本部

逃げ道を封鎖せよ!

ふーもん

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/01/30 19:15

掲示板

オープニング

「――ふむ。……と、すればの話だがプリセンサーの配備……いや、警備に何等支障はないと言う事ですかな?」
「その通りです。今現在、世界規模で起こっている世界蝕『ワールド・エクリプス』ですが、この様な例は私もかつて経験した事はありません」
 ――場所はH.O.P.E.東京海上支部。その会議室。その中において話し合いの協議は真っ最中であった。

 事件は一通の封書とそこに入っていたデモテープだ。何かしらの犯行声明文の様な代物がそこには録音されていた。恐らく今回の事件に絡んでいるのは知性を持った愚神、最悪ヴィラン等の日本国内にとどまらず世界的にも悪の名を轟かした犯罪組織である事は間違いないだろう。
 しかし、その犯行計画はずさんなもので自らの犯行目的を明かしたばかりでなく、日本の首都。東京に的は絞られていた。配備されたプリセンサーから得られた情報も数少なく、1人の女エージェントに問われた中年の男が難儀を示すのも無理もない話だ。因みにデモテープに録音されていた犯行声明は以下の通りだ。

 ――愚かな人々よ。我々は逃げも隠れもしない。オタク達が集う神と崇める秋葉原を乗っ取り、そこを我々の拠点とする。H.O.P.E.の優秀なエージェントを送り込んでも無駄だ。ライヴスを介した戦闘なら従魔を従えた我々の方が優勢を強いられるだろう。どの道、我々はここから世界を席巻しこの世を支配するのだから――

 場所はよりにもよってオタク達が集合する聖地。秋葉原。電気街やら歩行者天国やらメイド喫茶やらおでん缶やらが一瞬、脳裏を霞めたが今はそんな事どうでも良い。問題はこれにどう対処するかだ。
 しかし現時点では、ドロップゾーンの形成やライヴスのオーラを感知した形跡は無い。従魔がいるとは言っていたが、それすらも怪しい。
「――なるほど。プリセンサーが頼りにならない以上、そこにエージェントを送り込む価値はあるな。例え悪戯だとしても杞憂に終わるだろうからな。それで? 一体、何名のエージェントを送り込む必要がある? 相手がそれなりの規模を誇っている以上、軍隊レベルの大組織でも編成してみるか?」
 男は皮肉交じりに苦笑したが女エージェントは一見して全く笑わなかった。真剣さがその顔から伝わってくる。
「いえ、相手の正体が掴めない以上、ここは少数精鋭が宜しいかと」
「何人だ?」
「最大で6人程が理想的ですね。場所は秋葉原。歩行者天国があるので一般人の人達を巻き込むわけにはいきませんし」
 女エージェントの言う通りだった。今回はあくまで調査。そして最終的にはこのデモテープを送り込んできた犯人達の素性を明かすのが主な目的であり任務。
 最終的に愚神やヴィラン等の驚異的な存在が事実上確認出来たとしたならば、その後新たな軍勢を送り込めば良い。つまり相手の逃げ道を封鎖するのだ。
「――そうか。ならば手配は私がする。6人の優秀なエージェント達にこの事件の調査を任せる事にしよう」
 こうして準備は整った。会議は終了し室内に沈黙が満たされていった。

解説

 今回の任務は調査です。ですが最終的にバトル的展開になるのも正直、否めません。場所は秋葉原。果たして今回の相手は何を考えてH.O.P.E.にケンカを売ったのか? まあ、世界の征服にしろその正体が従魔、愚神、あるいはヴィランにしろ秋葉原のどこかにひっそりと潜んでいるのならば調査する以外にありません。実際、プリセンサーが反応していない以上、6人のPLさん達のPC達に活躍してもらう以外に道はないみたいです。もちろん英雄の方々にも頑張って貰いたいのは言うまでもない事ですが。今回の提示はあくまで調査なので以下の様な条件になります。

 ・犯人の特定及び動機の有無。
 ・単なる悪戯かそれとも実際の犯行声明か?
 ・秋葉原と言う土地で各PLさんのPC達が連携してどう行動するか? あるいはどう言った形で調査を進めるか?
 ・最終的な目的地の特定。
 ・相手がライヴスを介した敵だった場合、バトル的展開のオチもOK。
 ・脅威的な敵さんだった場合、援軍を呼ぶのもあり。
 ・相手の逃げ道を封鎖する。

 途中でわき道にそれて観光気分を味わいながら調査をするのもありです。そこから情報を聞き出せるかもしれないと踏まえて。
 もちろんですがその他諸々のプレイングがあれば歓迎です。

リプレイ


 派遣されてきたのは結果的に4人だった。英雄を含めると8人。

 御神 恭也(aa0127)・伊邪那美(aa0127hero001)、エステル バルヴィノヴァ(aa1165)・泥眼(aa1165hero001)、穂村 御園(aa1362)・ST-00342(aa1362hero001)、シャンタル レスキュール(aa1493)・スケジロー(aa1493hero001)の8人組。
 秋葉原と言う広いんだか狭いんだか良く分からない地形、ピッチ、フィールドでこの4人組がどう活躍するのか?
 果たして犯人は従魔? 愚神? ヴィラン? それともただの愉快犯? もうここまでくると何でも良いのでサッサと締め上げてしまおう。


 最初に気合いを入れたのは他でもないシャンタル&スケジローだった。
「シャン手のアキバを脅迫すルナんて許せな伊予スケジロー!」
「まあ、愚神てある意味目立ちたがりやからなあ……ここが標的になるのは時間の問題やったで」
「……こうなっ鱈、シャンテがゾーンルーラー尼ナル! 損ナノにここ刃揚げな違!」
「はあ? 何を言っとんじゃユー? 遂に香水で神経ヤラレタんか?」

 そう言いつつもシャンタルは本気だ。いきなりアキバの聖域、サンクチュアリの路上でゲリラパフォーマンスを行っていた。
 敵さんも見つからないのにリンク。共鳴し、変身しながら決め台詞。主題歌(自作)を歌い出す。
 そして能力を使ったアクション。
「今日もアキバの街を守る為、芳しく華麗に登場! インセンシスナイン! ブレイドムスク!」
 てゆーかノリノリだった。そして観衆に向かって挑発。
「ブレイドムスク蛾アキバのしん海苔ーダー、ゾーンルーラーDeath! 不服があルなら尋常に勝負~~」
 なんかスイマセンと聴衆に向かって謝りたい所だが、彼女等は彼女等でこの群衆に妙な動きが無いか視線を交錯し、シッカリとチェックしていた。
 無論、本気と書いてマジで。
 もう何でもありだ。この2人組。だが、なかなか侮れない。


 さて、お次は御神と伊邪那美のコンビの出番だ。
『何か漫画みたいな絵が一杯ある街だね』
「……俺が知っている雰囲気と大分変ったな」
 彼等は不審者や不可思議な出来事が起きていないかを人が集まるメイド喫茶や量販店の店員に聞き込み調査をしていた。
「無駄に正体を明かす真似をする……恐らくは悪戯だとは思うんだがな」
『まぁ、本当だったら困るんだし一応は調べてみようよ』

 喫茶店ではやはり秋葉原名物と言えば良いのか? お決まりのメイド喫茶だった。とりあえず一軒目はそこで。
 早速、調査開始。
「あの……。すいません」
「はい、何でしょうか?」
 メイド装束を纏ったメイドさんがいきなり目の前にやって来た。ご注文のオーダーだと勘違いしてたのかパタパタと小走りで忙しなく動く。
『可愛い給仕服だね。ボクも着せて貰おうかな』
「ありがとうございます。ご注文はお決まりですか? ご主人様」
「コラ。今はそんな事言ってる場合か? 仕事の邪魔になるから止めて置け。しかし、俺の記憶だと秋葉原で女性を見かける事は余りなかったのだが……」
『恭也が来てた理由って?』
「鉱石ラジオ等の材料を買いに良く来ていたな」
 そんな呑気な会話を差し挟んだせいか、目の前にいたメイドさんは困った顔をして直立不動。
「あの……何かお困りで?」
 思わず地の自分が出てしまったのも無理はない。その女性はまだ年端もいかない少女だった。少女とはいえ17、8は軽く超えている様だが。
「ああ、すまない。ちょっとこちとら事情が違ってね。ある事件の調査をしているんだが、ここ最近でもいい。怪しい人物が良く見られる場所や集まっている店等があったら教えて欲しいんですが……」
「……怪しい人物に怪しい場所……ですか。えーと、そうですねぇ……」
 果たしてその答えは一体全体どこへ向かうのか――?


「わあ、秋葉原だ……すごい! 何にも引っ掛かるもの無い……」
「しかし、様々な人々が行き交う活気ある街だとST-00342は理解した」
「様々……でも、御園の知り合いと出会う確率は多分0%かな」
「今、通行人の服装のパターン分析をした……確かに御園の知人と驚く程相関が無い……彼等は一体誰なのだ?」
 今回派遣された御園とエスティは事前に求人誌やネットの求人広告等を網羅して、そこに応募する求職者に扮装して調査を行うと言うものだった。
 特に最近になって開設されたメイドカフェ、同人誌書店、ソフト販売店、劇場等はなるべく深く追求する事に決めていた。
 それはどう言う対象が脅迫状を送ったにせよ、秋葉原を選ぶのはその特色故にだと思われるので、オタク文化に関連する施設を根城にするのでは無いかと言うのが主な推論だ。

 ――と、いう訳で……。

「み、みゆ……こう言うの良くわかん無いけど興味あって……」
「あ! ここの制服かわいいですね!」
「……どんな事するんですか? みゆ素人でゴメンなさい……」

 出入りする人の他の店との違和感、リアリティの感じられない業務内容などに注目して候補を特定する。
 知識は無いけど可愛さをアピール出来る職場を探している感じで偽装。
 候補が見つかり次第、入店して詳しく調査する。
 今の所、そのカモフラージュ作戦は上手くいっている様だ。


 一方、既にインターネットで秋葉原で世界的な影響力の有る店や団体、流行を調べていたエステルと泥眼はと言うと。
「うーん。この人物はどうして秋葉原を選んだのかしら?」
 この街を闊歩しそう一言呟く。それに素直に応じる泥眼。
「脅迫状を素直に読めばここに世界を席巻して支配する為に必要なものが有ると言う事ですよね……」
「この街……看板を眺めていたらくらくらしてきたわ。確かにすごい街だけど」
「制服を着て来たのは失敗だったかな? さっきから視線が……」
 彼女等の目的はもちろん脅迫状の主を探し出し、後発隊と協力して捕獲する事にあった。

 インターネットで調べたポイントや関連施設をそれに興味の有る学生二人組として調べて回る。因みに泥眼はちょっと読書にハマった女子大生風の格好。
 なんとなくインディーズアイドルの劇場が怪しいと思っていた2人はそこへと一歩足を滑り込ませる。
 歩行者天国での路上ライブは既に先客がいた為、軽く素通りしシカトした後2人が辿り着いた劇場ではライブアイドル。所謂リアル系アイドルが何か頑張っていた。
 ファンの1人が何気なくこちらを見やり気軽に声をかけてくる。何だこの展開?
 だが、しかし間髪入れず泥眼は自分の主義主張を押し挟まない。勝手気儘に喋りまくる。
 例のアイドルの声は場内に響きまくり。全体的にそれまでのファンシーな雰囲気は吹っ飛び、ロックシンガーの如き勢いで数多のファンを煽っていた。
「そうなんです……先輩のレポートを手伝わされてしまって……学生服の子がいた方がスムーズって……」
 アイドルの熱唱は未だファンを煽っている。
「え? 私そんな……そ、そうなんです。入りにくい所もあるかな?って」
 アイドルの熱唱はどこまでもファンを煽っていた。
 最終的にはここにいる2人も任務を忘れてノリノリになるほどに。恐るべきインディーズアイドルだった。

 ――はてさてそんなこんなで色々と調査をした結果。


 どうやら御神と伊邪那美のコンビに当たりが出た様だ。
 例のメイド少女。しかもかなりの童顔――! は、とりあえず置いておいて、そのメイド少女の話によると何やら近年になって増加している怪しい宗教団体みたいなグループがそこかしこにたむろしていると言う。
 無論、マイナーな事に変わりがないがその分だけ性質が悪く秋葉原に闇市の様なものを築き上げては、新団員を勧誘しているとの事。
 その数はいずれも小規模で誰もが無視出来る警察は無論、こんなガラクタ市場――じゃなかった、新世紀都市聖地アキバ事、秋葉原のアンタッチャブルな領域でまさかH.O.P.E.が動くはずもなかった。
「その為の宣戦布告。あのデモテープって訳か」
 まさかとは思うがそのH.O.P.E.のエージェントが本気で動いているとは夢にも思っていないのだろう。目の前の少女も無邪気に小首を傾げるシマリスの様に頭上にはクエスチョンマークだ。
『悪戯……かな?』
「いや、ある意味悪戯よりも性質が悪いな。とりあえず携帯で皆を呼ぼう。話はそれからだ」
 そして目の前にいたシマリスに鋭い視線で改めて問いかける御神。ビクッと震えたのはたぶん気のせいだろう。
「そのグループのアジト……いや、活動拠点を詳しく話してくれないか?」


 ホコ天の片隅に集った一行。既に一仕事終えた感満載のシャンタルとスケジローはまだ元気が有り余っているらしく……。
「ナール。妻リこう言うコトですネー。ソノ、イエズス会のヤロー共刃自分達のシューはの拡大のタメにデモテープにウソを不意チョーしたと」
「ユー。なかなかキレモノやな。そんなん思いつきもせーへんかったで」
 それを聞いた御神は軽く否定の動作。
「いや、まだキリスト教だと決まった訳じゃない」
「そんな事よりサッサとそのアジトに行った方が良いんじゃない? 一体全体、場所はどこ?」
「御園の言う通りだ。正直、こんな人ごみに長居はしたくない」
 御園とエスティはどこか不満気だ。だが、それも御神はやんわりと否定の仕草。
「その必要はない」
 少し不審に思った伊邪那美は思わず口を尖らせる。
『一体全体どうしちゃったの? 恭也。もしかしてまだボクがゲーム売り場で18禁コーナーに紛れ込んだの気に病んで――』
「それはもう良い!」
 せっかくクールに決めたのにKOパーフェクトで完全な誤解を生み出そうとする伊邪那美。一体、ゲーム売り場で何があったって?
「今、何か聞こえた様な……」
 エステルがそう言うと、御神は心なしか顔を赤くして――
「いや、気のせいだ」
 完全否定。
「……エステル。知らぬが仏。ここは聞き流して前向きに――ね?」
 最終的に泥眼がおっとりと話の本筋を元に戻すと。エステルは礼儀正しくOKした。
『じゃあ、ホントにどうしちゃったの? あのメイドさんの言った場所へと急ごうよ』
 伊邪那美がそう言うと恭弥はやっとこさ冷静さを取り戻して。
「それに――男だけとは限らない」
 先程の話の続きをそう綴った。


「――どうやら上手くまいた様ね。あなたにしては上出来だわ」
「ええ。そうですわね。お姉さま。まあ、あの程度のガキが相手ならば我等が――メイド・シスターズ――の敵ではありませんわ」
「H.O.P.E.のエージェントも所詮この程度だとは――フン。笑わせてくれるわ」
「どうやら世界を席巻するのも時間の問題の様ですわね。フフ。デモテープを送り込んだ甲斐がありましたわ」
「オーホッホッホ!」

「戯言はそれで終わりか?」
『せっかく可愛い給仕服着てるのに。中身がそれじゃあ台無しだよね』

「な――!?」
「――に!?」
 そこにいたのは間違いなく御神と伊邪那美の2人組だった。場所は他でもない。例のメイド喫茶だ。

「な、何をおっしゃってるのかしら?」
「意味が分かりませんわ。あなた方は先程のお客様じゃなくって?」

「いや、もう今の会話。証拠としてバッチリ録音したから」
「うむ。既にST-00342がH.O.P.E.に応援要請を兼ねて送信した。時期に援軍がここに摘発しに来るだろう」
 次に出てきたのは御園とエスティ。それを見兼ねた――メイド・シスターズ――の2人組は……。

「そうかい。それじゃあ仕方がない! 我等がメイド・シスターズの本領発揮といこうじゃないの!」
「――フフ。もう後悔しても遅いわよ」
 援軍が来ると言われた2人組――メイド・シスターズ――は俄然強気だった。いきなり戦闘態勢。
 しかしこちら側も既に駒は出揃っていた。

「今日もアキバの街を守る為、芳しく華麗に登場! インセンシスナイン! ブレイドムスク!」
 本日2度目のリンクをしたシャンタルとスケジローが戦闘の前線で攻撃面を。
「全く。愚神や従魔よりも始末に負えない。こんな弱小ヴィランがあんなデモテープを送り込んだなんて……未だに信じたくないですよ」
「……エステル。早速リンクよ」
 そんな洒落込んだ台詞と共に共鳴したエステルと泥眼は戦闘の前線で壁役兼治療役。
「じゃ、弱小ヴィランですって――!?」
「――なめた真似を……少し痛い目にあって貰わなくっちゃ気が済まない様ね」
 いきなりメイド喫茶内のアジトで例のデモテープを送り込んだ犯人グループ――メイド・シスターズ――のライヴスを介した摘発の応酬が開始された。

 御神と伊邪那美、御園とエスティは出入り口を封鎖し1人の脱走者が出ない様に待機。何かあったら強襲して捕縛。後方で前衛の支援を行う。
 だが、首謀者はあくまでこの2人だけだった様で――心配は皆無。
「暗いナ災! ライヴスブロー!」
 珍しくなまりの無い抑揚のある正しい日本語カタカナ表記でライヴスブローをかますシャンタルとスケジロー。あくまで技の名称だったが。これも共鳴効果か?
 しかしその威力は絶大で、事前にリンクコントロールを行っていた為か安定感抜群。グリムリーパーの大鎌を片手に相手へと容赦なく振り回して斬り付ける!
「クッ!」
 瞬間、相手が一歩退いた。その隙を見逃さずに第2撃目へと突入。相手の弱小ヴィラン――メイド・シスターズ――はそれをかわすので精一杯と言った感じだ。
 さすがは弱小ヴィラン。H.O.P.E.に犯行声明デモテープを送り込んだだけの事はある。ケンカを売っただけの事はある。しかし相手が悪かった。運が無かった。
 井の中の蛙とはこの事か。シャンタル&スケジローの共鳴一撃必殺技に全くついていけていない。
 よくこんなんで世界を席巻しよう等と考え抜いたものだ。しかもたった2人きりで。ある意味賛辞を送りたい。無論、メイドの土産に。なんつって。
「やはり悪戯よりも性質が悪かったな」
『ああ……。あの可愛い給仕服。ドンドンズタボロになっていくな。もったいない』
 この戦闘が終わった後、こっそりとそれを拝借しようかと黙考していた伊邪那美は思わず神に誓って落胆を示す。
「相手がメイドさんだったとはね」
「それはともかく――メイド・シスターズ――か、そのネーミングセンスに齟齬を感じる」
 最早逃げ道は完全に封鎖された。
 敵と味方が殺り合ってる中、逃げ道を封鎖した御園とエスティも言いたい放題だ。
 結局、プリセンサーが上手く反応をしなかったのも、ドロップゾーンの形成やライヴスのオーラを感知しなかったのもこの2人が犯人だったからに他ならない。
 無論、従魔の存在はいなかった。従える魔物は存在しなかったのだ。自信に満ち溢れすぎた闘志だ。見上げた根性だ。

 そしてそうこうしている内に援軍がやって来て現場は一網打尽になった。同時にメイド・シスターズの栄光もそこで潰えたのだった。


 色んな意味でイタイエンディングを迎える事になった4人のエージェント達。例のメイドカフェは近日中に摘発される事となり、怪しいものが無いかバックに強大な裏組織が動いていないかを徹底的に調べ上げる始末となった。
 まあ、それも杞憂に終わるだろう。指名手配犯としても名乗りを挙げていない弱小ヴィラン。メイド・シスターズは相手にされていないどころかかえって厄介払いな敵さんとしてエンカウントバトルしたのだから。ラスボスを倒したエンディングテロップを流す気にもなれない。
『ちょっと、やり過ぎなんじゃないかな?』
「いや、悪戯と見逃すには相手の方が少々やり過ぎだ。確りと油を搾って貰った方が奴らの為だ」
『でも何で、あのメイドさん達……何て言ったっけ? まあいいや。メイドさんが犯人だと分かったの?』
「ホラ、客が俺達以外にいなかっただろ? いくら人気のない店だからと言ってこの地域で客足が遠のくとは思わなかったから」
『なるほどね』
「要するに奴が言っていた不審な宗教団体の勧誘云々は全てデタラメ。ガセだった訳だ。まあ、その方があの現場で一網打尽にするにはちょうど良かったんだがな。全く、灯台下暗しと言うか井の中の蛙と言うか……」
 思わず溜め息を吐く御神と伊邪那美。結局のところ徒労で終わったのが良かったのか? それとも完全限界突破で期待外れだったのか?
 そのどちらとも判別しにくかった。

「でも、意外とこの街って面白い所が多いですね。完全に理解する知識を習得するには躊躇しますが……」
「……エステル。ちょっと心配」
 エステルと泥眼はいつもの通り。マイペースだ。
 しかし2人の活躍なくして今回の事件は解決しなかった――のかもしれない。
「さて、これからどうする?」
「うーん。インディーズアイドル」
「賛成。でも先輩のレポートの手伝いはどうする? 制服姿だし」
「……エステル。やっぱりちょっと心配」

「あの制服は可愛かったけど……やっぱりこの街はもうお腹一杯かな?」
「……御園、あの通りの反対側の……あの制服は更に似合うと思うのだがチャレンジをしないか?」
 御園はともかくエスティは何か良からぬ事を考えてるらしかった。日本の工作技術に高い敬意を払っているサイボーグにも良く分からない事が多い。その思考に齟齬を感じる。

「さ定、此れ枯だヨ! 不味何処にヨロうかな?」
「戦闘後にこのストリートはキツイで……ユー元気過ぎやで」
 今回の任務の最前線を戦ったシャンタルとスケジローは何やら揉めていた。
 本日、2度も共鳴、リンクを果たした彼女等だったがこのままだと3度目の共鳴、リンクに入りかねない。元気に越した事はないが。

 こうして電気街。日本の首都東京のエデンの園。秋葉原の平和は誰の目にも止まる事無くいつの間にか静かに保たれたのであった。(了)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • 悲劇のヒロイン
    シャンタル レスキュールaa1493
    人間|16才|女性|防御
  • 八面六臂
    スケジローaa1493hero001
    英雄|59才|?|ブレ
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