平は「だったら俺も……」と言い掛けたが、永平が全てを言い切る前に樹が手早く案を告げる。
「永平は私と一緒に。罠の確認もしたいし。……一緒に来てくれると嬉しいんだけど……」
「なら俺は1階に戻るぜ。これ以上ヴィランと一緒の空気を吸わされるなんてごめんだ」
「……そ。じゃあ樹ちゃんと永平ちゃんはオレちゃん達と一緒に」
 千颯は言うと白虎丸、樹、永平を伴って寝室へと歩いていった。永平の背に向かい「ヴィランの癖に」と吐き捨てるChrisに、シャロが諫めを述べるより早くグラディスが声を掛ける。
「ねえ、ヴィランって言葉に縛られてない?」
 その言葉に、Chrisはギロリと視線を向けた。大切な故郷と家族を奪った、それだけでヴィランに憎悪を抱く理由は十分だ。
「野蛮なヴィランなんざ、全て滅んでしまえばいい」
 滾る憎悪のまま音を残しChrisは階段を降りていった。『ダメですよぉクリスさん』というシャロの言葉に反応する気さえ起きない。ヴィランへの復讐。それが天涯孤独となったChrisの生きる原動力にして全てだった。階段を降りていく、男にしては細身の背中を、パンドラは仮面越しに面白そうに眺めていた。

「あ、スタンドってコレかな。随分あっさり見つかったな」
 スタンドは奥のタンスの上にあった。子供なら届かず苦労したかもしれないが、2mある白虎丸なら余裕である。何の問題もなく消し階段に戻ると、グラディスと弟Pが手を繋ぎながら待っていた。
「あれ? 何の変わりもない?」
「連絡してみるね。ホールの扉はまだ開かない?」
「まだ開かないわ。全部消した?」
『今書斎で作業中なんだ。もうちょっとで……終わった? そんじゃ今から書斎のスタンド消すよー』
 グラディスの問いに紅夏が答え、さらにエリックが書斎の状況を説明した。書斎の椅子から立ち上がり、メモを閉じたクレアにリリアンが気遣わしげな声を上げる。
『クレアちゃん、大丈夫?』
「大丈夫だドクター。この程度の事はなんでもない」
 感情をあまり表に出さず、常に沈着冷静であることを心がけているクレアに外面上の変化はなかった。そう言われてしまえばいずれにしろリリアンに出来る事はない。クレアは「消します」と宣言してから最後のスタンドの紐を引いた。瞬間、「ガタガタガタ」と大きな音がし霧人がビクリと反応する。
「な、なになになに」
『……? 今何か見えたような』
 エリックがふっと視線を横に向けると、そこには窓が、赤い手形がビッッッシリと付いた書斎の窓があった。「ひっいぎゃああああ!」という霧人の声を耳にしつつ、『うわっ!?』という声と共にエリックはインスタントカメラのシャッターを押す。
「だから何で撮るの!?」
『こういうのって撮れば無くなるんだろ? ほら』
「だから〇じゃないってばぁぁ!!!」
 「確かに窓の手形消えたけど!」と霧人は叫びながら突っ込んだ。とりあえずここに留まっている理由はない。三人は書斎を出てメインホールへと向かう。
「みんな揃った?」
『あたた……アニキの声に驚いて階段から落ちて尻打った……』
「ケガがあるなら治すでござるよ? 千颯が李殿から受けた釘バットの傷は戒めのために治さぬでござるが」
「白虎丸ちゃんはどうしてオレちゃんにだけ冷たいの!?」
 エリックに労わりの声を掛ける白虎丸に千颯は涙を噴出した。その時「ドガァッ!」とホールから大きな音が響き黎夜がビクリと硬直する。すぐさま眠り猫のぬいぐるみを出現させ力強く抱き締める。
「木陰殿大丈夫でござるよ。これは従業員の頑張りでござる」
「……ユーヤぁ」
「はいはい、大丈夫大丈夫。……ま、とりあえず入ろうかね」
 白虎丸が黎夜を微笑ましそうにしながら宥め、遊夜がユフォアリーヤの頭を撫でつつ一同を見渡した。そこかしこからラップ音が聞こえる中、仁希は紅夏とのマッピング結果を照らし合わせる。
「そうだね。どうやら隠し部屋の類はないようだし」
 ホールの扉も例に漏れず立て付けが悪いようで、クレアはカラミティエンドを出現させるや遠慮容赦なく叩きつけた。黎夜が童謡を口ずさみつつ、皆の背越しにこわごわホールを覗き込むと、そこには項垂れる様に一人の女性が立っていた。
「あ、お姉ちゃーん」
 その姿に弟Pはグラディスの手を振り払って駆け出した。瞬間、その女は顔を上げ、弟Pが被るのと同じ仮面をエージェント達の視界に晒した。そして弟Pに突進する――直前、ChrisがSMGリアールからファストショットを撃ち放つ。
「ギィヤァァアッ!」
「大変どすーお姉ちゃんが化け物にー」
「これまた酷い棒読みだね」
 樹が呆れたように呟きながら、効果対象を姉Pに指定しブルームフレアを解き放った。しかし姉Pはそれを回避し暗がりへと身を翻す。遊夜は千颯にライトアイを掛けてもらい、暗闇の中に計3体敵がいる事を確認する。
『……敵は素早い』
「だがスキルは変わらず……かな」
『……ん、ボクらの獲物』
 ユフォアリーヤの笑みと共に、遊夜はハウンドドッグを構え早撃ちの乱射を披露した。足を狙った弾丸は三発共命中し、内1匹が不快そうに嘶きながら弟Pへと走り出す。
『おっと、そうはさせねえって!』
 エリックはロケットルアーロッドを携えると、姉Pを妨害すべく射出のために引き金を引いた。攻撃は回避されたが姉Pを妨害するという目的自体は果たされる。
「従魔や愚神なら……物理か魔法効くから平気……」
『ゾンビみたいな見た目ねえ。ゾンビ程耐久力がなければいいけど……』
 お化けではなく従魔相手、と持ち直した黎夜とは対照的にアーテルは苦く息を漏らした。表には出さないし怖いという訳でもないが、耐久力があって倒しにくいという理由でゾンビ系は苦手なのだ。
「入る前……『開放して』って、言ってた……助けて、じゃなくて……。従魔からの、開放……? なら、倒さねーと、いけないって、こと……?」
『いずれにしろ、私達にはその方法しかなさそうね』
 アーテルの言葉にこくりと頷き、黎夜は敵を一か所に固めるために黒い霧を発現させた。共鳴した始麻は前回の敵の動きも踏まえやや斜めから姉Pへと肉薄し、一気呵成で転倒させた後光刃の追撃を叩き込む。

『ライトアイ……は足りてるかな?』
 『ライトアイつかうよー!』と述べる寸前でグラディスは動きを止めた。直前にクレアが使用し千颯が放った分もある。とりあえず全員分の視界は確保されているはずだ。
『樹ちゃん、シルミィ、前いくからあずけるね!』
 弟Pの事を樹へ言付け、グラディスは前に駆け出し二丁板斧を振りかぶった。紅夏は弟Pと付かず離れずの距離を取りつつ守るべき誓いを展開させる。
「賢くなければ優先順位は私の方が上よね」
 思惑通り1体が紅夏へチリウガチを仕掛け、さらに仮面の内から奇妙な液体を撒き散らした。効果は分からないが何か異常を来たす可能性がある、そう判断した千颯は永平へと声を上げる。
「永平ちゃん! こっち! ここなら1回は防いでくれるから」
『ここを光源にするでござる!』
 釘バット「我道」を振るう永平を引っ張った後、千颯は状態異常への耐性を高めるためクリーンエリアを発動させた。樹は蝙蝠を模した霧の猟兵を敵に差し向け、遊夜は阻害を徹底すべくダンシングバレットで奇襲を仕掛ける。
『うわあ! 変なカッコで突進してくんな!!』
 自分に突進してきた姉Pの姿にエリックは思わず声を上げた。先程はよく見ていなかったが、妙な具合にねじれた体でブリッジ状態で突進してくる。怖いというより、キモい。流石に喰らいたくはないと全力で回避する。
「ムカデ箱の従魔と、攻撃方法、似てる気がする……」
 黎夜は推測を仲間達へと述べた後、牽制のために外側の1体へ銀の魔弾を射出した。とは言ってもまだ予想の段階だが、いずれにしろマガツヒ関連の敵の技を使ってくる可能性はゼロではない。
 贔屓は始麻の内から戦闘の様子を愉快そうに眺めていたが、ふと姉P1体の直線上に弟Pが立っている事に気が付いた。贔屓は始麻に断りもなく主導権を強奪すると、ライヴスツインセイバーを携え、弟Pの盾となって敵の突撃を受け止める。
『大丈夫かい仮面の君?』
「わあ! 助けてくれたんどすか? 感激どす~」
「集中しやがれ! 勝手に主導権持ってくな!」
 始麻は鋭く吠え立てると主導権を奪い返した。同時に緑の瞳が赤に、艶めいた黒髪が白金へと変色する。戦闘時だけは無理やりにでも自分に押し付てくる癖に、と始麻は忌々しく顔をしかめる。
 だが、ここで噛み付いて頭の中でごちゃごちゃ騒がれるのは御免である。始麻は「どっか行ってろ」と弟Pに吐き捨てると得物を眼前に構え直した。

 クレアは自分目掛け突進してくる敵の姿に、そのまま迎え撃つべくカラミティエンドを薄汚れた床に突き立てた。衝撃にクレアもダメージを受けたが姉Pも「ぎゃひいい」と悲鳴を上げて後退する。
 グラディスは永平の立ち位置を気にしつつ、踊るように楽し気に二丁板斧を振り上げた。紅夏はべたべたした体液を払い嫌そうに顔をしかめる。
「この液体……スキルを妨害してるの? そこのヤンキー、少しは協力しなさいよ。別にあんたなんかいなくても出来るけど、いたら、ちょっとは助かるってだけだけどね?」
「言われなくてもそうするさ」
 紅夏の声に永平はチッと舌を打ち、やや乱暴な動作で釘バットを振り下ろした。そのいかにも力任せな、苛立っていますと言わんばかりの攻撃に千颯が思わず苦笑を浮かべる。
「まぁ……溜まってるフラストレーションはあれで発散したら~? オレちゃんサポートするんだぜ!」
 永平を躱した姉Pに、千颯は間髪入れずにフラメアの刃を突き入れた。永平は眉間に皺を寄せつつ「……ああ」と小さく呟いた。

 樹は黒の猟兵から黒猫の霧を召喚すると、常は凪いだその表情を苦々しいものへと変えた。ペナルティーを警戒し、弟Pをカバーするために姉Pを攻撃する、のは間違いない行動なのだが
「やっぱり癪……」
『しばらクノ辛抱ヨ―』
 シルミルテは苦々しさを堪えきれない相棒に宥めの声を投げ掛けた。遊夜が再び跳弾を叩き込み、エリックは敵と距離を取りつつ竜玉から球状のエネルギー体を撃ち放つ。黎夜は牽制も踏まえてブルームフレアを炸裂させ、始麻は次に備えてトップギアの構えを取る。
「ギギャアァァアァアッ!」
 その時、姉Pの1体が悲鳴のような声を上げた。エージェント達が耳を塞いだその隙に、その1体は弟Pへ吸い込まれるように突進した。するとその体が2つに別れ、グラディスはその光景にハイテンションに声を上げる。
『おおう、待ってました!』
「喜んでいる場合か!」
「これは……回復しておいた方が良さそうですね」
 敵の放った音の衝撃は回復が必要、それが戦闘を円滑にする近道と、クレアはChrisに、グラディスは永平の声をいなしながら紅夏にクリアレイの光を向けた。Chrisは頭を振った後、射手の矜持で高めた命中力で短機関銃の引き金を引き、紅夏は更なる効果をとハイカバーリングを使用する。
「これ以上敵を増やしはしないわ」
「きゃー、皆さんカッコええどす」
 ハートマークでも付けそうな弟Pを永平はギロリと睨んだが、千颯が肩を叩いて永平の気を引き戻す。
「ほら、よそ見しないで。集中集中」
「……ああ」
 永平が「我道」を姉Pに叩き入れ、同時に千颯は反対側から柳葉の槍を振り上げた。樹が霧で出来た猟兵を敵へと差し向け、遊夜の放った跳弾が姉Pの身体を霧散させる。エリックの竜玉から多数のエネルギー弾が炸裂し、固まった2体の敵の姿に黎夜が両の目を細める。
『落ち着いて狙いなさい。従魔なら効くわ』
 内に響くアーテルの言葉に黎夜はくっと顎を引き、ライヴスの蝶の群れを敵2体へ解き放った。幻影蝶の光に敵が惑っている隙に、始麻がトップギアで高めた攻撃力を疾風怒涛に叩き込み敵1体を撃破する。
『お化けは斬るもの! さあ行くよ!』
 グラディスは仁希の外見で楽し気に笑みを見せると二丁板斧の演武を披露し、クレアは金獅子の紋章を抱く大剣を敵の胴へ振り下ろす。幻影蝶を逃れた1体がクレアに突進しようとしたがChrisが威嚇射撃でその意図を妨害し、紅夏が駆けつつ≪憤怒≫≪復仇≫ の刃で敵を微塵に切り刻む。
「永平ちゃん! タイミング合わせて! いくよッ!」
 千颯は声を放つとフラメアで姉Pの胴を穿ち、そこに永平が息を合わせてストレートブロウを叩き込んだ。最後の敵は潰れた声で啼いたと同時に消滅し、床の上に一枚「クリア」という紙が舞う。
「これで、終わりでいいの?」
「はい! ミッションクリアどす~。お姉ちゃんを『開放して』くれてありがとうございました~」
 樹の問いにパンドラは答えながら頭を下げた。樹は訝し気に目を細めたが、愚神は仮面を被ったまま首を傾げるだけだった。

●廃洋館前
「やっぱり永平ちゃんに受けたダメージの方は治してもらえないのね……」
「当たり前でござる! これに懲りたら少しは落ち着け! ……でござる!」
 泣き真似をする千颯を白虎丸はすっぱり切り捨てた。以前とある依頼で永平の胸筋に同じような不貞を働き、その他諸々も合わせて千颯の嫁殿に報告した事は未だ記憶に新しい。なお嫁殿の反応については割愛する事とする。
「いやあ、今回も特等席だったじゃないか。素敵な因縁つきで!」
 贔屓はパンドラの近くに誰もいない事を確認した後、煙草をふかす始麻を置いて愚神の元を訪れた。自分の言葉に仮面を向けるパンドラに、贔屓は含みを持たせた笑みを浮かべて問い掛ける。
「……彼は、君のお気に入りなのかな? 仮面の君」
「もしかして、やきもちですか?」
 永平を引き合いにする贔屓に対し、パンドラはまるで睦言でも告げるように言葉を返した。是とも非とも言えぬそれに贔屓はわずかに苦笑を浮かべ、しかしそれに浸る事なく別の問いを投げかける。
「前の話の続きを。……そちら側に興味がある、と言ったら?」
 先日パンドラに掛けられた言葉。魅力的な誘いを断れる程、僕は良い子じゃないんだけれど。贔屓は緑眼に意思を込めパンドラの仮面をじっと見つめた。表情も瞳も見せぬ愚神は、先日と同じ声音で贔屓へと言葉を返す。
「いつでもどうぞ?」
 その時、明らかな殺気が二人の周囲を覆い囲った。贔屓が身を翻したと同時に、樹が共鳴を解かぬままパンドラの頭上から黒の猟兵を振り下ろす。迫る本の角をパンドラは首を曲げて回避しさらに飛び退こうとしたが、その襟首を捕らえようとエリックが狙いを定める。
『逃がさねぇよ♪』
 そして放たれたロケットルアーロッドを、しかしパンドラは再びわずかな身のこなしで躱してみせた。そこに永平が「我道」を持って飛び掛かり、同時に遊夜がテレポートショットを撃ち放つ。永平の攻撃は回避したが、膝裏を狙って放たれた弾に愚神はわずかに姿勢を崩し、遊夜はニヤリと笑みを浮かべ幇装手槍を眉間に定める。
「予告通り……一発貰うぜ?」
 遊夜が引き金を引こうとした――その時、頭を割るような悲鳴がエージェント達に襲い掛かった。そして突撃してくる影に、愚神が鋭く声を放つ。
「待て!」
 4体の姉Pは、躾けられた犬のように獲物の寸前で留まった。発生した「ペナルティー」に樹とシルミルテは揃って苦く息を吐く。
「何がどう」
『クリアなんダカ……』
「クリアはあくまで『ミッションクリア』で、僕がNPCじゃなくなる、という意味ではないですよ? だってミッションクリアしたらNPCがそれ以外の何かに、っていうのは『当たり前』ではないですよね? ミッションクリアしたらNPCが……お仲間や一般人の皆さんが『敵』になるのは当たり前、というんであれば今後の参考にしますけど」
 そう言ってパンドラは仮面の下からじ、と暗い視線を永平に向けたが、エージェント達からはその泥よりも濁った瞳は見えなかった。パンドラはおどける様に人差し指を仮面に当てる。
「とりあえず僕は今の所、このゾーンに囚われた『ノンプレイヤーキャラクター』どす。NPC以外の何かにしたいなら、その何かにするためにそれなりの何かが必要……だと思いますけど?」
「のらりくらりとフザけた事を言いやがって」
「だって僕はNPCどすもーん。これ以上の事は言えませんー。……で、どないします? 一応クリアにはなってますけどもう少し遊んでいきます? 『NPC』としてならお付き合い出来ますけど?」
 パンドラの言葉にエージェント達は顔をしかめた。このまま帰るのはこの愚神の手の上のようで気に喰わないが……しかし、エージェント達の取れる道は一つしかなかった。終了を告げるように体が透明になりつつある。樹はせめてもの意趣返しに、去り際にあっかんべーと愚神へ舌を出して見せた。パンドラは現実へと帰ったリンカー達を見送ると、傍らで蠢いていた従魔を足で踏み潰す。
「……ふ、ふふ、ふふふっ」

●帰還
「どうだった?」
「やっパリ偽物はだメネ。味しナイノ」
 樹の問いにシルミルテはむうと頬を膨らませた。シルミルテにとってホラーやお化けは恐怖の対象でも作り物でもなく、おやつである。意味深過ぎる。
「あー面白かった。そっちは大丈夫だったー?」
「全然平気だよ。お化けより人の方が怖いしね……」
 グラディスの問い掛けに仁希は淡々と呟き、樹は微妙に心中だけで頷いた。永平には「怖いのが苦手」などと言っていたが、実際の樹はホラーもお化けも平気である。
「本当に怖いのは別のモノだからね……」
 
「折角回収したのに、まさか消えてしまうとはね……」
 紅夏は空のティッシュに視線を落とし不服そうに息を吐いた。皆にも頼んで回収した屋敷の破片やら髪の毛やらを解析してもらおうと思ったのだが、持って帰れたのは樹の回収したメモのみで、他は跡形もなく消えてしまった。
「どうやら我々の世界にあるのと同じ実物と、ドロップゾーン内にのみ存在する物質の二種類があるようだ。佐倉の回収したメモが前者で瓦礫などは後者だな。先日の依頼で使われたメモと今回使われたメモの筆跡は同じようだが、ここから愚神に繋がるヒントを得るのは難しそうだ。愚神の筆跡がこの世界の何処かにあるなら話は別だが……」
 済まなそうに息を吐いた職員は今度はクレアのメモに視線を落とした。気が滅入ったように顔をしかめ、少々重く口を開く。
「こちらも一応調べてみよう。折角頑張って書き写してくれたんだ、何かいい手掛かりがある事を願っている」
 職員の言葉にクレアは「お願いします」と言葉を返し、紅夏はその場を離れて永平へと歩み寄った。「なんだ」と顔を歪める永平の眼前に、紅夏はチョコレートを一つ差し出す。
「はい、これ」
 それを見た永平は不思議そうな顔をした。紅夏は甘い菓子を永平の視界に晒しながら、自分よりも背の高いヤンキーの顔を覗き込む。
「食べたくなければ捨てていいわよ。……お疲れ様」
 言いつつふいっと顔を背けた紅夏の姿に永平は少し戸惑いを見せた後、「サンキュー」と呟いて素直にチョコを受け取った。

「はー、なかなか楽しめたなアニキ」
「もう絶対に行かないからね!」
 満足げなエリックに霧人は涙を噴出させた。本当に今日は散々だった。でもなんとか終わったし、このまま家に帰って愛する妻に癒されて……
「ところで、オレが撮った心霊写真、誰か欲しい人いない?」
 エリックの一言に霧人はぎっと首を向けた。そこにはたくさんの赤い手と、髪を振り乱した恨めし気な女の顔が映った写真が
「ぎゃああああああああああああっ!!!」

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愁仁

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 薄明を共に歩いて
    アーテル・V・ノクスaa0061hero001
    英雄|23才|男性|ソフィ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 二律背反の龍
    始麻aa0179
    人間|24才|男性|攻撃
  • 二律背反の龍
    贔屓aa0179hero001
    英雄|28才|男性|ドレ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 死を殺す者
    クレア・マクミランaa1631
    人間|28才|女性|生命
  • ドクターノーブル
    リリアン・レッドフォードaa1631hero001
    英雄|29才|女性|バト
  • 日々を生き足掻く
    秋原 仁希aa2835
    人間|21才|男性|防御
  • 切り裂きレディ
    グラディスaa2835hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • フリーフォール
    エリックaa3803hero002
    英雄|17才|男性|シャド
  • 指導教官
    Chris McLainaa3881
    人間|17才|男性|生命
  • チョコラ完全攻略!
    シャロaa3881hero001
    英雄|11才|女性|ジャ
  • 断罪乙女
    志々 紅夏aa4282
    人間|23才|女性|攻撃
  • エージェント
    志々 翼aa4282hero001
    英雄|27才|男性|ブレ
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