本部

時計塔にて

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/06/27 18:55

掲示板

オープニング

●時計塔にて
 この街には立派な時計塔がある。
 歴史を感じさせる古いものであり、この街のシンボルのようなものである。
 この街の中で一番高い時計塔は、遠くから離れていても時刻が良く見えた。どの方向からでも見やすいように、東西南北四方に時計盤が向いているのである。
 今日もゴーン、ゴーンと大きな音が鳴り響く。6時と12時と18時に、一日に三回鐘が鳴るのだ。これがこの街での生活のリズムになっている。
 余所から来た人からすると、昼と夕方はまだしも朝は迷惑じゃないかと言うが、それでもこの街で生きている人からすると慣れたもので関係ない。寧ろ、この便利さが何で解らないのだと首を傾げる程である。

 そんなある日、何年も何十年も百年を超えてもっと経つ時計塔の時計が鳴らなくなった。
 こんなのはこの時計塔が出来て以来、初めてのことだ。
 人々はこの時計を目安に生活していたものだから、朝鳴らずに寝坊する者が続出したし、昼も夕方も鳴らないことで完全にリズムが崩れてしまった。
 それどころか、その日だけでなく次の日も鐘が鳴らなかったのである。
 その為、ずっとこの時計を管理している一族に問い合わせが殺到した。
 この時計は、その家に代々受け継がれた時計の鍵を一族の者が毎朝巻き、それによって動いているのである。だからこそ、この時計塔の維持費などは街の者が負担しているものの、管理などはその一族だけしか関わってこなかったのだから、何が何だかわからなかったのである。
 現在時計の螺子巻きを任されている青年は街の人に向かい、「申し訳ありません」と頭を下げた。
「現在塔に、何処から入り込んだのか従魔がうろついておりまして、迂闊に中に入れません。皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません」と。
 それを聞き、街の人達は驚愕した。だが、すぐさまに「従魔を早く追い払わなければ」という結論が誰しもの頭の中に浮かんだ。従魔を恐れ、怖がるのではなく、時計が動かず不便なことこそが問題だったからだ。

解説

●目的
→時計塔に入り込んだ従魔の討伐

●補足
→時計塔に従魔がいるので、それを全て討伐しましょう。
 但し、古くからある建物なので、あまり大きな技などを使って時計塔を傷つけないようにしましょう。
 一応耐震などは大丈夫なのですが、派手にやりすぎると別の意味で倒壊の危険性があります。
 また、住民に親しまれている場所なので、時計塔は無事に取り戻す方が好ましいです。
→何処から入り込んだのか、ゴースト系の従魔が徘徊しています。
 ゴーストとボンバストが彼方此方に居て、最上階にはゴーストナイトが占拠しています。
 また、吸血蝙蝠やアサシンラットなども入り込んでいてお化け屋敷のようになっています。
 対策をしっかりと考えましょう。
→時計塔自体の作りはシンプルで、階段で上まで行けます。しかし、階段や踊り場に従魔がいるので度々戦闘になります。

リプレイ

●時計塔の前にて
 物凄く派手というわけではないが、歴史が感じられる趣のある時計塔である。
 住民達が生活の基盤としているだけあり、成程。大きいものである。

 時計塔の管理人から話を聞き、「時計塔に取り憑いた訳じゃねぇのか」と赤城 龍哉(aa0090)は言った。
 そしてヴァルトラウテ(aa0090hero001)は『どうして棲み着いたのかが気になりますわね』と思案する。
「さて、そいつは蓋を開けてみないことにはな」『掃除ついでに再発防止ですわ』

 時計塔を見上げながら、御神 恭也(aa0127)「地の利は向うに有りか……此方も飛行が出来れば楽なのだがな」と呟いた。
 確かにそうである。こちらが足場を気にしないといけない以上、それが無い方が有利だ。
 伊邪那美(aa0127hero001)は時計塔の見取り図を見ながら、『う~ん、古い時計塔のせいか中は随分と狭いね』と感想を述べた。

 東西南北何処から見ても時計が見えるように設置された盤は動かず、針は時の停止を告げている。
 地域の人からずっと親しまれてきたものなのである。「時間がわからないのは不便ですし、早めに片付けてしまいましょうか」と九字原 昂(aa0919)は気合を入れた。

 ここに来る前は「観光名所に行くのだよ! お土産は何がいいかな!?」とはしゃいでいた片桐・良咲(aa1000)は、今は「おー!」と目を輝かせて写真を撮りまくっている。その腕前は如何ほどかのかは不明だが、良咲の様を見て尾形・花道(aa1000hero001)は『こいつがこんなのだから、俺ががんばらねば』と溜め息を吐き、首を振った。
 そして良咲の首根っこを掴み、良咲を如何にかしなくてはと妙な使命感に燃えていた。

『おぉ、またしても骸忍術の修行の場にやって来たでござるな』と言う宍影(aa1166hero001)に、骸 麟(aa1166)は「おぉ、それはどんな修行なんだ」と目を輝かせる。
 しかし宍影は意味深な笑みを浮かべ『それを口にしては修行にならなかろう。どんなものかは、己の目で確かめるで御座る』と言えば、「任せよ! どんなものであろうともオレは乗り越えてみせるぞ」と自信に満ちた笑みを浮かべた。

「時計塔か。興味なんざ、ねーと思ってたが」と、その時計塔を前にして佐藤 鷹輔(aa4173)はぼやくが、逆に語り屋(aa4173hero001)はやる気があろうようで『例え有名で無くとも歴史ある建築物。無傷で終わらせたいものだ』と呟いている。
 しかし鷹輔とてプロなのである。任された仕事は十二分にやってのけるつもりだ。
「ああ、わかってる。建物への被害は最小限に抑えるぞ」『御意』

●潜入
 偵察を買って出た昴と麟が一行を先行して行く。
 まだ修行中の身ではあるものの、忍者である麟は流石の偵察能力である。一方通行であるからこちらからも、敵からも姿は見えるだろうが、音を殺して文字通り忍び、更に潜伏のスキルを使用することでそのリスクを極力減らしているのである。全くもって頼もしい限りだ。
 一方の昴は、麟同様に潜伏を使って見つかる可能性を減らし、更に見取り図から空間把握をすることで、死角になりやすそうな場所に身を隠して周囲を伺っている。そうすることによって、身を隠すのと同時に見取り図と照らし合わせて周囲の状態を確認していた。


 他の面々は、二人から距離を置いて階段を上って行く。偵察が出ている以上、距離が近すぎると偵察の意味を成さないからだ。本来なら偵察が戻ってくるのを待ってから進むというのが定石なのだろうが、ここは一方通行だ。どっちにしろ進む道は一つしかないのだから、ということで距離を保ちつつ進んでいるのである。

「まぁ、皆考えていることは同じってことか」と、今回の方針を龍哉はそう評する。
 それにヴァルトラウテも同意する。『一方通行なのですから、討ち漏らしを無くす為下から攻めて行くのは定石ですわ』
 そう、今回の作戦は誰ともなく下の階から最上階に向かうという方向性で落ち着いたのである。ある意味定番といえば定番だ。
「討ち洩らしと、塔に傷をつけないように注意はしようぜ」

 何時もとは違い、ライフルを肩から下げている恭也を見て伊邪那美は『今日は前線に行かないんだね。珍しいけどどうして?』と首を傾げる。
 恭也なら、戦闘で前に出るのは勿論、偵察に名乗り上げていたかもしれないからだ。
「一度に行ける人数が限られているからな。それに、閉鎖空間で向うは自由に動き回れる環境では後方支援も必要だ」

 仕事モードとして、弓をいつでも射れるように警戒はしているものの、何処か物珍しさが勝っている良咲の頭を花道は小突いた。
『集中しろよ』と注意を受けるが、「大丈夫だよ」と良咲は少し拗ね気味に言う。
「ボクの実力を一番良く知っているのは誰かな?」と問えば、花道ははっと口角を上げて笑みを浮かべた。

 古い建造物でありながら、ここまで残っているだけあってなかなか頑丈そうな様に「意外と良い仕事しているじゃねぇか」と鷹輔は感心した声を漏らした。
 語り屋の言っていたように、塔には傷をつけずにどうにかしたいものだ。しかし、鷹輔は「まぁ、上手くやってやるさ」と抜け目なく周囲に目を走らせた。

 昴から連絡が入った。
 囁くような小さな声で端末に、敵を発見したと連絡があった。
 それを受けて一行は警戒し、なるべく気配を絶ちつつ急行する。


 忍者らしいといえばらしいのか、踊り場の真下の壁に張り付いて向こう側を窺っている麟の姿が目に入る。昴は向こう側から見えないくらいの階段の位置に居て、彼も音を立てないように息を殺していた。
 同様に息を殺して踊り場の方を見ると、数体の従魔がまるでたむろでもしているかのようにいる。ちぃちぃ鳴いているのはアサシンラットで、半透明の球体はボンバストだ。その踊り場の上に向かう階段の上をゴーストが揺蕩い、塔のでっぱりに足を引っ掛けている吸血蝙蝠の存在も確認できる。どうやら、ここから先が従魔の巣窟になっているようである。
 一同は目配せをすると、予め決めていたように前衛後衛として、まずは後衛のメンバーが奇襲をし、そこから前衛が突っ込んでいく。
 恭也のライフルが、良咲の弓が、鷹輔のガルドラボークがそのベールを脱ぐ。

 火を吹いた恭也のライフルがボンバストにヒットする。
 ボンバストは通常衝撃派で攻撃してくるが、体力が少なくなると自爆してくる従魔だ。特にこんな状況では、守るべき塔を傷つけられる危険性だってある。その為、恭也は自爆される前に始末すべきだと真っ先にボンバストを狙い撃つ。
 普段は接近戦を得意としているが、隙間を縫うような正確な当たりである。その様を見るに、接近戦以外も十分に上手なのだろうというのは想像がつく。

 対し、良咲は静かなものだ。先程までのはしゃぎ様が嘘のように静かに弓を引いている。
 明鏡止水の境地でも言うべきか、凪いだ水面のようである。普段からこの姿であったら花道も安心なのだろうが、明るい姿も良咲の持ち味なのだろう。
 冷静に放たれる矢は風を纏い、更にファストショットによって数体の従魔を音もなく葬った。

 鷹輔は音を聞きつけ、階段の上から気が付いたゴーストの接近を許さないとばかりに攻撃を仕掛ける。
 呪いの力によってダメージを与える武器なだけに、塔に傷をつけずに自在に攻撃が出来るのが強みだ。
 ウィザードセンスによって、高められた攻撃が次々にゴーストを迎撃していく。

 三人が遠距離攻撃を仕掛けたと同時に、他の三人は踊り場の上に上がっていた。身をひるがえし、素早く敵を仕留める様はまるで踊っているようであった。

 龍哉は間合いを詰めると、アサシンラットを一体一体的確に捌く。あまりにも軽々とやってのけるから作業ゲームか何かのようだ。
 小さな相手であるが、見極めの眼を使うことによってセイクリッドフィストの特性を良く活かしている。尤も、そうさせているのは龍哉の武術の腕前故だろう。日々の鍛練は矢張り実践でも裏切らない、とは正にこのことである。

 昴は戦闘時には陽動をメインに動いている。従魔の間を縫うように移動し、注意を引く。
 塔を傷つけずに……というのが先方の願いである。それを酌んで、塔の壁を破壊しそうな従魔を率先して牽制する。
 しかし時には隙を突いて距離を詰めると、猫騙で相手を怯ませ、その隙にハングドマンで吸血蝙蝠の動きを阻害した。

 麟は踊り場の真下から跳び上がるようにして踊り場に降り立つと、空中に滞在している間に女郎蜘蛛を発動し、従魔達を拘束した。これまた、忍者らしい奇襲の仕方である。
 その投擲された網の下では、複数のアサシンラットや吸血蝙蝠の姿がある。
 麟は片手に弧月、片手に白虎の爪牙を装備しており、すれ違いざまに振るった白虎によって音を置き去りにする攻撃――つまりは音速さえも超えて一瞬にして従魔達を屠った。


 踊り場の従魔達を一掃した後、一行は更に上階を目指す。勿論その間、戦闘が多々あったのは言うまでもないだろう。

 龍哉はヴァルトラウテと「にしても、よくまぁ色々と集まったもんだな」『確かにお化け屋敷の様相を呈していますわね』と会話しつつも、その間に宙から襲い掛かる吸血蝙蝠をシャープエッジで迎撃した。時に自爆目前のボンバストはワンツーの要領で、一撃軽く入れて相手の動きを阻害し、追い撃つ強打にて倒したりもした。

 己を押さえて援護に徹していた恭也であったが、従魔が接近してくれば時にはお得意の接近戦で応戦する。周囲に注意しつつもドラゴンスレイヤーをボンバストに振り抜いた。
『あ~、何か見覚えがあると思ったら前に恭也が見せてくれた猿顔の怪盗が御姫様を助け出す映画にあったね』と言う伊邪那美に「あの映画の最後は時計塔が崩壊するんだが・・・あまり、不吉な事を言うべきでは無いな」と突っ込んだ。

 踊り場一面に、それこそ足の踏み場の無い程密集したアサシンラットに向かい、昴は女郎蜘蛛を発動し、「根こそぎ取るのは大掃除の基本ってね」と言う。そして網を投擲し、従魔を一纏めにした。
 その従魔を一行で文字通り袋叩きし、一網打尽である。

 空中から迫りくる吸血蝙蝠とゴーストを、良咲はトリオにて一度に三体撃退する。そしてそこから流れるような動作で威嚇射撃を放ち、従魔の隙を作り出す。
 本当に頼りになる後衛である。
「いまだよ!」と良咲が開いた突破口にて、仲間の攻撃や連携がスムーズに決まった。

 燐は変わらず先行し、従魔達に奇襲を仕掛けている。
 大した身体能力である。否、度胸であるといえよう。足場として到底なりえない不安定な場所を足場とし、また単騎で敵の真っただ中に突っ込んでいるのである。
「オレの修行の邪魔は誰にもさせない!」と、そんなことを言いながら弧月で従魔の攻撃を受けて流し、白虎の爪牙を攻撃に振るって次々に従魔達を倒して行った。

 頼もしい前衛が揃い、後衛も実力者揃いである。そんなこともあって鷹輔は敵からの奇襲に対して注意を裂いていた。これだけの猛者揃いなら鷹輔が多少攻撃を控えても大丈夫だと判断したのである。
 そして「ビンゴだ」と、階段をすり抜けて背後から攻撃を仕掛けてきたゴーストを逆にガルドラボークで迎撃した。


 そんなこんなで、もう最上階は間近である。上に階段は続いているものの、これまでのように踊り場ではなく確りとしたフロアが出来ているのである。気分はちょっとした、屋根裏に上っているような感じだ。
 見取り図で事前に最上階の様子は知っていたものの、階段から従魔に気が付かれないように様子を伺い、そこに腕組みをしながら佇んでいるゴーストナイトの姿を発見した。
 階下にまた頭を引込め、龍哉は「……一番壊したらダメな場所じゃねぇか、これ」と頭を抱えた。そう、時計の文字盤もあるのもこの階であるし、何より他の階と違って歯車やらレバーやらが彼方此方に点在しているのである。
 おいおいとでも言いそうな龍哉に向かい、ヴァルトラウテは冷静に『そうなったら、ここまで気を付けて来た意味がありませんわね』と指摘した。

 同様に様子を伺った恭也であるが、こちらは逆に活き活きとした表情を浮かべている。
「さて、此処でなら俺も前線で参戦出来るな」と楽し気な様に、伊邪那美は『うわ~……此処に来るまで後方支援に徹してたから欲求不満になってたんだね』と言う。そして、『凄く悪い顔になってるよ……』と呆れたように付け足した。それに対し、矢張り口角を上げたままの恭也は「失敬な。精々憂さ晴らし程度だ」とライフルを仕舞って武器をドラゴンスレイヤーに持ち替えた。

 其々が上階の様子を確認し、顔を見合わせると頷き階上に上がっていった。
 するとゴーストナイトは一行に気が付いたようで武器を構える。その様はこれまでこの塔で相手にしてきた従魔とは違い、妙な貫録が漂っている。

 ゴーストナイトが出会いがしら、いきなり瘴気斬を放った。
 刀にライヴスを集めた強力な攻撃である。
 これは喰らったら不味い攻撃であるが、防御しなければ塔に傷がつく攻撃である。
 どうやらそう思ったのは全員であり、ほぼ咄嗟に龍哉はスロートスラストを、恭也はストレートブロウ、良咲はファストショット、鷹輔はゴーストウィンドを放った。
 それによって瘴気斬は相殺される。
 しかし、特に気にした様子もなくゴーストナイトは呪声にて一行の内側から、攻撃を仕掛ける。

 恭也が動いた。
 オフェンスブーストで攻撃を強化した状態で電光石火を発動し、その横っ面に強烈な一撃を入れた。
 顎が上がり、声が途絶える。そしてできた隙にドラゴンスレイヤーにてヘヴィアタックを撃ち込む。
 だが、ゴーストナイトは刀でそれを阻んだ。鍔迫り合いとなる。
 回避行動は一切取らないものの、高い戦闘能力を持つだけある。しかし、それでもそして恭也の攻撃のダメージは受けている。無痛覚なだけあって、無頓着であるが、ダメージ自体は蓄積されているのだ。

 そんな恭也を援護するとばかりに、ファストショットによる隙間を縫うような攻撃が入る。
 良咲である。彼女の正確な狙撃によって恭也と拮抗した状態で刀を合わせていたゴーストナイトの動きがほんの少し鈍った。その間に恭也が剣を振り抜く。
 その様を冷静に観察するように瞬時に判断し、良咲は更に威嚇射撃を発動し、ゴーストナイトの攻撃を逸らそうと試みた。

 攻撃が当たり、恭也はゴーストナイトと距離を取った。その瞬間を狙い、今度は鷹輔が迫る。
 ウィザードセンスによって攻撃を強化し、再びのゴーストウィンドである。
 更に強烈な呪となった攻撃が従魔を襲う。
 ゴーストナイトは元々浮かんでいる鎧兜であるが、それが風によってカタカタと音を立てている。

 ゴーストウィンドによって囚われ、隙が出来た。その瞬間、昴と麟はほぼ同時に女郎蜘蛛を発動していた。
 二人は潜伏によってその姿を、存在感を薄れさえていたのである。これは、周囲の強さを過信しているからできた戦法だ。そうでなければ、この局面で人員が二人減るというのは避けるべきことであろう。
 強力な従魔とういうだけあって、念には念を入れて二人がかりで抑え込む。
 網に捕らえた瞬間、「今だ!」「止めを!」と昴と麟は叫んだ。

 その言葉を受け、否、声を聞く前から知っているとばかりに龍哉は距離を詰め、スロートスラストを放つ。そして従魔が怯み、できた空白の一瞬が勝負どころである。
 一気呵成にてゴーストナイトの重心を崩すと、オーガドライブを叩きこんだ。
 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュとばかりに拳が叩き込まれる。
 防御を捨てた猛攻とは、かくも恐ろしいものである。相手の反撃を一切考慮せず全力でぶつけ続けるのだ。これは、頼もしい仲間がいなければ簡単に繰り出せる技ではない。
 強力な攻撃、そしてこれまでの攻防で度重なるダメージを受け、ついにゴーストナイトの鎧が砕け散った。


 戦闘が終了し、周囲に他の従魔の気配がないことを確認するとそれぞれはある程度の警戒を解いた。
 ここが最上階である以上、この上に従魔はもういない。後はこれまで上ってきた階段をまた下りて行くだけである。

 まだ戦闘の余韻を残したまま、「さて、注意はしたつもりだが」と龍哉が言い、その言葉を引き継いでヴァルトラウテが『取りこぼしがないか確認してから、点検ですわね』と言う。
 上に向かう一方通行の為に確認もまた簡単であるが、従魔の取りこぼしがないかどうかは入念のチェックが必要である。
 一行は周囲を確認しつつ下りて行く。

『もう従魔の姿はないかな?』と言う伊邪那美に、恭也は「油断するなよ。依頼達成の報告をするまでが依頼だ」と返せば、伊邪那美は『それってあれみたい』と言う。
『家に帰るまでが遠足、っていうやつみたい』
 その言葉に恭也は「実際にそうだろう」と至極真面目に言うものだから、『うぇー』と伊邪那美は声を上げた。

 昴は戦闘後の、塔の状態に目を走らせる。
 何処か傷がついていないか、修復が必要な個所がないか確認しているのである。こういう時に気が付かず、後々に気が付いて手遅れでは遅いのだ。
「まぁ、大丈夫だとは思うけれど、念には念を入れて、ね」

 塔の中に従魔が残っていないか確認している間も、良咲は「時計が動くの見てみたいな~」と観光気分である。先程まで戦っていた時はきりっとしていたというか、頼りがいのある姿だったのに、今はいつも通りぽわぽわとした空気を纏っている。
 そんな良咲に向かって花道は溜息を吐くと、未だ写真を撮り続ける良咲を引っ張る勢いで『もう十分だろう』と促した。

「これは、修行は成功だろうか!」と、先程までの忍んでいた姿とは打って変わり、竹を割ったような性格が前面に出ている。そんな麟に向かい、宍影は『どうでござろうか』と言葉を返す。
『成功云々よりも、まずは今日の戦闘を振り返るで御座るよ。そこからもまた得られるものはあろう』と続ければ、「おぉ、そうだな!」と麟は大きな声を出した。

 鷹輔は髪をくしゃりと掻き揚げた。
 本日の依頼について、「まぁ、こんなものだろう」と呟く。
 今回の件について、乗り気だった語り屋からは特に何も文句はないようだからこれで良いのだろう。
 塔の中を確認するに、戦闘でつけられた大きな傷は見当たらず問題はないだろう。


 階段を下りて行くと、入り口に立っている依頼主の姿が見えた。
 無事に従魔を討伐したことを伝え、今回の任務はこれにて終了である。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 太公望
    御神 恭也aa0127

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 楽天家
    片桐・良咲aa1000
    人間|21才|女性|回避
  • ゴーストバスター
    尾形・花道aa1000hero001
    英雄|34才|男性|ジャ
  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 迷名マスター
    宍影aa1166hero001
    英雄|40才|男性|シャド
  • 葛藤をほぐし欠落を埋めて
    佐藤 鷹輔aa4173
    人間|20才|男性|防御
  • 秘めたる思いを映す影
    語り屋aa4173hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
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