本部

酔っ払いのためのRPG~歓迎会編~

落花生

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~10人
英雄
5人 / 0~10人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/04/08 19:06

掲示板

オープニング

リンカーたちが仕事帰りに立ち寄った居酒屋では、すでに酔っ払いが完成されていた。
「新入社員諸君! 俺たちは君たちをカンゲイする」
 居酒屋のなかで、社会人達の雄たけびあがる。先輩に囲まれた新入社員は緊張して固まっているが、すでに頬が赤くなっている。隣の大学生たちも似たように新入生歓迎会をおこなっているが、すでに先輩も新入生も区別がつかないくらいに酔っぱらっている。
「歓迎の意を込めて、一発芸します! ハト出します! ハト」
 一人で笑いながら、大学生はハトのヌイグルミを袋から普通に取り出す。それを見た学生たちは、大爆笑する。
 何故、と思ってはいけない。
 酔っぱらいとは、そういうものだ。
「今日のおススメのソラマメです。はいはい、そちらさまには牛スジの煮込みねぇ」
 賑やかな酒と美味しいおつまみに、酒の席はますます煩くなっていく。
「きゃあ、ハ……ハトのヌイグルミがぁ!!」
 大学生の手のなかから、バタバタとハトが飛び立つ。そのハトに続いて、うねうねと地面を這ってきたのはウドンであった。ちなみに、店自慢の手打ちウドンである。
「ふふふ。さぁ、茶番を楽しめ人間どもめ」
 店の奥で飲んでいた派手な衣装の男――愚神が、ビール片手の笑みをうかべる。
「最後に、俺の特大のマジックをお見舞いしてやるぜ。なぁ、相棒よ」
 男は、隣に座るウサギのヌイグルミに語りかけていた。
 愚神は知らなかった、自分もすでに酔っぱらっている事を。

解説

・楽しく飲んで、従魔および愚神を討伐してください。なお、このシナリオでは何を飲んでも酔っぱらいます。

・居酒屋……昭和の匂いが漂う居酒屋。女将と婿養子の旦那、バイト五名で切り盛りしている。酒類やおつまみは無数にあるが、現在は日本酒フェア中。歓迎会シーズンのため、客の年齢層は若干低め。全員が酔っぱらっており、なにをしでかすか分からない。客は二十人ほど。

・ハト(従魔)……多数出現。店内を飛び回り、よっぱらい達をつつきまわす。逃げ回ったりしなければ、ハト胸アタック(ただの体当たり)をしかけてくる。

・ウドン(従魔)多数出現。蛇のようにうねって、酔っぱらいたちの動きを拘束しようとする。手打ちでコシが強く、非常に噛み切りづらい。なお、リンカーあるいは眠った人間を優先して狙ってくる。

・ネギ(従魔)……巨大なネギ。三本出現。店の手ごろな位置に根をはり、動かなくなる。放っておくと近くの人間のライヴスを吸うために、コンクリートを破壊して根を出現させる。一般人を優先的に狙い、根で拘束する。とてもネギ臭く、周囲にいる人間の吐き気を誘う。

・酒瓶(従魔)……日本酒の瓶、二体出現。飛び跳ねながら行動する。なかにある酒を飲むと眠ってしまう。それ以外の攻撃手段は特にない。酔っぱらった客たちが、飲もうとする。

・愚神(マジシャン)……流しのマジシャンに憑いた愚神。酔っぱらっており、前後不確定な状態。従魔が退治されると「イッツ、ショータイム!」と叫びながら、シルクハットをブーメランのようにして攻撃をしかけてくる。

※リンカーは、アルコールでは酔っぱらいません。あくまで、歓迎会の雰囲気にあてられて酔っぱらっている気分になっているだけです。飲みたいものがあれば、ブレイングシートに記入をお願いします。特にない場合は成人には日本酒を、未成年にはソーダをお出しします。

リプレイ

「いらっしゃいませ!」
 バイトの声が響き、席に座るや否やメニューが手渡される。店内の客はすでにできあがっており、あちらこちらで楽しそうな声が響いていた。
「本日は日本酒フェア中となっております」
「なら、呑まねぇ選択はねぇよな!」
 麻端 和頼(aa3646)はずらっと並んだ酒類から、適当にオーダーする。つまみもホッケや焼き鳥、唐揚げなど腹にたまりそうなものばかりをチョイスしていった。
『和頼、ズルイ~! カクテル系があったら、ちゃんと頼んでよ! 海鮮サラダと揚げパスタもだからね!!』
 すでに共鳴しているため、華留 希(aa3646hero001)が脳内で煩い。和頼は仕方なくカルーアミルクにサラダに揚げパスタも追加した。
『揚げ出し豆腐とブリーチーズもだよ!』
 和頼のオーダーはどんどんと長くなり、バイトに視線で「お客様、胃袋は大丈夫ですか?」と尋ねられることになった。悪魔のような姿になっている和頼だが、酔っぱらいばかりの店ではそんな姿もキグルミだとしか思われない。現に席に座る前には、酔っぱらいが和頼の背中を「おにいちゃん、くろいねぇ」ぺちぺち叩いてきた。
 意味はまったくわからないが、酔っぱらいとはそういうものだ。
「日本酒フェアなら、ぐぐっといっちゃおう!」
 木霊・C・リュカ(aa0068)は上機嫌で、メニュー票にある日本酒たちを眺める。甘口、辛口、冷に熱燗。味だけではなく、どれをどう飲もうかを悩めるのも日本酒の醍醐味である。
「最初は、甘口で冷だよね」
『あ、そら豆あるの。俺様も欲しい』
 ガルー・A・A(aa0076hero001)はリュカが持っているメニュー票をのぞき見ながら、まずはツマミの選定を始める。春の味覚そら豆と甘みの強いタレがかかったヤキトリに合わせるのならば、辛口の冷えた日本酒で決まりであろう。
「重々、飲み過ぎには気をつけてください。潰れたら、おいて帰りますから」
 おしぼりで手を拭きながら、紫 征四郎(aa0076)が睨みを聞かせていた。前回のプリプリという悪夢が尾を引きずっているらしく、随分とガルーとリュカの様子を警戒している。オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)も征四郎と同じ意見らしく、リュカの様子を絶えず観察していた。
『はいはいはーい。そんなにすぐ潰れたりしないって』
「おい、ドナ。酒飲むからって、つられて煙草まで吸いすぎるなよ?」
 注文の前に灰皿を引き寄せようとしているドナ・ドナ(aa0545hero001)に、旧 式(aa0545)は声をかけた。
『うるせーな。お前は俺の母ちゃんか。つーかお前こそ、身長的に酒も煙草もアウトなんだから、その辺考えろよ?』
 ドナの言葉に、旧式はかちんときた。男女の差があっても、自分の方が彼女よりも十センチ以上も上背があるのである。
『うっせー。それは、てめぇもだろうが!!』
 一触即発の雰囲気が流れるのに、何故だか店内は旧式たちを指さして笑う客が続出する。何故、と考えてはいけない。酔っぱらいとは、こういうものだ。
「はい、かんぱーい!」
 すぐ隣の席で、大学生達が何度目になるか分からない乾杯を始めていた。そうとう酔いがまわっているらしく大学生の一人などビール片手に乾杯をし、反対の手で熱燗を飲みながらおでんを食べている。確実に、明日の朝が怖くなる飲み方である。
「ナガレおにーさん!」
 征四郎は、思わず流 雲(aa1555)の名を呼ぶ。
 一緒に店内に入ったはずなのに、できあがるのが早すぎる。周りの大人たちは、無言でうなずいた。きっと大学生に混ざって楽しくなったことにより、ペース配分ができなくなったのであろうと。
『ふふふ。このカシオレ、おいしいね』
 フローラ メイフィールド(aa1555hero001)は流に寄り添いながら、ご機嫌でカシスオレンジを飲んでいた。目の前にあったフルーツ盛り合わせを食べつつ、思いついたように流の口元にも無言でそれを持っていく。
「ありがとう」
 流はそれを受け取って、冷酒のツマミとして流し込んだ。フローラは幸せそうな笑顔を見せて、カシオレを静かに飲む。だが、休まずに飲んでいるあたり、相当に嬉しかったのだろう。ああ、これも酔っぱらうな。
 周囲の大人たちは、何かをあきらめた。
「フルイは、大規模召集の表彰おめでとうでしたよ」
 征四郎は、混乱していく酔っぱらいのなかで、乾杯の音頭を取ろうとする。オリヴィエもソーダ片手に、乾杯をする気満々であった。
「きゃあ……ハトのヌイグルミがっ!」
 流たちと飲んでいた大学生の手から、ハトのヌイグルミが飛び立つ。同時に厨房からは、ウドンやネギはては酒瓶までもがびったんびったんと飛び出してきた。
 突如大量に現れたハトは酔っぱらいを突き回し、ウドンは人を拘束し、ネギは臭かった。酒瓶の周りに集まった人々の安らかな寝顔を見つつ、リュカとガルーは無言で立ち上る。
 バイト女性は、そんな二人に期待をした。
 なぜならば彼女はリュカとガルーが、HOPEのリンカーとして活躍していたのを知っていたからだ。この二人ならば、店の一大事をなんとかしてくれる。
 女性は、そう期待した。
「よし、ここは私達の出番よ! プリブラック!!」
『やったわね、プリホワイト! 念のため持ってきた衣装が役に立つわね!!』
 響いたのは、二十代と三十代男性の裏声だった。
 舞台裏かと突っ込みたくなるほどのスピードでヒロインの衣装に着替えた二人は、露わになる太股も気にせずにバッチリとポーズを決める。
 ――さようなら、女性の好感度。
「今、それを着る必要性は全然なかったとおもうのですよ!!」
『――さようなら、プリホワイト』
 征四郎とオリヴィエはじりじりとダメな保護者たちに近づきながら、その身にまとう衣装を狙う。二人にとってそれは単なる衣類ではなく――悪魔の印であった。
『従魔になんかに、楽しい時間を邪魔させたりしないんだから!』
 ガルーが甲高い声で、ネギを指さす。
「そうよ、太陽に代わっておしおきよ!」
 リュカの台詞に、流がぼそりと「まざってる」と呟く。
 その呟きを聞いてしまった女子大学生が、思わず噴き出した。彼女は美しかった。大学のミスキャンパスであったから当然だ。礼儀も、心根も、美貌も素晴らしいと言われる彼女は今日初めて「飲み会で笑ってビールを吹きだし、向かいに座ったセンパイをびしょびしょにする」という失態を犯してしまった。
 ――さようなら、来年のミスキャンパスの座。
「はぁ、息子が幼稚園の受験勉強をいやがってなぁ」
 ハトやネギの根から一般人を守っていた旧式に、とつぜん酔っぱらった親父が愚痴りだす。片手にはビールがしっかり握られていて、すっかり出来あがった姿だ。
「俺は、去年までニートだったんだぜ。それが、今じゃエージェントで命がけよ。だから、おっさんの子供もそのうちでっけぇことやるって。心配すんな、信じてやろうぜ」
 旧式の励ましを聞いた親父は、勇気を出した。勇気を出して、翌日教育熱心な妻に「息子がニートになったっていいじゃないか! あの子を信じてやろう」と宣言した。
 ――さようなら、結婚生活。
「おめえら! 邪魔しやがっと、ぶっ飛ばすぞ」
 オラっと、和頼は乱暴にバニップの杖を振りまわす。だが、物理攻撃には適さない武器だけあってバニップの杖では思ったようなダメージを与えることができなかった。苛立った和頼は近くにあった酒のボトルを飲み干し、空になった瓶をネギに向かって投げる。当然、バニップの杖以上にダメージはない。
「くそっ、今日はタバコが吸えなくてイラついているんだよ!」
 リンクしている希は、良識的に『小さいコもいるし、タバコはやめときなよ』と和頼に注意してきた。それもそのとおりなので、和頼はタバコを控えた。だが、目の前の旧式はスパスパと吸っているではないか。
 まぁ、それはいい。
 禁煙は自主的なものだったし、他人に押し付ける気はない。
 だが、それでも……。
『タバコが吸いてぇんだよ!!』
 和頼はプランシェットを取り出して、中距離からの攻撃を試みる。ネギは根を張ってコンクリートを破壊し、酔っぱらいたちを拘束しはじめていた。
 苛立つ和頼は、気づかなかった。
 ボトルに『ツダさん 五十歳おめでとう』と書かれている事を。そのボトルはツダという男性が五十歳の誕生日に、友人から入れてもらったボトルだった。友人はその後不幸にも事故にあって亡くなってしまい、ツダさんは寂しそうにボトルの酒を減らしていた。
 ――さようなら、ツダさんのボトル。
「ひゃっはー! 一番流、手品やりまーす!」
 大学生の集団のなかから、流がちょこんと飛び出す。そのまま共鳴し、フローラの姿が消えて雰囲気が変わった流一人となった。
【二人が消えて、俺登場! ではでは!! 模造刀でウドンをぶったぎりまーす】
 見事な刀さばきで、流本人を狙ってきたウドンを一口サイズに切り分ける。その一つがカウンターの上を飛び跳ねて、店の厨房にあったモツ煮の鍋に放り込まれる。異物が入ったモツ煮は、以後客に出されることはなかった。
 ――さようなら、美味しい煮込み料理。
【ふ……また、つまらぬものを切ってしまった】
 たそがれる流の横では、巨大酒瓶から酒を飲んで泥酔した酔っぱらいがどんどんと出来あがっていく。死屍累々の光景ではあったが、騒いで邪魔されるよりはよっぽど良いとリンカーたちはそれを放置していた。だが、彼らは預かりしらないところで放置してはいけない類の酔っぱらいが誕生していた。
『ふ……出たわね、悪の王子オリヴィエール!』
 居酒屋の中央で、女装姿のガルーが無表情で怒っているオリヴィエを指さす。彼はまぎれもなく、放置してはいけない類の酔っぱらいであった。
『覚悟はできているんだろう?』
「燃やしてしまいましょうか……」
 思いつめた表情の征四郎とオリヴィエは、それぞれナイフとマッチを取り出す。ちなみに、マッチは居酒屋の電話番号が書かれた店オリジナルものだった。
 このままではプリプリの衣装(全身セット 四千八百クレジット税込)が炊きつけにされてしまう。リュカは「マジックやりまーす」と叫び、オリヴィエと共鳴した。
『……羽根とりと血抜きは任せろ、鶏なら経験がある』
 プリホワイトの衣装を見ることがなくなり、いくらか心中穏やかになったオリヴィエはいつもの調子でハトの従魔に切りかかる。店内に血しぶきが降り注ぎ、酔っぱらいが放置していた鞄にも振りかかった。
 オリヴィエは知らない。それは女性客が初給料で買った、ブランド物のバックであった。高すぎると買った当初は思ったが、長年愛用し、今ではすっかり体の一部のようになっていた。
 ――さようなら、ブランドバック。
「おおお、おちついてください。そんなに騒いだら、助かるものも助からないです」
 プリブラックの姿を見たくはないがためにガルーと共鳴した征四郎は盾でウドンから、酔っぱらいたちを守っていた。
「おー、紫にガルー舞台をやって以来だなぁ」
 同じように酔っぱらいを守っていた旧式が、征四朗に話しかけてきた。
「こんなときに!」と征四郎は目を白黒させたが、なんのことはない。旧式も酔っぱらっていたのである。
「酔っぱらいどもは、俺の後ろに隠れてろよ。従魔にやられたら、奥さんが哀しむぞ。なんだって……安心しろ。さっきの合法ロリは、あんたの奥さんじゃねぇよ」
『その若造は、あとで殺す! つーか、従魔に食われろ!!』
 今のドナの声は聞こえないはずなのに、ドナを合法ロリと呼んだ若者は何故かぶるりと快感に震えた。そのゾクゾクの気持ち良さを忘れられず、彼は二次元のロリをこじらせる羽目になる。
 ――こんにちは、少子高齢化。
【おえ……】
 店の端っこで、流は吐き気と戦っていた。
【やべぇ……酔い止め飲むのを忘れてたわ】
 ウコン系の飲み物が欲しい。
 切実に、欲しい。
「イッツ・ショータイム!」
 従魔が消えさると、客席から派手な格好をした男が立ち上る。
 流は、男につられたように【イッツ・ショーターム!】と叫び、守るべき誓いを発動させる。リュカは「ネタが被った……だと」とちょっと悔しそうであった。
 一方で、流の苦しい戦いは始まった。
 歩けば眩暈(酔いのため)
 座れば空腹(仕事帰りのため)
 テーブルには、思わず飲み食いしてしまう料理や酒(結果は、自業自得)
 そんな流の孤独で苦しい戦いを尻目に、和頼はボトルに入っていた酒を煽った。口の端でこぼれた酒を手の甲で拭い、にやりと笑って愚神を指さす。
「よし! そこのピエロ! どっちが多く呑めっか勝負しやがれ!!」
「ふん、そんな勝負を受けると思っているのか」
 従魔は、刃がついたシルクハットを投げた。
「あぶない!」
 リュカは、フラッシュバンを使用する。
 なんの前置きもなく、本当に突然であった。なぜならば、酔っぱらいであったからだ。酔っぱらうと、安全確認を怠りがちになるのである。
 ちなみに、被害者は征四郎との共鳴を解いていたガルーであった。彼らは比較的人の話を聞く酔っぱらいの避難誘導をしていたのである。
『目がぁぁぁぁ!! 悪の王子オリヴィエールめっ!! しかし、愛と正義のプリブラックは負けないっ』
 負けて欲しい、征四朗とオリヴィエは心の底からそう思った。
『つーか、ダメだろ。紫はこんなところにいちゃダメだろ。ダメな大人の見本が溢れすぎてて……まぁ反面教師にすればいいか。アタシもなー、酒も相まって大人の色気がでてるから刺激が強すぎるな。今も、色気がモンモンだろ。』
 愚神のシルクハットから酔っぱらいを守る旧式に、ドナは語り掛け続ける。だが、思い出してほしい。今、ドナと旧式は共鳴中なのだ。
 姿かたちは、ほとんど旧式なのである。
 他人に分かるほどの色気は、残念ながら今の状態では出ていないであろう。だが、ドナは上機嫌だ。酔っぱらいとは、そういうものである。
【二日酔いが、なんぼのもんじゃーい】 
 一人、吐き気と戦っていた流が愚神にライブスローを叩きこむ。反動でくらりとする流を襲うのは、強烈な気持ちの悪さだ。今ここで誰かが黒ポリを持ってきてくれたら……その人とは一生の友人でいられるような気がする。だが、残念ながらそんな奇特な人物はいなかった。
 さようなら……一生の友達。
【確実に襲い来る……二日酔いの恨みだ!!】
 流は力を振り絞り、吐き気に耐えてライヴスブローを愚神に叩きこんだ。
「ぎゃあ!!」
 倒れ行く愚神の胸から、色とりどりのハンカチが吹きだす。
 流たちは、知らなかった。それはマジシャンである彼が数ヶ月かけて考案・作成したマジックの新ネタであったということを。
 ――さようなら、新ネタ。
【コンビニ……コンビニに行ってウコンを買わないと】
 流はよろよろと歩きながら、店を出て言った。数十分後には、おそらくは元気に復活して大学生達と酒を飲んでいるのだろうが。
 ――すごいぞ、若さ。
「さ、タクシーを呼んだし。帰るまでが飲み会だよー」
 リュカは、会計をすまして一人でタクシーに乗り込む。ちなみに、オリヴィエはガルーの隣で眠ってしまっていた。
『あー、楽しかった』
 ガルーは満足げであったが、衣装を燃やせなかった征四朗は不満げであった。すやすやと眠るオリヴィエが寒くないように、ガルーは年長者の気遣いでそっとプリブラックの衣装をかけてやる。彼の目が覚めたら、きっと修羅場であろう。
「ようやく、あたしも食べれるんだよ!」
 和頼との共鳴を解いた希が、笑顔で征四郎たちの隣に座った。すでに注文してあった料理や酒を頬張りながら、実に幸せそうであった。
「こっちも、追加をお願いします。とりあえず、ワインで」
 共鳴を解いて、コンビニから帰って来た流はいくらかさっぱりしたような顔で注文をしていた。しかし、そのオーダーを聞いている限り、いくらウコン系のドリンクを飲んだところで二日酔いは避けられないだろう。
 ――さようなら、さわやかな目覚め。
『仕事のあとの煙草は格別だな』
「だな」
 店の外で煙草に火をつけてから、旧式はドナの言葉に答える。店内では征四朗達もいるので外に出ての一服であったが、寒空の下の煙草もなかなかに味わい深い。
 旧式達の隣に、和頼が立った。
「オレにも、火をくれよ」
「マッチで良ければな」
 三人は煙草で一息をつきながら、店内の喧騒を並んで聞いていたのであった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 堕落せし者
    旧 式aa0545
    人間|24才|男性|防御
  • エージェント
    ドナ・ドナaa0545hero001
    英雄|22才|女性|ブレ
  • 温かい手
    流 雲aa1555
    人間|19才|男性|回避
  • 雲といっしょ
    フローラ メイフィールドaa1555hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
前に戻る
ページトップへ戻る