本部

年1度の想い

紅玉

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2016/01/20 19:53

掲示板

オープニング

●想い人を求め
 雪で真っ白になった街。
 行き交う人々は防寒具を身に纏い、吐き出される息は白い煙のようだ。
「今年も見つからないの?」
 こんな真冬に白いワンピースしか身に纏ってない少女は空を見上げた。
 冷たい風は少女の白い髪とワンピースの裾を靡かせた。
「永遠に見つけさせはしない。Queen of the Night(夜の女王)」
 サングラスを掛けた女は少女に言った。
「何故、その名を……?」
「貴女を狙っているからよ。月下美人」
 女は毛皮のコートの影から槍を飛ばした。
「……!」
 少女はワンピースの裾を翻し後ろに飛んだ。
「あぁ、間違えた。正確には貴女の”ペット”にな」
「アレはペットではないの」
 少女は小さく首を横に振った。
「問答無用っ!ゆけっ!」
 女が声を上げると、スーツを着た10人の男女が少女に向けて駈け出した。
「来て……っ!」
 月下美人が両手を胸元で組み祈った。
「そう、それでいい」
 女は口元を吊り上げ頷いた。
 空からは黒い大きなコウモリが降りてきた。
「捕まえな!」
 女は声を上げる。
「させない」
 月下美人はワンピースの裾を翻すと、金色の粉が周囲に舞う。
「主をねらえ!」
「はっ!」
 スーツを着た男女がコウモリの間を駆け抜ける。

「つるの女王様、これ以上は……」
 スーツを着た男はつるの女王を見上げた。
「そうだね。H.O.P.E.からエージェント達を派遣しているだろうしな。月下、またお会いしよう」
 つるの女王は毛皮のコートを翻し、月下美人に背を向けた。
「二度と会いたくない……」
 右手と左足を失った月下美人は小さく呟くが、冷たい風音によってかき消された。

●緊急事態
『街の交差点にて戦闘が発生しました。手の空いているエージェントは至急会議室へ』
 H.O.P.E.支部内で緊急を知らせる放送が響いた。
「あぁ! と、とりあえず皆様! 緊急事態ですわ」
 酷く慌てている様子のティリアが会議室に入るなりそう叫んだ。
「ヴィランが愚神を! 従魔がヴィランを!」
「落ち着けティリア。とりあえず俺から説明する」
 圓 冥人(az0039)が珍しく落ち着いた様子で言った。
「面倒な事が起きた。場所は街中の交差点で、巨大なコウモリの従魔が現れて人を襲っているのだが……交差点の中央に近づいてくる一般人だけを襲っているそうだね」
 冥人はエージェント達を見回した。
「コウモリが現れる前に戦闘があったらしい。確証が無いのは、その状況を見た者が居ないのと交差点が酷い状況で戦闘があったと予測されたよ。人命第一で従魔の討伐に向かって欲しい。宜しく頼む」

解説

・登場人物
ティリア・マーティス(29)独身。
最近ドジっ子だと判明された。

圓 冥人
能力者。今回は真面目。

●PC情報
・敵
巨大コウモリ型の従魔20匹

・場所
イギリスにある街中の交差点。昼間。
天気は雪。地面には雪が積もっている。


●PL情報
・登場人物
つるの女王:真田・雪(23歳)
ヴィラン組織「Clematis」の社長の娘。

愚神 月下美人
ケントゥリオ級。金の目以外は全て白のアルビノの少女。
白いワンピースを着ている。
戦闘開始時は負傷しています。
・女王の花粉
広範囲にBS麻痺を付与する攻撃。
・女王の盾
白い花弁で盾を作る。
攻撃されたら【愚神:柊】と【従魔:ケルピー】が助けに来ます。

従魔 天鼠(てんそ)20匹
ミーレス級。全長2mもあるコウモリ。
吸血して回復したり、滑空して攻撃を繰り出します。
知性はケモノ並。

リプレイ

●それぞれの思惑
「ヴィランと愚神で争ってた? ……ふーん」
 志賀谷 京子(aa0150)はティリアの「ヴィランが愚神を!」と言ったのが気になっている様だ。
「京子、気になることでも?」
 アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)は京子の顔を見つめた。
「ん、もうヴィランは撤退してしまったんでしょ? 手際が良いなって」
 アリッサの言葉に肩を竦めながら京子は答えた。
「再度干渉してくるかもしれませんね。警戒しましょう」
「うん、気にしておこうか、アリッサ」
 京子はアリッサの言葉に頷いた。

「誰だよ、真昼間の町の交差点で戦闘した上に従魔を放置した奴は」
 呆れた表情でカトレヤ シェーン(aa0218)はため息を吐いた。
「迷惑じゃのう」
 カトレヤの言葉に同意するように王 紅花(aa0218hero001)は頷く。
「ま、これから俺達も同じ所で戦闘することになるんだろうけどな」
 と、笑いながらカトレヤは言う。
「大迷惑じゃ!」
 カトレヤの言葉に紅花は声を上げた。

(愚神とヴィランがねぇ……三つ巴なんて面倒な事にはなりたくないわぁ。そんな余力あるかも分からないし……先に苦情の原因の排除をしてしまわないとねぇ……)
 榊原・沙耶(aa1188)は微笑みを浮かべたまま考えていた。
 しかし、誰もが気になっているのはティリアの酷い慌てようだった。
 その時に口走った言葉をエージェント達は気になっていたのだ。
「ティリアさん、先ほど言ってた言葉の意味を教えてくれませんか?」
 石井 菊次郎(aa0866)はティリアが落ち着いた様子を見て声を掛けた。
「その話は私より……ふがっ!?」
 ティリアの口は圓 冥人(az0039)の手で塞がれた。
「はい、資料」
 菊次郎の顔に押し付けるように冥人は資料を渡した。
「ヴィラン組織Clematis……?」
 沙耶は資料の一枚目に書かれている文字を読んだ。
「……イギリス国内で、従魔収集を行って、いる組織……」
 煤原 燃衣(aa2271)は組織活動の部分を読み上げた。
「ティリア……あら?」
 沙耶が顔を上げると会議室内にティリアは居なかった。
「ティリアは『忙しい』と言って慌てて出て行ったぞ」
 カトレヤはティリアを探している様子の沙耶に言った。
「現段階では相手の能力等は分からないと思います。今は従魔を倒し、一般人の救出に向かいましょう」
 九字原 昂(aa0919)は皆にそう言った。
「そうだ、圓。中央には近付かないでくれよな」
「……言われなくとも」
 カトレヤの言葉に冥人は答えた。
 エージェント達は素早く準備を終え現場に向かった。

●天鼠
 雪降る交差点、その中央には黒い翼を広げ天鼠達が舞う。
「やられてそこらへんに転がってるんじゃないかのう」
 紅花は雪が降る中を歩く。
 人が襲われている情報を基にゆっくりと中央へ。
(血痕はあるが……誰も倒れてはおらぬようだな)
 カトレヤに気付いた天鼠は滑空してくる。
「効かないな」
 パワードーピングで防御力を上げているカトレヤには、腕に小さな傷一つしか出来なかった。
「はっ!」
 カトレヤは火之迦具鎚で天鼠の喉を突いた。
(どういう事だ?)
 後退しながらカトレヤは先ほどの光景を思い出す。
 大量の血痕、一般人の姿が見当たらない、嫌な言葉がカトレヤの脳裏によぎる。
 ”ドロップゾーン”
 いや、愚神が居るとは決まったワケではない、と思いカトレヤは首を小さく横に振った。

「あ…あんなに沢山のコウモリ……ッ! ……あれが動き出したら……」
 交差点の中央に居る天鼠の群れを見て燃衣の顔は青ざめている。
「謎が深まる……ばかり、だな……だが……既に被害はある。ヤツらが「敵」である以上……は、だ……」
 ネイ=カースド(aa2271hero001)はライトブラスターの銃口を天鼠に向かって撃つ。
 弾丸は天鼠の羽に当たると、天鼠達はネイの方を見て牙をむき出しにした。
「……殺してやる」
 ネイに向かって滑空する天鼠を見て呟いた。
 ザグナルを片手で持ちネイは怒涛乱舞で天鼠を攻撃した。
 しかし、攻撃してきた天鼠はたったの3匹。
 ネイは交差点の中央に視線を向けた。
「正直、害獣駆除の要請で手一杯なのよねぇ。親は譲ってあげるから、出てきてくれないかしらぁ」
 と、沙耶は大きな声で言った。
 もし、ヴィランが諦めていないのであればカマを掛ければ出てくるのでは? と沙耶は思って言った言葉だ。
 イメージプロジェクターで身を包んでいる燃衣とカトレヤは息を潜めた。
 しかし、聞こえるのは風と天鼠が羽ばたく音だけ。
「数を減らすぞ」
 カトレヤはフェイルノートに矢をつがえ引いた。
「そうしないと中央に近付けません」
 アリッサは16式60mm携行型速射砲を構えトリガーを引き天鼠に攻撃をする。
「視界が複数あるのは慣れないなぁ」
 鷹の目で交差点内を見回す昂は呟いた。
 遠距離武器で惹きつけては近接武器で攻撃する、ヒットアンドウェイを繰り返していた。

●Queen of the Night
 天鼠達が他のエージェント達に気を取られている時……
 一つの影が倒れているアルビノの少女に近づいた。
「何やら大変お困りの様ですが、お話をさせて頂け無いでしょうか? 御身と彼等の助けになるかも知れません」
 菊次郎は倒れているアルビノの少女に一礼をした。
「……そう、能力者……」
 アルビノの少女は目を閉じ少し考える素振りをした。
「あと、話し難いので共鳴を解除してもよろしいでしょうか?」
「……そちらから手を出さずに、ここに来ているの、だから」
 菊次郎の問いにアルビノの少女は頷いた。
「俺は石井と申します、これはテミス。御身の御名を宜しければ……」
 アルビノの少女は菊次郎とテミス(aa0866hero001)の2人を見る。
「私は月下美人です」
 月下美人は立ち上がり左手でワンピースの裾を持ちお辞儀をした。
「でも、酷いわ」
「コウモリ達を攻撃した事でしょうか?」
「ええ」
 菊次郎の言葉に月下美人は頷く。
「攻撃を止めていただけるのであれば、取引をしませんか?」
「これ以上、私から、何を奪う……と?」
 月下美人は失った部位を見た。
「貴女を襲った者たちの事」
「貴殿らではない、と? 感じたの。そのテミスとやらと同じ気配を……それでも、違うと言うの?」
 月下美人の瞳孔が動く。
「はい、違います」
 菊次郎は月下美人を真っ直ぐに見つめた。
「なら、貴殿を信じましょう……」
 月下美人が唇を動かすが、菊次郎達には何を言っているのかは分からない。

 天鼠達はエージェント達の傍から離れるように飛翔した。
「……愚神……ッ……!」
 ネイが声を上げる。
 他のエージェント達はネイを見つめる方向に視線を向けた。
 金の目、髪と肌は雪の様に白く細いまるで蝋人形の様な愚神「月下美人」はエージェント達を見た。
「ずいぶんと酷い怪我をしてるみたいだけど退かないの?」
 京子は月下美人の欠損した部位を見て言った。
「時間が許す限り……待つの……」
「テメェ……は、何者……だ?」
 ネイの問いに月下美人は無言で首を横に振った。
「どういう事なの?」
 沙耶は眉間に皺を寄せた。
「分からない、それだけ」
「……そのケガは?誰にやられた?」
 月下美人は瞼を閉じた。
「時間が無いけど……アナタ達と似た人達」
 月下美人は小さくため息を吐いた。
「あのブタ鼻どもは……お前の愛玩動物か? 何故テメェが狙われた?」
 ネイの質問は続く。
「私の象徴」
「象徴……貴女の名前と何か関係が?」
 菊次郎の言葉に月下美人は「分からない」と答えた。
「俺の瞳を持つ愚神を見た事が無いか?」
 月下美人は菊次郎の瞳を見つめる。
「残念ながら……」
 月下美人は首を横に振った。
「……一応聞くけど、どうしてヴィランと戦ってたの?」
「向こうから、攻撃をしてきたの」
 京子の問いに月下美人は答えた。
「ヴィランがわざわざ愚神と戦うだなんて怪しいしね。ヴィランの狙いを知ってるなら教えてほしいな。貴方にとっても利益になるかもしれないし」
「話すと長くなるの……でも、時間が」
 その瞬間、月下美人の頬を何かが掠めた。
 白い肌に赤い滴が伝う。
「はっ!」
 頬に走る痛みを感じると同時に、月下美人のワンピースの中から金色に輝く粉が舞う。
「離れろっ!」
 金色の粉を見たエージェント達は素早く後退した。

「何が……ぐっ!」
 遠くから様子を見ていた昴の背中に激痛が走る。
「ふふ、手間が省けたな」
 昴の背後から女の声がする。
「さっき……まで……居なかったのに……」
「あぁ、さっき地下街から出てきたところで、な!」
 ズッと音と共に昴の背中に激痛が走る。
「ど、どうし……て?」
「もちろん、死体でも良いから従魔を得るためだ。まだ余裕そうだな」
 女は喉で笑いながら昴を地面に叩きつけた。
「……っ!」
「そこのサンプルを持って行け」
 女は声を上げる。
「ぐっ……」
 昴の背中から流れる血が雪を赤く染めていく。
「ほーら、騎士様がきた」
 女はそう言うと昴の背中を蹴った。
「このっ!」
 痛む背中を庇いながら昴が仰向けになった瞬間、体は宙に浮き壁に打ち付けられていた。
「ぐっ……何……を……」
「標的、撲滅」
 鈴の音を転がすような少女の声がした。
「機動、削ぐ」
 昴の霞んでゆく視界の隅で水色の馬が見えた。
 それは昴が意識を失う前に見たモノだった。

「くっ……」
 痺れて動かない体を必死に動かそうとネイはもがく。
「大丈夫? 今、治すからね」
 沙耶はネイにクリアレイを掛けた。
「……殺すっ!」
 と、叫んでネイは交差点の中央に視線を向けた。
「止めておいた方がいいよ」
 月下美人が居た交差点の中央を覆うように金色の粉が舞っている。
「くそっ!」
 カトレヤは声を上げた。
 そこへ、水色の馬に乗った少女が現れた。
「誰が、やったの」
 緑色の髪、着物に赤い瞳はまるで柊の様だ。
「私だ」
 3人は声がした方に視線を向けた。
 サングラスを掛け、毛皮のコートで身を包んでいる女がほほ笑みながら立っていた。
「な、何かよく分からないけど、みんなぶっ飛ばせばいいのね!?」
 小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)は水色の馬とサングラスの女を交互に見た。
「小鳥遊ちゃん」
 沙耶は沙羅の肩に手を置いて首を横に振った。
「まず、貴女は何者なの?」
 ライヴスフィールドを展開させた沙耶は女に問う。
「顔見知りは居ないようだな。私はミレーレ、とでも名乗っておこう」
 ミレーレは肩を竦めた。
「私の考えですと、貴女は研究目的で襲ったのでは?」
「ふふ、ははっ……あははははっ! 貴女も同族というワケか?」
 笑い声を上げるミレーレは、鋭い目付きで沙耶を睨んだ。
 いつでも攻撃出来る様にカトレヤは隙を窺っている。
「違うに決まっているじゃないの」
 冷やかな口調で沙耶は答える。
「ま、良い。一つお知らせしておこう。君たちの仲間を一人処理させてもらった」
「なっ!?」
 カトレヤは驚きの声を上げミレーレを睨む。
 エージェント達とミレーレの間に銃弾が撃ち込まれる。
「雪、嘘は、ダメ」
「あぁ、静音か」
 雪は静華を見て別の名前を口にした瞬間、静華の表情が変わった。
「殲滅……」
 少女が水色の馬を操り雪へ向かって走った。
「あぁ、柊か……料理してやる」
 雪は大きく後ろに跳躍した。
 ふと、燃衣は静華と柊を見比べた。
(あの柊って子に似ている。けど、言ったら失礼だろうな……)
 と、燃衣が思っていると京子の悲鳴が交差点内に響き渡った。
「とりあえず、私は怪我をしている仲間を探すよ」
「なら、俺と燃衣は京子の方に行くぞ」
 沙耶の言葉にカトレヤは頷き、二手に分かれて駈け出した。

「う……うごけ……」
 京子は痺れて動けない体を動かそうともがいていた。
 すると、風が京子を囲むように吹く。
「たすか……!?」
 仲間が助けに来たのかと思い顔を上げた瞬間、視界に入ってきたのは水色の馬。
(新手の従魔!?)
 水色の馬型従魔の後ろから黒いスーツを着た男女が走ってくる。
(ヴィラン! やっぱりいたのね。渡さない……)
 未だ痺れている体を起こそうと京子は奮闘するが、片手を動かすのがやっとだ。
「っ!」
 使い魔力によって作り出した閃光弾を京子は手首のスナップを効かせ投げた。
「うわっ!」
「目がっ!」
 ヴィランに対して目潰しの効果はあったが――……
「ヒヒィーン!」
 水色の馬が激しく鼻を鳴らしながら嘶いた。
「ぐっ!」
 水色の馬は下半身の尾を振るい、京子を吹き飛ばした。
 衝撃は感じるが、体が痺れていて痛みは感じない。
「はぁ……はぁ……」
 京子の傷口から血が流れ雪を赤く染め上げる。
 ヴィランから逃げるように水色の馬は跳躍し金色の粉の中へ消えて行った。
 ヴィラン達は京子を指さして何かをはなしている様子だ。
 複数の銃口が京子の方へ向けられる。
「キャーッ!」
 銃口から煙が上がると同時に京子の脚に痛みが走った。
 血が流れる。
 赤い、と小さく呟き京子は意識を手放した。
「おまえらぁぁぁ!」
 カトレヤが火之迦具鎚をヴィラン達に向けて振るう。
 白い、白い世界に火花が散った。
 カトレヤの火之迦具鎚がヴィランの盾で弾かれた。
「……ひ、引こう」
 燃衣は周囲に従魔が居ないのを確認し、カトレヤに言った。
 交戦はしない、それはエージェント達が決めた事だ。
 カトレヤは踵を返しその場から離れた。

●また来年
 ふと、エージェント達は交差点の中央に視線を向け、金色の粉が無くなっているのに気が付いた。
「傷が深くて……」
 血まみれの昴を見て沙羅は首を横に振った。
 ケアレイは天鼠達と交戦して傷ついた仲間に使い尽してしまった。
「止血だけはするのよ」
 沙耶は可能な限りの応急処置を施した。
「うぅっ……」
 痛みに耐えながら昴は立ち上がろうとした。
「じっとしてなさいよ!」
 沙羅は昴の肩を掴んだ。
「で、でも……」
 浅く息をしながら昴は言った瞬間。
「やめて、柊、ケルピー」
 月下美人の声が交差点内に響いた。
 交戦していた柊とケルピーは手を止めた。
(支部に連絡したけど、ヴィランは……?)
 菊次郎は去るケルピーの後ろ姿を見ていた。
「月下美人」
 菊次郎は月下美人の元へと駈け出した。
 光る月下美人は名を呼んでも答えなかった。
「どういう事……?」
「お眠りになりました」
 柊が菊次郎の問いに答えた。
「……どういう……事だ?」
 ネイが柊を睨む。
「知っている、でしょ?」
「月下美人、年に1度に花を咲かせる」
 と、菊次郎は言った。
「はい、来年までこのまま目覚めません」
 柊はケルピーの首を撫でた。
「で? ここで何をしようとしていた? 何が目的だった?」
「分かりません。ただ……女王は、命を受けていた」
 ネイの問いに柊は答える。
「命令?」
「私は、守護者。命の事は知りません」
 柊は菊次郎を見た。
「……で? テメェらは……人の……「敵」……なのか?」
「その、質問は理解出来ません。では、何故あなた達は私達を殺すの?」
 柊の問いにエージェント達は口を噤んだ。
「……さよなら、能力者達。次に会う時は……」
 柊は月下美人をケルピーに乗せ去った。

「重傷者2名……と」
 ティリアが報告書に書き込む。
「そういえば、あのヴィランは”顔見知りが居ない”と言ってたが……何かあったのか?」
 カトレヤがティリアに問う。
「ええ、以前にミレーレという偽名を使い従魔の討伐依頼を頼んできたのですわ」
「……そ、それと、弩さんを、知っている……か、感じ……」
 ヴィランとの会話を思い出しながら燃衣は言った。
「……ごめん、クラト、守るため、話せない」
 と、言って静華は会議室の椅子に座って眠っている冥人の手を握った。
「でも、知っている風よね」
 沙耶が静華に向けて言う。
「詳しくは、知らない。でも、雪は……私を”静音”と呼ぶ」
「ミレーレって人の本名が雪?」
 沙耶の問いに静華は頷く。
「そう、それじゃ”静音”と呼ばれている理由はしっているの?」
「知らない」
 沙耶の言葉に静華は首を横に振る。
「そういや、圓が途中で居なくなったな」
 寝ている冥人にカトレヤは視線を向けた。
「ティリアさん。ヴィラン組織の摘発をしたいのですが」
 と、菊次郎はティリアに言った。
「ごめんなさい、色々と組織について調べてはいるのだけれども拠点を見つからないのですわ」
 ティリアは首を横に振った。
「もし、情報が入り次第に依頼が入ると思いますので……」
 エージェント達に説明をするティリアの目から涙が落ちる。
 従魔の死体はヴィランに奪われ、重傷者2名という結果に一番悔しいのはエージェント達。
 そして、ティリアは重傷者を出した事実に己の不甲斐無さと無力さで涙を流す。
 愚神「月下美人」の謎、ヴィラン組織Clematisの目的、他にもまだ気になりつつも依頼は完了した。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

  • 双頭の鶇・
    志賀谷 京子aa0150
  • 陽・
    九字原 昂aa0919

参加者

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
    機械|27才|女性|生命
  • 暁光の鷹
    王 紅花aa0218hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
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