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スイーツ相談卓
最終発言2016/03/22 01:01:31 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/03/19 00:45:21
オープニング
●香港某スイーツ店
「ふふふ……ここでHOPEのリンカーを迎え撃ってくれる」
香港にある有名なスイーツ店の厨房で、一人の男が笑っていた。
彼は元ヴィランであり、かつて自分を逮捕したHOPEのリンカーという人種を恨んでいた。そのため更生したフリをして、有名ホテルで修業をし、自分の店を持った。今では街の人気スイーツ店の店主である。
「私の腕によりをかけて作ったスイーツを食べ過ぎて、動けなくなったところを攻撃してやる!!さぁ、HOPEのリンカーたちよ。支部に送りつけてやった無料招待券につられてやってくるのだぁ!!」
ははははっ、と笑いながら男は次々とスイーツを作り出す。
焼き菓子の生地と滑らかなプリンの部分の食感が楽しい、エッグタルト。
さっぱりとした自然の甘さが嬉しい、マンゴープリン。
マンゴーとクリームをクレープの生地を包んだ、マンゴーパンケーキ。
優しい甘さとツブツブの食感が不思議な、ココナッツミルク(タピオカ入り)。
つるつるの食感の豆腐に甘いお汁粉をかけた、豆腐花。
シンプルな小麦粉の生地に粉砂糖を振りかけた、香港風ドーナッツ。
薬膳が香る黒いゼリー、亀ゼリー。
日本でも知名度が高い、牛乳プリン。
キックー生地に包まれたパン生地にバターを挟みこんだ、パイナップルパン。
様々な菓子が並び、テーブルは華やかだ。
飲み物も勿論ぬかりなく、コーヒーや紅茶、お茶などを数多くそろえている。
「さぁ、リンカーたちめ。首を洗い、胃袋を空かせて俺の前に現れるがいい!!」
解説
・支部に有名スイーツ店より招待状が届きました。美味しい香港スイーツを楽しんで食べてください。
・有名スイーツ店……白と青を基調にしたお洒落なスイーツ店。地元では有名店であり、いつもは賑わっているが今回は混みあうお昼時だというのに贅沢に貸し切り状態。店内は広く、可愛らしいアンティークの家具で統一されている。しかし、壊れやすく盾などにするのには不向き。イスやテーブルが、たくさん並べられている。
・店主……元ヴィランズ。リンカーを逆恨みしており、逆襲の機会をうかがっていた。リンカーたちが十分に食べたところで、睡眠薬入りの香港風のミルクティを振る舞ってくる。眠ったところを銃で撃ち殺そうとしてくる。なお、なんらかの要因でリンカーたちが眠らないと自棄になって銃を乱射しようとする。
以下、PL情報
・メイド姿の店員(7人)……現役ヴィランズ。店主がリンカーを倒そうとしていることを知って、便乗する。店主が銃を発砲すると銃型のAGWを使用し、店主もろともリンカーを倒そうとする。一斉射撃を失敗すると、武器をナイフに持ち替えて攻撃してくる。
リプレイ
スイーツとは、甘い魅惑を放つ菓子のことである。その魅惑に誘われて、八人は香港のとある店のドアを叩こうとしていた。
「スイーツ、楽しみ……。タダで、食べられるの、贅沢……」
言葉少ないながら、木陰 黎夜(aa0061)は美味しいと評判の店でスイーツを食べられることにワクワクしていた。しかし、隣に立つアーテル・V・ノクス(aa0061hero001)は思案顔である。
「一番混んでいそうな時間に貸し切りだもんね。店長さんが太っ腹なのか……」
実はアーテルは、最近の香港情勢のこともあり事前に店や店長のことなどをネットや口コミの評判などで調べてきたのだ。『美味しいのが分かれば儲けものだわ』程度の気持ちであった。調べた結果、店の評判はとても良かった。味は美味しく、メニューも豊富。女の子の制服は可愛い、と非の打ちようがない人気店である。
だが、一点だけ気になることがあった。
「このお店の店主は、元ウィランズだという噂があるんですね」
支部に届けられたチケットをいじりながら、世良 杏奈(aa3447)が呟く。一方でルナ(aa3447hero001)は人形のように大きな瞳をきらめかせて『スイーツが食べ放題! これは一刻も早く入るしかないわよ』と意気込んでいる。
『わー。香港の有名店だって! ラッキー』
華留 希(aa3646hero001)も大喜びで、チケットを握りしめる。一方で麻端 和頼(aa3646)は「甘いモン食えねえよ……」と若干不満げである。
『でも、ここのお店の店員さんの態度が最近悪いらしいよ』
希はグルメウェブサイトのバイトを装って聞きこみをしたのだが、そもそも、ここは店員のバイトがあまりいつかない店としても有名だったらしい。そのため接客のレベルは常に女の子の制服の可愛さだけで保ってきた部分があった。それでも最低限の笑顔はあったのだが、最近ではそれすら乏しいのだとか。
『でも、皆……美味しいって思うから流行っているんだよね?』
ルー・マクシー(aa3681hero001)が、わずかに不安げにテジュ・シングレット(aa3681)を見上げる。ルーには漠然とした不安があったが、それを上手く言葉に表すこともができない。
「そうだろな。中々の腕らしい」
ジェフ 立川(aa3694hero001)たちの手伝いしたテジュたちも、事前に店のことを調べていた。近隣にあるライバル店に話を聞いたのだ。ライバル店たちはこぞって悔しそうに「上手いんだよ。甘くて美味いんだよ。バイトの子は顔で選ぶ店主だけど」どいう証言をくれた。
もっと本格的に調べていたのは、五十嵐 七海(aa3694)たちであろう。ホームページで店を確認し「わぁ! 美味しそう……! 店内も可愛い!!」と大興奮した七海は、ネットで評判を集めた。無論、効率的に店のおススメを食すためである。
ところが、七海は店主が元ヴィランであるという噂に行きついてしまった。ジェフが店主の犯罪歴をHOPEと警察に問い合わせて調べた結果、店主は元ヴィランであるのは確かであるらしいことも判明した。どうやら店主は、若気の至りで暴走族のようなものに所属していたらしい。もっとも店主がヴィランとして活躍していたのは随分と前の事で、しかも店主自身は軽犯罪しか犯していない。
弥刀 一二三(aa1048)も最近の香港事情の事を考えマガツヒなどの勢力と店主の過去が関係していないかを調べたのだが、店主が属していたヴィランズの組織は弱小すぎて関係性はほぼなかったようである。
店主の過去は、街のチンピラレベルのものだったらしい。
普段ならば気にも留めないような、経歴である。だが、七海はルーと同じように漠然とした不安に包まれていた。だから、七海は奥の手を使うことに決めていた。
「怪しい動きをしたら『マンゴープリン!』と叫んでフラッシュバックするから目を伏せてよね。皆、くれぐれも気をつけて」
使わなければ、それでいい。
それだけの話だ。
「は……はやくお店に入ろう」
二食抜いてきた今宮 真琴(aa0573)が、胃袋をさすりながら弱りきった声をだす。甘味を思う存分に堪能するため昨日の夜から、水しか口にしていないのである。さすがの奈良 ハル(aa0573hero001)も【飯を抜くのはどうかと思うがのぅ】と呆れていた。このままでは真琴が空腹で気絶してしまうかもしれないと思った一行は、店のドアを叩く。むろん、一番最初に店に飛び込んでいったのは真琴であった。
「こんにちは! 食べにきました!」
真琴の挨拶にメイド姿の店員達は驚いたのは、挨拶が一拍遅れた。しかし、すぐにスカートの裾を持ち上げて「いらっしゃいませ」と挨拶をする。しっかりと裾の長いスカートは、古き良きイギリス風だ。
「これが、香港スイーツ! やっほー! 食べる食べるぅ!!」
アリスが飛びかからんばかりの勢いで、席につく。テーブルに並ぶのは、日本ではあまり目にしない甘味である。
「へぇ……これが香港の甘味か。いいじゃねぇか」
なんか胡散臭ぇけど――という言葉が口から出かかったが一ノ瀬 春翔(aa3715)は飲み込んだ。せっかくアリス・レッドクイーン(aa3715hero001)が楽しそうにしているのだ。水を差すのは野暮である。
「皆さん、よくおいで下さいました」
店の奥から、店主が出てくる。
「自慢スイーツをどうぞ召し上がってください。……HOPEにはとてもお世話になったので、そのお礼ですよ」
アーテルは、店主に向かって頭を下げる。
『本日はお招き頂きありがとうございます』
本当ならば楽しみにしていた黎夜も挨拶をするべきなのだろうが、彼女はアーテルの後ろに隠れてしまっている。
『すみません……この子は男の人が苦手で、ですが、甘いものは大好きで楽しみにしていたんですよ』
「でも、お譲さんもゆっくりと味わって行ってくださいね」
隠れ甘党のキリルは、そわそわしながら挨拶の終わりを待っていた。視線はすでに美味しそうなスイーツに釘付けだが、甘いもの好きを隠している身としてはがっつくわけにはいかない。
「では、いただきます」
誰かが言ったその言葉が合図となり、キリルはエッグタルトを摘みあげてさくりと噛みつく。
「……なんと、なめらかな」
噛みごたえのあるタルトの生地に流しこまれた、黄金色のプリン。卵の味をしっかりと感じることのできる素朴な味に、キリルの手はもう止まらない。次々とテーブルにあるものを平らげて、また足りないとばかりに追加注文を始める。
卵黄のクリームが入った揚げ饅頭、ジャー・ライ・ウォン・バオ。
マンゴーとタピオカそしてココナッツミルクがさわやかに共演する、楊枝甘露。
ココナッツミルクの白いゼリーや薬草の黒いゼリーさらにはバジルシードや豆が底に沈む、哈。メイドさんに頼んで、練乳は特盛りでかけてもらう。
雪のような上品な口どけが楽しめるかき氷、雪花冰。
冷たいココナッツミルクに黒いもち米を入れた、不思議な食感の凍椰汁。
弾力のある食感の餡をパリパリのパイ生地に包んだ、老婆餅 。
薬膳の黒いゼリーに小豆やマンゴーをたっぷりかけた、体にも美味しい涼粉。
一口飲めば体に優しく、二口飲めば舌に優しい温かな汁もの糖水。
どれもこれもが、目から鱗の美味しさである。
シュー生地に砂糖がまぶされた香港式ドーナッツ沙翁を食べていた一二三は、げっそりしながらコーヒーを注文する。
「……見とるだけで甘なってきたわ」
『これほどの腕前……さぞスイーツを愛し研究したのだろうな!』
キリルは感動に打ち震えながら、哈を食べ進める。スプーンを動かす手も、止まる気配がなかった。
「本当に、とっても美味しい。こんなに素敵なお菓子をつくれるなんて、店主さんはとっても良い人なんですね」
『これが何時でも食べられるなんて……近くに住んでいる人が羨ましいわ。日本にもここがあったらいいのに』
杏奈とルナもご機嫌で、牛乳プリンを頬張る。日本でも馴染みのあるスイーツかと思いきや、生姜の風味が効いていたり温かいものもあったりと奥が深い。
『ねぇねぇ、メイドさん。アタシと一緒に写真を撮ろうよ。外国に来た、思い出が欲しいのよ』
外国旅行ではしゃぐ子供のようにルナは、メイドの従業員にお願いをする。子供の姿をしたルナのお願いを従業員は断り切れず、携帯でパシャリと写真を一枚撮った。もしも、このなかに攻撃してくる者がいたらHOPEに手掛かりとして写真を渡してしまおう。ルナはぬかりなく、そんなことを考えていた。
『ん、おいしいね』
ルーは微笑みながら、スイーツを食べ進める。一応、今宮が手をつけていた安全なものしか食べてはいないが、その安全対策を忘れてしまいそうなほどの美味しさだ。しかし、香港ドーナッツはそっとテジュのほうへ。
「よかった、確かにこれは美味しい」
テジュはスイーツを堪能しながらも、亀ゼリーだけはルーのほうへ押しやる。
似た者同士である。
その隣では、七海が口に生クリームをつけながらも幸せそうに甘味を食していた。食べても食べても食べても追加されるスイーツたちに、まるで天国にいるような心地になる。
『七海……おちついて食べようか。俺のもやるぞ』
苦笑を浮かべながら、ジェフは自分の分の豆腐花を差し出す。
「う……食べた受けど太っちゃうから」
甘くて冷たくてももちもちのスイーツたちは感動するほど美味しいが、リアルは怖い。もっと詳細にいうならば、体重計の数字が怖い。
「こいつは……うめぇな! 特に、このマンゴープリン……すげぇや」
春翔はレンゲを持ちながら、鮮やかな色合いのマンゴープリンに感動していた。さっぱりとしていてしつこさはなく、男が食べても十二分に美味しい品だった。
『うっはぁ~! どれも美味しいよ! 幸せぇ~』
アリスも落ちそうになるほっぺたを抑えながら、スイーツを堪能する。
「う……うう、ここのパンケーキは食べてみたかったんだ」
真琴は泣きながら、マンゴーパンケーキを口に運ぶ。甘酸っぱいマンゴーと生クリームをクレープで包んだ香港風パンケーキは日本ではなかなか見られない一品である。
【え、泣くほどのものか!?】
感涙の涙を流す真琴に、ハルはちょっと引いていた。
「だって、日本に支店がないんだもん。この機に食べ溜めをしとかないと!!」
【まだ食べる気なのか! 怖いわ!?】
真琴は、キリルが追加注文していた分の甘味にも羨望の眼差しを向け始める。この二人は放っておいたら、店の商品を全部食べつくしそうである。
【……見てるだけで胸やけがするのう】
奇しくもハルは、一二三と似たような言葉を口にする。ハルも甘味は嫌いではない。むしろ、和菓子は好きな方である。だが、ものには限度があるのだ。
『本当、日本ではなかなか食べれないものばっかりだよね』
希も香港スイーツを堪能していた。亀ゼリーは苦みを感じるが、たっぷりとかかった蜜が苦みを緩和してくれる。なにより女性人気が高いスイーツなので、美容効果を期待したいところである。
一方で、和頼はメイドの動きに違和感を感じていた。足運びといい、視線といい、なんとなくだが戦いなれた自分達と同じ匂いがする。和頼は、テーブルにそなえつけられていたナイフをメイドが近づいてきた瞬間に落とした。メイドが、それを足音が立てずに回避する。
偶然か、実力か。
実力ならば、訓練された兵士のような動きである。
『ゴメンね! こいつドジで……あーヤダヤダだ』
笑顔で希はメイドに謝り、和頼は隣で「……んだと?」と毒づいた。
「皆さん、食後のミルクティーはいかがですか? 香港風のミルクティーは滑らかさが命で、当店はカップの底に乳成分が残るほどに濃いエバミルクを使用しています」
それぞれの前に、すでにミルクと紅茶が混ぜられた状態のミルクティーが出される。濃く煮だされた紅茶は香り高く、苦みはたっぷり入れられたエバミルクで押さえられている。
『ごめんなさい。水も入らないくらいにお腹がいっぱいになってしま……』
アーテルが言い終わる前に真琴が
「わー! 美味しそう!!」
と、大興奮してゴクリとミルクティーを飲んだ。
リンカーたちの時間が止まった。
事前に「注意しようね」的な話をしていたと思うのだが、どうやら二食抜いた真琴の耳には全く入っていなかったらしい。
「ん~、甘くないな。そうか、エバミルクって甘さはないんだ。お砂糖……お砂糖……おさ……と……ぅ」
真琴は机に突っ伏して、寝息をたてはじめた。顔にはさっきまで食べていたマンゴーパンケーキの生クリームがべったりと付着している。
「くくく、眠ったのが一人とは残念だったが仕方ない。HOPEのリンカーめ! 俺に恨みを思い知れ!!」
店主が隠し持っていた銃を取り出し、それをリンカーたちに向けた。
「まつんや。店主はん。せっかく皆に喜ばれる職人になれたんに、まだ恨まれる仕事に未練があるんどすか?」
一二三の言葉に、うっと店主が言葉につまる。
「本当に、通ってしまいたくなるぐらい美味しさでしたよ。お菓子への真実の愛がなければ、このお菓子は作れません。あなたは、まだお菓子が作りたいですよね? なら、犯罪など犯すべきではないんです」
杏奈の言葉を聞いた店主は、自分が作ったスイーツたちを見る。スイーツを作る事は大好きで、天職だと思っている。しかし、HOPEへの恨みは捨てられない。若き日に逮捕された店主は、その後はなかなか職に就けなかった。仲間には金がないせいで逮捕前よりもっと酷い悪事を働いて、死んでしまった奴もいる。自分のせいだと理解していても、あの日々の辛さやいなくなった仲間のことを思い出してしまう。店を切り盛りする今になっても、恨んでしまう。だから、HOPEに復讐がしたかったのだ。
『復讐に、大好きなお菓子を使えるんですか? 美味しいのは大事に作ったからじゃないの? 復讐の味がなければ、もっと美味しいはずだよ。僕は、そっちの方が食べたい』
店主の手が、震えだす。ルーの言葉に、今まで修行してきた日々も思い出したのだ。辛いが、お菓子が好きだという気持ちが上回った時代だった。
「アンタが作ったモン……すげぇ美味しかったんだ。一人のスイーツ好きとして、もう一度食いてぇんだよ! 注文してみたいメニューは、まだまだあるんだ。アリスとまた食いに来れる日まで、店を閉めるようことはするな」
『アリス達がじゃあ出来ないコト、店長さんは出来るんだよ! それってすごいことだと思うの』
春翔とアリスの言葉を聞いた店主の手から、拳銃がこぼれ落ちる。
「くそ……菓子さえなければ……菓子をまだ作りたいから、俺は復讐できないなんて」
呟く店主の背後で、メイドたちが集まってくる。
その不審な動きに、七海は思わず叫んだ。
「マンゴープリン!」
その合図に、七海を含めた全員が英雄と共鳴する。声と共に七海はフラッシュバンを使用し、事前に打ち合わせていた面々は各々で目を庇った。
「店主さんと今宮さんは、こっちだよ」
混乱する店主の手を引っ張り、七海は未だに寝ている真琴の側へと移動させる。こうすれば何かがあった時にまとめて守ることができる。
一斉掃射をするためにかたまっていたメイドたちに、一二三と黎夜はそれぞれライヴスショットと幻影蝶を使用する。それを横目で見ていたルナは雷神ノ書を腕に巻きつけ、一人のメイドにぴょんとしがみついた。そして某有名ゲームに登場する技名『一万ボルト!』を叫ぶ。
ルナはゲーム派なのだろうかアニメ派なのだろうか思いながら、春翔はメイドを縫止で足止めした。
テジュはメイドの逃走を恐れ、窓を守っていた。案の定、作戦の失敗を悟ったメイドたちがテジュの方へと逃げていく。テジュはジェミスストライクを使用して、気を失ったメイドたちと次々と縛っていく。
次々と拘束されるメイドたちを店主と共に見ていた和頼と希が、彼の耳元で囁いた。
「……次、変なことをしたらどうなるか……分かってんな? 爪の間ってな、神経が過敏ですっげー痛いらしいな」
『アタシ、元愚神だし? 怒るとなにするか分からないよ~? ふふふ、針も持っているしね。女の嗜み!』
がたん、と大きな物音が響いた。
見ると黎夜が、メイドの最後の一人を拘束したところであった。
「……すごくおいしかった。復讐のためだったのかも、しれねーけど……自信をもって作ったんだって、見た目も、味も、すごく伝わってきて……熱もすごく伝わってきて。だから、そんなお菓子を作る店主を利用したのは許せなかったんだ」
黎夜の宣言に、店主の目じりから熱いものがぽろりとこぼれ落ちた。
●
「ふわぁ……おかわり!」
目を覚ました真琴に、ハルは頭を抱えた。睡眠薬を飲んで寝てしまったのは仕方がないとしても、目覚めての第一声がそれとはあまりに情けない。
だが、店の惨状を見て何かがあったと悟ったのはさすが修羅場をくぐりぬけてきたリンカーだけあった。真琴は店主の手をがっしりと掴むと真剣な声で
「お願い、犯罪なんかしないで! ここのスイーツは完璧だよ。薬膳的な考えで体への優しさも考慮しながら、若者に人気の高い味に仕上がってる。食べて健康になれる、理想的なスイーツだよ! 医食同源の考えに基づいた、伝統的な香港スイーツだよ! ていうか、パンケーキの種類はもっと増やして。あと、ネットの通販……じゃあ生クリーム系が無理だから、日本に支店を出してください。ミルクティーのエバミルクも売ってください。お土産で、ミルクティセットをください!!」
【お主は、そればっかじゃな! そして、落ちつくのじゃ。もう、全部終いじゃ】
黎夜と共に店の片づけを手伝っていたアーテルは、ハルの声に思わず吹き出してしまったのであった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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