本部

【神月】連動シナリオ

【神月】ハウリング・ムーン

鳴海

形態
イベント
難易度
難しい
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
23人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
4日
完成日
2016/06/27 19:18

みんなの思い出もっと見る

掲示板

オープニング

 このシナリオはグランドシナリオです。
 他のシナリオと重複してご参加頂けますが、グランドシナリオ同士の重複参加はご遠慮ください。

***************注意***************

 このシナリオは難易度が高く設定されており、重体、邪英化の危険性があります。
 十分に注意してシナリオに参加してください。

********************************

● 決戦の火ぶた。
 
 戦場は開かれた。ダンスホールに役者はそろい、喜劇も悲劇も踏み倒して狂乱の幕が上がる。
 カーテンフォールはない。すでに引きちぎられて、床に落された赤いものがそれだ。
 ゆえに穏便な和平も調停もあり得ず。どちらかが地に伏している場合のみ、喝采とは送られるのだろう。
 勝つのはH.O.P.E.か、それとも愚神側か。
 お互いがお互いの駒を賭け。今宵、遺跡を盤面にゲームが始まる。
 神が宿る月の夜。世界を引き裂く刃はどちらの手に渡るのだろうか。
「Aチーム、ゲイン。Bチーム退路の確保に回って」
 その戦場の一角に先に駒を送り込んだのはロクト。
 三つの斥候部隊は各班五人ずつ、それを使い、敵城を探る。
『大きな広間に出ました。こちらが短剣の設置位置かと思われます』
「ありがとう。これで地図は埋まったわね。いったん撤退しましょう」

「無粋じゃなぁ、良い夜に、興をわきまえないものほど醜いものはないなぁ」
 
 そう夜に声が響く。水晶を震わせたような澄んだ声。
 甲高く夜を突くような耳障りな声。
 その声の主は…… 
「ガデンツァ……」
 ロクトが叫んだその時だった、アルファチームの背後に突如敵が出現した。
『突如発生した従魔によって、退路を断たれました。従魔の数は三』
「撤退を優先して、ガデンツァに捕らえられれば生きては帰れないわ……」
『いえこいつら変です。なんだ、攻撃が、全く……』
『あ、あああああ。やめろ! やめてくれ。あああああ!』
「何が起きているの、報告して トニー! マイク!」
 アルファチーム反応途絶。この時ロクトは音声通信のみ繋いで斥候部隊を送り出したことを悔やんだ。
 そして己の力の過信も。
「シャドウルーカ―の精鋭部隊……。それを一瞬で……」
 その隣で通信内容を聞いていた遙華は青ざめていた。
「他のチームに撤退命令を……」
「わかっているわ……」

「残念じゃが」

 二人は驚きに目を見開く。
 その声は明らかに通信機を口に当てた状態の声だ。
 つまり通信機を奪取されている。
 そして通信機のランプを見る限り、これはBチームの……
「誰も帰っては、こんよ……」
 その瞬間、耳を覆いたくなるような虐殺の音が聞こえた。
 骨がひしゃげ、肉が飛び散り、血が噴き出して壁に叩きつけられる。
 重たい肉の塊が落ちる音。
 そして終始続く断末魔を。遙華は固く口を閉ざして、聞いていた。
「ん? お前はカメラを持っておるのか。気が変わった。お前は生きて帰るがいい。そして遙華に教えてやれ、我がどれだけ恐ろしい敵なのかを」
 最後にガデンツァは言った。
「最後に忠告しておこう、兵士よ、伝えたい言葉は慎重に選べ、後悔のないようにのう」

● ディスペア 
 結局生きて帰った斥候部隊はたったの一人だった。
 そのリンカーは涙ながらに仲間の無念を訴え、敵地の詳細な情報と、完成した地図。を渡した。
 全十四人のリンカーが個別に集積した情報を、死体一つ一つ漁りながら集め持ち帰ったのだという。申し分ない情報量だった、これであちらの地の利は消えたと言っていい。
 そして、持ち帰った映像情報と共にガデンツァの情報を伝えた。
「どうか、どうか仲間の仇を取ってください。お願いします」
 その瞬間。リンカーの胸に淡い光が灯り。苦しみ始める。
「大丈夫? どこか痛い?」
 そうふらふらと歩み寄ろうとする遙華、それを止めるロクト。
 次の瞬間、飛び散る血が遙華の頬を染めた。
「いや! 金沢!」
 胸から突き出した水晶は、肥大化を続け、そして大きな水晶の華をさかせた。 
「これが、最後の願いです。娘に愛していると伝えてください……」
 そして流れ出る水色の塊、それが寄り集まって生まれたのは水晶の少女。
 遙華は知っていた、その少女の名を。何せ見た目がそっくりなのだ。間違えるはずがない。
 ルネだ。その瞳のあどけなさなど特にそっくりで。今にも「遙華、歌っていい?」と囁いてきそうだった。
 しかしその思いを裏切り、聞こえたのは冷徹な女性の声。
「このルネは通信用じゃ、戦闘能力は持たん、安心せい」
「このルネには、喉が一定回数『振動』すると目覚めるように指示しておいた。このことはそこの男にも伝えておいたはずだが……」
「なんですって……」
 遙華は言葉を失った。
「ふふふ、最後に伝えた『言葉』が愛するものに伝える別れの歌ではなく、仲間を奮起させる詩とは、人間はようわからんのう……」
 遙華は拳を握りしめた。彼は自分の最後の一時を人類勝利のために消費したのだ。
 自分のためでも、家族のためでもなく。これから戦場に赴くリンカーのために……
 遙華は拳を握りしめ、砕かれんばかりに噛み締められた口を開く。その瞳は怒りに燃え。低く重たい音で、ありったけの怒りの言葉を絞り出す。

「あなたを、あなたを絶対に許さない!」

「ゲームをしようではないか。遙華」

 遙華は瞳を伝う涙をぬぐい、ガデンツァの声に応じた。

● ゲーム内容
 開始時間は五分後。すでに待機させているリンカー全員を導入しての攻防戦になる。
 作戦会議が開始された。
 H.O.P.E.の所持する短剣は『ティファレト(美)』『マルクト(王国)』
「こちらの駒はリンカーの半分の数の従魔、そして我。お互いにかけるのは命。そして短剣」
 この町の中心、噴水広場には常にガデンツァが待機しているという。その噴水を中心に、北エリア、東エリアに祭壇があり、そこに短剣を突き立てる必要がある。
「我はルネを使い。お主たちから短剣を奪う。しかしここでハンデ1じゃ」
 ガデンツァは自分側の短剣『イェソド(基礎)』を噴水広場にさしっぱなしにし、それを守らないと言った。
「我は、護りを捨てる、攻撃にすべてをさく。そして続いてハンデ2」

「我はこの短剣に触れられない限り戦闘には参加せん」

「もともと、我は出張してきている。管轄が違う。正直この戦いは我の目的と合致せぬゆえ、どうでもいい、なるべく体力をさきたくない」
 だからガデンツァはこの争奪戦を見守ると言った。
「じゃから、短剣に触れられなければ必要最低限の仕事しかしない。その代り」
 短剣に触れられた場合、積極的に殺しに出ることを告げた。
 そして、短剣を手にした者以外の誰かを集中的に狙い殺すことを宣言した。
「な……」
 遙華は絶句する。
「そうじゃなぁ、そのものと親しそうな物を優先的に狙おうかのう。自分が短剣を奪ったがために死んでいく仲間を見て、落涙と落命を楽しむがよいぞ」
 そう言い、ガデンツァは笑った。

解説

解説
目標 短剣を適切な場所に設置する
   ガデンツァから短剣を奪い、適切な場所に設置する。

トリブヌス級愚神 ガデンツァ。
 音と水の愚神。能力は未知数であるが、精神干渉の能力を持つようなので注意すること

● 戦場について
 敵の従魔ルネは、極めて戦闘力が高い従魔である。しかも報告によると、自己再生能力を有しているらしい。
「けれど、リソースなしで驚異的な能力を発現できるとは思えないわ」
 遙華は言った。彼女が自分たちの前に姿を見せるとき、常に周囲に水があった。
「今は枯れているはずの水路に水が満ちていることも確認できたわ、たぶんそれが彼女の力を支えている。」
 水門は東西南北に四つ。ただし、どれがあいていてどれが閉まっているかはわからない。開いている箇所が一つかもわからない。
 この水をどうにかしない限り、ルネは強大な戦闘力を行使し続けるだろう。
 それに加え、北と東。そして中央の噴水広場には短剣を突き刺すための祭壇がある。

●従魔について
「ハープス・ルネ」 (参加者の四分の一)体出現
 ハープの盾を装備するルネ。物理防御に秀で、魔法防御が低いらしい。
 自身付近の周囲360°に音波を発生させ攻撃するが、味方識別不可能。

「ホルンズ・ルネ」 (参加者の四分の一)体出現
 肩にホルンを装備したルネ。指向性の音波で長距離を攻撃が可能。物理防御が低く、魔法防御が高いらしい。

●短剣について
あなた達が短剣に触れるとその能力を大雑把に知ることができる。
ティファレト 周囲の霊力の流れをかなり高感度で知ることができる 
マルクト   大量の霊力をため込むことが可能。
イェソド   突き刺した対象の霊力を放出させることが可能。細かな霊力操作や術式の操作ができなくなる

リプレイ

プロローグ。
 月蝕みの夜、星明り爛々と輝くこの町で、短剣を巡る物語は一つの終末に至る。
 扉を開くのは希望刻みし右手か、それとも絶望走らせる左手か。
 開幕の音は断末魔と共にあり、愉悦滲む笑いが、鋭利に空に響いた。
「時間はないわ」
 そう遙華は告げる、運ばれた物資全てを手際よく確認すると必要な人間に与えていく。
「仮初の名をその胸に」
「父母より与えられたその名を胸に」
『繰耶 一(aa2162)』は『サイサール(aa2162hero001)』と手を合わせて共鳴
 誓約に誓い、戦いへの決意を抱く、そしてエンジンに日を入れた。
「あれがマルクトか……」
 豪奢な布にくるまれた星の輝き受ける短剣は溜息が出るほどの美しい。
『海神 藍(aa2518)』はその剣を手に取りいのりを捧げる
(”王国”はヒトの為の物だ、どうかヒトの群れを護り給え)
「いつも通り、負けられない戦いですね」
 『禮(aa2518hero001)』が袖を引く。
「行こう、絶望と戦うのは希望の仕事だ」
 そんな中準備が遅れている班がある、クラリスらティファレトの班である。
「ちょっと、ロクト、クラリス何をしてるのよ」
「すみません、少し手間取りました」
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』はノートパソコンをたたむ、その隣で『榊原・沙耶(aa1188)』はスマートフォンを確認していた、最終動作確認である。
「これで全員のスマートフォンの情報を同時に更新可能になりました。澄香ちゃんんの情報をもとに警戒すべき区域のカラーリングなどもすませておきましたので、これでかなり戦いは楽になるかと」
 クラリスはそう言いいパソコンを鞄に仕舞う、そして代わりに取り出したるは布。
「あとこれを渡すようにと」
「ぬの?」
 遙華は首をひねった。卸と刺繍が入っているそれは広げると体が拭けそうなほど大きい。
「バスタオル?」
「いざというときに使ってほしいと」
「へー、市販品じゃないのね。あの子裁縫好きって言ってたわねそう言えば……。でもなんでバスタオル?」
「水場に気を付けるようにと。私としてもルネを幽閉しておくべきと進言しておきますね」
「それは、私も!」
『斉加 理夢琉(aa0783)』が手を上げる。
「全てが終わった時、笑って出迎えてほしいから」
 そう理夢琉は遙華と笑いあった。
 そんな二人を見て微笑む『アリュー(aa0783hero001)』
(理夢琉は愚神と相対し養い親が殺されている。恐くない筈がない。なのに俺の心配ばかり……っ)
 今は笑っている、だがそれは本心を押し隠している表情のはずなのだ。
(俺はアリューテュスとして理夢琉を守りぬく!)
 彼はこの光景を守るために戦う決意を新たにした。
 遙華はそう、周囲の人間の意志を聞き入れ、ルネに手錠をかけて連行する。
「そうね、戦局があちらに筒抜けになる可能性もあるし、適当な部屋に拘束しておいておくわ」
 その時だった、戦場にコーンと甲高い音が連続で響き渡る、その音はソナーのように何かに反射され帰ってくる。『蔵李・澄香(aa0010)』がティファレトを使ったのだ。
「澄香ちゃんが始めたようですね、私も行かないと。」
 これがティファレトの能力だった、これを今回はルネの探索に使用している。
「あ、その前に……」
 沙耶は言った。
「ロクトちゃん、前にルネの攻撃を食らっているわよね、調べてあげるわ」
 不敵な笑みを浮かべる沙耶、だがやっていることは至極まっとうである。
 バニッシュメントによって、ロクトに従魔の気配がないか調べた。
「異常無しね」
「よかったわ」
「あ、蔵李はん、ちょっとティファレト貸してもらってもええか?」
「ええ、どうぞどうぞ」
 そう『弥刀 一二三(aa1048)』にいったんティファレトを手渡して、澄香はルネの反応をマップに記入、共有していく。
 彼はティファレトの能力を水路の水につかった、水源地や水門等にライブスの反応がないか確認しようとしたのだ。
 だが、反応はない。
 ある程度近づかなければ水門の状態はわからないのだった。
「空振りやな……、あ、キリル。ちゃんと菓子、持ったんか?」
「ああ、これだけあれば……そこまでして戦いたいか?」
 そうごっそりお菓子の入った紙袋を揺らして、『キリル ブラックモア(aa1048hero001)』は一二三に問いかける。
「戦い……難しい質問どすな」
 神妙な面持ちで黙り込む一二三に、キリルは財布を投げて返す。
 その中身を見て一二三は一瞬天を仰いだ。
「で、なんでだ」
「……誰かやるやろけど力になりたい、それは言い訳か?」
 その言葉に満足したのか、お菓子につられたのかはわからない、だがキリルの指揮は高く共鳴姿は男になれた。
 そんな一行とは少し離れたところで、チーム暁は各々の動きを再度確認していた。
 暁によく出入りする二人、だが今回の戦場は別だった。『沖 一真(aa3591)』
と『一ノ瀬 春翔(aa3715)』は手を熱く握りあう。
「……始まったか」
「やるしかない、ね」
『アリス・レッドクイーン(aa3715hero001)』は声のトーンを抑えて答える。
「隊長を頼んだぞ」
 そう春翔は一真と拳を打ち合わせた。
「ゾンビみたいな従魔に化け物じみた強さの愚神。お前が逃げたいなら今から降りてもいいぞ?」
「自分は逃げるつもりない癖にそーゆうこと言うの意地悪。とことん付き合うよ。導いてあげるから」
『月夜(aa3591hero001)』も気合十分。
 そして作戦開始時刻を回った。
 はじかれたように一斉に車両が戦場向かってかけていく。


第一章 短剣

 ティファレトの祭壇は北。マルクトの祭壇は東方向に位置する。
 それに加えて水門を締める必要があるため、ティファレト班は北西方面。
 マルクト班は南東方面に分かれて進軍を始めた。
 まず市街地は意外に広い、道幅も車二台が通れるほどの広さであり、ここが昔は大きな都市だとうかがい知れた。
 その街中を『五十嵐 七海(aa3694)』はジープを転がしている。
「惨い事する愚神だね……。私で役目を果たせるのか不安になるよ」
『ジェフ 立川(aa3694hero001)』が言葉を返す。
「萎縮しても困るが、用心する気持ちを忘れず。すべき事を一つずつこなせば何かしら積まれて行くもんだ。
 そうジェフは七海の不安を拭い去るように頭をなでる。
「うん、1つずつ、だね」
 共鳴。クラッチ、アクセル操作。二速から三速。三速から四速。
 前方の状況を読み路面にあわせアクセル開閉。ハンドルを切って加速する。
「乗り心地は大丈夫?」
 後部座席へ問いかける七海。
 彼女のジープに乗り込んでいたのは澄香、『テジュ・シングレット(aa3681)』、『小詩 いのり(aa1420)』である。
「ああ、快適だ」
 そう皮肉交じりにテジュは鷹の目を放つ。
「頼んだ」
 その鷹の目に意識を乗せているのは『ルー・マクシー(aa3681hero001)』、探索結果が返ってくるまでにテジュは周辺を警戒する。
 そのジープの隣を追走しているのは『羽柴 愛(aa0302)』のバイク。
「来たか」
 打ち合わせ通りに愛は鷹を含め全員にライトアイをかけた。
――テジュ! 見つけたあれが水門!
 たかが飛び立ち、わずか五分。さっそく水門を発見したルーだったが。
「水門はしまっているか?」
――ちょっと、待ってね。あ!
 次の瞬間、視界が途切れる。それと共に夜空に響く、ブオーッという、船の汽笛にも似た単音。
「あれはホルンの音だね」
 いのりが言う。
「敵が動き始めたんだね」
 澄香がった。
「ご苦労さん」
――残念……
 うなだれるルーであったが、今はそんなことを言っている場合ではない。
 ついに戦闘区域に入ったということだから。
「ルネだね……」
 澄香は張り切って書を構える。
「無茶しちゃだめだよ」
 そういのりは、澄香の顔を無理やりひねって自分の目をと合わせ、そしておでこを合わせた。
 リジェネレイションの光が二人を包む
「絶対無事で帰ろうね」
――久しぶりに腕を振るいましょう。ここにいる皆さんで祝賀会を。もうすでに鳥を仕込んできてしまいました。キャンセルはとても困ります。
 そう全員に告げる『セバス=チャン(aa1420hero001』。
 それに澄香は頷いた。
「生きて帰ろう」
 戦場の歌姫が歌うのは歌だけではない、彼女は生命の尊さを謳うのだ。
「作戦開始しましょう」
 その澄香の通信によって、短剣の模造品を持つもの達はわざと構えて見せる。
「ルネだ!」
 同タイミングで前方にホルンを担いだルネが出現。
「捕まってて!」
 左右に蛇行しフェイントをかけてルネを抜きにかかるが。
 突如鼓膜叩くホルンの音階。
 それはまるで脳を揺らすように直接体の奥に叩き込まれる。
「く!」
 いのりがそれを盾になって防ぐ。
「重たいなぁ」
 いのりは片膝をついた。自分でこれなら。自分よりか弱い七海やテジュ、そして澄香が受ければ無事では済まないだろう。 
 脳みそがはれ上がり内側から頭蓋を叩くような痛みにいのりは身を震わせる。
「ぬいて!」
「テジュさん!」
 いのりの号令と共に、テジュに短剣をパスする。即座に澄香は太陽すら打ち落とすと評判の弓を構える。





 ジープが追い抜きざまに放った。
 それはルネの眼球に突き刺さり。ルネは悲鳴を上げる。
 それは、いつか聞いた『彼女』の声と全く同じ声だった。
「まだまだ来ます!!」
「追いかけても来てるぞ」
 愛からの通信がとぶ。彼はジープの周囲を走りサポートをしてくれているのだが、彼から見るとルネがジープに集まっているように見えたのだ。
「ルーが西門は水門が閉まっていると言っている!」
 テジュは叫ぶ。
「データを更新。私たちは北に行きます」
 幸いなことに祭壇に近い場所。戦いが楽になる。
「ターンします。何かに掴まってください」

   *    *

 対してマルクト方面。
 こちらもルネから手厚い歓迎を受けていた。
 荷台のジープ、片方を運転しているのは一だが
音は派手に物体を破壊しながら迫るわけではなく、脳に身体に直接影響を与えてくる。
目が血走り、脳がかきむしられるような痛みが全員を襲う。
「くっそ、意識が飛びかかる」
 障害物をよけながら『荒木 拓海(aa1049)』はハンドルをきった。後部で、すごい衝突音がしたので、一つごめんと謝っておく。
「衝撃で短剣を落すなよ、緋十郎」
「わかっている!」
 そうマルクトを大事そうに抱える『狒村 緋十郎(aa3678)』
 内心面白くないのか『レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)』はその短剣を守る必死さには一切触れない。
「マルクトは渡さない、わたさないぞおおおおお!」
 そんな緋十郎に同乗者の一二三は苦笑いを向ける。
「はいはい、わかったわ、行くわよ」
 レミアはそう緋十郎の首筋に牙を当てる。眩い光が二人を包み、次の瞬間そこには一振りの大剣を握った緋十郎がいた。今回はこちらの共鳴姿である。
「氷の湖に潜り、今は乾く灼熱の地、短剣の運命に引寄せ弄ばれてる気がする」
 この短剣に縁があるのは緋十郎だけではない、拓海もなので気持ちは若干わかった。
――特別な力と役目があっても本来は人が使う道具なのに、すっかり虜で使役される側ね……
 『メリッサ インガルズ(aa1049hero001)』は皮肉を込めてそう言った。
―― せめて『自分』を強く持ってて。
「そうだね、ここまでを無駄にしない為に……」
 そう拓海はあの日の湖面に思いをはせた、呼吸を整え、ハンドルを握り直し、追従してきたバイクの運転手たちと視線を合わせる。
 隣を走るのは春翔、彼はインカム越しに言った。
「鷹の目で確認した、南の水門は閉じてる。東の水門前にはルネが張っててミニいけねぇ、けど……」
 包囲が厳しいということはあたりだろう。
「東水門までショートカット!」
「了解」
 追従するもう一台のバイク、それにのる藍は春翔に同意を返す。
「砂の海、ですか」
 幸いなことにルネの初期配置は大体わかっている。そこから相手の襲撃地点を予測することはたやすく、また鷹からの情報も相まって、敵の奇襲のほとんどを無効化できていた。
 だが、それでも避けられない敵というものはいる。
 建物の上からルネが落ちてきた。大きなハープを盾として構えている。
 ハープス・ルネだ。
 すれ違いざまにハープの音色が甲高く響く。
 ジープ内にいる全員が耳をふさいでうずくまる。
「この緋十郎、耐久力には自信があって……」
 そう平然としているのは緋十郎だけである。
「く! ホルンも出た!」
 ジープの真ん前にルネ、しかしこのまま攻撃を受け続けるのはまずい。
「俺が前に出る!」
 そうルネの前方にわざと出たのは春翔。
 その目の前で蛇行し敵の照準を狂わせる。
 そして明後日の方向に放たれる旋律。
 次いで別方面からの奇襲攻撃。
 水路から突如放たれた音波を
 ルーフ上に立った『真壁 久朗(aa0032)』がはじいた。
「また厄介な事になってるな」
――ええ、でも皆で無事に乗り越えるんです。
『セラフィナ(aa0032hero001)』の言葉に『笹山平介(aa0342)』は頷く。
「さ、気を引き締めて参りましょうか」
――えぇ
『柳京香(aa0342hero001)』と笹山はどこか楽しそうだ。
 二人はシートベルトを締め、窓からルネの攻撃を妨害する。
 ジープに飛びかかろうとしたホルンルネを銃弾で弾き返し。
 荷台のジープは最初の防衛戦を突破した。
「よし……」
 一は小さく微笑んだ。しかし。
「後ろからすごい速さでルネが追いかけてきているのだけど」 
『水瀬 雨月(aa0801)』が振り落されないように手すりにつかまりながら後部の扉を開く。
「振り切れない、誰か攻撃を」
 一はアクセルを踏み込むが、道が悪いせいか思うように加速できない。
 雨月はその言葉に頷いて、符をばらまいた。それはルネ達を巻き込む形で爆破され、濛々とたちこめる煙の向こうにルネは見えなくなった。
「追ってこない?」
『アムブロシア(aa0801hero001)』は当然その光景に何も言わない。
「そう言えばこのあたりって水路がないはずよね……」
 深追いしてこないことに理由はあるのかと雨月は思案にふける。
「見えた、祭壇」
 そう拓海が指さす方向には広場があった。
 そこからはこんこんと水が湧き出ており、手前に台座がある。
 間違いなくマルクトの模様と合致するので祭壇で間違いなさそうだが。
 ただ、祭壇の前にルネが二体いた。ハープ、ホルン。
 後ろにいたルネと合わせると、戦力的には上かもしれないが、無用なダメージを受けるだろう。
「どうする?」
「水門はすぐ先だ」
 春翔の声が響く。
 その声を受けて拓海はジープの速度を落とした。
「この通路をジープでふさぐ」
 拓海はそう、ジープを横で停車する、そして中から現れたのは一二三。緋十郎。
「真壁はん、手伝ってくれはるん? おおきに」
 そう一歩前に出ると、いつの間にか一のジープから降りていた真壁が隣に立っていた。
 追ってきたのはハープルネが三体、ホルンが一体。
 それを見つめ獰猛な笑みを見せる一二三。
「お手並み拝見や!」
 そう高らかに宣言すると、場を一二三の霊力が満たした、しびれる空気に、全てのルネの意識が取られる。
 一二三の脅威度を更新。彼にむかってハープスが突貫してくる。
「ちょろいな!」
 さらに真壁はフェイクシーカーに持ち替え。それを一二三に投げて見せる。
「欲しかったら俺たちから奪って見せろ」
「ほい」
 一二三なが投げ渡す。
 そして一二三へと向かおうとするルネに肉薄し真壁はルネをひっつかみ、その場に押し倒した。
 その手から逃れようと、ルネはハープを奏でるも真壁には全く通用しない。
 拘束されたルネを助け出そうと真壁の周囲にルネが集まり、不協和音を奏で続けているという奇妙な光景が繰り広げられていた。
 その間に一二三はホルンルネの相手をする。
「任せた!」
 そう藍はインカム越しに伝え、バイクを唸らせて水門へと急ぐ。
 しかし相手もバカではない。バイクを完全にロックオンした二体のルネが、建物を飛び移りながら接近してきた。
「なんだあの速さ!」
 並の従魔など置き去りにする速さでルネは距離を詰めつつあるが。
「おら!」
 突如現れた春翔に蹴り飛ばされ、一体が地面を転がる。
「早くいけ!」
 もう片方のルネも、建物を飛び移るタイミングで、雨月にしたから爆破されていた。
「再生しない?」
 全身ひびだらけになりながらも、大きく宙を舞うルネ、そのルネは地面に激突するとやっと体の回復を始める。
「まさか……、いえ憶測でしかないわね」
 雨月は杖に持ち替える。魔法防御力が高いと言っても先ほどのリアクションを見る限り雨月の攻撃は十分通用するようだ。
 と言っても、相手には無限大の回復能力がある。
 仲間たちは徐々に傷ついていった。
 そこでやっと。
「水門を発見した」
 藍はインカム越しにティファレト組に通達。あちらと同タイミングで水門を破壊する予定だった。
「こちらも水門まで到着」
 藍は頷くと渾身の一撃で水門を破壊した。 
「それだけじゃ」
――詰めが甘い!
 拓海はルネのマークをうまくはずし、水路に飛び込む。
「はあああああああ!」
 魔剣で水蒸気に変える。
「これでもう回復はできないだろう?」
 
    *   *

 真壁盾を構えてルネをみつめている。
 三体のルネが一緒になってまったく別の旋律を奏でているが、真壁にとってそれはあまり脅威にならなかった。
「その程度か?」
 その時だった、一心不乱に謳っていたルネの内一体にビシッとひびが入った。
「真壁はん、水門がふさがれたようや」
 そう不敵な声が戦場を包み込む。一二三が無形の影刃を水平に構え、そして剣から闇が放たれた。
 それはホルンズルネを飲み込んでいく。
「結晶を使うまでもなかったわね」
 次いで真壁の周辺を覆っていくのは黒い風。
 霞のようなそれは見た目に反してルネを、水晶の肉体を持つ彼女たちの命を削っていく。
 雨月のゴーストウィンドウは無機有機問わず朽ちさせる。
「ああ、あとは頼んだ笹山、弥刀」
 同じタイミングで笹山はホルンルネと戦闘を開始。
 その身に不協和音を受けるも、ふらふらになりながらルネを撃退することに成功した。
 一もジープを下りてホルンズ・ルネと相対していた。
「来いよ石ころ人形。夜想曲を奏でようじゃないか!」
 狙撃中で注意を引きながら別のリンカーが攻撃するすきを作る。
「中央で気張ってる仲間がいるんだよ、どけよ!」
――貴様らはここで虚無に還れ……
 そんなリンカーたちの猛攻により緋十郎は完全なるフリーとなっていた。
 祭壇を目指して進行する。妨害のためにハープが走るも。
 頭上から襲ってきた春翔に妨害されてたどり着けない。
 轟音と共に振り下ろされた刃が大地に深々と突き刺さり、衝撃でルネをはじいたのだ。
 その柄の上に器用に春翔は立ち、ルネ達を見つめている。
 そして春翔は月を見あげた。月食としては半分程度進行。
 もうほとんど時間がない。
 ただ、短剣をさすこと自体にあまり不安は感じてなかった。
 心配なのは。
「隊長……」
 
第二章 暗躍

「別に護衛なんて必要なかったのに」
 そう遙華はリンカーたちの情報を同時にききながらマップの更新や敵の予測進行ルート、次回当たった場合の対策など、情報整理に勤めていた。
 その隣に手持無沙汰そうに立っているのは
 『セレティア( aa1695 ) 』と共鳴した『バルトロメイ(aa1695hero001 )』
「敵の本陣を落すのは、兵法において定石だろう?」
 カワイイ顔をして、男っぽく話しているのは、体は成長したセレティア、中身はバルトロメイであるためだが。
 そう言うリンカーに今まであったことがなかった遙華はなんだかすこし違和感を覚えるのだった。
「まぁ、遊撃隊というか。作戦内容に組み込まれていない完全なフリーの兵士がいると不測の事態にかなり対応しやすくなるし、そう考えるとあなたのポジションはかなり有用だけどね」
 遙華は言う。
「ただ、燃衣のところに行かなくてよかったの? 大好きなんでしょ?」
 悪戯っぽく遙華は言った。
「そう言う言い方をされると気持ち悪いんだがな……」
 その時突如バルトロメイが動いた。
 傍らの大剣を握り直し、その腹で遙華を隠すように構える、すると。
 キィンと甲高い音がして、大剣が大きく震えた。
 直後二人の耳に届く不協和音。
 ルネである。
「早く共鳴しろ!」
 バルトロメイが。叫ぶと、すでにその椅子の上人はいなかった。
「もうしてるわ」
 余談だが、音を攻撃の媒介にすると厄介なことが一つ起きる。
 たいていの敵の攻撃は霊力だったり物質を介してダメージを与えてくるが、その攻撃方法の場合光や音が先にリンカーに到達する。
 そのため、音や光に反応することができれば攻撃を避けたり防御したりするのはたやすいのだ。
 だが、音そのものが攻撃手段の場合そうはいかない。
 相手の攻撃音がした時にはもう自分が攻撃を食らっているという状況になる音の攻撃は、慣れている物でないと対処は難しい。
 ではバルトロメイがなぜその攻撃を受けられたのかというと。
 彼には分かっていたからだ、あの愚神、ガデンツァはこういうやり方を好むと予想していたから。
 必ず奇襲してくると彼は踏んでいたのだ。
「バルトロメイ! 八時の方向!」
 目を凝らすとかなり遠いがホルンズルネが確認できる。
 それめがけてバルトロメイは走った。
「水瀬が妙なことを言ってたよな? 回復するにも効果範囲がどうのって」
 バルトロメイは走りながら真っ向からルネの攻撃を受けていく。
 大剣を盾にしたり、地面をきりだし飛ばして盾にしたり。
 直撃は免れてきたが、そう何度も受けられる攻撃ではない。
 そう耳から血を流しながらバルトロメイは考えていた。
「ええ、他のエージェントからもそれを裏付ける報告が上がっているわ。水路から一定の距離があいていれば彼女らは再生できない」
 放たれる三本の苦無、それを器用にルネは音ではじくが。その隙にバルトロメイはルネに肉薄。
 馬鹿でかいチューリップのようなホルンへと思いっきり大剣を叩きつけて体性を崩し。
 遙華は後ろに回って小刀で足首を粉砕した。
 次いでバルトロメイはスイープキック。首を狩るように放たれた足技で地面に叩きつけられるルネ。
 ただしそれらの傷は瞬時に再生される。
「吹き飛べ!」
 ストレートブロウである。
 その攻撃によって大きく水路から離れた作戦本部のほうへルネは弾き飛ばされた。
 作戦本部から上がる女性社員の悲鳴。襲われているわけではなくびっくりしての悲鳴なので安心してほしい。
「案の定ね」
 遙華はルネに近づくと、その四肢に苦無を打ち込んだ。
「おい、西大寺!」
 バルトロメイの声。彼が顎で指す先には水たまりが広がっていた。
「なぜこんなところに水が」
「通信用ルネも元々は水だったんじゃねぇか?」
 遙華は蘿蔔からもらったバスタオルを水たまりに投げる。勢いよく吸われた水にルネが残念そうな反応を見せた。
「ルネ……」
 遙華は通信用ルネが幽閉されていた独房の中を確認する。その中にルネはいなかった、溶けて消えてしまったのだ。
「もう、手元に置いておくなんて馬鹿なことは言わねぇよな?」
 そうバルトロメイはルネの首を落す。するとその水晶の体は水に戻り、あたりに流れ出した。
「そうね」
「提案なんだが、いったん戦闘区域から離脱するか。俺と一緒に来てくれねぇか?」
「…………」
「今回の件でよくわかった、あいつは人が嫌がることを積極的にやってくるタイプだ、そうなると俺もあいつの嫌がることをしてやりたい」
 バルトロメイはあえて遙華の肩が震えているのを無視した。
「不確定要素が欲しい。あいつは西大寺が戦場に出てくるとは思ってないんじゃないかと思う」
「…………行くわ」
 遙華はぽつりと言った。
「わたし、逃げるのやめる……」
 そうバルトロメイを振り返り見やる。


第三章 独唱

 中央広場へ向かうチームへの妨害は、いっさいなかった。
『イリス・レイバルド(aa0124)』が戦闘に立ち、あらゆる奇襲からチームを守る予定だったが、その当ても外れ、逆に釈然としない恐怖を抱きながら、前に進む。
 そんな中『アイリス(aa0124hero001)』だけはいつものようにはははと笑っていた。
「……各自、配置についてください、行動は全て打ち合わせした通り。今回ガデンツァのヘイトは僕ら【暁】が請け負います」
 『煤原 燃衣(aa2271)』は真っ向を見据えながら部隊を引き連れ進軍する。
 その両手に宿る炎が一際強く煌いた。
「煤原さん、危なくなったら、僕の後ろに下がってくださいね」
 そう『黒金 蛍丸(aa2951)』は言う。
――蛍丸様……
  心配そうにする『詩乃(aa2951hero001)』
「本当に、頼もしくなりましたね」
 そう燃衣は微笑んだ。
 そんな二人に一真は話しかけることをしない。
 無言の一真に月夜は言った。
――へたくそな演技。
 そして『玖渚 湊(aa3000)』は部隊を離れて、狙撃地点へと移動する。
『鶏肉級と相対するのは初めてだね」
『ノイル(aa3000hero001)』はどこか楽しげに言った
「トリブヌスだから!!こんな時くらい緊張感持って!」
落ち着けるようと、気を使ってくれていることは湊自身分かっている。しかし今回はそんな軽口でどうにかなるレベルの緊張感ではなかった。
 そんな若きスナイパーを見送りながら
『卸 蘿蔔(aa0405)』と『レオンハルト(aa0405hero001)』も九陽神弓 を携え。狙撃地点に向かう
――本当によかったのか? 遙華のそばにいなくて
「たぶん遙華は守られることよりも、ガデンツァを倒すことを望むと思います。それにいろいろ私もききたいことがあるのです」
 そんな二人を見送る燃衣に理夢琉が進言する。
「最初の時間稼ぎ。私が行きます」
「……えっと、危険ですよ?」
 ネイは言う。
 しかし理夢琉は首を振り燃衣に言った。
「大丈夫」
 それはアリューのくれた言葉、だから信じられる。
(私は……前世と今世両方を受け入れ「私」に育ててくれた爺やのように護る!)
 そして広場まであと少し、アリューと理夢琉は手を繋いで胸に手を当てた、そして。

「『絆を信じて、リンク!』」

 ついに一行は、この戦場の中心へとたどり着いた。
 噴水から水は沸き出でて、周囲は砂漠なのにもかかわらず花や緑が生い茂っている。
 さながらここは楽園か。
 中心に居座るのは神。
 水と音を支配せし。禍々しき神。
 彼女は浸食される月を見て一向に言った。
「始まったのう、月食が……」
――ついに会えたな……

「「ガデンツァ!」」

 怒り、憎しみ、宿敵に会えた喜び、様々な思いが混ざり合い。その場にいるもの達は彼女の名を呼んだ。

「讃えよ。我がなはガデンツァ。終止端の乙女にして。終末を奏でるもの。世界の破壊者ガデンツァじゃ」
 ガデンツァはイェソドの祭壇の前に立っていた。その不遜な物言いに、苦虫をかみつぶしたような表情を見せる燃衣。
「はい! 質問いいですか?」
 理夢琉が手を挙げて前に出た。
「よい、許す」
「私たちが、最初に出会ったルネ……」
 理夢琉は思い出す。燃衣、イリスもだ。
 みんなのことが知りたいと。この世界を守るために、日常を知ることが必要だと。話をねだったルネ。
 あの無邪気な笑みと、純粋な願いは。
「本物ですか?」
「偽物じゃ」

「お前たちはああいう存在が好きであろう? 儚く、健気で、命果てるともなにかを成し遂げる信念をもち。そして死を経過して永遠の偶像となる。人間達は好きであろう?」

「与えてやったのじゃ、心の支えとなれる存在を、行動するための理念を、意志を。そしてそれを大地に育ったお前たちの支柱を。我は大地ごと奪ってやりたいのじゃよ」 

「全ては偽物、我が与えたルネと言う幻想」

「嘘ですね!」
 イリスが叫んだ。
「それで、私たちが騙されても、気が付かなくても。春香さんが騙されないはずがない」
 イリスは知っている。
 プールサイドで彼女の漏らした本心と。思いとを。
「今日はボクたち、宿題の回答を持ってきました」
「ほう、では赤ペン先生をしてやろう」
「お前の回答なんていらない!」
 イリスは翼を震わせて両足に力を込める。
「宣言します、あなたは短剣を突き刺すことはできません、ボクが挿しますから!」
 そう燃衣の言葉が終らないうちに全員が駆けた。
 フリーガーの弾幕を展開し、ガデンツァの視界を覆う。
 その隙に蛍丸とイリスは肉薄。
「この刃の名前は鬼切丸と言います」
 そうガデンツァは蛍丸の一撃をかわしながら視線を投げた。
「あなたを殺す刃です!」
「鬼程度と一緒にされてものう」
 その二人の隙をついて燃衣が突貫。
「かんつぅ」
 そう拳を振るうもその起動は横なぎ、フックのように放たれた拳はガデンツァのこめかみへ。
 鼓膜への爆炎攻撃。
 それが綺麗に決まるも。
「こざかしい」
 地面から沸き立つ水の柱。それは甲高い音を連ね、さながら音階のように綺麗に重なり、燃衣、イリス、蛍丸を穿つ。
 いったん燃衣は距離をとり、逆に蛍丸とイリスは踏ん張って体制を立て直した。
 そこに直撃するのが理夢琉と一真の魔法攻撃。
「水晶とは魔よけの力を持つという。無知じゃのう。お主ら」
「……宿題の、答えです!」
 燃衣は叫ぶ。
 宿題とは、彼女が依然春香という人物を襲った時に、救出に現れたリンカー全員に送った言葉で。
『貴方が『偽物』で『本物』と相対したとき、あなたはその席を返還することができますか?
貴方が『本物』で『偽物』があなたの席に座っているのを見た時に、あなたはどうしますか?』
 という内容だった。
「その前に宿題の答えだ!」
 燃衣が意識を引いている間に一真はインカム越しの報告をきく。水門の発見、ルネの攻勢が思ったより強いこと。
 一真はタイミングを待っていた。短剣を奪いにかかる絶好のタイミングを
「ボクの答えは……《共存、仲間に委ねる》だ。ボクの立場では、ね」
「つまらん、それは思考の放棄と何が違う?」
「私は私の本物を護りもう1人も受け入れ本物にする」
 理夢琉が次いで答える。
「逆も然り。誰も偽物にしない! あなたとは違うわ惑わされるものですか!」
「心情面の話をしておるのじゃがのう。ではお主はできるのじゃな。自身が偽物であるという劣等感を押し隠すこと。自身がいらないとされれば捨てられてしまうための恐怖に抗うこと、それらが」
月が食われていく。時間がない
――できるよ
 そうガデンツァの言葉に淡々と答えたのはアイリス。
――私はね、具体的に自分の立場に置き換えて考えてみたんだ。
 ガデンツァの足元からの攻撃をそらしながらアイリスは言う。
――真贋に関係なくアイリスでなければ席をくれてやる理由はないよ。
 そして。
――逆にアイリスであるのならば歓迎するよ。私が2人居ても何も問題はないのだからね。
「そうか、お前は機能だけあればいいと。そして自分の感情など関係がないと、言いたいのだな! よい。いい答えじゃ! そうじゃよなぁ。自分の心情さえ抜きにしてしまえば、自分と同じ目的を持った力が増えるのは、守護者としてメリットでしかないからのう!」
 ガデンツァの守護者という言葉にアイリスは引っ掛かりを感じた。
――だが、何者でもないと言うのならば自己紹介から覚えて出直したまえ。それは君もだ、ガデンツァ。
「なに?」
 その瞬間。二発の弾丸がガデンツァに迫る。一発は肩を切り割き。もう一発は人間であれば心臓にあたる部分に突き刺さった。
「我に心臓はない。挑発か? 蘿蔔」
 蘿蔔はわざと姿をさらし、ガデンツァを見据えて言った。
「一つだけ教えてもらえませんか? あのルネさんは……あなたが作ったのですか?」
「じゃからあれは偽物だと」
「いえ、ちゃんと質問に答えてください」
 蘿蔔はガデンツァの目を見て言った。それはまるで放たれた銃弾のようにガデンツァに突き刺さる。
「あの『ルネさん』は。あなたの作った『ルネ』なのですか?」
「…………そうじゃが?」
「ありがとうございます。その解答だけで十分です」
 ガデンツァは周囲に群がる近接アタッカーすべてを水の柱で弾き飛ばし、真っ直ぐ蘿蔔を見て、言った。
「お主は殊勝じゃのう、常に心に不安を飼って負っていつも揺れておる、不安で犬に首輪をつけておくことでしか安心できぬ、しかしお主は賢い、飼い犬が手を噛む可能性もきちんと知っておる、だから安心できない。だからもっと強く束縛をする、蛇が安心はできない以後その繰り返し。苦しかろう? 我の元へくればその苦しみから解放してやろう」
「よく、しゃべりますね……」
「殺す!」
 その瞬間、放たれた港の弾丸を、ガデンツァは右手ではじく。
「全然こっちに攻撃してこないよ」
――影が薄いんだよね
「言うなよ……」
 皆とはタオルケット被りIプロジェクターで周囲の景色と同化していた。
「そんな事になったら俺達強制的に向こうの味方にさせられちゃうんじゃ」
――美味しい物食べられないならお断りだよそんなの。
「たぶんこれから異世界から来る英雄がみんな邪英にさせられて召喚されてしまうのかも
 わざわざ世界に散らばせてあった短剣を集めさせたのも向こうの思惑なんだろう」
 次の瞬間、蘿蔔と、港を襲う水の柱。
――……何故、お前は真贋に拘る? 更に問う……真贋の根源だ《生きるとは何だ?
「我に問いかけるなぞ、過ぎた真似をする。不愉快じゃ」
 優雅に曲げられた手首の先から鋭く水が噴出され、燃衣に突き刺さる。
「まだかよ!」
 一真は敵の攻撃を避けながら月を見あげた、もうすぐ月食は半分と言ったところ。
 目に見えて消耗し始めた隊員たちは、あとどれだけガデンツァにくらいついていられるか分からない。
 一真はハラハラしながら戦場を見つめていた。

 第四章 ティファレト攻防戦

「あれ、どうしようかしら」
 バイクを運転しながら沙耶は困った声を上げた。
 北エリアではルネの奇襲を掻い潜るも、いまいち水路がどこにあるかつかめないでいた。
 地図は正しいのだが、ルネの妨害などにあってうまく近づけないのだ。
 そのため少々タイミングは早いがティファレト組は囮作戦を決行することにする。
 作戦の要の一つは『カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)』
「よし、水門の位置は大まかだけど見えたみたいだな。そんじゃ、あっちゃん行くか?」
 そして『麻生 遊夜(aa0452)』
「だったらあと一か所どうなってるか確認して、必要であれば、他の水門も……か? にしても、カイ……」
 『御童 紗希(aa0339)』がバイクの中央にセッティングしたスマホと鷹の目の情報を確認しながら二人乗りで疾走する二人。
「んだよ? しょうがねぇだろ! マリが免許持ってないんだし4スト、最高時速297キロのバイクなんか俺じゃなきゃ操れねーだろ? んじゃ、行くぞ! 振り落とされんなよ!」
 そして全速力で突貫、大剣を構え真っ向からルネの防衛戦を破る戦略だった。
「こちらの手を呼んでくる。本当、趣味の悪い奴だな」
 やれやれと遊夜は頭を押さえた。
――……ん、吠え面かかせる
 対照的に『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』の機嫌はよさそうだ。
「その為にも俺らは俺らの役割を果たさんとな」
――……ん、頑張る
 ムフーと鼻息あらく、気合十分のユフォアリーヤ。そんな目立つ二人の迎撃を止めようと戦力が次々投下されてきた。
「小詩さんか、こちら麻生だが、水路付近からルネがどんどん湧いてきてる」
 眼の前ルネを華麗なハンドルさばきでカイがよけつつ。遊夜はいのりと連携をとる。
「くっそ、耳がいてぇ。しばらく何の音楽も聞きたくねぇ」
 そうカイはがなるが、気が付くと後部座席に遊夜の姿はない。
 いつの間にか彼はナイフ片手に建造物の上を飛んで歩いていた。
 その手のナイフはイメージプロジェクターで【ティファレト】に似せてあるが、その実アサシンナイフである。
「水門全部めっけたら必ずピックアップしに来るからな!それまで耐えろよ!」
「怪我しても回復してあげるからねぇ」
 カイと沙耶はは手を振り、手薄になった水門へ。
 ティファレトに似た短剣を無視するわけにはいかないのだろう。
 カイもジープも何とか包囲網を突破し先へ進むことができた。
 しかし、三体ものルネに同時につけ狙われる結果になった遊夜である。
「なんとかなるだろ」
 そうにやりと笑う遊夜は闇に溶けるように市街地へ消えた。
 一方七海の運転するジープへ迫るホルンルネ、魔導銃に持ち替えその攻撃を彼女は銃撃を見舞うことでそらした。直撃は避けられた。
 だが追手が多すぎて先に進めない。
「私が!」
 そう澄香がジープを降りようとした瞬間。
 そのルネの心臓を後ろから忍び寄った影が一突きにした。遊夜である。
「先に行け、大人にまかせておけばいい」
「ありがとうございます、麻生さん!」
「私たちはカイさんを信じて祭壇に一足先に向かおう。ダミーに反応してるし」
 いのりが叫ぶ、タイムロスが気になっていた。月はすでに半分以上浸蝕されている。
「ぶつかるぞ!」
 叫んだテジュ。全員が進行方向を見て見れば、突如躍り出てきたハープスルネ。
 縦で車を無理やり止めるつもりだ。
 ルネは両足で地面をつかみ、衝撃に備える体制をとった。
 しかし、悲しきかな彼女の足は二本。
 二本足の生き物というのは、横側からの攻撃で態勢を崩しやすい。
「あれは、俺が何とかする」
 そう躍り出てきたのは愛。バイクを加速させ、両足だけで器用に操作。盾を構え身を低くして。そして。
 ルネをその盾で掬うように引き飛ばした。
「ありがとう、愛さん!」
 ルネと愛の一騎打ちが始まる。
「水門、しめたわぁ」
 そうけだるげな沙耶の声がインカム越しに響き渡る。
 一体何があったのだろう。
「水門締めたって、澄香!」
「いっけーーーーー」
 澄香はジープに乗ったままラジエルを最大展開。とりあえずは祭壇付近の水だけでいい。そうブルームフレアを放つ。
 霧のように水蒸気があたり一帯を包んだ。
 しかしルネもバカではない、やられっぱなしではなかった。
 その霧に紛れて近づき、ジープを横っ面に殴った。
「物理攻撃!?」
 霊力で加工されていない車などこんな物だろう。そう
「あと少しなんだがな」
 干将莫邪に持ち替えたテジュは縫い止めでハープスルネの足を止める。
「二人とも、走って!」
「走って! いのり、トラップはなかった」
「物理トラップもない!」
 テジュと澄香のダブルチェックでOKが出たなら、何か脅威があるとは考えられない。
 澄香はいのりに短剣を投げ渡す。そして弓を構えると、迫りくるルネを迎撃した。
「えーい、タッチダウン!」
 そう両手でいのりは短剣を祭壇につき刺さる。
 その瞬間、眩い光がほとばしり、光の束がどこかに向かっていく。
 そして残念ながら、その光景を悠長に見守っている暇はなかった。
 あたりにはルネがいっぱい。冷や汗を流しながら佇むいのりである。
「大丈夫だよ、いのり」
 そう澄香の声と共に、大量のデフォルトクラリスミカが降り注いだ。
 そのクラリスミカ達は、ぐぎゃーと可愛らしい声を上げながら、ハープスルネを粉々にしていく。
「あとは、ルネを倒すだけだ!」
 いのりは、澄香のその背を見つめていた。
 いつのまにか彼女は強くなった、この戦場の要と呼べるくらいに。
 その姿をうれしく思うも、なんとなく寂しくも思ういのりである。
 時を同じくして、遊夜もルネに囲まれていた。
 今までなんとかダメージなしで来ていたが、三体ものルネに囲まれてしまっては逃げられない、戦うかと魔導銃に持ち替えた直後。
 街中を反響する轟音を聞いた、それはロクトの手によってモンスターマシーンに改造されたバイクの唸り声。
「あーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーーん」
 そしてカイの叫び声。
 ヘッドライトがルネを照らし。くらんだ視界のせいで回避が遅れた。
 横にした大剣によって、一撃のもとに切り割かれるホルンルネ。
 派手にガラスの割れる音を響かせて、ルネはそこらへんに散らばった。
「またせたな!」
 そう颯爽と駆けつけたカイであったが
「ちょ、待ってあっちゃん。足が届かねぇ……ゴメンだけど降ろしてくれる? 身長が40センチ縮むとこんなメンドくせぇんだな!」
 残念だが遊夜は手が離せない状況なので、沙耶が代わりにカイを下ろした。
「さて……残りを」
「始末しようか」
 大人の男二人に睨まれた二人のルネ。熱い夜が始まる。

第五章 月食 
 
 一真は焦り始める。先ほどからガデンツァへの攻撃は何度も成功しているが、彼女は決して祭壇の周囲から離れないのだ。
 それでいて、護ろうとする意志は見えないので、やはり宣言通りではあると思われる。
 しかしそうわかっていてもやりにくい。
「短剣ティファレト、設置完了」
「短剣マルクト、設置完了した」
 インカム越しにそう聞こえた瞬間、二方向から光の柱が上がる。
 やっと、やっとだ。一真はじかれたように走り出す。
 その瞬間、蛍丸と一真は同時に短剣に走った。
「ほう……」
 燃衣はガデンツァの前に立ちそして。
 顔面の前で両手をたたいてみせた。
 赤々とさく裂する爆炎。そして
「ほう、そもそも短剣を誰が取ったか分からなくする作戦か」
「…二本は刺した、後はイェソドだけだ…ガデンツァ!」
 一層熱く燃衣はガデンツァに肉薄する、その包囲から逃れようとするも二人のスナイパーからの弾丸を受けそれもままならない。
「奴をやれ!!」
 短剣が他メンバーの手にあるかのように演じる一真。
 そして、そのガデンツァを、光の束が襲う。
 イリスの光刃である。
「やる事を決めたから、やれる事を貫き通す!」
――疑心に捕らわれ、暗鬼を呼び込むほど繊細ではないのでね

「『この黄金(キズナ)は誰が相手でも染まらない!』」

「そうか……」

 燃衣は内心震えていた、次のタイミング、自分がミスをすれば勝機は一切ない。
「お前が絆を否定するなら……ボクらは絆の力でおま」
 直後、放たれたのは、矢と弾丸。そして一真と理夢琉の魔法攻撃。
 過剰なる飽和攻撃が、ガデンツァの前に並ぶ。
「な!」
 さすがのガデンツァも意表を突かれたのだろう。避けることもできずすべての攻撃が命中する。
「この!」
 水の柱が沸き立つも、あてずっぽうでは意味がない。
「おおおおおお!」
 そして燃衣の両手が爆炎を立ち上らせる。陰炎は霊力の気となり、心なしかその向こうにネイが見える。
 鬼神のごとき構え。
「今度こそ、貫通!」
――連拳!
 燃衣とネイの拳が重なる。一瞬のうちに放たれた攻撃は三度。
 無防備にさらされたガデンツァの腹部を熱し、穿ち、とかし。そして爆破した。
「がああああ!」
 そのガデンツァの背後ではイリスが待機していた。
「仲間を傷つけてあざ笑うっていうなら……そんな悪意はボクの盾で弾き返す!」
 輝きを放つ盾、それを振るう天使はライブスリッパーをガデンツァの顔面に叩き込む、そして。
「俺は、栄えある暁メンバーだっ!!」
 一真が短剣を突き出した。
 そう、短剣を握っていたのは一真だった。
 その短剣はガデンツァの胸に突き刺さる。
 その刃が滑ることがないのは、あらがじめついていた傷のおかげだった。
 さすがにまずい、そう判断したのかガデンツァは水の柱を両手から射出。一真を弾き飛ばす。しかし。
「いっけえええええ! 蛍丸!」
「「「これが、絆の力だ!」」」
 暁渾身の連携攻撃、その結果は、ガデンツァの体内から放出される膨大な霊力という形で支払われた。
「あああああああああああ!」
 悲鳴を上げるガデンツァ。
 そして、胸の部分からガデンツァは崩壊を始めた。
 支えを失い倒れ込む蛍丸。
「ははは、もう動けそうにないです」
 当然だろう。防御力の低いメンバーが終盤まで動けたのはイリスと蛍丸の回復と防御のおかげだ。
 人一倍披露しているはずの蛍丸は、腕を動かすだけで精一杯だった。
「これで、イェソド、設置完了です」
 光が立ち上る。
 これは、H.O.P.E.の勝利だった。
 短剣全てが設置され、完全なる勝利を収めた。

「見事じゃな、完全勝利ではないか」

 その言葉に目を見開くリンカーたち
 なぜ。ガデンツァはそこに砕けて転がっているはずなのに。
「なぜ、予想しなかった? 他者のコピーを作れるのであれば、自身のコピーも弦れるじゃろ」
「くそ!」
 燃衣があたりを見渡すと、噴水の水を全て纏い、そこにガデンツァが現れた。
「《イミタンド・ミラーリング》まさか、早々に披露することになるとはのう」
 そうガデンツァはリンカーたちの中心に降り立ち立ち上る光を見つめた。
「これでゲームはお主らの勝ち、よかったのう、ではゲームではない戦いを始めよう」
 冷たく響くガデンツァの声。次いで。響くのは異国の言語。
《ドローエン・ブルーム》
 燃衣も一真も理夢琉もイリスも蛍丸も。吹き荒れる風の音に吹き飛ばされ、瓦礫に激しく体を打ち付けた。
「あはははははははははは!」
 笑うガデンツァ、その背後の地面が割れ巨大なパイプオルガンが出現する。
《アクアレル・スプラッシュ》
 先ほどは音色だけだったその水の音階に歌が乗り、威力が増大。
 蘿蔔と湊に突き刺さった。
「この!」
 イリスは光刃を振るう。その攻撃を受け流し、ガデンツァはイリスに最接近。
 そしてその手を幼い体に這わせた。
「幼いながらに強い輝き、そして歌の力。なるほど、太古の精霊か。納得の力じゃ。じゃがのう。その力、お主の力だと思わぬ方が良いぞ、イリス」
 その瞬間ガデンツァは自らの口をひらき、そして甘い、甘い旋律を奏で始めた。
 それは異世界の言語、意味は分からない。だがまるで永遠の安息に導かれているような、そんな心地よさをイリスは感じた。
――いけない! 耳をふさぐんだ、イリス!
 アイリスが叫んだ時にはもう、襲い。
「シンクロニティ・デス!」
 その時、その場にいた全員が信じられないものをみた。
 特に彼女の活躍を知るもの達は、絶望を感じずにはいられない光景。
 難攻不落と思われたあのイリスが。その翼の輝きがある限り、大丈夫だと思わせる力があったイリスの、光がうしなわれた。
 イリスは全身から血をふいて。鼓膜と瞼の裏から血を流して、その場に倒れた。

「「イリス!!」」

「あああああああ!」
 突貫したのは蛍丸、イリスを掴みあげる腕を愛槍蜻蛉切で砕く。
 破片が舞い散る中二人の視線がぶつかった。
 しかし。
「お前の音色は退屈じゃ」
 次の瞬間、ガデンツァの腕の切断面から無数の杭が伸びる。
 それは蛍丸の全身に浅く突き刺さる、裁縫張りに刺された程度の痛みしかないが。 
 蛍丸は青ざめた。
 音とは物体を伝う。
 これで耳をふさぐという行為が意味をなさなくなった。
「まぁ、普通の手段でお主を攻め落とすには骨じゃ。味わうがいい。これが死じゃ」

 《シンクロニティ・デス》

 死の旋律の正体は振動。
 振動は分子まで影響を及ぼし、その結合を紐解いてしまう。
 つまりは分解、音による分解。蛍丸は今。人間という個体から、たんぱく質に戻されている。
「が! あああああああ!」
「はははははははははは」
 だがまだ動けるものはいる。
「怖い、けど……希望を託してくれた人の為に負けるわけには行かないです!」
 床に転がった弓を握り。口の中にたまった血を吐きだして、朦朧とする意識に活を入れる。
――大丈夫だ、俺がいる
 弓を握る手だけは確かに、何度も繰り返した動きをなぞるだけ。
 放たれた不退転の一撃はガデンツァの眼球へ突き刺さった。
 これは、ガデンツァ本日三度目の計算違いとなった。
「ぐあああああああああ!」
 隙が、隙ができた。
「わらわの目を! 蘿蔔!! 降りてこい、死と調和させてやる!」
 そして次の瞬間、無事な方のガデンツァの眼はいっぱいに開かれることになる。
 目の前に、全身を真紅に染めながら立ち上がるイリスがいたのだ。

――霊力を治癒力に変換――さぁ、生命を歌おうか
 
 響く音色は荘厳、翼を大きく翻し。アイリスは命の尊さを謳う。
 ライブスヒールである。
「勝ち誇るなよ……ボクたちはまだ戦える!」
「シンクロニティ・デスを受けて動ける、じゃと?」
 燃衣は動かぬ体を引きずって考えていた。
 時間を時間だけを引き延ばしてほしいと。
 味方が来るはずだから。全員は間に合わないかもしれない。だが必ず、あの大きな体を揺らして。
 来てくれるはずだから。
 そう、立った一筋の希望を待ち続ける。
 だが、現実とは無情。
「くははははははは、お主らごときに、風音、鏡音をみせて、死音まで使って、まだ一人も殺せておらぬとは。くははははは。落ちぶれた者じゃのう、わらわも。のう、おぬしら」

「わらわが、短剣を突き刺させたのはなぜだと思う?」

 次の瞬間、吹きすさぶ風。イリスはそれに耐えられず吹き飛んだ。
 地面をバウンドして転がるイリスしかし、その体に刻まれた戦闘本能か、また立ち上がる。
「まだ意識があるか……。忌まわしい」
 そして今度は水の柱がイリスを貫く。
「そのあたりに転がっている物であればすでに死んでおるぞ」
「やめてください!」
 蘿蔔は何度目か分からない矢を放つ。蘿蔔の放つ矢は、確実にガデンツァにダメージを与えているはずだ、それこそ無視できないダメージを。
 だが、ガデンツァはイリスに手をかけて笑って見せた。

――ははは、大丈夫だよ、卸さん。私はね守護の妖精と呼ばれていたんだ。ああ、本当に誰が呼んだのか全然思い出せないけどね。

―― けれど、淡く脳裏にこびりついた声があるんだよ。感謝の歌だ、皆私のために歌っていた。その声のためにも、今ここで折れるわけにはいかないじゃないか
「お姉ちゃん!」
 イリスが鋭くさけぶ。
「まだやれる、まだいけるよ。僕は僕らはまだ戦える! こんなところで」

「なぜ、なぜじゃ」
 その時初めて引きつった笑いを浮かべた。

「そうです、僕らはまだ……」
 燃衣が血反吐を吐きながら立ち上がる。
「付き合うぜ、隊長」
 一真まで、全身から血を流しながらも立ち上がった。
「ここまで数々の絶望を与えてきたはずじゃ、なのに、なぜまだ立てる? 先ほどまで絶望していたお主らが」
「立ち上がる人が、いるのに、私だけ寝てはいられないです」
 理夢琉が言った。
「く……」
 ガデンツァは焦り始める。時間もない。彼女には戦場の全ての光景が見えているが。これ以上時間をかければ自分に勝ち目はないことは明白だ。
 遊びすぎたのだ。それがあだになった。
「ふふふ、ははははは。そうか、そうじゃのう、アイリス。お主はいつでもしゅごの 盾であった、お主さえいなければアルマレグナスもわらわも他の者を皆殺しにできたものを!」
 怒り狂ったガデンツァは、鋭い視線をイリスに送る。
 そして考えた。この状況を打開できる策はたった一つだけ。
「風よ!」
 最大出力で放たれたブルーム。それでリンカーたちは吹き飛ばされるが、イリスはやはり倒れない。 
 そのイリスのそばにより、ガデンツァは囁きかけた。
「のう、イリス、わが軍門に下れ」
 蘿蔔は全身から汗が噴き出るのを感じていた。
「その守る力を、わらわのために貸してほしいのじゃ」
 しかし、しかしだ。イリスは首を振る、朦朧とした意識の中。絶対にそれだけは嫌だと首を振る。
「餓鬼が」
 ガデンツァはイリスの頬を張り倒した。地面に転がるイリスの髪を掴んで無理やり視線を合わせる。
「やめろおおおおおおお!」
 燃衣の叫び声が戦場にこだまするが、それも無視し。そしてガデンツァは謳った。
 それは、ほろびのうた。
 数多くの人が希望と謳い。形を変え世界に広まりつつある。人の願いと思いを乗せた歌。
 けれど、その歌には美しい響きこそあれ、温かみが欠如している
 そしてその歌は、いりすの心の弱い部分に入り込んできた。
「後悔しておるのか、救えなかったことを。まだ夢に見るのじゃな。ならすべてを忘れてしまうがいい。お主の敬愛する英雄のように、都合の悪い記憶を、全てわらわに預けてしまえ」
 その歌が、イリスを染め上げていく。その黄金の翼は漆黒に。その輝きは銀色に。その剣は影の属性を取り戻し。盾は外枠に刃持つ。傷つけるためのものに替わっていった。
 邪英化。
 心も体も、愚神に浸食されるその現象を、その場にいた全員が初めて見た。
「イリスさん!!」
 蘿蔔は取り落しそうになる銃を再び構えた。
 その時。
「ゆけ、イリス。ああ。遠すぎるか、わらわが送ろう」
 イリスはドローエン・ブルームを背中に受け信じられない勢いで、蘿蔔へと接近する。
「く!」
「これで邪魔者は消えた。さて次は」
 ガデンツァは、意識を失った蛍丸と、燃衣を交互に見る。
「悲鳴を聞くために蛍丸からかのう」
「ガデンツァああああああああああああ!」
「いや、イェソドを使用不可能にしてくれて助かったぞ。あれはライブスによる術式を解除する力を持ち合わせておるからのう。助かったぞ」
 そうガデンツァは再生した腕を蛍丸に伸ばすが。
 その手に苦無が突き刺さったのを見て、手を止める。
 次の瞬間。セレティアが二人の間に割って入った。
 メテオのように大地を割り着地した。
 次いで怒涛の三連撃。それをガデンツァは腕で払って止める。
「そんなわけあるか」
 バルトロメイは言う。
「だったら、最初から台座にさせばいいだけの話。これは俺たちに間違ったと思わせるための嘘だぞ。相手にするなよ」
「蘿蔔!」
 ガデンツァのもとに降り立つイリス。
「満身創痍とはいえ、遙華と蘿蔔を一度に相手にするには骨じゃからのう。いい判断じゃ。やはりお主を手ごまとしてよかったぞ」
 崩れ落ちる蘿蔔を抱きかかえる遙華。
 彼女の目はイリスに注がれてている。
「これ、どういうことよ!」
「殺せ、イリス、世界に永久に続く輝きなどないと教えてやれ」
 イリスはガデンツァの命令に――
 ケダモノめいて牙を剥き、手にした武器を振り上げた。
 仲間が敵となる。その信じられない光景に誰もがイリスの名を悲痛に叫んだ。
「ははは! かつての仲間に殺されるがいいわ!」
 さも愉快とガデンツァの哄笑が響き、イリスの武器が一閃される。
「は、は――……?」
 愚神の哄笑が止まる。その目が驚愕に見開かれていた。
 イリスの刃は、H.O.P.E.のエージェントではなく、ガデンツァを切り裂いたのである。
「馬鹿な」
 邪英化させるための技を、直撃させて。心を完全に砕いたはずなのに。
「なぜ」
 このちっぽけな人間は。
「心を保っているのじゃ……ッ!?」
 ドス黒いオーラは正に邪英のもの。聞く者の魂を戦慄させる咆哮をイリスがあげる。
 けれどその目は、その目だけは、まだ。イリスのものだった。
 彼女のライヴスは必死に抗っていた。奇跡とも呼べる所業だった。
 だがそれは、その体に、そのライヴスに、絶望的な負荷をかける行為で。
「――! ――ッ!!」
 最後の力を振り絞ってガデンツァを敵と認識し続けているイリスの言葉は、もはや言葉ではない。ガデンツァは彼女に切り裂かれつつ、遮二無二その顔を掴んだ。
「ちっぽけな人間が……二度目は耐えられまい!」
 ガデンツァの口角はもう、笑みを作るほどの余裕はなく。
 直接流し込まれる愚神の汚染。
 イリスの体が硬直して、そして、咆哮が止まった。
「くっ……。……ふ、ふ、だがこれで」
 邪英化の完遂。
「今度こそ、さぁイリスよ――」
 再びガデンツァは、冷たい瞳を見せるイリスに命令を下そうとした。
 が、しかし。
――いや、撤退した方がいいだろうね、ガデンツァ
 そのイリスは、至極冷静な様子でガデンツァに告げた。
「ほう、その心は?」
――時間切れだ。
 ひどく、冷酷な響きだった。

「当ってください……もう誰も殺させない……」

 そしてガデンツァの胸をLPCの光が穿つ。
 七海が放った弾丸だ。
「ようやく会えたなッ…!”クソ野郎”!」
 春翔は潜伏を解いて斧を振りかぶる。それはいくつもの残像を作り、ガデンツァに突き刺さる。
「隊長、……沖君……黒金君……頼む……まだ死ぬな」
 一は満身創痍の体を引きずって、ガデンツァの前に立つ。彼女自身もとっくに限界のはずなのに。
「よかろう。全員を殺してしまってもよいが。そうしてしまうと、イリスを手に入れた意味がなくなるのう」

「絶望を楽しむがよい」

 そうガデンツァは風を一つふかせ、その場にいる全員を吹き飛ばすと。町のはずれへと駆けて行った。


 エピローグ。
「そんな、イリスちゃんが」
 澄香が中央で仲間たちと合流すると、遙華にそう告げられた。
「ごめんなさい、私たちがもっと早く到着して入れば」
「それは…………」
 澄香は思う、それは私自身にも言えることだと。
「遙華これ」
 いのりは水晶の破片を差し出した。
「ガデンツァの欠片だと覆う。計画のために役立てて」
「ありがとういのり」
「欠片、十分気を付けて、ガデンツァの罠の可能性もあると思う。」
「必ず、解析する。そして連れ去られたイリスを必ず。助け出すわ」

みんなの思い出もっと見る

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695

重体一覧

  • 深森の歌姫・
    イリス・レイバルドaa0124
  • 分かち合う幸せ・
    笹山平介aa0342
  • 白い死神・
    卸 蘿蔔aa0405
  • 希望を歌うアイドル・
    斉加 理夢琉aa0783
  • 紅蓮の兵長・
    煤原 燃衣aa2271
  • 愛しながら・
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
  • 市井のジャーナリスト・
    玖渚 湊aa3000
  • 御屋形様・
    沖 一真aa3591
  • 絆を胸に・
    テジュ・シングレットaa3681
  • 絆を胸に・
    五十嵐 七海aa3694

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 想い深き不器用者
    羽柴 愛aa0302
    人間|26才|男性|防御



  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 分かち合う幸せ
    笹山平介aa0342
    人間|25才|男性|命中
  • 薫風ゆらめく花の色
    柳京香aa0342hero001
    英雄|24才|女性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命



  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 魔の単眼を穿つ者
    繰耶 一aa2162
    人間|24才|女性|回避
  • 御旗の戦士
    サイサールaa2162hero001
    英雄|24才|?|ジャ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 市井のジャーナリスト
    玖渚 湊aa3000
    人間|18才|男性|命中
  • ウマい、ウマすぎる……ッ
    ノイルaa3000hero001
    英雄|26才|男性|ジャ
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • 凪に映る光
    月夜aa3591hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
  • 絆を胸に
    テジュ・シングレットaa3681
    獣人|27才|男性|回避
  • 絆を胸に
    ルー・マクシーaa3681hero001
    英雄|17才|女性|シャド
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 生の形を守る者
    アリス・レッドクイーンaa3715hero001
    英雄|15才|女性|シャド
前に戻る
ページトップへ戻る