本部

セラエノと泥棒、オーパーツの女神像

睦月江介

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/05/09 19:29

みんなの思い出もっと見る

掲示板

オープニング

『全ての道が通ずる』といわれた芸術の都、ローマを擁する国、イタリア。夜の静寂を破る大勢の男の声を背に、1人の男が美術館裏の路地を駆けて行く……実はこの男、ヨーロッパ各地を転々とし、美術品を主なターゲットとする泥棒である。能力者ではないながらもあの手この手で警察の手から逃れ、国際指名手配されているその手腕から時たまTVニュースで報道されるちょっとした有名人だ。今回彼が美術館から持ち去ったのは、いかにも歴史ありげな青銅の女神像。
 本来ならばこれを今までの盗品同様保管場所に持ち帰りほくそ笑むところだが、今回ばかりはそれどころではなかった。彼を追っていたのは警察だけではなかったのだ。
「くそっ、何なんだあいつら! そんなにこんなガラクタが欲しいのかよ!」
 男にしては珍しい暴言。金になる美術品をガラクタ呼ばわりするなど、それまでは無かった。だがこれはガラクタ、と言われても仕方が無いかもしれない……あまりにも特殊で、同時にあまりにも役に立たない代物だったからだ。
 彼がその性質に気付いたのは女神像を盗み出した直後。中に何か入っているらしい、というのがまず音で分かった……中身については後で改めようと懐に像を納めた時に、像が光ってその現象は起きたのだった。異常を感じた男がすぐに持ち物を改めると、ベルトの装飾、財布の金貨……金でできたものが、銅になっていた。
「逆ならともかく、これじゃ損にしかならねえ……もう得体の知れない連中に追われるのもゴメンだ、こんなモンいるかよ!!」
 像を捨てた男を追っていた得体の知れない連中……真理を探究するヴィラン組織『セラエノ』の構成員たちは皮肉にもこの行動によって彼をターゲットと定めた。
「と、ここまでが現在の状況だが……実は女神像の中に入っているのはオーパーツだ。そしてその効力は使い方次第では経済を大きく混乱させることも出来る。そこにセラエノが目を付けたようだな」
 オーパーツは未知の部分が多く、扱い方次第では何が起こるかわからない……それをセラエノの手に渡してしまった日には、どれだけの危機が訪れるか想像もできない。
 金というのは案外広く使われている……携帯電話などの内部に使われている金が銅になってしまえば当然電話は機能しなくなってしまうだろう。金のアクセサリーも、銅になってしまえば瞬く間にその価値は暴落する。最も深刻なのは貨幣……金貨が銅貨になる状況が立て続けに起こったりすれば、最悪、ヨーロッパ全域どころか世界中の経済がズタボロになりかねない。
「男は青銅の女神像を捨てて現在も逃亡中だ。女神像は何としても確保しなければならないので、像を捨てた男を確保して、捨てた場所を聞き出して欲しい……セラエノと目的が同じ以上、争奪戦だな」
 逃亡中の泥棒……ひいては金を銅に変えるという『反・賢者の石』とでも言うべきオーパーツが入っている女神像の確保が最優先、別に戦闘となっても構わないが、泥棒が巻き込まれて捨てた場所を話せなくなってしまっては本末転倒のため、そこは留意して欲しいと職員は語る。
「しつこいようだが、オーパーツは未知の要素が多く危険な代物だ、必ず回収して欲しい。エージェント諸君の幸運を祈る」

解説

 セラエノの構成員よりも先に泥棒を確保して青銅の女神像を捨てた場所を聞き出し、内部のオーパーツを確保してください。男は泥棒としては優秀でそこそこの身体能力はありますがあくまで一般人なので共鳴した能力者には及びません。オーパーツの機能は『金を銅に変える』というもので、考えようによっては甚大な被害をもたらす犯罪に使用する事も可能です。そうした危険性から、今回はセラエノとの戦闘よりもオーパーツの確保が優先となります。
 セラエノの構成員達は泥棒の捜索を優先しているため1人ないし2人で動き、美術館近辺に散っています。美術館は観光スポットとして有名なため裏口周辺以外は比較的大きな通りに面しており、深夜といえど道が認識できる程度には街灯が設置されています。自動車などでの移動に向いているため、泥棒は何とかここで移動手段を確保したいと考えますが道が大きく明るいため発見される危険も高いです。
 裏口付近は細い道が入り組んでおり明かりも少ない暗い道になります。隠れるにはもってこいですが逃げるには不向きなため、こちらをうまく迂回して大きな通りに出るのが逃亡する場合の最適ルートになります。
 セラエノ構成員は能力者としては平均的な強さですがそれでも泥棒に致命的なダメージを負わせるくらいは可能なので戦闘に入る場合巻き込まないための工夫は必要になるでしょう。

リプレイ

●ピザも作戦も、下準備が重要
 遡ること、数時間ほど前。
「コソ泥の分際で手間をかけさせおって……どうだ、見つかったか?」
 黒いローブを羽織った大柄な男が部下らしい男に問う。どうやら彼がセラエノの部隊を指揮しているらしい。
「いえ、それがまだ……時々ニュースで騒がれるだけの事はあるようで、どうやら周辺の裏道を熟知しているようです。それに警察の連中もうろついています、面倒ですね」
「ふむ、そうなると土地勘の無い我らが路地の捜索にあたっても裏をかかれるやもしれん……表通りに出る道の周辺を中心に固めろ。オーパーツの価値も知らんドブネズミが頭を出したところを捕らえるのだ」
「ハッ」
 セラエノがこうして方針を固めた頃、エージェント達はというと……任務の愚痴やら観光やらで時間と使っていた。
「うわー、イタリアなんて初めて来たよ」
「俺は……来たのか? 何と無く卒業旅行とか言うフレーズが浮かぶからそれで来たんだろうな」
「は? あたしが来た事ないのにトシナリが来た訳無いじゃん!」
「いや、その理論、何度も言う様におかしいから」
「じゃあ、知って驚くイタリアクイズ! 答えられなかったらイタリア初心者だから」
「……その理論もおかしい」
「ローマ皇帝ハドリアヌスが122年に造ったハドリアヌスの長城は誰から帝国を守る為に作られたのでしょう!」
「文系舐めんな!ピクト人だ! ……って、そもそもイタリアクイズじゃねえ!」
須河 真里亞(aa3167)と愛宕 敏成(aa3167hero001)が漫才のようなやりとりをしている横で骸 麟(aa1166)と宍影(aa1166hero001)はピザに舌鼓を打つ。
 「しかし、このピザ、日本で喰うのとはえらい違いだな!」
「世界一のピザ職人は日本に居ると言う話でござるが……そもそもピザにはローマ流とナポリ流があって日々血で血を洗う抗争を繰り広げて居るでござる」
「! 確かにこんなに美味いなら死人位出そうだ……所でこれは何流何だ?」
「……生地の具合から言って、ローマ風でござるな」
「成る程、オレはローマ派って事か、ふふ」
 だが彼らとて意味も無くこんな事をしているわけでは無い。この間にも、仲間が事前の準備を行っているのだ。
穂村 御園(aa1362)とST-00342(aa1362hero001)はライフルに取り付けるための照明弾を調達し、蝶埜 月世(aa1384)とアイザック メイフィールド(aa1384hero001)は地元警察との連携を取り付け、その上でエステル バルヴィノヴァ(aa1165)と泥眼(aa1165hero001)が美術館内部の警察および警備員に女神像が盗み出された時の情報を聞き出す。聞き出した情報から泥棒の身体能力や逃走ルートを推定しながらも、セラエノへの怒りを口にするエステル。
「人類の共有財産である文化財を私物化するセラエノにはずっと怒りを感じてきました」
『そうね、エステル』
「……万死に値します」
『それはやり過ぎよ、エステル』
「……地獄に落ちやがれ! これは自業自得的な意味合いです」
 ともあれ、こうして準備は整った。警察とHOPEエージェント達、セラエノによる大捕り物が始まった。

●夜の闇にまぎれて
「それでは、犯人はもう美術館内にはいないのですね?」
「はい、間違いありません。一度使われた手ではありますが今回は非常線も張り、捜索も我々以外も行っているとなれば、自分から袋のネズミにはならないはずです」
 泥棒が美術館内にはいないことを改めてエステルが全員に通達。御園は美術館の裏口側の屋上で最も見晴らしの良い場所に陣取り、照明弾と同時に調達した携帯式の投光器を準備する。彼女は今回の捜索における中継役、最重要ポジションとも言える役だ。彼女がこれから発射する照明弾は
夜の街を照らしてセラエノと泥棒を探す上で重要な明かりとなる。だがそれは、皮肉にも敵に情報を与えるきっかけにもなった……。
「あれは……」
「どうやらHOPEのエージェント達のようだな……警察は照明弾など使わない。厄介ではあるが先を越されるわけにもいかん、投入した人員の半分を大通りから裏道に侵入させろ。こちらもネズミを確保してオーパーツの場所を聞き出すほうが優先だ、交戦は避けろ」
「わかりました、しかし表通りに非常線が張られているのが厄介ですね……」
「警察と言っても所詮一般人だ、オーパーツを入手したら力技で構わん、こじ開けろ」
「ハッ、それでは表通りにより戦闘に長けた者を集中させておきます」
「任せる。エージェント共が出てきた以上時間はかけられん……俺も裏道の捜索に当たる、ついてこい」
「ハッ!」
 照明弾使用の連絡を受け、上空からの光の当たらない所に隠れて様子を窺っていた雁間 恭一(aa1168)だが、すぐに状況は変化した。複数の足音がして、大勢の男がなだれ込み散り散りに捜索を始めたのだ。
「騒がしくなってきたな……こっちもオーパーツを探してるのが今のでわかって、慌てて裏道の捜索要員を増やしたってところか」
 作戦としてはシンプルだが、争奪戦である以上人員を増やすのは効果的だ。雁間 恭一(aa1168)はすぐにその状況を御園へと知らせ、夜の街を月明かりを頼りに進んで行く。その町並みを見て不思議そうに口を開くのは彼のパートナーであるマリオン(aa1168hero001)。
『随分と懐かしい雰囲気のする街だ……故郷もこの様な所なので有ろうか?』
「おいおい、マリオン、てめえ王子だって言ってただろうが……こんな裏街が故郷の王子様が居るのか……まあ、間違いなく悪所通いが趣味だったろうからオカシクは無えか」
『自分で疑問を呈して自分で納得するのは頭の働きが口より遅い証拠なのだぞ。忠告するが、その口は開いても馬鹿を晒すか悪罵を撒き散らすかしか出来ぬのだから閉じておいた方が良いぞ』
「……一言で済む事を長々と喋るのも阿呆の証拠なんだぜ?」
『黙れ、間抜け!』
 事態は一刻を争うのだが、だからこそこんなやりとりは適度に緊張がほぐれて良いのかもしれない。夜の闇にまぎれて、セラエノとHOPEの動きは徐々に加速して行く……。

●それぞれの作戦
 月世は警察との連携の中で、セラエノは表通りに出さないと約束して車両を用意してもらった事もあり、まずは真里亞と協力して表通りのセラエノの排除に乗り出した。セラエノ側も泥棒の逃走防止を重視し、戦闘に長けた者を表通り側に残してはいたが同じ人数……例えば2対2であればまだHOPE側に分がある。一部隊をオーガドライブを使い難なく退けるが、次の部隊との戦闘において両者の差が出た。
「なっ!? ちょ、汚いわよ!」
『連中は一般人への被害などお構いなし、ということか』
 セラエノの部隊は停車していた警察車両を盾にしたのだ。幸い、車両の警察官は泥棒の確保に向けて裏道へ入っており無人だったが彼らは手段を選ばない、という事をしっかりと見せ付けられてしまいうかつに動けなくなってしまう。セラエノ側が反撃に転じようとナイフを抜いたところで、後ろから声がかけられた。声の主は孤月と構えた麟。
「なあ、あんた、ローマ派かナポリ派か?」
「な!?」
 全く気付くことなく背後を取られた男が動揺するが、ペアを組んでいた男は落ち着きを取り戻すことに務め何のことかピンときたので少し間をおいて答える。
「そうだな……悩ましいところではあるのだがどちらかといえばナポリ風の方が馴染みが……」
 その瞬間太刀ではなく白虎の爪牙によるきつい一撃が加えられ、男がそのまま崩れ落ちる。
「何の話かは分かるだろ? お前がナポリでオレはローマ……絶対に相容れないのさ!」
 仲間が倒された事で逃亡を図ろうとしたもう1人も挟み撃ちの状態で逃がすはずは無く、そのまま叩きのめして表通りのセラエノを排除したところで、月世が事前に警察に伝えた作戦を実行に移す。内容としては警察に像が発見されたと配備を撤退するよう無線を流して貰い、更に像自体はHOPEのエージェントが支部に護送すると警備各所に協力要請を流して自らが囮として美術館から実際にイタリア支部まで車両で移動を行って見せる事でセラエノを像から引き離そうという欺瞞作戦。
 連携が功を奏し速やかに無線連絡が流れ、非常線を解除して警察が撤退を開始するが、この撤退が更なる状況の変化を呼び起こすことになったのだった。

●泥棒発見
 警察の撤退に戸惑いの動きを見せるセラエノの構成員達。その動きを物陰で見ていた恭一は、単独行動を行っている構成員を襲撃して情報を聞き出すつもりで物陰に潜んでいた。そこに人の気配がしたため飛び出すものの、目の前の光景に絶句する……大柄な男が、警察官の胸倉を掴んで持ち上げていたのだ。セラエノも考える事は同じだったらしい。
「やれやれ、俺もよくよく運が無い……先を越された上に追おうにも邪魔が入るとは」
「そりゃお互い様だ……こっちも情報が欲しくて仕掛けたってのに厄介なことになってるんだからな」
 囚われた警察官が作戦そのものを言わず、像を発見したという偽情報のみ伝えてくれていたことには実にありがたかったが、本人が人質になっている事で動けないのもまた事実。
「さて、HOPEのエージェント。交渉といこうじゃないか……オーパーツの女神像を渡せ。そうすればこの警官の安全は保証しよう」
「それは交渉じゃなくて脅しって言うんだよ。生憎だが女神像は丁度車に積み込んで移送を始めたところだ、場所はイタリア支部、当然仲間が護送してる」
「そうか、それで非常線が解除されたわけか……ではその仲間とやらに持ってきてもらおう。人命の方が大事だろう?」
「調子に乗りやがって……待ってろ、今状況を仲間に伝える」
 通信の相手は護送役の月世……ではなく中継を担う御園。
「とまあ、こういう状況でな……はっきり言って最悪だがどうするよ?」
「偽情報がそのまま伝わってるのは不幸中の幸いだけど……何とか会話を引き伸ばせない? エステルさんが近くにいるから合流まで……」
「そうは言っても……ん?」
「どうしたの?」
 恭一はその影に気付いて一か八かの賭けに出るべく、声を潜める。
「本物だ……コイツを何とかしたらすぐに追うから支援頼む!」
「了解!!」
「どうだ? 話は……」
 ついたのか、と言い終わるよりも先に御園によるロングショットの狙撃が男の肩口を掠め、思わず傷口を押さえる。この一瞬しかない、と恭一は駆け出してハイカバーリングで警察官を守る。体勢を立て直し、男が懐に手を伸ばして武器を抜こうとした絶妙のタイミングで、今度は背後から重い一撃が加えられた。それはエステルの鉄扇だった。
「間に合ってよかったです」
「助かった、だが間に合ったとはちょっと言いづらいな……逃げた方向はわかるが、肝心の泥棒が逃げちまった」
「方向さえわかっていれば後は皆さんが何とかしてくれます。まずは治療を」
『やむを得なかった、と言えなくもないが自力でどうしようもなかったのは落ち度であるな』
「お前はいつも一言多いんだよ」
 エステルがマリオンと恭一のやりとりを尻目に警察官から治療を始め、この大捕り物もいよいよ終焉が見え始めていた……。

●青銅の女神像、確保
 泥棒は、後悔していた。自分はアルセーヌ・ルパンを気取るにはあまりにも情けなく、非力だったと。警察だけならばまだ出し抜ける自信はあった。だが今回自分を追ってきた得体の知れない連中に加え、彼らと派手にぶつかり合う男女……HOPEのエージェント達を目の当たりにして逃げられない、と悟ってしまった。HOPEはともかく、あの得体の知れない連中に関しては捕まれば命すら危うい、と直感でわかり死にもの狂いで闇に包まれた夜の道を走り回った。何時間も追われ続け腹は減ったし、喉はカラカラ……事が済んだら浴びるように酒を飲みたい、と願いながら後方に気配がない事を確認する。自分を追ってくるものはないことに安心したところで、どん、と誰かにぶつかった。見ればそれは親子ほどに年が離れた東洋人の男女……真里亞と敏成だった。普段なら悪態の1つもついて逃げ出すが、この状況で普通の相手であるはずも無い。
『逃げようとしても無駄なのはこの姿を見ても分かるだろ?』
 泥棒としては悔しいが、その通りだった。歯噛みする泥棒に、敏成は更に状況の説明と1つの提案をする。
『あんたが追われるのは盗んだ像の在処をあんたしか知らないからだ。此処で喋るならこそっと逃しても良いぜ? HOPEは警察じゃ無い』
 非常線が解除され、警察もまばらになっている今が好奇、と飛び出しただけにそれはあまりにも魅力的な提案だった。罠の可能性を疑わないではないがどの道逃げられないのならば乗ろう、と泥棒は像を捨てた場所を告げる。
「女神像の場所が分かったよ」
 真里亞が通信でそう告げて、捨てた場所の近くにいた麟と報告を受けて美術館の屋根から降りた御園が告げられた場所を捜索する。
『おお、あったでござる。どうやらこれでござるな』
 それらしい女神像を宍影が発見し、ST-00342が確認のために金貨を近づける。するとやはり青銅の女神像が輝き、銅へと変質する。
『間違いない、本物だ。目標の確保に成功』
『女神像が見つかった、交渉成立だ。約束通り逃がしてやるよ』
 安堵のため息と同時に、泥棒は一言愚痴をこぼす。
「本命の前の予行演習のつもりだったのによ……飛んだ災難だ」
『……何?』
 泥棒の予行演習、という言葉が気になり敏成が問うと、泥棒は見逃してくれる礼だ、と本命のターゲットについて告げた。
「俺の本命は大英博物館にある金の短剣だったんだよ……あれは間違いなく相当な値打ちがある、一目で気に入ったぜ。ほぼ確実に俺以外の同業者も目を付けるだろうからな、見に行こうって言うなら今のうちだぜ」
『アドバイスどうも。じゃ、さっさと行きな』
 遠目に人影が見えたので、のんびりしているわけにも行かないとすぐに芝居を打って突然溝に倒れ込む敏成。
『一般人の癖にどんな技使いやがった!?』
 泥棒が走り去って行くのをそのまま見送り、そこではっとする。
『……ん? コレだともっとオーパーツ持ってると疑われないか?』
「さすがトシナリ詰めが甘々ですなあ」
『見逃してしまってよかったのか?』
 合流したエステル、泥眼、恭一と一緒に合流したマリオンが問うが真里亞は問題にするでもなくこう返した。
「約束したからね」

●帰るまでが遠足、事後処理までが仕事
「ああ~ん、もう! 責任持つなんて言うんじゃなかったぁ~」
『しっかり言質を取られているからな、責任という言葉の重さを知る機会になったな』
「ひ~ん」
 今回の欺瞞作戦を行うにあたって、セラエノは表通りに出さない、女神像の扱いについて相違があったら美術館も含めて誠実に対応すると責任は負う旨の約束をしていた月世は、イタリアの支部でこってりと搾られた。女神像は無事であったものの、撤退するセラエノは排除しきれないばかりかその過程において人質になった1人以外にも数名の警察官の怪我人と、都合2台の警察車両の破損という被害を出し非常線の影響で一時交通網も乱れたために責任問題、とはならなかったもののHOPEへの警察署長からの苦言が来たのである。
『上司が頭を下げてくれて、美術館の一部を見ることができただけでも良しとしようじゃないか。あの美術館は中世の建造物をそのまま活かした、趣のある素晴らしいフォルムだった』
「あたしもローマ観光したかったなぁ……」
 任務は成功し、お叱りも済んだので出来ると言えば出来るのだが、月世にはとてもそんな気力は無かったのだった……一方。
「御園……今日は改めて現場に行こう。取材をまとめるにはもう一度美術館側の情報を取る必要が有るだろう」
「ふふふ、あそこのお店、多分有名なレストランなんだよね。お昼はあそこで決まりだから!」
 取材ついでに有名レストランを楽しむ御園と、それにくっついて観光を楽しむ真里亞と敏成。
「……やはりオレはまだピザの事を何も知らなかったんだ……ナポリに武者修行に行ってくるぜ」
「井中の蛙大海を知らず……仕方ありませぬな」
 今度はナポリ風のピザを食べながら自分の見聞の狭さを悔いる麟。静かに動き始めたセラエノに幸先のいい先制点、というところで穏やかな時間は過ぎて行く……。
 余談ではあるが、件の泥棒は今回の事件を機に自首、それまでのコレクションの場所も全て自供し一時ヨーロッパ中のワイドショーを賑わせたとか。

みんなの思い出もっと見る

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 迷名マスター
    宍影aa1166hero001
    英雄|40才|男性|シャド
  • ヴィランズ・チェイサー
    雁間 恭一aa1168
    機械|32才|男性|生命
  • 桜の花弁に触れし者
    マリオンaa1168hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • 正体不明の仮面ダンサー
    蝶埜 月世aa1384
    人間|28才|女性|攻撃
  • 王の導を追いし者
    アイザック メイフィールドaa1384hero001
    英雄|34才|男性|ドレ
  • 憧れの先輩
    須河 真里亞aa3167
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 月の軌跡を探求せし者
    愛宕 敏成aa3167hero001
    英雄|47才|男性|ブレ
前に戻る
ページトップへ戻る