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【神月】連動シナリオ

【神月】ベルバルネザル・ドロップゾーン

gene

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
11人 / 4~12人
英雄
11人 / 0~12人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2016/07/23 20:22

掲示板

オープニング

●沼津のながーい話
 ダマスカス支部に集められたエージェントたちは、東京支部より援助に来ていた沼津から説明を受けていた。
「ベルバルネザル・ドロップゾーンでの戦いは今日で終結させる。君たちもそのつもりで臨んでほしい。これまでの報告によると……」
 沼津は手元の資料をめくる。
「全エージェントたちの活躍が功をなし、ベルバルネザル・ドロップゾーンは細切れの小さなものになった。もう愚神たちにはアル=イスカンダリーヤへ援軍を出す余力は残っていない。君たちの勇気と努力に感謝する」
 エージェントたちへ拍手を贈り、沼津は労をねぎらう。エージェントたちもお互いの顔を見、拍手でお互いを称えあった。
「しかし」と沼津は言葉を続けた。
「実は、この細切れになったドロップゾーンが急速に再編成されていることを確認した。ドロップゾーンを再編成している愚神の名前は『クァイド』」
 具体的な愚神の名前に、エージェントたちの間に緊張感が高まる。
「クァイドはドロップゾーン内に残っていた従魔を統率している。それらの戦力はアル=イスカンダリーヤに援軍に来るだけの余力は無いものの、無視することはできない。実際、友軍の援軍を阻止するくらいのことはできるし、その為に、欧州方面からの友軍はドロップゾーンに対する包囲に戦力を割かざるを得ない」
 沼津は他の職員に目で合図を送り、室内の照明を消してもらった。
「そのため、クァイドを討伐してもらいたい。幸い、君たちが何度もドロップゾーンに侵入してくれたおかげで、こちらは敵の情報をある程度は抑えている」
 スクリーンに球体が組み合わさったような図が表示された。
「これは最初のベルバルネザル・ドロップゾーンの図だ」
 砂漠地帯の空間に溶け込んでいるドロップゾーンの全体を俯瞰して見ることはできないけれど、中に入ったエージェントたちからの報告を総合し、一つのドロップゾーンを球体と仮定して、複数のドロップゾーンの位置を立体的に表した図である。
「そして、君たちが戦った結果、このほとんどのドロップゾーンは除去されている。再編成されているのは……」
 沼津はレーザーポインターで四つの球体を示した。
「この四つだ。ドロップゾーンとドロップゾーンの間には扉があるらしい。クァイドは情報収集能力に長けている愚神だが、戦闘能力はミーレス級並みに低い。問題は、クァイドとドロップゾーンを守る従魔だ……炎の狼、氷の妖精、熱帯魚の睡魔」
 沼津は再び手元の資料をめくった。
「従魔に見つからずにクァイドのところまで辿り着ければ理想的だが、従魔に見つかり、戦闘となる可能性が高い……従魔の特性によって、柔軟に対処してくれ」
 一つ目のドロップゾーンをポインターで指し示しながら、沼津は詳細な説明を始めた。
「まず、ここ……入り口から右手に進んだところにあるドロップゾーンから説明しよう」

 沼津の説明はこうだ……
 そこは炎のドロップゾーン。壁や天井は炎に包まれ、床からはいくつもの炎の柱が天井に伸びている。その柱の幅は一メートル強で大人一人くらいは優に隠れることができるが、その炎に触れれば火に焼かれることとなる。
 中央にある広間のようなところには十数匹の炎の狼がいる。炎が燃え盛る音であまり耳は役に立たないようだが、嗅覚は鋭い。引っ掻かれたり、噛まれたりすればそこから炎が広がり、それは柱の炎よりもずっと高温のため、大火傷を負う危険性がある。

 沼津は次に、氷のドロップゾーンの説明を行った。
 入り口から左手に進むと、氷のドロップゾーンがあり、氷山が次のドロップゾーンへの入り口の障害となっている。
 氷山を登るのに大した時間はとらないが、上空には氷の妖精がいる。好戦的な従魔ではないが、その分、計画や敵意を持ってエージェントたちに近づくわけではないため、行動が読みづらい。
 氷の妖精の羽からまき散らされる鱗粉は、それが振りかかったところを凍らせ、ライヴスを吸収します。
 二十ほどの妖精が一緒に飛び、単独行動はしない。氷山が壊れると、修復のために一斉に壊れた部分へ鱗粉を振りまく。

 炎のドロップゾーンと氷のドロップゾーンはどちらも水のドロップゾーンに続いている。
 そこは本物の海の中とよく似ている空間で、サンゴ礁、イソギンチャク、海藻、岩場がある。
 熱帯魚の睡魔に、鼻の頭にキスをされた者は眠ってしまう。眠らされると徐々にライヴスを奪われながら水流で流されていく危険性があるため、別のドロップゾーンに急いで移る必要がある。
 熱帯魚の睡魔はイソギンチャクや海藻、サンゴ礁に隠れている可能性が高い。この従魔は非常に視力が悪いが、水中の波の動きによって侵入者に気づくことができる。
 水のドロップゾーンの水底には白いモスクがあり、その奥にクァイドがいるドロップゾーンがある。

「次に、クァイドがいるドロップゾーンについてだが……」
 沼津は言い淀み、そして表情を少し硬くした。
「残念ながら、ここに関しては、真っ白な空間という報告書しか届いていない」
 資料を机に置き、再び室内の照明をつけて、沼津はエージェントたちを見回した。
「最後に、改めて、クァイドのことだが……先ほども言った通り、非常に情報収集能力に長けている愚神だ。すべての目や耳が奴のそれと繋がっていると思って行動してくれ。今回は知恵や仲間との連携が重要になるだろう。くれぐれも単独行動はせず、慎重に、任務を遂行してくれ」

 ベルバルネザル・ドロップゾーンで幾度も勇気と絆を試されてきたエージェントたちは、最後の戦いの時もそれは変わらず……否、これまで以上に、仲間との信頼、相棒との信頼を、試されることになる。
 さぁ、あなたは逃げ場のないこの空間で、仲間を裏切らず、相棒を信じきり、そして、己を疑わずにいられるだろうか……。

解説

●目標
・愚神:クァイドと従魔の討伐

●ドロップゾーンについての情報

 構造は以下の通り

     ◯氷のドロップゾーン
 入り口<          >◯水のドロップゾーン---◯クァイド
     ◯炎のドロップゾーン

・炎のドロップゾーンと炎の狼
 炎のドロップゾーンには太い炎の柱がいくつも立ち並び、中央には広間があります。
 炎の狼に引っ掻かれたり、噛まれたりすればそこから炎が広がり、大やけどを負う可能性があります。
 減退付与。

・氷のドロップゾーンと氷の妖精
 氷のドロップゾーンには氷山が広がっています。
 氷の妖精の羽から撒き散らされる鱗粉が降りかかったところは凍り、ライヴスを吸収します。
 拘束付与。

・水のドロップゾーンと熱帯魚の睡魔
 水のドロップゾーンは本物の海とよく似た空間です。
 水の底に純白のモスクがあり、建物奥の扉からクァイドのところへ行くことができます。
 熱帯魚の睡魔に鼻の頭にキスされると眠り、ライヴスを徐々に奪われます。
 気絶付与。

・白のドロップゾーンと銀の大蛇(PL情報)
 クァイドがいるドロップゾーンは真っ白な空間です。
 体長五メートル程の銀の大蛇がクァイドを守っています。視覚ではなく、赤外線感知器官で敵を認識します。
 大蛇の赤い目を見た者は希望を失った幻覚を見ます。共鳴している場合、幻覚は主人格のみが見ます。
 狼狽付与。

・クァイド
 従魔を指揮統率し、ドロップゾーンを再編している愚神。
 情報収集に特化した能力。すべての従魔と視界を共有しているため、それぞれの戦況や情報を瞬時に把握しています。

●状況
・クァイドは賢い愚神です。戦況が不利となれば、せっかく編成し直したドロップゾーンでもあっさりと捨て、逃げ出すでしょう。
・こちらの戦力、そして従魔との戦況を正確には悟られないことが重要です。
・リプレイはベルバルネザル・ドロップゾーンの入り口から始まります。

リプレイ

●仲間
「長ったらしい名前のドロップゾーン、まだ残ってやがったか……」
「でも、エリア毎に属性作るとか、結構凝り性な愚神だネ!」
 ドロップゾーンの入り口付近に集まるエージェントたちの中で、その入り口を見つめながら麻端 和頼(aa3646)と華留 希(aa3646hero001)はそんな会話をしていた。
 その近くで、弥刀 一二三(aa1048)はキリル ブラックモア(aa1048hero001)が熱心に見ているシリアのお菓子特集の本を覗き見る。
「どんな菓子があるんどすやろ?」
「バクラヴァ、マクルード……シリアの人々は甘い物が好きらしいな」
 キリルが目に見えてウキウキしているのがわかる。
「……ええ場所で良かったわ」
 これで、共鳴した時に愛らしい魔法少女になることもないだろうと、ほっと安堵している一二三のところに虎噛 千颯(aa0123)が声をかける。
「一二三ちゃんの活躍期待してるー!」
「今回はキリルもやる気満々やさかい、いい働きができると思いますわ」
「えっ!? 魔法少女フミリルじゃないの!?」
 千颯は明らさまに残念がっている。
 木霊・C・リュカ(aa0068)とオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)もドロップゾーンの入り口にまっすぐ視線を向けながら覚悟を決める。
「もう終章だからね、綺麗に散ってもらわなきゃ」
「大分長い事やってたしな。終わりは綺麗な方が良い」
 そんな二人の肩を千颯が叩いた。
「オリちゃんしっかりサポートしたってな!」
「わかってる……炎のドロップゾーンは危ないとのことだし、気をつけろよ」
「火ぃついちゃったら氷の方においでね! 寒いからすぐ消えちゃうよ!」
 オリヴィエとリュカは千颯を案じる。
「征四郎殿、氷のドロップゾーンは任せたでござるよ」
 白虎丸(aa0123hero001)は、ガルー・A・A(aa0076hero001)と共鳴して青年の姿になっている紫 征四郎(aa0076)の頭に手を置いてくしゃりと撫でた。
「参加したーいけど、戦い方が〜って嘆いていたのにねっ!」
 メリッサ インガルズ(aa1049hero001)がにこにこと楽しそうに荒木 拓海(aa1049)をからかう。
「毎日考えてればなんとなくは……って、からかわない! このムードは熱い心があるやつなら惹かれるんだよ!!」
 メリッサに力説する拓海の肩に千颯が腕を回した。
「拓海ちゃんそっちは任せたぜ!」
 千颯の言葉に「頑張るよ」と拓海は答え、メリッサは「すべての熱帯魚を釣ってみせるわ!」と意気込む。
 手を差し出した拓海の指輪にメリッサが触れ、二人は共鳴した。
「宇津木殿、無理はなされずにでござるよ」
 白虎丸が宇津木 明珠(aa0086)に頑張りすぎないように伝えると、明珠は「はい」とうなづいた。
「和馬ちゃん大将首は任せたんだぜ!」
 重要な任務に緊張している鹿島 和馬(aa3414)の背中を千颯は力強く叩いた。
「ここできっちり潰しておかねぇとな」
 千颯に力をもらった気がして、和馬は覚悟を決める。
「規模が大きくなられても困るしね」と、俺氏(aa3414hero001)。
「とうにカーテンコールは終わっている、幕の引いた舞台で何時までも踊る役者は嫌われるぜ」
 沼津からもらった愚神の資料を見ながらそう言った“皮肉屋” マーシィ(aa4049)の言葉に相棒は首をかしげる。
「随分今回は詩的だねぇ、どうしたんだい?」
「名前の割に俺の言動があまり皮肉ってない事に気付いたんでちょっとそれらしくしてみるテストだ」
「メタいよ!? メタは私の担当だろう!?」
「何言ってんだテメエ」
 もめているマーシィと“不可思議な放浪者”(aa4049hero001)に白虎丸は声をかける。
「マーシィ殿も御武運をでござる」
「そっちもな」とマーシィは白虎丸の肩を叩く。
「今、ベルバルネザル・ドロップゾーンが再展開されてしまえば、仲間たちに危険が及ぶ。そんなことは絶対にさせない!!」
 飛岡 豪(aa4056)の強い思いと同じだけの強さで、英雄のガイ・フィールグッド(aa4056hero001)も言った。
「悪の根城は消し去ってやるぜ! 待ってやがれクァイド!」
 熱い思いを高ぶらせる二人の間にひょっこりと千颯が現れる。
「豪ちゃんもガイちゃんもカッコいいー! お互い頑張ろうな!」
 豪と千颯はハイタッチした。
「和頼ちゃんと蕾菜ちゃんは今回よろしくね」と、千颯は二人と握手した。
「んじゃま、ちょっち頑張るかね~」
 千颯は上体を伸ばして軽くストレッチする。
「今回の戦い、重要になるでござるから気を抜くなでござる」
「わかってるって!」
 白虎丸と千颯はしっかりとお互いの手を握るように幻想蝶に触れ、共鳴した。
 それぞれの相棒と共鳴したエージェントたちはお互いに目を合わせ、その目の奥に灯る覚悟を確認しあった。
 そして、エージェントたちはドロップゾーンへ足を踏み入れる。

●氷と妖精
 沼津の説明にあったようにドロップゾーン内は二手に分かれていた。
「じゃ、またね」と千颯が零月 蕾菜(aa0058)と右手にある炎のドロップゾーンに進むのを、リュカが「ちょっと待って」と引き止める。
「念のため、通信機が使えるか試しておこう」
 まず、ライヴス通信機の通信状態を確認すると、雑音が多く入り、使えたものではなかった。
「H.O.P.E.にドロップゾーン内で通じる通信機を申請してみたんやけど」
 一二三の言葉にエージェントたちは期待する。
「あ、期待さしてすんまへん。結論から言うと、借りられんかったんどすわ。ドロップゾーンによってライヴスを介した通信機が使えるのか、一般的な機械のほうがいいのか違うらしいんどすわ」
「なるほど、場合によってはスマホのほうがいいってことだね」
 リュカが二台のスマホを取り出し、通信を試みる。その結果、若干の雑音は入るものの、ライヴス通信機よりはずっと聞こえがいいことがわかった。 
「ちーちゃん、スマホ持ってないでしょ? 俺、余分に持ってきたから、貸してあげる」
「さすが、リュカちゃん! あんがと!」
「他に、スマホ持ってない人いる?」とリュカが聞くと、マーシィが「俺持ってねーけど……豪たちと一緒だからいらねーかと思ったが」と答えた。
「何があるかわからないから、一応持っていた方がいいかもしれないよ」
 リュカはマーシィにもスマホを一台渡す。
「じゃ」と、改めて炎のドロップゾーンに向かった千颯と蕾菜の背中が灰色の煙の中に見えなくなると、リュカたちは左へと進んだ。

 徐々に白い霧が濃くなり、温度が下がる。
「BS解除はせーちゃん達頼みになっちゃいそうかな? よろしくねっ」
 そう軽く笑ってみせたリュカに征四郎は真剣な眼差しで言った。
「リュカとオリヴィエのことは私が絶対に助けるのです!」
 その眼差しの強さに少し意表を突かれたが、リュカは「うん」と微笑んだ。
 濃くなる霧の中を進むと、急に視界が開け、目前に氷山が現れた。
「……伏せろ!」
 リュカとオリヴィエは主人格を交代し、オリヴィエが後に続くエージェントたちに上空への注意を促す。
 上空にはまるで小さなガラス細工のようにきらめく美しい妖精が群れになって飛行していた。
「氷山を越えやすいルートがあるか見てくる」
「私も行きます」
 オリヴィエと征四郎は身をかがめて氷山へと近づく。
 氷のドロップゾーンの入り口に近いところは断崖絶壁のような氷山のため、その氷の壁に沿って二人は右側へ進む。
 途中、妖精が近くを飛んだ時には氷の壁に密着して気配を消した。
 入り口からは影になって見えなかった部分に登れそうな斜面を見つける。
 征四郎は入り口近くの氷山に身を屈めて隠れて待っていたエージェントたちの元に引き返し、オリヴィエは見つけた斜面からずっと離れたところに崩しやすそうな氷山を探す。
 妖精たちが高いところにいては、先へ進むエージェントたちが上から丸見えになるかもしれないため、オリヴィエはあえて氷山の麓を壊すつもりである。
 適当と思われる場所を見つけると、オリヴィエは氷山の一角をライトブラスターで派手に壊した。
 すると、上空を飛んでいた妖精がすぐに壊れたところに近づいてきた。
 素早く氷の影に身を隠したオリヴィエは、空メールを征四郎に送る。
 メールが送られてきたことを確認した征四郎は「行きましょう」と他のエージェントたちに声をかけ、できるだけ身を低くして、足音を立てないように気をつけながら走り、先ほど見つけた斜面まで案内する。
「それじゃ、行ってくるぜ!」
 和馬の言葉に征四郎はうなづき、その場の全員にフットガードのスキルを使う。
 トレッキングセットを使ってマーシィは身軽に氷山を登り、そのあとを他のエージェントたちが続く。
 最後の一人が斜面の奥へと進むのを見送って、征四郎はオリヴィエの元へ向かった。
「どうですか?」
「妖精は氷山を直すのに夢中だが、その分、氷山が修復されていくスピードもはやい」
「やはり、壊し続けなければいけないみたいですね」
 征四郎は思い切って妖精たちの前に飛び出すと、妖精たちから見える場所をインサニアでさらに破壊し始めた。

●炎と狼
 炎のドロップゾーン内には熱い空気がこもり、まるでサウナの中にでもいるみたいだった。
 沼津の説明通り、ドロップゾーンには炎の柱が立ち、そして中央の開けた場所には炎の毛を逆立てた狼たちがいる。
 炎の柱に触れないように隠れ、狼たちの様子を見ながら蕾菜はつぶやいた。
「本命の方はうまくいっていればいいですが……」
 蕾菜の言葉に、千颯は「大丈夫。大丈夫」と軽く答える。
 それはテキトーに言った言葉ではなく、仲間に全幅の信頼を置いているから出た言葉である。
 千颯は秘薬をぐいっと一気に飲むと、蕾菜に言った。
「んじゃ、作戦通り影から狙ってな! 敵は俺ちゃんが引き付けるんだぜ!」
 蓋を開けた香水の瓶を狼たちの方に向かって床を滑らせ、狼たちがその匂いに興味を持ったところを奇襲を仕掛けた。
 千颯が二頭の狼をフラメアで突いて倒すと、他の狼たちが飛びかかってきた。千颯は今度は狼たちの体に香水を投げた。
 体に付着した強い香りに狼たちは戸惑う。その隙をついて千颯は槍を振るい、数匹の狼の足に傷を負わせる。
 蕾菜も柱の影から魔導銃50AEを放つ。すぐに別の柱に移動して、千颯の背後に近づく狼を撃つ。
 さらに柱を移動して、狼の足を狙って撃ったつもりが今度は床にひびを入れた。
 柱を移動して撃つことで、より多くの人数が従魔により足止めされていると思わせられるはずだが……「銃での狙撃ってあんまり得意じゃないんですけど……」と蕾菜はつぶやく。
 そのつぶやきに、彼女の頭の中で十三月 風架(aa0058hero001)が答える。
「あんまり倒してしまうのも問題だから練習と思って、味方に当てなければそれでいい……」
 蕾菜の撃ちやすいところに千颯が狼を誘導し、地道に弾丸を狼に当ててなんとか半数ほどにすると、蕾菜は攻撃を一旦止める。
 千颯が狼たちに苦戦しているように演じながら時間を稼いでいる間、蕾菜は柱の影で待機した。自作の匂い玉を持って。
「嗅覚が鋭いならこういうのが効くかなと……風架さんもきつかったりします?」
「……人間の姿でなら別に」
 水風船にタバスコとお酢を入れて作った匂い玉が活躍するタイミングを待っている蕾菜は、まさかその匂い玉から漏れるかすかな匂いを追って蕾菜を見つけた狼がいるとは夢にも思わなかった。
「これくらいでやられる程やわじゃないんだぜ!」
 狼をスヴァリンと足でかわしながら千颯は言った。
「この作戦、上手く行くように今が踏ん張り時でござる!」
 白虎丸の声が脳内に響く。
「俺ちゃんドMじゃないけど今回は耐え抜いてやるんだぜ!」
「ドM? よく分からないでござるがその意気でござる」
 飛びかかってきた一匹の狼をスヴァリンで押しやる。その時、蕾菜の背後に狼が迫っていることに千颯は気づいた。
 千颯はそれを口パクで蕾菜に伝えようとする。
(蕾菜ちゃん! 後ろ! 後ろ!!)
 蕾菜は小首を傾げる。
(うーしーろー!)
(……うーいーろー?)
(おしい!!)
(おいしいですよね!)
「ちがーーーうっ!」と、千颯は思わず声に出して叫んだが、熱い空気が口内に入り、むせそうになる。
 残念ながら、炎の音にかき消されて、千颯の声は蕾菜には届いていない。
 下手に動くと狼が蕾菜に飛びかかるかもしれないと思っての口パク会話だったのだが、千颯は意を決して、蕾菜の方へ走り出した。
 それに気づいた狼もやはり動く。
 激しく燃える炎の音で背後に近づく狼に気づくことができなかった蕾菜も、急接近した殺気にやっと気づき、後ろを振り返ると、大きな口を開けて牙をむき出しにした狼が目前に迫っていた。
(しまった!)
 そう思った次の瞬間、フラメアの刃先が狼の口の奥へ突き刺さった。

●水と熱帯魚
 征四郎は最初に崩した氷山のあたりをインサニアで切り崩し続けていた。
 氷山を修復しようとする妖精たちの羽の鱗粉が征四郎にもかかり、腕や肩、足元などから徐々に凍っていく。
 征四郎ほどではないが、妖精に魔砲銃で徐々にダメージを与えているオリヴィエも、時々飛んでくる細かな鱗粉により皮膚の表面や衣服が凍っている。
 寒さに悴み、鱗粉により凍る手で時折、征四郎も妖精に向かって矢を放つがそれはなかなか当たらない。
「おい征四郎、しっかり当てろよ!」
 ガルーが脳内で叱咤する。
「こう寒いと手が悴んで……もう!」
 征四郎は思うように動かなくなってきた自身の腕に苛立つ。
「お前が倒れたら意味ないだろ! クリアレイをかけろ!」
 オリヴィエの言葉に、征四郎はリジェネーションを使い、自身とオリヴィエを治癒する。
 リジェネーションにより、二人の冷え切った体に生命力が戻る。
 その時、オリヴィエのスマートフォンに和馬から着信があった。
 電話に出たオリヴィエの表情が深刻なものとなる。
「どうしたのですか?」
「隙を取られて足止めを食ってるみたいだ……」
 クァイドの目や耳を意識して実際の状況とは逆の情報を伝えるというのは征四郎のアイデアだった。
「そんな……!」
 征四郎は切迫した演技で嘘の情報に真実味を持たせる。

 氷山を越え、次のドロップゾーンの扉の前までたどり着いたことを、それとは逆の『手間取っている』という言葉で伝えた和馬は、オリヴィエと征四郎の演技のうまさに笑いそうになる。
 拓海が次のドロップゾーンに続く扉を開き、エージェントたちは驚いた。そこは水中だとは聞いていたけれど、扉を開けたすぐ目前から水の壁だった。
 明珠と共鳴している英雄の金獅(aa0086hero001)は花火の火薬部分にセロハンテープを巻き、さらに氷のドロップゾーンから砕けた拳大の氷を拾うと、それを重石代りに花火に巻きつけ、火をつけた花火を水のドロップゾーンへ勢いをつけて投げ込んだ。
 氷により花火は水中を進み、そして失速すると氷の浮力により上へと上がる。
「荒木も一緒にやろうぜ」と、拓海を誘い、二人でいくつもの花火を投げ込む。
 花火により、一定箇所で波紋が広がる。
 すると、サンゴやイソギンチャク、海藻の間に隠れていた熱帯魚が出てきて、燃え続ける花火の方へ泳いでいく。
「今のうちにモスクを見つけよう」
 拓海の言葉に一二三はうなづき、リンクバリアのスキルを使ってその場の全員の魔法防御を上昇させる。
 拓海が先に水のドロップゾーンへ入り、長く伸びる海藻に隠れながら水中深くまで進む。
 途中、熱帯魚の姿が見えると、エージェントたちはお互いに身振り手振りで隠れるように指示を出し合った。
 花火の効果が切れる頃、豪が泳ぎ進みながら設置したスマートフォンが鳴り始めた。「従魔ども、こっちだ!」などの音声による振動に熱帯魚たちはスマートフォンに寄っていく。
『水中では音が大気中よりも伝わりやすい。視覚以外が敏感なら、こういう方法も効果的なはずだ。ここで多くが足止めされていると錯覚してくれると、油断を誘えるかもしれない』
 ベルバルネザル・ドロップゾーンに入る前に豪はそう説明をして、四台の予備のスマートフォンに自身や相棒のガイ、千颯やマーシィの声を録音していた。
 そして、モスクを見つけると、豪は途中の岩場にもう一台スマホを固定し録音アラームをセットし、周囲にネビロスの操糸を張り巡らせてトラップを仕掛ける。
(これで少しでも数を減らせればいいのだが……)
 そう願ってトラップを仕掛けた後、水中で体を反転した目の前に熱帯魚がいて驚いた。
 睡魔の熱帯魚は豪の鼻にキスをした。
「……」
 しかし、豪が眠ることはなかった。顔を含め、全身正義の色の赤いヒーロースーツに身を包んでいたからである。
 水中で強い衝撃波のようなものが発生したかと思うと、金獅がフリーガーファウストG3を放ったところだった。豪の目の前にいた熱帯魚は波動の強いそちらに興味を惹かれたようで、泳いでいく。
 肩を軽く叩かれて豪が振り向くと、防護マスクをした拓海が手でモスクへ進むように示した。豪はうなづき、モスクへと向かった。
 拓海が豪たちが白いモスクの奥へと進むのを見守っていると、一二三が拓海に手を振り、口をパクパクと動かした。
 それが、お礼を言っているのだとわかり、拓海も手を振り返す。頑張れという応援と、任せたよ! という気持ちを込めて。
 無事に仲間がモスクの奥へと進んだのを確認して、金獅は再びフリーガーファウストG3を放った。拓海も金獅と背中を合わせ、同武器、フリーガーファウストG3を放つ。

●純白と銀蛇と希望
 千颯は灰色の煙となって消えた狼がいた場所に転がっている槍を拾った。
 一二三からの着信に気づいた千颯が電話に出ると、一二三は水のドロップゾーンの底にあったモスクにたどり着き、次のドロップゾーンの扉の前にいることをそれとは反対の表現で伝えた。
 それに対して千颯は「……そっか」と神妙な声で答える。
「どうですか?」
「……かなりやばいみたいだ」
 千颯も事実とは逆の印象を与える言葉を選んで蕾菜に伝えた。

 白いモスクの中には水はなく、普通に呼吸ができる空間だった。奥に進むと、真っ白な扉があった。
 沼津の説明通りであれば、この先には白いドロップゾーンがあり、そこにクァイドがいる。
 これまでの作戦が功をなしていれば、クァイドはここまでたどり着けた者がいることを知らずに、この扉の先で高みの見物をしているはずだった。
「……開けるぞ?」
 沼津の説明の中に、このドロップゾーンに関する説明はほとんどなかった。隠れられる場所があるのか、他のドロップゾーン同様にここにも従魔はいるのか……それらのことを確認するため、和頼は少しだけ扉を開いて中を覗いた。
 そして、銀色の巨大な蛇を確認する。クァイドの姿は扉の隙間からでは見えなかった。
「なんかでかい蛇がいんだけど」
 和頼と一緒に扉の中を覗いた和馬が言った。
「大蛇……か。なるほど、こいつが最後の守護者、か!」
 豪も扉の隙間から大蛇を確認する。
「ニシキヘビとかはピット器官とかいうので熱感知するらしいケド……コレもそうカナ?」
 希の言葉に和頼は「かもな」とうなづく。
「それと、此処はBS付与持ちの敵ばっかだ……コイツも何かあるかもしれねえ」
「あるとしたら……牙か目か尾の先か、てトコ?」
「可能性は高えな……」
 和頼が花火に火を点火してドロップゾーン内に放り込むと、蛇はちらりと一瞥し、少し身をくねらせて花火から離れた。
「……あの反応じゃ、ピット器官を使ってるのかわかんねーな」
「それなら……」と、一二三が大蛇の目の前を飛ぶように九陽神弓で矢を放つ。
 大蛇は反応を見せない
「視覚よりもピット器官で確認している可能性が高いか」
「まずはオレが行くよ。厚手で体温がわかりにくい服を着ているから」
 一二三がそっと扉の中に入ると、蛇はそれを目で追う。
「え? 見つかった?」
「あー!」と一二三は大きな声を出しそうになる。
「頭や!」
 厚めの衣服は外気と同じ温度だが、頭をカバーするのを忘れていたため、蛇には顔のところはしっかりと赤く見えるのである。
 引き返すべきか、このまま突っ切るべきか思案し、蛇の赤い目と目があった瞬間、一二三の動きがぴたりと止まった。
「……どうした?」
 蛇は特に何か攻撃する様子はないものの、一二三の微動だにしない止まり方に違和感を感じて和頼は思い切って駆け寄った。
 一二三は和頼に反応することなく、じっと蛇に視線を向けたままである。その口が微妙に動いているが、何を言っているのかはわからない。
「……何があったんだ?」
 和頼が不思議に思って蛇の方を見、そして、次の瞬間、自分がどこにいて、何をしているのかがわからなくなる。
 ただ、わかるのは、目の前に絶望があるということだけだった。

 幼い頃に放された両親の手、顔をしかめる施設の大人たち……理解者などなく、己も必要とは思わずに生きてきた……彼女と出会うまでは。
 希は、まさに和頼の希望だった。
 わかったような説教などせず、大袈裟に嘆くこともなく、希はただ和頼の存在をそのまま受け入れていた。
 そんな希望が、今、和頼を否定する。
 顔をしかめ、『どうした?』と伸ばした和頼の手を弾く……放された真っ白な手。
『お前もか……』
 希望を失い、和頼は我を失う。
『ああああああああああああああああああああああああああ』
 激しい慟哭の中、希に伸ばした右手は硬い拳を作り、己自身に振り下ろされる……
 次の瞬間、天の声が聞こえる。
「バカ和頼! 幻覚なんかに惑わされてんじゃないわよ!!!」
『……誰だ?』
 姿なき声に、和頼は眉間にしわを寄せる。
「私の声も忘れたの? この短時間に? 本当にバカね」
『うっせーな! 姿見せろ!!』
「私の姿を見たかったら、幻覚になんて惑わされてないで、その目をしっかり開けなさいよ!」
 その声は、希望をくれる。
「私は、あんたの全てを受け止める者よ!! さっさと戻ってきなさい!」

●愚神クァイド
 強い声と希望の言葉に、和頼は意識を取り戻した。
「へぇ。ジャミーラの幻覚からこんなに早く目覚めた人間、初めて見たな」
 ジャミーラと呼ばれた大蛇の幻覚が解けた和頼の目の前に、真っ白なマントで全身を覆った愚神がいた。
「……お前が、クァイドか」
「氷、炎、水……それぞれで苦戦しているから、随分とヨワッチィのが来たと思ったら……君たちはなかなかずる賢いみたいだね」
 和頼が武器を構えると、クァイドは笑う。
「勇ましいね。でも、その体で戦えるの?」
 余裕を見せるクァイドの前に豪が立ちふさがる。
「俺は闇を打ち払う赤色巨星! 爆炎竜装ゴーガイン!」
 豪の名乗り口上にクァイドが一瞬キョトンと間抜けな表情を見せる。
「クァイド! 貴様の野望もこれまでだ!」
 情報収集には長けているものの、戦闘能力がミーレス級並みのクァイドは、豪の姿にスススッと蛇の背後に隠れる。
「悪いけど、僕は相手ができないんだ」
 彼ら個人に対する情報を従魔を通して収集できているならまだしも、全く情報がないため、クァイドには戦いの準備ができていない。
 和頼がクァイドを追おうとしたが、大蛇からの狼狽がまだ残っているようで、動悸が激しく、体が重い。
「くっそ……」
 自身にクリアレイをかけようとしたが大蛇の尾が動くのが見えた。
 尾に弾かれると思い、歯を食いしばった和頼の前に豪がオロチを構えて立った。
「和頼は早くクリアレイを!」
 蛇の尾を豪がオロチで弾きかえす。
 クリアレイをかけて体が動けるようになった和頼は、まだ幻影から覚めていないらしい一二三にもクリアレイをかける。
「……ここは?」
「白のドロップゾーン……まだ大蛇の横だ」
「え」と、一二三が大蛇の顔を見ようとしたのを、和頼が止める。
「バカ! また幻覚を見たいのか!?」
「……あれは幻覚だったのか……」
 炎に全てを奪われる光景……幻覚でよかったと、一二三は息を吐いた。
「奇しくもオロチ対決だな……かかって来い!」
 豪は大蛇の目を見ないように注意しながらオロチを振るい、動けるようになった一二三は無形の影刃で、和頼は死者の書を用いて大蛇に向かう。
 三人で大蛇を引きつけている間に、和馬はクァイドに近づくための策を練る。
「流石にこの状況で潜伏は厳しいか……」
 一二三と和頼の異変に豪と和馬は慌てて白のドロップゾーンの中に入ったため、クァイドは和馬のこともしっかりと確認している。
 しかも、この空間には隠れられる場所がない。そんな状況で潜伏を使っても効果はないだろう。
「俺氏に良い考えがあるよ」と俺氏が助言する。
「和馬も大蛇との戦いに参戦しなよ。んで、攻撃を受けて吹っ飛ばされて倒れ伏し、無力化したように見せかける……伏したまま機を窺い、敵の意識が自身から外れたと判断したら潜伏を使ったらいい」
「なるほど……」
「あ」と、俺氏。
「でも、蛇にはピット器官があるから、潜伏を使っても動いたらすぐに反応しちゃうかな?」
「熱源感知か……それなら、マントが使えるかもしれない」
 和馬は海神の斧を振り上げて大蛇に飛びかかった。
 途中、一二三が「ちょ……鹿島氏はん!?」と声をかけたが、和馬はウィンクして意図があっての行動であることを伝えようとした。
「……鹿島氏はん、ウィンク下手やな」と、一二三は小さくつぶやく。
 幾つもの傷を負っている蛇の尾に和馬は斧を突き立てる……そして、予想通り、尾は大きく振られて、和馬の体は吹き飛ばされた。
「鹿島氏はん!」
 一二三が叫んだ。何かの意図があってのことだとはわかっても、仲間が派手に吹き飛ばされればやはり慌てる。
「くっそ!」
 和馬が吹き飛ばされた状況に、大蛇対応班の攻撃は加熱する。
「……」
 その戦況を見て、クァイドは一歩、あとずさる。そこにロングショットのスキルを使って放たれたフェイルノートの矢が飛んできた。
 今まさに自分がいたところに刺さった矢を見て、慌てて踵を返して逃げようとしたクァイドの真後ろに和馬が立っていた。
「……なぜ」
 氷のドロップゾーンで寒さを凌ぎ、水のドロップゾーンで濡れたため一旦しまっていたフードマントを再び纏い、和馬は潜伏を使ったのだ。冷えて濡れたマントは、大蛇のピット器官を見後に欺いた。
「逃すわけにはいかないよ」と、俺氏が和馬の口を動かす。そして、それが、スマートフォンで繋がっている氷のドロップゾーンにいる二人への合図にもなった。
 クァイドは逃げようとしたが、次の瞬間、強い光と大きな声によって行動を妨げられた。それは、氷の妖精に向かって放たれたオリヴィエのフラッシュバンと征四郎の声によるものだった。
「てめぇは……ここで終われっ!!」
 和馬の斧が振り下ろされるのと、マーシィがストライクのスキルを使って放ったフェイルノートの矢がクァイドを射抜くのは同時だった。
 最後にクァイドは氷の妖精を通して、ガルーの言葉を聞いた。
『聞こえてるか総大将。全部知ってなきゃ気がすまねぇ、それがお前さんの敗因だ!』
 クァイドは真っ白な灰となり、消えた。

●最後までドタバタ
「クァイド討伐完了!」
 豪からの朗報を受け、各ドロップゾーンにいたエージェントたちは一気に従魔たちの殲滅を始める。
 拓海と金獅は早々に熱帯魚を片付け、白のドロップゾーンへ向かう。しかし、その途中、海藻の影に隠れていた最後の一匹に金獅がキスをされ、眠ってしまった。
(ええっ!? 今っ!!!?)
 拓海は思わず声を出しそうになり、慌てて手で口を塞いだ。
 水流に流されそうになる金獅の体を捕まえて、モスクに入ると、水のない空間で呼吸を整える。
 拓海がその体を揺すると、金獅は意識を取り戻した。
「……あれ? 今、寝てた?」
 従魔に襲われた割にはのんきな金獅である。
「一二三たちはまだ戻ってこないな」
 拓海と金獅は白のドロップゾーンに進み、巨大な蛇を見つけた。
「拓海、蛇の目見たらあかんで!」
 拓海を見つけた一二三が助言する。
 助言に従って、二人は蛇の目を見ないようにしながら周囲の状況を確認した。
「花火で何を?」
 和頼が花火をつけているのを見て、拓海は声をかける。
「まとまった火があれば、ピット器官をくらませることができるかもしれない」
「それなら、これも使って」
 拓海は余っていた花火を和頼に渡す。
 花火をまとめて点火したため、もはや花火というより松明である。それを大蛇の前にほうり投げると、大蛇が怯んだ。
 その隙をついて、エージェントたちは一斉攻撃を仕掛ける。

「リュカちゃん、ちょっと冷やさせて!」
 そう言って千颯が氷のドロップゾーンへ飛び込んできた。よく見ると尻尾が小火を起こしている。
「どうしたの!? それ!!?」
 氷の妖精を倒し終わり、オリヴィエと主人格を入れ替えたリュカが聞いた。
「ちょっと油断して……」
「炎の狼にでもやられたのですか?」
 征四郎に火を消してもらい、細かい氷をハンカチに包んで尻尾にあててもらいながら、んーんと千颯は首を横に振る。
「炎の狼たちを倒しあげて、ちょっと休憩しようと柱に背中をくっつけようとしたら、柱が炎の柱だったんだよねー」
 千颯がカラカラと笑うと、その脳内で白虎丸が叫んだ。
「痕になったらどうしてくれるんだ! でござるよ!!!」

 大蛇を倒し、エージェントたちは全員、無事にベルバルネザル・ドロップゾーンから脱出した。
 和頼は煙草を吸い、スキットルの酒を煽った。
「……暫く休みてえ」
「バーカ! まだ始まったばっかっしょ!」
 希がスキットルを取り上げると、和頼は不服そうに睨んだが、その内面ではあの幻影が幻影であったことに改めてほっとしていた。
 内部ではクァイドの首だけを狙い、影をひっそりと潜めて行動していたマーシィは体を伸ばす。
「三流役者程舞台にしがみつく、その見苦しさが三流に貶めてるって事に気付きもしねえんだからな」
 マーシィの言葉に不可思議な放浪者はまじまじと彼を見る。
「なんか今回の皮肉屋は随分舞台を強調した感じだねぇ」
「……テメエの外見と口調が演技がかってるからなんだがな?」
「いやぁ、わかってたけどちょとボケた……」
 ぐっと拳を強く握ってみせると、不可思議な放浪者は青ざめ、そして後ずさった。

結果

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MVP一覧

  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
  • 駄菓子
    虎噛 千颯aa0123
  • 救護する者
    麻端 和頼aa3646
  • 空の英雄
    飛岡 豪aa4056

重体一覧

参加者

  • 願うは目覚め
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|30才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|12才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|9才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|32才|男性|バト
  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086
    機械|20才|女性|防御
  • ワイルドファイター
    金獅aa0086hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • 駄菓子
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • 我ら、共に戦い歩むため
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト

  • 弥刀 一二三aa1048
    機械|21才|男性|攻撃
  • 聲を聞く者
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • シャークハンター
    荒木 拓海aa1049
    人間|27才|男性|防御
  • 白銀の君
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 救護する者
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 信心の歴を探究せし者
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • エージェント
    “皮肉屋” マーシィaa4049
    人間|22才|男性|回避
  • エージェント
    “不可思議な放浪者”aa4049hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 空の英雄
    飛岡 豪aa4056
    人間|28才|男性|命中
  • 正義を語る背中
    ガイ・フィールグッドaa4056hero001
    英雄|20才|男性|ドレ

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