本部

【東嵐】連動シナリオ

【東嵐】龍城の縁にて蠢く

電気石八生

形態
ショートEX
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 7~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/03/10 15:01

掲示板

オープニング

●長い戦いの歌
 香港の観光ガイドで「リーズナブルでゴージャス」と評されるホテル。そのロビーの一角で新聞に目を通していた男が目を上げた。
「ずいぶんと早いじゃないか。闘技場はどうしたんだい?」
 テンポはのんびりしているのに、口調が鋭い。柔和な目なのに、視線が怖い。体は細長いのに、気配は重い。目と耳に届く情報とことごとく相反する「実」を持つアフリカンである。
「ウチの遊び場にいじめっ子が突っ込んできやがった」
 彼の向かいにどっかと座った赤毛の男――エクスプローションが、うれしそうに答えた。
「それでは面子が丸潰れだ。この国では、面子は家族と同じくらい大事なんだろう? どうするんだい?」
「ウチは最っ高にアタマの悪ぃヴィランズだぜ?」
 すぐに運ばれてきた96度のウォッカの瓶をそのままあおり、エクスプローションは熱い息とともに低い声音を吐いた。
「見せしめに暴れてやんだよ」
 エクスプローションの行儀の悪さに苦笑したアフリカンは、その肌と同じ漆黒のドレッドヘアをなでつけて。
「君が暴れに行くのかい?」
「わかってんだろ? 俺ぁまだ動けねぇ」
 まあ、それはそうだろう。小さなお楽しみのために彼が動けば、後の予定が狂ってしまうかもしれない。だとすれば重要なのは、今後の予定を公に晒してしまわないことだ。
「なら、僕たちが誰かは内緒だね」
「やっぱ話が早ぇな。こっそりどハデに見せしめて来いや」
 アフリカンは新聞を綺麗に畳んでボーイに渡し、エクスプローションへと向きなおった。
「期待には応えたいけれどね……いっしょに行くトモダチしだいかな」
「行きてぇヤツに手ぇ挙げさせる時間も取れねぇからな。誰が行くか俺にもわかんねぇ」
 なるほど。確定しているのはアフリカンだけというわけだ。ならば。
「僕らが暴れれば、すぐにいじめっ子が駆けつけてくるかな。彼らはどんなふうに遊んでくれるだろうね」
 マガツヒの古参であり、けして名を「上げない」ヴィランである『長い戦いの歌』――通称ソングは、知らぬうちに戦いのメロディを口ずさんでいた。

●緊急連絡
 香港市街にいたライヴスリンカーたち。その携帯端末がけたたましく緊急コールを響かせた。
『本部のプリセンサーから緊急連絡が入りました! これから10分後、香港の各所で大虐殺が起こります! 現場近くにいるエージェントのみなさん、すぐに現場へ急行してください!』
 10分? あまりに急な出動要請にとまどいながらも、ライヴスリンカーたちは走り出す。
 虐殺が始まるポイントは3つ。リンカーたちは互いに連絡を取りながら、自分が駆けつけるべき場所を決める――

解説

●依頼
 分担し、一般人に200人の被害者が出る前に3カ所のヴィランを撃破してください。

●状況
・ヴィランのまわりに一般人がいます。
・一般人が200人以上死亡すると、軍が出動して一帯を焼き払います(依頼失敗)。
・3カ所それぞれに、担当人数が6名になるよう香港支部のエージェントが助っ人参戦します(助っ人の数が多いほど不利になり、5人以上が助っ人の場所は自動的に壊滅、一般人120名が死亡)。
・助っ人全員がリボルバー装備で「ケアレイ×2」を使えます(使用タイミングは指定可)。

●敵
1.爆弾屋(舞台:空港広場)
・強さはそれなりの、謎の邪英。
・リボルバーとプラスチック爆弾を装備。
・接近されると恐慌状態になり、自分・リンカー・一般人を対象に爆弾1~3を使用(対象が一般人の場合、爆弾1につき10人が死亡)。
・強烈な「不安」状態なので、つけ込めそうです。
・撃破することで回復可能。何か情報が得られるかも。
・一般人はパニック状態。避難を促すにはそれなり以上の作戦が必要です。

2.シュイ姉妹(舞台:繁華街)
・爆弾屋より強い。4兄弟のシャドウルーカーと契約した4姉妹。
・毒(減退のBS付与)付きの点穴針を装備。
・連携し、受けたダメージの多いリンカーを囲んで集中攻撃します。
・1ターンに姉妹数×1人の一般人が死亡。
・香港の繁華街に「ありそう」なものは利用できるかも。
・一般人は放心状態。避難させるには何かの手が必要です。
・姉妹を全滅させれば勝利。

3.ソング(舞台:オフィス街)
・最強最悪のボクサーです。
・両腕が健在なうちは1ラウンド2回攻撃を行います。
・回避に成功する度、攻撃者(距離不問)へ「カウンター攻撃(気絶のBS付与)」。
・「戦いの歌」に合わせて攻撃します。このメロディを適切に妨害できれば、彼の撃破に繋がります(大きな音程度では対抗できません)。
・彼は一般人を攻撃しないので、避難を促すのは容易です。

リプレイ

●急行
 緊急連絡を受けたライヴスリンカーたちが、3箇所の惨劇予定地へ向かう。

 まず、空港を目ざした3組。
「愚神でもそうそうやらない規模での無差別攻撃か――クソッ!」
 メイナード(aa0655)が、いつもはやわらかな空気をまとうその巨体に赤い怒りをたぎらせ、ひた駆ける。
 ジトリと彼を見上げた契約英雄Alice:IDEA(aa0655hero001)が淡々と。
「誰がなにを企んでいるのかはわかりませんが、惨劇を止めないといけないのは確かです」
「やるべきことは多々ある。空港設備の確認、その使用許可申請――」
「注文は現場に着いてから。品ぞろえを知りたかったらまずお店へ行けってね」
 段取りについて語るのは、英雄のアイザック メイフィールド(aa1384hero001)とその契約主・蝶埜 月世(aa1384)。
「プリセンサーって未来がわかるの? すごいねー」
 笑顔を傾げたギシャ(aa3141)に、契約英雄のどらごん(aa3141hero001)が火の点いていない葉巻を口から離し。
「放っておけば多くの人を殺す不幸な未来がな。そいつを俺たちで変えるぞ」

 続いて、繁華街を目ざした4組。
 先陣を切って駆けるライロゥ=ワン(aa3138)が、雪豹のそれに変わった耳を震わせた。
「いきマスよ、祖狼! もうこれ以上、命が散るトコロを見たくナイ」
「同意するが、独りで突っ走るなよ?」
 契約英雄の祖狼(aa3138hero001)が、若き契約主を落ち着かせるべく、静かに語りかけた。
「分かってル! でも、急がなきゃ――」
 それを追う真壁 久朗(aa0032)が、契約英雄のセラフィナ(aa0032hero001)と言葉を交わす。
「街中で大虐殺とはな……」
「惨劇が目に見えるようですね。僕たちも急ぎましょう」
 その傍ら、迫間 央(aa1445)は厳しい顔で吐き捨てた。
「白昼堂々と――!」
 彼の横顔を、契約英雄マイヤ サーア(aa1445hero001)が力のない目で見つめている。央は彼女の手をとろうとしてためらい、一度合わせて、おずおず離した。なにも考えず握りしめるには、今少しの時間と「なにか」が必要だった。
「ひへんふぁふぉ!? ふぁふぁふぃふぁふぁふぁ!」
「なに言うてはるかわからしまへん! 菓子食うんは後にしなはれ!」
 契約主の弥刀 一二三(aa1048)から、はんなりを少々はみ出したツッコミを受けた英雄キリル ブラックモア(aa1048hero001)が、特大サイズの月餅にクールビューティーな面を埋めたまま走る。――前が見えず、一二三に手を引かれながら。

 最後はビジネス街へ向かう3組。
「また香港、かぁ」
 つぶやいた木霊・C・リュカ(aa0068)を白杖代わりに導く契約英雄オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)が、振り返らずに言葉を返した。
「屠宰鶏の、「お友だち」だと思うか?」
 リュカは「そうかもしれないね」と答え、サングラスに隠された、そのほぼ見えぬ目を細めた。
「物語が動き始めている」
「……なんだか思い出します。ガルーと初めて逢った、あのときを」
 惨劇予定地にいる人々を過去の自身と重ねたか、紫 征四郎(aa0076)がぽつり。
 そんな彼女の小さな背を、契約英雄のガルー・A・A(aa0076hero001)は力強い言葉でやさしく押した。
「おまえさんはもう、弱いだけの子どもじゃない。俺ももう、下を向いてるだけの罪人じゃない。力はここ――征四郎と俺の手の中にある。救おうぜ、ひとりでも多く」
 他の2組から距離を取って駆けるダグラス=R=ハワード(aa0757)が、歯を剥く肉食獣さながらに口の端を撓めてみせた。
「相手は堕天ならぬ堕人か、己が欲望をぶつけるものを違えたただの間抜けか」
「……」
 その影に染みこむよう位置取り、追随する契約英雄・紅焔寺 静希(aa0757hero001)は、無言。
 静希の無反応に構うことなく、ダグラスは言葉を継いだ。
「どちらであれ、大手を振って仕末できる手合いは都合がいい。俺にとっては、な」
「はい」

●開戦
 空港前のロータリー。そこには無数のバスやタクシーが並んでおり、この街から出て行く人とこの街を訪れた人とで混み合っていた。
 ロータリーの内側にある広場は彼らの休憩場所兼待ち合わせ場所になっているようで、こちらも多くの旅行客がいる。
 そのただ中に。
「う、うあ」
 背中を丸めて立ち、落ち着かない目で辺りを見回しながら、トレンチコートのポケットをかきまわす性別不明の誰かがいた。
 果たして。誰かがポケットの中からなにかを取り出した。プラスチック爆弾を丸め、信管を埋め込んだだけの簡易爆弾を。
「うああ、うああ」
 うめきながら誰かがそれを足元に落とす。爆弾は人々の足元をすり抜け、転がっていき。
 広場の端の街灯に当たって、起爆。轟音と爆炎をまき散らした。
 爆発によって傷を負った人々が悲鳴をあげ、それを見た人々が伝言ゲーム状態でパニックを拡散していく。
「非常にまずい状況だな」
「完全にパニック状態ね。少なくとも、爆煙のあがってる辺りからは退散してもらわないと」
 アイザックに言葉を返した月世へ、ひと足先に現場入りしていたギシャが、飛ばした鷹の集めた情報を伝えた。
「……爆発は15メートル先の街灯の下。まわりにいる人、お互いがジャマで逃げらんないみたい。ジャマとかしないで早く逃げたらいいのにねー」
『普通の人間には、死から逃れる術がない。だからこそ死を恐れ、怯える。……考えろ。術を持つライヴスリンカーが、なぜ立ちはだからなければならんのかを』
「りょーかい?」
 眉根を寄せて笑むギシャに、月世が訊いた。
「なにか使えそうなものはある? 空港のものでも、それ以外でも」
「んー、広場の真ん中に噴水発見。端っこだと広告用のモニター。あと、ロータリーのとこにスピーカー」
「空港に話をつければ、モニターやスピーカーは使えるのではないかな?」
 ギシャの情報を聞いたメイナードが、仲間を驚かせないよう静かに声をかけてきた。
「うん。あたしもそれ考えてて、なにかできないかなって」
 そこへイデアがひょこっと顔を出し、ひと言。
「おじさんの着ぐるみショーが始まります」
「! イデア、私のこの体では、みんながますますパニックに――」
「おじさんはかわいいので大盛り上がりです。……パニックになった人たちに恐怖を忘れてもらえれば、きっと避難もはかどります」
 さりげなく言いなおしたイデアにアイザックが賛同した。
「人々も爆弾魔も通常の心理状態ではない。一触即発の空気を変えるためにも、その手は有効かと思われる」
 ここで月世がぱん、と手を叩き。
「誰かからスマホ借りて空港に話つけてくるわ! 自分で持ってこなかったのが痛いわね……」
 そしてアイザックとともに駆け出した。
「我々は犯人を刺激しないよう、狙撃の準備を進めるよ。その間に爆弾が人々へ向かうなら、体を張って止めてみせる」
 メイナードは「オーバーオールが」などと言うイデアの口を塞ぎつつ、スナイパーライフルの準備を同時進行。
『俺たちは犯人に向かうぞ』
「はーい」
 どらごんに返事をして、ギシャは人々の影を縫って移動を開始した。

 道中でリンクした4組が、人のごった返す繁華街へ跳び込んだ、そのとき。
 有名ブランド販売店から出てきた4人の若い女が、おそろいのコートを脱ぎ捨て、モデル立ち。
「始まるよ?」
「うちらの!」
「何人死ぬかな?」
「ゲーム!」
 4人は合わせ鏡で増やしたかのように同じ姿形をしていて、声の高さやトーンも同じ。両手の中指につけた点穴針もおそろいで、それを高速回転させて鳴らした音まで同じだった。――人を殺す姿までも。
 耳から脳まで貫かれて倒れる4人の一般人。
 まわりの人々はなにが起こったのかわからない顔を見合わせ、4人の女――イェン姉妹を見る。
 姉妹は同じ顔で笑い、点穴針を振り上げたが。
「くっ、まにあわなかったか! ……これ以上好きにはさせん!」
 獣の特性を映す美丈夫へと変化したライロゥが、クリスタルファンへ手を伸ばす。それを内から祖狼が制し。
『相手はヴィランじゃ。愚神や従魔ならぬ彼奴らに幻影蝶は効かぬぞ』
「ならば、この身を炎の盾とするまで」
 その後ろから、央がインポッシブルを空に向けて撃った。
 タタン。目の前で巻き起こった唐突な惨劇に呆けていた人々が、一斉にこちらを見た。
「呆けていないで動け。生きるも死ぬもおまえらしだいだ」
 強い言葉が人々に活を入れた。
 その央に続き、久朗と、駆けつけたHOPE香港支部の助っ人がまた空へ発砲。
「俺たちはHOPEのエージェントだ。指示に従って速やかに避難してくれ」
『みなさん、音の聞こえたほうへ、あわてずにお願いします』
 久朗とセラフィナの言葉に、人々が少しずつ動き出す。しかし、通りに詰まった人々が速やかな避難行動をとるのは難しく、思うように速度が上がらない。
「誰か来た?」
「正義の味方!」
「どうする?」
「無視してゲーム続行!」
 意見を統一した姉妹が一般人へと迫るが。
「どうぞどうぞ――って言うかボケぇ!」
 スナイパーライフルのライフル弾に、散乱した屋台の調理器具の数々を織り交ぜ、弾幕を張る一二三。その姿は月餅によってチャージされた相棒キリルのやる気により、赤と銀が混在する長い髪をなびかせた男性体だ。
『やるぞ一二三。飴がけのように鋭く、的確にだ』
「ちょい手荒になるけど……かんにんな」
 キリルに促された一二三が、姉妹の近くでどうしていいかわからずにいる一般人をやさしく抱えて「暴れんといてな」、ふわりと投げた。
 これを落下地点で待ち受けていた久朗がキャッチ、そっと立たせて送り出す。そしてその都度、セラフィナが『お怪我はありませんか?』、『足元にお気をつけて』と気づかう。
 繰り返される救出劇に、姉妹は頭を寄せ合って。
「これってどうよ?」
「ゲームに支障あり!」
「こうなったら?」
「超殺しまくり!」
「盛レ盛レ……灼熱ノ花ヨ散レ! ここから先へは行かせん!」
 展開しようとした姉妹の行く手を、ライロゥの放ったブルームフレアが燃えさかる壁と化し、塞いだ。
 飛び退く姉妹。4対の目が憎悪にたぎる。
「うちらの殺しをジャマすんな」
 声をそろえた姉妹の針が、毒に濡れた針先で、4人の一般人の命をかき消した。
『央。敵を討つわ。たとえ愚神や従魔ではなくても、ワタシには、ほかになにも……できないから』
 マイヤの声に、央は小さく「ああ」と答え、銃のグリップを強く握りしめた。――冷たく青ざめた彼女の手を思いながら。

 ビジネス街は今日も騒がしかった。
「やあ、こんにちは。今日はいい天気だね」
 行き交う人々のただ中から大きく突きだした顔を笑ませ、手を振ったのは、身長2メートルに届こうかという細長いアフリカンだった。
「君たちがHOPEのエージェント君たちだね? 僕は「長い戦いの歌」っていうんだ。みんなからはソングって呼ばれてるよ」
「長い戦いの歌、かぁ。なんだかかっこいいね」
 香港支部の助っ人に避難誘導を頼んだリュカが感心する。対してオリヴィエは呆れた顔で。
「戦いは短く終わらせるほうがいいだろ」
「あはは。それもそうだ!」
「僕もそう思うよ。部族長を叱ってあげて」
 笑うリュカに続いてソングも微笑み、そして。
「君たちが天国に行ったらね」
 ぞくり。ソングのドレッドヘアが波立ち、漆黒の体から、艶のない黒のライヴスが立ち昇った。
「僕が遊びたいのは強い子だけ。でもね」
 ソングがメギンギョルズを巻きつけた拳で、そのあたりの人々をかるく打ち据えた。たった数秒で、30人がもれなく重傷を負わされた……。
「このくらいはしておかないと、見せしめにならないから」
 30人を殴る。ただそれだけの動作なのに、起が見えなかった。過程を追えなかった。確認できるのは、動作がもたらした結果だけだった。
「速いわけではない。が、見えない。なるほど、ここへ来て正解だったな」
 負傷者の救助にあたる助っ人たちには目もくれず、ただソングだけを見つめて満足気にノドの奥を鳴らすダグラス。
「ダグラス様はいつも正しい道をお選びになります」
 その影で、静希は唯一無二の主にのみ聞こえる声でつぶやいた。
「足をすくませてくれるなよ?」
「大丈夫です。今ここで立ち止まったら、誰が悲しい未来を止めるのです? 紫 征四郎、参ります!」
 リンクし、征四郎の成長した男性体に変化したふたりが、ナイトシールドを押し立ててソングの前に立った。
「人は、皆の明日は、見せしめのために潰されていいものではありません! あなたの相手は私です!」
 ソングの左拳が高く持ち上がった。鎌首をもたげる蛇のように、彼の頭の脇でゆらりゆらり、蠢く。
『ぼくしんぐ、なのですか?』
 右拳で顔を守り、左拳をゆらめかせるソングに、征四郎が内なる声で疑問を口にした。
『わからねぇ。あんなの見たことねぇよ』
 ガルーの言葉を受けた征四郎が、インサニアを握る右手から意識的に力を抜いた。
「ふっ!」
 強いよりも速い突きでソングを牽制する征四郎。
 ソングは剣の腹を右拳で叩いて切っ先を反らし、左拳を振り込んだ。
「っ!」
 未だ攻撃体勢にある征四郎は、迫る拳を凝視するしかなかったが――
「背中は任せているのです、だろ?」
 オリヴィエの援護射撃がこれを阻んだ。しかし。
 顔をひねって光線を避けたソングが、なぜかオリヴィエの前にいた。
 カツン。アゴを打ち抜かれたオリヴィエの顔が大きく揺れて。
 ぶつりと真下へ崩れ落ちた。
「オリヴィエ、リュカ!」
 即座に征四郎がクリアレイをかける。
『――うわ。なに? 今、なにが起こったんだい?』
「カウンター取られたんだ。なんだよあれ、超能力かよ」
 意識を取り戻したリュカとオリヴィエが、征四郎に目礼して体勢を立てなおす。
 悠々と元の位置に戻ったソングが、薄い唇を動かした。
「これは長い戦いの歌 砂の女王を殺す勇者の言葉 口で伝え 耳に刻む 古い古い戦いの歌」
 距離を取り、戦いを見ていたダグラスが口の端を歪めた。
「バトルソングとは古風だな。……ディフェンスやカウンターは己から狙うことなく、よく動く足とスナッピーな左拳で攻めたてる。ようはガードの薄い中距離ファイターか」
『はい』
 内から答えた静希に意識を傾けることなく、ダグラスはグリムリーパーを手に取った。
「殴り合いというのも乙だろうが、今は実を取る。――猛獣狩りだ」
『すべてはダグラス様のご意志のままに』

●Q
 空港広場のギシャが射線を確保できたのは、犯人から距離わずか6メートルのベンチの影だった。
 ソフト帽を目深にかぶった犯人は、爆弾を手に挙動不審。その一触即発な雰囲気に、まわりの人々はどうにも動けない。これでは人質を取られているのと同じだ。
『ヘタに牽制もできんな』
 どらごんの言葉に、ベンチの背もたれの裏で「うーん」とうなるギシャ。その視界の端に、銀がまたたいた。そう、鏡代わりに日ざしを照り返す、メイナードのスキットルの銀が。
 心得たギシャが頭を低くした直後。
 音すらも置き去りにして飛んだライフル弾が、爆弾を持つ犯人の右腕に突き立った。
「むぅ、意識は奪えなかったか」
『でも、犯人のリンクは大きく乱れています。攻めるなら今ですよ』
 爆弾を取り落として大きくふらついた犯人に、メイナードが再びスナイパーライフルを発射。これも犯人の右肩に当たったが、気絶させるには至らなかった。
 しかしその間は、ギシャにとって絶好の機会となる。
 ベンチ裏から飛びだしたギシャは狙いをつけ、犯人の足元へ光線を撃ち込んで。
「テーコーはやめてコーフクしろー」
「うコああノ、うコエああ、ハうダああレ」
「んぅ?」
『犯人本体と邪英の声が混線している。うめいているのは男で、間に挟まってる音が女の声、か』
 どらごんの言葉に、ギシャが大きく笑顔を傾けた。
「……あの邪英の声、ギシャ知ってるよ。でもそんなわけない。だってキャサリン、センパイといっしょに死んだんだ」
 ギシャの言うセンパイとは、1ヶ月前に死亡した鈴木華。爆薬を生成する特異な能力を持ち、「ミズ・ヒューズ(導火線女)」と呼ばれたエージェントである。
 そして、彼女と死を共にした契約英雄が、キャサリン・ベック。
『あの邪英がキャサリン・ベックだとすれば、なぜ鈴木華ではない男に憑いている――とにかく声をかけてみろ』
 ギシャが大きく息を吸い、叫んだ。キャサリンがいちばん嫌がっていた愛称を。
「キティ!!」
「うホあリあうシッああト」
 びくり! 犯人の左手が、目標を定めぬままに2つの爆弾を投げた。
『しまった!』
 今から跳びついても、間に合わない――
「おおっ!!」
 左右の義手で爆弾をつかみ取ったメイナードが、そのまま爆弾を抱え込んで地面に伏せた。
 ドン! くもぐった爆発音が広場を揺らし、メイナードの巨体が激しく揺れて。彼は力強く立ち上がった。
「爆弾が爆発するなら、私が体を張って受け止めればいいではないか!」
『軍人時代の無茶ぶりがまだ抜けていないのですか? わたしたちはまだ先のある身なので、程々にしていただけるとうれしいです』
「心配するな! 老い先短いこの身だが、命を張って守り抜くぞ、イデア!」
 メイナードは豪快に己の胸を拳で打った。……イデアの言葉の含みに気づかないのは、彼が紳士だからか、それとも鈍いからか。
『しかし、今の騒ぎでパニックが広がった。これでは人々の安全が――』
 どらごんの言葉を断ち切るように。
『ハロー・ネイホウ』
 ロータリーのスピーカーが、英語と広東語を合わせた香港独特のあいさつを奏でた。
 現地の人間はもちろん、観光客にもなじみ深いこのあいさつに、人々が目を向ける。
『爆発が怖いのは当然。でもみなさん、冷静に。天国に飛んでいっちゃった人、いますか? いたら大きく手を挙げて!』
 広告用のモニターに映し出されたのは、放送用の安いマイクを手にして笑む月世だった。
「人々の気持ちを恐怖からそらす緊急措置だ。……コメディ番組や観光客向けのガイド番組のデータを探してもらったのだが、現場が混乱していることもあって見つけられなくてな。ちなみにあれは空港職員の私物のタブレットで生中継している」
 アイザックは噴水脇に置かれた高圧洗浄用のコンプレッサーのセッティングにかかりつつ、合流した助っ人に指示を出した。
「噴水の水を噴射します。それに合わせて爆弾犯の周辺の人々の避難を」
『こんな機会もなかなかないし、あたしが大好きな香港明星(スター)のモノマネでもしましょうか? ふふ』
 月世の笑顔に魅せられ、人々は徐々に平常心を取り戻していく。
 しかし、当の月世に余裕はなかった。この作戦は、ひとりでも犠牲者が出れば失敗に終わる。そうなれば、後に残る選択肢は被害を無視した強襲だけだ。
 成否を仲間に預けた大ばくち。月世は思いを込めて艶やかに笑んだ。
(この世界がずっと優しくいてくれるように守りたいの。だからお願い。アイザック、みんな――)
「うああ、うああ」
 音に怯えた犯人が、自分の両耳に爆弾を叩きつけ、きりきりと回転しながら地に倒れた。このままでは、自爆ですべてを終わらせてしまうかもしれない。
「ギシャ行くね。確かめたいことがあるから」
『メイナード、人々を頼んだぞ』
 言い残し、犯人へ向かうギシャ。
「心得た! 月世君の意気も人々の命も、全身全霊で守りぬくからな!」
『特に策はないのですね……』
 力を込めて宣言するメイナードに、イデアがため息をついた。
 ――爆弾屋との戦いは、静かに激しくクラマックスを迎える。

 こちらは繁華街。避難誘導と投げ渡しによって戦場の確保に成功した4組は、あらためて4姉妹と対峙する。
「いちびっとんなやこのアホンダラ! いてこましたらぁ!!」
 構えた盾の裏から飛ばされた一二三の激しいののしり。それは、『守るべき誓い』の発動を隠す陽動であり、央への合図だった。
「やっちゃう?」
「やっちゃう!」
「殺す?」
「殺す!」
 景気づけに4人の一般人を殺した姉妹が、針を回転させて羽音のように鳴らしながら駆ける。
『一二三、来るぞ』
「わかってるて」
 短くキリルに返した一二三が一歩、後ろに下がった。
 つられてもう一歩踏み込む姉妹。その頭上が唐突に陰った。
『……目の前の敵に捕らわれすぎよ。私が言えることではないけれど』
 自嘲を含んだマイヤの言葉に、上を向く姉妹。そこに映ったものは、一二三の肩を蹴って跳んだ央の姿。
 央が放ったライヴスのネットが、姉妹をまとめてからめとった。
「ガウチョー(ムカつく)!!」
 思わず広東語で叫ぶ姉妹。ふたりはネットから転がり出たが、次女と三女と思しき女は完璧にからめとられ、動きを奪われた。
「今だ! 畳みかけろ!」
 央の声を受け、仲間たちが動き出した。
「追エ……!」
 アルマデル奥義書を手にしたライロゥが、捕らわれた次女へ幻影を飛ばし、その命を削った。
 姉妹の危機に構わず、姉妹ふたりは散開、そのまま一二三へ殺到したが。
「連携を封じさせてもらう」
 幇装手槍で一二三の頭上の看板を撃ち落とす久朗。ステンレスやアルミの看板を踏めば足がすべる。ある程度は姉妹の連携を阻めるだろう。
「まだだ」
 続けてもう1枚、久朗が看板を打ち落とした。姉妹の進路を狭め、さらにはその頭への直撃を狙って。さらに、彼から指示を受けた助っ人が看板撃ちに参加して、足場は見る間に安定度を失っていった。
 舌打ちした姉妹は駆けながら縦に並び、看板を避けた。前は上体を低く、後ろは跳び、高さを変えて一二三に迫る。
「そちらがふたりなら、こちらは3人だ」
 ジェミニストライクで3分身した央が、前後の姉妹に襲いかかった。
 姉妹も分身してこれを迎撃したが、貴重な攻撃機会を消費させられた。さらにそこへ、久朗や一二三、助っ人によって撃ち落とされた看板が降り注ぎ、彼女たちの意識を乱す。
「……上ばっか見とったら、足元危ないんとちゃうか?」
 一二三の言葉に姉妹がとまどった。真実? それともフェイク?
「針はこう使う!」
 前にいた長女の足の甲に、央の縫止が突き立った。
 バランスを崩してつんのめる長女。それを見た四女は咄嗟に姉の背を踏んで跳躍。一二三の装甲の隙間に針を突き立てた。
「ちっ! いやな感じで染みるわ」
『毒とはずいぶんと苦いものだな……』
 網に捕らわれた次女へ火之迦具鎚を叩き込みつつ、染み入る毒に顔をしかめる一二三とキリル。しかし、前髪の奥の赤い瞳に燃える闘志には、いささかの衰えもなかった。
「わざわざこんなことをする意味はなんだ? なにを主張しに来た?」
 ようようと再集結した姉妹とライヴスリンカーがにらみ合う中、久朗が姉妹に声をかけた。
 これだけの騒ぎを起こせば、すぐにエージェントが出張ってくることも承知していただろうに。
「暴れてこいって言われたから?」
「暴れてるだけ!」
「人間キライだし?」
「陽動もね!」
 そして声をそろえ。
「人間なんかみんな死ね!!」
 4人の針が、未だ避難を終えていない一般人の首筋に襲いかかる――
「もう……これ以上はやらせないと言った!」
 両手を大きく広げたライロゥが、2本の針を止めていた。
 すばやく跳びすさるふたりの姉妹だったが、ライロゥはその内のひとり――長女の腕をつかんだ。そして右手の火艶呪符にライヴスの炎をまとわせ。
「……焼けシネ……花火葬……」
 その口の中へ、己の手ごと呪符をねじ込んだ。
「!!」
 炎の蝶にノドを焼かれた長女が激しく暴れ、ライロゥを蹴り退けて後ろに下がった。
「もう一度――!」
『ライ、落ち着け。腕の治療をせねば』
 内から呼びかける祖狼に、ライロゥは赤黒くただれた腕を抱え、「後でいい」と吐き捨てた。
 早熟な彼であるが、越えてきた修羅場の数は未だ少ない。だからこそ見逃せなかった。目の前で誰かが死んでいくことを。その手からこぼれ落ちた者は結局死ぬ――それを十二分に理解していながら。
 奥歯を噛み締め、守りきれなかったふたり分の死を悔やむライロゥを、久朗とセラフィナはクリアレイで癒やし。
「焦るな」
『ひとりで苦しまないでください。僕たちがいますから』
『――美しいわね。彼の心は』
 ぽつり。央の内にあるマイヤがささやく。
『ワタシの心の中には、愚神や従魔への憎しみしかない。あの女たちと同じだわ。ただ殺すだけ。そのためだけに央を利用する』
『利用じゃない』
 心の内で、央がマイヤの言葉を遮った。
『共闘だ』
 つい言ってしまった。でもそれ以上、なにも言えなかった。なにを言えばいいのかわからなかった。でも。
 今は目を合わせることもできないふたりだけれど、いつかきっと、思いを互いに伝えあえる。
 央は大きく息を吸い込み、胸の奥に焦燥を追いやって……武器を取った。
「陽動ってのは引っかかるな」
『姉妹に訊くしかないだろう。戦いを終わらせて』
 ラウンドを重ねるごとに人が死ぬ。だから少しでも早く終わらせる。
 一二三とキリルは盾を構えた腕に力を込め、踏み出した。

「勇者は昼を越え夜を越え 遠ざかる太陽を追って走る」
 細めた目は虚空。半ばトランス状態にあるらしいソングが、左拳で征四郎の顔面を突いた。
「くっ!」
 回避が間に合わず、かろうじて盾で弾く征四郎。
 しかしソングは弾かれた反動を利用して体を回し、右フックを叩き込んだ。
『歯ぁ食いしばれ!』
 ガルーが叫んだと同時に征四郎のこめかみへ食い込む、黒い拳。
「んぅっ!」
 歯を食いしばって耐える征四郎だったが、凄まじい衝撃に脳がビリビリとしびれ、体から力が抜けかける。
「――まだです!」
 必死で踏みとどまった征四郎が体を回転させ、ソングに突き込んだ。背を盾とし、突きを打つタイミングを隠す技。彼女が学んだ剣技の中でも小手先と呼ばれる初級技だが、機を見極めれば実に有用だ。
「征四郎の攻撃に合わせるぞ」
『敵の背中を任されるのも一興だけどね……あの背中は、ちょっと危険すぎるよ』
 リュカの嘆きを聞きながら、オリヴィエが、征四郎の突きと呼吸を合わせてライトブラスターの引き金を引いた。
 前と後ろから挟み打ちにされたソングは、体を丸めて防御。そして。
「太陽の足は速く 勇者は置いて行かれるばかり でも勇者は走り続けた」
 先ほどと同じ顔で、歌を紡ぎ始めた。
「ダメージがどのくらい通ってるかわからない」
 顔をしかめたオリヴィエに、通信機を通して征四郎が言う。
「連携攻撃は回避しづらいようです。重ねていきましょう」
「わかってはいるんだけどな……」
 強さもそうだが、ダメージの見えない敵というのは厄介だ。普通に攻撃の成果が見える敵なら、たとえどれだけの時間がかかっても気にはならないのに。
「――肩を並べるつもりはない。古くさい歌に聞き入るつもりもな」
 もどかしい空気を、大鎌をかついだ肩で押しのけ、割り入って来たのはダグラスだった。
 彼は大鎌を前へ投げだすようにして構え、無造作にサイドスイング。
「勇者は太陽に頼む 砂の女王を殺す剣をくれと」
 ソングは構えた腕を締めてガードするが、その腕を打ったのは刃ならず、柄だ。
「素直なディフェンスだ」
 ダグラスが鎌を引いた。
 もちろん背を斬るためではない。それを成せるだけの勢いも強さもない。しかし。鎌をたぐり、防御のために硬直したソングへ向けて一歩踏み込むことはできる。
 ダグラスのヒジ――深く体を落とし込むことで、体重と重力を乗せた重い攻撃を実現する沈墜勁――が、ソングのみぞおちに突き立った。
「息を奪われればさえずれまい」
 ソングの返事は、右のショートアッパーからのチョッピング・レフト(左の打ち下ろし)だった。
 浮かされた顔面に強烈な一打をくらったダグラスの瞳から光が飛び失せる。
『征四郎、フォローだ!』
「わかっています!」
『オリヴィエ、お兄さんたちも援護するよ』
「狙いはもうつけてる」
 征四郎とオリヴィエの連携により、ソングの意識がダグラスから逸れる。
『ダグラス様』
 内から響く静希の声に呼び戻されたダグラスは、鎌を拾い上げて大きく後退した。
「余計な真似をするな」
『申し訳ありません』
 静希にケアレイを受けながら、ダグラスは片鼻からどろりと赤黒い血を吹き抜いた。
「長細いくせに、器用に体を折りたたむ」
 3組のリンカーを順に見、ソングが楽しげに笑った。
「いいね。工夫と想像力のある子たちだ。これなら楽しめるかな」
「楽しむ前に聞かせてください。他の場所で起こった惨劇も、あなたたちの仕業なのですか?」
 征四郎の問いに、ソングは大げさに肩をすくめて答えた。
「そうさ。君らは僕らの大事な遊び場を壊しちゃっただろう? これはしかえしだよ」
『遊び場……地下闘技場のことか』
 リュカの声に、またソングが答える。
「もしかして、出場者のふりをして屠宰鶏をいじめた子たちかい? だとしたら僕も怒ろうかな。僕は彼女となかよしだから」
 ソングは両の拳を握りしめ、
「僕を困らせられたら、今のよりおもしろい話を聞かせてあげる。だから君たちの力、全部使って楽しませてよ」
 遊ぼうと誘う子どものように、3組を招いた。
「オリヴィエ、私たちは彼の腕を狙いましょう。少しでもあの戦闘力を削がなければ。ダグラスさんは」
「俺は俺の思うままにやる。それだけだ」
 征四郎の言葉を切って落とし、ダグラスはソングへと向かった。
「どうする?」
 怒るでもなく、オリヴィエがリュカに訊いた。
『お兄さんたちが勝手に攻撃して、それが連携になるのはしょうがないだろう?』
 リュカの返事にガルーがうなずいた。
『それぞれの力が結果的に合えばいいってことだ。ソングは強い。ただの力じゃ足りねぇ。全力を合わせるぞ』

●&
『――のモノマネでした。あんまり似てないのはクイズだから! と、いうことで。次は占いのコーナーです。残念ながらみなさんに水難の相あり。濡れたら困るもの、すぐにしまってくださいね』
 空港広場。画面の内の月世が人差し指を立てた。
 広場の人々が、爆弾屋と画面を交互に見ながら、どうしていいか迷う。
「では、追い打ちといこうか」
 アイザックが手にしたのは、噴水の清掃に使うコンプレッサーにつないだホース。噴水を水源に、高圧の水を人々へ噴きかけ、物理的避難を強行しようという作戦だ。
 と。アイザックの目に、月世の占いを聞いておろおろと紙袋を抱えたり隠そうとしたりしている老婦人の姿が映った。
「……ご婦人を追い立てるわけにはゆくまい」
 アイザックはコンプレッサーを機動し、ホースから水を噴射した。ななめ上に向けて、振りまくように。
 突然の雨にうろたえる人々だったが。
「虹――!」
 日光と水が織りなす7色の橋に、思わず声をあげた。
『その橋をくぐってこちらへ! 渡るのはだめですよ! みなさんの行き先は天国じゃなくて家なんですからね』
 月世のとっさの言葉が人々を引き寄せた。広場にいた人々がひとり、またひとりと移動を開始する。
「見事なものだな。月世君は賢く、美しい」
 爆弾から人々を守るべく巨体を緊張させていたメイナードが、表情を少しだけゆるめて感心した。
『ソウデスネ』
 義手に宿るイデアのジト目がジト度を上げたことに気づかないまま。
『犯人のまわりから人が動き始めた』
「じゃ、遠慮なくやるよ」
 どらごんに答えたギシャが、ライトブラスターの照準を爆弾屋に定め。
「キティ、ギシャとふたりでパーティーの続き、楽しもっか?」
「うダあムあンう!ああ」
 3つの爆弾がギシャへ投げられた。
 そのうちの2つをスライディングでやり過ごし、最後のひとつを撃ち落とす。ハデな爆音と爆煙がギシャの体を包み隠した。
「うああ、うああ」
 彼女を見失った爆弾屋が爆弾を生成し、あたりに投げ始めた。
「犯人君! 狙うなら私を狙え!」
 避難中の人々へ向かった爆弾を叩き落としながら、メイナードが爆弾屋へ突撃。
「ギシャ君、すまんが途中参加させてもらうぞ」
「同じく。説明してほしいことがたくさんあるけど」
「今はまず、このパーティーとやらを終わせよう」
 避難誘導を助っ人に托して駆けつけた月世とアイザックがリンクした。ゴールドシールドで爆弾を弾き、一気に爆弾屋へと迫る。
「うあアタあシうニあチカあうヅカあナイあデ」
 恐慌状態に陥った爆弾屋が、闇雲に爆弾を投げつける――
「もうやめようよ、キティ」
 潜伏を解いたギシャが、眼前の爆弾屋へ銃を突きつけた。ライトブラスターではなく、ソウドオフ・ダブルショットガン――鈴木華が愛用していた得物の原型を。
「ハ、ナ」
 爆弾屋の動きが、止まった。
『やはりキャサリンか。なぜこんなところにいる?』
 どらごんの問いに、爆弾屋がかぶりを振った。何度も何度も。そして爆弾を自らに叩きつけようと、両手を振りかぶった。
「キティ!」
 ギシャの放った散弾が、至近距離から爆弾屋の手を打った。
「このまま無力化するわよ!」
 その手を、トップギアで命中率を高めていた月世のヘヴィアタックが追撃し。
「おおおお!」
 メイナードの大剣がとどめ。さらにその体で、誘爆した爆弾の衝撃から仲間を守った。
 この後、接近戦の中で両手を奪われた爆弾屋は、驚くほどにあっけなく地に伏した。そして。
「うああああ」
 爆弾屋の背から、なにかが引きはがされていく。それこそが邪英。狂わせられた英雄だ。
「ああああアアアアアアア」
 霞に包まれた英雄が天に向けて吠える。
「ハナ! ハ、ナ――」
 そして、かき消えた。
「消滅したのか?」
 メイナードにイデアが『いえ』と返し。
『契約が解除されたことで、実体が失われたのだと思います』
『それを抜きにしても、あの英雄のライヴスは薄かったが』
 アイザックの言葉をどらごんが引き継いだ。
『いつ消えてもおかしくないほどにか』
「話、聞かせもらいましょ。きっとなにか知ってるはずよ」
 気絶した爆弾屋を見やる月世がそっと叩く。消えた英雄の残像に目を奪われたギシャの肩を。

 繁華街では、今なお死闘が続いていた。
「チェーっ!!」
 一二三に対し、前右左上から4本の針が襲いかかる。
「仲がええのはええことやけどな」
 一二三は次女が足場にしていた看板を蹴ってその体勢を崩しつつ左へ。三女の顔に、その辺りの屋台から拝借したレモンを投げて火之迦具鎚をぶち当てた。
 ダメージに加えて目潰しを受け、のけぞる三女。
 次なるレモンを見せつけた一二三から、長女と四女が跳びすさった。
「ライロゥはん! イチビリ女その1がそっち行きおった!」
「おまえを待っていた」
 未だ宙にある長女のヒザ裏をすくい上げ、仰向けに倒したライロゥが、長女の口に火艶呪符を叩き込む。
「焼けシネ! 花火葬――!」
 今度はノドばかりか胃の腑まで火炎蝶に焼かれた長女が体を跳ね回らせ、その動きを止めた。
「これで、ひとり」
『怒りにまかせて己を傷つけるような真似はせなんだな』
 祖狼にかるくうなずき、ライロゥは立ち上がった。
「オレはもう、命も責任も投げ出したりしない。最後まで戦い、人々を守るために」
 一方、四女の相手を務めるのは央だ。
「シっ!」
 突き込まれた点穴針を横倒しになっていた屋台の机を蹴り上げて防ぎ、そのまま蹴り出して四女にぶつけておいて、
「ずるい手ばかりが得意なようだな。同じシャドウルーカーとしての真っ向勝負で俺に勝てる自信がないか?」
 歯がみした四女が、受け止めた机を横に投げるアクションに紛れさせ、指の先からライヴスの針を飛ばそうとするが。
『安易な毒に酔って、技を磨くことを怠ってきたのね』
 マイヤが言い終えたときには、すでに央の手がハングドマンを投げていた。
 2本の刃を繋ぐ鋼糸で手首を地に縫いつけられた四女が、歩み寄る央の鋭い目を呆然と見上げ――
「一二三、生きているか?」
『一二三さん、キリルさん、ご無事ですか?』
 次女と三女からの追撃を受けた一二三にリジェレネーションをかけたのは久朗とセラフィナである。
『……ああ。この程度の窮地は窮地と言わん』
「窮地言うてもうてるけどな。――いや、誓いを守るってのはしんどいわ」
 妨害工作を重ね、姉妹の連携を阻止してきてなお、一二三は大きなダメージを負っている。『守るべき誓い』とは、それだけの重さを持つスキルなのだ。
 久朗はそれを深く理解している。しかし、口にすることはなかった。一二三という戦友を信頼しているがゆえに。
『一般人の救出は終わったのか?』
『はい。香港支部の方が力を尽くしてくださいましたから』
 キリルの問いにセラフィナが答えた。
『そうか。死ななくていい者がこれ以上死なずにすむな』
 語調をゆるめたキリルに首肯した久朗が、一二三を見る。
「残るはあとふたり。頼むぞ」
「久朗はんがもうひとり減らしてくれたら助かるんやけどな」
 久朗はフラメアを手に、次女と三女の間に割り込んだ。
「そのつもりだ」
 そして、襲い来る三女の針を盾の表面にすべらせていなす。
 一種のスリップ状態に陥った三女は、たたらを踏んで彼の脇を通り過ぎた。
 続く次女の攻撃。毒をすり込むことに終始する彼女は、久朗の背に回り込んで針を突き立てたが。
「その程度か?」
 首筋を狙ったはずの針が、分厚い肩装甲で止められていた。鉄壁の構えによる最適化防御である。
「今度は自分の背中がガラ空きやで?」
 一二三が火之迦具鎚に乗せたライヴスリッパーが、三女の意識を吹っ飛ばし。
 振り返らぬまま、久朗はフラメアを崩れ落ちゆく三女に突き込んだ。
「あとひとり」
『さてさて。次はワシらの連携を見てもらう番じゃな』
 祖朗の言葉に、ライロゥが跳んだ。
「ひ」
 ノドの奥を鳴らし、針を突きだす三女。その針を腕ごとからめとったライロゥが、体を捌いて地に引き倒す。さらに胃へクリスタルファンの一撃!
「地に落ちたシャドウルーカーなど、ただの的にすぎん」
 立ち上がろうとする三女を、央がジェミニストライクで斬り倒し。
「おお、奥歯ガタガタ言わしたろかぁ!?」
『……おまえは共鳴するとガラが悪くなるな』
「スマンな。ストレス貯まっとんのや」
 キリルと言い合いながら、一二三は火之迦具鎚を三女にフルスイング。
「容赦はしない」
 最後は久朗の投げつけたフラメアが三女の意識を奪った。
 ――戦闘が終わり、死者31名の搬送が始まっていた。
 久朗はセラフィナとともに、負傷者の対応へ回っている。
「守り切れなかっタ……せめて、安らかに……」
 語り伝えられてきた弔いの言葉で死者を見送るライロゥ。そんな彼の背を、祖狼はただ静かに見守るばかりである。
「拘束はすんだが……どうする?」
 幻想蝶の内に戻ったマイヤを気づかいながら、央が4姉妹を指した。
「この女たちが言った『陽動』がなんなのかを訊く」
「そうやな。なんやこの騒ぎ、単純なもんではあらへんみたいや」
 キリルと一二三が小さくうなずきあった。

 人気の失せたビジネス街。
 ソングの左ジャブが征四郎の構えた盾を叩いた。
 まるで大砲で狙い撃ちされたかのような衝撃が、重い疲労となって征四郎の腕にまとわりついた。
『痛ぇならわかるが、この疲れはなんだってんだ?』
 とまどうガルーに、征四郎が内なる声で答えた。
『衝撃で、体の中の水分がゆらされているのです! 激しい運動を無理矢理させられているのと同じです』
 それでも征四郎は剣を掲げ、ソングの右腕を狙ってサイドスイング。不規則な足裁きと数種のフェイントを組み合わせた練達の剣技である。
「合わせるぞ」
『最悪、お兄さんたちがカウンターを引き受けられるようにね?』
「……しばらく飯が食えなくなりそうだな」
 リュカの言葉に顔をしかめたオリヴィエだったが、狙いを違えることなく征四郎の剣に射撃を合わせた。
 しかし。
「戦いは千の昼と 千の夜を越え 勇者は 戦いながら食べ 戦いながら 眠った」
 右腕を撃ち抜かれながら、ソングが征四郎にカウンターを放っていた。
 ズドン! 征四郎の右腹に埋まる、ソングの左拳。
「う、ふ――」
 息ができない。あえごうとしても横隔膜が引き攣れて動かず、あまりの苦痛に気絶すらさせてもらえない。
『これは、地獄だな』
『気絶させてもらえたほうが楽でした……』
 ようやく呼吸を取り戻したガルーと征四郎が駆け寄ってこようとしたオリヴィエを制し、内で細い言葉を交わした。
「戦いの中で 勇者は 太陽に祈る 剣に力を 女王を殺す 光を」
 ダグラスの内で、静希がささやく。
『ダグラス様、ソング様の歌の節が短くなってきています』
「腹打ちがようやく効いてきたようだな」
 もちろん、ここへ至るまでにダグラスが払ってきた代償も大きい。征四郎の影に潜み、隙を狙ってきたはずが、自らの回復スキルのほとんどを消費している有様だ。
「おもしろくはない状況だが。おもしろい戦いではある」
 征四郎の影からすべり出し、カウンターを打ち終えたソングの死角を突くダグラス。
 それにすら反応したソングは右ストレートで迎撃するが、体勢が不十分だったか、ダグラスの纏絲勁――体の各部で螺旋を描き、増幅させた回転力を攻防に使用する法――によってその拳を外に弾き出された。
「ふん!」
 アスファルトを踏み抜くほどに強く踏み込んだダグラスが、大鎌の柄頭をソングの腹に叩き込む。
「――太陽は 勇者に応えた 刃を我にかざせ」
「これでも足りんか」
 ダグラスが吐き捨てる。
 それを見ていた征四郎が、通信機ごしにオリヴィエへ耳打ちした。
「一度だけ、ダグラスさんを利用させてもらいましょう」
「どうやって?」
「連携に参加してもらいます」
 ――征四郎がソングに剣を突きだした。しかしそれはただの突きではない。
「太陽の光が 刃を燃やし その一閃は 砂の女王の」
 迫り来るソングの左拳。
 征四郎は剣を捨てた。
 その瞬間。
『オリヴィエ、「ずらす」よ!』
「くらませてやる」
 リュカの合図で、オリヴィエがフラッシュバンを放った。
 弾ける白光の中に溶け消えるソングの漆黒。
 リュカとオリヴィエは、戦いの中で耳を澄ませてきた。ソングの歌のリズムを読むために。そして実行したのだ。ソングの回避を封じるため、彼のリズムからほんの少し外れたリズムでの攻撃を。
 残光が散り消えるわずかな時の中で、征四郎はその腕にしがみついていた。
「水の守りを焼き」
 右拳に打ち据えられながらも、征四郎はひるまない。
『踏ん張れ征四郎!』
『離さない! 絶対に、離さないのです……っ!』
 ガルーとともに必死の力を振り絞る征四郎。その後ろから。
「征四郎と言ったか。今回はお膳立てに免じて乗せられてやる」
 征四郎が抱えるソングの左腕、その手首にハングドマンの鋼糸を巻きつけたダグラスが、体を打ちつけながら絞りあげた。
『ダグラス様、深追いは』
「機が訪れた以上、逃すわけにいかん。控えていろ」
 静希に言い放ち、ダグラスがソングに足払い。腕を吊り上げられたことでグリップを損なっていたソングが崩れた。
 その背へ、機をうかがっていたオリヴィエが右手でしがみついた。その左手にあるのは、消火器。
「さんざん食らわされたお返しだ」
 白い消火粉がソングの顔面に噴きつけられた。
「砂の 女王 を」
 ソングの右拳が信じられない角度からオリヴィエを打つ。もはや曲芸だ。
『しがみついて、殴られて、消火器攻撃……スマートじゃないね』
 リュカの愚痴に、消火器のレバーを握り締めたオリヴィエが返す。
「なんだよ。泥臭いのは嫌いか?」
『まさか!』
 果たして。ソングの歌声が、かるい咳に刻まれ、止まった。
 消火粉が、ダグラスの腹打ちの蓄積に上乗せされた結果であった。そして。
「――いいよ。今日は僕の負けさ」
 ソングは両手を上げて3組から距離を取ったのだった。

●A
 空港広場では、邪英化から解放された男が応急処置を受けていた。
「私は香港警察の刑事だ。この地で邪英を無差別テロ活動に投入する実験が行われているとの情報を得て、調査をしていたのだが……」
「邪英化させられたのですね」
 イデアにうなずく男。
 できる限り身をかがめたメイナードが質問を継ぐ。
「なぜエージェントではなく、あなたが調査に?」
「中国人は面子を重視する。成果を得てから引き継ごうと思った」
「それで、成果は?」
 男はどらごんにかぶりを振って見せ。
「わけがわからないうちにああなっていた」
「……現状で判明したのは、彼にライヴスリンカーとしての適性があったことと、邪英の正体が日本支部に所属していた英雄ということだけか」
 アイザックの言葉に月世がうなずいた。
「飲茶を楽しんでるひまはなさそうね」
 その傍らで、ギシャは消せない笑顔を空に向け。
「追いかけるよ、キティ」

 今なお負傷者の救助活動が続く繁華街。
 4姉妹が連行されるまでの時間をもらって、リンカーたちは尋問を行っていた。
「うちらは実験のお守り役?」
「爆弾屋がたくさん殺せるように!」
「その爆弾屋は空港にいた人ですよね。ひとりも殺せなかったそうですよ」
 通信機で状況を確認した央が告げる。
「殺してない!?」
「ガウチョー!」
「今言った実験とはなんだ?」
 眉をひそめるキリルに、4姉妹がベラベラと。
「爆弾使ってたくさん殺す?」
「そういう邪英を造るのよ!」
「実験は失敗したけど?」
「次があるからモーマンタイ!」
 すべてがこの調子の姉妹から距離を取り、一二三が頭を掻いた。
「本命は空港で、あとの2カ所はごまかしやったゆうことなんどすな?」
 そのために、関係のない人が傷つき、死んだ。
 友のやるせなさを受け止めるように、久朗とセラフィナが一二三に寄り添った。
「少しでも多くの者を救うことができた。今はそう信じて先へ進むしかあるまい」
 祖狼の言葉に、ライロゥが唇を噛み締める。
「僕は、絶対にあきらめなイ……!」
 リンカーたちは、凄惨な陽動に隠された事件の真相を思い、表情を引き締めた。

 ビジネス街では、ソングが他の地点で語られた今回の騒ぎについてのことを語り終えていた。
「まあ、今はこれ以上教えてあげられることもないかな」
「あなたはいったい誰なのですか?」
 征四郎の問いに、ソングは大げさに肩をすくめ。
「大きな騒ぎを起こす組織の小物さ。今日はそのお手伝い。逆にやられちゃったけどね」
『この香港で陰謀の物語が執筆中、ということか』
 リュカの言葉にソングはうなずき、踵を返した。
「君たちに記念品をあげる。ほかの場所にいる子たちにも配ってあげてよ。あと、そろそろ海水浴の季節だから、海に行ってみるのもいいね」
 左手のメギンギョルズを解き、その場へ落としたソングが歩き出す。
「まだ3月だってのにか?」
 首を傾げるオリヴィエに、ガルーが声をかけた。
『リュカが言った陰謀ってののからみかもな。なんにしても、言葉どおりの意味じゃねぇだろうよ』
『ダグラス様』
 静希に応えることなく、ダグラスはソングと逆の方向へ歩き出す。いつかあるのかもしれない、次の機会を思いながら。

 かくして龍城の縁を揺らした騒動は、ひとつの区切りをつけた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 危険人物
    メイナードaa0655
    機械|46才|男性|防御
  • 筋肉好きだヨ!
    Alice:IDEAaa0655hero001
    英雄|9才|女性|ブレ
  • 我王
    ダグラス=R=ハワードaa0757
    人間|28才|男性|攻撃
  • 雪の闇と戦った者
    紅焔寺 静希aa0757hero001
    英雄|19才|女性|バト
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 正体不明の仮面ダンサー
    蝶埜 月世aa1384
    人間|28才|女性|攻撃
  • 王の導を追いし者
    アイザック メイフィールドaa1384hero001
    英雄|34才|男性|ドレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 焔の弔い
    ライロゥ=ワンaa3138
    獣人|10才|男性|攻撃
  • 希望の調律者
    祖狼aa3138hero001
    英雄|71才|男性|ソフィ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
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