本部

お手玉の玉が逃げた

花梨 七菜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/06/25 18:43

掲示板

オープニング

●運動会です
 今日は、幼稚園の運動会の日である。
 園庭には、朝早くから、幼稚園の先生とお手伝いのお母さん達が集まって、運動会の準備をしていた。
 用具係のお母さん達は、倉庫にあるマットや三角コーンなどの用具を、園庭に作った用具置き場へと運んでいた。
 玉入れのお手玉が入っている段ボール箱を運んでいた斉藤さんは、「よいしょ」と用具置き場に段ボール箱を置いた。
 その拍子に、赤いお手玉が一個、段ボール箱から飛び出し、コロコロと転がった。
「あら」
 斉藤さんは拾おうと手を伸ばしたが、お手玉はコロコロと転がり続けた。それだけではなく、段ボール箱から勝手に他のお手玉が飛び出し、最初に飛び出したお手玉を追いかけ、コロコロ転がり始めた。
「えぇー!」
「どうしたの?」
 斉藤さんの声を聞きつけた山田さんが、近寄ってきた。
 斉藤さんは黙って、指さした。
 一列になって、園庭から逃げ出していく赤いお手玉の群れを。

 最初はきれいな列になっていた赤いお手玉達だが、でこぼこ道や曲がり角を転がっている内に、少しずつ列が崩れていった。
 ふと気づくと、お手玉は一人ぼっちでコロコロと転がっていた。
 お手玉は、赤い物を見つけた。自分と同じ色だ。お手玉は、その赤い物の傍にちょこんと座ってみた。

●お手玉を探そう
 HOPE敷地内のブリーフィングルームで、職員は説明を始めた。
「本日、運動会が開催される予定の幼稚園で、玉入れの玉が行方不明になりました。目撃者によると、赤いお手玉10個が、コロコロ転がってどこかに行ってしまったそうです。イマーゴ級の従魔だと思われます。今の時刻は、午前9時ですが、玉入れは午前11時頃に始まる予定だそうです。午前11時までに、お手玉を探して、幼稚園まで持ってきて下さい。子供達のためによろしくお願いします」

解説

●目標
 従魔を見つけて討伐し、お手玉を幼稚園に届けること

●登場
 イマーゴ級従魔 × 10体。
 赤いお手玉の従魔。
 コロコロ転がる。ピョンピョン跳ぶこともできる。
 人間を攻撃することはない。
 エージェントが共鳴して、AGWで、突っついたり、触ったりすれば、すぐに従魔は依り代である赤いお手玉から離れる。

●状況
 赤いお手玉は、街のどこか、幼稚園から徒歩圏内にいる。
 赤いお手玉のいる場所は、赤い物の傍である。
 街には、昔ながらの商店街(八百屋、肉屋、魚屋、パン屋などがある)と、住宅街がある。
 エージェント達は、午前11時までにお手玉を見つけて、幼稚園に届けなければならない。

●補足事項
 午前11時までにお手玉を幼稚園に届けると、幼稚園の先生がエージェント達を保護者参加の玉入れに誘ってくれるので、参加してみましょう。
 玉入れには一般人も参加するので、エージェントのみなさんは、共鳴せずに参加してください。
 チームは紅組と白組です。どちらの組に参加するか選んでください。
 能力者と英雄が一緒の組でもよいですし、別々の組でもよいです。

リプレイ

●お手玉はどこ?
 七森 千香(aa1037)は、幼稚園周辺の地図と写真をあらかじめスマートフォンにインポートし、徒歩で行ける範囲にあるポストの位置を確認した。
「幼稚園の運動会、懐かしいなぁ……玉入れのお手玉、きっと探し出して見せます!」
『ああ。玉入れって、小さい頃赤組に所属していたお前がぼろ負けしてぼろ泣きしていたやつか』
 千香の隣で、英雄のアンベール(aa1037hero001)が言った。千香とアンベールは、千香が幼い頃からの長い付き合いである。
「アンベールさん!!……いえ、違いますよ! 白組の不戦勝はだめですからっ、探すんです!」
 千香は、少しムキになって言い返した。アンベールの黒い狼耳が少し揺れた。千香の様子を面白がっているらしい。
「今日の運動会はたった一度だけですからね。晴れの舞台、成功させましょう」
 子供達にとって、運動会は晴れの舞台である。皆、玉入れをとても楽しみにしているだろう。お手玉を見つけ出して、運動会を成功に導かなくては、と千香は熱く決意した。
「さてと」
 そう言って千香が取り出したのは、赤色に光るサイリウム。
「同じ赤ですし、釣られてくれるかと思って……」
『楽しそうだな』
「楽しいです!」
 千香はにっこり笑顔で、サイリウムをシャカシャカと振った。

「お結びころりんすっとんとん、みたいな感じかなぁ」
 コロコロ転がっていくお手玉を想像して、木霊・C・リュカ(aa0068)はくすっと笑った。
『赤い物、赤い物……』
 英雄のオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は、街にありそうな赤い物を思い浮かべていた。
 リュカは、通信機とスマートフォンを用意し、捜索中に他のエージェント達と連絡できるように準備を整えた。
「あ、グーグ○アースで道を辿れば常在してる赤い物なら大体の位置も把握できるんじゃないかな」
 リュカはそう思いついて、スマートフォンで捜索範囲の地図をチェックした。
『最近の文明の利器は恐ろしいな……』

「運動会!! ちゃんとできるように、頑張りましょうね!」
 紫 征四郎(aa0076)は、にっこり微笑んだ。
『はいはい。まぁ今は良いとして、そのうち等級が上がる可能性もあるからな』
 従魔がイマーゴ級である間に、さっさと退治するのが得策だ。英雄のガルー・A・A(aa0076hero001)は、軽く伸びをして気合いを入れ直した。
 征四郎は、スマートフォンで幼稚園周辺の地図を調べた。

「お手玉が逃げ出すって……また変わった従魔ですねー……。でも玉入れが出来なくなっては困りますし早く見つけちゃいましょー」
 狼谷・優牙(aa0131)は、変わった従魔だと思いつつ、子供達のために早くお手玉を見つけてあげようと張り切っていた。
『早く玉入れしたいのだ♪』
 英雄のプレシア・レイニーフォード(aa0131hero001)も張り切っていたが、こちらの目的は、優牙とは少し違っていたようだ。

 それぞれ準備を整えたエージェント達が、幼稚園に到着した。園庭では、開会式が行われていた。
 エージェント達を待っていた幼稚園の先生が、エージェント達にビニール袋を渡してくれた。赤いお手玉を入れるための袋である。
「おー、たまないの? だいじょーぶ! れいえん、ちょっとおかぜひいてちょうちょからでてこないけど、まいだがんばるもん! れいえんのぶんまでがんばる!!」
 まいだ(aa0122)は、えいえいおー、と拳を振り上げた。
 リュカは、幼稚園の先生に幼稚園児の人数を聞いていた。
 なんのために聞いているのだろう、と不思議に思いながらも、征四郎は手分けして捜索するためにエージェント達に話しかけた。
「征四郎は商店街から探したいと思います」
「まいだもー」
 残りのエージェント達は、住宅街を探すことになった。適宜、スマートフォンや通信機で連絡を取り合い、10時50分頃には幼稚園に戻ることが決まった。
「それでは、11時までに幼稚園で」
 千香は軽く手を振って、アンベールと一緒に出発した。
「いってくるねー!!」
 まいだも元気よく手を振って、出発。
 征四郎は、まいだを追いかけようとしたが、ガルーに引き留められた。
『その前にこれ』
「もきゅ、これなんなのです?」
 ガルーが征四郎に被せたのは、赤ずきんのようなフード。征四郎の目の前まで覆ってしまったフードをガルーは少し直して、ちゃんと前が見えるようにした。
『赤いものを追いかけるらしいからな、効果はないかもしれないけど』
「おお! 仲間を探しているのですかね」
 リュカは、征四郎に話しかけた。
「赤い物かー、せーちゃん何か思い当たることある?」
「林檎、赤いバイク……あとは、なんでしょう? とにかく、赤い物を探しましょう!」
 征四郎は、元気に宣言した。
「そうだねー」
 リュカは頷いた。オリヴィエは、辺りをきょろきょろと見渡し、早くも赤い物を探している。
 たたたーっと、まいだが走って戻ってきた。
「まいだ、みちわからない。おしえてー」

●住宅街にて
 リュカは、オリヴィエと共鳴し、住宅街を歩きながら、赤信号やポスト、赤いお家や車の傍に、お手玉がないか探した。
「赤い服を着てる人にくっついてっちゃってるとか!」
 そう思って、通行人にも注意して目を向けた。
「赤い花も、結構あるよね」
(紫陽花、柘榴、でいご、皐月……この時期でも、赤っぽい花なら他にもあるかもしれない、な)
 オリヴィエは呟いた。
 リュカは、街路樹付近の花壇や、住宅の庭など、一つ一つ確認しながら歩き回った。
「きれいな花だな。でも、上を見たり下を見たり、忙しい……あ、あった!」
 家の庭に生えている柘榴の木。いくつか花が咲いているが、その内の一つが重たそうに垂れ下がっている。赤いお手玉が、その花の上に乗っているのだ。
 リュカは身体の主導権をオリヴィエに引き渡した。
 オリヴィエはジャンプして、赤いお手玉を取り、着地。手の平でもぞもぞ動いているお手玉をライトブラスターで突っつくと、お手玉から煙のようなものが出てきた。
 オリヴィエは、煙のようなものに向かってライトブラスターを発射した。従魔退治完了。オリヴィエは、動かなくなったお手玉をぽいっとビニール袋に入れた。

 千香は、幼稚園を出るとすぐにサイリウムをシャカシャカ振り始めた。
 千香が最初に向かったのは、郵便局だった。郵便局の傍にはお手玉がなかったので、調べておいたポストの場所を順番に巡っていくことにした。その間も、歩きながら、赤い家や赤い車、赤い自動販売機に目を光らせた。
「あ、ありました!」
 三つ目のポストの上に、ちょこんと赤いお手玉が乗っていた。
「……可愛いです!」
『知らん』
 お手玉に萌えている千香に、アンベールは呆れていた。
「共鳴です! アンベールさん!」
 アンベールは、渋々千香と共鳴した。
 千香は、赤色の物に寄り添うお手玉の想像以上のかわいさにぷるぷるしつつ、剣の鞘でお手玉をつんつく当てた。従魔がお手玉から離れる隙を突いて一閃。剣で従魔を斬りはらった。

「赤い色のある場所の側にいるんですねー。ポストとかはお約束として、他に赤っぽい建物とかあるでしょうかー?」
 優牙は、通行人に赤い建物がある場所を聞いてみた。入手した情報をもとに、歩いてお手玉を探そうとしていたのだが、プレシアがそうはさせなかった。
『優牙、歩いてたら間に合わなくなっちゃうよ! 急いで、走って探すのだ♪』
 プレシアは、早く玉入れがしたくてたまらない様子で、優牙を引っ張って駆け出した。
「わわ、ちょっとー」
『どこにあるかなー♪』
 プレシアは、お手玉捜索も宝探しみたいだ、と楽しんでいる。
 二人は、消防署に到着した。
 優牙は、消防署の職員に許可を得てから、消防車の周りを探し始めた。見落としがないように丁寧に探していると、しばらくしてプレシアが歓声を上げた。
『あ、お手玉発見♪ 確保しちゃうのだ♪ ちゃんと捕まえてあげるから逃げるんじゃないのだ?』
「そっと捕まえるのですよー! 壊しちゃったらダメですしっ」
 お手玉は、消防車の側面に取り付けられているホースと、車体の間に入り込んでいた。
 プレシアは、そっと手を伸ばして、お手玉を捕まえた。そして、消防車から少し離れた地面にお手玉を置いた。優牙はプレシアと共鳴し、スナイパーライフルでお手玉をつんつん突っついた。従魔がお手玉から離れた。すかさず、優牙は従魔に銃弾を放って従魔を倒した。
 共鳴を解くと、プレシアはまた優牙を引っ張って走り出した。
『じゃ、次いこー♪』
「わわわ」

●商店街にて
「赤い玉が転がってくのを見ませんでしたか?」
 征四郎は、通りがかりの人や商店街の店の人に声をかけて、話を聞いていった。その間も、ガルーは周囲を見回し、赤い物を探していた。
「もし見かけたらすぐに連絡をください」
 征四郎は、お店の人にスマートフォンの連絡先が書いてある名刺を渡した。
『ふーん』
「べ、別に大人っぽくてかっこいいから準備したわけじゃないんですから! ちびっこじゃないです、エージェントなのです!」
『別に何も言っていないんだがな』
 少し顔を赤くしている征四郎がおかしくて、ガルーは笑ってしまった。
「あかいものー。あかいものー……あ!! トマト! トマトあかい!! やおやさん、どこかなー」
 まいだは、きょろきょろと八百屋を探している。
「八百屋さんは、あっちですよ。行ってみましょう」
 征四郎、まいだ、ガルーは、八百屋に到着した。
「ごめんくださーい! あのねー、うごくあかいたまさがしにきたのー!」
 まいだは、八百屋のおじさんに元気に言った。八百屋のおじさんは、快くエージェント達を迎えてくれた。
 まいだは、並べられているトマトの周りを調べた。だが、赤いお手玉はなかった。
「林檎はどうでしょうね」
 征四郎は、林檎の周りを調べた。すると、林檎の陰に隠れるように、お手玉がちんまり座っていた。
「ありました! 共鳴です、ガルー!」
 征四郎はガルーと共鳴し、お手玉を剣でつんつん。お手玉から離れた従魔を一刀両断した。
「やったー」
 まいだはパチパチと手を叩くと、お手玉をビニール袋に入れた。
「ほかにあかいものないかなー。おー? あれあかい! こんにちはー!」
 まいだが入っていったのは、八百屋の向かい側にある肉屋だった。
 赤いお肉が並んでいるショーケースに顔を近づけて、まいだがお手玉を探していると……。
「あった!」
 ショーケースの中に、私もお肉です、と言わんばかりの風情で、お手玉がいた。
 いつの間にお手玉が入りこんだのか、と驚いている店員に頼んで、ショーケースを開けてもらった。
 まいだは、お手玉を捕まえて、誇らしげに肉屋を出た。そして、英雄と共鳴すると、お手玉を木刀でペンっと叩いた。お手玉から離れた従魔をもう一回ペンっ。
 まいだは、にっこり笑ってお手玉をビニール袋に入れた。

 住宅街の捜索を終えたリュカは、商店街にやってきて、お店の人に赤いお手玉を見なかったかどうか聞き込みを始めた。
 商店街の真ん中で、リュカは、征四郎、ガルーと出会った。
「八百屋さんで1個、お肉屋さんで1個見つかりましたよ。それと、さっき連絡があって、千香がポストの上で1個、優牙が消防車のところで1個見つけたそうです」
 リュカは、持っているビニール袋を掲げて言った。
「それじゃ、これとあわせて全部で5個だね。あと半分か」
 その時、征四郎のスマートフォンが鳴った。
「もしもし……そうですか。今、行きます。ありがとうございます!」
 征四郎は通話を終えると、言った。
「ピザ屋さんがお手玉を見つけたそうです。行きますよ、ガルー! リュカ、また後で!」
 征四郎とガルーは、走り去った。
 リュカは、引き続き、お手玉を探した。途中立ち寄ったパン屋では、おやつ系のパンとジュースを園児の人数分購入した。運動会後におやつとして園児に配ってもらおうという心配りである。
「次は、魚屋か。赤い物と言えば、鮪……あった!」
 鮪のぶつ切りが入っている食品トレーの傍に、お手玉がひっそり座っていた。
 リュカはオリヴィエと共鳴して、従魔を退治し、お手玉を回収した。

 まいだは、カフェの屋根を見上げた。赤い屋根なのだが、まいだの身長では屋根の上の方はよく見えない。まいだは、屋根を見上げたまま道の向こうまで後退し、それでも見えなかったので、近くの塀に登った。
「あったー!」
 まいだは、共鳴して、ブーメランを投げた。ブーメランがお手玉に当たり、お手玉は屋根をコロコロと転がって落ちてきた。
 まいだは、お手玉に駆け寄ると、お手玉をブーメランでペンっとした。

 征四郎とガルーがピザ屋に着くと、店員がお手玉の場所を教えてくれた。赤いバイクの荷台の上である。
 征四郎がお手玉を捕まえようとすると、お手玉はピョンとバイクから飛び降り、コロコロ道を転がり始めた。
「待ちなさい!」
 征四郎が叫んでも、お手玉が待つ筈はなく、コロコロ、コロコロ。
「ガルーはこのまま追って! 征四郎は先回りします!」
『はぁーい。車に気をつけてなー』
 征四郎は脇道に入って全速力で走ってから、元の道に戻った。征四郎とガルーで、お手玉をはさみ打ち。征四郎は、逃げ場をなくしたお手玉を両手で捕まえた。そして、ガルーと共鳴し、お手玉に軽く攻撃して、無事に従魔を退治した。
「あなたの仲間はこちらです。幼稚園で待ってますよ」
 征四郎は、お手玉をビニール袋に入れると、通信機で仲間に連絡をとった。
「……! 何としても、時間までに見つけ出すのです!」

●再び、住宅街にて
「どなたか可愛いお手玉しりませんかー!」
 千香は、サイリウムをふりふりしながら通行人に聞き込みをした。
 小学校低学年くらいの男の子が、赤い自動販売機のところお手玉を見た、と教えてくれた。
 千香とアンベールは、自動販売機の周りを調べた。最初はどこにもお手玉がないように見えたのだが……。
「どうしてここに入っちゃったんですかー。ここがあなたのおうちなんですか?」
 千香はぷぷっと笑って、お手玉に話しかけた。
 お手玉があったのは、自動販売機のおつりの返却口であった。すっぽりはまっている。
『お手玉に話しかけて、どうする……』
 千香はアンベールと共鳴して、お手玉に憑いている従魔を倒した。

 通行人から赤い物置があるという情報を入手した優牙とプレシアは、その場所に走った。着いたところは、普通の住宅。庭に赤い扉の物置があった。
 優牙は、その家の住人に事情を話して、物置の周囲を調べさせてもらった。
『あったのだ♪』
 プレシアが、物置の扉に寄り添うように座っているお手玉を発見した。
 優牙はプレシアと共鳴し、従魔を退治してお手玉を回収した。
「ええと、他の人達はお手玉いくつ見つけたでしょうかー? 確認してみますねっ」
 優牙がそう言った時、ちょうど道を歩いてきた千香、アンベールと鉢合わせした。
「そのお手玉、今、見つけたんですか? 私達がついさっき自動販売機で1個見つけて、優牙さん達が1個見つけたので、10個そろいましたよ」
 千香が手を叩いた。
 優牙は時計を見た。
「今の時刻は……10時45分です。皆に連絡して、急いで幼稚園に戻りましょうっ」

 エージェント達は、10時50分に幼稚園に到着し、無事に幼稚園の先生に赤いお手玉10個を渡すことができた。

●玉入れです
 園児達の玉入れが始まった。
「そこですー! 上に向かって全力で、投げるのですよー!」
 千香は、サイリウムをぶんぶん振って園児達を応援した。
『……オイ……』
 隣でアンベールは、少し迷惑げな顔である。サイリウムが眩しい……。
「このあと、保護者参加の玉入れがあるのですが、みなさんよろしかったら参加しませんか?」
 幼稚園の先生が、エージェント達に声をかけた。

『玉入れやるのだ♪ 思いっきり楽しむのだー♪』
 プレシアは大喜びで、優牙の服を引っ張った。
「わわわ!? ぷ、プレシア、そんなに引っ張らないでも大丈夫ですよー!?」

「もちろん私は赤組です、赤組なんです!」
 千香は、幼稚園児の子たちに負けずに玉入れを楽しむつもりである。
『ならば俺は白組で――容赦はせんからな』
「!?」
 アンベールの言葉に千香は少し驚いたが、そこで怯むような千香ではなかった。

「ガルー! オリヴィエ! 負けませんよ!! しょーぶなのです!!」
 征四郎は大張り切りである。
『玉入れだってよ、行くぞオリヴィエ……んだよ、たまにはこういうので本気になるのも可愛げじゃない?』
 ガルーは、オリヴィエの肩に手を置いて、皆が待っている入場門へと押しやった。

 保護者参加の玉入れの開始を告げるアナウンスの声が流れて、園児の保護者とエージェント達は入場門から入場した。
 征四郎、優牙、プレシア、千香は赤組、ガルー、オリヴィエ、まいだ、アンベールは白組である。
 パーンとピストルが鳴って、玉入れスタート。
 まいだは、初めての幼稚園や沢山の同年代にテンションマックスである。
「たくさんいれるー! しろかてー! しろかてー!」
 まいだは、ぶぅんと玉を投げた。
 赤組のプレシアも、まいだと同じように玉入れを本気で楽しんでいる。
『やる以上は相手の組には負けられないよね♪ 皆、頑張っていっぱい玉を入れちゃうのだ♪』
 周りの園児に声をかけながら、プレシアは全力で玉を投げた。
 優牙は、前衛はプレシアに任せて、後衛で玉を拾い集めて園児達に渡す役割に徹していた。
「は、はい、玉はここですよー。いっぱい投げちゃってくださいねー」
 オリヴィエも、園児達のサポートに忙しい。籠から遠い所に落ちてしまった玉を回収してきたり、上手く入れられない子を手伝ったりと園児達が楽しく玉入れをできるようにせっせと働いている。だが、働いている合間に隙を見つけては、ガルーの顔めがけて剛速球を投げた。
『オリヴィエー!』
 ガルーもオリヴィエに玉を投げ返し、玉入れに関係のない玉の投げ合いが始まった……。
 そんな二人を尻目に、アンベールは冷静な顔で的確に玉を投げた。
「負けませんよー」
 千香も一生懸命、玉を投げる。
 一方、リュカは玉入れに参加せず、観客席で保護者と歓談していた。
「わー、可愛らしいお子さんですね! 凄く足も速いし、楽しそう」
 園児の父親にハンディカメラを見せてもらって、リュカが感想を言うと、父親は満面の笑みを浮かべた。
 パン、パン、とピストルが鳴った。玉入れ終了である。
「ひとーつ、ふたーつ」
 籠に入っているお手玉の数を皆で数えていく。そして、勝ったのは……赤組!
 わーいわーいと喜ぶ赤組メンバー。
 白組は負けてしまったが、まいだにとっては、勝っても負けても楽しいから問題なし、であった。

 運動会最後の種目は、リレーである。
「がんばれー!!」
 まいだは、観客席で一生懸命声援を送った。保護者の応援も熱が入り、園庭には大勢の人の声が響いた。
 征四郎も応援していたが、リュカが幼稚園の外に出ていくのに気付いてリュカの後を追った。
 自動車がリュカの前に停まり、荷物を降ろして走り去っていった。
「リュカ、何かお手伝いすることはありますか?」
「ありがとう。園児達にパンとジュースを買ったんだけど、配るのを手伝ってもらえるかな?」
「おお! それで先生に園児の人数を聞いていたんですね。お手伝いします!」
 運動会が終わり、エージェント達は園児達にパンとジュースを配った。園児達はにこにこ顔。
 解散後も、園庭では元気な園児達が鬼ごっこをして遊んでいた。
「まいだもいーれーてー! あそぼー!!」
 まいだは、園児達と一緒に鬼ごっこを始めた。子供にとっては、エージェントであるかどうかなんて関係ない。
 平和な初夏の一日だった。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 止水の申し子
    まいだaa0122
    機械|6才|女性|防御



  • ショタっぱい
    狼谷・優牙aa0131
    人間|10才|男性|攻撃
  • 元気なモデル見習い
    プレシア・レイニーフォードaa0131hero001
    英雄|10才|男性|ジャ
  • おとぎの国の冒険者
    七森 千香aa1037
    人間|18才|女性|防御
  • きみと一緒に
    アンベールaa1037hero001
    英雄|19才|男性|ブレ
  • ~トワイライトツヴァイ~
    鈴宮 夕燈aa1480
    機械|18才|女性|生命



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