本部

夜の水族館、デートプラン!

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
6人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/07/18 15:02

掲示板

オープニング

●水族館からの依頼
 巨大な色鮮やかな熱帯の小魚が泳ぎ回る水槽。ここでは小魚の餌やりも行われる。
 幻想的な青白い光に包まれた館内を進んでいけば深海魚エリアに差し掛かり、その奥にふよふよと綺麗に光り浮かぶクラゲエリア。
 更に名物とも言われる長い水中トンネルは頭上をエイが泳いで行き、様々な種類の魚たちが悠々と視界を埋める。
 館内から外に出れば可愛らしいペンギンの群れや水の中を元気に泳ぐアザラシ、定番のイルカショーなど、海の動物たちに会うことができるのだ。
 普段は昼間のみの開館であるが、この夏、新しい試みとして「夜間のデートプラン」という企画が持ち上がった。
 その企画のモニターとしてH.O.P.Eから是非エージェントに参加をお願いしたい、とその水族館から依頼が入ったわけだ。

 というわけで、息抜き企画の一環として参加者を募集している。
 水族館が今後実地予定のデートプランを回ってもらう簡単な依頼だ。
 デートプランと銘打ってあるが性別は問わず恋人同士でなくても構わないそうだ。
 プランで決められたルートを回った後、感想を提出してもらう。

●デートプランのルート
 時刻は夜7時頃から。
 1.館内散策(自由行動)
 2.イルカへの餌やり体験
 3.星空の下、ライトアップイルカショー

解説

●館内について
 ごく一般的な水族館。
 熱帯魚の水槽では自由行動の時間、餌やりが一度だけ行わる。
 名物として長い水中トンネルが存在し、夜間のデートプランでは限定の幻想的なライトアップが施されている。
 ※OPに書かれていないエリアでも一般的な水族館にあるようなエリアであればプレイングに書いて頂いて構いません。

●イルカへの餌やり体験
 イルカへ餌をあげることが出来ます。
 また、イルカと握手、イルカからのキスも望めば体験できます。

●感想文について
 水族館で存分に楽しんで頂くため、文字数を考慮してプレイングに記載しなくて構いません。

リプレイ


 夜の水族館デートプランのモニターは指定された時間内に館内に入場、その後、パンフレットとプランスケジュールが書かれた紙を渡され依頼開始となる。
 水族館入り口でテンション高く声を出しているのは、四人で待ち合わせをしたうちの一人、桐ケ谷 参瑚(aa1516)だった。口調とは裏腹に表情筋は殆ど動いていない。
「後は若い二人に任せて、我々は行きましょうかねーILの兄貴ー」
「あァ、そうだなー。俺たちもすげー見たいモンあるしなー!」
 それに答えたのはIL(aa1609hero001)。二人の陽気なそれでいて胡散臭い雰囲気が醸し出される中、残りの二人、巳勾(aa1516hero001)と灰原 薔(aa1609)は顔を見合わせた。
「ふーん……ま、いいぜェ、要は趣を楽しむモンなんだろう?」
「デートプラン……でしたっけ。その、男二人というのもあれかもしれませんけど……い、行きましょう、巳匂さん……」
 参瑚が仕切っていることに疑問を抱くものの、それよりも自分の隣でデートと言う言葉を意識するあまりぎくしゃくしている薔に目を向ける巳勾。
「あー、喧しいガキだが世話は任せるわ、IL。んじゃアお先に……おいで、薔」
 そう言うと巳勾は薔の手を取って他の二人から離れ、水族館の奥へ向かう。薔は一瞬びくっと肩を跳ねさせたが巳勾に促されるまま共に幻想的な空間へと足を踏み入れた。
「エージェント桐ケ谷、追跡を開始するッ」
 それを見送るやいなや参瑚はサングラスを装着、ILにアイコンタクト。ILは眼鏡を改めるように掛けなおし、参瑚に向かって相槌を打つ。抜き足差し足忍び足、巳勾と薔の追跡を開始した。
 そんな参瑚の後姿を目撃していたのは十影夕(aa0890)だった。
(やばい、桐ヶ谷がいる)
 と、内心焦り、一緒にきていた桜寺りりあ(aa0092)を、それとなく参瑚が向かった方とは別方向に誘う。ここに来ていることを同級生に知られるのがなんとなく照れくさくて、できれば顔を合わせたくないのだ。
「俺、クラゲ見たい。りりあは?」
「やっぱりイルカさんは外せないと思うの……餌をあげる事ができるみたいだし、もしかしたら握手とかも……」
「後、寝てるペンギンとかラッコ見れるかな……」
 少しそわそわとしながら提案する夕に、うきうきとした様子で返すりりあ。二人で頭を寄せ地図を見ながら相談し合うもいつもより距離が近づき、やや会話がぎこちなくなった。
 その横を通っていくのは水族館が初めてで少々興奮気味の氷月(aa3661)とシアン(aa3661hero001)。
「わー! 中々綺麗ですわね~!」
「ちょっと、感動した……」
「楽しむとともにちゃんと情報収集ですわよ~?」
「うん、分かった。」
 今日は一緒に来れなかった大切な人とのデートの為の調査が目的の氷月。しかし水族館が初めてなので少々興奮気味のようだ。彼女はぐいぐいとシアンの腕を引っ張りクラゲエリアへと移動する。
 初めて見る青白く水の中で揺れている傘のようなゼラチン質の生物を凝視して氷月が「これ、何……」とシアンに問いかけた。
「何のとは分かりませんが、クラゲですわよ~」
「クラゲ? 味は? ……食べれるの?」
「一部は食べれるそうですが……えっ?」
「えっ?」
 食べられるか、と聞かれて何とはなしに答えたシアンであったが、まさか氷月が食べるのか、と驚いた顔を向ける。すると氷月は予想外という感じで目を瞬かせた。
「二人とも!」
 そこに声をかけたのは知り合いのレイラ クロスロード(aa4236)だ。本来目が見えない彼女は英雄のブラッド(aa4236hero001)と共鳴することにより光を得られる。だから今はレイラ主体で共鳴をしており、「わぁー……写真じゃなくて本当に生きてるお魚さんだ……」と水族館を大はしゃぎで楽しんでいた。ただ、一人で巡っているが故に周りで他のモニター参加者が和気藹々と話しながら参加している様子を見て段々と孤独感を覚えてもいた。その折、知り合いの姿を見つけたので一緒に館内を回らないか、とレイラは声を掛けたのだ。
 レイラの申し出を快諾し、三人は話をしながら水族館の水中トンネルへと足を運ぶ。
「でっかい生物が……いる!」
「確かここの名物トンネルですわよね。エイまでいるのですね~」
「たべ……」
「……今日は魚ですわね、氷月。」
 氷月が先ほどと同じようなことを口走る前に、シアンが今日の夕飯の話をした。そんな和やかなやりとりをしている二人の横でレイラもトンネル全体から見える様々な魚を楽しんでいたが……。
「あ。あれなんてお魚さんなのかな……とっても綺麗……ねぇねぇブラッド! あれ見て見て! とってもき……」
 泳ぐ魚を見てから振り返り、そのあとに曇った表情を見せていた。振り向いた先に目的の人物がいなかったのだ。
 先を行き、はしゃいでいる氷月と英雄とのやりとりを見てより一層、瞳の寂しさの色が深まる。
「……隣にブラッドがいないと……つまんない……」
 友達と居れば孤独感が薄れると思った。けれど逆に孤独はどんどん心を侵食してくる。レイラは唇をきゅっと結ぶと、共鳴を解除した。
「ブラッド、一緒に行こう!」
「あぁ、はしゃぎすぎて周りに迷惑かけるなよ、お嬢」
 隣に現れたであろう自身の英雄に顔を向けるレイラ。ブラッドが優しい表情で彼女を見下ろす。レイラの表情は明るさを取り戻していた。
 そんな様子を観察していたのは、詩乃(aa2951hero001)。デートというものを知らないため、他のカップルを参考にしようと周りを見ていたのだ。
「夜の水族館ですか。そういえば、こうして、のんびりとするのも久しぶりですね」
「そ、そうですね! 蛍丸様」
 黒金 蛍丸(aa2951)は上へと向けていた視線を詩乃に下ろした。初めての水族館というドキドキと蛍丸とデートというドキドキが重なって大きくなった胸の音が蛍丸に聞こえてしまわないかと更にドキドキする詩乃。水中トンネルの上部の水中から降り注ぐ幻想的で美しいライトアップが蛍丸を照らす。詩乃は蛍丸から視線を逸らし、水中で身を揺らし優雅に泳ぐエイや熱帯魚を見つめた。静かな空間が二人を包む。
 その一方で息抜き企画として来た波月 ラルフ(aa4220)とファラン・ステラ(aa4220hero001)も水中トンネルに差し掛かっていた。
「お前こっち来て日が浅いんだし、見て学べ」
 などと来る前にファランに行っていたラルフだが内心は
(張り詰めてて危なっかしいから、お前には息抜きしてほしいんだが、そういう事にしとく)
 というファランを気遣ってのものだった。
「ラルフ、彼らはここに閉じ込められて不自由はないのか?」
 ずっと館内を巡ってきて思い浮かんだ疑問をファランがラルフに投げる。見ていて和むが彼らは籠の鳥と同じではないか、と少し感傷にふけっていたのだ。
「彼らじゃないんで解らないが、彼らを知るにはこういう場所も必要だろう」
「……そういう考えもあるだろうが、彼らの仲間は喜ぶのか?」
 返ってきた答えに再度問いを重ねるファラン。
「彼らの仲間に何かあった時、何も知らなかったら、助けてやる所か事態を悪化させる事もあんだろうし、知っておく事で助ける術を見つけられる事もある」
「私にはそう思えない」
 ラルフの返答に不満げにファランは答えた。ラルフはそれにふっ、と目を細めて穏やかに笑う。
「ファランはいい奴だな。頭撫でてやる」
 そして優しく彼女の頭を撫でた。びっくりしてファランは目を見開きラルフを見上げる。
「何をする! 私は子供ではない! 甘える様な年齢でもない!」
 慌てて捲し立てるとすぐにラルフの手は引かれる。
「子供扱いするな? バーカ。子供でいさせて貰える時は甘えとけ。俺は子供の頃からある意味大人だったが子供でいさせて貰ったがな」
 その表情はどこかもの悲しげだ。こいつは何が言いたい? と訝しんだ目をファランが向けると、ラルフは肩をすくめて歩き出した。その後をファランが追う。
 二人の頭を撫でているやりとりをじっと見ていた詩乃の心臓の鼓動が早くなる。デートの一部に見えていたからだ。その時、彼女の手に温もりが触れる。
「迷子になると大変ですからね」
 手をぎゅっと握る蛍丸に詩乃は表情を緩ませて頷いた。
 人が水中トンネルに集中している頃、クラゲエリアは夕とりりあの独占場だった。夕とりりあは館内を一通り周った後、クラゲエリアに戻ってきていた。夕が立ち止まっては先が気になるりりあが引っ張ったり、と楽しく水中トンネルで魚を見たり、寝ているペンギンやラッコを見たりしてきた。その間、可愛らしいワンピースにポシェット、サンダルを履いたりりあ、しかもいつもはツーサイドアップ部分をお団子に纏めている彼女の隣にいることで夕はとても緊張をしていた。
 しかし、館内を探索し終えた後の夕からはソワソワとした雰囲気も消え、最終的にクラゲコーナーの神秘的な造りに夢中になっていた。
「クラゲのエリア好き。静かで暗くて、冒険みたいな感じ」
「冒険みたいだし、神秘的な雰囲気もあって素敵なの……ですよ」
 同意してくれる彼女を夕は静かに見つめた。二人で仲良く、揺らめき神秘的に色を醸し出している世界を楽しむ。ここは、さながら二人だけの海月の惑星なのだ。


「あ、この赤と白のしましまのやつ、何かの映画で見たやつと同じだなー」
「アー、それはなんつったかな……俺もあんま魚は詳しくねェんだわ。」
「この青いやつも!」
「熱帯魚だから基本日本じゃ見ないだろうが……こういうのも記念になるかねェ。」
 尾行、をしっかりするのはもちろんだが参瑚とILも何だかんだと水族館の魚達を見て楽しんでいる。見失わないようにちらちらっ、と前方を確認することは忘れない。
「こういうのは、案内見るまでも無くお前ェさんの方が詳しかろうな」
「……いいえ、それでも僕の知識は本の域を出ません。」
 そんな彼らの視線の先で水族館をゆっくりと二人で巡る巳勾と薔。案内などは見ずに、端からおもむろに見ていく。人も少ない空間は静かで、二人の会話が弾んだ。
「どうよ、本で見るのと動いてるンは、また面白みも違うかい?」
「こうして実際のものが動いているのを見るのは……すごく、新鮮です。」
「好きな生き物とかあるかよ?」
「僕は……あの子が好きです。悠々と泳いで、愛嬌のある……ウミガメ」
 巳勾の質問に視線を揺らめかせ、ある一点で目を止め、それを指差して示しながら薔は少し笑みを零した。
「俺っちはなァ……うん、海老なんぞは食う方が好みだが」
 顎をさすりながら水槽覗き込み、海老はいなかいかと探す巳勾に薔も一緒になって水槽の中に目を凝らす。
―― イルカの餌やりのお時間です。ご希望の方は園内のイルカのお家までお越し下さい――
 その時、イルカの餌やりのアナウンスが流れた。行くか。と目で巳勾が合図し、それに薔も頷く。
 イルカの餌やりは外のイルカショーの近くにある室内で行われる。係員専用と掲げられた階段を上り、プールを見下ろせる広い空間に出る。
 一番手は近くに居た巳勾と薔だった。係員が横に立ち、顔を出したイルカが二人を見ている。
「イルカってのは随分賢い生き物らしいね。ま、人懐っこいってな悪い気はしねェもんだ」
 先に餌をやってイルカの鼻先を撫でてやり、巳勾は一歩下がって薔へと視線を向ける。
「お前ェさんもやってみな、薔」
「さ、触って大丈夫なんですか……? え、あ、あの……」
「身ィ乗り出し過ぎて、プールに落ちんじゃねェぞ」
 くっくと喉を鳴らして笑う巳勾に、ふぅっと深呼吸をして魚を持った手を伸ばす薔。イルカはきゅいっと鳴き声を出しながら、薔の手から魚をぱくり。少しおっかなびっくりで引け越しになりながらも、巳勾と同じように薔はイルカの鼻先を撫でた。イルカはくるりと背中から海にもぐって一回転をして喜んでくれる。
「よし、よくできました」
 本や写真とは違う実際の手触りにどきどきしている薔の背中を巳勾はぽんぽんと撫でた。イルカの反応と彼の手の暖かさに薔はほっとする。
 次に餌やりに来たのはラルフとファラン。ファランがイルカに餌をやりながらイルカの口先に手が触れてくすぐったがっているのをラルフは写真に収める。
「握手するんじゃなかったのか?」
 ラルフの言葉に頷いて、係員の補助の下、ファランは頑張っているイルカたちと握手する。その瞬間をしっかりと写真に収めるラルフ。
 その横で詩乃のビクビクしながらイルカに餌をあげようとしている。
「怖がらなくていいよ」
 と蛍丸が詩乃を宥め、二人で魚を掴んで一緒にイルカへと餌やりをする。イルカは喜んでプールを泳いだ。
「はやくはやく」
 っと、お姫様抱っこをブラッドにしてもらってはしゃぎながらレイラがやってきた。氷月とは見る場所が違うため、途中で別れ二人でやってきたのだ。
 イルカからの握手とキス希望とのことをブラッドが係員に告げている。レイラは目が見えないが、ブラッドが責任を持って補助するというので係員も快諾してくれた。
「イルカさーん……美味しいご飯だよー」
 ブラッドと一緒に魚を持ちながら、レイラはイルカへと話しかける。イルカは素早くレイラから魚を受け取ると、その手にタッチをした。そして、プールに乗り出しているレイラの頬にちゅっと音を立ててキスを送る。
「わわっ……ブラッド! 私イルカさんにキスしてもらった!」
「だな、よかったな、お嬢」
 嬉しそうにはしゃぐレイラを隣で微笑ましげに見守るブラッド。水中トンネルで暗くなっていたレイラが嘘のように明るく、楽しそうにブラッドに話しかけている。レイラにとってブラッドは隣にいるだけで安らぎを与えてくれるのだろう。
最後に夕とりりあがやってきた。二人は先に一緒に来れなかった英雄達へのお土産を買う為、買い物をしていたのだ。
 購入してすぐのアナウンスだったため、到着して待つ途中、りりあは夕に色違いのクラゲのストラップを手渡した。
「はい……お揃いなの、ですよ」
「ありがと……鞄につける」
 英雄も喜ぶだろうな。と思いながらも夕自身嬉しかった。
 そして、目の前にイルカがくると餌やり開始。イルカに餌をあげてから、りりあは積極的に背を撫でてみたりする。するとイルカからお返しにりりあの頬へキスが送られた。
「とても、とても可愛いの……夕さんも餌をあげてみて、下さい」
 触れあう事が出来て嬉しくてしかたがない様子で夕にも勧めるりりあ。
「かわいいね、イルカ」
 夕も近くで見られて嬉しくじっと眺めていると係員にイルカと握手をしましょう、と促され手を伸ばす。イルカのヒレが夕の掌に乗る。
「不思議な感触……」
 ふとイルカのヒレが離れた掌を見て夕は零した。


 イルカの餌やりに参加せず、共鳴をしレイラ達と別れペンギンのエリアに佇む氷月。いや、今は氷月、シアンとは違うもう一人の人格ジーヴルだ。
「じー……可愛いわね」
 数十分間、しゃがんでただただペンギンを眺めている。夜のペンギンは立ったまま寝ているが、寝そべって腹這いになり愛嬌があるものもいる。そこへアナウンスが流れた。
―― イルカのライトアップショーのお時間です。外のイルカショーまで起こしください――
 このアナウンスは館内全体に流れ、それまで魚を見ながら談笑していた参瑚とILが顔を上げる。
「……って、巳勾達見失っちゃうじゃん! ILの兄貴ー何処行っ……」
「お、何か雰囲気変わっ……だっ、おま!」
 慌ててイルカショーまで駆けて行き二人を見つけると、ILが目で参瑚を制した。そこにはイルカショーを眺める巳勾と薔の姿。
「あァ、いいねえ……夜空にイルカが踊ってるみてェだ」
「星空の下……なんて、考えた事もありませんでした。」
 星とイルカの輝きをじっと捉える薔。その銀色の瞳を、隣に座っている巳勾が覗き込んだ。
「こっちにも星が映って……悪くねェ」
「え、あ、い、いいえ、そんな事は、別に……」
 巳勾の言葉に慌てるも、薔も同様に巳勾の金の瞳の中に見ていた。星とイルカ。ドルフィン星座とでも言うべき輝きを。
「んん? 気を悪くしたならすまねえ。趣きある物は愛でたくなる性分でさ。今日は楽しめたかイ? 帰りに土産でも買ってやろうか」
「はい、えっと、今日は本当に有難うございます。お土産は……ふふ、イルカのぬいぐるみがいいです。参瑚くんにもで、二つ」
 そんな二人を影から見守り、笑顔と星空をデジカメにパシャリと収めつつ参瑚は呟いた。
「二人共何となく楽しそーな? ちょっと心配してたけど、安心したっつーか」
「そーさなァ……何というか、外であいつが笑ってんの珍しいわ。ある意味、お前さんにも感謝しとかねーとな」
 ILがけらりと笑って参瑚の頭にをぽんと撫でた。
 晴れ渡る空に幾つもの星が瞬きその下で行われるイルカのライトアップショー。誰もが足を運んでいた。
「イルカさんたちは凄いし、水飛沫がキラキラしていて綺麗……ですね」
「ライトアップって、どんなのかなって思ってたけど……すごいキレイ」
 と驚きながら隣にいる夕に話しかけるりりあ。それに夕も同意して頷く。二人の距離が縮まる。
「すごいです! すごいです! 綺麗ですね! 蛍丸様」
 その横で詩乃も蛍丸に興奮気味に話しかけていた。
 最前列ではレイラとブラッドが並んで座っている。共鳴している氷月――ジーヴルがレイラの隣に姿を現す。
「隣、いいかしら。ジーヴルよ、よろしく。」
 その言葉に一つ頷くレイラ。見えなくてもブラッドと友達に挟まれていて彼女が初めに感じていた孤独が嘘のようだ、と思っていた。最前列でイルカが跳ねる度にかかる水にレイラは大はしゃぎする。その様子見ながらジーヴルは目を細め。
「また一つ、いい思い出が出来たかしら。……今度はあの人と一緒に」
 視線をイルカショーに戻しジーヴルが大切な人を思いながら小さく零した。レイラのとても楽しそうな声が響き渡る。


 意外にもイルカ達が楽しそうでイルカショーに魅入ってしまったファラン。そんな彼女に帰り際、ラルフは一つ聞いてみた。
「楽しかったか?」
「……悪くなかった」
 ファランの答えに笑って「それは何より。付き合わせて悪かったな」と言うラルフに、ファランは違和感を感じていた。
(違う気がする。私に、気を遣った? まさかな。だが、イルカ達が可愛かったので、感謝しておこう)
 色々と思うところはあるもののファランはそれを自分の心に秘め、ラルフと帰路を共にした。
 レイラもショーが終わったあと、ショップへ赴き、イルカのぬいぐるみを選んで購入した。その後、はしゃぎ疲れたレイラはブラッドにおんぶをしてもらい帰っていく。
「本日の夜間の水族館はゆっくり回れて楽しかったですわ!」
「正式スタート……今度は、本当にデートして参加してみたい」
「あるとすればデート以外のプランもいいと思いましたわ~!」
 と、企画が終わり笑顔で話し合っているのはシアンと氷月だ。次は大切なあの人と一緒に素敵な思い出を増やす計画を立てている。
 他にも楽しかったという話をしながら全員が帰路へとついたとき、最後に二人だけ水族館に残っていた。
 後、十分程で閉館するそんな時間、大型水槽を蛍丸と詩乃は一緒に見ながら歩いていた。
「何故、私を恋人として見ることなく家族という形で見るのですか?」
「……元の世界に残してきた友人、家族はいませんか?」
 詩乃の問いかけに問いで返す蛍丸。
「記憶が朧げですが、もしかしたらいるかもしれません……」
 微かな記憶を辿りながら答える詩乃の瞳を蛍丸はまっすぐと見つめた。
 そして、一言一言大切に言葉を選んで話し出した。全ての異変が解決して、世界が平和になったなら元の世界に帰してあげたいこと。そうなった場合、恋人同士であったなら詩乃を悲しませることになるのではと思うこと。そして自分のために元の世界に帰れないことにはなって欲しくないこと……最後に
「家族なら……例え、離れてしまうことがあっても、心と絆はずっと変わらず一緒でいられる。そう思ったからです。でも、時が来た時、元の世界に帰るか、どうするかは詩乃に決めてもらうつもりですよ」
 それが詩乃が最初に蛍丸に問いかけた疑問の答え、だった。詩乃の中のモヤモヤが薄らいでいき、悩みが振り切れた彼女は今まで最高の笑顔で蛍丸と向き合う。
「ずっと傍にいますよ、蛍丸様。そして、これからも、ずっと、支え続けます。家族って、そういうものではないでしょうか。」
 詩乃はそういうと、蛍丸の手をとって優しく握りこんだ。そして、手を重ねたまま二人ゆっくりと帰路についた。

 後日提出された感想文からはそれぞれが楽しめたことがとてもよく伝わってくるものだった。
 数週間後、このプランは水族館の夏限定プランとして正式に採用されることとなる。
 そしてモニターとして参加したエージェント達には謝礼金と水族館の昼のチケットが送られてきた。
 夜の水族館の後に昼の水族館もどうか楽しんで下さい。という水族館側からの意向だった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • エージェント
    桜寺りりあaa0092
    人間|17才|女性|生命



  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中



  • 助けるための“手”を
    桐ケ谷 参瑚aa1516
    機械|18才|男性|防御
  • 支える為の“手”を
    巳勾aa1516hero001
    英雄|43才|男性|バト
  • ドルフィン星座
    灰原 薔aa1609
    人間|25才|男性|防御
  • エージェント
    ILaa1609hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト

  • 氷月aa3661
    機械|18才|女性|攻撃
  • 巡り合う者
    シアンaa3661hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 密やかな意味を
    波月 ラルフaa4220
    人間|26才|男性|生命
  • 巡り合う者
    ファラン・ステラaa4220hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 今から先へ
    レイラ クロスロードaa4236
    人間|14才|女性|攻撃
  • 隣の安らぎ
    ブラッドaa4236hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
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