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デッドフィストの、ぶッ潰せ闇プロレス!
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プロレスは好きですかーッ!?
最終発言2016/02/08 18:40:15 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/02/07 19:19:19 -
質問の場
最終発言2016/02/08 19:57:39
オープニング
●デッドフィストからの依頼
おう、俺様だ。デッドフィストだ。
随分久しぶりだが、実はずっとある組織を探していてな。この度、ようやくそいつを見つけたってワケなんだ。
組織の名前は「シャドウ・リング」。いわゆる賭け事を主体とした闇プロレスなんだが、ここが飛び抜けて残虐なのは、レスラー同士の戦いを見せるんじゃなく、一般人とヴィランレスラーの戦いを見せるってところにある。
もちろん、一般人じゃヴィランの相手にならないことは目に見えてる。じゃ、観客は何に賭けるかってえと、「一般人が何分生き残れるか」に賭けるわけさ。
制限時間は5分。その間、一般人は抵抗したり逃げ回ったりしながら、ヴィランの攻撃から生き延びようとする。見事生き残れたら、その一般人には大金が入る――もっとも、そんなことはほとんど無いがな。だけど、一攫千金を夢見て、リングに上がる一般人は後を絶たねえ。そして、そんな虐殺ショーに金を払う観客もな。
だから俺様はここをぶっ潰すって決めたのよ。
プロレスを利用して金儲けをしている連中も許せねえし、プロレスの名の下に虐殺を繰り広げてる連中を見過ごすことも出来ねえ。俺様のパイプ椅子がうなりを上げるぜ!
……で、ここからが相談なんだが、奴らは総勢で7人のレスラーを抱えてる。7対1じゃあ、さすがの俺様も分が悪い。お前達の、力を貸してくれないか?
なお、奴ら7人の名前と特徴は以下の通りだ。
●ブラッディ・ジョー
両脚を機械化したアイアンパンクのレスラーだ。こいつの必殺技はドロップキックだが、その際、足の裏から鋼鉄のスパイクを出して相手を血祭りに上げる。そこにさえ気をつければ、俺様達ならどうにかなる相手ではあるな。
●ザ・チェーンマン
名前の通り、凶器にチェーンを使うレスラーだ。無論、チェーンはAGW製で、そんじょそこらのチェーンとはワケが違う。このチェーンで相手の動きを封じて、いたぶり殺すのがこいつのやり口だ。チェーンの叩きつけにも気をつけろ。
●スワン・ミカムラ
両手を機械化した女子レスラーだ。世間的には美少女で通るんだろうが、そのルックスにダマされちゃいけねえ。この女は、両手の指からカミソリを出すように改造している。レスリングの技術はまだまだだが、組み合えば血祭りにされることは覚えておいた方がいいぜ。
●ペットフィスト
こいつだけは特に許せねえ! 理由は名前を見てもらえば分かると思うが、要は俺様のパロディーレスラーだ。ペットボトル型のAGWを持って、執拗に地獄突きを狙って来やがる。こいつは、俺様にやらせてくれ!
●ミートウォール
シャドウ・リング最大の体格を誇るデブレスラーだ。名前の通り巨大な肉の壁で相手を押し潰すのを得意としている。その体格から繰り出されるパワー攻撃も驚異的だ。もっとも、見た目の通り動きはやや緩慢だから、そこが狙いどこと言えば狙い所か? ただし、生半可な攻撃じゃあ、こいつの肉は貫けないぜ。
●ラブリードール
シャドウ・リングのNo.2だな。
相当な美女だが、この女には気をつけろ! レスリングのテクニックも超一流だが、何よりもこいつの必殺技は「ローブロー(急所攻撃)」だ。組み合った瞬間、立ち上がった瞬間……とにかく、隙を見せたら股間にパンチかキックが飛んでくるぜ。男も女も、大事なところを「グシャッと」やられたくはないだろう?
●ザ・フェニックス
シャドウ・リングのリーダーにして、もっともやっかいな相手だな。巨漢レスラーだが、動きは素早く、レスリングのテクニックも一流だ。だが、こいつのもっともやっかいな点はその凶器にある。
こいつの凶器は2本のムチだ。ムチの中には何層にも刃が仕込まれて、かすっただけで血まみれになっちまう。下手すりゃあ、近付く前に血だるまにされちまうぜ。
以上が、敵の全容だ。殴り込みに行くから、おそらく場外乱闘ありのバトルロイヤルになるだろう。これ以上、こいつらに殺人ショーをさせないためにも、俺様に協力してくれ。
なお、闘い方だが、各自狙いを定めたレスラーに向かっていくのがいいと思う。その際、技とか攻撃方法を教えてくれ。
例えば、俺様だったら、「ペットフィストに狙いを定める。ヤツのペットボトル攻撃を受けきり、パイプ椅子で殴りかかって、弱ったところを地獄突きで仕留める」ってところかな。
ああそれと、忘れちゃいけねえのは、俺様達は奴らに「プロレス」を教えてやらなきゃいけねえって事だな。だから、超がつくほどの正統派で行っても、奴らの上を行く反則技を使ってもどっちでもいい。とにかく、「プロレス」を見せてやれ!
頼んだぜ!
解説
●シナリオの目的:
闇の賭けプロレス「シャドウ・リング」の壊滅。
●闘い方
まず、戦いたいレスラーを選び、申告してください。必ずしも1対1である必要はなく、1人に数人がかりでもかまいません。ただしその場合、余った敵レスラーは、個別に狙いを定めてきます。
続いて、どのような技で攻撃をする等の、「イメージする試合の展開」を記入してください。必ずしもその通りに行くとは限りませんが、PCはそのように動こうとするでしょう。
なお、「プロレス」は皆さんのイメージに任せます。相手の攻撃を受けきって、反撃して勝つでもいいですし、最初から怒濤の攻撃で圧倒する、でもいいと思います。
●NPC
『デッドフィスト』&『マスク・ド・デスイーグル』:
アイアンパンクの悪役プロレスラーと、覆面レスラーの英雄コンビ。
豪快な打撃技や、強力な関節技、華麗なる空中殺法の遣い手。ちなみに、デスイーグルはバトルメディックである。
常に先走る傾向がある。
俺様キャラではあるが、リングを降りれば気さくなおっさん。
リプレイ
●おっさんと6人の美(少)女たち
その日、闇プロレスの団体『シャドウ・リング』を訪れた観客達に衝撃が走った。
「ウガー! 俺様のことは知ってるよな! 泣く子も黙る、デッドフィスト(az0021)様だ!」
マイクを持った大男は、会場の雰囲気を無視したように叫び続ける。
「普段は悪の道をひた走る俺様が、今日は正義の味方としてやって来た! ……分かりやすく言えば、本日この日をもって、シャドウ・リングはぶッ潰されるってことさ!」
「何ということでしょう! 我らがシャドウ・リングにあのデッドフィストが乱入してきました!」
実況席から、解説者が負けじと叫ぶ。
「しかし皆様、ご安心ください! 我らが誇る無敵のレスラー達7名。いかにデッドフィストと言えども、このメンバーを相手に太刀打ちなどぶげごっ!?」
「……実況席は早めに潰しておくに限るよね?」
解説者の後頭部にパンチをぶちかまし、マイクを奪った宍影(aa1166hero001)は、そう言うと口調を改めた。
「今宵ご来場の、暇と金をもてあましたサディストの方々。これから、本当のプロレスをお見せ致しましょう!」
その声と同時に、会場内に爆音が響く。これは巨大なバイクの音だ。
「まずは紹介させてもらうぜ! カトレヤ シェーン(aa0218)&王 紅花(aa0218hero001)! ゴスロリ衣装で登場だぁっ!」
デッドフィストの声と共に大型バイクで登場したカトレヤは、混乱する客席をクラクションとバイクコールで威嚇しながら走り、ロープからコーナーポストに登ると、「イメージプロジェクター」を使い、衣装を青を基調とした際どいリングコスチュームにチェンジした。
「お前らをぶっ潰しにきたぜ(のじゃ)!」
「続いては無敵の機械脚! 全てを蹴り飛ばすシエロ レミプリク(aa0575)とナト アマタ(aa0575hero001)だー!」
今度はガシャンガシャンという異様な音が青コーナーの奥から響く。
「ふふふのふ……今日のウチはシエロにあらず! キックレスラー『キッカー・C』なのだ!」
『……わー』
シロエと共鳴中の、ナトが拍手を送る。
「どんどん行くぜ。ここで登場するのは、問答無用の凶器娘! Arcard Flawless(aa1024)!!」
「やーやー」
どこかのんびりした調子でリングに上がったArcardは、居並ぶレスラーを前に煙草をふかして見せた。
「さて、ボクの余裕は5分で崩せるものかな?」
「続いてのレスラー紹介は、ワタクシ、宍影からさせて頂きます。……メキシコ帰りのスペルエストラージャ! ザ・SHINOBI!!」
「応ッ!」
そして花道を走ってきたのは、マスクを着けた骸 麟(aa1166)……いや、ザ・SHINOBIであった。実況席で宍影と合流し、共鳴するSHINOBI。
「サンキュー、宍影。俺様はまだまだレスラーの紹介といくぜ! 華麗なるテクニシャン、小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)&榊原・沙耶(aa1188)!!」
「闇プロレスの連中も、それに沸く連中も、絶っ対に許せないわ。プロレスは、ちびっ子の、みんなの夢であるべきよ。私がプロレスの何たるかを魅せてやるんだから!」
漆黒のパレオに、上はへそから上を隠す黒のリングコスという出で立ちで現れた沙羅は、鋭い目つきで周囲を見回しながらリング・インした。
「そして最後に、漆黒のボディにピュア・ハート、黒鉄・霊(aa1397hero001)&五郎丸 孤五郎(aa1397)ー!」
「なっ……!?」
他とは明らかに『異なっている』ゲシュペンスト・アイゼンの登場に、観客席からひときわ大きなざわめきが起こる。
『私らの姿で正統派ができるはずもない、反則上等の悪役で行くよ』
「やるなら徹底的に、です!」
「さァ揃った。人数も同じ7対7! このプロレスを愛するレスラー達が、今夜ここで、シャドウ・リングをぶッ潰します!」
「ククク……」
SHINOBIから主導権を取った宍影の実況に、しかし笑い声が応える。
「デッドフィストのおっさんよう。殴り込みに来たって言うのに、女と鉄クズばかりじゃねえか」
「ペットフィスト」
マイクを持ったまま、デッドフィストは言った。
「だからテメエは3流のパクリレスラーなんだ。女ばかり? この姉ちゃん達の実力も見抜けねえでよくぬかしたな。やっぱりおめえら全員、お仕置きだ」
「何だとう!?」
リングの上がヒートアップしていく。デッドフィストがマイクを捨てて、リングに上がる。
「行くぜみんな! 今日で外道どもをぶッ潰してやる!」
「返り討ちだ。容赦するな!」
そして試合開始を告げる、ゴングが鳴った!
●試合開始!
「ウチのターゲットはただひとつ!」
真っ先に飛び出したのは、シエロである。
「ブラッディ・ジョー! 機械脚使いの風上にも置けないひどいやつ! ウチのキックで打ち砕いちゃる!」
「出る杭は打たれる」
シエロの動きに即、反応し、撃ち出されるチェーン。しかしそれは、シエロに届く前に動きを止められた。
「お前の相手は俺だ。ザ・チェーンマン」
「ぬうっ。油断大敵……!」
己れのチェーンを引くカトレヤの予想以上の力に驚きながらも、ザ・チェーンマンは鎖を持つ手に力を入れた。
「さあ、チェーンデスマッチといこうぜ」
一方、勢いを止めることのないシエロは、ターゲットであるジョーに接敵していた。
「ドロップキーック!!」
「ふざけた真似しやがって……オレッちのキックを受けて見やがれ!」
叫び声を上げながら、こちらもドロップキックを繰り出すジョー。その脚底からは、巨大なスパイクが突き出ている。
二対の機械脚が、空中で激突した――!
「このリングは手狭だな」
「はい。相手を引きずり下ろしますっ」
五郎丸の言葉にうなずくアイゼン。狙うレスラーはミートウォールである。
しかし次の瞬間、彼女は鋼鉄の目を見開いた。
「自分からリングを降りてる……!?」
ぴょんと飛び跳ねたミートウォールが、何とそのまま場外に着地したのである。ぶるんと揺れる脂肪の塊。アイゼンには、それが妙に不気味なモノに見えた。
「降りてくるといいよ。機械のお嬢ちゃん。僕たちがいたら、リングが手狭になっちゃうでしょう?」
挑発するようにミートウォールが脂肪を揺らす。
「……いいでしょう。場外乱闘は望むところです。その心……へし折らせて頂きます」
そう言ってリングを降りたアイゼンは、ライオンハートとクリスタロスを両手に構えた。
「スワン・ミカムラって言ったかしら? なにそれ。モデル気取り? 気に入らない胸ね……」
「あら、行きがかり上とは言え、あたしの相手って、こんなチビッコちゃん? せっかく能力者と戦えると思ったのに、拍子抜けだわ」
「何ですって!?」
「見たまんまの感想を言ってるのよ。貧乳ちゃん」
「ふん。見た目が何よ。一般人をいたぶるだけしか能がないくせに」
「……あんまりあたしを舐めない方がいいわよ、おチビちゃん。あんたじゃ物足りないけど、今日はたっぷり楽しませてもらうわ」
スワンが両手を広げる。カシュンカシュンという音がして、それぞれの指から、カミソリのような刃が飛び出した。
「さぁ、血だるまになる準備はいい?」
「どうやらボクの相手はきみみたいだね。まあ、ボクの視界に入ったのが不運とあきらめてよ」
「さて。不運はどちらでしょうね、Arcard Flawless」
「ラブリー・ドール……シャドウ・リングのナンバー2なんだってね。せいぜいボクを楽しませてほしいな」
「まあ、素敵な微笑みですこと。ですがあなた、わたくしの趣味をご存知でないようね」
「反撃できない一般人相手の、弱いモノいじめかい?」
「あら。わたくしこれでも、芸術家を自称していますのよ」
「芸術家?」
「そう。苦痛と悲鳴の芸術家――あなたの余裕に満ちた表情は、これ以上ない素敵なキャンバスですわ!」
「こちらSHINOBIに代わって実況の宍影です。それぞれのレスラーが、それぞれの相手を決めた今、残ったカードはただひとつ! 我らがザ・SHINOBI対、敵の大ボス、ザ・フェニックス! 両者早くも壮絶な投げ合いを交わしました。序盤の攻防で華麗なるテクニックの応酬……どうですか、解説のデッドフィストさん? ……あれ? デッドフィストさん? ゲェーッ、やられている! デッドフィストが、一方的にペットフィストの攻撃を受けているッ!」
●それぞれの戦い!
(こいつ……結構やる!)
沙羅とスワンの戦い。
カミソリの刃を指から出したスワンと組み合った沙羅は、肩口をつかまれ、コスチュームが朱く染まる程の流血をしていた。
しかし、
「相手の技を全て受けきるのがプロレスの美学!」
「だったら、その古くさい美学ごとマットに沈みな!」
なおも組み技を仕掛けてくるスワンに、沙羅は自分からつかみかかる。
「何ッ!?」
「いくらでも付き合ってあげるわよ、この組み技対決。沙羅は負けない……プロレスを貫き通すんだから……!」
「とぉりゃあッ」
「せいやぁッ」
ぶつかり合う機械脚。これで何度目の激突だろう? 打点の高さも、打ち合う速度も、力も互角。何もかもが互角な機械脚同士の打ち合いに、終わりはあるのだろうか? 観客の誰もがそう思っていた。
だから、誰も気がついていない。
口元を覆うマスクの下で、シエロが不敵に微笑んでいることに。
(ふふふ……やっぱり楽しい!)
次の瞬間も、その次の瞬間も、機械がぶつかる音が響く。
やがて、互角と見えたそのバランスが崩れはじめ……!?
「まるで手応えがない……!」
強烈な剣撃を、それこそ何度もミートウォールに叩きつけたアイゼンは、驚愕の声を上げていた。
「ぷーっくっくっく……僕をただの脂肪の塊と思ってもらっちゃあ困るなあ。そんなナマクラな攻撃なんか、スルスルしちゃうよぅ」
剣を当てれば、剣が脂肪を通り抜け、そのまま下へと降りていく。しかし「斬り裂いた」感触が、まるでない。
そしてミートウォール自身の身体にも、傷ついた様子はまるでないのだ。
「そろそろ僕から行くぅう……ファット・プレス!」
ぶるんと巨体が揺れた……そう思った次の瞬間、アイゼンはミートウォールに捉えられていた。
脂肪そのものが、まるで意志ある集合体のように。
「カッ……ハ……ッ!?」
自分が受けたその衝撃を、最初、Arcardは理解できなかった。
ずきずきとひびく股間からの痛み……そう。Arcardはもろにラブリードールのローブロー(急所攻撃)を喰らってしまったのである。
「あら、いいお顔。ねえ、今どんな気分ですの?」
油断はなかったはずだ。わざと隙を作ってローブローを誘い込んだ……唯一の誤算は、相手のパンチの速さを見誤ったことか。
「うふふ……そんなに気持ちよかった?」
苦痛と衝撃に半ば失神状態でリングに横たわるArcardを見下ろしながら、ラブリードールは笑っていた。
確かに、これがシングルマッチであったなら、この時点で勝敗は決していただろう。だが己れの技に酔うあまり、ラブリードールはこれがバトルロイヤルであることを忘れていた。
「うおらおらぁっ(なのじゃーっ)!!」
「ぐはっ!」
叩きつけられるザ・チェーンマン! 勢いそのままに、ラブリードールもろともロープまで吹っ飛ばされる。
「何をやってますの、チェーンマン!?」
「お、俺としたことが、こんな女に……」
「こんな女で悪かったな」
不敵に笑うカトレヤ。
押せば引き、引けば押す。
チェーンマンの呼吸に合わせ、その勢いを殺すように動いていく。その動きの中でニーキックやアームホイップを叩き込んでいったカトレヤ。今や彼女は、チェーンマンを圧倒していた。
「アル、立てるか?」
「……な、なんとかね……」
カトレヤにサポートされながら、Arcardが立ち上がる。
「ええい、おどきなさい、チェーンマン! こうなったらあの女も、わたくしが仕留めてやりますわ!」
「そうはいかないさ」
ふらつきながらも、Arcardがつぶやいた。
「きみはきっちりボクが仕留める」
この時点で、もっとも流血が激しかったのはザ・SHINOBIである。
ザ・フェニックスがついに繰り出した2本の鞭を、これまた2本のローゼンクイーンで絡め取って打ち返したまではよかったが、敵もさるもの。
1本はその身に受けながらも、もう1本の鞭はSHINOBIの身体に巻き付き、両者大流血の有様となったのだ。
「……同条件なら、オレの気合で!」
SHINOBIが動いた。おびただしい血を流しながら、全身を刃の鞭で縛り付けられながら、それでも両脚を動かし、フェニックスにタックル――!
もんどりうって倒れる両者。その合間に、自らの身体に巻き付く鞭から逃れたSHINOBIは、しかしフェニックスは狙わずに、場外のミートウォール目掛けてトペコンヒーロー! ミートウォールの顔面に直撃した!
「ぷくわああっ!?」
苦悶の表情を浮かべたミートウォールは、腹の脂肪の塊から、アイゼンを吐き出した。
「さては、脂肪が少ない顔面が急所か!」
「……そんなもんか、ペットフィスト?」
「な、何だこいつ? まだ立ち上がってこれるだと!?」
「プロレスってのはなぁ……相手のワザをしっかり受ける!」
「う、うおぉ!?」
「デッドフィスト・ラリアットォッ!!」
「ぐへえっ!!」
「……そして然る後、丁寧にぶっ飛ばす……そんなもんだ」
●決着! そして……
「弱点さえ分かれば……!」
ライブスラスター全開で縦横無尽に動き回るゲシュペンスト・アイゼン。その動きに、ミートウォールはついていけない。
「こ、このぉ、あっちこっち動きやがってぇ」
接近、即、打拳に合わせて腕輪の光弾を零距離発射!
それをまともに顔面で受け、悶絶するミートウォール。
「くぅ……もう一度、僕のおなかに呑み込んでやる。今度こそ、逃がさない~」
「もう二度と呑み込まれはしません!」
高速移動からの零距離発射! ミートウォールが、ついにぐらついた。
「ゴローさん、あれを使います!」
『あぁ、いいぞ!』
会場高く上昇するアイゼン。
「スーパー!」
『ファントム!』
「キィィィッック!!!」
上空から、必殺キックが炸裂する!
「んぐっ!!?」
脳天を押し潰される形で受けたミートウォールは、3秒間たっぷり立っていたあと、地響きを立てて場外に倒れた。
そしてそのまま、完全に失神したのである。
「うぅ……く……」
アンチマテリアルライフルに杖のようによりかかりながら、ふらつく足でArcardは立っていた。
「ほらご覧なさい。そんな身体で、わたくしに勝つことなんてできるものですか」
「できるさ……」
無理矢理にでも笑顔を作り、Arcardがつぶやく。
「なんせこちとら……玄人だからね」
「減らず口を叩きますのね」
「う、うぐ……」
Arcardがよろめく。支えにしていた、アンチマテリアルライフルがぐらつく。
「まともに立ってもいられないじゃないですの。そんな状態ハウッ!?」
「……」
「くふぅん……まさか、これを狙って……?」
「ふ、ふふ……」
笑うArcardが握ったアンチマテリアルライフルの先端。そこが、ラブリードールの股間にめり込んでいた。
「言ったろう? こちとら玄人だって」
くたくたとリングにへたり込むラブリードールに言い聞かせるように、Arcardは言い、ライフルを振り上げた。
「ッ!?」
「じゃあね、おやすみ!」
ゴンッ!
……鈍い音が響いたと思ったとき、ラブリードールの視界は完全に暗転していた。
悪夢だ。
ザ・チェーンマンは思っていた。
目の前の女に、能力者とは言えプロレスは素人同然のこの女に、自分はなすがままにされている。自慢のチェーンは奪い取られ、今まさに、関節技まで極められている。
「いくぞ必殺! 『悶絶! 天地責め』」
チェーンマンの腕をガキッと極めるカトレヤ。
「仮にもレスラーだ。痛みにゃ慣れてるかもしれんが、これならどうだ」
『我が秘術受けるのじゃ! そぉれ、それ、それ』
そう言うと、ひょっこり出てきた紅花が、脇腹をくすぐり上げる。
「うぎゃっ!? ひゃはは、ひゃは、ひゃははぁっ!?」
「痛みと」
『笑いの』
「海に沈め(のじゃ)!」
ガキッ!
何度目だろう?
二対の機械脚が空中で激突し、この音を立てるのは。
しかし、無限に続くかと思われたこの激突にも、ついに終わりがやって来た。
「ば、馬鹿な!?」
背中からマットに落ちたブラッディ・ジョーは、信じられないという声を上げた。
その両脚は、スパイク部分から削り取られるように破壊されている。
「スパイクぐらいじゃウチのキックは止まらねえ!」
シエロは叫んだ。
この機械脚対決の結末は、しかし決して運や偶然といったものではない。
むやみにドロップキックを放つジョーに対し、シエロは射手の矜持を発動させ、より効果的な箇所に当てられるよう、命中率を高めていたのだ。
しかしリング上のシエロは、そんなことはおくびにも出さずに言い放った。
「うちのドロップはミサイルと同じさ! さあ……覚悟を決めな!」
走り込んだシエロが、ジョーの腹部に全力低空トラース・キックをきめる!
「ぐふっ!」
「く」の字に身体を折り、悶絶するブラッディ・ジョー。
「このタコーー!!」
そしてそのまま、無防備な後頭部にシザース・キック!
「…………」
ピクピクピクと痙攣し、ブラッディ・ジョーは動かなくなった。
「……ハッ、あんたが相手なら5回はチャンピオンになれるぜ」
「ああっと、華麗にリングに舞い戻ったザ・SHINOBI!」
「交代だ、宍影」
主導権を取り返したSHINOBIは、鞭の拘束から逃れたフェニックス目掛け、何かを投げた。
「何!?」
『おおっと? フェニックスの動きが固まってる? これはどうしたことだぁーーー!』
主導権を取られても、SHINOBIの中で宍影の実況は止まらない。
「……忍法・女郎蜘蛛」
「ぐ……このような奇策を……!」
「どうだ、自分が動けなくなる気分は!」
フェニックスの首に両脚をかけると、SHINOBIは反動をつけて投げた! その先には、
「フィストのおっちゃん! 決めてくれ!」
「オーケー、SHINOBI!」
『デッドフィストだ! デッドフィストが待っている! 出たーーーッ!! 鋼鉄の腕で相手の喉目掛けて繰り出される地獄突き!』
「……ぐぼっ……!!」
フェニックスが、ついに崩れ落ちた。
「ハァ、ハァ……」
「くう、うぅ……」
意地と意地の張り合い。沙羅とスワン・ミカムラの戦いはそう呼んでもいいほどの互角の様相を呈していた。
「負けない……沙羅は、あんたなんかに……」
「それは、こっちの台詞よ……」
意地と意地のぶつかり合い。
もはやそう呼ぶしかなくなった、この両者の戦いで勝敗を分けるものは何だろう?
……それはやはり、普段の戦いの『質』にあった。
一般人を相手に殺人ショーを繰り広げてきたスワン。それに対して沙羅と沙耶は、常日頃から冒険という名の真剣勝負を行っていたのである。
そしてついに、沙羅の底力がスワンを上回るときが来た。
「リバース式……フランケンシュタイナー!」
「うぐっ!」
「これでトドメよ……シリアルキラー!!」
太腿で顔を挟んでの変形式ペディグリー!
「はうっ!? う……うぅ……」
これで再度顔面を打ちつけられたスワンは、ついに力尽きた。
「ぬばばばばっ!」
「それそれそれ!」
『どうじゃどうじゃどうじゃ!』
未だカトレヤと紅花の『悶絶! 天地責め』にさらされているザ・チェーンマン。
「あきゃきゃきゃきゃきゃ! ギブ! ギブアップです! うひゃひゃ! もうやめてーー!!」
悲鳴のような笑い声のような。
ともかくこの絶叫によって、シャドウ・リングのレスラー達は、全員がマットに沈んだのであった。
そして試合後。
「はー暴れた暴れた! こんなに燃えたの何時ぶりだったかな!」
「……シエロ、凄かった」
「ただ銃うつだけじゃないのよん、ウチ♪」
共鳴を解いたナトを抱きかかえると、シエロはにっこり微笑んだのだった。
一方、マイクを要求した沙羅は、観客全員に向かって言い放った。
「今日の試合と今までの塩試合、どっちが面白かった? どっちが滾った? プロレスはこうでなくちゃいけないだろ! もっと観たいなら、デッドフィストの会場に来い! これからも本物を魅せてやる!」
言いたいことを言って、マイクをデッドフィストに投げる。
そのマイクを、ひょいとカトレヤが横から奪った。
「デッドフィスト&マスク・ド・デスイーグル(az0021hero001)! 次は、おまえ達だ(じゃ)!」
「あーーっと、何ということでしょう! カトレヤ組から、デッドフィスト組への挑戦状が叩きつけられました!」
「ウガー! 俺様達はその挑戦、受けて立つぜ!」
「……これがプロレスだよな、おっさん?」
にっと笑ったカトレヤがささやく。
「ああ。バッチリだぜ」
デッドフィストも、にやりと笑い返すのだった。