本部

グロリア社主催、楽しいお花見!

鳴海

形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
24人 / 0~25人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/04/16 23:03

掲示板

オープニング

 ある日突然遙華は言いました。
「お花見をします!」
 そしてなぜか、その人員集めをH.O.P.E.の掲示板で行いました。
 内容はこうです。

「 みなさん、気温が高くなり、日が長くなってきたわね。そんな春の訪れを感じながら過ごしていたら、私の庭の桜が咲き始めました。あと五日もすれば満開ね。
 それに合わせてお花見をします。
 料理は私の家のスタッフに作らせるわ。
 スイーツも飲み物もいいものをそろえる予定よ。
 あとは、ビンゴと一発芸大会をしましょう。
 今回は普段の任務や番組撮影のことなんて忘れて、みんなで楽しみましょうね。
 みんなのお話がきけることを楽しみにしているわ」

  

 雑談メインです。これをきに仲良くなりたいあの人と距離を近づけて見てはいかがでしょう
 なのでこのシナリオはアドリブ大目になると思います。アドリブしてほしくない人はあらかじめ指示をお願いします。
 ビンゴでは景品が出ます。下は商品券、上はムフフな物まで。武器等のアイテムは出ません、物騒なので。
 
 そして一発芸大会をします。 
 ちなみに、審査基準は。ロクトが面白いと思ったかどうかです。
 ロクトは大体のものを楽しみますが。基本的に下品なものは好みません。
 下品の基準は、食卓を囲った父母兄妹の四人家族の前で胸を張ってそれができるかどうかです。
 チームでの参加の場合は上限五人までです。


 宴会に必要なものすべてはグロリア社が用意します。
 立食パーティー式のお花見で。桜の下にテーブルが置いてあり座って話をすることもできます。
 桜の木は十数本。むこうには西大寺のお屋敷、おトイレは屋敷の中です。お察しの通り遙華の部屋があります。
《食事》 ジンギスカン お寿司 桜餅等和菓子 (手料理歓迎)
《飲み物》各種リキュール、日本酒 ワイン ビール 等有名どころはほとんど。ソフトドリンク 
 音響や小道具は申請があれば用意します。 会場の中央にはステージとマイク、スピーカーなど最低限のものはあります。

解説

目的 大規模作戦に向けて英気を養うと共にリンカー同士で交流を謀り絆を強める。

 やっぱり仲良し度でイベントの盛り上がりって変わりますよね。
 皆さんが最大限にイベントを楽しむための懸け橋になれたらと思います。
 遙華やロクトとも話せますが、ちょっと人数が多いので、やはりPC同士での雑談になると思います。
 もちろん、遙華やロクトとお話ししていただいても構いません、歓迎です。

 
 会話に困ったときのためのトピックス
・この大規模作戦どうなると思う?
・普段はなにをして過ごしているの?
・最近一番きつかった出来事は?
・グロリア社に一言!


 ビンゴは皆さんが飲み食いしている間に粛々と行われます。
 ビンゴが終われば、一発芸大会です。
 歌や踊りや、周りの人を楽しませられるようなものなら何でもアリです。
 え。遙華ですか? 彼女はシャイガールなので何もしません。
 あ、全員やらなくてもいいですよ、やりたい人だけで問題ないです。
 

リプレイ

●プロローグ 今日は楽しいお花見。
『水瀬 雨月( aa0801 )』は風にたなびく黒髪を抑えてつぶやいた。
「花見ね……前に行ったの何時かしら」
 参加してみたは良いものの何しようかなんてまるで考えてないのよね。
 最近の雨月は多忙で、学校にエージェント活動に、その他の厄介事に、休む暇もまるでなかったし、お花見の準備をする暇もまるでなかった。
 それ故に今日は気張ることなく、情緒、趣、風情を楽しむことに決めている。
 ちなみに彼女の英雄は寝ている、相棒の苦労など何のそのである。


● 開園。桜の園

 西大寺のお屋敷は都心から離れた林の中にある。
 西大寺の現党首が偏屈な人物で、車の音や人の音を嫌うためである。
 そのため首都からバスで一時間して、やっとその敷地が目に入る。
 西大寺邸。
 その大型駐車場にバスが止まる。
「終点、花見会場だ。荷物の忘れ物だけ無いように気を付けてくれ」
 そう運転手の『防人 正護( aa2336 ) 』はアナウンスする。
 扉があき、そこから降りてみると、全長二メートルほどの鉄の門。その扉がいま開いた。
「うわぁ」
 誰がとは言わず、感嘆の声を上げる。
 門が開くと同時に桜の花吹雪が全員を出迎えた。
 柔らかな光さす桜の並木道。それに全員が目を奪われる。
「今日は戦いの事は忘れて、思い切り楽しみましょう♪」
「ああ、こんなご時世だからね、楽しめる時に楽しまないと」
 そう手を握りなおすのは世良夫妻。『世良 杏奈( aa3447 )』と『世良 霧人( aa3803 )』
「旦那様、お花見とはどういう物なのですか? 
 その後ろにつき従うのは『クロード(aa3803hero001 )』彼はこの世界に来てから花見というものに初めて参加する。
「みんなで桜を見ながら、料理を食べたりお酒を飲んだりする行事だよ」
「こんなに賑やかなお花見は初めて。みんなとお話したい!」
 そして杏奈の相方『ルナ(aa3447hero001 )』もくるりとまわり周囲を見渡してため息をついた。
「花見とは、とても楽しそうですねぇ。旦那様も飲まれるのですか?
「いや、僕は飲めないんだよ」
 その隣を『小狼(aa3793hero001 )』が駆け抜けていく。
「ジロー! おかし! はなみ!」
「ジローじゃない! ジンロウだ! ……俺は人混みが苦手なんだが……」
 そうぶつくさ言いながらも『武 仁狼( aa3793 ) 』はステージ付近、つまり花見会場の中心を目指す。
「今日は普通にお花見だね!いっぱい楽しもうね、ジャックちゃん!
 それに続いて、『桃井 咲良( aa3355 )』が意気揚々と並木道を歩いていく。
 その美しい髪に花びらがついて、それを『ジャック・ブギーマン(aa3355hero001 )』が笑いながらとった。
「そーだな、オレなりに楽しむとするか、キヒヒ♪」
「桜は綺麗だが……俺は咲掛けのモノが好きかも、な……」
 生命の芽吹きは魂の宿りを感じるから。そう切なげな表情を見せるのは『レイ( aa0632 )』
 桜の雨に思わず立ち止まってしまったレイの肩を『カール シェーンハイド(aa0632hero001 )』が叩いた。
「何、難しい顔してんの? レイ。こーんな綺麗な満開の花の姿を見てその顔は無いっしょ。全てを楽しまなきゃ、損じゃね?」
「たまにはこういうのんびりとした日もいいね」
『柳生 楓( aa3403 )』ははしゃぐリンカーたちを見渡して笑う。
「そうですね……今日は思いっきり楽しみましょう」
『氷室 詩乃(aa3403hero001 )』は元気に頷いた。
今日は任務も従魔も愚神も何もないおやすみの日。今日ぐらい楽しまなければきっと神様に呆れられてしまう。
 そんな十人十色な反応をしつつリンカーたちは歩みを進める。
 すると突如開けた場所に出た。
 そこにテーブルやステージが設置されていることからここが会場だとわかった。
 その中心では緑色のドレスを身にまとった遙華が皆を待っていた。
「お越しいただいてありがとう。西大寺遙華です。今日は楽しんでいってね」 


●食べ物をご所望ですか? それとも飲み物?
 遙華はリンカーたちを出迎えると同時に、何がどこにあるかアナウンスする、その後、全員に直接挨拶に向かった。ちなみにロクトも一緒だ。
「あら、蛍丸」
 みれば『黒金 蛍丸( aa2951 ) 』と『橘 由香里( aa1855 ) 』が談笑している。『飯綱比売命(aa1855hero001 )』には『詩乃(aa2951hero001 )』がしきりに話しかけている。
「あ、遙華さん招待ありがとうございます」
「こちらこそ、来てくれてありがとう。由香里も久しぶりね。楽しんでいってね。またあとでお話ししましょう」
「ええ、待っているわ」
 ここだけの話、招待状は全て遙華の手作りであり、そのため参加者の顔とプロフィールは全員確認済みだ。
 そんな意気込みが見え隠れする背中に。美しい、日本人形のような少女が声をかけた。
『藤丘 沙耶( aa2532 )』だ。
「遙華さん、ロクトさん。お招きいただいてありがとうございます」
「あら、沙耶さんお越しいただいてありがとう。」
『シェリル(aa2532hero001 )』が続いてあいさつをする。
「お噂はかねがね。いのりたちと仲がいい印象よ。私とも仲良くしてね」
 そう遙華がソフトドリンクを手渡す。
 その背後では元気な少女が騒いでいる。
「これが有名な日本のサクラだね!」
『アンジェリカ・カノーヴァ( aa0121 )』は相棒の『マルコ・マカーリオ(aa0121hero001 )』と共に空と地面をいっぱいに埋め尽くす桃色の桜を眺めていた。
 上を見すぎてよろけたアンジェリカをマルコが支える。
「気に入っていただけたようでよかったわ」
 そんな二人に遙華はドリンクを手渡す。
 お招きいただきありがとう。こちらこそ。
 そう言うやり取りを繰り返す。。 
 だが、なんだかアンジェリカの様子がおかしい。しきりに自分の胸とロクトの胸を見比べている。
「ねぇ、どうすればそんなに大きくなるの?」
「え?」
「あら」
 赤面する遙華と、頬を抑えて笑うロクト。
「背が伸びれば自然と育つわ」
 そう答えるロクト、失礼だろうとアンジェリカを窘めるマルコ。
「そう言うことはもっと仲良くなってからだな。そのために」
 そうマルコは言うとズイッと一歩ロクトへ近寄り。手を差し出した。
「花見が終わったら二人で飲みにいかない……ぐふっ!」
「失礼はお前だ!」
 マルコの腹部にアンジェリカのグーパンチがさく裂した。
 それを見てロクトは笑っていた。
 そんな三人を置いておいて、遙華は次なる人物に声をかける。見知った姿を人ごみの中に見つけたからだ。
「久しぶりね、理夢琉。元気そうで何より」
『斉加 理夢琉( aa0783 )』と『アリュー(aa0783hero001 )』だ
「お招き頂いてありがとうございます、遥華さん」
「この前は助けてくれて本当にありがとう。アリューテュスも助かったわ」
「ああ、サイダイジャーの件ですね。あれは……。あ、やめましょう、遙華さん手がふるえてますよ」
 まだあの恐怖から立ち直っていない遙華は、例の事件の話をされると震えが来てしまう。
「それと。頼まれていたバルムンクの件。到着までもう少し時間がかかるけどOKが出たわ」
「本当ですかうれしい」
「まぁ、あの子たちも喜ぶでしょうし。これで少しは大人しくなってくれれば私も楽だわ。あら澄香たちが騒いでるわね。またあとでゆっくり話しましょう。楽しんでいってね」
 そう遙華はアリューの肩から花びらをとり、手渡した。
「ああ、凄い桜だな、楽しませてもらうぞ」
「そう言えば、まだ挨拶を済ませていない人が何人かいるの、蘿蔔や雨月を知らない?」
 その問いかけに二人はふるふると首を振った。

●一方そのころ
 時を同じくして。ドリンクコーナーでは
「……はひ、どうぞ、こちらを……」
「そんなに緊張しなくても……」
『卸 蘿蔔( aa0405 )』が緊張しながらも参加者一人一人にドリンクを手渡していっている。
 その隣で『レオンハルト(aa0405hero001 )』は見守りながらも、大人たちにアルコールを注いでいく。
「ゼノビアさん。レティシアさん」
 そうレオンハルトが見知った二人に声をかけると、なぜか蘿蔔の体がビクンと跳ねた。レオンハルトは思わず苦笑いを浮かべる。
『ゼノビア オルコット( aa0626 )』はあたりをきょろきょろ見渡しながら『レティシア ブランシェ(aa0626hero001 )』に引かれやってきた。
「……っ。ゼノビアさん。ドリンクいかがですか?」
「空気に飲まれてるんだ。気にしないでやってほしい」
「ゼノビアもそうだ。スプマンテもらえるか?」
「ああ、さっきから売れるんだよな。そんなにおいしいのかな。飲んでみようかな」
 そうレオンハルトがレティシアのグラスいっぱいについでいる隣で。
 ゼノビアはメモ帳に『甘くておいしいやつ』と書いて蘿蔔に見せていた。
「……じゃあ、これなんか。ど、どうぞ」
「ボクにも何かくれないか?」
 そう蘿蔔に声をかけたのはアンジェリカ。
 その隣ではマルコがレオンハルト、そしてレティシア相手に。持ち込んだ酒を見せていた。
「これは、よさそうだな」
 そうレティシアはグラスを一気に空にして。レオンハルトとマルコ、三人分のシャンパングラスを持ち出す。
 そんな大人の社交場となった、ドリンクエリアに、一升瓶をぶら下げた女性が歩み寄っていく。
「あ、あんたは」
「リンカー料理人の……」
『鶏冠井 玉子( aa0798 )』はにやりと笑い、一升瓶をテーブルに置いた。ラベルに記載された名前は『桜花抄』花見酒に相応しい大吟醸である。
「招かれて、手ぶらというのも気が引けてね。ただこれは人を選ぶ代物だ。最近の若い人間には下戸も多い。君たちはいける口かな」
『オーロックス(aa0798hero001 )』が頷いていた。
 その突如として登場した日本酒に興奮を隠せない大人たちは早速飲み比べを始める。
 花を見ながら、昼間から酒を飲む。これ以上の幸せはあろうかという思いが。五人の胸の中に沸いた。
「今日は料理はしないのか?」
 そうマルコは持ち込み料理が並ぶエリアを一瞥し玉子に問いかけた。
「食事は随分と豪勢なものが用意されているようだし、皆も腕によりをかけた手料理を持参するようであれば、ぼくの出番など何処にも無い」
「少し残念だな」
 そうレオンハルトがグラスを空にすると。蘿蔔に言った。
「そこのワインを注いでくれ」
「はい。ちょっと待ってください」
 何やら苦戦している様子。それもそのはず蘿蔔の周辺にも人だかりができている。
 飲み物が置いてあるエリアは人がたまりやすいので。仕方ないが。背の低い蘿蔔は人の海に飲み込まれておぼれそうに見えた。
「香港は今大変だけど、こないだ慰労の為にハコネの寄木細工や温泉の素を支部の人に贈ったんだ」
 そう楽しそうにゼノビアや咲良らと話すアンジェリカ。
 その隙を縫って蘿蔔はレオンハルトのグラスに赤を注ごうとするが。
 盛大にこぼしてしまう。
「実はこんなこともあろうかと着替えは用意してあるんだ。屋敷の一室を着替えで使っていいって、話がついてる」
「想定済みですか!」
「ちょっと俺がいなくなるけど、大丈夫だよな。……だよな? ちょっとタラちゃん呼んでくる」
「一人でも平気ですから! その代り早く帰ってきてください」
 そんな喧騒から少し離れたところで、世良さんちのルナは絵をかいていた。
  色ペンセットで描かれた桜の木は目を引かれるものがある。そんなお絵かき帳を閉じて鞄にしまうと。
 和やかに談笑する世良夫妻の元へと戻った。
「いい絵はかけた?」
 杏奈は優しく問いかける。
「うん」
 そうルナはうなづくと、杏奈の手を握る。そして四人で持ち込み料理エリアまで戻った。


● みんなのお料理 
 そこは特に幅が広くとられている。
 大きな四角いテーブルに、旗のようなものが立っていて。そこには『持ち込み品はこちら』と書かれていて。その周りに花見参加者のほとんどが集まっていた。
 その真ん前では早くも持ち込み料理に舌鼓を打つ二人がいる。
『餅 望月( aa0843 )』と『百薬(aa0843hero001 )』である。
「桜と桜餅があれば、人生幸せだね」
「しあわせー」
「季節を楽しめる慣性は大事にしたいよね」
「ごはんが美味しい気持ちも大事にするよ」
「うん、それも大事」
「じゃあ。これもどうぞ」
 そう杏奈が荷物をテーブルの上に広げていく
「お料理持ってきたので皆さんどうぞ~。梅酒もどんどん飲んじゃって下さい♪
 中身は、一口サイズのハンバーグ 野菜のベーコン巻き 桜の花弁形クッキー。華やかで可愛らしくお花見に特に合っている。
「両方、杏奈の手作りよ!」
 梅酒の手作りはすごいと、群がるのんべぇたち。
 その夫の霧人は、取り皿に取ってきたジンギスカンをはじめとした料理をもった皿を杏奈に手渡し食べ始める。お酒はのめないのでソフトドリンクだ。
「では、他の料理もいただいていきましょうか」
「ねぇ、みて杏奈。ゼリーがある」
 そう手を伸ばそうとするルナ。しかし目の前に。
 まぁ、行ってしまえばチャラい男が立っていた、レイだ。
 思わず警戒するルナ。もし杏奈を口説いてきたらひっぱたく。
 そんな意気込みを持って両手をフリーにした。
 しかし、そんな警戒をものともせずにレイはしゃがんでルナにゼリーを手渡す。
「そうにらむな。……これ、カールが作ったんだ。味は保証する」
 透明な寒天ゼリーの中に色とりどりのフルーツが入った見目も綺麗なスイーツだ。
 甘すぎず、のど越しが癖になり、フルーツの酸味がたまらない。特に女性陣に人気の一品であった。
「おいしい」
 少女の心わし掴みである。
 その歓声をききながら満足げに佇むカール。
「ぼくはティラミスとインサラータ・ディ・リーゾをもってきたんだ。お米のサラダだよ」
 そう、酒の話題に花を咲かせた大人たちを引き連れ。アンジェリカが合流した。
「遅れてごめんなさい」
 続いて『白雪 煉華( aa2206 )』が到着する。『メリュジーヌ(aa2206hero001 )』と共に重箱を抱えていた。
 五段あるそれを開くと中身は定番物やだし巻き卵やからあげ、いなり寿司、ほうれん草の胡麻和えなど。
「おお、おねーちゃんじゃ」
 人ごみをかき分けて現れたのは『アイリス・サキモリ(aa2336hero001 )』彼女はさらに山盛りで、食べ物を乗せている。その皿をひとまずおいて、アイリスは煉華の胸に飛び込んだ。
「あ、煉華さんがいる。わ、凄いねそのお弁当!?」
 それを皮切りに『小詩 いのり( aa1420 )』や『蔵李・澄香( aa0010 )』などおなじみの面々が煉華の周りに集まってくる。
「一口貰ってもいい?」
「私もいい?」
 百薬も尋ねる。望月は広げられたお弁当に感嘆の声を上げる。
「女子力高いわね、私? 豪州と香港に置いてきた。」
「玉子焼きとか、だいすきー」
「私もいいですか?」
「どんどん食べて」
「わ、美味しいー! お料理上手なんだね」
「ところでゼノビアさんや柳生さんがどこにいるか知りません?」
「蘿蔔ちゃんと一緒にいたよ?」
 いのりが桜餅なぞ片手に言った。
「すまん、少しよけてくれ」
 そんな談笑の最中、正護がたてから切って、真っ二つになったドラム缶を担いで現れた。
「あ、あれはいったい」
「なぜ、働いているの」
「ジーチャンもが好きでやっているのじゃ、きにせずともよい」
 そうアイリスは祖父を一瞥すると、また煉華とのいちゃいちゃに戻った。
 その嬌声をバックに正護は黙々と仕事を続ける。炭を四角くくみ熱が逃げないように着火。火の勢いが強まったところで炭を崩して追加
 鉄板を乗せると。あっという間にお好み焼き場の出来上がり。
「いつもすみません」
 そう『クラリス・ミカ(aa0010hero001 )』は言う。
「気にするな」
 そう正護は汗をぬぐって、次なる装置の運び込みを行う。ドネルケバブセットだ。
「いや、見事な手際でしたな」
『セバス=チャン(aa1420hero001 )』がそう笑う。
 その声に反応した世良さんちのクロードが話しかけたそうにそちらを向いていた。
 しかしクロードの視線は、今度は別の物にくぎ付けになる。
 少女だ。
 だが異様だ。
 顔は大きなマスクで覆われ。右手には大きな肉切包丁。左手には何やら大きな赤い物体が入った袋。それを引きずりながら澄香たちの元へ歩くその人物は。
 ホラーゲームの中から出てきたのかと見紛うほど怪しかった。
「あ、沙耶と。あれはだれだ……」
 困惑する澄香。
『榊原・沙耶( aa1188 )』はいつものようにたおやかに微笑んでいるが、隣にいる人物が怪しすぎてわからない、おそらくは『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001 )』なんだろうと思うが。
 いつものようにけたたましくしゃべりだすわけでもないし、様子がおかしい。
「花粉症にやられないためのマスクよ。と言っているわぁ」
 なぜか平常運転の沙耶が沙羅(暫定)の言葉を皆に伝える。
「その袋の中身はなに?」
「ドネルケバブ用の肉だな。セッティングしよう」
 そう正護はさしたる動揺もなく黙々と作業と続ける。鉄板の隣にケバブがセッティングされた。さらにその隣にたこやききが置かれる。
「澄香、鉄板も温まっているようですよ」
「はーい。んじゃ、いっちょやりますか」
「澄香さん。材料切ってきたよ」
 そうカートに料理道具一式を並べて押してきたのは三船 春香という少女だ。
「ええ! 春香さんが何でここに」
 いのりは驚きの声を上げる。
「連れてきちゃった」
 澄香が言った。
「そんな、猫を拾ってくるみたいに」
「いのりさん、その説では大変お世話になりました」
 そう頭を下げる春香にいのりは困惑した表情を浮かべる。 
 いまいちどう接したらいいか、わからない、しかも少し前にルネと戦った後だ。
 なおさらどうすればいいか分からない。
「うん、げんき……だったかな?」
「うん、私は元気だよ!」
「ルネさんの歌に大変お世話になっておりますし、恩返しさせて下さいね」
 澄香は言った。
「ううん、恩返しなんていいよ、むしろ私がしたいくらいだもん。新曲聞いたよ。春の音。ルネを忘れないでいてくれてありがとう」
「春香さん……」
「湿っぽい感じになっちゃったね。ごめんね、どうぞやってください澄香さん」
 そうこてを差し出すと。澄香はふりふりのエプロンに腕を通した。クラリスも同じようにエプロンを纏う。
 そして巨大な鉄板を分けて、澄香がお好み焼きを、クラリスが、ホットケーキやクレープを作っていく。
「おー、澄香、上手いこと作るねー?」
「すごいすごい!」
「ホットケーキにジャムはいかがかな」
「あ、アイリスちゃんだ」
 澄香の顔がぱっと華やいだ。
「ははは、盛況じゃないか。私からの差し入れを持ってきたよ」
そう『アイリス(aa0124hero001 )』が言うと『イリス・レイバルド( aa0124 ) 』が瓶を取り出し乗せる。
「私達からはリンゴのケーキと……」
「お姉ちゃん手作り」
「アイリスジャムだ」
「え、なにそれ?」
 イリスは飛び上がった。
「私の羽を溶かして煮詰めたジャムだ。なんと密の味がする」
「妖精ってたべていいの!」
 いのりが驚きの声を上げた。
「羽だけであれば問題はない」
「妖精を食べるんだと思うと。すごく、すごく胸がいたい。けど、何だこの華やかな香りは! とてもお上品だ」
 澄香は瓶をあけて中身を見ている。
 試食とばかりにいのりと澄香は、パンケーキに垂らして食べてみると、すごくおいしかった。
「今まで食べたことのない感じ」
「すごく、すごくいい香りがする、花に抜けるようないい香りが」
「猟奇的ね。っともうしているわぁ」
 隣でドネルケバブを作る、マスクの幼女の言葉を沙耶が代弁する。
「お姉ちゃんの羽って多機能だよね、飛べないけど」
 イリスが言った。
「イリスはイミテーションウイング似合っているよ」
「ありがと……って、何か変形してる!?」
 観れば、アイリスの翼がねじれメビウスの輪みたいになっている。
「一種のライヴスコントロールでパズルのように形状を組み替えられるのだよ。集中が切れると羽の形に戻るがね」
「非常食にぴったりね、ともうしているわぁ」
 ちなみにこの二人の提供するケバブ、好評であり長蛇の列ができていた。
 見た目が面白いというのもあるのだろう
 そしてその噂を聞きつけて、それを見に来た遙華と蘿蔔。
 ちなみにゼノビアは楓とうまいこと合流して煉華の元まで連れて行かれた。
「やっと見つけた。白雪お姉ちゃん」
 楓はふらふらと、倒れ込むように煉華の元へ。
「少しはしゃぎすぎて疲れました……」
「お花見ってこんなに楽しいものだったんだね~」
 詩乃がそう言って笑った。
 ゼノビアは、これたべてもいいですか? 尋ねていた。
「たらちゃん、息苦しくないです?」
「こーふーこーふー」
 何か言っているようだが、やはりわからない、そしてケバブは黙々とそぎ落とされていく。
「これって、このままいつもみたいに吐血したらどうなるのかしら」
 遙華が言った。
「……えっと、すごい勢いで吐き出された血が口の中にまた戻るんじゃないですか?」
 蘿蔔が答える。
「そしてら、またマスクに邪魔されて口の中に戻ってくるわよね、無限ループじゃない?」
「え? ああ、そうですね、そうなると永遠に終わらなさそうですね」
「ちょっと気になるからやってみてもらってもいいかしら?」
「なんてバカなことを真面目に話し合っているのかしら、この子たち、と申しているわぁ」

●もふもふ? 
 さて、あいさつも一通り済んだ遙華は、一気に手持無沙汰になった。話しの輪が完成していてどうにも入りづらい。
 そのため勇気を振り絞っている最中。背中にぶつかる影があった。
 小狼である。
「走り回ったら危ないわよ」
 その魅力に抗えず頭をなでる
 小狼は見た通り天真爛漫なもふもふしたくなる用紙をしている。
 耳をぴくぴく、尻尾をぱたぱたさせそれがさらに可愛い。
「尻尾もふわふわなのね」
「んとね、キョーメーしたジローのシッポはもっとふかふかだよ!」
「ばっ……よ、余計なこと言うんじゃない!」
皆から離れた場所で茶を飲みながら孤高を気取っていた仁狼が現れ。
「見てみたい」
「ま、まぁ、機会があれば……だな……」
 遙華は思った、なんだか蛍丸と似てる。

● 地獄が始まる。
「さて、わらわも本気をだすかのう」
 そう腕をまくってタコ焼き機に火をともすアイリス。
「くらり屋謹製ロシアンたこ焼き、開店じゃ!」
 じゅーっと焼けるいい音と共に、ソースの香ばしい香りが漂い始める。
 それにつられて現れたのが楓、ゼノビア。理夢琉。そして『天都 娑己( aa2459 ) 』である
「召し上がれ」
 山のようなたこ焼きを前に。それをほおばっていく少女たち。
「え。これ以外と普通……」
「へぇ。くらり屋って面白いことやってるんだね~!」
「ロシアンって何が入っているのですか?」
「特性のからしじゃ」
「楽しそう~!」
 そう三つ目のたこ焼きに手を伸ばす娑己
 その時、引きつったような声が娑己の喉奥から響いた。
 そのほかの面々も、口の動きがぴたりと止まる。
 そして。
「え、から! これからい!」
 楓が涙目のまま四つ目を口にする。
「こ、これもからい。え? どうして」
 そして五つ目を口に、彼女が沙羅に取ったたこ焼きはこれで全部。そして。
「これもからい!」
 つまり五つ中四つがからし入りだったわけである。
「当たっても精々ひと……かひゃい……」
「楓!? 泣くほどって何個当たったの!?」
 理夢琉も三個目でヒットしたようで
「……2個でやめとけば……水~~~~ッ!」
 そうあわあわしていた。
 娑己も最初は笑顔で耐えていたが。五個すべてを食べ終わると同時に明後日の方向へ猛ダッシュする。
『龍ノ紫刀(aa2459hero001 )』が。
「娑己様は絶対外さない気がしたー!」
 と飲み物を持って追いかける。
 その隣でもゼノビアが、涙をぽろぽろながしながら感触、それをレティシアは知らんぷりしてお酒を楽しんでいた。
「なになに? どうしたの?」
「みんな楽しそう、仲間に入れて」
 そう通りがかったのは咲良といのりである。
 次の犠牲者が決まった。
「はい、ニーチャン」
 そうアイリスが手渡すたこ焼きを次々と平らげるいのり。
「あむ……あふあふ……今のとこ普通のだ……これで最後っと」
「むぅ、つまらん」
 そして最後の一つ。
「~~~っ! 最後の最後でー!?」
咲良は桜でが辛子入りを3個当たり。
「~~~っ!?」
 と涙目になって悶えてる。ジャックはそれを見て爆笑していた。
「というかなんでこのお花見までロシアンたこ焼きがあるんでしょうかね、しかも死屍累々だし」
一応水を用意し、無謀にも挑もうとする沙耶。
「……ッ! シェリー! 水! 早く!」
「沙耶様、無理をなさるからですわよ?」
 案の定である。そう水を差しだすシェリル。
 なぜ、こうも人は抗うことができないのか。
 この好奇心という名の化け物に。
「杏奈、面白そうだよ。僕たちもやろう」
「やめておいた方がいいのでは?」
 そう霧人をクロードが止めるが聞きもせず、アイリスからたこ焼きを受け取ると。仲良くみんなで食べた。 
 結局六個中三つがからし、杏奈は二つ食べてしまう。
「……っ!? 水っ水~!!」
「やった。セーフ! 辛子当たって無いのってアタシだけ?」
 ルナがそう霧人を見ると、彼もからしにあたったようでもがいていた。 
「……っ、かっ辛!? のっ飲むものは……!」
「旦那様それは!」
 藁おも掴む思いで手元にあったコップの中身を飲み干す霧人。しかし、それは杏奈が飲んでいた梅酒だった。
「ん? ……あっコレもしかしてうめ、しゅぅぅぅぅ……」
「だ、旦那様~!?」

「 計 画 通 り」

 そうたこ焼きをくるくる回しながら微笑むアイリス。
 その目の前をターゲットが通りかかる。
「あ、遙華! たこ焼きたべるのじゃ」
 アイリスはたまたま通りがかった遙華をひっとらえて、引きずってきた。
「え? 嫌よ。だってこんなに」
 死屍累々ではないか、そうもがき苦しむ一同を見て言った。
「わらわも食べる、何も心配はいらぬ」
「いや、その言葉で払しょくされた心配の方がどれほど少ないか」
 そう言いつつ遙華は受け取ったたこ焼きに爪楊枝をさす。すると。
 明らかに手ごたえがおかしい。
「アイリス、これ。さした感触でタコじゃないってわかるんだけど」
 ふふん、と笑うアイリス。そして硬直する遙華。
「まったく……、遙華のいじられ症にも困ったものね」
 そんな二人のやり取りを見守っていた雨月が腰をあげたその時、颯爽と遙華に近づく男性が独り。
 彼は遙華の手に握られたたこ焼きを、食べてし舞う。
「蛍丸、大丈夫?」
「うん? これたこ焼きじゃなくて、牡蠣焼きですね」
「えー、ずるいのじゃ」
「ありがとう、蛍丸、助かったわ」
「いえ、いいんですよ」
 そんな和やかな雰囲気を醸し出す二人に、少し面白くないアイリス。
 そしてそんな光景を眺めながら笑う雨月。
「ふん、遙華と違って、わらわは約束守って全部ちゃんと、食べるのじゃ」
 そう何気なくたこ焼きを口にする。しかしこのたこ焼き、アイリスが焼いたものである。
 当然アイリスはどれがからし入りか分かっていた。
 そうひょいひょいと、一つ二つと食べていく、しかし。
「……!! ごふ。なぜじゃ……」
 そう言ってからし入りのたこ焼きを食べ、アイリスは水を求めて走り回ることになる。

● 困ったものね
 雨月はその一連の騒動をお寿司片手に眺めていた。
 遙華が困っていれば助けに入るつもりだったが、今のところその必要もないようだ。
 雨月は笑みを浮かべる。
 その隣に椅子を引いて座る人物があった。
 ロクトである。
「いいの? いかなくて」
「今日は、遊ばれている彼女を見て、楽しむことにするわ」
 そう雨月は言葉を返す。
「あの子が本当に困ってどうしようもなくなったら助け船を出すことにするわ」
「ふふふ。まるでお姉さんみたいね」
 ロクトが笑った。
「あなたがいれば、あの子もきっと大丈夫かもね」
 それはどういう意味だろう。
 そう尋ねようと振り返ると、すでにロクトはそこにはいなかった。

● ビンゴをするよ!
「みなさん、注目してください」
 唐突に会場内に遙華の声が響き渡る、ステージの前にはロクトと遙華がおり、そこには巨大なディスプレイが置いてあった。
 そこにはこう書かれている。
景品一覧。
香港チョコレート         四名分 
睡眠薬              二名分
惚れ薬              二名分
グロリア社一日名誉社員証     五名分
桜餅               七名分
商品券 5000G分 2000G分 1000G分  合計25名分
残念賞 屑鉄                5

「ビンゴした人たちには上から順に商品が当たるわ
ゆっくりやるから。あわてないで、一つの玉が出るのに三分くらい間があるわ。
掲示板に番号は張り出しているから、番号を見落とすこともないんじゃないかしら。
だからリーチになったら前に出てきてじっと見守る感じでいいわよ。
お話に花を添える程度のイベントだけど。楽しんでいって
ところでロクト」
 そう一通りの説明を終えた遙華はロクトに言った。
「この、社員証って、なによ」
「ああ。遙華貸出券のこと?」
「言ったわね! そこ隠さないといけないところでしょ! これ以上私の仕事増やしてどうするつもり?」
「もちろん、この券を使う日はあなたはオフ扱いよ」
 そうロクトが言うと、遙華の表情が華やいだ。
「ばんばん、使ってちょうだい」
 そう全員に言い放ちビンゴが始まる。
 そのビンゴシートに穴をあけつつ。
『大宮 朝霞( aa0476 )』は大量の料理にはしゃいでいた。
「鹿島さん! おれっしー! ジンギスカンですよ、ジンギスカン!」
「おー、桜満開っ! 綺麗だな……って、朝霞さーん?」
『鹿島 和馬( aa3414 )』は、びゅんと走り去った朝霧を追う。
「羊肉にまっしぐらだね。元気なのは良い事だよ」
 そう『俺氏(aa3414hero001 )』入った。表情が見えないので笑っているかどうかはわからないが声音は優しい。
 そんな中朝霧は、片手で『ニクノイーサ(aa0476hero001 )』を捕まえて、全員分の取り皿に焼けたラム肉を盛っていく。
「馬肉でも鹿肉でもないですから! 大丈夫ですよ!」
「ああ、気遣いありがとうね、朝霞氏」
「馬も鹿も食えねぇ訳じゃねーけど、微妙に抵抗あるのよな」
「朝霞、落ち着け。すまないな、鹿島、俺氏。朝霞は花見が楽しみで、昨夜はあまり眠れなかったらしい。今日はずっとテンション高めなんだ」
 ニクノイーサがたしなめる。それにもめげず朝霧はジンギスカンを漁っていく。
「そーねぇ、相変わらず笑顔が眩しい事で」
 そんな朝霧をみまもりながら大人三人はビールで乾杯した。
 本人が張り切っているようなので、にくもり係は譲り三人はビンゴの穴をあけつつ談笑する。
「ニック氏は二言目には雑種とか言う我様系と思いきや」
「いつも朝霞とセットで見てるからか、もう世話焼きな苦労人のイメージな」
「そうかな」
 ニクノイーサは二人の言葉に笑みをこぼす。
「にしても。こうやってゆっくりニックと話す時間てのもなんか新鮮だな」
「いままで、こんなにゆったりとした時間が取れたことはなかったからな」
「和馬氏、いつも馬鹿な事してるからね。シリアス美形のニック氏は話し掛け辛かったと思うよ」
「いや、お前も大概だけどな」
 そして肉を盛って帰ってきた朝霧を囲んで、彼女をからかったり、日ごろの労をねぎらったり。
「ビンゴ!」
 朝霧がいち早くビンゴを決め、チョコレートをもらっていた。

●少年はこうして大人になる
「むぅ、蛍丸様」
 詩乃の料理の周りに集まっている六人。その視線は重箱に注がれている。
 それは見事に豪華な詩乃手製の弁当だがその一角に不格好な玉子焼きが鎮座してみる。
「頑張ったんですけどね」
 そう蛍丸は笑った。そして由香里がまず箸を伸ばす。
「うん、おいしい」
「では、私も」
 娑己もつられて端を伸ばす。
「おいしいですよ。蛍丸さん」
「よかった」
 ほっと胸をなでおろす。
「あの、由香里さんっていつも何をしているんですか?」
 娑己が言う。
「もっと由香里さんのこと知りたいなって」
「え。そうなの? うーんそうね。依頼がない時は学校だし。い、家で?ちゃんと鍛錬は欠かさないですよ」
 目が泳いだ。それを逃す飯綱比売命ではない
「冬の間は芋ジャー着て蜜柑食べながら炬燵でごろごろしておったよなあ?」
「それは……休日だけでしょ!? ふ、普段はもっとしゃきっと…してます!
「ごろごろしてる橘さんってなかなかそうぞうできないですね」
 蛍丸は笑う。
「でしょ、そうなのよ。私はごろごろしている暇なんてないんだから……」
 由香里は後ろめたいことでもあるのだろうか、明後日の方向を見て引きつった笑みを漏らしている。
「今日はいい日ですね」
「今日みたいにみんなが笑っていられる時間ってすごく大切だなって思う!」
 娑己が言った。
「誘ってくれてありがとう、黒金君、いい気分転換になったわ」
 そう由香里が笑うと。
「やっと笑顔になってくれましたね。」
 そう言うと由香里はあわててそっぽを向いた。
「べつに私は……。あ、ジンギスカンをとってくる。天都さん行きましょう」
 さけられてしまった、そうしゅんとなる蛍丸に飯綱比売命が言葉をかけた。
「あやつものう、出来る女を演じなければならぬ割に豆腐メンタルじゃからのー」
「そうなんですか?」
「弱みを見せると自分を保てなくなるのでつい無理をするのじゃ。ま、こうして気に掛けてくれる友人ができてありがたい事じゃ」
「そこ!余計な事をベラベラとっ!」
「よいではないか」
 そう笑う飯綱比売命に食って掛かる由香里、しかしどこか楽しそうだ。
「橘さん」
 その真剣な声音に由香里は振り返る。
「橘さんが嫌だと思うこと無理には聞こうと思いません。だからこれだけは言わせてください。ありがとう」
「な、なによ突然」
「……不安な時に『思い切って挑んでみなさい』と背中を押してくれたこと。
 どんな困難にも向かっていく勇気をくれたのは。橘さんだって……こと」
「別に私は。そんな。たいそうなことしたわけじゃ……。」
「まぁ、よいではないか、人の好意など否定する者ではない」
 飯綱比売命は言う。
「こやつも、人に胸の内を打ち明けられるようになるまで時間がかかるのじゃ。もう少しだけまってやってくれんかの?」
「ええ、わかりました……って、橘さんビンゴじゃないです?」
「あ、本当だ。行ってくるわ。景品は何かしら」
 ちなみに景品は名誉社員証でした。使い方を呼んで笑う由香里に対し。遙華はずっと怖いと連呼しておりました。
 戻ってくると詩乃の料理はあらかた片付いており。
「どうでしたか?」
 詩乃はそんな風に飯綱比売命を上目づかいで見つめる。
 なんだろう、そう飯綱比売命は首をひねるが、娑己が耳打ちすると、笑顔のままその頭を撫でた。
「よくがんばったのう」
 詩乃は恥ずかしそうに微笑んでいた

● 一発芸大会するよ!

 ビンゴ大会も終わりが近づき。最後まで残ってしまった運のない人たちにはくず鉄が配られた。
「では次なるプログラム、一発芸大会をするから、担当者は集まってね」
「お? 一発芸だそうだ。朝霞、いつもの変身ポーズでも疲労したらどうだ?」
 ニクノイーサが言う。
「一発芸じゃないもん!……ニック、当然あなたも一緒に変身ポーズやるんでしょうね?」
「うっ」
 墓穴を掘ってしまったニクノイーサ
「鹿島や俺氏は、何か一発芸はないのか?』
 無理やり話題を振る。
「やるよ、一緒に出ようぜ。飛び入り歓迎らしい」
 そう和馬が言うと、朝霧の目が獲物をみつけた狼のように光った。
「ではでははじめていきましょう、司会替わりまして小詩いのりと」
「蔵李澄香です」
 ステージ上に上がるのは可憐な少女たち、リンブレイディオでもおなじみのアイドルリンカーたちだ。
「グロリア社主催第1回一発芸発表会!」
 どんどんぱふぱふー、そういのりがおもちゃで音を鳴らす。
「この企画は、中だるみしてきた談笑に、花を添える目的で開催されるそうです」
「意外と考えているんだね、遙華」
 澄香が客席を見ると、ぶんぶん首を振る遙華がいた。
「ちなみに審査員はこの人。グロリア社の影の支配者。将来この会社は私がいただきだ。ロクトさーん。ってこれ言っていいの澄香」
「ロクトさんが渡してきた原稿だよ?」
「あ、いいんだ」
「続きましてコメンテータは小鳥遊さんちの、沙羅ちゃん!」
 答えは次元のはざまの中へ。
「さあ、だいたい紹介が終わったね、みんな、準備はいいかい!? トップバッターはこの人!」
「世良さんちの奥さん、杏奈さんです」
 音楽が流れ始め、それが最大になると、マイクを持った杏奈が登場する。
「桜ソングといったら、やっぱりコレでしょ!」
「曲目は千○桜です」
 いえーいと、杏奈はマイクを振るうと。乗りのいい人たちがエールを返してくれる。サビでは飛んだり跳ねたりの大騒ぎである。
「続きまして藤丘 沙耶さんも、歌います。曲は……」
「今流行のアイドルECCOさんの、『下弦の月』で」
 その曲調はしっとりと、テンポもゆっくりめ。人にきかせるための歌であり。彼女の神秘的で繊細な歌声と特に合った
 歌い終わるとともに拍手が送られる。
「いや、よかったですね。世良さんちの奥さんは」
「杏奈でいいですよ」
「杏奈さんはアップテンポに。沙耶さんはしっとりと。しかもどちらもお上手です」
「下弦の月は確かゲーム曲だよね」
 いのりが沙耶にマイクを向ける。
「ええ、アクション系の、プレイヤー同士で対戦もできて面白いんですよ」
「それでは沙羅さんどうぞ、ツンデレ風に」
「ふん、こんな歌ありふれてるわ。どこでも聞ける。でも二人の歌声好きよ。もっと聞きたいわ。と申しているわぁ」
「おっと、謀らずとも榊原さんの方の沙耶さんのツンデレボイスをきけました、これはうれしい」
「あ、澄香、審査出たみたいだよ。結果発表!」
 いのりが高らかに宣言すると。ドラムロールがなる。
「杏奈さんは82ロクト。沙耶さんは86ロクトで」
「出ました。これは高い、82ロクトと86ロクト」
「え? なにそれ、単位?」
 いのりが首をかしげる。
「ロクトさんポイントの略らしいよ」
「では次のチャレンジャーは、飛び込み参加の朝霧さんとゆかいな仲間たちです」
「なんだその名前、誰が申請した!」
 ニクノイーサが唖然と突っ立っていると、俺氏がタンバリンを投げ渡す。
 どうやら和馬と俺氏も付き合ってくれるようだ。それぞれマラカスとトライアングルを握っている。
「マイクがあるわよ!ニック、歌うわよ!」
「はぁ?何を歌うんだよ」
「1番!聖霊紫帝闘士ウラワンダーの歌!」
「おい、なんだそれは?」
「いま考えたのよ!ニックはコレで私の歌に合わせて!」

「♪つよいぞ すごいぞ かわいいぞ~
 ♪みんなの平和を守るため~」

 たん、たん。しゃかしゃか、チーン

「……自分でかわいいとか言うか?」
 頭を抱えるニクノイーサ。
「ま、嘘って訳じゃねぇからいいんじゃね?」
「パワー系だけどね」

「♪さぁ!変身だ!
 ♪聖霊紫帝闘士~ 
 ウラワンダ~」

 しゃかしゃかしゃかしゃか、たんたんたんたん。ちーん。
 そして変身ポーズ。そのすべてにニクノイーサはきちんと付き合った、最高の相棒である。
「もう、帰っていいか……」
 茫然とつぶやくニクノイーサ。
「帰る前に俺たちの歌聞いて行けよな」
そう親指を立てて和馬は澄香からマイクを受け取る。
「鹿島和馬と俺氏。歌って踊りまーす!」
 軽快な音楽が流れる、それはそう、依然ライブで歌ったナンバー『二人はヒーロー』だ。
「Let me Dance!」
 その場でバク天宙返りを決める和馬。会場から歓声が漏れた。
「すごいわ。私もああいう運動神経欲しい」
 そのキレのあるダンスを眺めながら遙華が言った。
「遙華、運動ダメなんです?」
 左隣に座る蘿蔔が言う。
「嫌いじゃないけど。……いえ、やっぱり嫌い、そう運動ダメなのよ、わたし」
「ほうほう」
「この前、雪玉を顔に受けていたものね」
 右隣に座る雨月が言った。
「あれは不意打ちだったから」
「よけたとつもりかもしれないけど、あれ、自分から雪玉に突っ込んでたわよ」
 それはこの前のドキュメンタリー撮影のちょっとした裏話であった。
「ありがとうございます!」
 そうこうしているうちに歌も終わり。得点発表である。朝霧は80ロクト。和馬は92ロクトだった。
「私ダンス好きなのよ」
 この採点はロクトの独断と好みのため点にはかなり差がつく。
 だが、そんなものは本来どうでもいい。ようは見ている物を楽しませることができればなんだってよく。現にお花見会場は沸き立っていた。
「次の挑戦者の準備が終わるまで、お肉食べててね」
 いのりが言った。
「はう……素晴らしい芸でしたね……。この一瞬の為にどれだけの時間をかけたのでしょう」
 蘿蔔はぱちぱちと手を打ち鳴らしてる。
「謎なコメントね」


● 音楽以外もあるよ。
「おっと、次の催しは少しスリリング、ゼノビアさんとレティシアさんです」
 準備が整ったことを確認した澄香はそう告げると、レティシアだけが壇上に上がってくる。
 その手にはリンゴの入った籠がかかっており、一度礼をすると、まず。ステージ上に載せられた、鉄板を指さす。
 次の瞬間。轟音と共にその鉄板に穴が開いた。
「実弾です……、これで何をしようというのでしょう」
 澄香が言う。
「リンゴを打ち抜く。ここだ」
 そうレティシアは頭に銃を乗せる。するとその林檎に大きな風穴があいた。
「おお、すごい、ちなみにゼノビアさんは、二百メートルほど後方の西大寺のお屋敷から銃を撃っています」
 おお、っと歓声が上がる。
 ゼノビアは、いろんな意味でこのイベントをする前は緊張していたが。一度スコープを除けば人が変わったように冷静になった。
 さらに何発か銃弾をはなち、小さなリンゴを打ち抜いていく。
 最後にはレティシアがリンゴをかじり、さらに小さくしたうえで空に放る。
 歓声に従って落ちるリンゴをゼノビアが打ち抜いて終了だった。
「これはすごい! ロクトさんも興奮しております。108ロクトです」 
 舞台上ではいないゼノビアに代わりレティシアがコメントを求められている。
「あ、橘さんはやく」
 その舞台袖で蛍丸と娑己が由香里を手招きしていた。
「ごめんなさい、着替えに手間取ってしまって」
 由香里は先ほどとは違い。パーティー用の衣装ではなく巫女装束に身を包んでいた神楽鈴を蛍丸が手渡し。
「お次は橘 由香里さんです」
 そのコールと共に壇上に登っていく。
「「がんばって」」
 二人の応援を背に。
「橘 由香里です、舞います」
 そうやや緊張ぎみに言った。
 しかし、一度鈴を鳴らすと場のふんいきがガラッと変わる。
彼女は神職の家系の人間だ。幼いころから義務教育とばかりに祭りごとの全てを叩き込まれたので。その所作から視線の運び方まで、全てが美しく、見るものを魅了した。
「すごい舞でしたね、場が静まり返って静謐に。神々しいものを見たね」
 澄香が茫然とつぶやいた。
「さて得点ですが、高い! 92ロクト ちなみに今のどう思われますか、コメンテーターの沙羅さん、アメリカンな感じで」
 いのりが言うと沙羅がまたもごもご何かを言う。
「あまりに神聖すぎて、場の空気が洗われちまったな、私も払われるところだったぜ、ははは、と申しているわぁ」
「はい、では続きましてレイさんとカールさんです。」
 レイがギターを鳴らし、音を確かめる。カールはベース、チューニングの必要がないことを確かめるとレイは言った。
「春にぴったりの曲を用意してきた。きいてくれ」
 そのメロディアスなサウンドは、かき鳴らした途端に周囲に満ちた。
 春の訪れから桜が潔く散る様を儚く激しく歌う。その歌には強く感情を揺さぶられる何かがあった。
 そして曲はサビに差し掛かる。
「幾ら華やかに燃えようとも
 幾ら嫋やかに揺れようとも
 己の行く道は唯1つ」
 カールは観客の反応を見るとにやりと笑い。より一層強く音を鳴らす。
「絢爛華麗に現れて
 純一無雑に消えて行く
 狂い咲け 生きる魂
 狂い咲け 刹那の今」
 キーンと響く残響が桜の並木の中に溶けて消える。
 すると会場からは歓声が上がる。
「……カール、お前、腕上げた……か?」
「マジで? マジで?! レイがそう思ってくれるんならオレ的には大満足!」
 そして89ロクトを獲得。壇上を下りる。

● レッツダンス
「ねぇねぇ、私何も聞いてないんだけど……」
 咲良がつぶやくも、流れてきた爆音で聞こえなくなってしまう。
「続きまして、咲良、ジャックペアによります。ダンスです」
 ジャックが咲良を巻き込んでブレイクダンス披露する。
「ジャックちゃん!僕やった事ないんだけど!?」
「音に合わせて適当に跳んで回りゃいんだよ、キヒヒ」
「無茶ぶり!」
 しかし咲良も運動神経は悪くない、普段見ているジャックの動きを見事にトレースし、徐々に合わせていく。
「やるじゃねぇか。キシシ」
 続いては望月の
『一発芸、長距離豆菓子キャッチ』である。
「いくぞ百薬、それー」
「だばー」
 器用に口でキャッチしてみる百薬である。
 ここから距離を伸ばし、さらに二つ三つ同時に投げて見たりする。
 それも見事に百薬はキャッチする。
 しかしその頬はお菓子でパンパンである。
「遙華ちゃん、遙華ちゃん」
「え? わたし?」
 遙華に投げてみる。
「遙華ちゃんも、それー」
 しかし遙華はそれをとれない。
「あ、ごめんなさいもういっかいい?」
「その子、共鳴しないと致命的に運動神経ないのよ」
 ロクトが言った。
 続いて壇上に登ったのは娑己
「え? 本当にいいの?」
いのりに顔へマジックで落書きをしてもらうよう頼み、
メガネをかけます
「手は使わずに、顔の筋肉だけで、外します!」
 ドラムロールがなる。
「ふおおおおおおおおお」
「こ、これは!」
「面白い。しかし、乙女の顔ではない、これはみせてもいいの? ねえ娑己さん!」
「みんなが笑ってるっていいよね~」
 みんなの笑顔に満足気な娑己、体を張ったネタであった。
「あんなにかわいい子がなぜ」
 そうロクトは不思議そうな顔をしている
「娑己様……それ油性マジックじゃ?」
 龍ノ紫刀が耳打ちし。
「へ?」
 娑己はあわてて駆けだした。
 バシャバシャと水道の方から音が。
「さて、次は、アンジェリカさんと、マルコさんなんだけど……」
 いのりがあたりを探して呼びかけても。二人は出てこない。
 それもそのはず。二人は茂みに隠れていた。
「おい、本当にやるのか? この空気の中で」
「大丈夫きっとうける」
 気が進まなさそうなマルコに、アンジェリカはワークキャップをかぶせティラミスで使ったココアパウダーを髪と口の周りに眩し待機させる、そしてアンジェリカは唐突に躍り出た。
 直後、ピコピコ音というか、ゲーム画面がまだドットだった頃の音楽が流れ、そして
「某ゲームの配管工だよ!」
 アンジェリカがそう言うと茂みからマルコが現れた。
 場が騒然となる。
 そしてマルコはピョインピョインとなる効果音に合わせて、飛んだり走ったり効そしておなじみの音を鳴らしてステージの後ろ側へ落ちていった。
 今のは一体なんだったのだ、とあっけにとられる会場
「え! もっかい、もう一回見たい」
 すごく面白かったのだがあまりに一瞬だったためによくわからなかった。
 それに対して一人笑ってるロクト。
「だんだんステージを見る目が真剣になってくこの場には一番いい催しだったわね。あれはずるいと思うわ。90ロクトで」
「はぅ……。似てましたねマルコさん。衣装まで集めてくるなんて、すごいです……。あれ?」
 蘿蔔が脇を見ると遙華がいない。
 彼女はステージ裏で理夢琉と話をしていた。例の物が届いたのだ。。
「おねえちゃーん」
 そうカートの中に入っているのは六本の剣。バルムンクと呼ばれる話す剣だ。
「理夢琉も舞うのよね」
「はい、刀を使った演武をしようと……」
「一チーム五人までだから、二本お留守番ね」
「人と扱われるんですね」
そう話している間に、アリューは所定の位置にバルムンク達を設置。
「理夢琉とばるちゃんずです。どうぞ」
 そう澄香が読み上げると理夢琉が登場した、彼女の手に握られているバルムンクは拒絶の風の応用で振動している。
 この状態で舞い散る桜の花びらを切りながら。振動音の響を「バルちゃんず」のハーモニーと合わせた。
「これは、すごい。新たなリンカーの可能性を見たわね。90ロクト差し上げるわ」
 歓声の中、理夢琉バルムンク達を抱えて理夢琉は壇上から降りると、アリューにすごく楽しかったと伝えていた。
「今日の間貸すわ。また会える機会もあると思うけどね」
「さて、次の挑戦者ですが。あちらをご覧ください」
 そう澄香が指をさす先には先ほど澄香が使っていた鉄板が、そしてその前には玉子が腕を組んで立っている。
「芸達者な者が多い中での一発芸とは、いやはや悩ましいところ。だが臆してばかりでも場が白けるだけだ」
 玉子は不敵に笑い、愛用の包丁を取り出した
「ではぼくもひとつ披露させて頂こう」
 そう言うと、用意されたのは焼かれる前のラム肉。生ラムなので味はついていない。
 その肉を手際よくカットし、ワインと調味料で味つけをした上で、火を通す。
 何とも言えない上品な香りが会場にいきわたった。
 そして自らすし飯を握り形を整える。
  丁寧な仕事と、迅速な作業の両立。それはプロだからこそできる技だ。
  最後に桜の花弁に軽く味付けしたものを添え、完成だ。
「さぁ、ロクト君、召し上がってくれ」
 あまりの技に圧倒されるロクト。
「ええ、いただくわ。」
「穏やかな眠りを誘う、春羊の寿司、堪能頂ければ幸いだ」
 それを口に入れた瞬間、ロクトは目を見開いた!
「これは、臭みのないベビーラムの風味がよくいかされているわね、獣臭さがいい方向に行かされている。肉もとろけるように柔らかいわ。これは、これは、絶品よ128ロクト」
「これは圧倒的です。最高得点が出ました、そして私も食べたいんだけどいいかな、いのり」
「ボクも食べたいんだけど。全部終わったら作ってもらえるようにお願いしてみようよ」
 そう言うと玉子は笑顔で頷いた。


●アイドルメドレー
「やったでは、最後の次が最後の催しになります」
 会場から、えーっという声が。
「そして、プログラムに名前が載ってる、すっかり忘れてた。ボクたちも発表しないとね」
「僭越ですが私も……」
「澄香、何歌おうか?」
「歌うなら、あの曲にしよう、私たちの歌」
「あ、澄香歌うならボク伴奏するよ? ちょうどハーモニカ持ってるから」
「そんなわけで一度私たちは引っ込みます、なので」
「ここからは続けてお楽しみください」
「まずはたこ焼き焼いていた方のアイリスちゃんで<~月煌の華が咲く頃に~>」
 アイリスは紹介があるとマイクを受け取り壇上に登った、アイドルらしく可愛さを振りまきながら甘い声で会場を魅了していく。
 普段とは違う魅力に驚いた人も多いだろう。
 その曲が終わった瞬間。
 ステージ裏手から響く。豪奢で神聖な音。
 胸に手を当て、妖精のアイリスが姿を現した。
 歌が進むごとに、その金色の光は輝きを増し。翼から響く音はより伸びる。まるで空が、大地が祝福されているかのように輝きを帯びていく。
 歌が盛り上がればアイリスはその体を揺らし始めた、歌も踊りも伴奏も一人で行うそれは、人ではなしえない、妖精ならではの光景である。
「な、なにか桜が発光しているような……気のせい?」
 イリスが驚きのあまり周囲を見渡す、すると全員がアイリスに夢中になっている。
 急に孤独感を感じたイリスは音も気配も無く自然な動作でテーブルの下に隠れた、乾いた笑みを浮かべ、体育座りでその光景を見守った。
 そして。最後に。
「おおとりは私達だよ」
「楽しんでいってね!」
 曲名は
「「春の音~ルネ~『Thanks』」」
 いのりが軽快にハーモニカを吹き鳴らす。
 それに合わせ澄香が静かに歌を歌う。
 それは彼女たちの努力、そして感謝の気持ちの結晶。
 それに当然とばかりに、防人さんちのアイリスが混ざる。
「宜しければ、皆さんもご一緒に。さ、いのり。春香さんも遙華も」
 アイリスがイリスを迷うことなく見つけ、壇上に導き、その周辺に集まるアイドルたち。
歌詞はスクリーン上に映し出され、音源もスピーカーに切り替え、全員でその歌を歌った。
 その光景をクラリスが微笑みながら撮影をしている。
 曲が終われば和やかな雰囲気が場を満たす。
 こうしてすべてのプログラムが終了した。

● 結果発表!

「結果発表!」
 いのりが壇上に登ると。ロクトから封筒を三通受け取り、それを開封していく。
「第三位は。見事なブレイクダンスを披露した。咲良、ジャックペア!」
「私、ダンスが好きなのよね。見事だったわ」
「第二位は、現代によみがえったロビンフッド。ゼノビア オルコット」
「ああいうはらはらするの好きよ、そして素晴らしい技術だったと思うわ」
「そして、堂々の第一位は……私も食べたかった。、春羊の寿司。鶏冠井 玉子」
「我が家の料理人になってくれないかしら」
「残念」
 そう肩を落とす澄香、その背を叩きいのりが言う。
「ま、今回は仕方ないね。玉子さん、ホント凄かったもん。おめでと!」
「その凄さは今から見せてもらうことになるんだけどね」
「そんなわけで、少しの間だけうでを貸してもらえないかしら、みんな食べた胃みたいで」
 そうロクトが言うと玉子は構わないと了承してくれた。
 今日一番の大歓声が響き渡る。


●夕暮れの桜
 日も傾きオレンジ色の夕焼けが会場を染めること。
 お勤めが全て終了し解放された澄香とクラリス。
彼女たちも女子であった。
いまだ大量に残る食料とドリンクを次々と胃袋に入れていく
「「美味しい!!」」
 ご飯を食べている女性は大概可愛いが。この二人の食べる量は全く可愛くなかった。 実はこの二人大食いである。
 そんな二人を呆れた様子で見ている。友人達。
「あらら、すごい食欲だね」
 そう苦笑いする咲良は自分のコップを手に取るも中身がない。 
「喉渇いたんじゃねぇのか? やるよ」
「あ、ありがとねジャックちゃん!」
 しかしそのコップを手に取ったのがいけなかった。
 中身はまたたび茶で、酔っぱらってしまった咲良はアイリス以上の抱き着き魔となってみんなを襲う。
 その被害から逃れるために会場のはずれへと逃げ込んできた面子が何人か。
 イリス、金色の方のアイリス。望月、蘿蔔、理夢琉、遙華である。
「あそこにいてはいけない気がする」
 望月が言った。その直感は正しく、酔っぱらった咲良と、それに乗じたアイリスによって、ちょっと人には見せられない世界が展開されているのだから。
「……あう。アイリスさん、すごかったのです。歌お上手ですね」
 あんな世界のことは忘れてしまえ。そう幼馴染の澄香を見捨てた蘿蔔は、アイリスの翼をみつめる。
「ああ、妖精だからね」
 そうアイリスは答える
「でもお姉ちゃんって、妖精とか言われてるけど自分からは言わないよね、なんで?」
 イリスは尋ねた。
「記憶も無いし、確定情報でもないからね。ただ、そういう美しい表現で評価してくれている事は嬉しく思うよ」
「正体って気になる? 元の世界って恋しいの?」
「いや、特に気にしないな。今動かせる手足があり、体を動かす意志がある。ならば何も問題ないさ」
「元の世界、か」
 何やら謎ワードで意気消沈してしまった遙華にあわてて蘿蔔は話しかける。
「そ、そういえば遥華は……得意なことって、あるんですか? ……得意と言うか、好きって言うか」
「うーん、私、長らく読書しかしてこなかったのよね。最近マーケティングのためにサブカルチャーにも手を出し始めたけど、それも仕事だからやってる感じね、蘿蔔は?」
「私は裁縫です。髪飾りなど小物をよく作っています」
「可愛いわね趣味ね、今度なにか作ってよ」
 遙華が気軽な無茶ぶりをする。彼女はその手のクリエイティブな職業の苦労をあまり知らない。
「あ、私も好きです」
 理夢琉が声を上げる
「洋服や小物とか作ってる。洋服の直しとかリフォームもできますよ」
「いずれはアイドルの衣装とか作ってみたいそうだ」
 ロクトと話していたアリューがいつの間にかそこにいて、補足した。
「アイドル、衣装。いいわね。企画として盛り上がりそう」
 遙華が仕事モードの顔つきになっていった。

● そのころ世良夫妻は。
 梅酒を飲んで寝てしまった夫を見て
「あらら寝ちゃった。こうなると中々起きないのよねぇ」
 その視界にふと、ルナのお絵かきセットが目に入った。それを見て頭にぴんと閃く何かがあった。
「良い事思いついちゃった。ウフフ」
 そう夫の顔に落書きをする杏奈。娑己の顔に書かれていたものと同じだ。気にいたらしい。
「あら、体調は大丈夫?」
 そんな夫妻の元にお医者様、沙耶が現れる。
「酔いつぶれたなら、仰向けに寝かせるのは危険よ」
「いえ、そんなに飲んでないんです」
 そう杏奈は霧人の頭を愛おしそうに撫でる。
「大丈夫そうね。あ、あっちにも寝込んでる人が。いってくるわぁ」
 咲良の元へ、その咲良の隣ではアイリスが煉華の膝枕で寝息を立てている。
 その時霧人が起きる。
「ん? もう終わってしまったのかな?」
 そんな主人を見て吹き出すクロード。無言で鏡を差し出す。
「……!? 何だコレ!! ちょっと杏奈ァァァ!?


●嵐のあとの静けさはさみしい

 時は黄昏時、このパーティーも終了の時間。
 だというのに蘿蔔はのんびりと 一通り終了すれば。桜を眺めている。
「本当にきれいですね……今年はもちろん、去年の桜も見れると思ってなかったので……ちょっと不思議な気分です」
「そうだな……来年も一緒に見れるといいな?」
 そう笑いあい、他の参加者と同じようにバスに乗り込んでいく。
 そして西大寺邸に誰も残っていないことを確認した遙華は。
 澄香、いのり。正護にありがとうと頭を下げた。
「三人には特に協力してもらったわね、いつも助けてくれてありがとう。またなにかあれば、たのんで、いい?」
 少し不安げな遙華の表情くを見せる遙華。
 そして見送る遙華を駐車場に残しバスは発射した。はしゃいだのと日頃の疲れでほとんどのリンカーは眠りについていたが、何人かは手を振りかえしてくれた。
 そしてもの悲しい気持ちを抱えて遙華は屋敷の中に戻る。
 きっとまたこういう機会はあるわ。そうそれを楽しみにして、みんなの笑顔を思い出しつつ。帰路についた。
 夜の桜は幻想的で、彼女を包み込むようで。
 鉄の門が閉じると。嘘のような静寂がまた戻ってきた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
  • 炎の料理人
    鶏冠井 玉子aa0798
  • Allayer
    桃井 咲良aa3355

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
    人間|19才|女性|命中
  • 妙策の兵
    レティシア ブランシェaa0626hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 炎の料理人
    鶏冠井 玉子aa0798
    人間|20才|女性|攻撃
  • 食の守護神
    オーロックスaa0798hero001
    英雄|36才|男性|ドレ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命



  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 妬ましい豊満
    白雪 煉華aa2206
    人間|14才|女性|攻撃
  • ポーカーフェイス
    メリュジーヌaa2206hero001
    英雄|24才|女性|ドレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 初心者彼女
    天都 娑己aa2459
    人間|16才|女性|攻撃
  • 弄する漆黒の策士
    龍ノ紫刀aa2459hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
  • 終始端の『魔王』
    藤丘 沙耶aa2532
    人間|17才|女性|回避
  • エージェント
    シェリルaa2532hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • Allayer
    桃井 咲良aa3355
    獣人|16才|?|回避
  • TRICKorTRICK
    ジャック・ブギーマンaa3355hero001
    英雄|15才|?|シャド
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 狩る者
    武 仁狼aa3793
    機械|17才|男性|攻撃
  • 狩る者
    小狼aa3793hero001
    英雄|6才|?|ドレ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • 献身のテンペランス
    クロードaa3803hero001
    英雄|6才|男性|ブレ
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