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誰もいない町
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【相談】敵を屠り尽くせ
最終発言2016/07/10 13:43:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/07/09 16:52:40
オープニング
「まるでバーチャルリアリティ空間みたいだな……」
1人の上級エージェントは苦笑しながら少し忌々しそうに言う。上下の歯をギシリと鳴らす。
その途轍もなく整った今は誰もいない町と化してしまった場所は関東南部に位置するかつては隆盛を誇っていたそれなりに活気のある町だった。
ある日、プリセンサーが起動しそこにやって来たエージェント達は驚いた。
それは今までとは比べものにならない程の従魔の数。それもミーレス級と、デグリオ級が中心となってまるで世界の終わりの様に人々を襲い、喰らい、そしてやって来たエージェント達にも容赦なく襲い掛かってきた。
最初は何かの間違いかと思ったが、あまりのその数、そして地獄絵図に肉体的にも精神的にも支障をきたしたエージェント達は劣勢を強いられた。まるでどこかの部族同士の小さな紛争みたいだった。故に、中には精神的に錯乱し、逃亡を図るエージェントの姿もあった。
それから数カ月後――町は姿形はそのままに全ての人々が消え失せ、しかし荒廃する事なくそのまま残った。
「どうします? 誰もいないんじゃ、調査する必要なんて無いんじゃ……?」
若い新米のエージェントは不思議な気分に浸りつつも言う。
「いや、これは異常事態だ。これからこの町には悪魔が住みつくだろう」
「え……!? それってどう言う事ですか?」
「俺は……実はあの時の事件の生き残りだ。つまり、精神が乱れて逃げてきた者の1人だ。……エージェント失格だな」
「……!」
息を詰めた新米エージェントは思わずその上司を見遣る。
「だからこそ、俺はここにまたやって来た。事件の全貌を推し量る為にも、ここで死んでいった仲間達の為にも」
そしてフッと苦笑し、続ける。
「いや、すまない。失言だった。これは単なる自己満足だ。お前もそう思うだろう?」
「そ、それは……でも、さっきの悪魔って言うのは? 何でこの町はまるで何事も無かったかのようにして綺麗に残っているんですか?」
「この町のどこかにいる親玉は従魔では無い。愚神だ。そいつは情報によれば数ある従魔を従える事の出来る強力な愚神らしい。そしてそいつはこの町を拠点として愚神と従魔だけがいる街の創造を建設する等と謳っている」
「ま、まさか」
「そう。そのまさかだ。彼等は定期的にこの町を我が物にしようと企て綺麗に温存する術を覚えた。まるで人間の進化の過程。衣・食・住の環境を整える歴史の始まりの様に」
それはそこにいる愚神の知能の高さを物語っていた。そしてその計画は今まさに実行に移されようとしている。
「この状況を伝える事が出来れば……俺もあの時逃げてきた甲斐があったってものか」
しかし、その時だった。
「――な!?」
新米のエージェントが目を白黒させてある方角を指差した。その先には空中に飛来する一匹の愚神の姿があった。
「親玉のご登場か」
「ど、どうするんです!?」
「お前は早急にH.O.P.E.東京海上支部に戻ってこの事を伝えろ。俺は奴と一戦交えてそれまで食い止める」
「で、でも!」
「人数は最低でも10人以上は必要だ。これからこの町は悪魔の巣窟と化す。とにかく早くするんだ。それともこのまま2人して犬死にしたいってか!?」
「わ、分かりました!!」
解説
今回はジャンルこそ戦闘ですが、久々に大人数になりそうです。誰もいない町。そこを根城にした従魔。そして親玉の愚神。
内容的にはハチャメチャな戦闘を楽しんでもらいたい。町は広いので各地で大暴れなんてのもアリアリです。
大人数を予定しておりますので、それぞれが別行動して支援、救助、そして殲滅を目的とすると良いかもしれません。
出来れば冒頭の2人のエージェントを助けるまたは報いる様な頑張りも期待しています。
それでは皆様のプレイング&参加を期待しています。
リプレイ
●
「戦闘ストレス反応……?」
『肯定だ。戦場は多大なストレッサ―だ。撤退も仕方があるまい』
「まあ、そうね。この光景を見て、私にも納得できたわ」
『広いマップに沢山の敵って言うと』
「なんだか無双ゲーみてぇだな」
『それじゃ、きちんと救出イベントもクリアしないとね』
「ま、俺等だけじゃねぇし、なんとかなんだろ」
事前準備としてまず動いたのは鬼灯 佐千子(aa2526)そしてリタ(aa2526hero001)だった。
あの新米エージェントから最新の現地情報を入手したリタは加えて現着までの間にオペレーターへと現地の地図や航空写真の入手・皆のスマホ等への転送を依頼。
そして現着した今、鹿島 和馬(aa3414)とその英雄俺氏(aa3414hero001)と合流。和馬のスキル『鷹の目』による情報と突き合わせて整理。
「ゲームみたいに視界端にミニマップでもでりゃ楽なんだが」
『バカ言ってないで鷹を飛ばしなよ、和馬氏』
和馬と俺氏の行動方針は支援+殲滅。既に最初から共鳴状態を維持。
彼等の事前準備はライヴス通信機による情報共有と数カ月後に色々あった土地なので情報は纏めているはずと予測。
現地到着までの間に本部から町の地形情報を入手しておく。
スキル『鷹の目』を使用し、上空からの偵察で愚神や従魔、2人のエージェントの位置等を把握する様に努める。
鷹が被弾しない様、敵の攻撃が届かない高さを保ちつつ偵察。
入手した情報は、分かりやすい様に事前に入手した町の地形情報と合わせて、ライヴス通信機で味方に連携。
そしてその情報からリタは敵の配置や主要路、役場等の位置から愚神と上級エージェントの現在地を特定、最低限の戦闘で目標へと到達できそうな経路を設定。
佐知子とリタの最初の台詞はこの様な状況下、つまり――誰もいないはずの町――における大量の従魔達の存在に圧倒されての事だった。
情報の優先順位は先行しているエージェント、次点で愚神、最後に従魔。
従魔は数も多い為、細かい情報を省き、密集箇所やその集団の移動方向等を伝える事で情報伝達の効率化を図る。
スキルの効果時間一杯までは継続。
『目標の座標とルートは把握したな?』と、こちらはリタ。
「それじゃ、ちょっと行ってきましょうか」もちろん佐知子も頷く。
●
「無人の町に愚神と従魔の群れか、このまま愚神達の拠点を作らせるわけにはいかないな」
そう呟きつつ町の中を駆け抜ける月影 飛翔(aa0224)はパートナーのルビナス フローリア(aa0224hero001)と共にいた。
既に町の地図を頭に叩き込んでいた2人はまたもやミーレス級とデグリオ級が蔓延るこの――誰もいないはずの町――にて外縁部から町の中ほどまで侵入。
そこから敵の目を引きながら外縁部まで後退。惹き付けた従魔を殲滅後、再び侵入と後退を繰り返していた。
その狙いは従魔を引き付け、愚神へ向かう味方へ敵戦力の減少と殲滅を図る事にあった。
「相手の数が多い。闇雲に突っ込むだけだと飲み込まれるな」
『少しでもこちら側に引き付け、随時殲滅していきましょう』
侵入時はなるべく見つからない様に、壁や家の中など潜伏しながら進んでいた2人は、町の中程でわざと見つかる様に何体かを撃破。そこから外縁部へむけ移動。
その際、大通りなど通り易い道を選択。時折、裏通りなどに入り一気に襲いかかれない様な場所で間引く。
戦法は『スラッシュブーメラン』で中距離、間合いを詰めて『バンカーメイス』で撃破。
それ程、従魔の数は多かった。
事前準備として現場の地理。つまり町の地図を確認していたのはなにも飛翔とルビナスだけでは無かった。
そう。『誰もいない町』の話を聞き次第、共鳴して現場に急行したのは他でもない大宮 朝霞(aa0476)とニクノイーサ(aa0476hero001)だ。
彼女等の目的は現場に残ったリンカーの救出。
「聞いた、ニック! 仲間のピンチを見過ごすわけにはいかないわ!」
『まぁ、朝霞ならそう言うだろうとは思っていたが。大丈夫か? 大量の従魔がいるのだろう?』
「とりあえず、現場に行ってから考える! 変身、ミラクル☆トランスフォーム!」(ビシィ)
英雄と共鳴状態になり『聖霊紫帝闘士ウラワンダー』(自称)に変身。
急を知らせてきたリンカーから、現場に敵の足止めに残ったリンカーの位置を聞く。
ライヴス通信機で現場に残ったリンカーに呼びかけ、現在位置を把握する。
「とにかく、味方の位置を確認しないと」
『1人で残ったのだろう? 通信に応答できる状況ではないかもしれないぞ』
早速ライヴス通信機を発信。あの囮となったエージェントとの接続を試みる。
ザーと言うノイズが混じりつつもなんとか通信機は繋がった様で。
『何の用だ!? こっちは今、交戦中な――ぐ、ぐああああ!!』
受信中にやはり戦闘をしていたのだろう。その隙を狙った愚神からの攻撃を浴びたのか、悲鳴が聞こえてきた。
そしてそこで通信は途絶えた。
「ニック! 不味いわ! 早くしないと……!」
『このままだと、もう1人犠牲者が増える。急がないとな』
「ちょっと待って。他のリンカーともこの状況を教えないと!」
そして朝霞とニックは別行動の味方へ通信機を発信した。
●
行動は主に支援。多くの従魔の引き付けによる『救助』の援護を行う2人のリンカーの姿があった。
鬼子母神 焔織(aa2439)と青色鬼 蓮日(aa2439hero001)だ。
『おーコイツはまた、ひっどい有り様だな焔織ぃ!』
「エェ……全く……『末法の世』とはよく言ったモノで……マルで、未来の縮図のヨウで……オソロしいでスね……」
『冗談じゃないぞっ! こんな世の中で子供が生きていけるかぁ! さっさと済ませてボクは子供の耳タブをハミハミしたいぞッッ!』
それこそ冗談とも本気とも取れない蓮日の発言に対して、静かな口調で焔織は言う。
「……アトで……煩悩をハラいに行きまショウか……滝行にシマしょう」
『ふぁ!?』
事前に町の見取り図を良く見ておいた2人。
この『誰もいない町』は予想以上に広く、綺麗に建築物も残されていた為、ある意味やりたい放題だった。
彼女等の立ち回りは他『支援』前衛と協力し敵の引き付けと撃破だ。
敵の『勝機、自由、命』を『奪う』事を意識し、攻撃と移動を中心に戦闘を行う。
「……従魔に愚神よ……多くのモノを奪ったのデスね……中には子らもいたのデショう……ソレも此処まデ。その命……『奪う』……ッ!」
数多の従魔達が蔓延る中、基本ロケットランチャーを構え、発射する。
――グオオオオオオ!
強烈な爆破音とともに従魔の悲鳴が夥しく響く中、彼女等は味方の背をカバーしつつ周囲の敵数を逐次仲間と伝え合っていた。見事な連携だ。
ロケランの効果は大きい。この広い町の中、一気にそれも複数で襲ってくる敵を圧倒するには多くを巻き込むロケランが適していた。
だが、デメリットは周囲にある建物や味方の巻き込みに最大限注意する事にあった。正に集中力との格闘。勝負。そしてそれがいつまで保てるかにあった。
その為、敵を固める様曲がり角等々へ誘引。移動は敵の少ない方へ行う。
「飛んで火に入る、夏の虫……『発破』行きマス……!」
屋外へと出た焔織。それを合図とみなした彼女はロケランを容赦なく発射。またも轟音が響き渡る。
もちろん建物損壊を防ぐ為、従魔に当てる。周囲の建物把握は既にリサーチ済み。
従魔は確実に減っていた。
焔織と蓮日の予想以上に派手な戦闘に一緒に参加していたのは志賀谷 京子(aa0150)とアリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)だ。
「オーダーはサーチ・アンド・デストロイってところかな?」
『京子、敵は単純に脅威ですよ。決して油断しないよう』
「アリッサ、大丈夫だよ。わたしには頼りになる英雄様がいるもの」
『――おだてても何もでませんからね』
一緒に参加していた――と言うよりも仲間の陽動にありがたく乗せてもらっていたと言うのが正確な所だ。
彼女等の目的は愚神の足止めを狙いに行ったエージェントを援護する事。それを目指していた。
状況はよく分からなかったので、自分達の強みである確実でそれなりに威力のある遠距離攻撃を十分に活かす。
離れた位置から一体ずつ堅実に潰していく。
『ゲリラ戦ですね』
「耐久力はないしね、ヒットアンドアウェイで最大限にイヤガラセしなきゃ」
町中は基本屋根の上を移動、愚神や従魔に不用意に近寄らず移動を優先。
やむを得ない状況下におかれた時には素早くシフト変更。弓の最大射程からの一撃でワンショット・ワンキルを狙い、撃った後は位置を変える。
2人はエージェントの元へと屋根伝いに急いだ。
唯一、能力者1人で参加していたのはエリヤ・ソーン(aa3892)だった。
「救助と支援と討伐ですね。承知しました」
事前にライヴス通信機『雫』で連絡を取り合う事を仲間達に伺いお互い情報伝達出来る様に準備していたエリヤ。
彼女の心情と作戦。それは――
3手に分かれて救助に向かう側と、従魔達を潰しながら愚神へ向かって討伐する側などに分かれて行動する皆の案に従う事。
だが、単純にそれだけでは無かった。
その作戦に対して自分も策を弄したのだ。
つまり、自分は『守るべき誓い』で従魔達を仲間達の望む方向へ引き寄せる事で仲間達が救助や愚神討伐をしやすくなる支援を表明。
――仲間達はこれを認めた。
そして今、ライヴス通信機『雫』で遠くにいる仲間達に応答を行う。
「どの方向へ従魔達を引き寄せればよろしいでしょうか?」
答えが返って来たのは愚神の親玉が君臨している町の中心部から周囲。つまり東西南北の円形上にアーチを創る形だった。そこには従魔がうようよいたのだ。
「なるほど。敵はこの際、多いに越した事は無いよね」
その方角へと主武器『アガトラム』を掲げて敵の攻撃を防ぎつつ仲間の指定した方角や位置にダッシュで駆け抜ける。
その際、彼女は焔織の助言を思い出していた。
それは出来るだけ多くの従魔達を引き寄せ救助や愚神への到達を支援出来る様努力する事。
シンプルだが、命の危険が伴う作業。
そして彼女はまた走り出す。『守るべき誓い』を発動するタイミングを推し量る様にして。
●
一方、リーラ・フェルマ(aa4044)とノウェ(aa4044hero001)はこの状況下においてもマイペースだった。
「さーて、仕事だ。飯の種を稼がないとねえ」
『此処に何か面白いことでもあるわけー? もう結構寝ていたい気分』
「たまにはやる気を出しな。ほら行くぞ」
思いっきりノウェの襟首を掴んで連れ出したのは従魔がうようよ蔓延るこの――誰もいないはずの町――の片隅での出来事。
町の高い所。主に屋根やコンクリートの塀伝いに上り、敵の数や分布、押している押されている所の把握に勤しむ。
今回の任務の基本方針。それは無茶はせずに戦いは手練れに任せる事。
何せこれだけ敵の数が多いのだから状況把握に動く人間がいた方が良いだろう。
先行していたエージェントからの情報は気掛かりだが、彼は今の所恐らく愚神と戦っている。ライヴス通信機での通信も不可能であった。
そこで何か活かせる情報はないかと模索していた所だったが、それは代わりにH.O.P.E.東京海上支部に急いで戻ってきた新米エージェントが答えてくれた。
今回はどうやら前回と同様。従魔が蔓延り、町全体を覆い尽くす様に大量に出現していた。しかしエージェント達が苦戦を強いられたのも2つの理由があった。
それは――
・町の人間達を囮に使っていた。
・愚神は戦闘に参加しなかったが空を飛べるので全体的な陣形を整えるのに大いに役に立った。
つまり今回は愚神が空から指示を飛ばす事もなく、人質となる一般人もいない。これを活かすのが鍵だ。
だが、とにかく敵を減らさないと戦況は変わらないから支援重視しつつ敵の殲滅を目的としたのだった。
『あー、ねえねえ僕退屈』
「まったく口の減らない奴だねえ。ちょっとは前線で戦ってみな。アイツとかいい動きしてるだろ?」
リーラが指摘した人物は、主武器『アガトラム』を持って敵を蹴散らしながら疾駆するエリヤに対してだった。
『それはやだなー。僕見るの専門。みんなが活躍するとこ眺めてる方が向いてるよ』
根の悪い奴じゃないんだがどうにもこの英雄は口が減らない。少しでも変わればいいんだが。
「……異様な雰囲気、だな……」
『丸ごと町が空っぽとか、楽しくなさそー』
「そう言う問題、じゃない」
町一番の高所へ陣取っていたのはレイ(aa0632)とカール シェーンハイド(aa0632hero001)だった。場所はこの町の市庁舎の屋上。
「『イイ眺め、ってなモンだな』」
早速、共鳴した2人は主武器のスコープで敵位置を確認。俯せになり、『スナイパーライフル』を構える。
どうやら従魔の群れは愚神を中心として周囲を取り囲む形となっている様だ。ライヴス通信機で仲間達へとその敵位置把握と位置詳細を伝達する。
愚神に対しては各攻撃時の予備動作を記憶、その後の戦いに活かす。
「『見せて貰ったぜ? 確りと』」
――その時だった。
「『うおっ!?』」
射程圏内。それもかなりの至近距離に敵が出現。従魔とはいえ油断していた。遠距離攻撃で狙撃していた間に敵からも位置を把握し狙われた様だ。
相手はデグリオ級の従魔。さすがにデグリオ級ともなると頭のキレが回る。しかしそこは焦らず落ち着いてクールに武器を『ライトマシンガン』に持ち替える。
「『ヴィバーチェに踊って貰おうか』」
すぐさまマシンガンを連射。フルオート狙撃で敢え無くデグリオ級従魔を撃ち落とす。上からの射線で攻撃したのが功を奏した。
敵の増援は無いかとまだ、『ライトマシンガン』を構えていたが、それは杞憂に終わった。
二度と同じ醜態を晒さぬ様に、なるべく日光を背にして、目眩ましと射線からの自身の位置を隠す。
「『まだまだこれからだぜ』」
リンクしたレイとカールは不敵に笑う。
●
「倒す相手に困らない戦場か」
『報告にはありませんでしたけれど、ドロップゾーンとしては機能していないようですわね』
「まぁ、吸う相手がいない場所だしな。ならば故人曰く、因果応報って奴をきっちり判らせてやろう。行くぜ!」
『これはこれは、獲物がわらわらいっぱいおるのじゃ』
「町ひとつ分の従魔と愚神一体か……これは狩りがいがありそうだな」
『まったくじゃな。腕の振るいがいがあるのぅ……わくわくしてきたのじゃ』
「まずは先行してるリンカーの救出からだからな」
『分かっておるのじゃ、さっさと助けて鏖殺タイムじゃ。色々な殺り方を試すいい機会じゃ』
愚神討伐組としてあの上級エージェントの元へと急いだのは、赤城 龍哉(aa0090)、ヴァルトラウテ(aa0090hero001)、リィェン・ユー(aa0208)、イン・シェン(aa0208hero001)だった。
特に龍哉とリイェンはタッグを組んで行動。現地へ突入し、これまで好き勝手やっていた愚神の撃破及び、上級エージェントの救出を目指す。
しかし目的地に急いではいるものの、やはりこれでもかと従魔が襲い掛かってくる。
「これだけわらわらいるとさすがに邪魔だな」
リイェンは少し自嘲気味に言った。
だが、他の仲間達は既にこの――誰もいないはずの町――の各地に集合し、確実に従魔を仕留めている。それ故、自分達の役割も決まっていた。
「うおらぁ!!!」
自らの手でもしくは斬撃波で敵を行動不能にしつつ前進しているのは他でもない龍哉だ。
今回の任務は数ある従魔を倒すよりもキレモノとも言える従魔達の頭領。愚神を倒す事が何よりも先決だ。その方が効率が良かったのである。
だから数多の従魔に止めをさす事はせず、素早くライヴス通信機で仲間達とコンタクトを取り、後は彼等に任せた。
龍哉とリイェンの戦法は、互いの死角をカバーしつつ適宜連携。
どちらかがブラインドとなって相手の抑え込みをしたり、前方にいたほうが敵の動きを封じ、隠れていたほうが攻撃を加える等、見事なコンビネーションだった。
また、敵の集団を見つけたら2手に分かれて、挟撃。タイミングを合わせて『怒涛乱舞』を使用。一気に殲滅し、蹴散らす。
敵の咆哮や悲鳴が各地で鳴り響く中、2人は黙々と進んでいく。
『……こんな大群の敵、何処から湧き出て来たの?』
「我ながらどうかしているな……こんな状況なのに己が凡庸だと感じられて安堵している」
御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)の目的はまず、あの新米エージェントに上級エージェントと別れる前に示された愚神の方角を聞き出す事にあった。
しかし新米エージェントは余程焦っていたのか、H.O.P.E.東京海上支部にてこの編成された部隊を前にあれやこれやと論じたものの、決定打に繋がる愚神の方角は聞き出せなかった。
つまり愚神の方角は見ていなかったと思われる。少なくともその余裕は無かったのだ。
だが、方角は期せずして他のエージェント達からライヴス通信機で割り出せた。情報を提供してくれたのは最も町の全景が見渡せる位置にいたリンクしたレイとカールだ。
方角が分かったので敵陣に吶喊を掛ける。
「邪魔な敵が多いな。こうなったら……」
敵に囲まれた恭也はすぐさま手加減なしで『ドラゴンスレイヤー』で蹴散らし威嚇。怯んだ隙を見て冷静に『白虎の爪牙』で切り裂き止めをさす。しかしその間にも敵は増殖。すぐまた取り囲まれてしまう。
「やはり」
恭也が危惧していた事。それは各地で散らばったエージェント達とは違い、自分達は町のど真ん中で奮戦していると言う事だった。
他のリンカー達は高所、あるいは町の地形を頭に叩き込み、工夫して相手を外側から攻防を繰り広げている。
だが、それに対して自分達は周囲から攻め込まれる主に内側から不利な状況で戦っている。そして、この時恭也が取った行動は――
「こっちだ」
民家内部へ侵入する事だった。目指す方向か敵の少ない道の壁に穴を開けて通り抜ける。
通り抜ける際、民家を崩壊。従魔達が追って来れない様に対処した。
『恭也、無茶しすぎ!』
「この町が放棄されてから数カ月が経っている。どこからも苦情は来んよ」
『そう言う問題じゃないの! ……って、なんで笑ってる!?』
「ああ、まるでお前と出会った時の様な状況だと思ってな。自分が愚神達を狩る化け物じゃない、狩られる人間だと感じられる。だから、己の力と知恵と技術を駆使して立ち向かう事が少し楽しいんだ」
『もうヤダ~、この戦闘狂~』
こうして2人はすぐさま愚神のいる方角へと迫っていった。
●
愚神の正体――それはやはり巨大な翼を持ったまるで西洋のドラゴン。ワイヴァーンの様な出で立ちだった。
そして情報通り、愚神と真っ向から対決していたのはあの上級エージェントだ。しかしすぐさま救援部隊が各方面から集ってきた。
龍哉、ヴァルトラウテ。恭也、伊邪那美。京子、アリッサ。リイェン、イン。朝霞、ニクノイーサ。レイ、カール。佐知子、リタ。
ここにいないリンカーは主に各地で増殖し、暴れている従魔達の殲滅へと勤しんでいた。
「喰らえ!」
早速、相手の間合いに入り援護&牽制の斬撃葉を飛ばしたのは龍哉だった。しかし、相手の愚神はその翼を器用に使い、ひらりと舞い上がった。
攻撃はかわされたものの、愚神の注意を引き付けるのには十分だった様で。相手のワイヴァーンは鋭い瞳でこちらを見据える。
「さて、ようやく本番だ。全開で行くぜ! ここは俺らに任せろ。一旦下がって態勢を立て直してくれ」
「……た、助かった。一時はどうなる事かと……」
上級エージェントは九死に一生を得た。それに対し京子は明るい声を掛けて弁当を投げ渡す。
「待たせちゃった? ――あとはわたしたちに任せておいてよ」
愚神を発見した恭也と伊邪那美は既に仲間に連絡を取り、上級エージェントに手短に状況を説明する。
「既にエージェントはこの町に送り出された。各地で従魔達も殲滅されている頃合いだろう」
「そうか……助かる。やはりあの時、部下を送り込んでおいて正解だったよ。君らの様な優秀なエージェントがいれば……何とかなるかも知れん」
そう言い残して、上級エージェントは気絶した。怪我は深いが、致命傷にまでは至っていない。彼を担いでとりあえず仲間達の元へと後退する。
「標的発見……仕掛けるぞ相棒」
リイェンが本格的な戦闘へと移ろうとしている間、先程仲間との通信を終えた朝霞とニクノイーサは個人的に現場のリンカーの救出を最優先にしていた。途中で出会う従魔達は無視し、遂に合流。
「聖霊紫帝闘士ウラワンダー参上! 大丈夫ですか!? ここからは、私達が戦います!」
上級エージェントは負傷していたので『ケアレイ』で応急処置。
この町の一番高い場所、市庁舎を陣取っていた共鳴中のレイとカールもある程度の従魔を始末したのでこちら側へとやって来ていた。
ある程度、従魔の数は減っていたが武器でいなしたり、消火器で一時的な目くらまし等をして邪魔にならない程度に適宜対応。
やっとの事で愚神との果たす。
「『さて……と。ア ポコ ピウ モッソ。付いて来いよ? オレらとスケルツァンドしよーぜ?』」
威嚇射撃の様に上空にいる愚神目掛けて翼の基部を狙撃。しかし、愚神は翼を今度は素早く丸めて低空飛行。更に後ろへと退く。
そこから追撃を加えたのは佐知子とリタ。救出を行う者達へ随伴し、火力支援を行う。
戦闘での初期装備は、右腕に『ライヴスガンセイバー』。左腕に『16式60mm携行型速射砲』。左肩に『フリーガーファウストG3』。
常に遠距離攻撃に特化した武器を維持。だが、敵によられた場合は、中距離戦闘用の武器へと持ち替える。
距離を取り、『テレポートショット』で翻弄を狙う。
エージェントの退避を確認。各所から集ったリンカー達は空飛ぶ愚神ワイヴァーンと交戦開始する。
「ここで散々好き放題やって力を付けたようだが」
『この先に待つのは罪の重さに身を焼かれる煉獄と知るが良いですわ』
(犠牲になった子供がどれほどか……ヴァルの奴、相当怒ってるな)
龍哉とその相棒のリイェンは動き出す。基本はこれまでの連携戦術。挟撃等も交え果敢に攻めていく。猛攻と言うヤツだ。
しかし今回の愚神は容易に近付いて来ない。空が飛べると言う有利な状況を楽しんでいるみたいに。要領の良いそいつは言う。
「私はこの町の支配者。誰にも邪魔はさせん。だが、かつてあった様にもし私に背く様な事があれば……この勝負受けて立とうではないか」
冷静な口振りでワイヴァーンは言葉を紡ぐ。だが、その隙を見逃すはずもない。何せここには遠距離攻撃組が数人いたからだ。
敵は愚神の他に見当たらない。『弱点看破』を使用して『テレポートショット』で部位を狙ったのは京子だ。
『レインメイカー』による魔法攻撃が基本のリンク中の朝霞とニクノイーサは『フェイルノート』に持ち替え、敵を射る。
翼の破壊を狙い、飛行能力を奪う様にする。
こちらも共鳴中のレイとカールは仲間の攻撃の好機作りとして、愚神の行動は滞空でも地上でも先に観察しておいた予備動作で敵攻撃予測。
攻撃に入ろうとした瞬間に此方も攻撃する事で相殺。
各それぞれのエージェント、英雄達は奮戦し、この時まで勝利を確信していた。
――この時までは……。
●
仲間達の援護と共にこれを勝負所と見なした龍哉とリイェンは2人の『疾風怒涛』の同時攻撃でワイヴァーンを斬撃の檻に捕まえてメッタ斬り。
「俺らの前に立って無事でいられるわけにないだろう」
リイェンはそう言い、追い打ちに『オーガドライブ』を放ったのは龍哉。
「あばよ。地獄で鬼が待ってるぜ」
愚神は消えたかに思えた。
――しかしその次の瞬間、悪夢はその主を声として空からエージェント達を闇の中へと葬る。
――フフフ。やるではないか。だが、これはまだ序章に過ぎない。私はこの『誰もいない町』の真の主だ。真実と言う名の地獄を貴様等に見せてやろう――
「――な!?」
その場にいた誰もが絶句した。
愚神ワイヴァーンは残ったライヴスをフルに使い果たし、町全体にドロップゾーンを形成。
それは結界、及び呪縛となって町全体を包み込んだ。
結果、『誰もいない町』にいた人々の霊魂を利用し、強力な従魔が再び出現……!!
それは正に世界の終りを想起する様でもあった。
●
「従魔!?」
「何で!?」
「クソ! 俺達はまんまと嵌められたって訳か!?」
誰もが口々に絶望の声を上げる中――救いの手は意外な所から発せられた。
「こちらエリヤ。あのー愚神は倒したんですよね? 今こそ『守るべき誓い』を使う時なのでしょうか?」
全員に装着されたライヴス通信機に確かにシッカリとその声は届いたのだった。
●
生命力低下はチョコレートで回復しつつ、飛翔とルビナスは『怒涛乱舞』等を駆使して左右の『バンカーメイス』での殴りから突き、そして弾き飛ばしを周囲の敵へぶつけ行動を阻害。数を減らす。
「こちらの殲滅は完了した。次は別方向から再度惹き付けを行う」
「もうちょい効果時間とか使用回数とかなんとかならんもんかねぇ」
『ライヴスで鷹を作るのって結構大変だもの。仕方ないよ』
「これ以上支援出来る事も無ぇしな」
『救出は他の皆に任せてるから、俺氏達は』
「殲滅って名前の無双タイムってトコかねぇ、にひひ♪」
『調子に乗ってピンチにならないでよ?』
イメージは高難易度の無双ゲーム。共鳴中の和馬と俺氏は愚神が倒された後、再び出現した従魔達の殲滅を心から楽しんでいた。
「頭のいい愚神なんだってねえ」
『弱い奴引っ捕まえて人質に、とか。あることないこと言って油断させてくる、とか。ある意味僕の予想は当たっていた訳だ』
「ろくなもんじゃないねえ。等級も分からなかったし警戒するしかないよ」
再び集った上級従魔に対して『ウィザードセンス』や『ゴーストウィンド』を使用し、全体的な防御力を低下させ殲滅力を上げているリーラとノウェ。
「全部燃えちまいな」
敵の消耗も激しくなった。『ブルームフレア』発動。『ウィザードセンス』は切れたら再使用。
どちらにしてもマイペースな2人だった。
「そうだな。しっかり片付けて、この町を返して貰うとしよう」
龍哉はそう言い、ヴァルも無言で頷く。
『言っておくけど、一人で戦い続けるなんて許さないからね!』
「判っている。俺も其処まで戦いに酔っていない、引き際はわきまえている」
そう言ったのは、伊邪那美と恭也。
「ここまで何体倒したかもうわからなくなってきたね」
『知りたいですか?』
「アリッサはほんとマメだよねえ」
高所から狙撃。攻撃した後、素早く身を隠し1体1体丁寧に敵を減らす。それでも囲まれそうになった時には『屠剣 神斬』で薙ぎ払う様にして突破。
『それにしても大変でしたね』
「最後まで凛と戦うアリッサは戦女神みたいだね」
『さて、愚神も始末したのじゃからあとは有象無象じゃな』
「ああ……鏖殺の時間だ。一匹残らず狩り尽くしてやるぜ」
敵の阿鼻叫喚の中でどれだけやれるか……。
今のリイェンとインにはそれしか頭に無い様だった。
「無人とはいえ、倒壊させすぎるのもまずいだろうな。特に火災が心配だ」
『ナビゲートはお任せを。主の道案内をするのもメイドの嗜みです』
飛翔とルビナスは常に冷静さを失わなかった。
「従魔がたくさん。これじゃいくら倒してもキリがないわ」
愚神が倒された今、朝霞とニクノイーサは味方の回復や従魔殲滅に勤しむ。
『こういう場合は、親玉を倒すと相場が決まっているんだがな。その親玉がいないんじゃしょうがない』
2人は『ケアレイ』や『クリアレイ』を時々使用しつつ、この『誰もいない町』の復旧活動を再開していた。
「……此処は……また人が住めるようになるだろう、か……」
『当ったり前じゃん? レイ、何の為にオレら頑張ったワケ? 愚神がいるから……、だけじゃないんじゃねー?』
救急車を手配し、もう少し従魔が減れば例の上級エージェントの為に直ぐに病院へと担ごうと待機していたレイとカール。
だが、2人ともノリはそのままに緊張感がどうにも希薄なのはその性格のなせる業なのか――?
あらかた従魔が片付いた後、煤や血を払いつつそこにいたのは蓮日と焔織だ。
『いや~~スッキリすっきり! 蓮日ちゃんもハッスルして満足ぞ!』
「……その、原因が無かったら、良かったのデスか……」
藁人形を燃やし犠牲者の供養を行なう。
生命力はチョコレートで回復。愚神討伐後も気を抜かず、町全域を検索&掃討。
「敵影なし。あらかた片付いたわね」
『そのようだ。……帰投しよう』
「……ねえ。アンタ、私のこと、たまに人間扱いしてないわよね……?!」
『否定……、いや、肯定だ。ふむ、何故だろうな。サチコとの共鳴状態は妙に馴染む』
佐千子とリタは半ば冗談半分のケンカをしていた。
結局、今回の戦いの鍵となった『守るべき誓い』を使用したエリヤは、こう言った経緯があった。
近くの仲間や遠くの仲間にはライヴス通信機『雫』を使って伺いながらそのタイミングに沿って仲間達を支援できる形で『守るべき誓い』を使い仲間を支援。
自分の負傷は携帯品のチョコレートを使い回復し、鬱陶しい従魔には『ゴルディシアス』を振るい迎撃し自分の役割を維持できる様努力。
「私も少しは皆の役に立ったのでしょうか――?」
彼女の『守るべき誓い』が功を奏したのは言うまでもない。
――こうしてなんとか『誰もいない町』は守られた。本来の囮は愚神自身。町を守りたいと言う想いはある意味一緒だったのかもしれない。(了)
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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