本部

息抜き、お料理教室! フルーツタルト編

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/05/31 18:55

掲示板

オープニング

●お料理レッスンのお誘い
 パティシエのお料理レッスン。
 夏に向けて美味しいお菓子をマスターしましょう!

 フルーツタルトを手作りして、一味違った夏を演出!
 たとえ料理が上手くなくても大丈夫、本場のパティシエが手取り足取り教えしします。
 夏のフルーツを満喫しましょう!

●ショコラールの簡単★フルーツタルト
 緊張が続く昨今、H.O.P.Eではエージェントや英雄の息抜きの為にパティシエを呼んで料理教室を開くことにした。
「ムッシュ、マダム、今日はワタシのお料理教室にようこそん! 今日は夏のフルーツタルトを作りマース!」
 パティシエ、ショコラール・クロワッサンは集まった人たちへ挨拶がてらに投げキッスを送る。
 広く清潔感が溢れ、幾つも並ぶ長テーブルにコンロとオーブンが付いた部屋。前方には大きなボードがあり、そこにはショコラールの簡単★フルーツタルトと可愛らしい丸文字が書かれている。その他の料理器具や設備もばっちりだ。
「まずは殺菌をしっかりしてくだサーイネ!」
 ショコラールは二度の石鹸洗いとアルコール消毒をし、すべての準備を整えてから冷蔵庫から本日のメイン、メロンとスイカを取り出した。
「やっぱりフルーツの中では格別なメロン! 今回は夏ということでメロンとスイカの双子パラダイスを提供シマスネ!」
 それを投げたかと思うと二本の包丁を構えショコラールは跳ぶ。くるりと回転して舞ったかと思えば着地と同時に、メロンとスイカが皿へと着陸! 16等分に綺麗に切られている。皮は軽やかにゴミ箱へと落下した。
「他にもパイナップルやさくらんぼ、マンゴーにブルーベリー、ラズベリー、いろいろな夏の果物を用意したカラ、好きに使ってくだサイネ!」
 盛り合わせのフルーツを冷蔵庫から出して、ショコラールはバチン☆とウィンク一つ。
 さあ、いよいよ実践が始まる! 美味しいフルーツタルトを完成させよ!

解説

●目的
 フルーツタルトを作って食べます。

●フルーツタルトを作る手順
1.手の消毒。(二度の石鹸洗いとアルコール消毒)
2.カスタードクリームを作る。
3.好きなフルーツを選ぶ。
4.フルーツを好きな形に切る。
4.用意されているタルト生地にカスタードクリームを盛る。
5.その上に好きなフルーツ、生クリームを飾りつける。
6.用意されたナパージュを塗って完成

●用意された夏の果物
メロン、スイカ、パイナップル、さくらんぼ、マンゴー、びわ、ブルーベリー、ラズベリー、カシス、小夏、なつみかん、ゆず、ぶどう、マスカット、桃、キウイ、いちじく、ライチ、あんず、プルーン、プラム、パッションフルーツ、バナナ

リプレイ


 縦横四列の長テーブルが並ぶ調理室。ボードの前、真ん中横二列とその後ろ二列は講師ショコラールが実践を行う為と必要な器具、焼かれているタルト生地などが置かれているので参加者の配置はない。コルクボードから見て左側、一列目が御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)。その後ろが鈴音 桜花(aa1122)とAlice(aa1122hero001)。二つのグループは友人同士の為、隣の配置となった。右側は桜小路 國光(aa4046)とメテオバイザー(aa4046hero001)。その後ろに豊浜 捺美(aa1098)とシャルティ(aa1098hero001)。そして三列目にコルクボードから見て左側から順に佐藤 鷹輔(aa4173)と語り屋(aa4173hero001)、九十九 サヤ(aa0057)と一花 美鶴(aa0057hero001)、零月 蕾菜(aa0058)、浅水 優乃(aa3983)とベルリオーズ・V・R(aa3983hero001)の配置となっている。
 使う食材の紹介、そして料理の手順、実戦を終えると講師は参加者に向き直った。
「必要な手順はその時にもう一度説明シマスから、安心してくだサーイ。まずは手洗いと、エプロンや三角巾がしっかりつけられてるか確認しまショウネ!」
 ショコラールはそう言って、隣人と確認し合うことを伝え自分も確認に回る。恭也は、那美を落ち着かせようとエプロンなどをチェックしながら声をかけた。
「基本的な事は教えたんだ。焦らずに講師から教えて貰った手順を守れば早々に失敗はせんよ」
「え~っと、食べ物を扱い時は清潔にする為に指先や指の間にも注意をして……」
「ふふ、恭也さんも那美さんのお手伝いですか?」
 手順を確認しながら行う那美を見つめて桜花が話しかける。桜花もまたAliceの楽しそうな姿を見守り手伝う為に来ている。
「やりたいみたいだったんでな」
「楽しみですね」
 和やかに話をしていると、Aliceが桜花の袖を引っ張った。毛が入らないように狐耳をしまおうと帽子と悪戦苦闘したが耳が大きいためかうまくいかなかったようだ。笑いながら桜花は耳が隠れるように帽子を被せ、後ろまで布があるエプロンで尻尾もしまうようにAliceに着させる。
「Aliceの作るタルトが楽しみですね♪」
「今回は、私が頑張るので桜花は見ててください!」
 嬉しそうにAliceがぴょこっと耳を立てた拍子に狐耳が帽子からはみ出てしまう。再び丁寧に桜花が耳を帽子にしまってあげた。
 一方、鷹輔はシンプルな飾り気のない黒エプロンを身に付け、自身の英雄語り屋――全身ラバースーツの上から三角巾とひらひら飾りの白エプロンをしている。果たして三角巾の意味があるのかは謎だが。と一緒にしっかりと手洗いをしていた。語り屋もしっかりと念入りに手を洗っている。しかし……。
「おやおや、それでは手を洗っても料理はできまセーン! 着替えて着て下サイ」
 手まで覆われたラバースーツを見つけて講師が声をかけてきた。しかし語り屋はラバースーツを脱ぐことが出来ない。困っているところに鷹輔が語り屋の肩を軽く叩いた。
「見学してろよ、俺の腕前を見とけよな」
「そうですね、残念ですが見学が――モン デュ!」
 講師は思案するように眉根を寄せたが、ある光景を目にして驚きの声をあげる。隣で準備をしていた美鶴がいそいそと二本の包丁と果物を持って果物を投げようとしていたのだ。ショコラールの実践を見て触発されたようだ。
「まって美鶴ちゃん! 多分それ無理だと思うから!」
 慌ててサヤが止めにはいる。その声に驚いたように目をパチクリしている美鶴。なんとか包丁を置かせて一息つく。
(……少し、いやかなり不安を感じるけど、なんとか完成できるよう頑張ろう)
 サヤはこれから先の工程に不安を覚えながら心の中で何が起きてもいいように自分に言い聞かせた。
 その一部始終を見てショコラールもほっとし視線を語り屋へと戻す。
「見学は残念ですが、タルトは一緒に食べましょうネ!」
 ひと声かけてから次のグループへと移動していった。
「こういうお菓子を作るのは久しぶりですね」
「あの……エプロンの紐、……ほどけてるよ」
 やる気満々の蕾菜がエプロンと三角巾の着用、手洗いを追えて腕まくりをし、いざ実践! というところで優乃がおどおどと躊躇ったように声をかける。
「あ、本当ですね。ありがとうございます」
 蕾菜は少しはにかんでお礼を言う。人見知りの優乃だったが気になってしまい勇気を出して声をかけた為、その反応にほっ、と安堵の息を逃がした。
「どういたしまして……あ、ベルも……エプロン結んであげるね」
 ややもじもじとしながら硬さの残る笑顔を返し、優乃は隣で四苦八苦しているベルリオーズに向き直る。
「ん、ありがとう。優乃の作ったタルトは、美味しかった……から、わたしも覚えて一緒に作るよ」
「うん! プロの人に教えて貰えるなんて嬉しいね。どんなのにしよう?」
 エプロンの紐を結びながら優乃とベルリオーズは和気藹々とおしゃべりを始め、手順通りに手を念入りに洗った。
「タルト……タルト……どんな風に作るんですか?」
「デザート作り頑張るなの」
「……シャルティも頑張る」
 メテオバイザーの菓子作りに意気込んだ声が隣の捺美とシャルティ二人の声と被って顔を見合わせる両グループ。
「これから教わるんだし、楽しみにしてたらいいんじゃないか?」
 そのタイミングの良さに國光が笑って言う。
「ほら、これで手洗いな」
 國光は石鹸を指差して手洗いの手順をもう一度復唱。三人が手洗いを終えると、アルコール消毒を差し出して「これな」と良いながら世話をやく。準備万端! とメテオバイザーが台の前に立つと、上着の上からエプロンを着ているのを見て、國光が彼女の肩を軽くつつく。
「上着脱げ。汚れるだろ?」
 その言葉にはっ、としてメテオバイザーがエプロンを外し上着を脱いでもう一度エプロンを着用する。しかし慌ててた為かエプロンの紐が縦になっている。
「エプロンの紐、縦結びになってる」
 國光はメテオバイザーのエプロンの紐を直しながら隣の二人の様子も伺う。捺美とシャルティがきっちりと準備ができたのを見ると、國光は一つ頷いた。


  全員の準備が完了したのを見届けると、講師は中央のテーブルでカスタードクリームの実践を披露する。
「ではカスタード作りからやりまショウ! 材料はテーブルに準備してありマース!」
 そういうと、参加者達の間を周り始めた。
「次はカスタードだね……何か気を付ける事はある?」
「そうだな……上に乗せる果物によって甘さを変えた方は良いと思うが何を乗せるんだ?」
 那美がいよいよと意気込みながら、恭也へのアドバイスを求めると、すぐに返答が返って来た。さくらんぼ、まんごーetcと答える那美。
「まあ、5~6種類位だろうが、さくらんぼ、マンゴー、メロンは別にした方が良いな」
「なんで?」
「カスタードを甘くするなら上に乗せる果物は酸味が有る物にしないと味がぼやける。逆に果物の甘みが強いならカスタードの甘さを抑えないと互いの旨味が殺し合う事になる」
「さすがですね、恭也さん」
 恭也の説明に納得したように那美はうんうん、と頷く。そこに微笑ましげに見守っていた桜花が話しかけた。
「いやまぁ……、そっちはどんな感じにするんだ?」
「こっちはラズベリーを使ってラズベリーカスタード――フランジパーヌって言うんですけど、それを作る予定です」
 Aliceがなんとか一人でがんばろうと分量を確認している姿を見つめつつ桜花は答えた。
「あと、他の人の作り方を見に行こうとも思いまして」
「それはいいな。何かあったら面倒みるぞ」
「ありがとうございます。それなら気がねなく行けますね」
 恭也の言葉に桜花は頭を下げた。
 一方、鷹輔は手際よくカスタードを作っていく。隣にいたサヤが鷹輔のカスタードが普通より少し違うことに気が付いた。
「わぁ、なんだかぷるぷるしてますね」
「硬めに作ったんだ」
「おお……」
 カスタードをもう少し見えるように鍋を傾ける鷹輔。そのぷるぷる具合に語り屋も感嘆の声を漏らす。 
「サーヤ、わたくしもできましたよ」
「なかなかだな」
 鷹輔に気を取られているサヤに自信満々に多少緩めのカスタードを見せる美鶴。う、うん。と頷くサヤの横から鷹輔がフォローを入れた。
「冷ましてる間にフルーツを切ってオキマショウ」
 一通りの参加者がカスタードを作り終えた頃を見計らい、冷蔵庫から料理番組よろしく既に出来上がっているカスタードを取り出す講師。カスタードをタルトに流し込み、メロンとスイカを乗せ、飾りつけのラズベリーを添えてナパージュを塗り完成までの工程を実演する。
「フルーツの配置ですが、ここは皆さんのアレンジが光り輝くところですから、存分に楽しんでクダサイネ!」
 その一言に皆、思い思いの果物を取りに行く。
 鷹輔も必要な果物をテーブルへと持ってきた。パインの芯抜きで、芯を取り除くと華麗な包丁捌きで輪切りにしていく。皮を剥いたバナナもついでに輪切りにすると準備完了。
「面白い組み合わせですね。どういうのを作る予定なのでしょうか?」
 各テーブルを回っていた桜花が鷹輔の果物のチョイスに目を止め彼に声をかける。一瞬驚いた様子を見せるも女子とお近づきになりたい鷹輔は声をかけてきたのが女性と分かると笑みを返す。例え男性だったとしても無下にするわけではないが。
「完成イメージは世界遺産サグラダファミリアだ」
 そう一言告げると、タルトの中心部に輪切りパインを置き上にカスタードを塗る。そして更にパインを重ねるのを繰り返し行っていく。
 一方隣では美鶴が困ったように自身が切った果物を見下ろしていた。
「サーヤ、どうしても大きさが同じにならないのですが……」
「えっと、皮剥いてから切らないとですよ、美鶴ちゃん」
(今まで食器を出すお手伝い色々してくれてるけど、料理してるところ見たことなかったわ)
 大雑把に皮を剥かずにぶつ切りにしていた美鶴にアドバイスを送るサヤだったが、その大雑把さにふと今までのことを思い出す。
「わたくしだってやれば皮のひとつやふたつ……っ」
 サヤのアドバイスに従い、皮を剥き始めた美鶴だが”剥く”というよりざくっと”切っている”としか言いようがない状態にサヤが慌ててそれを止めた。
「そうだ。メロンをスプーンで小さく丸くくりぬいてくれる?」
 これなら大丈夫だろうと提案すると、一つ頷き楽しそうに美鶴はメロンをくり抜き始めた。それを見たサヤはほっとして、美鶴にバレないようにカスタードを混ぜ直す。
「お手伝いは大丈夫みたいですね」
 桜花がそんな二人の様子を微笑ましげに眺めていた。そして、今度はサヤ達の隣に目をやる。蕾菜がもくもくと取り組んでいた。選んでいるフルーツはベリー系で、とくに変わった様子もなくカスタードはタルトに流し込まれている。ショコラールもうんうんっと頷きながら歩き去っていく。
 その横では、ベルリオーズがカスタードを作った後に残る卵白をしげしげと見ていた。
「卵の透明なのは、使わないの?」
「うん、卵白は使わないよ。捨てちゃうのも勿体無いかな……あ、果物はどうしよう……ベルが好きなの選んでいいよ」
 優乃が果物の方を指差すと、すぐにベルリオーズは果物を見に行った。
「桃とメロンとバナナと……これと……」
 そしてさくらんぼを手に取ると口に含みながら、型抜きも見ている。もぐもぐしながら戻ってきたベルリオーズに優乃が驚く。
「つまみ食いしちゃ駄目だよ……! もう……ベリー系は切らなくていいから持ってきた型抜き使って好きな形にしよっか……」
「ん……星と猫と音符もあるね。メロンとか、バナナ、音符のやつでくり抜くよ」
 注意されても今度は桃食べつつ型抜きを始めるベルリオーズ。優乃はため息を逃がしてから卵白の入ったボールを手に取る。
「ベルがやってる間に余りの卵白でメレンゲクッキー作ろうかな?」
「おや? それは良い提案デスネ! 皆さんの分もいただきまショウカ」
「では、私もご一緒していいですか?」
 そこに講師が寄ってきて、バチンとウィンク。うろうろしてた桜花が加わり、卵白を集めてクッキーを作り始めた。ショコラールはそこを二人に任せると、國光のグループへと移動する。
「いいところなのはわかるが、ブラウスの裾が鍋に入ってるぞ」
 呆れ声を出したのは國光で、それにメテオバイザーが慌てて裾を上げた。
「……カスタード手順多すぎる」
「私も手伝うからファイトなの。やけどには注意してなの」
 その横で、シャルティが愚痴を零しながらカスタードを作っている。捺美が励ましながら注意を促す。
 メテオバイザーはカスタードが完成すると、果物を取りに行きすぐ戻ってきて包丁を持ったかと思えば、メロンをカットのついでに一口だけぱくり。
「……は?! 何してるんだよ、メテオ?!」
「むぐ……味がわからないと困るじゃないですか」
 國光の驚きに目を瞬いて当然というように言い切った後、メテオバイザーは他の初めて見る果物を一口ずつ味見していった。
「味見大会なの?」
 ベルリオーズとメテオバイザーがもぐもぐと味見しているのを見て、楽しそうに笑う捺美。
「シャルティはどの果物が食べたいなの?」
「……桃がいい」
 そして自分も果物を取ってこようとシャルティに聞く。返答が返ってきて、頷くと捺美は多めに桃を持ってきた。
「桃のタルトに決定なの!」
「……刃物の扱いは得意」
 その桃を見ると、シャルティは包丁を取り出す。歯の部分をキラリと覗かせ危なげなく綺麗に皮だけを剥く器用さを発揮した!
「私以上の腕前なの!?」
 それに驚く捺美。そんなやりとりを横で笑って眺めていた國光にメテオバイザーが不満げな顔のまま話しかけた。
「サクラコ……」
 彼女の手には用意されたタルト生地。どうやらタルト生地も焼いてみたかった様子で、訴える目で國光を見ている。
「……わかった! わかったから! 帰りに買うから!!」
 圧力に負けた國光の返答を聞くと、にっこりと笑って機嫌を治し、メテオバイザーはタルト作りを再開した。
「あぅ、何か違う……うぅ」
 桜花がカスタード作りを手伝ってくれた後に、飾りつけるために果物を乗せているAliceは涙目になりながら、必死になっていた。
「どうした?」
 恭也がAliceに話しかけると、涙目のままタルトを指差すAlice。
「盛り付けが上手くいかないのか?」
「どうしたらいいでしょうか?」
「そうだな、好きな果物を入れたらいいだろう?」
 その言葉にAliceはう~んっと考えてから耳をぴこっと上げる。笑いながら恭也が耳を帽子に入れてくれる。
「桜花の好きなブルーベリーをたくさん入れます!」
「桜花さんのために作ってるんだな」
「はいです!」
 嬉しそうに笑って、飾り付けを今度は楽しそうに始めるAliceを認めてから、恭也は那美に声をかけた。
「タルトは小さい物を複数使った方が良いな。作り終わったら他の人と交換するんだろ?」
「勿論! 皆と交換するに決まってるよ」
 那美は頷いて、恭也に手伝ってもらった甘みの異なるカスタード二種を小さいタルトに入れていく。甘みが強い方には小夏、ラズベリー、あんず、キウイを甘みを抑えた方にはマンゴー、メロン、マスカット、桃、パッションフルーツを乗せてできあがりだ。
 鷹輔の方も出来上がりが近づいていた。タルトの中心部に輪切りパインとカスタードを重ね、真ん中の空間に生クリーム充填し、ぶどうとマスカットを上に置いて蓋をする。もちろん、ナパージュを塗って水分対策は完璧。パインと同じようにバナナの輪切りを直径大きい順に重ねて四本の塔を再現した。塔はパインの土台に寄り添うようにして設置。
「素晴らしい」
 その出来に、語り屋が賞賛の言葉を口にする。鷹輔はさらに土台の側面と塔に万遍なく生クリームを塗り、ベリー系でデコレートをする。そして、塔の上にはさくらんぼ。と、ここで手が止まった。
「美鶴ちゃん、果物なにのせたい?」
「メロンにブルーベリーにキウイ~、バナナに――」
 サヤが隣に魅入っている間に美鶴はさらに果物をざくざくと切っていた。楽しげに鼻歌交じりだ。サヤの視線に気がついて、あっと手を止めて片手で口を隠す。
「せっかくなので、色々な味を楽しみたいと思って……」
「……そうだ! それならいっそ色々楽しみましょ。タルトを8等分にしてその中にそれぞれ1種類づつ置いていってくれる? ラズベリーとブルーベリーも一緒にのせると色がきれいかも形がくずれたものは、クリームと重ねて層にすれば外からは見えないから大丈夫!」
 サヤの提案に美鶴の表情がどんどん明るくなっていく。
「名前をつけるなら”よくばりタルト”かしら」
 くすくすと笑い合って、二人は盛り付けをしていく。完成も間近だ。
「サクラコは、乗せる果物どれがいいですか?」
 一方では、メテオバイザー問いに國光が黙って小夏と夏みかんを差し出す光景も見える。
「優乃、出来たよ」
「出来た? わっ!」
 段々完成していくタルト。カスタード食べつつベルリオーズが優乃を見ると彼女は驚いた顔をして何かを見ている。そして大声が響き渡った。
「サ メトンヌ!」
 声の主はショコラーヌ、彼の目の前には蕾菜が目を瞬いて立っている。彼女の完成したであろうタルトが台の上に乗っているが、その見た目は青色のうぞうぞした食べ物に見えない何かだ。いったい何をどう飾ったのか、ショコラールには見当がつかない。
「……そんなにおかしいですか?」
「ファンタジックですネ! ワタシもこんな料理には初めて出会いマシタ!」
 ショコラールはその不思議な食べ物に興味津々で見つめている。
「うう……均一に塗るの難しい……あれ、すごい」
 カスタードを塗る作業は流石に難しかった様子でうなだれていたシャルティが声の方を見て無表情ではあるが驚いてる様子を見せた。他の人の視線も蕾菜に釘付けである。蕾菜は照れくさそうに頭を掻いた。
「……ところで何をこそこそしていたの?」
 シャルティが蕾菜のタルトから視線を戻し、蕾菜タルトの話題の前にショコラールと話しこんでいた捺美に声をかける。
「今回は材料が揃っていたから大きいタルトだけじゃなくて小型タルトも面白いと思ったなの。フルーツを切るのお願いしてもいいなの?」
「……ふふん……刃物の扱いは任せて」
 どうやら小型のタルト生地をいっぱいもらってきたようで、キウイ、バナナ、みかんなどをたくさん作る。お土産用に、と申し出たのだが大人の事情で参加者全員同じ量にしないといけないので、よければ職員にあげる分を作って欲しいと頼まれ快諾したのだ。
 そして、調理終了の時間が訪れたわけだが、鷹輔のタルトは結局完成しなかった。流石サグラダファミリア。


 使い終わった食器を片付け、真ん中に全員が作ったタルトを並べ、そのテーブルを囲むように椅子を持ってきて座る。
「ではみなサーン! 出来上がったタルトは交換して、色々な味を楽しみまショウネ! あと、少しばかりみなサンの作品を疲れた職員の癒しにさせていただきマスネ」
 タルトを順々にとって、箱に詰めるとショコラールはそれを横に置いた。働く職員へのプレゼントのようだ。そして講師が妙技で皆のタルトを味見しやすいように一口サイズに綺麗に切り分けてみせた。
 その間、恭也と鷹輔が湯を湧かして紅茶を淹れてくれる。
「恭也は何を飲むんだ?」
「俺は緑茶だ」
「へぇ、いいな。そうだ、コーヒーも淹れておくか」
「飲み物の種類が多いのはいいことだ。選び易い」
「そうだな」
 そんな会話をしながら、紅茶とコーヒー、緑茶を準備する。
「ほら、紅茶入れといたぜ。コーヒーもあるから飲みたい人は言ってくれ」
 鷹輔が周りに聞くと、各々が自分の飲みたい飲み物を持って行く。全員が持っていったところで、恭也は緑茶を持って自分の席に座った。
「……なんで、緑茶なの?」
「好みの問題だ。別に可笑しな組み合わせじゃないぞ」
 帰って来た相手に思わず那美が突っ込むも、さらりと恭也は受け流した。そこへ講師がやってきて、話しかけた。
「那美サンの二つの味のタルト最高ですネ。ハーモニーを奏でているみたいデス!」
 那美が頑張って作っていたのを見ていたのだろう、その言葉に那美が表情をほころばす。ショコラールは恭也にウィンク一つ飛ばして、その場から離れた。那美の隣では捺美がサヤ、桜花、優乃に声をかけて女子の集まりと化しているスペースになっている。
「うん、Aliceの作ったタルト美味しいわ♪ ありがとうね♪」
「桜花が喜んでくれるなら、嬉しいのです♪」
 幸せそうな顔でAliceの作ったタルトを食べて撫でて褒めてくれる桜花に、尻尾をぶんぶんとしてAliceは喜んでいた。
「料理お疲れ様なの。私たちは桃のタルトを作ったなの。お一ついかがなの?」
 捺美が一口サイズに切り分けられた自分のケーキを持ってくると味見にとみんなの前に差し出す。
「……おいしい……料理って楽しいね」
「喜んでもらえてよかったなの」
 隣で喜んでいるシャルティに捺美もご満悦だ。
「女の子の作るお菓子は美味しいですね、これはとっても個性的です」
 メテオバイザーも女子の会話に入る中、くっついて入っていく國光が女子のタルトを自分の皿で味見しつつコメントを発した。個性的なのはもちろん蕾菜のタルトだ。見た目は不思議だが味は悪くない。
「せっかくだし、スマホの連絡先教えてくれないか?」
 女子の。と付け加えようとして、國光から漂う静かな威嚇と、美鶴の目が険しくなりかけたのを見て、全員に鷹輔は声をかける。サヤはどうどうと美鶴にタルトを食べさせて落ち着かせた。
「え~っと、すまほ?」
「すまん……伊邪那美はその手の機器には疎いんだ」
「そんな事ないよ。前はそうでも今ならちゃんと出れるから」
 那美の言葉に今まで壊した携帯のことや掛けられないことを暴露する恭也。緊張しかけた空気が和やかになる。
「みんなで交換するのどうです?」
 サヤが提案すると意義はないようで、それぞれが交換を始めた。その際にタルトの感想などをちらほらと言い合っている。
「優乃、がんばって」
「あ、あの。クッキーも良かったらどうぞ――っ!」
 人見知りの優乃がベルリオーズの応援で今さっき出来上がったクッキーをみんなに見せる。
「優乃ちゃんのクッキー貰うなの!」
 捺美が貰うとシャルティが、その後次々に手が伸びてきて優乃の顔に笑みがこぼれた。
 そこでショコラールは手を叩いた。
「名残惜しいデスガ、お時間が来てしまいマシタ! 本日はとても楽しい時間をありがとうございマース! またお会いできることを楽しみにしてマスネ!」
 にこっと笑って、お土産用にそれぞれがつくったタルトの約四分の一を箱に詰めて、手渡していく。そして各々が立ち上がって出て行くのを見送るのだった。その際、講師は桜花を引きとめた。
「みなサンの料理をご見学されてまシタネ?」
「あ、はい、料理を作るのは大好きですから、皆様のどんな幸せな願いがタルトに込められてるのか楽しみで……」
「とってもイイですネ!! そう、料理は”愛”を込めるモノ! 今日は愛を見守る貴方、素敵でしたヨ」
 桜花の返答にショコラールはウィンクを飛ばすと、軽くハグをして彼女を見送った。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 百合姫
    鈴音 桜花aa1122

重体一覧

参加者

  • いつも笑って
    九十九 サヤaa0057
    人間|17才|女性|防御
  • 『悪夢』の先へ共に
    一花 美鶴aa0057hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御



  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • つむじ風
    豊浜 捺美aa1098
    人間|16才|女性|回避
  • エージェント
    シャルティaa1098hero001
    英雄|10才|女性|シャド
  • 百合姫
    鈴音 桜花aa1122
    人間|18才|女性|回避
  • great size
    Aliceaa1122hero001
    英雄|15才|女性|シャド
  • ひとひらの想い
    浅水 優乃aa3983
    人間|20才|女性|防御
  • つまみ食いツインズ
    ベルリオーズ・V・Raa3983hero001
    英雄|16才|女性|ジャ
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 葛藤をほぐし欠落を埋めて
    佐藤 鷹輔aa4173
    人間|20才|男性|防御
  • 秘めたる思いを映す影
    語り屋aa4173hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
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