本部

【東嵐】連動シナリオ

【東嵐】典礼ご一緒に

昇竜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/04/05 23:31

掲示板

オープニング

●広州市、非常事態につき

 プリセンサーが広州市の襲撃を察知し、緊急編成されたチームは市内有数の観光地である石室教会堂へ向かった。従魔の襲撃があったと聞いているが、車を降りても教会からは何も聞こえない。時刻は真昼、既に周辺避難は完了している。

『目撃証言によると、ミサの最中に突然コウモリのような従魔が襲ってきたらしい。教会はパニックになり、人々は我先にと外へ逃げ出した。押されて怪我をして動けなかったり、逃げ遅れて隠れている人も10人くらいいるはずだと聞いている』

 教会へ急ぎながら、オペレーターの説明を思い出す。ここ広州市で散発的に発生している襲撃事件、主導していると思しき愚神はまだ特定できていない。ここにこそ、その愚神は現れるだろうか。

――エージェントたちが教会の扉を開けて中へ入ると、荘厳な堂内を水を打ったような静粛が包んだ。

 逃げる人々が通ったあとは、まるで暴動があったかのように椅子などが散乱しているが、従魔の姿は見えない。と、どこからか風が吹いているのか、天井に下げられたシャンデリアがギィと鳴り。

「……たすけて、」

 消え入りそうな声は頭上から。見上げると、豪華なシャンデリアの上にそれはいた。皮膜の翼を持つ小悪魔のような従魔が、一人の女性から血を啜ろうとしている。1体がギィという鳴き声で警戒を伝えると、影という影から飛び立った従魔たちが一斉にエージェントに襲い掛かった。

●白昼の一手

「ああ、面白かった! ほんと、おなか痛い」

 神が私たちを永遠の命に導いて下さいますように。
 祈りの直後に死に直面した人間の、あの絶望に満ちた悲鳴!
 ひとしきり悦に入って、その愚神は狂気染みた笑みをますます深める。

「さあ、君たちはどんな顔をするのかな?
 その従魔は、吸血鬼の真似事をして人を食らう。大いに苦しんで干からびて死ぬよ?
 フフ、目の前で人間がミイラになるところなんて、なかなか見られないでしょ?」

 遠隔地で行われる虐殺を肴に、愚神は手にしたグラスを傾けた。
 映像の中では、石造りの厳かな聖堂が血生臭い戦場に成り下がる。

「みんなで喜びを感じる典礼なんだってね。なら、せっかくボクの用意した愉しいゲームなんだ。
 パンと葡萄酒なんてケチなこと言わずに、肉と血でやろう」

 君たちも、遠慮なく悦びに酔い痴れるといい。薄いくちびるがゆっくりと弧を描いた。

解説

概要
広州の教会に従魔が出没し、10人程度の一般人が逃げ遅れています。人々を救出し、従魔を掃討してください。

敵構成
・ミーレス級従魔『屍食鬼亜種』(グールヤンガー)×10体程度
 ゴブリンのような小柄の悪魔で、皮膜を広げた幅は1.5メートルほど。
 特殊攻撃はなく、爪や牙、長い尾(射程5)が武器となります。
 単体ではさほど脅威ではありませんが、数が多いです。
 言語も解さず、あまり頭はよくありません。

救助対象の発見について
・祭壇の影、ベンチの下などに何らかの理由で動けない一般人が10人程度います。
 発見を試みる場合、1D20で判定します。(目標値は10、プレイング等による増減有)
・従魔も一般人の発見を試みることができます。
 襲われた一般人は次ラウンドで死亡判定が発生します。
※OPに登場した女性のみ、既に襲われています。彼女を確実に助けるには最初の1ラウンドが勝負です。

状況
・戦闘エリアは瓦礫の散乱した屋内で、広さ20×10スクエアとします。
・壁は花崗岩とステンドグラスで、床から5メートルの高さにシャンデリアがあります。
・任務に急行したため、一般物の持ち込みが難しくなっています。
・プリセンサーの予知で、敵の戦闘能力は既に明らかです。

※●白昼の一手章はPL情報です。この情報はPCが知っているものとして扱うことはできません。

リプレイ



「神聖な場所でなんということを……食い止めます! シリウス!」
「おう!!」

 新星 魅流沙(aa2842)と『破壊神?』シリウス(aa2842hero001)の共鳴。光の波が過ぎ去ると、其の背には二対の光の翼が羽根開く。後光の中に現れる新星が纏うは、シリウスと同じ姫巫女を思わせる御衣。

「んー、いきなり慌ただしいね」
『いまさら言う必要はないかもしれませんが――』
「わかってる。こういう時こそ冷静に、でしょ」
『ええ。判断の速さと蛮勇は別ですから!』

 アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)と共鳴した志賀谷 京子(aa0150)は軽口を叩きながらも危なげ無く初撃を回避し、従魔の前に立ち塞がった。

「さあ、あなたたちの相手はわたしだよ。よそ見してる暇なんてないんじゃない?」

 放たれた無数の光弾は流星の如く三方に弾け、従魔達に神速の一撃が撃ち込まれる。

「ちょっと浅いかな。腕輪は魔力依存だもんね」
『いいえ、これで道は開けました』
「そうだね。みんな、今だよ! 時間は稼ぐから、そっちは任せた!」
「ふむうむ!! 行くぞディオ!」

 出会い頭を捌いた志賀谷は、誘引した従魔を伴って石床を仲間達と逆側へ蹴る。火乃元 篝(aa0437)とディオ=カマル(aa0437hero001)の共鳴の瞬間、石室はプロミネンスの如く輝く炎の輪で照らされた。紅炎が彼女を飲み込むと同時、透く銀髪と甲冑とを黄金に染めた火乃元が、光と散る火の粉の渦より出ずる。

『はいはぁ~い、主殿ぉ~みすみす殺させては駄目でぇすよぉ』
「分かっているぞ!」

 火乃元は足元から花瓶の破片を拾い上げ、それをシャンデリアの上へ投げつけた。ライヴスを介さない物がぶつかっただけでも、従魔は一瞬気を取られたようだ。

「……ん、オーダーは、生存者の救出?」
「ええ、まずはあの女性を救うわよ。それから従魔の殲滅ね」
「……ん、めんどくさい」
「また、それ?」

 佐藤 咲雪(aa0040)の第一声に嘆息し、アリス(aa0040hero001)は彼女に軽くチョップを叩き込む。遣り取りは瞬時、恒例行事を終え、二人は共鳴へ。セーラー服はパイロットスーツへ換装され、年齢の割に大きな胸に伸縮性の高い生地がぴっちりと吸い付いた。赤い瞳には無数のデータが羅列され、中央にはシーカーの表示。

「ヴァイオレット!」

 悲劇は秒読み。ノエル メイフィールド(aa0584hero001)はシャンデリアの上を目撃した瞬間、考えるより先に動いていた。ヴァイオレット ケンドリック(aa0584)が素早くレシーブの体勢を取る。彼女を踏み台に、ノエルはシャンデリア上へ飛び上がった。

(AGWは共鳴せねば使えん。ここは素手しかなかろう)

 拳を叩き込むと、従魔は迎撃の為に女性を手放した。中空で翼を翻し、従魔の尾の一撃が非共鳴のノエルの腹を貫く。弾けた組織から血が遡上、唇を濡らした。稲妻の刺青は苦悶の表情に歪む。

「ぐふっ……」

 佐藤の視界の中、従魔に重なったターゲットマーカーが瞬時にロックオンを示す。

『目標捕捉完了、いつでも行けるわ』
「……ん、わかった」
『右前方、距離180、重力補正0.05』
「……いま……!」

 アリスに応じ、シャープエッジを放つ。佐藤の投擲を脇腹に突き刺し、従魔は甲高い喚きをあげて墜落した。

「ノエル!」
「おっと、」

 落下するノエルをヴァイオレットが、意識の無い女性を麻端 和頼(aa3646)が受け止める。佐藤はもう帰る気満々だ。

「……ん、お仕事、終わった?」
『まだよ。従魔をフリーにすると、生存者を探し出されて襲われてしまうかもしれないからね』
「ん……じゃあ、とりあえず……こっち向いてないの全部、斬る」
『そうね。後方の視界は私がフォローするわ』

 アリスのオペレーションで、石室の高い天井にライヴスで生成された鷹が舞い上がった。

「……これで、今月、家賃払える?」
『ええ。生存者が全員助かったら、美味しいご飯も付けてあげる』
「……ん。めんどーだけど、しょうがない」

 崇高な思念など持ち合わせていない。只、任務は完遂する。麻端の抱く女性と、襲い来る敵を交互に見て、華留 希(aa3646hero001)は感心した様で。

「へ~従魔って、神聖な場所にも入れるんだ!」
「……悪魔じゃねえし」
「蝙蝠っていうからさ~アタシらのがダメージ受けたり? 共鳴姿、悪魔っぽいもんね」
「ンな事があって堪るかよ……やるぞ希」

 麻端はクスクス笑う華留と共鳴を開始。溢れるライヴス、褐色の身体、膨れ上がる筋肉。下半身は刺毛の長い体毛で覆われ、その様相は宛ら狼を思わせるが、しなやかに伸びた尾は先端に焔を灯し。

「――グガアアアアアアアッッ!!」
『はいはい。まずはこの人、治さなくっちゃね』

 治癒を施すと、腕の中の女性はゆっくりと目を開けた。彼女が最初に視界に捉えたのは、炎の様に色移ろう獣の鬣。次に、やや長めに伸びた、其の下から覗く鋭い眼光。

「……大丈夫か」

 唯、その声色は優しく。女性は不思議と恐怖を感じず、こくりと頷いた。

『ノエルはどうー?』
「……Feridas sao profundas(……傷が深い)」
「ゲホ……構わん。元々気を逸らさせるのが狙いじゃ」
「ググゥゥ……この女を避難させたら、すぐに治してやる」
「すまんな」

 ノエルに背を向け、麻端は女性を抱えて出ていく。

「……ノエルさんッ!」
『おい魅流沙、お前の行く先はそっちじゃねぇ』

 彼と擦れ違う様にノエルに駆け寄ろうとする新星に、シリウスは新星に喝を入れた。

『助けを待ってる人がいるんだ。お前は平和に育ってきたし、仲間が心配な気持ちは分かる。
 けど、止まってる場合じゃねぇぞ! 動け!』
「そ、そうですねっ」
『この広さにグールが十二体、只でさえ厳しいってのに、ノエルの負傷……厳しいか?
 ――いや! 神様の社で死人は出させねぇ。いくぜ、魅流沙!』
「はい!」

 新星は、思わず見誤りそうになった一歩を正しく前へ踏み出した。

「やはり、驚異の数を減らすことで避難者を守るのが得策でしょうか。こちらが先に見つけると、グールが横入で狙った時に対処しづらいですから……逆に悪く言えば、グールが彼らを発見してくれれば、こちらは最速で相手を殴り飛ばせます」
『ハイリスクな考え方だな。その攻撃で昇天させることができなければ、襲われた奴は死んじまうぜ』
「もたもたと探していても、結果は同じです……ならば!」
『……オーケー、分かった』

 会話は一瞬の出来事、新星は顔を上げた。作戦遂行は声を掛け合い、過剰威力にならず効率的に行われねばならない。

「咲雪さん! 一般の方が危なくなったら、すぐ教えてください!」
「……ん、わかった」

 佐藤は鷹の目に依って確保した全周視界を駆使し、教会内を縦横無尽に駆け、

『距離260、加速20、空気抵抗55』
「……ん」

 従魔に飛び掛かると、手にしたナイフで従魔の胸部を抉った。噴き出す鮮血に艶髪が濡れる。従魔は苦痛に身を捩り、彼女から逃れた。

『咲雪、背後から二体来る!』
「……っ、」

 鋭い爪の切り裂き攻撃で、ボディスーツの背中がはらりと破ける。

『結構食らってるけど、大丈夫?』
「……ん、へーき。倒せなくても、攻撃が、こっちにくればいい」
『分かったわ』

 佐藤の狙いは、フリーの従魔をゼロにし、味方に余裕を作る事。それは志賀谷も同じ。敵を引き摺り回すことを意識したお蔭で、彼女達は敵に囲まれていない。

『敵が予想より多かったですね。でも、一匹たりとも手持無沙汰にさせる訳にはいきません』
「そうね、アリッサ。お見合いするよりは被ったほうがマシだわ」
『ええ、今もいつ見つかるかと、怖い思いをしている人が居ますから。京子、次はあの従魔のターゲットを取りましょう』
「おっけー」

 志賀谷は星天の腕輪を従魔に向け――テレポートショット。転移する弾丸は離地の従魔を捉え、小柄な身体は壁に跳ねた。

「咲雪さん、こちらはこれで全部よ!」
「……ん。こっちも、全部引き付けてる……!」
「いいわ、それじゃあここから、作戦はお掃除に変更ね」

 いつしか二人は、全ての敵を交戦状態に巻き込んでいた。それでも志賀谷は気を抜かず、従魔達一体ずつを観察する。

「必ず助けるから、そのままじっとしてて! だいじょうぶ、あと少しの辛抱だよ!」

 そう大声で、隠れているであろう一般人達を鼓舞しながら。怪物が跋扈する狭い屋内で震える者が、この声にどれほど勇気付けられただろう。腕輪が輝き、志賀谷の周囲には光の雲が浮かび上がる。

『オレ達もこの隙に、最大火力で敵をぶっ潰すぜ!』
「はいっ!」
『ま、我々は大暴れ。実に単純単純』
「ふむ! 難しく考えても仕方無い! 然るべき事をすればよいだけだ!!」

 新星と火乃元は一気に攻勢へ。

「さあ、どけぇ!!」

 火乃元は自身が引き付けていた敵をストレートブロウで吹き飛ばした。大剣の直撃を受けた従魔は野球のボールの様に豪速で壁に衝突する。

『あッあッ主殿ぉ~今のはオーバーキルですよぉ……アト此処、一応文化財なんですケド?』
「わはははは! 問題ない、壊れていなければ問題ないぞ!」
『ハワワ~果たして壊れてないんですかねェ~~??』
「そら、次だ!」

 突貫を仕掛けるのは、佐藤の引き付けている従魔。ディオはお道化た口調ながらも、誰よりも人命を尊び。

『さてさて、クイズです~♪ 何処が安全でしょ~か? 何処が危険でしょ~か?』
「うん? そうだな……佐藤! 念のためテーブルから離れるのだ! 救助者の安全圏を確保するぞ!」
「……ん、やってるし。なんかえらそー?」
『咲雪、シッ』
「そして――ッ!」

 瞬間、見極めの眼が光る。振り被った大剣が繰り出す怒涛乱舞。火乃元は反撃を掻い潜り、従魔の尻尾を捕まえて、ギョッと目を剥く小さな悪魔にニヤリと笑い――凄まじいスイングで投げ飛ばされた従魔はまたも塵芥を巻き上げて壁にぶち当たった。

「ふははははーッ! どうだーッ……何か悪魔っぽい者ども!!」
『ゴブリン! 確かに形容しづらいけどゴブリンよ!!』
「逃がさんぞ!」

 ディオのツッコミも華麗にスルー、火乃元は瓦礫の山を飛んで過ぎ、身を起こした従魔を標本の蝶の様に床に釘付けにした。そして殴る。殴る。殴りまくる。

「ふははははは!!」
『主、主、もう死んでますって。ハイハイ、次逝きましょ~』
「ム、そうだな! 数を減らすのが先決だった!」
『魅流沙、あそこまでダッシュだ! 今なら奴らをゴーストウインドに巻き込める!』
「はい!」

 シリウスは戦場を俯瞰的に見て、新星に指示を出す。志賀谷の引き付けている従魔は、彼女の起こした不浄な風を受けて装甲が劣化。

『よし、焼き払っちまえ!』
「えいっ」

 新星の手から火炎が迸る。従魔は聖なる光に照らされた卑しい畜生の様に逃げ惑った。

『いい感じだ、魅流沙!』
「ありがとう、シリウス。――っあ!」
「わ、ああッ」

 戦場の只中、飛び出して来たのは一人の老女だった。隠れていたベンチの上に落下した従魔に驚いてしまったようだ。周囲は小ハエの様に飛び回る従魔の群れ――飛び出して来たのは、志賀谷。

「志賀谷さん、ありがとうございます!」
「新星さん、こっちは任せて!」

 志賀谷の手から、腕輪が光と消える。代わってその手には武骨な杖棍。先端に付いた金属の輪が、ステンドグラスから射し込む七色の光を跳ね返す。飛び交う従魔を薙ぎ払う様に道を開き、志賀谷は老女に手を差し伸べた。

「さ、お婆さん。こっちです」

 そのまま腰を痛めている彼女を守りながら、志賀谷は屋外へ。だが、従魔がそれを黙って見過ごす訳も無い。数量差で勝る従魔が、彼女を一斉に襲った。

「くっ……」
『京子、この方は他の人に任せましょう! あなたは従魔に狙われているんですよ。
 それに、怪我をした方を庇いながら、攻撃を全部避けるなんて……』
『Nao,(いや、)』

 途端、周囲を覆うライヴスフィールド。志賀谷の前に立ちはだかったのは、回復しノエルと共鳴を果たしたヴァイオレット。

『……Sou o seu adversario(……私達が相手をする)』
「遅くなってすまんな。早う倒し切らねばの」

 ノエルが大型機構を備えた拳を振り抜くと、放たれた闘気が従魔を薙ぎ倒していく。

「メイフィールドさん、ありがとう」
「構わん、早く行け京子。従魔の尾には気を付けて行くんじゃぞ!
 ワシも甘く見た訳では無いが……低能とは言え捕食者じゃ。本能的に備わっとるもんがあるわい」

 囲まれてきた。ノエルは壁側に逃れようと考えたが、ふと考える。

「カーテンの影に誰か隠れているやも知れん……億劫じゃが、こちらは避けて通るとするか」
『……Nao preciso(……いらない配慮だと思うが)』
「大丈夫だ、ノエル。その心配はない」

 治療を終えた麻端が、ライヴスゴーグルを外しながらノエルの傍へ。

「一般人でも、微弱ながらライヴスが出てるからな。凡その居場所は把握した。好きなようにやれ」
「それはいい。最高じゃ、和頼」

 ノエルと麻端も一気に攻勢へ。

「おい、てめぇら! 助かりてえなら大人しくじっとしてやがれよっっ!!」

 低く太い声が、隠れている一般人をその場に縛る。行動は同時に目立ち、麻端へ襲い来る従魔達。其の攻撃、獣の如くひらりと躱し、鬨の声をあげ。

「オ゛アァァァアアーーッ!! てめえら全員ぶッ殺ッッ!!!」
『……ホント、戦闘だとハイテンション……』

 麻端に華留は呆れた様に。一方、志賀谷はノエルと麻端の加勢を受け、戦闘から老女を守って無事戦闘区域外へ。

「射手のやる仕事じゃなかったかな。……でもね、必要なら身体だって張らなきゃ」
『それが戦士というもの。京子もわかってきましたね』
「いや、別にわたし戦士じゃないけど」

 口を動かしながらも、対応は迅速で。

「身体は大丈夫だと思いますが、念のため係に見て貰ってください」
「はい、分かりました。お嬢さん……もう駄目かと思ったわ。本当にありがとう」

 老女を職員に預け、志賀谷は教会を振り返る。

「アリッサ。戦士じゃないけれど、でも、わたしたちの本領は攻撃にあるわ」
『分かっています。殲滅を手伝いましょう』
「ええ。射手の破壊力だって馬鹿にできないとこ、見せてあげなきゃね」

 志賀谷は戦場へ舞い戻り、再び従魔を狩る。殲滅は間近。

「希、杖出せェ! この辺の奴はその方がやりやすい!」

 麻端の傍、其の容貌に見合わぬ愛らしい筆記具の自動書記が中空に光のスペルを刻む。

『それで何秒か潰れるよー? ワガママ言わないでプランシェット使いなって』
「チッ……なら手足を狙う!!」
『それよか敵は飛べるんだし、羽でしょー』
「……ググゥ」

 魔法の筆記具は麻端の敵意に応え、言の葉の刃となって瞬く間に従魔に向けて飛び去った。従魔は羽の皮膜を切り裂かれて床に落ちる。

「ガァァァ……こうして虫ケラみてぇに転がってると、本当にチンケな奴らだ」

 麻端は躊躇の間も無く、足元、従魔の頭にプランシェットの掃射を打ち下ろす。

「……随分キレイに片付いたじゃねぇかァ」
『うんうん、今のでラスイチだったかな? セーフティガスとかも必要無かったね。さすが、和頼の大声で縮こまっちゃってる感じ?』
「ウゥゥゥゥ……ウルセア゛アアァァァ!!」
『はいはい、救助しよ救助~。助け損なってる人とか、従魔の狩り損ねがないか、隈なく探さなくっちゃ』
「……終わったようね、アリッサ」
『ええ、でも、私たちは周囲の警戒に当たりましょう』
「うん、最後まで油断はできないよね。
 ……みんな、お疲れ様! 私たちで周りを見張ってるから、救助はお願いね!」

 志賀谷は口々に返事をする仲間を聖堂に残し、自分は教会の外へ向かった。



「……ん、避難は完了。帰る……」
「そうね! 帰りましょう」
「盗聴・盗撮の痕跡もなし! 我々も帰ろうぞ、ディオ!」
「まぁぁだですぅ~、後片付け後片付け」
「む……仕方がない。これも組合長としての責務か」
「そうですよぉ、後の為後の為。イヤ~ホント壁壊れてなくてよかったデスネ」

 任務終了後、速攻で帰り支度をする佐藤とアリスを尻目に、火乃元はディオに言われて大人しく片付けの手伝い。従魔だったモノが灰の様に積もった山から重厚な聖書を拾い上げ、火乃元はそれを叩きながら。

「しかしまあ、よく解らぬな、この広州市の襲撃事件とやら。愚神手ずからやればよいものを」
「何者かの仕業かは存じ上げませんが、少々手垢がつき過ぎておりますねえ、この手のは」
「全くだ、相当悪趣味な奴と見た。だがカメラも無し、こちらの様子は知れていないということか?」
「そうとは限りませんよ主ぃ~今は便利ですからぁ。この教会に元々付いてるカメラをアレコレすれば見れなくは無い……しかし、そこまで調べるとなるとぉ」
「フム、なかなか難しいか」

 考える火乃元の傍、シリウスは新星を褒めて。

「死者ゼロ! よくやったぜ、魅流沙!」
「ふふ、シリウスのお蔭ですよ。……あら? ヴァイオレットさん、ノエルさん、どうされました?」
「いや……麻端に一言礼をと思ったのだが」
「先に帰ったかの?」

 その頃、教会の外、鉄格子に囲まれた狭い庭には、持ち込んだ酒を呑み一服する麻端の姿が。

「堂々とサボり?」
「……」

 振り返ると、その声の主は巡回中の志賀谷で。

「……悪いか」

 伸び放題の黒髪、黒がちの肌に灼眼、纏う危険な香り。但し、志賀谷は彼が人知れずしていたことを知っている。

「……救護隊に、怪我の処置だけじゃなくてメンタルケアまで依頼していたのね。
 あのお婆さんも、大人も子供も、みんなにいいことだと思う。ありがと」

 麻端は答えず、只スキットルの中身を煽るのみ。志賀谷とアリッサは心中でふと笑い合って、彼に背を向け職務に戻った。

「……あ、H.O.P.E.からこの事件の首謀者の捜査報告が来たよ。イヤ報告って言うか……」

 隣に居た華留がメールの返信を告げる。

「……こっちでも全力でやってます、みてぇな事か?」
「そうみたい。勘がいいのね、おサボりさん」
「……サボってんじゃねぇ。こういう場所は、肌に合わねえんだよ……」

 華留は麻端の言葉を聞いて、人らしからぬ金眼をぱちくりとさせた。それから呆れた様に伸び放題の芝に寝そべり、空を仰ぐ。

『……アンタはフツーの人間でしょ! 意識の問題! ……アタシじゃあるまいし』

 最後の台詞に、麻端は華留を見遣る。華留はその気配に気づいている筈なのに、彼を見ない。麻端は息を吐き、

「……お前も只の英雄だろ。ジイシキカジョー」

 ぶっきらぼうにそう言った。華留は目を見開き、ゆっくりと瞬き。それから麻端と目を合わせて、

『……そーだった! ……ホントだね』
「てめぇ……何笑ってんだよ」

 華留は思わず噴き出していた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 最脅の囮
    火乃元 篝aa0437
    人間|19才|女性|攻撃
  • エージェント
    ディオ=カマルaa0437hero001
    英雄|24才|男性|ドレ
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • 魅惑の踊り子
    新星 魅流沙aa2842
    人間|20才|女性|生命
  • 疾風迅雷
    『破壊神?』シリウスaa2842hero001
    英雄|21才|女性|ソフィ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
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