本部

【東嵐】連動シナリオ

【東嵐】疲弊しようとも

真名木風由

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2016/04/14 11:31

掲示板

オープニング

●連戦
 『あなた』達は、広州駅に向かって走っていた。
 1日の利用者が平均しても万単位という、広州でも指折りの大きな駅周辺には卸売市場、公園、ホテル等々あり、『あなた』達はまず卸売市場に現れた従魔を相手にしていたが、討伐直後、支部より広州駅構内に従魔が現れたと緊急連絡を受け、すぐさま急行している。
 他のエージェントを急行させてもタイムロスは避けられない為、最寄りにいる者をというのが判断理由らしい。
 規模不明である為、支部からも増援手配もしてくれるそうだが、それまでは自分達でどうにかしなければならないだろう。
「戦闘で消耗はしていますからね。とにかく油断しないようにしましょう」
 夜神十架(az0014hero001)との共鳴を解除していない剣崎高音(az0014)が走りながらそう言う。
 卸売市場にはミーレス級の従魔しかいなかったが、数だけは多かった。
 周囲には逃げ切れなかった一般人もいた為、速やかに倒すことを優先させており、万全の状態とは言い難い。
 が、放置すれば、犠牲者が多数出るのは避けられない──行くしかない。
 広州駅が見え、駅から飛び出してくる一般人の姿が映る。
 混乱を極める中、『あなた』達は駅構内へ飛び込んだ。

●傍観者
「今って便利だよね」
 パソコンの前に陣取るその人物は、楽しそうにそれを見ていた。
 画面には映像が少しの時間を置いて切り替わりつつあるが、どれも広州駅であることに変わりない。
「ちょっと間借りするだけで楽しい映像が見放題だし。見返すのも楽しいんだよね」
 まるで、映画のお気に入りのシーンを何度も再生するかのような口調でそう話す。
 そして、言う。
「あんまり面白くない映像は困っちゃうよね。ボクが推薦する時、センス疑われちゃう。だから──何もかもかなぐり捨てて生きようとあがいて喚いて愉しい姿を晒して餌になってよ」
 じゃないと、つまんない。
 唇を三日月に描くその人物の背後に、やはり男性とも女性ともつかない人物がいる。
「幻月様、どの角度が好みでしょうか?」
「さっきのカメラのがいいね」
「了解しました」
 幻月へその人物が応じると、パソコンの画面は先程と同じ映像へと戻った。
 その映像に満足したように頷いた幻月は髪の毛を弄りながら、そのゲームを楽しそうに観戦する。

 間もなく、エージェントが到着する──

解説

●目的
・被害を出すことなく敵の全撃破

●状況
・広州駅付近の卸売市場に出没したミーレス級従魔討伐後、広州駅でも襲撃発生、現地へ急行
・連戦である為、消耗している
※具体的に言うと、アクションスキルが下記の通りとなっています。
回数1→使用不可
回数2以上→半減(端数切捨て)
パッシブスキルについては発揮されていない状態で一律。
生命力減少・アイテム破壊具合は任意(減少・破壊なくてもOK)

●敵情報(【】内は広州駅到着段階でPCは知りません)
・ミーレス級従魔嗤戮(チールー)x16
卸売市場にも出没していた子鬼のような従魔。
鎌(射程2)を用いた近接攻撃のみ。

・ミーレス級従魔乱(ルゥァン)x16
手の平サイズサイズの蜂型従魔。
【戦闘能力は皆無だが針に一時的に精神を乱す力があり、攻撃が命中すると対象にBS暴走付与】

・デクリオ級従魔遠屠(ユェントゥ)x参加能力者数
【黒の人型従魔。顔の中央部分が銃口。目鼻口はない。現場各所に潜伏しており、見つける必要がある】
【銃(射程20)が武器。通常攻撃または1ターン消費して命中精度を上げた狙撃の2種】

●NPC情報
・剣崎高音、夜神十架
何もなければ一般人撤退補助。

・幻月
どこかで部下と観戦しています。
間借りして監視カメラの映像を見ているようですが、PCはまだそれを知ることが出来ません。

・一般人
従魔がいる現場にも到着するまでの道のりにも大勢の一般人がいます。
恐怖で助けを求め縋りつこうとする人もいるでしょう。
その対応をどうするかは皆様次第ですが、幻月を喜ばせる結果にならないようご注意ください。

●注意・補足事項
・広州駅到着の段階で支部から連絡が来ており、内部判明済、現場急行可能とします。
・連戦につき共鳴解除されていない状態とします。
・戦闘開始10分で増援到着、一般人対応をカバーしてくれます。
・状況は参加者一律である為、自分は問題なく戦闘可能ということは出来ません。

リプレイ

●現場へ
「やれやれ、人使いが荒いですね。給与分を超えてる気がしますけど」
 鋼野 明斗(aa0553)が本人らしい口調でそう言うと、ドロシー ジャスティス(aa0553hero001)から何か言われたらしく軽く肩を竦めた。
 共鳴しているドロシーには明斗の本心など筒抜け、不平は口先だけと理解している。
(『立て続けの仕事だぞ。この所多くないか?』)
(正義の為や! 観念して行くで!)
 弥刀 一二三(aa1048)はキリル ブラックモア(aa1048hero001)へそう言い、フミリルへの変化を必死で食い止める。
 と、小鉄(aa0213)からチョコレートが差し出された。
「ケアレイの類は押さえた方がいいでござる」
「……高級お弁当は走りながら食べられへんなぁ」
 小鉄は卸売市場での戦闘で逃げ遅れの一般人を庇い、負傷している。
 一二三も前に立つブレイブナイトであり、軽微ではあるが負傷していた。
 小鉄は稲穂(aa0213hero001)の勧めもあり、チョコレートを多めに持ってきていた為、ケアレイ温存に必要と判断し、自身が食べる分を確保した上で一二三だけでなく他のエージェントにチョコレートを渡した。
「走りながら食べるのも中々乙なものでござるな」
 チョコレートを食べながら小鉄はそう言うが、間違いなく、お行儀悪いんだけどねと稲穂が状況的に仕方なくとも溜息を零しているのだろうなという想像は簡単であった。
(『駅構内には人も多いわ。戦闘で消耗しているから派手な立ち回りは厳しいかもしれないけど、気をつけて』)
 小鉄の内で稲穂が早くも年下のお母さんらしい注意を飛ばしている。
 と、駅に到着するなり、チョコレートを食べ終えたツラナミ(aa1426)が状況確認に入った。
「要請した列車の運行は停止されているな」
 ツラナミはそれだけでなく、列車の運行をするよう連絡を寄越した支部へ要請していた。
 広州駅は1日平均の利用者が万単位だ。
 被害を抑えるには列車の乗り入れの停止は絶対条件である。従魔がホームに降り、そこへ到着でもしたら……その後は言うまでもないだろう。
 連戦や人が多い場所といった状況が重なり、ツラナミの顔には到着までくそだると書いてあったが、既に消えている。仕事における効率の為にその思考は動き出していた。
「駅構内アナウンスが流れ出していますね。……まだ、混乱の坩堝にあると、浸透しているかは判りませんが、現場から遠い人は引き返してくれるでしょう」
 辺是 落児(aa0281)と共鳴し、彼より主導権を得ている構築の魔女(aa0281hero001)も駅構内へアナウンスを流すことで、被害を抑えるよう動いていた。
 非能力者でしかない駅員では従魔の現場付近にまで行って避難誘導しろとは言えない。
 そこまでの期待は見込めないにせよ、現場を適切に伝え、駅から逃げるように言えば、被害は抑えられる。
「現場は……連絡通路交わる待ち合わせ場所、か」
「面倒な所に行ったけど、泣き言言ってられないわよ」
 荒木 拓海(aa1049)と並走する大宮 朝霞(aa0476)が前を見据える。
 人が行き交う場所、連絡通路重なる待ち合わせ場所となる広場が現場になっているとは急行最中の最新情報で判明していた。
 人口が多い都市らしく、長距離の列車も少なくない。利用者が多い理由のひとつだろう。そして、大きい駅ならば、判り易い待ち合わせ場所は必然的に設けられる。そこが現場になるのではないかと情報が入る前もエージェントからは意見が出ていた為、それらの混乱はない。
「それにしても、その格好……」
 戦闘の痕跡を残した格好で行くより、そうでない格好の方がいい。
 皆で卸売市場という場所柄もあって当初からイメージプロジェクターを持参しているのだから、活用すべき。
 そうした意見で皆偽装しているのだが、ここへ到着するまでに皆偽装をしている。が、拓海は日曜の朝に放送されているようなレンジャー風の衣装。
「格好いいだろ?」
「でも、2人だとポーズの問題があるのよね」
 聖霊紫帝闘士ウラワンダーである朝霞としてはそこがちょっと気になるらしい。
 特撮において、ポーズというものは非常に大事だ。
(『ポーズは我慢しろ』)
(『男の『子』ねって思ったんだけど……相棒がいて良かったね』)
 ニクノイーサ(aa0476hero001)、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)がそれぞれの内で呟く。
 両者、共鳴している為に互いの声は聞こえないが、何か聞こえる気がしたので、任務が無事に終わったら確かめ合ってもいいかもしれない。
「場所が場所だけに正面が最短になるとは思わなかったが……2人には感謝か」
 迫間 央(aa1445)が小さく呟く。
 大勢の利用者がいる駅だ、当然駅は野外ではない。待合室なども兼ね備えた建物である。
 当初正面から向かっては身動き取れないのではと一二三、拓海と共に避難経路を避けてホームから現場へと思っていたが、迂回し過ぎるという剣崎高音(az0014)の意見もあり、まず到着最優先で駅へ向かい──構築の魔女が要請したアナウンスもあったからか、朝霞と拓海の格好が必要以上に人々の注目を集めることで、逆に道が出来た。
 この付近は現場から遠い為、人々が道を開けたのである。
「近づけばそれも厳しいでしょうから、必要に応じて従業員通路を使いましょう。売店の従業員が使うものがある筈です」
「そちらの状況は?」
「構内放送要請時に潜伏の恐れありと施錠して貰うと伺ってます」
 高音の言葉を聞いた央が確認すると、構築の魔女が支部の要請受諾の際の返答を告げた。
 ならば、有事はそちらを使う。
(……眼鏡の代償は高くつくぞ)
(『アンラッキーだったわよね。こういうこともある』)
 央の呟きにマイヤ サーア(aa1445hero001)が反応する。
 卸売市場での戦闘において、逃げ遅れの一般人に一瞬気を取られ、従魔の攻撃が掠めた際に眼鏡が破損してしまったのだ。
 央本人の視力矯正がやや心許ないが、敵に後れをとるつもりはない。
 徐々に混乱が大きくなってくる。
 全員自分達と正反対に逃げているが、人々の多さより混乱がない訳ではない。
「拙者達忍び……ごほんエージェントが向かう故、皆安心して現場から離れるでござるよ!」
 小鉄が声を張り上げるが、人が大勢いる為に効力は低い。
 が、従業員通路も使い、現場へ飛び込めば、従魔が暴れているのが見える。
 卸売市場にいたものと同種のものの他に見慣れない大きな蜂が飛び交っており、あれも従魔だろう。
「またしても子鬼でござるか、叩き斬る……!」
 小鉄が放送通りエージェント到着を知らしめる為、わざと派手に立ち回るようにして従魔へ向かっていく。
 彼の姿に人々が一瞬時間を停めている間、エージェント達がそれぞれの役目の為に動き出した。

●希望を灯せ
(『こーちゃん、一般の人の対応は任せた方がいいわ。少し興奮し過ぎている人がいる。何かあったのかもしれない』)
「……敵攻撃による可能性はありそうでござるな」
 稲穂の忠告を受けた小鉄は卸売市場にも姿を見せていた従魔が複数いる広場へ踏み込んだ。
 まだここには大勢の一般人がおり、構内放送など聞こえているかどうか判らない状態だ。
 ならば、見せた方が早い!
「邪魔でござるよ!」
 小鉄はストレートブロウで一般人へ向かおうとしていた従魔を側面から吹き飛ばした。
 一般人の位置、従魔の数と配置を把握しながら踏み込んでいた為、吹き飛ばし方向は稲穂のアドバイスもあって一般人がおらず、かつ、大きな音が出そうなものがある場所となっている。
 従魔がベンチに叩きつけられた拍子に派手な音が上がり、姿を見て時を停めていた一般人の顔に安堵が広がる。
「……見るからに毒でも持っていそうな輩だな。生身で受けない方がいい。接近されたら最優先で対処した方がいい」
「そのようですね。扇動者がいる可能性も考えていましたが、扇動する必要がなさそうです」
 一般人が攻撃されるなら、自分が攻撃を受ける。
 そうした心理を衝かれる可能性もある。
 ツラナミは受けていい攻撃とそうでない攻撃の区別は必要と考え、手の平サイズである為目視出来る蜂の従魔に関しては攻撃を受けない方がいいという判断を下した。
 見た所高い戦闘能力を有しているように見えないなら、面倒な何かを持っていると考えた方がいい。
 ツラナミの考えはすぐに共有化され、小鉄の派手な立ち回りでエージェントの到着が広がり始めた所へ、高音が手引きを開始し、足を挫いて動けない女性へ肩を貸す。
「大丈夫、背中は護りますから安心して逃げてください。皆さんに逃げていただければ、我々も力を発揮できます。協力願います」
 動けない者を中心に対処する為、無防備になりがちな高音をフォローするのは明斗だ。
 この場を離れて貰えれば、自分達が対処してもう何も問題はなくなると示しつつ、隼風で鎌を持って追撃してくる従魔へ牽制の一撃を繰り出す。
「聖霊紫帝闘士ウラワンダー!華麗に参上よ! 従魔は私達H.O.P.E.がやっつけます! 皆さんは落ち着いて避難してください!」
 別の方角へ回り込んだ朝霞がバシッとポーズ。
(『良かったな。仲間がいて。が、こちらへも逃げられるのと安全に逃げられるのは違う。誘導方向を間違えるな』)
「勿論よ。助けるなら最後まで、ね!」
 ニクノイーサに応じた朝霞は小鉄の派手な立ち回りでエージェントが到着したという安堵が広がり始めたからこそ、何があってもおかしくないと気を引き締める。
 人が油断するのは、安堵した瞬間だからだ。
「こちらへ。この方角は安全が確保されてます」
 フェイルノートで攻撃を開始した朝霞が迂回し、明斗が守る退路へ向かうよう人々を促す。
 対になる方向で、拓海が動いていた。
(『あの位思い切れば良かったのにね』)
「修行が足りなかった」
 メリッサからダメ出しされている拓海は一二三、央と共に小鉄とは別方向の密集地帯へ動いていた。
 突入直前、優しく声を掛けようとしたらメリッサへダメ出しされ、強気なオレ様ちっくに「良いか……お前らはオレ達が助ける! オレの指示に従え!」と宣言しても、もっと派手でも良かったのにと漏らされた矢先に朝霞からポーズ付というお手本を示されたのである。
「人が沢山利用する駅だけあって、少し敵も分散しているな」
「集めた方がええな」
 央の呟きに一二三が応じ、周囲を見る。
 利用者が多い駅だけあり、広場には逃げ遅れている一般人の数も少なくない。
 ツラナミの指摘通り従魔の攻撃を受けて興奮し過ぎている一般人もおり、その影響で一般人が密集していない。
 誘導するにも安全の確保が必要──構築の魔女が一般人へ近づけさせないよう牽制で撃ってくれており、小鉄の立ち回りのお陰で鎌を携えた従魔が密集しつつある。
「追撃は、そこまでや」
 一二三は可能な限り多く従魔がいる位置にて守るべき誓いを発動させた。
 派手な立ち回りをしながらも位置把握をし、共有することを忘れなかった小鉄のフォローもあったが、守るべき誓いの影響を受けた従魔が一斉に一二三を見る。
「ここはもう大丈夫ですから、ね!」
 拓海が穏やかに声を掛ける振りをして手加減した当身を食らわせ、興奮し過ぎている一般人を気絶させた。
 見ると、蜂に刺されたような跡があり、ツラナミの指摘は的確であったことを知る。
 一般人であればこうした当身(周囲には安堵して気絶したと受け取られるだろう)で対処出来るが、エージェントではどうにもならないかもしれない。
 改めて注意喚起した拓海は高音にリレーの要領で引渡し、高音が安全な場所まで連れて行く。
「当たりだ」
 一般人を明斗の後方、安全地帯まで送り出し、戦場へ目を向けたツラナミが呟いた。
 伏兵の危険性がある為に当初から持参していたライヴスゴーグルはここでもその機能を果たしている。
 ツラナミは他のエージェント同様ライヴスゴーグルを通し、伏兵の存在を探していた。
 戦闘に比重があるエージェントよりも彼の方が見ることに比重があった分、それに気づけたのだ。
「頭上、いるぞ」
 ツラナミが通信機では耳に拾える暇がないかもしれないと判断、前へ踏み込み、ライヴスガンセイバーで見つけた不自然な存在を攻撃した。
 落下したそれは、目鼻口がない顔に銃口があり、見るからに従魔だ。
 一二三が守るべき誓いを発動させたことで従魔から狙われたのを好機と判断し、照明の陰に潜んでいたそれが反応したのだろう。
「助ける一般人を見てるなら頭上は疎かになりがち……徹底して嫌な奴だが」
 央は小鉄も加わり、最大限に密集したそこへ目をやった。
「俺達も嫌な奴を禁止されている訳じゃない」
 直後、ライヴスで編まれたネットが広がった。

●やるべきをやる
「お前ら自慢の攻撃力、見せてみろッ!」
 央がそう言った時には一二三と拓海が攻撃動作に入っていた。
「撃ち漏らしは頼むで!」
 一二三のライヴスショットが叩き込まれると、爆ぜて周辺の従魔へも影響が出る。
 戦闘能力も高くなかったのか、蜂の従魔のダメージの色が濃い。
「優先順位は、上!」
 拓海が即座に余波を受けた蜂の従魔へ攻撃を仕掛けると、蜂の従魔は地に落ちた。
 けれど、頭上から銃弾が降り注ぐ。
 これが中々無視出来るものではない。
「残りの数は?」
「7はいるわね。少し上にいる従魔があれ」
「対処します」
 構築の魔女が朝霞の意見を聞きつつ、速射で狙い、撃ち落しに掛かる。
 その間も一般人の避難誘導は行われており、明斗が守るべき誓いの範囲外にいた為に無防備になりがちな高音を守るべく子鬼の従魔の対処へ入り、複数である為に手を焼くが、蜂の従魔の攻撃を受けた高音へクリアレイでその影響を除去するなど、立ち回っていく。
「なまじ機動力があると、こちらにもそこそこ来るようで」
 助かったと礼を言う高音へ明斗は軽く肩を竦め、蜂の従魔をパニッシュメントで落とす。
 一二三の守るべき誓いで敵が引きつけられたが、その集中で範囲外の従魔が好機と誤認してあちらへ結構な数が向かった為に対応が楽と言えば楽だ。
(『攻撃が少し違う!』)
「せこいことするな」
 ドロシーがまだ落とされていない従魔の銃撃のタイミングに気づくと、明斗は呟き、15式自動歩槍へ持ち替える。
「新しいオモチャは使いたくなるってね」
 救援が到着したことに気づいた明斗は一般人の避難を高音と彼らに任せ、戦場へ向かっていく。

「ぐ……!」
(『朝霞、少しは避けろ。ディフェンダーで凌ぐにも限度がある。』)
 ニクノイーサが朝霞へ銃撃が集中していることに気づいて注意を促すが、朝霞はそれを譲らない。
「攻撃を避けたら、弾が流れるでしょ。床に当たったら跳ねるかもしれないでしょ。逃げている人達に当たったらどうするの、ニック」
 朝霞は敢えて『避けていない』のだ。
 寧ろ自分へ目が向くならそれでいい。
(『確かにそうだが……あまり無茶するなよ。ケアレインを攻撃を受けていた一般人に使用しているし、残るはケアレイだけだ。負傷が濃くなるぞ』)
「皆を守るのがヒーローの役目よ。今無茶しないでいつするのよ!」
 気を吐くその姿は、希望の名を冠するに相応しいもの。
 小鉄が派手な立ち回りで自分達の存在を知らしめて人々へ安堵と放送を聴くだけの余裕を手に入れさせたように、朝霞は身を挺して庇うその姿で、人々に絶対に助かる確信と感謝を与えた。
「蜂の生命力自体はさほどではないようです。お願いしていいですか?」
「こっちはオレに任せてください」
 構築の魔女の情報を聞いた拓海が蜂の従魔を優先対応し、戦闘の悪影響が出ないよう動く。
「落とした後は任せます」
 明斗が構築の魔女の銃撃に加わると、銃の従魔を地に落としに掛かる。
 地に落ちれば容赦の必要はなく、女郎蜘蛛に閉じ込めた敵を駆逐した小鉄、朝霞、一二三が援護しようと強引に立ち回る子鬼の従魔共々攻撃し、連係して落としに掛かった。
「一箇所におらんものやな」
「見つかり難い場所にいる点は考えてるのかもな」
 一二三が火之迦具鎚手に呆れると、蜂の従魔をまた落とした拓海が軽く肩を竦める。
 銃の従魔の配置のお陰で皆多少ではあるが負傷している。
 負傷が濃かった朝霞は自身が残っていたケアレイに続き、明斗からもケアレイを受けたが、完全回復には至っていない。
「隠れるのは得意だったようだがな?」
「手間が掛かる」
 一二三と拓海に応じながら央が物陰から、別の物陰からもツラナミが姿を現すと一気に間合いを詰め、落下し、すぐに距離を取ろうとした銃の従魔へ向けてジェミニストライク。
 両者、潜伏を発動させていた為、銃の従魔にとっては完璧な予想外である。
 まともに攻撃を喰らって狼狽してしまった所を見逃すエージェントはなく。
「速やかに倒すのが肝要でござるよ」
「それには同意、と」
 小鉄と拓海の烈風波が飛び、それぞれ銃の従魔が落ちるが、まだ動く。
 既に落ちている銃の従魔も子鬼や蜂に比べて、多少落ち難い。
「ミーレス級ではないかもしれないですね。デクリオ級かもしれません。デクリオ級の中で比較すればそうでもなくとも、子鬼や蜂がミーレス級であると仮定すれば、差は感じるかもしれません」
「ありえなくはないですね」
 構築の魔女の分析を聞き、朝霞も頷く。
 が、構築の魔女と明斗が全て地へ落とせば、その時には蜂の従魔は拓海に落とされ、子鬼の従魔の残りも僅か。
「少し黙っててくれないか」
 拓海がそれでも銃撃を浴びせようとする銃の従魔へ電光石火を浴びせると、
(『命中精度が高い攻撃は準備時間があったわ。次を与えなくていい』)
「当然だ」
 マイヤに応じた央は拓海の電光石火を受けて狼狽している銃の従魔の顔面へハングドマンを繰り出し、鋼線で絡め取る。
 立て直して反撃する前に一二三がライヴスを纏わせた火之迦具鎚を叩き込んで仕留めた。
「仲間という概念があるかどうか興味ないのでいいですが、仕掛けて逃げるのは良くないですね」
 明斗の15式自動歩槍が火を噴き、子鬼の従魔を縫い止める。
 救援で駆けつけたエージェントのみの対応で十分になったことを受けて合流した高音がその間に子鬼の従魔へ回り込み、明斗はその間に隼風へ持ち替え、同時に対処して最後の子鬼を仕留めた。
「逃げるのが感心しないことには同意ですね」
 構築の魔女が呟きつつ、同じように逃げようとした銃の従魔へ向け、撃つ。
 弾丸は途中でその姿を消し、従魔の死角へ転移、穿つ。
 ファストショット、ロングショットは使用していたが、最後の切り札として使わないでいたテレポートショットがここへ来て大きな役目を持つ。
 突然のことに狼狽した従魔へ朝霞が間合いを詰めており、接近戦を仕掛けてディフェンダーを振り下ろす。
 その側面ではツラナミの縫止を受けた別の従魔が小鉄によって蹴散らされていた。
「これで最後でござるか?」
「見た所、そうですけど……いない保障はないですね」
「共鳴解除はまだせずに一通り捜索した方がええやろうな」
 小鉄と朝霞の会話に一二三が加わる。
「救助に急行してくださった方にも協力いただいて安全確認しましょうか。それからでないと安全の放送は危ないかもしれません」
「列車も同じだろうな。だる……」
「本当に働かせる」
 構築の魔女とツラナミの会話を聞いた明斗がぼそと呟いた後、また肩を竦めた。
 やっぱりドロシーから何か言われたに違いない。
 その後一通りの捜索で問題ない判断が出て、やっと共鳴は解除となった。
「広州の件、本当に楽しんでいるみたいで気味が悪……?」
「……眼鏡がないときつい……」
 拓海の横で、央が目を細めて周囲を見ていた。

●疲弊しようとも
 探索を終える頃には、結構な時間が経過していた。
「腹減りましたな、焼き肉でも食いにどうどす? お弁当分位は動いたかと思うんどすが」
 一二三が周囲を見回し、提案する。
 駅を探索する前に負傷が濃いエージェントへ、高級お弁当が振舞われたが、駅の広さもあって十分消耗しているだろう。
『甘味のある所にしろ』
 見慣れない人が多い為幻想蝶の中へ引っ込んだキリルが彼にしか聞こえない声で言い、一二三は思わず苦笑するが、それに気づかれることなく、皆了承する。
「お店どこにしましょうか。沢山ありそうですけど」
「多いと逆に迷いそうだから、調べるのはどうだろう」
 メリッサと拓海が提案すると、キリルからも促されたらしい一二三が調べ始めた。
『デザート! 沢山!』
「解ったから」
 ドロシーが夜神十架(az0014hero001)とはしゃいでいるのを見、明斗が呆れる。
「疲れた時は……甘いもの、美味しい、もの」
「実際に疲れている時に身体にいいのは」
「ロロ……」
 構築の魔女が知識を展開する前に落児が首を横に振る。
「……ロロ」
 どこか微笑ましい目を2人に向けていることから、実際の効果よりも彼女達のはしゃぎを優先させてほしいということらしい。
「年下の女性には優しいですが、まさか……」
「ロロロロ!? ――ロロ……!」
「冗談ですよ、そんなに慌てなくとも」
「落児さんは元々優しい方だと思いますけど」
 同じように微笑ましい目でドロシーと十架を見ていた高音が会話に加わると、構築の魔女の目がきらんと光った。
「良かったですね。モテモテじゃないですか」
「―ロロ―……!?」
 多分、構築の魔女は落児の反応を楽しんでいるのだろう。
 言葉は構築の魔女以外解らないが、遊ばれているのは解る。
『食べている間にまた別件がないといいけど』
「流石に超過労働のクレームを言う」
 キリル同様幻想蝶にいるマイヤの呟きに央が軽く肩を竦めた。
 と、小鉄一般人が握手を求めているのが見える。
 派手な立ち回りのお陰で落ち着けたとからしい。
「NINJAスゴイ!」
「修行しているでござるからな」
「忍者って忍んでいる筈なんだけどね」
 小鉄の後ろで稲穂がぽそりと呟く。
「そのお陰で一般の人の被害がなく終わったからいいのかしらね」
 ガツンといくなと注意することが多いが、今日はガツンといって良かったというパターン。
 けれど、忍者として合っているかどうかは別問題だろう。
 そこで沈着冷静な忍べる忍者になったら、稲穂は悪いものを食べたと心配しそうな気がするので、それはそれでいいとしよう。何より、派手な立ち回りでエージェントの到着を判り易く示し、避難誘導を円滑にした功労者だ、今日は忍んでなくていい。
 同じように朝霞のお陰で逃げられた人が感謝を告げ、応じている。
「格好は驚いたけれど、英雄だものね」
「違……」
「ええ。彼と共鳴してこそのヒーローです」
 ニクノイーサの趣味でああなっていると判断され、本人は反論したかったようだが、朝霞が笑って封じた。
 識別名『乱(ルゥァン)』とされた蜂の従魔の攻撃はツラナミの指摘で受けなかったが、子鬼の『嗤戮(チールー)』、銃の『遠屠(ユェントゥ)』は敢えて受けることで余波を出さない姿は、助けられる人々にとって間違いなくヒーローであっただろう。(彼女の場合ヒロインだが、憧れているのはヒーローなのでそのように定義しておく)
「……だる」
 列車の運行を停止させるなど新たな混乱を呼び込まない、被害を抑えるといった効率的な動きをしたツラナミはやっぱり面倒そうで、でも、隣の表情はそのままに目だけ輝いた己の英雄が焼肉に行く気満々なので、それ以上言えなかった。

 疲弊しようとも、その意思に疲弊はない。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 忍ばないNINJA
    小鉄aa0213
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
  • エージェント
    ツラナミaa1426

重体一覧

参加者

  • 忍ばないNINJA
    小鉄aa0213
    機械|24才|男性|回避
  • サポートお姉さん
    稲穂aa0213hero001
    英雄|14才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 沈着の判断者
    鋼野 明斗aa0553
    人間|19才|男性|防御
  • 見えた希望を守りし者
    ドロシー ジャスティスaa0553hero001
    英雄|7才|女性|バト
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • エージェント
    ツラナミaa1426
    機械|47才|男性|攻撃



  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
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