本部

【東嵐】連動シナリオ

【東嵐】発電プラント潜入指令

月乃一颯

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/05/16 11:39

掲示板

オープニング

●スニーキングミッション
「香港での作戦行動、お疲れ様です。本件はマガツヒ残党の対処になります」
 オペレーターの話では、現在、香港周辺の発電プラント周辺にはカプリコーンやサハギンの従魔の一部が残留しており、発電プラント内にはマガツヒのメンバー4名が立てこもっている。
その発電プラントに残っているマガツヒのメンバーが、先程H.O.P.E.に要求を突き付けてきたという。
『発電プラント各所には爆弾を設置した。我々の安全な退去が保障されなければ発電プラントを爆破する』
 と。
 ブリーフィングルームに入った時から机の上に表示されてクルクル回っていたのは発電プラントの3D画像。
従魔であるカプリコーンやサハギンはマガツヒのコントロール下にはないが、H.O.P.E.に対しての盾としては機能している。
だからこその、退去保障要求だろう。
「この要求に対してH.O.P.E.は要求を受け入れる振りをして時間を稼ぎ、本作戦を持って解決すること決定しました」
 仕掛けられた爆弾の数および場所は不明。
後のないマガツヒ達はこちらに不審な動きがあれば躊躇なく爆弾を起爆させると思われる。
「マガツヒメンバーが爆弾を仕掛けて立てこもっている発電プラントに潜入し、彼らが爆弾を起爆しないように、密やかに速やかにマガツヒ全員を撃破すること。それが、今回の作戦です。本作戦上において必要な品物は申請いただければと思いますが、本日11時30分開始となります。状況によって準備出来ない場合もありますが、何かあれば申し出てください」
 雨が降る前に飛ばした偵察ドローンが落とされていることから、少なくても相手に一人以上優秀なスナイパー、ジャックポット系の能力者がいると推測される。
 もし、プラントが爆破されてしまえば経済的ダメージは計り知れず、H.O.P.E.の信用にも響くだろう。
古龍幇との会談前であり、微妙な関係にある今は尚更、不安要素はない方がいい。
 詳細情報と周辺地図や建物のデータの入ったメモリーを受け取って、エージェントたちは準備を始めた。

●追い詰められし者たち
 半島のように北側以外は海に突き出ている火力発電プラント管理室で、マガツヒのメンバーを前に、面倒なことになったと、管理室で漆黒の日本刀を携えるリーダである男は起爆装置を片手に思った。
 本来この発電プラントに務めていた職員は排除済みのこの状況で、H.O.P.E.が要求をのむ可能性は低いだろう。
それ故にというか、当然の用心として、仲間に罠を張り巡らせ、見張りや巡回をさせる。
 H.O.P.E.のエージェントが襲撃をかけてくるならそれはピンチでもあり、チャンスでもある。
「奴らは仲間を見捨てられない。一人でも生かして捕らえられれば、今度こそ要求をのむだろうが……」
「隊長、まさか生かして捕縛しろ、なんて言いませんよね?」
 ドローンを落としたジャックポットの能力者である仲間の声に隊長と呼ばれたリーダーの男が笑う。
「当然だ。見敵必殺。場所が判明すれば即、近くの爆弾を爆破する。捕縛できたとしたらそれは単なるオマケだ。我々にとっての有終の美とは、どれだけ奴らにダメージを与えてやれるかということのみだ」
「さすが隊長、判ってるぜ!」
 柄が1mある斧を担ぐ男の声に部屋に集まっていた4人は追随するように笑う。
人数は少ないが彼らは香港での戦闘を戦い抜いた精鋭である。
「さて諸君、配置についてくれ。定時連絡を忘れるな。我々のために混沌を。行動開始だ」
 外は雨、彼らにとっては不利だが午後になれば天気も回復し、H.O.P.E.からの正式な返答もあるだろう。
――その時、どうなっているのか楽しみだ。

解説

●目標
発電プラントに潜入し、仕掛けられた爆弾を起爆させずにマガツヒを撃破する

●マガツヒ
軍隊上がりを含む合計4名。
監視カメラを確認できる管理室に一人、残りが見張り、巡回をしています。
建物は5階建で北から入って右奥にあり、管理室は2階で外付けの避難階段と内側の階段脇にあります。

●従魔
発電プラントの周囲にカプリコーンとサハギンの残党がいますが、討伐はマガツヒ排除後に本隊が行うため考慮不要です。
・カプリコーン:全長2~3m。山羊の頭で、道具や武器を扱う。
・サハギン:海で見られる半漁人型の従魔。水中での活動に適している。

●状況
・午前11時30分作戦開始。天候:ゲリラ豪雨
・爆弾の場所は不明。解除には専門知識及び技術が必要です。
・変電所の内外は防犯カメラで監視されています。
 北側の表玄関とフェンス(2m)を見通すようにカメラがあり、フェンスには有刺鉄線(50cm)の返しがついています。
タンクや細々とした建物間にも少なめですが監視カメラがあり、管理室のある建物の通路、階段には必ず一台配置されています。
配置場所、カメラ撮影範囲はH.O.P.E.から渡されたデータに詳細があります。

※OPの文章「●追い詰められし者」と以下の文章は、開始時点でPCの知らない情報です。
●状況2
・敷地、建物内には糸に引っかかると銃弾が飛んでくるブービートラップがあります。
・巡回の無線は5分ごとに定時連絡があり合言葉のキーワードがあります。
・エアダクトがあり小柄な人物なら侵入可能ですが、温度感知による警報装置あります。
(コンビニや100円ショップで手に入る材料数点を工作することで対策可能です)
・スナイパーが2名、交代で非常階段を狙える向かいの建物の屋上で狙っています。
・リーダーはシャドウルーカー、スナイパー2名はジャックポット、残り1名はドレッドノートの能力者であり、大規模作戦を切り抜けられるだけあり全体的に強めです。

リプレイ

●午前11時30分作戦開始
 発電プラントの北側にある小高い林の裏から、エージェントである彼ら全員が装備しているライヴス通信機やスマートフォンの防水機能を試すような雨の中を南側へ移動し雨雲が帯電する音を聴きながら発電プラントを観察する。
 発電プラント周辺にはうっすらと霧がかっているが、時間は昼前のため雨雲に覆われていてもそこそこ明るく、巡回に動いている人物を確認するくらいは問題ない。
それは相手からもそれだけ見えるという事ではあるが、木々の合間から観察する分には見つからずに済むだろう。
「ふふ、凄いね。映画みたいだ」
『……プラントに近づく時は、あまり音は出すなよ』
 スナイパーゴーグルを使い、実際の建物と資料にあった地図を照らし合わせながら、共鳴した英雄オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)の金色の瞳を借りて木霊・C・リュカ(aa0068)はプラントの様子を探る。
木霊たちは基本、共鳴時には荒事に慣れたオリヴィエが主導をとるが、プラント内に入るまでなら戦闘予定もないため、しばし木霊に譲ったらしい。
「ハイド&シーク! だもんね。スナイパーがいるなら管理室のある三階建ての建物を全体的に見れる場所だよね……やっぱり向かいの四階建ての建物の最上階か屋上かな」
 B班として木霊とスナイパーの対処に当たる迫間 央(aa1445)も確認していた監視カメラの死角を思い出し実際の現場に重ねて侵入経路を考察する。
迫間は、豪雨の視界の悪さと合わせて出来る限り自身の行動を秘匿できるよう建物の色や物陰での黒に近い色の服装をイメージプロジェクターで設定していた。
「そうだな。内訳はスナイパーが屋上付近に一人、管理室に一人、巡回が二人という所か」
「はい。央さんが推察していた巡回ルートと、大きく違わない場所を巡っているようです。……今、無線で連絡をとったように見えました」
「……ん、定時連絡、かな?」
 資料から、プラント周囲の風景にとけこみ易そうな服装を設定し、木霊と同じくスナイパーゴーグルを使って観察していた天城 稜(aa0314)が迫間に応じて時間を確認し、天城と一緒にC班として巡回者を担当する佐藤 咲雪(aa0040)が気だるげな声で話す。
 佐藤はいつも通り、ミッションの前には「……めんどくさい」と呟き、アリス(aa0040hero001)に「……発電所一基壊れた所で直せばいいだけだけど、補修には時間と資金が掛かるのよ」というような感じでなだめられ、そして「……ん、お仕事、だから……ちゃんと、やるよ?」と肯定の返事をするまでがルーチンワークのようなものであり、覇気はないが、仕事はきっちりする頼りになる仲間である。
「管理室向かいの建物から一人出てきた。巡回が二人で確定かな……定時連絡なら合言葉とかあるかもね」
「通信がどんな内容かは聞いておきたいですね。向かいの建物からの巡回もあるならエアダクト侵入口は西側からがいいですよね? 定時連絡のタイミングを確かめて、連携させない為にも同時に襲い掛かれるようにしたいですね」
 H.O.P.E.の資料にあったエアダクトからの潜入を試みる班、あえて呼称を揃えればA班だろうか。
無口な英雄、墓守(aa00958hero001)と共鳴したハーメル(aa0958)が雨よけに額の高さに手を横にかざしてプラントの西側を眺める。
「状況次第だが、こちらの連携を考えると、最初にスナイパーを排除して、A班とC班を援護に行きたい。戦闘をする前には互いの状況を確認して不測の事態は避けたいところだな」
「カメラの不自然に死角になる部分があれば、他のセンサー類が付いていることを疑った方がいいです。打ち合わせ通り、情報は逐次共有しましょう」
 雨に濡れて額に張り付く紫の前髪を払って後ろに流した、ハーメルに答えた迫間と同様に黒系の目立たない服を身にまとう少年、紫 征四郎(aa0076)もハーメルと同じく、エアダクトから管理室へと潜入する予定だ。
不自然な死角……それはきっとエアダクトにも当てはまる。
『出来るだけ爆発させねぇとなれば、バレないよう行くしかねぇ。骨が折れそうだな』
共鳴中のガルー・A・A(aa0076hero001)と内に響く声に同意して頷く紫は、エアダクトの攻略に色々用意してきたが、何が正解かは今のところ分からない。
『完全なステルスミッションだから用心しないと……木霊さんが言ったみたいに映画とか、少し前に出たゲームみたいだね』
 天城は共鳴したリリア フォーゲル(aa0314hero001)と心の内で会話する。
『ええ、そうですね。でも、今はゲームではありません。気を付けていきましょう』
『ああ、了解だ』
 まずは、強力な従魔である大きく山羊の頭をしたカプリコーンと、水中さへ平気で移動する半魚人のサハギンがうろつき監視カメラが作動する中、フェンスの向こうへ潜入しなくてはならない。
「B班は、話していた一番東のルートがようさそうだな」
『そうだな』
「了解だよ」
 幾つかあるカメラの死角から、現状に最も適していると思われる場所を考えた迫間の意見に、オリヴィエの答えを聞いて木霊が答える。
「私たちは西から二番目のルートがいいと思いますが、いかがでしょうか?」
「いいと思います」
「……ん、C班も、それ」
「はい。……あ、待ってください、巡回の人が西側のエアダクトもチェックしてるみたいです。佐藤さん、僕、エアダクト班について行って手伝おうと思います。見張りをお願いしていいでしょうか?」
「……ん、任せる」
 紫にハーメル、佐藤に天城の会話により、A班とC班のルートも決定し……。
「行くぞ」
 迫間の声をきっかけに、迫間と佐藤は潜伏のスキルも使って、二班に分かれた侵入ルートへと、エージェントたちは慎重に林を下りだした。

●侵入ルート・東
 数メートル先をサハギンと巨体のカプリコーンが通り過ぎる。
木霊と迫間は木々の影で息を殺してやり過ごすと、木霊は口元を抑え小声でライヴス通信で連絡を取る。
「こちらB班。そちらにカプリコーン1、サハギン2、向かっています。A班どうぞ」
 口元から耳に手を動かして、返ってきた内容を迫間に伝える。
「今、フェンスを越えたって」
「速いな。こちらも慎重に急ごうか」
「了解」
 目標の地点まで、幾つかの物陰を経由して辿り着いたのは、頂点2mの三角形をした土の山が巡回者と監視カメラを遮る場所。
 潜入工作は初めてというわけではないが、条件の厳しい潜入作戦に、共鳴すると気分が高揚する傾向がある迫間もやや、緊張する。
『大丈夫よ。私が居るもの……多少のミスは雨が消してくれる。固くならないで』
 それは仲間に隠すことは出来ても共鳴しているマイヤ サーア(aa1445hero001)には隠せない。
『……頼りにしている』
 迫間は木霊にフェンスを斬り裂く範囲を示し、それに頷いた木霊がグリムリーパでコの字型に起用に斬り裂いてドアの様に引く。
茶室の躙り口程度の大きさに開かれたその場所を迫間が潜った後に続き、ドアを閉めるようにフェンスの曲がりを調整すると、木霊はオリヴィエに主導を明け渡した。
 オリヴィエが、迫間が進行方向を示しす手の動きに頷くと、二人は予定していた侵入ルートを雨音と物陰に紛れて移動していく。

●侵入ルート・西
 フェンスの高さは約2m25cm。
運よく周辺に従魔の姿はない。
「待って、そこに何か……」
紫の言葉に、天城が確認する。
「ブ―ビートラップですね。これならスキルがなくても解除できそうです。先に行って解除します」
 助走をつけて飛んだ天城は罠を避けて着地すると、物陰に身を寄せて修理箱からニッパーを取り出して仕掛けの透明な糸を切り解除する。
「紫さん、天城さん、グッジョブです」
 ハーメルがそう言い、紫、佐藤、と次々にフェンスを越えたところで、B班の木霊からハーメルに通信が入る。
「従魔がこちらへ向かったそうです。……こちらAC班、四人全員フェンスを越えました」
 通信を終了すると彼らは顔を見合わせて頷き、佐藤は巡回者を見張るためにやや左へ。
天城を先頭にして紫とハーメルが続き、エアダクトを目指して右側のルートを姿勢を低くして移動して移動した。
 そうして、しばらく慎重に進み目的の建物まで40m程の場所まで来た時、佐藤から天城へ通信が入る。
『天城さん、人が来る。多分、ダクト見に行く』
「天城、了解です。……ダクトの巡回が来ます。少し下がりましょう」
 ハーメルが確認しながら素早く後退してコンテナの90度直角に曲がった先に身を隠し、紫たちも後に続き身を潜める。
『天城さん、巡回の人、ダクト見終わり、西にある道を南から北に向かっている。…………ん、通り過ぎた。このままなら2分くらいは、ダクトに行かないと思う』
「了解。ダクトに向かいます。急ぎましょう」
 佐藤のフォローで巡回を切り抜け、目的の建物西側へ辿り着く。
「ハーメルさん、見張りをお願いします」
「了解です」
 天城は持参していたメトロニウムシャベルをダクトの下の地面に刺して斜めに立て掛け固定すると、柄の部分を足場にして応急修理セットから取り出したドライバーを使ってエアダクトのカバーを素早く取り外し、ハーメルと見張りを代わる。
 紫は、エアダクトの大きさを見て、共鳴を解くべきか心の内でガルーと相談する。
共鳴すれば身長は171cmと少し高いが細身の少年であり、共鳴していないときは121cmの細身の少女である故に。
『このままでも行けそうですが……』
『リンク解いても登れるだろうが、スキルが使えなくなるからな。ハーメルに聞いてみたらどうだ』
『そうします。…………ねぇガルー、どうしても殺さねばなりませんか?』
『降伏させる余地がありゃ良いが、ここまで追い詰めて白旗を上げねぇ奴らだ……まぁ、難しいだろうよ』
 戻ってきたエアダクトを先行するハーメルに、紫は手鏡を差し出す。
「使ってください。ハーメルさん、ライトアイは必要ですか?」
「ありがとう。……ああ、そっか。途中まではスマホの光でなんとかなると思うけど、最後の出口付近では慎重に行きたいから欲しいです」
「判りました。リンクしたままで行ってみましょう」
「よろしくお願いします……B班へ、これからエアダクトに入ります」
 ハーメルと紫がエアダクトに消える。
「天城から佐藤さんへ、これからエアダクトのカバーを取り付けたら、C班の行動に移ります」
『……ん、了解』
 ライヴス通信の宣言通り、天城はダクトカバーを元に戻し、シャベルを刺して削れた地面を慣らすと、巡回者の対応をすべく、佐藤の元へ向かった。

●B班:スナイパーに対処するために
 ハーメルからエアダクト突入の連絡を受けたのは、避けられる罠は避けて、スナイパーが居るだろう建物の侵入口に辿り着いた時だった。
「B班了解。こちらも目標の建物に今から入る」
 C班にも連絡を入れタオリヴィエは侵入口の窓を、角度を変えて見て回る迫間に声をかける。
「罠か?」
「確証はないが……オリヴィエ、肩を貸せ」
「ああ」
 上を見上げて言う迫間の意図を察したオリヴィエは両手を壁について体を支えた。
迫間はそのオリヴィエの肩に乗り、二階の窓の鍵を鍵師のスキルを使って開錠し窓枠に手をかけ、窓を開けると建物中にするりと入り込み、すぐに窓から身を乗り出してオリヴィエに手を差し出す。
オリヴィエはジャンプし、迫間が差し出した手を掴んで壁を駆けのぼり、窓枠に空いているもう片方の手を掛けて引っ張られるように建物への侵入を果たした。
『次の角、カメラの死角が狭い…右に寄って』
 マイヤのナビゲートを受ける迫間の後をオリヴィエは慎重に追っていく。
 今回、迫間・マイヤ組と、木霊・オリヴィエ組は、迫間たちが罠回避の為に先行し、木霊たちは連絡と物音を重点的にした周囲の警戒と、役割分担をして互いの負担を減らすように行動しているのだが、適材適所だったのだろう。
ここまで問題らしき問題もなく辿り着いている。
「さて、次は監視カメラの死角をついて階段を上がるわけだが、ここも罠がありそうだな」
 きっと、先程の侵入しようとした一階の窓にも、この階段を上った先にも罠があるのだろうと、オリヴィエと木霊は思う。
「……俺ならそこに仕掛ける」
 普通なら聞き取れないくらいの小さな声で呟かれたその言葉を、特に音に対して意識を研ぎ澄ましていた木霊たちはしっかり拾ってしまい……迫間の罠発見率の高さについて妙な納得が出来たような気がした。
「手前の手すり三分の一まで跳んで、そこから真っすぐ上に跳んでいく。罠は罠師を使って解除するから気にしなくていい」
「了解」
 そうして、最上階まで上がった時に、C班の佐藤から巡回するマガツヒの情報が伝えられた。
 ライヴス通信でオリヴィエが了解を伝え、監視カメラを避けながら匍匐前進してスナイパーがこの階には居ないことを確認し終わった時、今度はA班の紫から通信が入った。

●C班:巡回者とのかくれんぼ
 佐藤は鷹の目の鷹を肩に後ろ向きに乗せて後方の視界を確保して観察する。
「……ん、やっぱり……無線で、連絡取ってる」
『想定通りね、定時連絡の間隔は5分って所かしら?』
「一応……次の連絡の時に……接近して内容を聞き取る……ね?」
 アリスと遣り取りした内容を、A班の紫とB班のオリヴィエと同じC班の天城にライヴス通信で伝える。
 佐藤は、近くまで移動してきた天城と協力してマガツヒたちの通信内容を知ろうと動いていた。
「……ん、天城さんが居る所、からもう一つ南のブロックが進行方向」
『了解、移動する』
優秀なナビゲーターである佐藤の報告に、天城は素早く匍匐前進して移動して耳を澄ますが、残念ながら無線の内容はぶつ切りで聞き取れない。
 そうして、引き続き佐藤と天城が地を這って監視カメラを躱し、罠を解除しているC班にもA班からの連絡が届く。

●A班:エアダクトの中で
 細身だったため、身長は少し高めだったがなんとかリンクした状態でエアダクトの移動をこなした紫と、紫から預かった手鏡とスマートフォンの光を元に曲がった先の罠などを確認して進んできたハーメルは、管理室までもう少しという所で止まり、口元を抑えたごく小さな声で紫に状況を伝えた。
 ハーメル同様に紫は小声で、もうすぐ管理室に行きつき、この通信の終了した三分後くらいには突入準備が出来るだろうことを連絡する。
B班からは同様の状況であること、C班からは定時連絡をしているようなので、管理室で報告を受けている会話を聞き、A班は他の隊の準備が出来るまで待機することにする。
そして、最初に戦闘を始めるのが望ましいB班の開始報告から4分後に突入することにして、目の前のハーメルも含めてそれぞれにその内容をライヴス通信で伝え、了承を得た。
 通信を終えて匍匐前進の移動を再開し、通信室からの灯が漏れている曲がり角の前まで進んだ。
その場所でハーメルから合図を受けて、紫はライトアイのスキルを使う。
 ライトアイにより明るくなった視界で、紫から預かった手鏡を手に見た曲がり角の先、ハーメルは、灯が漏れる管理室に続くエアダクト内に、今までになかったものを見つける。
『……スマホの、サーモグラフィーモード?』
『画面が、……青と緑の、……斑……?』
 ハーメルは思わずその正体について、心の内で墓守へと問うように呟く。
鏡に映ったダクトの先にあったのは直立に立てられたスマートフォンであり、その画面は、曲がり角から覗かせた鏡の形が濃い青を背景に青緑色に映っていた。
『黄色以上の温度を感知したら音を出して知らせる、とかなのかな?』
『……恐らく……罠師で解除……すれば、いい』
『了解。罠師で解除!』
 すると、鏡に映ったスマートフォンの画面がブラックアウトする。
 解除に成功したのを確認したハーメルが、定期連絡の内容を把握するためにスマートフォンの近くまで顔を管理室側のダクトに突っ込んで待つと、マガツヒのメンバーが定期連絡をする声が、聞こえてきた……。

●終わりは速攻で
『一瞬で決めるわ……私と同調して。後は任せて』
『あぁ……任せたぞ』
 C班からコンディションが整ったという連絡を受け、屋上の物影に潜んでいた迫間とオリヴィエは、標的が定時連絡を終えた直後に仕掛け、A班に始まりを告げた。
 オリヴィエが、寝そべるスナイパーの背中から頭部にかけて中心に狙った光線銃が鳴る雷に交じり光を放って背を焼き穿つ。
 マイヤの力を借りながら忍び寄った迫間は短剣を繋ぐ鋼線をその首に絡めると、その刃先を追い打ちをかけるように背中に突き立てた。
 オリヴィエが声も出せずに苦しむスナイパーの頭に銃口を突き付けて止めを撃つと、迫間は武器を射程の長い九陽神弓に持ち替え、マガツヒが使っていたサイレンサー付きのスナイパーライフルをオリヴィエに渡した。
「使えるだろ?」
「当然だ。……稜、こっちはクリアだ。援護する。カウント始めるぞ」
 オリヴィエは天城に通信しながら場所を変えてスナイパーライフルを構えると、迫間が隣で弓を構えたのを横目に数える。
「5、4、3、2、1……」
 ファストショットのスキルと共にパシュっと空気が抜けるような音と、弾かれた弓の音が向かった先……。
カウントゼロのタイミングで低姿勢に走りこんでスライディングで突っ込んだ天城の目の前。
巡回していた銃を持つ男の身体を矢と銃弾が突き抜けた次の瞬間には、天城も純白と漆黒の一組の双槍を男に突き刺した。
「Good night.……Enemy down」
 ライヴス通信機から響く綺麗なクイーンズイングリッシュで敵の沈黙を確認したオリヴィエは、既に移動し始めた迫間の後を追い、管理室のある向かいの建物の屋上へ飛び移ると、迫間のカウントは既に3を数えていた。
 大剣を抱えた男の脇腹に矢が突き刺さると、彼の進路上に潜んでいた佐藤が後ろから手早くノーブルレイを首周りに巻き付け、絞めていく。
「……ん、音を立てずに殺すには……コレが、一番」
『従魔には使いにくいのよね、こういう方法。あと、トドメは忘れちゃダメよ。途中で覚醒されても困るもの』
「……ん」
 気絶した男へ、しっかりと止めを刺す佐藤に、敵を殺す事への躊躇は無い。
それが例え人間であったとしても……。
 敵である従魔は殺して良いけど、敵でも人は殺してはいけないというのは佐藤にはイマイチ馴染めない感覚だった。
 だから……監視カメラの死角を進むのに時間がかかって管理室での戦闘に間に合わなかったのは、いい事、だったのかもしれない。

●終焉
 屋上から非常階段を静かに降りて、迫間が鍵師で開けた非常口のドアを開けた時、管理室の扉の奥から、ガシャンという、ハーメルがダクトカバーを蹴破ったのだろう音がした。
 管理室に降り立ったハーメルは、刀を腰に下げ、スマートフォンを持つ男に縫止を使い、その動きを鈍らせる。
そしてダクトから飛び降りたもう一人のエージェント、紫が剣を振るった。
トリカブトの花が剣刃に彫刻された美しい剣によって、スマートフォンが男の手から叩き落されると、ハーメルがその隙をついて鋼線で男を拘束する。
拘束されて尚、あきらめ悪く無線に叫ぶ男の喉に、紫は剣を突き付けた。
「無駄です。あなたの仲間は倒されました。もう決着はついたようなもの、観念して捕まってください!」
「はっ! 俺は諦めが悪いんだ。観念なんてするものか、よ!」
 男は紫の剣から逃れるように上体を斜めに逸らしてハーメルに体当たりし、鋼線の拘束から転がって逃れ、落としたスマートフォンを拾おうとするが……。
勢いよくドアを開けて入ってきたオリヴィエに妨害射撃を受け、迫間に腕を射抜かれて失敗する。
恐らく爆弾の起爆装置なのであろうスマートフォンをハーメルが拾った。「諦めが悪いのは、私もお互い様なのです」
ダン! と音を立てて、男の首元へ紫は剣を突き立てた。
「ああ、そうかい」
 可能であれば捕縛したかった紫の想いを退けて男は紫の腹部に蹴りを放ち、ハーメルの投げたナイフと、迫間とオリヴィエの射撃に沈んだ……。
 間もなく、佐藤と天城も管理室に駆けつけ、豪雨も止み、晴れ間がのぞいたが……紫の気持ちは、空のようには晴れなかった。

 香港を騒がせた、発電プラントに爆弾を仕掛けたマガツヒ残党を無事撃破し、今回の作戦は成功した。
爆破による経済的損失を防ぎ、古龍幇とH.O.P.E.の会談へ向けての不安要素という暗雲を払えたのだから。

 雨に濡れた服で輸送ヘリを待つ。
見上げた空に架かっていた春の嵐の置き土産のような大きな虹は、紫と仲間たちの気持ちを少し浮上させた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 神月の智将
    ハーメルaa0958
    人間|16才|男性|防御
  • 一人の為の英雄
    墓守aa0958hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
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