本部

広告塔の少女~熱血PV撮影~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2016/08/23 21:43

掲示板

オープニング

● 赤原来襲

『赤原 光夜』はミュージシャンである。
 若い世代に人気の過激なパフォーマンスが持ち味のみんなの兄貴系ミュージシャンである。
 怒りっぽいのとたまに餓鬼っぽいのがたまに傷だが、まぁそれも彼の魅力の一つなんだろう。
 さらにはアニメやゲームの主題歌やEDの常連でサブカルチャーでも幅広く使われる、彼の知名度は日本人なら誰しも聞いたことがあるレベルで、カラオケランキングに食い込む曲がいくつもある。
 そんな彼だが、最近台頭してきたリンカーアイドルに対して敵意を燃やしてぶつかったりした。
 これが彼の背景、そして今回のお話の中心は彼である。
 彼衝撃を受けていた。
「すげーなこれ、CGか?」
 画面の前で光夜が興奮したようにECCOに言った、それは以前撮ったhackという曲のPVだったが、そのあまりの迫力に光夜は感服していた。
「これCGじゃないわよ」
 ECCOは説明する、このPVでとられた戦闘シーンは全て本物で、従魔も本物であり、この光景全て実際の戦闘である。
 映像技術など一切使っていない。
「夢中ね、光夜君」
「関西弁ぬけてんぞ」
「ああ、せやったせやった、かんにんなぁ」
「にしても」
 光夜は言う。
「おめぇだけずりぃ。俺もやりてぇ」
「やったらええやん、遙華ちゃんにお願いして」
「けどなぁ。俺アイツと仲わりぃし」
「ごめんなさいせぇへんからやろ、うちも一緒に謝ったるから。新曲のPVどしたらええか悩んでたんやろ、遙華ちゃんに相談しようや」
「うん、まぁわかった」
 意外と素直にECCOの言うことは聞く光夜である。それもそのはず。
 一応ECCOはこの業界の先輩であるし、曲のアドバイスも積極的に受けているため、恩人的ポジショニングなのだ。
「そうときまったらいこか」
「うん? そんな急に行って大丈夫なのか?」
「意外と遙華ちゃん大丈夫やで」

● そして、グロリア社へ

 こうしてECCOは光夜を遙華の目の前に連行した。
「かんにんな、光夜君、全然素直やなくてな」
「現金な人ね」
 イラッとした笑みを浮かべて光夜はその言葉に答える。
「餓鬼とじゃ話にならん。ロクト、あんたと話がしたい」
 イラッとした笑顔で笑う遙華。それを見てロクトはクスリと笑い、光夜に言う。
「この子の機嫌を損ねるとリンカーが協力してくれなくなるわよ。大体がこの子との友達だし」
「ああ、そうかい」
 そう光夜は椅子に深く座り、企画書を遙華に渡した。
「これが今回頼みたいPVの企画書だ」
 それをざっと眺めて遙華は言う。
「あなた、正気?」
「正気も、正気」
「あなた、従魔がなんだかわかってるの? あんたなんて一発で致命傷なのよ」
「だからあんたらに守ってほしいって言ってるんだろ」
「だから……」
 遙華はイラついて首をふった、それを静止して光夜は言う。
「わかってる、あんたの言いたいことはわかってる、けどな俺は文字通り音楽に命かけてる」
「それは言葉のあやでしょ」
「文字通り、意味通りって言ったろうが。世界の善戦で戦うやつらがいんのに、後ろでのうのうとなまっちょろい歌なんて歌ってられるか」
「その考えがもはや甘いわよ、却下、こんなの却下」
「俺だって知ってる、今戦ってる奴らの気持ちになることはできねぇって知ってる、けどな、だからこそ俺はそいつらに近づきてぇと思ってる」
 光夜の目つきが変わった。
「俺は戦いに出られねぇ、でもなリンカーに寄り添ってやれるのはリンカーだけだなんて言いたくねぇんだ。そのつらさや努力の十分の一でも理解して、戦ってる奴らの応援がしてぇ」
「光夜……」
 ECCOがぽつりとつぶやいた。
「俺は今までそう言う歌をずっと歌ってきたつもりだ。戦ってる奴ら、努力してる奴らの支えになれるような歌を。それはリンカーに対しても例外じゃねぇ」
「…………。うーん」
「たのむ西大寺、俺はあんたらの力にもなりてぇ、そしてそれだけの歌の力を俺は持ってる」
「ああああああああ。わかったわよ、手伝ってあげる。でもリンカーが協力してくれるかどうかはわからないわよ。あなた前回おもっきり私たちのことを」
「それも謝る、だからよろしくな!」
 そう光夜はいい笑顔で笑った。

● 企画書

 今回のPVは全編戦闘シーンです。
 戦場をバックに光夜が歌いますが、彼が歌う舞台は戦場のど真ん中。
 リンカーと共に戦場を賭け、時に傷つき、一緒に疲れ果て、それでも歌うことをやめない。という映像を撮りたいそうです。
 どれもこれも、リンカーたちの戦いがどれだけ過酷で、どれだけ苦しいか、そしてどれだけの光をもらっているか、それを知らしめるためのPVだと。
 彼は言いました。
 

●新曲の内容
曲名『ノブレスオブリージュ』
 持てるものには義務がある、戦う義務と守る義務。
 そんな戦場に断つ君の背中を、持たない僕らが守って見せる。
 一緒に戦おう。僕たちは支え合う義務を負っている。
 そんな曲。
 力もてるもの全てを後ろから押すような力強い曲、サビで『何度も』と繰り返すのが印象的。

● 戦いの舞台
 従魔が救う周囲に町も村もない辺境。
 岩と砂しかないような荒れ果てた場所なので、幸いなことに被害は出ていない。
 従魔はそこまで強くないが。光夜もギター片手にずんずん突き進んでしまうので、彼を守りながらたたかわないといけない。
 従魔たちは光夜を積極的に狙ってくる。
 PVに必要なだけの戦闘シーンを撮る必要がある。
 30分程度の戦闘シーンと特定のカットである。これを意識して戦いに挑んでみてほしい。

《必要カット》複数とっても可
・傷ついて倒れた仲間に手を差し伸べるシーン。
・敵の集団に取り残されるシーン
・背中合わせに敵を一掃するシーン
・敵陣を切り開くシーン
・魔法発動のシーン
・苦戦するシーン
・連携攻撃のシーン

解説

目標 必要なだけの尺を稼ぐ
   必要なカットをとる。

 今回の部隊は荒れ果てた荒野です、敵従魔はそれほど強くないのですが無限沸きです

従魔
・ワイバーン
 常時空を飛んでいる二メートル程度の龍。火焔ブレスとカギヅメに注意。
 戦闘力はそこまで高くない
・ガーゴイルナイト
 甲冑に身を包んだ悪魔の騎士。防御力に秀でるが攻撃は剣で切り付けるのみ。
 戦闘力はそこまで高くない

・ゴースト
 戦闘力はそこまで高くないが数が多い。
 半透明のガスのような見た目で、移動力が高く、人をすり抜ける能力がある。
 攻撃は魔法が主体だが、飛距離がないので近づく必要がある。

・デッドリーゴッド
 大きな錆びた鎌もつゴーストの進化形のような見た目。
 多彩な魔法攻撃と共に、卓越した鎌の技術をもち、攻撃的な性能になっている。
 戦場に一体のみ出現、倒されると戦場の奥から補充される。

・オーク
 三メートルほどの巨躯を持ち、鋼のこん棒で攻撃してくる。
 攻防両面に秀で、近接攻撃主体。
 目立った特徴はないが、バランスが取れていて厄介。
 戦場に一体のみ出現、倒されると戦場の奥から補充される。

リプレイ

第一章 赤原来る

「いつもお世話になってます!! 魅流沙です」
 『新星 魅流沙(aa2842)』は車から降りた『赤原 光夜』に頭を下げて手を差し出した。
「おお、おう、元気な人だなあんた。魅流沙だな、覚えてる覚えてる」
 そう光夜はその手を取り、握手を交わす。
「今回は味方だ、よろしくな」
 そんな光夜を見て『ルナ(aa3447hero001)』はぽつりとつぶやいた。
「赤原 光夜って、前にライブバトルしてた人でしょ?」
 ルナを膝の上に抱えた『世良 杏奈(aa3447)』は苦笑いを浮かべる。
「そうよ。今日はこの人のPVの撮影をするの」
「ECCOとも仲がいいんでしょ?」
「ええ、そうね短気だけど根はいい人だからって、よろしくってメールが入っていたわ」
「え……いつの間にそんなに仲良く?」
 ルナが驚いて杏奈の顔を見あげた。
 そんな一行を尻目に『荒木 拓海(aa1049)』と『海神 藍(aa2518)』は打ち合わせを続けていた。
 今回のPV撮影で重要になるのは各々の演出で、二人は事前にたてた演技の再確認を行っていたのだ。
 そんな二人の隣で『メリッサ インガルズ(aa1049hero001)』は柔軟したり意味もなくジャンプしてみたりと、落ちつかない。
「良いPVに成るよう頑張って」
「撮影に乗り気だね」
 拓海は振り返り答えた。
「人は守られて当然って思いになると自分で動くとか感謝する事を忘れ権利ばかり主張するから。忘れない為に丁度良いPVと思うわ」
「……あれ。チクッと来た」
 拓海は胸を抑える。
「hackのPVを見て? そ、そうですか」
 『禮(aa2518hero001)』は恥ずかしそうに笑った、恥ずかしい目にあったのは主に藍ではあったが、あのPVはかっこよく演出されすぎていて、自分たちとは到底思えないので、感想など聞くと今でも赤面してしまうのだ。
「前以上に頑張らないと、ですね!」
「うん、ノリと勢いを大切に、熱く行こう……新たな戦法も見つかるかも知れない」
 そんな二人へと光夜が歩み寄る。そして右手を差し出した。
「今日はよろしく」
「あ、こちらこそ」
 そう拓海がその手を取るが、光夜の視線はすぐさま藍に向かった。
「お! あんたはECCOのPVで見たぜ、藍さん。シュバルツローレライだったか」
 藍は身を震わせ、若干身悶える。
「覚えていただいていたようで、光栄です……」
「あのPVはよかったな、それぞれキャラクターが堀深めてあって、面白かった。あれはあんたたちが……」
「なぁ、ミツヤ」
 そんな彼の言葉を遮って『リーヴスラシル(aa0873hero001)』が声をかけた。
「ああ、ラシル。本当に言うのですか?」
 『月鏡 由利菜(aa0873)』が肩に手をかけるが、リーヴスラシルとしてもこれだけは言わないといけない、そんな決意を秘めた視線だった。
「いや、コウヤだろうか」
「ぶっちゃけどっちでもいいぜ、本名か芸名かの違いしかねぇ」
「そうか…………撮影をやめるつもりはないだろうか」
「あ?」
 眉をひそめてリーヴスラシルを真っ向から見据える、柄の悪い光夜である。
「無論、弱き者を守るのは騎士の義務だが……前線へ出すぎれば、守り切れない可能性もある」
「ら、ラシル、そこは10人の力で何とかしますから……」
「守られていて言うセリフじゃねぇんだけどよ」
 光夜が告げる。
「同じ危険を共有してねぇ奴の応援なんて、価値があるのか?」
「バカだな」
 そう言い放ったのは『『破壊神?』シリウス(aa2842hero001)』彼女はフフンと笑うと光夜の真正面にたった。
「ほう、あんたはハープギターの……」
「だがオレはそういうバカが好きだぜ、赤原 光夜」
 そうシリウスは胸をそらして、ふふんと笑った。
「なんでそんな得意げなんだよ」
「シリウスが、人の名前をおぼえた!」
 魅流沙が驚きの声を上げる。
「何言ってんだよ、オレはいつだって記憶力ばっちりだ、ニボシ!」
「覚えられてない」
 へこむ魅流沙である。
「一丁、オレらもバカになってやろうじゃねーか」
「ああ、頼むぜ。俺の命アンタらに預けた」
 そう全員とあいさつを終えた光夜はバスの中に戻って行った。遙華と曲の制御や演出の話をするらしい。
 そんな光夜を納得のいかなそうな表情で見送りリーヴスラシルは溜息をつく。そして由利菜と共に戦場を眺めていた『赤城 龍哉(aa0090)』の元へと歩いて行った。
「んじゃ、準備ができたみてぇだな」 
「どうなるか分かったものではないな」
 龍哉がそう尋ねると、リーヴスラシルは溜息をつき剣を構える。
 龍哉は『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』から受け取った剣を掲げて見せ、リーヴスラシルの剣と合わせた。
「装備にカメラをつけておきましたわ」
「おう、苦労かけるな、ヴァル」
「装備の調整くらい自分でやってください」
「いやどうしても、戦場を眺めておきたくてな、戦士としてのたしなみだ」
「この程度の小さなカメラでよかったのですか?」
「他の映像はカメラ専門のスタッフがどうにかするだろう、プロにお任せって事にしとこうぜ」
「そうですわね」
 そうヴァルトラウテが告げると、幻想蝶に触れる。次の瞬間霊力の光が二人を包んだ。
「それじゃ行くぜ!」
「私達も」
 由利菜がつぶやくとリーヴスラシルは頷き、二人も続く。共鳴である。
「主の為に紡ぐ……出でよ、白き衣と銀の鎧!」
『フォールクヴァング』を身に纏う由利菜。
 次の瞬間、二人は光を切り裂き、武器を構えてそこに佇んでいた。
 そんな二人のもとに戦闘準備が完了したリンカーたちが続々と集まってくる。
 そして最後に、ギターをかき鳴らしながら光夜がその列に合流した。
 撮影開始である。
「持てる者の義務……素敵な題名ですね」
 禮はぽつりとつぶやいた。
(私がHOPEの事務員になったのは”持てなくても”戦いたかったから、だったな…)
 藍は歌に、そんな思いをはせる。


第二章 戦闘

「良い歌だな……戦うのは義務……か」
 拓海はイフリートを燃え立たせ、戦場を闊歩していた。
「持たない君に守られる。守り得られた安らぎを悠久と変え残すため。望んで手にした義務を果たそう……」
 そんな彼の前には懸命に戦場を駆ける『天宮 愁治(aa4355)』の姿。
「あぁ……とうとう僕も実戦か。やだなぁ。ねぇ、やっぱり僕後ろで皆の為にお菓子作って」
 初めての実戦に緊張しつつも、真っ向から見据える。
――起きて寝言を言わないで下さい、ヘタレチビご主人様。それにしても、闘争とはいつ聞いても素晴らしい響きですね。さあ、さっさと共鳴しやがって下さいませ。
『ヘンリカ・アネリーゼ(aa4355hero001)』が激励を飛ばす、そんな二人に一人の少女が歩み寄った
「あら、戦いにでるのは初めてなの?」
 そう声をかけてきたのはノートPCを抱えた遙華である。
「でもね、頼れる先輩もたくさんいるから、楽しむといいわ」
「戦いを楽しむ?」
「そう、あんな感じに」
 そう指さした先には肩慣らしに従魔を切り倒していく『東海林聖(aa0203)』と『御門 鈴音(aa0175)』。そしてその二人が戦場で取り残されないようにフォローする杏奈の姿があった。
「遙華、行くわよ。光夜が呼んでる」
 そう『水瀬 雨月(aa0801)』は遙華の手を引いた。
 そして戦場に鳴り響くギターサウンド。
 奏でるのは光夜。まずは肩慣らしとばかりに『熱源・バーニング』を披露している。
 そして魅流沙がサポート演奏をしていた。
「さぁ。行きましょう」
 そう愁治の手を引いた。
 そして、一行は声を上げながら従魔の軍団へと進軍した。
 先行するのは由利菜、そして鈴音。
「……あぁ! もう!」
「なんじゃ!」
 癇癪を起す鈴音をなだめる『輝夜(aa0175hero001)』
「演技を意識したら全然上手く動けない! こうなったらいつも通り体の赴くままに戦うだけよ!」
 鈴音は大きく跳躍、ワイバーンの翼を切り落とし、着地する。
「それがいいですね」
 由利菜も同意する。
――大根役者め。じゃがそのほうが鈴音らしいぞ。……我が力以って存分にぶちかませ!
「うん!!」
 そう頷くと、鈴音は大剣を一振り、半透明な幽霊従魔を一体切り伏せた。
 その背に迫るゴーストの群の前に由利菜が躍り出て、そして鋭い眼光で威圧する。
 ちなみに鈴音は三蔵法師をもした純白の衣装、しかし胸元ががっつりあいているため、胸が躍る踊る。
――今回バトルメディックはいない。収録中に負傷したとしても、簡易的な応急措置しか取れない
 由利菜がガーゴイルの騎士を鎧ごと切り捨て、それに合わせるようにリーヴスラシルが告げた。
「討ちぬけ!」
 そして由利菜は弓に持ち替え、上空から光夜を襲うワイバーンを打ち落とす。
「いいじゃねえか! 乗ってきたぜ!」
 その光景を目の当たりにして興奮が収まらない様子の光夜。
――あまり前に出ないでもらおうか
 そんな赤原へターゲットを写した幽霊従魔たちが光夜に殺到、しかし彼から離れず護衛している由利菜が割って入り、次々に従魔を切り捨てて行った。
「いいじゃねぇか、ここからが。俺のステージだ!」
 テンションマックスの光夜は、思春期の少年がごとく人の話を聞いていない、ぐいぐいと前に進んでいってしまい、それに由利菜をはじめとした護衛集団が翻弄されている。
 そんな光景を目の当たりにして雨月が遙華に問いかけた
「あれ、どうするの?」
「ああ、みんなにまかせるしかないわね、幸い敵でもないみたいだし」
 遙華はPCを操作しながら雨月に言葉を返した。
 その間にも熱を増していくサウンド、燃え上がる魂、戦場に旋律が響いた。それは全て光夜のサウンド。
 その歌に合わせて聖が前に先行する。
「いいな……燃えて来たぜッ!!」
――PVの撮影……あぁ言うのだよね……命知らずって言うけど……ま、いいけど。どんな形であれ、情熱は大事……じゃないかな。ルゥには解らないけど。
 そう『Le..(aa0203hero001)』はやれやれと口を首を降った。
「っし! 行くぜルゥ!! 気合もギアも入れて行くぜッ!」
――……当然、そのつもりだけど……ヒジリーこそ視野狭くしないでね
 敵の集団の中央へ切り込む聖、その鬼神のごとき姿を見て従魔も恐怖を感じるのだろう、道はたやすく開かれていく。
 その一番槍聖に続いて鈴音が突貫する。
「戦場に歌か……たしかにこんな戦場でも歌を聴けば希望が湧くかも」
――あんたがたどこさ ひごさ ひごのどこさ くまもとさ くまもとどこさ せんばさ
「……元気づけようとしてくれてるとこ悪いけど…なんでそんな古そうな歌知ってるの?」
――それは内緒じゃ。
 鈴音の母が生まれた地方の手毬歌らしい。それを鈴音が知ることになるのは遠い遠い未来のこと。
「はあああ!」
 鈴音は輝夜への突っ込みもそこそこに聖が切り倒したワイバーンを踏み台に飛んでさらに数体のワイバーンを切り裂いていく。
 着地後返す刃で悪魔騎士を盾ごと切り捨て、さらに駆ける。
「っへ、この程度……何時ぞや程じゃねェな!」
――調子に乗って、ポカらないでね
 言っているそばから聖の顔面に迫る剣。
「おっと」
 それを潜り抜けカウンターとして一撃叩き込む。
「切り拓くぜ、千照流……石流散火ッ!!」
 聖の剣がまとめて敵を切り裂いた、高速で振り回した剣が熱を持ち陰炎を放っている。 
 その刀身を撫でて振り返ると、龍哉が突貫してきていた
「おらあああああああ!」
 バトンタッチとばかりにその姿を見送ると、龍哉は騎士の軍勢にいどんでいく。
「後ろも気にしてください!」
 そんなドレッドノート達が開いた戦端が閉じないように魅流沙が従魔たち焼き殺していく。
 いのり、そして歌、踊り。霊力の光が彼女を怪しく照らし出していく。
「みなさん、退避してください!!」
 そして放たれたサンダーランス、それが従魔たちを焼き払っていく。
 その動きに合わせて杏奈が前に出た。
「あははははは、暗黒に飲まれなさい」
 アルスマギカが怪しく光る。
――またなの! 
 杏奈の豹変に唖然とするルナ
「これが漆黒の魔女か、ECCOから聞いてた通り、奮い立つぜ」
 一体ECCOは何を吹き込んだんだろう、そうルナは苦笑いを浮かべる。
「あははははは」
「世良さん!」
 魅流沙は舞で霊力を収束した霊力をサンダーランスで放つ。
 それと同時に杏奈はアルスマギカからレーザーを放つ。
「前進するわ。あの子たちの鮮血で、この戦場を清めましょう」
「ええ! 何を!」
 魅流沙の静止を振り切って駆ける杏奈。それをおう光夜。
――おい、ミツヤ! 勝手な行動を……
「まぁまぁラシル」
 杏奈は拒絶の風を纏い敵陣に突っ込んでいく。魔本から放たれる魔術を至近距離でゴーストに叩き込んだ。
 そして傾いでいくその体を踏み台にワイバーンを飛び越え、魔導銃で頭を打ち抜いた。
 着地と同時に背後の悪魔騎士を打ち抜いた。
「ひえええええ」
――どっちが悪魔だか、わかったもんじゃねぇな。
 魅流沙と杏奈はどんびいている。 
 そんな二人を後押しするように光夜の歌が響く。 

《何度も! 何度も! 何度も! 拳を突き上げろ。お前が倒れない限り、俺も倒れないと誓う》

「赤原の音楽、いいね。オレは好きだぜ!」
 剣を構えてさらにギアを上げる聖、その背に背を預け龍哉は言う。
「一掃する、ついてこれるか?」
「当然!!」
 にやりと笑った龍哉、そして暴力の嵐が吹き荒れる。
 聖の剣が騎士の兜を割り、ひるんだ敵を龍哉が鎧ごと真っ二つにする、迫るゴーストのむれをすれ違いざまに切り伏せて、回転するように剣で薙いだ。
 そんな二人が撃ち漏らした敵を愁治が手際よく片付けていく。
「これが本当の戦場か……。ついて言ってみせる!」
 二人の刃は音を置き去りに、空気を切り裂き、塵芥のように従魔を屠っていく。
 しかしそれは長くは続かない。目の前に現れたのは見上げるような巨躯を持つ従魔。
 オークである。
「少しは歯ごたえのあるやつが出てきたみたいだな」
 龍哉はにやりと笑う、そのオークの背後でせっかく切り開いた敵の列が閉じていくのが見えた。

第三章 陰り
 愁治は加速する。
 かけざまに敵の位置を把握していく、緩慢な動作で自分の周辺に集まってくる敵を一人一人脳裏に焼き付ける。
「大丈夫だ、訓練の内容は全部覚えてる」
――激甘ご主人、私の力を信じてください。
 次の瞬間周囲に展開されたのは無数の刃。それが愁治の周囲を旋回し敵に狙いを定める。
「コントロールが」
――意識する必要はありませんよ、ゴミチビご主人様。どこに撃っても当ります。
 放たれたのはウェポンズレイン。地を切り裂き、従魔を次々と屠っていく。
――正面以外にも4時、5時、8時の方向に敵ですよ、ご主人様。早くしないと死ぬので何とかしてください
「わかってる!」
 必至だ、霊力をねん出すること、敵をその目に焼き付けること。
 歪んだ性格からお菓子を作ってくることしかしなかった彼にとって、いまだに非日常でしかない。
「来い! 蛇龍剣!」
 迫る敵に回避も迎撃も不可能だと覚った愁治は、その手にウロボロスを投影する
「貫け」
 そのまま無動作に前へ、突き出すと、連接が伸び、敵の心臓を破砕した。 
「だああああ! テメェ等こっち来んじゃねええええ!」
 叫びと共に愁治が周囲に武装を展開、嵐のように吹き荒れる斬撃がカーテンのように彼を守る。
――やれやれです。クソザコご主人様
「女の子がそんな言葉使っちゃいけません」
 そして彼は光夜護衛隊にやっとのことで合流する、対して拓海はというと。
「くそ、取り残される」
 拓海は歯噛みする。
「いったん下がれ! 赤原さん!!」
 そう叫んでSMGを構えて突貫、敵の注意をこちらに引きつける。
「く!」
 その敵の数は尋常ではなかった、寄せては返す波のように倒しても倒しても数が減らない。
 ワイバーンの爪を掻い潜り、ガーゴイルの剣をイフリートで受け止め炎上させる。
 そしてゴーストに対しては……。
「対抗手段がない」 
 前を突き進む龍哉たちのようなバカげた火力があれば倒せるのかもしれないが、攻撃の効きの悪さに徐々に押され始めた。
 SMGを乱射、じりじりと後退していくも。背後に強烈な気配。
 振り返ればそこには死神とも見えるゴーストが立っていた。
 その従魔の動きは早い。瞬時に接近され、その鎌によってSMGを叩き落とされた。
 イフリートの火焔で包むもその表情は涼しげで、攻撃が通用していないことがわかる。
「くそ!」
 拓海は光夜達の方を見やる、どうやら撤退はうまくいっているらしい。
 であれば。
「あと少し、こいつをひきつけていられれば」
 そう思った瞬間、左から突如飛来したワイバーン。その爪に強く肩をえぐられ捉えられる拓海。
「なっ」
 そのまま拓海は地面にこすり付けられ、投げ飛ばされて切り出された大きな岩に叩きつけられる。
 そして拓海は肺にたまった血を吐きだした。
「くそ、頭を、打ったのか……、目が」
 眩暈で視界が回る、同時に額が切れたのか血が目に入る。
「ここまでか……」
 そんな拓海を死神が笑い、迫りながらも鎌をふりあげた。
「……拓海! やらせるものか!」
 その友の危機を察知したのは藍。しかし駆けつけるためには二十以上の従魔を切り倒さなければならなかった。
「そこをどけぇ!」
「……その声は藍?! 逃げろ、こいつは強い!」
「諦められるか! 俺は友人を戦場において言ったりしない!」
「藍!!」
「手を貸すわ」
 そう拓海と肩を並べ立つのは雨月、そして魅流沙をはじめとする魔導師部隊。
「タイミングを合わせてブルームフレアを放つから、あなたはその中を潜り抜けて」
「わかった」
 雨月と魅流沙は霊力を高めていく、周囲を満たす青色の霊光、それが最大限に高まった時。
「いまよ!」
 戦場に二つの赤い花が咲いた。
 爆風で吹き飛ばされる従魔たち、そして、魔導銃50AE を乱射しながらその爆炎の中心を駆け抜け。槍を放つ。
 藍へと迫るワイバーンは見るも無残に風穴を開け墜落。その落下する死体を潜り抜けさらに加速。
 今にもその首に鎌をかけようとする死神を拳で殴り飛ばした。
「拓海!!」
 その手には青い焔。ブルームフレアを纏った拳はデッドリーゴットを吹き飛ばし、爆発の衝撃は周囲の従魔を退かせた。
「何をボヤボヤしてる、拓海! 立ち上がれ!」
 そう手を差し出す藍。
「すまん……気を抜いた……」
 手を取る拓海。藍は地面に刺さっていた槍を抜き、その隣で服を割いて頭に巻く拓海。これで血が視界を曇らせることもないだろう。
「拓海が居て後れを取る筈が無いだろう? ……背は気にするな、私が護る」
「視界確保! 藍が居てくれるなら貴様らには負けんっ」
「やらせはしない。この槍に賭けて!」
 そして二人は死神を真っ向から見据えた。

《何度も! 何度も! お前がいるから立ち上がれる》

 光夜の歌が響く。
――わ、格好いい! ノリと勢いって、凄いんですね!
 禮はそう笑うが。メリッサが辛辣な一言を差し向けた。
――男の子って単純ですね
 
 次の瞬間はじかれたように二人と従魔は動いた。
 拓海と藍は槍を構える、水と火焔を湛える槍が。左右から死神を襲う。
 それを鎌ではじく死神。
 次いで拓海は足を、藍は腕を狙い刺突を放つ。
 その刺突は残念ながら両方捌かれる、だがそれは計算のうちで。
「いけ! 拓海」
 トリアイナ穂先に足を駆ける拓海。そのまま拓海は空中で回転し、死神へと頭上から怒涛乱舞の一撃を加える。
 その槍は死神の頭に突き刺さり、死神は霊力の束となって消えた。
「まだ行けるか?」
 そう拓海が問いかけると藍は笑って応と答えた。


第四章 反撃

「ちょっと、光夜」
 ぐいぐいと勝手に前に進む光夜を追って、遙華と雨月が攻撃をはじく。
「わるいな嬢ちゃんたち!」
 全然悪びれる様子のない光夜。
「ちょっとまずいかも?」
 そんな光夜と戦闘のスタート地点を交互に見て遙華は言った。
「常に後ろは見てるけど、本陣が遠いわね」
 そしてその視界をふさぐようにワイバーンが、新たにガーゴイルを投下していく。
「そんなこともするのね」
 雨月はうんざりしたようにそうつぶやいた。
「俺の歌を聞きに来たのか! ありがとう!」
――そんなことを言っている場合ではない……
 リーヴスラシルが怒った。
「このままでは」
 由利菜も少し声を低くする、自分一人であればこのくらいの敵、何体いても生還は可能だろう。
 だが光夜を守りながらの進軍となると話は別だ。
「こちらロードナイト、数的不利に陥っています! 至急救援を!」
 そうインカムに訴えかける由利菜。
「きゃああ!」
 そんなむやみに動けない一団の真ん前から、突如デッドリーゴットが飛来した。
 それを魅流沙が真っ向からバリアで抑える。レイジ・マトリクスのバリア生成機能である。
「武士は食わねど高楊枝!!」
―― なんだそりゃ
「ノブリスオブリージュの意味です」
「んなかっこわりぃ意味では認めねぇ!」
 魅流沙の豆知識が気に入らなかったのか、ジャーンとギターをかき鳴らす光夜。
「遙華、突破口を開くわよ」
「え、私も行くの?」
 このままでは本格的にまずいと判断した雨月は遙華を戦力として投入することを決意した。
 遙華も状況は薄々わかっていたらしく、PCを幻想蝶にしまい苦無を構えた。
「カメラとスピーカー、自動小銃になるけどごめんね」
 次の瞬間放たれたのはゴーストウィンドウ。腐食の霧が敵を包み込む。そして邪魔くさいデッドリーゴットは遙華が。
「影縫い!!」
 縫止でその場に縫いとめる。
 少しの時間が稼げれば由利菜がきっと何とかしてくれるだろう。
 そう期待しての行動である、次いで遙華は敵陣の中央に突貫していった。
 そして、その時である。
――みんな、こっちだよ
 ルナの声が聞こえた瞬間、従魔を巻き上げて、残忍な笑みの杏奈が登場した。
「あそこが薄そうね」 
 そう雨月はつぶやき、遠慮なくスキルの全てをその個所に叩き込んでいく、従魔たちは一体、また一体と倒れ、鮮烈に穴が開いた。その向こうに遙華たちが乗ってきたバンが見える。
「走って! 殿は任せてください」
 そう叫んだ由利菜。
「うわあああああああ!」
 その瞬間、上から落ちてきた鈴音を抱き留めて地面に下ろす。
「なんで上から?」
「ワイバーンの背中に乗っていて……」
 相変わらずむちゃくちゃな鈴音だが、今ここに彼女がいることの意味は大きい。
「撤退のためにもう一度戦列をズタズタにする必要があります」
「わかりました」
――要は、切りまくれということじゃな
「従魔を断て、シュヴェルトライテ!」
 地面を走るクレセント型の斬撃。地上の敵を切り裂いていく。
 その隙を狙って降下するワイバーンたちだが、下から弧を描いて飛来した鬼帝の剣。
 真っ二つになったワイバーンが土煙を上げて由利菜の左右に着地する。
 それを背景に鈴音はカメラに向かって説法印の決めポーズ、そして左手だけ伸ばして、剣をキャッチした。
「おおおい、こっち来るぞ!」
 そんな二人のもとに、一番最奥まで突き進んでいた龍哉と聖が駆け寄ってくる。
 後ろには怒り狂った従魔の群が続いていた。
 いったいかれらは何をやったのだろうか。
「心配しました、どこに行っていたんですか?」
 由利菜が戸惑い気味に尋ねると龍哉と聖は笑って顔を見合わせた。
「気が付いたら奥まで」
 男って馬鹿ね、そんなため気を鈴音と由利菜はついて、四人で押し寄せる従魔軍団を見つめた。 
 戦場を動きながら、その場に居合わせた仲間と即興で対応。
 こちらから相手に合わせる感じで。
「研ぎ澄ませ……!! この一撃で切り拓くッ!!」
 最後の一大勝負に四人は挑む。


エピローグ
 
 青空が見える。戦場の鉄こすれ合う音は今は遠く、体の気だるさに戦場の風が冷たく心地いい。
 愁治は自分の切り開いた空を、ただぼんやりと眺めていた。
 そんな青年に由利菜が手を差しのべる。
「さぁ、必要なだけの映像はとったわ。撤退しましょう」
 その手を愁治はとりあたりを見渡すと、ラインが引いてあるかのように従魔たちが向こう側に整列している。 
「なんでだ?」 
「いや、ありがとよ、たすかったぜ」
 ギターを抱えて地面に腰を下ろしている光夜。拓海が手を差し出すと光夜は掴む前に手を引っ込めた。
「いや、いいよ、しばらく経てそうにない」
「あの」
 そんな光夜の隣に藍が腰をおろし色紙を一枚差し出す。
「サインをもらってもいいですか?」
 そんな光夜のサインを抱えて、藍はうれしそうに言った。
「ああ、楽しかった。偶にはこういうのも悪くないね」
「ええ、格好良かったですよ、兄さん! 荒木さんも!」
 男子二人は禮の言葉に照れて笑う。
 今回も無事に撮影を終えた一行は、打ち上げと称して居酒屋に行くのだが。
 それはまた、別のお話。
 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 魅惑の踊り子
    新星 魅流沙aa2842
    人間|20才|女性|生命
  • 疾風迅雷
    『破壊神?』シリウスaa2842hero001
    英雄|21才|女性|ソフィ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • エージェント
    天宮 愁治aa4355
    獣人|25才|男性|命中
  • エージェント
    ヘンリカ・アネリーゼaa4355hero001
    英雄|29才|女性|カオ
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