本部

プーホー業界マルハダカ第四回

昇竜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/02/12 17:12

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掲示板

オープニング

●「さあやって参りました、天宮すみよしのプーホー業界マルハダカのお時間でございます!」

 金曜夜のとあるチャンネルでは、ライヴスリンカー番組『プーホー業界マルハダカ』が放送されていた。この番組はまだまだ怪人的・超能力者的な偏見の残る『ライヴスリンカー』という存在を身近に感じてもらうことを目的として制作されたバラエティ番組だ。MCを務める天宮はシャイニーズ事務所所属のライヴスリンカーアイドルである。観覧席に集まったのは主に天宮ファンの女性たちだ。

●「新年一発目ということでですね」

「明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願い致します~!」
「よろしゅうたのんまっせ、テレビの前のおなごはん!!」

 挨拶も紋付衣装も新年仕様だ。世間はもう節分とかバレンタインとか言ってるが、そこは気にしないでください。

「去年はゴールデン進出とかおめでたいこといっぱいあったし、今年もみんなと一緒に楽しいコトできたらいいなって思ってるよ! じゃあじゃあ早速いっちゃう? 本日の企画!」
「おうええで、行ったれ行ったれ!」

 じゃじゃ~ん。シールボードのめくりの下から現れたのは『ホープコレクション』の文字。

「……何コレ。あとさっきからウルサイ似非関西弁のハムスターは誰なの?」
「ワイはファッショニスタの祭典『ホープコレクション』の厳正なる審査員・ハムスターやで!」

 解説しよう、収録には最初からハムスターが参戦していたのである! というのもラメびっしりの漫才スーツを着た身長120センチほどの着ぐるみ姿の人間だ。ニュースなどをよく見る方は知っているかもしれないが、彼は最近コメンテーターなどで人気を博すタレントであり、その正体はライヴスリンカーということを除いて謎に包まれている。

「ホープコレクション、略してホプコレはエージェント業界でバンイチお洒落なオシャンティニストを決める神聖なバトルロワイヤルや! 冬は厚着するさかい、おまいらの腕の見せ所やで! ホプコレ冬の陣を征するのは誰じゃ?!」

 子供や女性にウケの良さそうな愛らしい着ぐるみにも関わらず、操るは胡散臭い関西弁。情け容赦ない毒舌コメントと見た目のギャップが人気の根底にあるようだ。

「でもファッションとか専門外でしょ。あなたそのナリでお洒落とか分かるの?」
「失礼なやっちゃなぁ。天宮おまい今日の私服えらいダサかったで? 何やのあのオーラの欠片もないセータージーパンは」
「うっ……うるせぇ! 仕事行くのに服装なんか気を遣わねぇよ!」

 天宮すみよし、ここで馬鹿にされたままでは天下イケメンの園シャイニーズ事務所の面目立たぬ。何としてもバンイチお洒落なコーディネートを考え、こやつの鼻を明かしてやらなくては。そんな天宮は歯牙にもかけず、ハムスターはV振りへ。

「見てろよ、本気モードのガチコーデで女子をキャーキャー言わせてやるぜ……!」
「フヘッ、エージェントをコテンパンに貶しくさったらギャラ増えるゆーてたしな。腕がなるわ……ほな、まずはショッピングからいこか。VTR、ドーン!」

解説

概要
テレビ番組に出演し、番組を盛り上げてください。

ロケ(VTR撮影)
横浜のショッピングビルにて開店前(朝5時)に行われます。参加者はショップを見て回り、何か一つだけ買い足すこともできます。着ている普段着はあらかじめ収録を知っていて気合いを入れたコーディネートでもいいですし、突然番組スタッフに拉致されて着の身着のままという可能性もあります。既にコーディネートが完璧な方はカフェでオシャンティーを気取るのもよいでしょう。1時間という時間制限もありますので、あまり悩んで決めることはできません。

生放送
ロケ後、スタジオ生放送にて最もお洒落なコーディネートを発表したPCを「オシャンティニスト」として称えます。審査はハムスターの独断で行われ、最下位だったPCにはネタに応じたレッテルが貼られます。放送中に視聴者コメントもあります。

ショップ
様々なテイストが揃えられます。冬ですのでコートやブーツは特に豊富で、逆に半袖シャツなどは少ないでしょう。一般的なブランドであればビル内にあるものとします。オシャンティニストを狙う場合は、表参道にいそうな感じにしましょう。

NPC
天宮は絡みがなければ普通に貶されて無難に終わります。ダサい服をそそのかして買わせたりしなければ最下位になることもありません。
ハムスターはお洒落がよく分ってない人に変な服を勧める可能性があります。審査は公平ですが、おべっかや美女には弱いかも。

リプレイ

●AM5:00

 深夜、邦衛 八宏(aa0046)は葬儀屋としての仕事を終えた帰宅途中、突然拉致された。黒いスーツ姿のまま車に揺られることしばらく。待機場所でパイプ椅子に猫座りしていた稍乃 チカ(aa0046hero001)は、邦衛に気付きぴょんと立ち上がった。

「……あの、何ですか……これ……」
「来たな真っ黒クロ助め、今から楽しい楽しいオサレの時間だぜ?」

 当惑する邦衛に、稍乃はニッと犬歯を覗かせる。車内で一方的な説明を受けたが、どうやらこの番組、彼に勝手に出演申し込みをされていたらしい。

「君は本当に……最近、SNSのIDバラまくんもやっと落ち着いたと思っていましたが」
「うっせ、いい加減その年中喪中スタイルを何とかしてやろうと思ってな」
「礼服である以上、どこに出ても失礼の無い格好では……」

 邦衛の言い訳は右から左、稍乃はいいから座れと自身の隣を促す。言いたいことは色々あったが『年がら年中上から下まで黒尽くめは正直どうか』とは常日頃言われていたこと。今まで適当にあしらってきたのだから、今日一日で稍乃が満足するのならこの流れも致し方あるまい。邦衛は溜息を吐いて椅子を引いた。

「今回は準備したのに……」
「コなるナンテ誰も思わないヨ」

 その傍で少年と青髪三つ編みが項垂れていた。守矢 亮太(aa1530)は青系チェック柄のパジャマ、李 静蕾(aa1530hero001)はスポーツ用ジャージ姿だ。そう、部屋着のままである。例によって李の独断で応募されたものの、今度はちゃんと事前に守矢に伝えられていた。が、

「目覚まし時計もセットして、着る物も準備してきたのに……」

 予想外だったのは時計の電池切れ、目覚めたのは家に番組スタッフが襲来したその瞬間であった。寝室の戸が開くまでおよそ一分、この間に二人が手にできたものは守矢のキャップ、プリントトレーナー、李のショールだけだった。

「リョタ、後ろ髪跳ねてるヨ」
「ほんと? 濡らしたら直るかな」
「あとでトイレ行こネ」

 守矢の黒髪は短く刈り込まれているが、毛質がふわふわなので癖が付きやすいのだろう。李は普段シニヨンに纏める髪を緩く一束に編み込んでおり、リラックスタイムの余韻が残る。そんな二人に鼻息を荒げる男が一人。

「おねショタ! おねショタじゃないか! うらやまけしかr……あっちには美少年だ! 猫耳ktkr! ……隣の奴からは、なんか同類の匂いがすんな」
「和馬ちゃんウケるーっ」

 鹿島 和馬(aa3414)の嗜好幅広さに虎噛 千颯(aa0123)は大爆笑。隣の浦見 真葛(aa0854)とも鹿島は親しげだ。そこへ司会である天宮すみよし(az0033)が到着。

「おはよ。みんな悪いね、こんな時間に……そちらは?」
「ああ、かずくんは幼馴染み♪ (ネタ的な意味で)テレビ映えしそーだから連れてきたんだよ♪」
「あなたね……カッコに包んでも万事穏便に運ぶとは限らないよ?」
「おーおまえが天宮か。真葛とは腐れ縁なんだ、よろしくな! んで、チーちゃんはこっちで出来たダチ」
「へーい! 和馬ちゃんもよろろな~。この番組3回出れば準レギュって聞いたぜー!」
「馬鹿な事を言ってる暇があるなら新年の挨拶をするでござる。天宮殿、本年も何卒千颯を……」
「あ、白虎丸サンには昨年もお世話に……」
「どうどう? 非公認ゆるキャラ、正月バージョンだぜー!」

 天宮は2月中旬にも関わらず黒の紋付羽織袴姿の白虎丸(aa0123hero001)に感銘を受け深々頭を下げた。彼は袴を着ることができて満更でもないようで、顔には出さないが、いや被り物で表情は見えないが、虎噛の暴走プッシュにツッコミ忘れる程度にはご満悦の様子。

「天宮ちゃん~このままプーホーのマスコットにどう? うちの白虎ちゃんどう?」
「もー分かったよ、プロデューサーに言ってみる」
「これがこの世界の正装でござるか……ふむ……身が引き締まる思いがするでござる」
「出演者の皆さーん、移動でーす。今からカメラ回りますんでー!』

 スタッフが呼びに来て、出演者たちはショッピングビルへ。とはいえ虎噛たちは準備万端、ほぼ全身キマっていた。

「いえーい出発だぜー! 真葛ちゃんそのファッション超イカスじゃーん! 俺ちゃんもどうよ?」
「虎ちゃんもちーちゃんもかっこいー♪ オシャンティニストいけるんじゃない? とはいえ僕は外見的にもバンイチになるよーなインパクトは難しーし、シュノの引立て役になればいーかなって」

 浦見は白シャツニットカーデ、デニムにダウンコートとまるでファストファッションで全身買いした大学生だ。逆に虎噛は下北沢でも二度見されそうなエスニック系。歩く度にカーゴパンツの金具がからからと鳴る。

「ほんに勇ましいぞ白虎丸! 今日は我もふわふわがお揃いじゃ♪」
「シュノギ殿はどれを着ても似合っているでござるよ」

 シュノギ(aa0854hero001)のかわいらしさに白虎丸も笑顔。浦見の歩幅に付いて行こうととてとてと一生懸命動かす太腿を覆うのは、ふわふわ素材のボーダー柄二―ハイソックス。かぼちゃパンツのようならぶりぃ短パンとの隙間は正に絶対領域――カメラマンは舐めるようなアングルで彼を追いかけている。虎噛は半笑いだが、鹿島は真顔。

「シュノギちゃん相変わらずあざとすぎる」
「なんつーか、いっそ清々しいまでにあざとコンビだよな、お前ら。チーちゃんは気合入ってんなぁ。なんかやらかしそうな……祭りの予感? wktk? いつもそんなの着てんの?」
「割と普段の私服に近いぜ。気合いは十分だけどなー!」

 虎噛は得意げにニットキャップのツバを持ち上げる。確かに彼のドルマンシルエットのニットポンチョはインティライミの祭列に居ても違和感ない。下にはタイダイ柄のジャケットを着ており脱いでも派手だ。インナーまでインドのクルタという張り切りよう。さすがと言ったところか、暖色系で色を纏め統一感、足元はゲリスリッポンで抜け感もある。

「和馬ちゃんはなになに? それ勝負服? 攻めてきちゃった系?」
「ふひひ、上手くいきゃ俺にもモテ期が……んでも、初仕事がテレビ番組とか、元ヒキニートにゃハードル高ぇな」
「俺氏殿は買い物しないでござるか?」
「英雄的な鹿の塊である俺氏はオシャンティオーラが隠せないからね。このままでもオシャンティニストに輝いてしまうよ」

 俺氏(aa3414hero001)が纏うは全身を覆う白ローブ。曰く鹿皮、さすが塊。鹿島のコーディネートは所謂キレカジ系で、テーラードジャケット、Vネックカットソー、ジレを完備。革靴は踵を潰して履くことでこなれ感を演出……ボトムスは尻尾の位置の関係でローライズデニムだ。

「かずくんとおれっしーのやる気めんどくさい。てかウケるー」
(真葛に和馬……クズにカスとは類友にも程がある)
「なんだと真葛。あっシュノたんのことは言ってないよ、だから怖い顔しないで。じゃあお前は何企んでここ来たんだよ」
「んー。シュノにかわいー服着せたかったけど、僕一人で見に行くのは恥ずかしくて……企画に便乗しちゃおーと思って来ました♪」
「真葛とお揃いが良いのじゃ! それからあっちに甘くて美味しそうなものが沢山あったのじゃが、後で見ても良いか?」
「うおっ……なんだ? カメラが急に」
(ってゆー女子受けエピも大事だね♪ 新しい合コンネタごちそーさまです♪)
(ショタ枠では負けられぬ! ついでにショッピングモールにもステマで媚びておけば謝礼も見込めるは必定じゃて)
「あのさ……言っとくけど、俺はシュノギくんと同じ市場は狙ってないからね?」

 ここまで後ろで黙っていた天宮だが、何故かそれだけは言っておきたかったようだ。

「先生。不本意ながら状況は把握しましたが、あなたの口から聞いていませんよ」

 キリエ(aa0994hero001)は最後尾を歩く枦川 七生(aa0994)に耐えかねたように言った。前回と違い害のある企画ではないのでその点は安心だが、教えておいてくれれば心の準備も出来たというもの。

「ん……? ……ああ、そういえば言っていなかったな。キリエ、依頼を受けておいたので参加しよう」
「参加しようじゃないですよ……無駄なドッキリはやめて下さい。先生、お願いですから、本当に……そういう大事な事は」
「センセたちおはよ! ねぇ、今日の服センセが選んだの?」

 駆け寄ったのは天宮だ。

「ああ、キリエが用意したものだ。選んだ理由は知らないな、キリエに聞いてくれ」
「大体いつも、僕が用意していますよ。先生、ご自分の事には無頓着なので。と言っても、動きにくい服装は思考を鈍らせる、と仰るので動きやすいものをお選びはしてますけど」
「へえ、尽くされてるね。でも、今日はガチで選んだ方がいいよ」

 その視線の先。イタリアのナンパ男のような恰好の審査員・ハムスターが、カフェでコーヒーを嗜みつつインタビューに応えている。

「と言ってもなぁ、先生はこのままで十分素敵じゃないですか? どう思います?」
「そうだけど……あなたは参加しないの?」
「え、ああ、僕のお洒落は良いんですよ、二の次で。大体普通の服ならなに着ても似合いますし」
「てめっ……全国の平凡な男共を敵に回したな」

 その頃、インタビューを終えたハムスターの前には、長い黒髪の男が。

「成程、このハムスターのキグルミ君が審査員なのだな。私は枦川という、今日は宜しくお願いするよ」
「ほー、ワイに挨拶とは感心やな。せやかて枦川はん、審査は公平でっせ」
「勿論だ。私は服飾の知識がそれ程豊富な訳ではない。今日は、その知識を得に来たのだ。審査員というからには相応の知識とセンスを有しているに違いない。ならば教えを請うのも必然……君のセンスと知識を信じよう、私にオシャレとは何かを教えてほしい」
「へへぇ……気に入った、ええで! ワイがグンバツにシャレオツな冬コーデを伝授したる。けど、連れはええんか?」
「ああ……なに、あの調子なら暫くは大丈夫だろう」

 振り返ると、キリエはまだ天宮と話している。

(あれは私の話を長いと言うが、あれもあれで話しだすと長いのだよ……本人に自覚はないようだが。折角の機会だ、キリエ以外の誰かが用意した物を身につけてみるのも悪くはない)

 キリエが異変に気付いたのは、枦川がハムスターとビル内へ消えた後。

「ねえ、先生。先生もそう思いますよね……あれ、先生?」
「え? さっきまでそこにいたよね?」
「ああ、もう、また勝手にうろちょろする……! ちょっと目を離すとすぐこれなんですから、本当勘弁して下さいよ……」
「なんか大変そうだな……でも、そんな関係も悪くねぇんだろ?」

 鹿島は一人、そんなキリエを見てグフ腐と笑った。

●波乱の予感

「……一番、落ち着くんですが……駄目ですか」
「黒に黒で上塗りしてどうすんだ、アホなの? 控えめに言ってアホなの?」

 稍乃は邦衛が選んできたコートを突き返す。案の定の黒一辺倒。大方、あまり目立たないようなファッションで無難に切り抜けようと思っているのだろう。

(仕事の関係上、スーツじゃなきゃいけないことは分かってんだよ。だからそれに合わせられるような上着を探してるってのに)
「チカ君、これ……」
「あのな、お前は吸血鬼か! 少しは違う色のを選べ、じゃなかったらVTRで女装姿とかズボン脱げたのとか流してもらうぞ!」
「……それは困りますね」

 邦衛は少しはまともに選ぶ気になったらしく、再び売り場へ。仕事以外で家を出ることが滅多になく、商業ビルなど久しい邦衛は落ち着かない様子だ。稍乃もこういう場所はもの珍しく、気分はノリノリ。

「さて……釘も刺したし、あいつにちょっかい出しに行くか。この機会に自分を売り込まなきゃな」

 一方、浦見が選んだのはもこふわパステル可愛い系のルームウエアブランド。

「マフラーは今年ないんですよね~小物って言うと靴下とか~」
「そっかー、統一感出したかったけど、買えるの一個だけだし……じゃあこのトレーナーで」
「ありがとうございます~」
「シュノも可愛いポシェット見つかって良かったね♪」
「うん、真葛ありがとうっ」
「かずくん達とちーちゃん達はどんな感じだろー?」

 あざとくポシェットを下げシュノギのコーデは完成。浦見はメンズアイテムからトップスをチョイスした。隣のアクセサリーショップを覗くと、そこには指輪を選ぶ虎噛の姿が。

「これなんかいい感じかな? んー迷っちゃうぜー。和馬ちゃんは決まった感じー?」
「ああ、俺はもう一目惚れで買っちまった……前から気になってたんだよな。血の宿命には逆らえなかったぜ」

 鹿島はネックレスを選び、首元寂しさを払拭する作戦だ。

「何とか寝癖は取れたけど……」
「とにかくパジャマから脱却シナイと。ダイジョブヨ、この日の為にファション誌を読んだアル」

 守矢と李が探しているのは、一点投入で雰囲気をがらりと変えられるアイテムだ。勉強とは見上げた姿勢だが、問題は雑誌の入手元だった。それに服をたくさん見れば見るほど、何がいいのか分からなくなってくる。

「じ、自信なくなってきた……」
「ソネ……」
「おっおねショタやないか。どないや進捗は」

 そこで出会ったのは枦川を連れたハムスターだった。二人は顔を見合わせ、頷き合う。

「ダメで元々ヨ。一度お勧めを聞いて試着するアル」
「ハァン? 何や、また生徒増えるんか。ムフフ……まあお姉さんになら、お勧めの服教えてもかまへんで」

 両手をわきわきさせるハムスターは、一同を連れゴスロリショップ街へ。着替えを終えた李は堂々と彼らの前に姿を現す。ひらっふわっ。現れたのは最早漢服の面影もないレースとフリルたっぷりの青いミニドレス。

「どアルか?」
「うっひょー! ワイ眼福」
「静蕾……カワイイけど、これ何か違うよ」
「何をう、原宿なら写真頼まれるレベルやで」
「ソカ……ヤパリ、自力で探すネ」

 客観視の結果、これはないなということで二人はハムスターと別れた。ケッと視察再開するハムスターの目の前には新たな獲物が。

「おっオスネコやないか。あいつにも面白いモン勧めたろ……と思たら、何や天宮に絡んどるな」

 天宮の周りをくるくる回るのは稍乃。

「なーな、お前ってあれだろ? アイドルってやつ! 俺もさぁほら、な? 可愛いじゃん? アイドルの素質あると思うんだけどさ?」
「ねぇ……相方の傍離れて大丈夫? あの人、一人じゃ会計もできなそうだけど」
「いいんだよ、これも社会勉強だ。そんなことより、俺も『ぎょーかいじん』に興味がだな」
「ちょ、やめて、そんなにキラキラした目で俺を見つめないで。なに? シャニに入りたいって?」
「うん、単刀直入に言うと紹介して? ってこと!」
「今日マーケティングする奴多くね? ……別にいいけど。適当に社長に話しとくよ」
「やったー! じゃあ天宮、これお礼な。アイドルっつったらキラキラだろ」
「は?」
「今の約束、忘れんなよー!」

 稍乃に押し付けられた袋の中身を取り出してみると、それは全面スパンコールの入ったシャツ。

「……今時こんなもんコンでも着ねぇよ」
「ヒューッ! 見ろよ奴の服を……まるで紅白の大トリみてえだ! こいつはやるかもしれねぇ」
「さすが天下のシャイニーズ・すみよし氏には勝てないね」
「ワイも吃驚やで。まさかシャイニーズ・すみよしがここまでとは」
「ちが、これは俺のじゃ……」

 そこへ現れた鹿島・俺氏ペア、初見の相手にもイジリは全力。ついでにハムスターも便乗。

「シッ聞こえるだろ……ま、確かにな。これがあのシャイニーズ事務所メンバーのセンス、ふひひ」
「聞こえてるから!」
「まーまー天宮ちゃん、これなんて可愛くな~い? 天宮ちゃんにしか着こなせないよ!」

 一緒に居た虎噛が天宮に渡したのは、外国人が良く着るアレ。

「俺でも無理だよ! そんなに俺を最下位にしたい?」
「プスス、いや天宮イケるて。ひょろいのも誤魔化せるで。白シャツはイケメンに着られるためにあるんや」

 虎噛のシャツをハムスターがベタ褒めするも、天宮は断固拒否。だが枦川は純粋だった。

「ふむ……君がそこまで勧めるならば、良いものなのだろう。これにしよう」
「えっ」
「うはっ」

 予想外の展開に虎噛は大ウケ、天宮絶句。どうなるポプコレ冬の陣?!

●LIVE

「テレビの前のみんな、待たせたな! ただ今より出演者のファッションチェックを始めるで! まずは邦衛はん、マントオープン!」
「……これで、宜しいのでしょうか……」

 邦衛は自信なさげに全身を覆うマントを取り去った。彼の最終チョイスは黒いトレンチコート。すかさず稍乃が噛み付く。

「って結局黒かよ!」
「パッと見は黒いですが、よくよく見たら若干青みがあります」
「わかりにくい!」
「ハァーまるでGやなG! 光の加減で色が変わるとことかクリソツやで……視聴者からコメントも届いてるけどな『刺客』『殺し屋』『死の匂いがする』とこき下ろされとるで。連れの話ちゃんと聞いとったんかアァン?」
「……」

 見ず知らずのハムスターに詰められ、みるみる心を閉ざしていく邦衛。引きこもりにはやはり厳しかったか。

「もっと言ったろか? 『黒なら許されると逃げ腰』『目が怖い』『呪われそう』……」
「…………」
「も、もういいだろ! これ以上こいつの瞳から光を奪うな! 悪かったよ八宏、お前にしてはよく頑張ったよな」
「ヘンッまあええわ、このくらいにしといたる。次は虎噛はん!」
「よっしゃ俺ちゃんの番だ! ばばーん!」

 稍乃が助けてくれなかったら人間不信になっていたかもしれない。続いて呼ばれた虎噛は、バッサァと華麗にマントを脱いだ。だが、どんなに目を凝らしても開始前と変わったところは見られない。

「ええ?! 大違いでしょ、ホラここ、俺ちゃんの手を見て! この指先に光るターコイズのリング!」
「それは冗談やけどな、ジャケットの上からさらにポンチョてどないやねん、寒がりか? こだわりや色使いは評価するけど、万人受けはせへんで。視聴者からも『視界がうるさい』『色がうるさい』『顔がうるさい』という意見が寄せられとる」
「顔は関係なくない?!」
「ホンマうるさい奴やな~次! 次は守矢はん、オープン!」

 おずおずとマントを脱ぐ守矢が選んだのはオーバーオール。トレーナーとキャップを身に付け、パジャマから脱却を果たした。李はニットワンピースを選び、上からショールを羽織っている。

「ほほーやんちゃな感じでええんでないの? でもそのキャップ農家感あるから20点減点やな。静蕾はんの元々着とった黒タンクを活かしたレイヤードもポイント高いけど、それ流行ったの一昨年やで? 30点減点」
「ええー?! 小物がカッコイイって聞いて準備したのに……」
「ク、やはりオシャレは難しネ……」
「まあ視聴者からは『言えない』『金積まれても無理』『良心の呵責』と概ね好評」
「おいおいサクラじゃねーか」
「そない心配してられるのも今のうちやで鹿島はん、次はおまいの番や」
「いいだろう……俺の時代の幕開けだ!」

 シュバァ……鹿島が得意げにマントを脱ぐも、やはり開始前と変化はない。

「嘘だろ、大違いだぜ! 見ろよこの胸元に光るシルバーのホースシューネックレスを! で、視聴者の反応は?」
「『ホストの休日』『ギャグ。欲しがりすぎ』『なんで踵潰してるの? ねえなんで?』」
「辛辣!」
「しょげんな、ええ意見もあるで。『運気は上がりそう』30歳主婦、『私は好き。馬の尾みたいなアクセがかっこいい』10歳小学生」
「10歳小学生で胸も薄い本もアツくなるな」
「和馬氏はそのうち捕まると俺氏は思うよ」
「続いては浦見はん。オープン!」
「は~い」

 マントの下から現れた浦見のトレーナーは、もこもこ素材の切り替えでボーダー柄になっている。

「合コン行って服で女に話合わせよいう猛者の匂いがするで。色をアウターと合わせたんと、メンズでもこもこを選ぶっちゅー遊び心は評価したる。ただし『モブ顔のくせに生意気』など酷評が多いな。あとは『シュノたんprpr』『モコモコかわいいよ』……英雄の方が目立っとるやないかい!」
「真葛、ぺろぺろとはなんだ?」
「あとで教えてあげるね♪」
「最後はブフ、枦川はんブフォ」

 枦川が静かにマントを取り去ると、彼が着ていたのは見るからにダサい漢字で『日本』と書かれた残念Tシャツ。

「プギャーー! さすがワイの見込んだ男やで、よっ心意気!」
「先生、さあ、お体冷やしてはいけません」
「??」
「視聴者からも『いつも楽しみにしています』『流石です』『キリエさん自分を責めないで』などの意見が多数! いや~大物やね!」

 キリエがわなわなと震えながら枦川の肩にマントを掛け直す。このままだとオシャンティニストはおそらく浦見……だが虎噛にはまだ奥の手が残されていた。

「かくなる上は俺ちゃんの真の姿、お見せしよう」
「何やの虎噛はん、もう時間ないんやで」
「すぐ済むぜ。これが……俺ちゃんの完全開放だー!!」

 バシュッ――ひらぁ。怪盗三世も顔負けの速さで脱ぎ捨てられた衣服が宙を舞う。残されたのは前垂れに『漢』と書かれた褌のみ。

「つまりパンイチでござるな」
「白虎ちゃん何でそんなに冷静なの?」
「なるほどバンイチとかかっとる。うまい! 天宮、座布団2枚!」
「かしこまらないよ!」

 浦見はぱんいちムービー案件に爆笑しつつも、まだ物足りない。

「ねぇねぇ天宮ちゃん。アイドルならどんな服でもどんなぱんいちでも着こなす筈だよね?」
「……嫌な予感」
「えー? ハムちゃん先生監修による着せ替えショーやろうよ。今ここで。いい撮れ高稼ぎになると思うけどなー」
「真葛ちゃんそれウケるー! 天宮ちゃんカワイソス()」
「パンイチに言われたくない!」
「まあまあ、いじられてこそ天宮ちゃんだと思うんだ僕♪」
「ソいえば、」

 李は親切心で天宮のために用意した服を彼へ差し出した。

「これが流行テルて最新のファション誌に書いてアタよ! 普段セーター着てるミタイのだから似合う思うネ!」

 古本屋ではその本が最新だったのだろう。天宮がセーターを広げると、胸のところがぽっかりと開いていた。にじり寄るスタッフ、青ざめる天宮。鹿島はてきぱきと撮影準備を始めた。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 常夜より徒人を希う
    邦衛 八宏aa0046
    人間|28才|男性|命中
  • 不夜の旅路の同伴者
    稍乃 チカaa0046hero001
    英雄|17才|男性|シャド
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • モブ顔の王者
    浦見 真葛aa0854
    人間|23才|男性|攻撃
  • エージェント
    シュノギaa0854hero001
    英雄|11才|?|ソフィ
  • 学ぶべきことは必ずある
    枦川 七生aa0994
    人間|46才|男性|生命
  • 堕落せし者
    キリエaa0994hero001
    英雄|26才|男性|ソフィ
  • エージェント
    守矢 亮太aa1530
    機械|8才|男性|防御
  • エージェント
    李 静蕾aa1530hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
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