本部

広告塔の少女~劇場の怪人~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
9人 / 4~10人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2016/10/06 14:15

掲示板

オープニング

● クリスティーヌ
 午後十二時の金がなる。ボーンと激情に繰り返し響く旋律に『リリア・フォーン』は身を震わせた。
「またやっちゃったわ。団長に怒られちゃう。はー」
 そうため息をついてリリアは片づけを始めた。
 舞台上の装飾を取り払い音響機器の電源を切る。台本と筆記用具を鞄の中にしまって劇場の鍵を取り出した。
 その動きが慣れていることから、今日だけたまたま十二時を越えたわけではないことがわかる。
それもそのはず、彼女はこの劇団のホープ、そして今回初めて主役級の役をもらえたため失敗は許されないのだ。
「これで……通算十三日目、そして公演まであと一か月。時間はいくらあっても足りないわ……」
 そう何度目か分からないため息をつく、リリアは練習場の鍵を閉めると踵を返し真っ暗な廊下を歩く。眠気をあくびと共に噛み殺し、あとは家に帰ってシャワーを浴び。今日の練習を反芻してなんて考えている。
 そう頭の中を演劇でいっぱいにしながら帰宅するのが、いつもの彼女の普遍的な日常、いつもと変わらない流れ、だったのだが
 その日は違った。
 劇場地下室から聞こえてくる声、それが脳に甘く響いた時。リリアは自分を失った。その声にリリアはふらふらと導かれ、とある倉庫の鍵を開けてしまう。
 そこに待っていたのは仮面の男。
「待っていた、クリスティーヌ。さぁ私と一緒に行こう」
 しかしその声を聴いたとき、本能ともいえる何かが彼女の思考を揺らした。瞬時に甘い夢から覚めた彼女は、次の瞬間防衛反応を見せる。
「きゃあああああ! 変態!」
 次の日、地下室で発見されたリリア、その手には紙が握られていた。
『最高の舞台で、花嫁に死を、観衆は絶望に喝采を』
 その手紙に霊力の痕跡があることから直ちにH.O.P.E.へと連絡が成された。

●『王都革命』の台本
~あらすじ~
 舞台は中世ヨーロッパ風。
 弾圧される民。その中で剣技の才を持つ少年が生まれる。
 その少年は周囲の子供たちと同じように幼少期を過ごすが二つの出会いが人生を変えた。
 一つ目が、あまりに美しすぎる娼婦の娘との出会い。
 二つ目が城をたびたび抜け出す姫君との出会い。
 農民の子供である普通すぎる自分には、出会う機会など無かった二人との出会いは奇跡的で、実際それは物語の序章のようだった。
 三人は身分も違い、会っていることがばれれば引き離される運命だ。
 しかし三人はあの手この手を駆使して会い続ける。
 そうして三人は成長し、今年大人として認められる儀式を受ける、そんなときのこと。少年は村人たちが革命をする算段をつけていたことを知った。
 それを二人に打ち明け話をすると、三人は思い思いの方法で、流血を止めることを決意したのだ。

 主人公が選んだのは守る道。騎士となり武力は誰かを攻撃するためにあるのではなく、護るためにあると訴えかけるようとした。
 そう示すために少年は優しさと厳しさを備えた。

 娼婦の娘は癒しで救いをとねがう。歌と踊りを学び、この世界が優しさや楽しさで満たされれば、誰かを虐げたいなんて思わないはず。
 そう薄汚れた少女は誰よりも人を引き付ける歌姫の道を進む。

 そして王女は許しの道を行く。訊き、理解し、話し、訴え。諦めず、理解を得ようと努力する、理解こそ全て。敬虔で思慮深い王女は女王へと成長した。

 そんな三人が時に対立しながら。協力しながらなんとか王国一丸となれないか模索する。
 そしてその行いに感動した王は三人に王位を譲り。
 血を流すことなく革命はなされたのだった。
 というお話。



● 対策会議
「なるほど、この舞台の公演中に襲われると……」
「ええ、しかも公開初日の可能性が高いわ。もしそんな日に流血沙汰になったらお客様が誰も来なくなっちゃう」
 そうリリアは遙華に訴えかけた。
「あなた、自分の命は惜しくないの?」
「とうに命は演劇に捧げたわ」
「あー。だから公演を中止するくらいなら死んだ方がましなのね?」
「そう言うことよ」
「あー。あなた何の役だっけ」
「私はセレスティア、王女の役よ」
「わかったわ、じゃあ、こうしましょう」
 
 そう遙華が提案したのは三つのこと。
・ 配役の変更
・ 劇のモブにリンカーを配置
・ 護衛役としてリンカーを配置。

「うん、妥当なところね。でも舞台に上がるならそれなりの技量がないと」
「つまり?」
「私が演技指導するから。そのリンカーさんにはよろしく伝えておいてね」

● 護衛任務内容
 今回の任務はとても厄介で、愚神に対処しつつ観客には異常事態が発生していないように思わせないといけません。
 つまり演技をしながらの戦闘となります。

・練習日
 一緒に演技やダンスの練習をしながら襲いくる従魔を倒します。このタイミングで愚神は出てきません。あっちも本気ではないのでしょう。小手調べ、みたいな。

・公演当日
 舞台上での護衛
 名前付きの役と演技をしているときはあまり警戒する必要がなく。真に警戒すべきなのは壇上に大人数が乗る、舞踏会のシーンとクライマックスの王位を継承するシーン。
 この名前のない登場人物の中に愚神が紛れている可能性はかなり高い。
*舞踏会のシーン
 全員がきらびやかな衣装を身に纏い、舞を踊りながら戦う。
 リリアと王が語らっているシーンの下でダンスを披露するのが本来の台本であるが、愚神が
 激しい戦闘シーンに発展しても舞台演出と言いはるつもり。
*王位継承のシーン
 王位継承のシーン冒頭は三人の主人公と王だけで話が進むが、これが成される直前に反乱軍が大挙して舞台上になだれ込んでくる、それと騎士がぶつかるシーンとなるがこの時に愚神が紛れ込む可能性が高い。

解説

目標 『マクシミリアン』の撃破
    上手に演技する。

・敵の情報========PL情報====== 
従魔 影の隣人
 ぼんやりした幽霊の見た目。外見を様々な物に変えることができる、人、物なんでも可能。
 戦闘方法は物理で殴るだけ。剣など装備していたとしても技術などあったものではない。
 同時に生成できるのは五体まで。


デクリオ級愚神 『マクシミリアン』
 人物をまねる能力に秀でる演劇の怪人。自分の見た目すら自在に変化させることができるが、リリアは演劇のプロなのでさすがに劇団の仲間に化けていればわかる。
 ただ、リンカーに化けられると厄介なので何かしらの対策が必要。
 装備は短剣とショートボウ。回避力と命中に秀でる。手数が武器だが一撃は重くない。
 リリアを殺害することを最大目的としており、リリアを殺害すると消える。

==================ここまでPL情報=========

●劇場構造
 西洋建築で本場の劇場のような内部構造。
 出入り口は一つ、まず大きなエントランス。そこから二階に向かう階段と劇場に続く長い廊下があります。
 階段を上がると廊下があり、劇場二階の歓談席に繋がります。
 これが劇場の表部分で。舞台裏から廊下を通ると、演技練習するための大部屋が三つ、音響管理室。倉庫が二つ並ぶ廊下があり、裏口に続く。

リプレイ

プロローグ

「753プロ所属の雪ノ下・正太郎と申します、よろしくお願いいたします。」
 そう『雪ノ下・正太郎(aa0297)』は礼儀正しく頭を下げた。
「よろしくね、皆さんも集まっていただけてうれしいわ」
 リリアは皆と個別に握手を交わし、台本を手渡していく。快活な印象を受ける女性だった。
「王の配役は俺に変更しな」
「はい?」
 そんなリリアに『高橋 直房(aa4286)』は唐突に告げる。
「戦闘を演出に偽装する役回りは必要だろう。台本を貸せ。練習までに役作りをしてやる。できるかどうかは結果で判断しろ」
「やる気があるのは嬉しいわ。楽しみね、私は舞台のこととなると容赦ないわよ」
 怪しい雰囲気を纏わせる二人。
 その隣でさっそく台本を読み始める『彩咲 姫乃(aa0941)』彼女は騎士の役だが、それが嬉しいらしい。
「実は演技はそれなりに得意な俺だ。任せろ」
「よろしくね、姫乃ちゃん」
 そう微笑んで手を振り、全員を先導するリリア。
(まるで潜入捜査だな……)
 そう凛と佇むのは『黛香月(aa0790)』
(演技には不安があるが……。愚神を討つためならば仕方あるまい)
 そう黛を含めた全員が稽古場に連行された。

第一章

 稽古場に案内されるなりさっそく演技指導が始まった。
「姫様、あたしはこんなかんじ……かな?」
 そう『アル(aa1730)』はスカートをつまみあげリリアの前で演じて見せる。
「すごいじゃない。さすがアイドル」
 声のトーンを普段より落としつつも明るく、天真爛漫で。けれど時折見せる寂しげな表情で儚さを纏わせる。
「サンはたぶん、姫様みたいに上品な話し方はしないんじゃないかな」
サンとはアルの演じる娼婦の娘の名前である。
「あとは、明るい生活だったから自分の進む道を悲観したりはしなかったと思う。きっとそのままの道を進んでも後悔はなかったんじゃないかなって」
「素晴らしいわ、かなり読み込めていると思う、本番が楽しみね」
「ああう。リリアさん、すみませんうまく演技ができません」
 そう顔を真っ赤にして申し訳なさそうに話しだしたのは『黒金 蛍丸(aa2951)』
「いや、緊張しすぎなんだよな」
 姫乃が告げた。
「緊張しないコツはね、どうでもいいやって思うことよ」
「どうでもいいや?」
「そう、失敗してもいいやって思うといいわ。蛍丸君はそう思いつつも真面目にやってしまうだろうからちょうどよくなるはずよ」
 そう演技指導を受けている一行を『天城 稜(aa0314)』は苦笑いしながら眺めている。
「僕の相方と同じ名前の人を護衛するなんて……何か、ムズムズするなぁ」
 その稜の隣にリリアが腰を下ろした、花の香りがふわりと舞った。
「あなたはこの騎士に何を見るの?」
 稜が演じるのは三人の主人公の騎士の役。名前をレンリという。
「力が欲しくて、でも足りなくて。さらに力を求めるんだけど、それではいけないと止めてくれる人がいて。この人を悲しませたくないとか思ったんじゃないかな、そして王女や幼馴染の笑顔も、平和も一緒に守ろうって、そこは共感が持てるんだ」
 まるで自分のようだと稜は感じた。
「ねぇ、リリアさん」
「ん? どうしたのかしら」
 アルの問いかけにリリアは振り返る。
「彼女に向けられた『クリスティーヌ』呼び……オペラ座、だよね」
 それに反応したのは正太郎。
「ええ、そうですねオペラ座の怪人。リリアさんは愚神の素顔を見て狙われたとか?」
「うーん、素顔はよくわからないけど。私が前に所属していた劇団でね。灰咲先輩とクリスティーヌを取り合ったってことはあったわね」
「灰咲先輩?」
「今はECCOって言った方がわかりやすいのかしら」
「え!! ECCOさん!」
 稜とアルが同時に絶句した。その言葉を部屋の隅っこでパソコンをいじっていた遙華が補足する。
「ECCOの仲介だもの。あ、今後演劇の仕事も増えるかも、よかったわねアル」
「謎は深まる一方ですね」
 正太郎は顎にてを当てて考え込む。
「嬢ちゃん、役が固まった」
 直房に呼ばれリリアは席を立つ。
「あれ? そう言えば澄香さんたちは?」
 稜が答えた。
「あいさつ回りをするらしいよ」

   *   *

「それでは今後ともモノプロダクションをよろしくお願いします」
 そう『蔵李・澄香(aa0010)』と『卸 蘿蔔(aa0405)』は頭を下げて部屋を出た。
「快くOKしてくれましたね」
 そう蘿蔔は監視カメラが大量に収まったバックを担ぎ直す。
「シロが手伝ってくれて助かるよ」
「はい、モニターを見つめ続けることなら任せてください、すみちゃんより自身があります」
 ほほえましく胸を張る蘿蔔。二人は廊下にせっせとカメラを設置していく。
「ついでに名簿をアップ……」
 遙華とやり取りし、エージェントたちがスタッフの顔、容姿を把握できるようにデータを上げた。
「エンジェルスビットも改造しないとですね」
「まさかこんな用途で使われることになるなんて遙華も思ってないだろうね」
 そう澄香は苦笑いを返した。

   *   *

 同時刻稽古場前。黒い靄のようなものが扉の前に殺到している。
「いったいなんの用かな」
 廊下の闇の中から黛がゆらりと現れた。
「小手調べってわけか、――カッコつけやがって!」
 姫乃が背後を取る。
 影はそれを嘲笑い消える。

第二章


「では、僕は護衛役として前半は近衛兵、後半は反乱軍として動きます」
 蛍丸がそう告げると、その姿を見て姫乃が告げる。
「おいおい、足と手が一緒に動いてるぞ」
「こっちにおいで、蛍丸君」
 そんな蛍丸の頭を抱きかかえるリリア。
 顔が真っ赤染まる蛍丸。
「あなたね」
 その光景を見ていた遙華。ちなみに彼女は舞台上部の放送ブースにいた。
「あ、いや、遙華さん、ち、違うのですよ! 誤解ですよ!」
「いえ、いいよの、ただ報告はさせてもらうわね…………」
「うわあああ、やめてください!!」
「緊張がほぐれたようでよかったわ」
 そんな遙華と一緒に放送室にこもっているのは澄香と蘿蔔。
「このメンバーで集まってるのって珍しくないですか?」
 蘿蔔が楽しそうに言った。
「テンションが高いわね」
 この部屋は舞台、舞台袖、観客席すべてが見渡せる。部屋を満たす熱気がダイレクトに伝わる特等席である。
「学校祭ってこんな感じなのかなって」
「…………私もよくわからないのよね、私も学校行ってないし」
「そ、そこで私を見るのはやめて、なんて言っていいか分からない!」
 困惑する澄香。
 その澄香の周囲にはエンジェルスビットに括り付けられたモニター十数代がフヨフヨと浮かんでいる。
「シロ、今のところファントムは」
「はい、チェックは全部済ませまして、今のところ成りすました人はいません」
 リハーサル映像を流し始める。本番と比較しておかしな動きをしている人物がいないかチェックするためだ。
「リリア、怪しいやつがいたら合図しろ」
 直房が言う。
「技したままでいい。ちゃんと拾ってやる。女優としての勘、頼りにしてる。」
「ええ、私もあなた達を頼りにしてる、一緒にこの劇を最高のものにしましょう」

「ファントムになんて負けない」

 舞台の幕が上がる。
 話の序盤のほとんどは三人の主人公の掛け合いで進行していく。

「革命を起こすために血を流すなんて……そんなのダメよ!」
 優しさを胸に宿したアル演じるサン。

「この身は、牙を持たぬ人の剣。ゆえに剣を抜くのは決して己ではなく牙を持たぬ人の祈りだ!」
 誠実さ、意志の強さ、確固たる思いを胸に突き進む稜演じるレンリ。

「私は誰一人として踏みにじりたくないのです。人は誰かとつながり人間となり、意思を通わせ力とする、その輝きと尊さを捨てたくはありません」
 人と人は理解しあえる、そう訴えるリリア演じる。アンジェリカ。
 そしてその脇を固めるのは黛と正太郎。

 そして物語はターニングポイント、舞踏会へ。

「貴族服……似合うでしょうか?」
「似合ってるよ、それより早く行こうぜ」
 そう姫乃が蛍丸の背を押した。
 壇上にはすでに黛が護衛として立っている。寡黙で魅惑的、会場の人間の視線がそっちにつられた。
「お父様!」
 直房扮する王とアンジェリカの会話が始まる。
「彩咲さん、何かおかしい」
 そう告げたのは澄香。
「何がだ?」
「一人多い」
 次の瞬間、滑るようにリリアに近づいた何者かの腕を姫乃が叩いて落した。
「漫画ではお前のような勘違いキザ野郎は変装して大胆に近づいてくるのがお約束なんだよ!」
 蛍丸と黛が反撃する。
「王女(リリア)には触れさせないぞ! ファントム!」
 しかし致命的なダメージを与える前に去ってしまった。
 そして舞台はクライマックスに向かう。


第三章

「誰かを傷つけて成されるものに意味はないわ」
 そうサンが叫び。別たれようとする幼馴染三人の絆を繋ぎとめる。
「王様に聞いてもらいましょう。あたしたちの思い。この国の現状を!」
 そして三人は王である直房の前に立った。
「王よ、聞いてください! 僕たちは」 
 そう稜が告げようとした瞬間だった。

 唐突に舞台すべての電源が落ちた。

「そんな。なんで」
 絶句する遙華。
「しまった」
 澄香は額を抑える。
「カメラの電源のほとんどはこの施設に依存してる、これじゃ誰かが舞台に上がってもわからない」
「ということは……」
 蘿蔔はあわてて暗闇へと目を向ける。
「下がってくださいリリアさん」
 そう蛍丸と姫乃が壁になる。しかし。
「てめえは誰だ?」
 暗闇になった一瞬でリリアは入れ替わったのだリリアに扮したマクシミリアンが笑いながら三人を切りつけた。
 そして会場の中心に降り立つファントムこと。マクシミリアン。
 暗闇に目が慣れたリンカーたちはぼんやりとその姿を見ることができる。
 古びたタキシードに、ぐったりとうなだれるリリア。
「君たちの包囲網が厳しいから無理やり突破させてもらったよ……」
 劇場のライトやモニターの電力を管理するための施設が劇場内部にあり、そこを落されたらしい。
「これでクリスティーヌは我らの者だ」
 しかしその時叫んだのはアルと稜である。
「姫様!」
「お前姫様をどうするつもりだ」
「役になりきってるのかな、無駄なこと」
「革命なんてもうやめにしましょうよ! そんなことをしたって、苦しむのはあなたたちの子供何ですよ!」
 稜が告げた。
 そんなマクシミリアンの声を遮って二人はセリフを続けた。
 だがそれは愚神に向けた言葉ではない、姫を目覚めさせるための言葉だ。
「私がいる限り、この国は死なない」
 そう、リリアが弱り切った、しかし会場に響くような声で言って見せた。
「バカな。完全に意識は失わせたはず!」
 そした放たれたのは蘿蔔の弾丸。それが暗闇だというのにマクシミリアンの眉間に突き刺さり。
 次の瞬間、素早く飛び込んだ正太郎と蛍丸によって、マクシミリアンは背後を取られる。
 回避をしようにも遙華の縫止によって移動もできない。マクシミリアン。
 彼は弾かれて無理やり壇上に戻された。
「く、お前たち」
 しかし口を開く暇は与えない、黛が動いた。
 その剣が閃き、マクシミリアンを打ち据える。
「愚神ともあろうものがストーカーとは見苦しい、消えろ……」
「があっ……」
「最後に答えてもらいましょう」
 澄香が放送ブースから告げた。
「何故リリアさんを狙うのか答えなさい」
「察しがついてるんだろう。主の計画のためさ」
「電源回復するわよ」
 遙華が告げると皆が頷いて役に戻る。
「この者です」
 正太郎がマクシミリアンに刃を向ける。
 その刃にクロスする形で黛も首に刃を当てる。
「この者が襲撃者です」
「よほどこの三人を王位につけたくないと見えるな」
「くははは、殺せ、殺すがいいさ私を殺したところでクリスティーヌを求めるものはさらに現れる」
「黙らせろ」
 直房が告げるとその刃がマクシミリアンの命を絶った。

「たとえ大地が 息絶えようとくじけない歌を覚えているなら。
 目をこらし、命のきらめきを探そう。
 奥歯をかみしめ 空を見上げよう!
 見えない明日を信じることは、時には苦しいものだけれど……
 僕たちは、誓い合った! この国を良くして行く事を!」

 その言葉に頷くとアルは空を見上げて言った。

「あたし歌う。誰かを恨むなんてことを忘れるくらいの歌を国民全員に届ける。
 争いや憎しみは何も生まない。
 ひとは一人じゃ生きてけないから、皆手を取り合って共に進みましょう!
 そんな歌を、届けるの」
 
 そしてリリアが二人の手を取る。

「共に歩みましょう。輝かしい未来へ」
 そして三人の歌が響く、喝采が送られ。そして幕が下りた。


「リリアさん、命がけで舞台に立つ誇り、本当に立派です。でも、もう無茶はしないで下さい」
 そう舞台袖から澄香が告げる、その言葉を聞いてリリアは微笑んだ。
「本当に、無事でよかった」
 そう告げるとリリアは澄香に抱き着いた。

エピローグ

「今度は舞台公演を見に行きますね! 頑張ってください!」
 蛍丸がリリアの手を取って言った。すっかりファンになってしまったらしい。
「あの、情熱的なハグのせいでなければいいけど」
 そう遙華は蛍丸をからかった。
 第一回公演は物議をかもしつつも終幕。感想は上々だそうだ。
 ただ、あの停電の時はフォローしきれなかったらしく。
「でも、面白いかもしれないわよ、この激情に住み着いた怪物がやったってデマを流すっていうのは。拍がつくわ」
 そう言ってリリアは笑った。
「神経が太い方ですね」
 正太郎は笑う。
「お疲れ様でした、またご縁が在りました時は宜しくお願いします」
「ええ、あなたもいい演技だったわ、次はもっと喋れる役をやりましょうね」
「初めて見ましたけど凄いですね……」
 遙華に手を引かれて蘿蔔が彼女の前に立つ。
 もじもじと視線を伏せながらも、やや興奮した声音で蘿蔔は言った。
「言葉や動きの一つ一つが、歌や劇にするだけでより心に響きます」
(嘘の自分を演じることが、これほど難しいとはな……)
 黛は一人喧騒を聞きながら佇んでいる。ちなみに麗しい女騎士である彼女が何者だろうという問い合わせが殺到していたらしいが。
 それが本人に伝えられるのはだいぶ後になってからである。
「みんなで打ち上げをしませんか?」 
 正太郎が告げた。
「だめよ、夜の公演が残ってるもの、それはあなた達みたいな付け焼刃じゃなくて本物の演者が演じるからきっと楽しいし、勉強になるはずよ。それを見てから打ち上げに行きましょう」
 そういって遙華は微笑んだ。
「歌にすれば……私も、伝えられたかな」
 そう寂しげな表情をする蘿蔔にかける言葉を探しながら手を引いて、ついでにあいさつ回りを終えた澄香の手も引いて、劇場へと連れて行く。
「一番いい席を私達でとっちゃいましょう」
 こうして今回の騒動の幕が下りた。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 敏腕スカウトマン
    雪ノ下・正太郎aa0297
    人間|16才|男性|攻撃
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 悪事を知悉る(しる)男
    高橋 直房aa4286
    人間|43才|男性|命中
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