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れっつ! ぱじゃまぱーてぃ!!
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/01/08 23:54:28 -
相談卓(女子)
最終発言2016/01/10 14:24:16 -
相談卓(男子)
最終発言2016/01/09 19:27:13
オープニング
正月も過ぎた頃、ふと誰かがこう言った。
年末年始はのんびり過ごしたけど、そう言えば、正月会ってない人とかもいたし、新年会を兼ねてどこかに遊びに行かないか。
すると、誰かが有志で新年会は開いているし、単純に飲み食いではつまらないのではないかと言い出す。
ああでもないこうでもないと意見を出したが、中々意見が纏まらない。
そうこうしている内に、H.O.P.E.から連休の間、泊りがけの研修のお知らせがあった。
頭を悩ませていた彼らは、ふと気づく。
泊りがけの研修の夜、皆で交流を深めてはどうだろうか、と。
日中は研修だろうし、研修であるなら羽目を外し過ぎることは出来ないだろう。
が、それで引き下がるのは、勿体無い。
研修に参加するエージェントと効率よく交流出来る筈だ。
とは言え、研修でもある……と考えながらお知らせに目を通すと、1日目は座学研修、2日目は早過ぎない午前の時間にミーティングがあり、研修は終了だ。
夜更かしし過ぎず、また、騒ぎ過ぎなければ、研修の場となる宿泊施設は貸し切りのようだし、交流出来るのではないか。
男女別部屋にはなるだろうが、たまには同性同士の会話だって悪くないだろう。
……『あなた』は、その提案に賛成した1人。
研修後に迎えた夜、その部屋で仲良くしよう。
夜更かしし過ぎと騒ぎ過ぎには注意しなければいけないけど。
解説
●状況
・部屋は男女別(本来の性別で区分されます)、全員同じ部屋とします。
・日系ホテルなので和室ですが、台湾です。
・食事お風呂完了済(ANOから覗きはされてません。やったね!)
・パジャマ指定可能(ホテル内浴衣なし・大人過ぎるものはNG)
●出来ること
・男女別、同性同士で、寝る前までそれぞれ楽しく過ごす。
午前0時で就寝します。
騒ぎ過ぎると、聞きつけた職員が強制的に消灯となります。
お喋りやお茶会(飲み物菓子類は売店で購入したとします)、軽い枕投げ(ガチはバレます)なら問題なく可能です。
描写確保の観点より、お喋りメインの場合は話題は2つまで。軽い枕投げ等何か違うことをやる場合は1つまでとしてください。
●お喋りの話題について
・公序良俗に反するものや「あ、大人ですね(照)」というものでなければ大体可能ですが、交流重視のもの、皆で楽しくなれる話題としてください。
一応、こんな感じのどうでしょうと投げておきます。
・新年はどう過ごした? バレンタインどうしよう?という時事ネタ(バレンタインは日本と欧米では違うので、女子限定の話題ではないです)
・コイバナ
・お洒落、美容・身体維持関連(鍛錬関係もこちらへ分類)
・エージェントしてない日、何してる?という素朴な疑問関連
●NPC情報
剣崎高音、夜神十架
プレイングで指定があった場合のみ、女性側の部屋にて一緒に宿泊します。
指定がなければ登場しません。
●注意・補足事項
・シナリオの趣旨として、英雄お留守番扱いNGです。また、異性の能力者の幻想蝶の中にずっといることもご遠慮ください。
・公認されていない基礎設定は暈される可能性があります。
・全員と平等に交流となりますので、誰かとだけ限定的に交流ということは出来ません。
・既に部屋に引き上げていることより、抜け出して、男性側と落ち合えません。部屋の中の人と部屋の中で仲良くしましょう。
・貸し切りの宿泊施設ですが、TPO注意。
リプレイ
●同室のお喋り
「これで酒があれば良い旅行なんだがな」
「研修ですからね、仕方ないですよ」
填島 真次(aa0047)は苦笑を浮かべながら、レティシア ブランシェ(aa0626hero001)へお茶を差し出す。
「食事の時、ビールがちょっと出ましたけど、部屋は仕方ないかと。部屋割りの年齢はバラバラですし」
「あー……、それはあるか」
秋原 仁希(aa2835)もお茶に口をつけつつ言えば、レティシアも大部屋で寝るゼノビア オルコット(aa0626)も年齢層バラバラで楽しみと笑っていたことを思い出す。
「エコーが大人しくしているといいんですが」
前職でもこうした研修はあった真次も泊り掛けの研修は久しいらしい。
というのも、エコー(aa0047hero001)が気掛かりで参加を見送っていたらしく。
「妙な物を拾い食いしたりしなければいいのですけど」
「こっちはその心配はないが、疲れてるのに夜更かししないか心配ではある」
真次が「過保護かもしれませんが」と前置きして心配を口にするも、レティシアも別の方向で心配らしく、軽く肩を竦めた。
「拾い、食い……?」
「……先月の忘年会の鍋の具を選定するのに苦労した私の話をいたしましょう」
「僕達と同日の忘年会の話、ですよね?」
仁希が驚いていると、真次は「あの子は常識の外にいる子です」と重々しい口調でそう言った。
鍋の具選定で苦労した真次と聞き、離戸 薫(aa0416)が目を瞬かせる。
「……凄い、です、ね……」
中城 凱(aa0406)が、真次の挙げる食材を聞くや否や顔を引き攣らせた。
自分も自信ないが、薫も彼の英雄の美森 あやか(aa0416hero001)も多分アウトだろう。自分の英雄の礼野 智美(aa0406hero001)については、アウトじゃないかもしれないが……。
「皆さんにくれぐれもよろしくお願いしたので、大丈夫だとは思うのですが」
真次は黒のスウェット姿である為、部屋から出歩くのは問題ないだろうが、女性陣はそうではないだろうから様子を見に行けない。
「修学旅行とかだと、そういうのも楽しいってなるでしょうけど……」
「智美なんかは面倒だからこっちの部屋にいたいとか言ってましたけど、着替えとかで俺達が困りますしね」
薫が苦笑を浮かべると、隣の凱が英雄とのやり取りをそのように話す。
外見性別が男性でも、実際の性別がそうでなければ、本人以外の周囲が気にするのである。
「自分的には助かるかな」
「私も同意見です」
仁希がほっとしたように言うと、真次も苦笑を浮かべる。
例えば、仁希のような紳士パジャマ(近所の百貨店で買った無難な色とデザインだ)を着用するとしても、その過程で服は脱ぐ。
男子下着を着用した男の身体なら話は別だが、そうではないなら、そういう意識にはなれない。
「ま、折角だし、聞いてみたいこと聞くか」
レティシアは、自分だけが英雄だからと皆を見る。
「英雄と呼ばれる俺からしてみると不思議なんだが、エージェントになろうと思った理由とか……聞いても良いか? 何か事情でもあったのか?」
レティシアはネイビーブルーと黒のスウェットを指し示し、ゼノビアがわざわざこれを買ってきたりした話を零すと、彼女とは違うエージェント事情を知りたいと言った。
「エコーが心配で中々眠れそうにないですし、いいですよ」
「自分も問題ないです」
真次に続き、仁希が応じる姿勢。
「俺達も大丈夫ですよ」
「折角ですしね」
実は中学のジャージ姿の凱と薫も了承。
こうして、エージェント同士を知る会話が始まった。
●華やぎの時間の始まり
「高音……いい仕事してるわね」
パジャマ姿の女の子が一杯と歓喜している風深 櫻子(aa1704)は、剣崎高音(az0014)の趣味を褒めた。
櫻子の視線の先には、白の可愛らしいウサギパーカーパジャマの夜神十架(az0014hero001)が映っている。
「誰だ。サクラが喜びそうなこと考えたのは……」
「細かいこと言わないでよ、シンシア。こんなことなら、ふつーのピンクいパジャマじゃなくて、もっと変わっ……ん、んんん?」
シンシア リリエンソール(aa1704hero001)の溜息に反論した櫻子は着替え終わったシンシアを見て、時間を停める。
その装いは、クリーム色の着ぐるみ猫パジャマだ。
「シンシアさんや、それは何かね?」
「いつも家で使っている物を壁の古釘に引っかけてしまったから調達したのだが……?」
古釘など放置するなと主張しようとして、シンシアは櫻子のガン見に思わずたじろぐ。
「そこまでして私を萌えさせようというの……? でもそうはいかない!! ロリコンは遊びじゃないのよ!」
「こいつ殴っていいか?」
「その辺りにしましょう? 職員さんに怒られてしまうわ」
櫻子を指し示したシンシアへ、N・K(aa0885hero001)がくすくす笑って嗜めると、シンシアも引き下がる。
「私達も猫パジャマで、ちょっと照れちゃうかなって思ったけれど……」
「にゃんこ仲間がいたね! 可愛いー」
早瀬 鈴音(aa0885)が白猫のN・Kとは色違いの黒猫パジャマで加わると、猫耳フードが楽しげに揺れる。
「夜寝る前ですから、カフェインのないお茶で助かります」
高音が鈴音とN・Kが用意してくれたお茶を手に微笑む。
彼女はごくシンプルな青いパジャマで、飾り気は十架に集中させているのが伺える。
「咲雪、零さないようにね」
「……ん」
アリス(aa0040hero001)が、佐藤 咲雪(aa0040)へカップを渡す。
面倒くさがりの咲雪は普段下着の上からTシャツ1枚羽織る程度で、超ずぼらに寝ているが、流石に泊り掛けの研修では同室への配慮が必要とアリスに説かれ、仕方なく中学のジャージを持ってきたらしい。
「エコー様も飲みます?」
「いいなら、飲む」
アリスが話を向けると、エコーはこくりと頷いた。
エコーは真次からピンクに白の水玉模様のパジャマを用意して貰ったとのことで、それを着ている。
鈴音とN・Kに続き、エコーも持ってきたお菓子もテーブルの上に広げると、あやかも「薫さんからどうぞって」と紅茶クッキーをテーブルに乗せた。
「私は食べたり寝たりする必要がないのですが、こういう交流もいいですね」
アリスが整いつつある状況に小さく頷く。
無機生命体のアリスは英雄であるかどうか関係なく寝食が必要ない為、パジャマも持っておらず紺にサクラを散らした作務衣を買ってきた位だ、こういう交流は新鮮に感じるのだろう。
「真次がいない所で何かするのは、珍しい。エコー、ちょっと楽しい」
『女の子同士楽しみたいですね』
エコーへその文字を記したゼノビアが微笑む。
この研修も受けたくて、レティシアを無理無理に引っ張ってきたのだ。
(こんな機会滅多にないもの。出来れば、お友達作りたいし、皆とお話したい……)
座学のみであったとは言え、今日はずっと研修だったから、ゼノビアは正直疲れを感じていたが、この一心で起きている。
「そうある機会ではないな」
既に手入れ完了済みのあやかに髪を三つ編みにして貰っている智美も同じ意見だ。
普段は無頓着に洗った髪はパジャマが濡れない程度にタオルで拭いて寝てしまうが、自分達の住まいではないのだからとあやかに窘められ、手入れされているようだ。
親友同士でも、グレーのスウェットといった装いの智美に対し、あやかはパステルブルーの女性らしいパジャマを着用と個性の違いはあるが。
「今日の研修は終わってるんだし、お気楽に楽しんじゃいましょー」
グラディス(aa2835hero001)が笑うと、仁希が頭を悩ませて通販で買ったというピンクのパジャマのレースが楽しげに揺れる。
(今頃仁希は、真面目してそーだよねー)
難しく、重く、考え過ぎ。
焦っても転ぶだけだし、とグラディスは心の中で呟く。
彼がその考えに潰されないよう、その分自分がお気楽にやるのだけど。
「あ、ねーねー、皆はエージェントのお仕事してない日ってなーにしてるー?」
お互いを知るにはいい話題だよね、とグラディスが話を向ける。
『それなら、トランプしながらお話ししませんか?』
ゼノビアがトランプと一緒にメモを指し示した。
ルールも覚え易い神経衰弱をしながら、お喋り開始。
●エージェント事情あれこれ
(今の自分には……圧倒的に経験が足りてない)
仁希は、あらゆる経験が自身に不足していると思っている。
こういう形で先輩方から話が聞けるのは、自分にとってプラスになる……そう思うから、皆の話を黙って聞こうと思った。
いざという時、助けを求めている誰かの手を掴む力となるように。
「俺と薫が英雄達と出会ったのは同時期ですね」
凱が隣にいる薫を見ると、「あの時は驚きました」と凱の話を肯定する。
「今の所、研修や訓練比重って所でしょうか。学業を疎かにしていると、高校受験の時が怖そうで」
「凱さんと薫さんの年齢なら致し方ないかと」
凱の話に真次が理解を示す。
「僕はその凱より更に任務への参加は少ないかもしれないです。凱もそうなんですけど、両親が共働きですし、妹達も幼いので」
「家庭事情は仕方ないな」
レティシアも、預けるのにも限度があると肯定的な見解。
けど、と凱が言葉を続けた。
「俺の英雄、見た目は同世代って所なんですが、戦い方とか凄く慣れてる感じなんです。だからか、今の所経験してないですけど、単独でもある程度行動出来るようしごかれてます。今まで武器なんて握ったことなかったから戸惑いますけど」
「英雄の多くは、大体戦い慣れてるんじゃないか? 全員がそうだとは言わないが、凱の英雄はドレッドノートだし、不思議出じゃない」
「……となると、皆、英雄に鍛えられてるものなんでしょうか?」
凱がレティシアに言われ、自分だけの話ではないかもしれないと気づくと、レティシアは「全員じゃないだろうが」と彼の意見を肯定した。
「僕の英雄、あやかさんは戦闘でも回復や守りに関する担当をしていたみたいで、凱達に比べると、戦闘訓練も消極的かもしれないですね」
「その辺りはご本人の資質があるのかもしれないですね」
「そうかもしれないです。出会った時からそうでした」
真次へ薫は微笑んだ。
「エージェントのあり方も色々……」
仁希が口の中で小さく呟いた後、思い切って口を開いた。
「エージェントとして経験した話を聴かせていただけます……か? エージェントとしても能力者としてもなりたてで……少しでも早く人の役に立ちたくて」
仁希も胸に秘めることありエージェントになったのだろう。
そう思った真次は、「私もそこまで経験を積んでいる訳ではないですが」と前置きした上で、経験談を話す。
「個人的にはヴィランの連中は面倒ですね」
「面倒?」
仁希が首を傾げると、真次は実際あった任務を例に出し、説明をする。
能力者と一般人の区別がつかない場合、判別が難しく、間違えて非能力者を本気で攻撃すれば、簡単に死亡する。能力者であっても実力差や装備差で死に至ることもあるのだが、非能力者はそれよりも、だ。
ヴィランは原則逮捕の為、見極めなければならない。
「あと、エコーから目が離せませんしね」
真次は妙な茸を拾われたり、拾い食いの危険性に苦笑し、自身の話を締め括った。
「あ、でも、ゼノビアもそうだったが、戦闘のショックはあるだろうから、気を張り過ぎない方がいいかもな」
黙っていたレティシアが口を開く。
「俺はそういうの慣れてるからいいが、最初の内は参ってたなし。よくよく考えたら、当たり前だし、酷な話なんだよな」
ゼノビアが今よりも小さかった頃を思い返し、レティシアは話す。
愚神は人型のものもいる。彼らが人間ではない、対抗しなければ殺されると説明されても、気持ちの切り替えは別の問題だ。
仁希はレティシアの話は勉強になると聞き漏らしがないよう真剣に耳を傾けた。
「でも、月並みだが、感謝の言葉ってのはやっぱり良いもんだよな。どんなに辛い思いしても、疲れなんて吹っ飛ぶ気がする」
そうした最中でゼノビアからの感謝があったのだろうか、話すレティシアの目は優しい。
保護者のような立ち位置である分、より感じるのかもしれない。
「……っと、消灯時間迫ってるから、ロシアンパインケーキでもするか?」
「いつのまに買ってたんですか」
レティシアがパインケーキの箱を叩くと、真次が苦笑する。
が、その箱が開くことはなかった。
「日が浅いって言ってたから、慣れない研修で気が張ってたのかもな」
「薫は妹に合わせてる分夜は弱いのかもしれないです」
レティシアに凱が苦笑する。
そう、途中で眠くなったらしい薫と仁希は既に夢の中。
少し早いが残る3人も片付けて就寝することにした。
灯りが落ち、沈黙が降りていく。
●めくるめくひと時
「何故だ」
シンシアが櫻子を睨みつける。
「べっつにぃ~」
「何をしている?」
櫻子は他の者が捲ったカードを覚えること重視、自身は4枚位のカードを順繰りに捲る程度という戦略で、特に配置から全て覚えようとするシンシアの捲ったカードを集中的に狙っていた。
「戦略が必要」
エコーもお茶を飲みながら、頑張っている模様。
「順番の運はありそーだよねー」
そう言いながら、グラディスは櫻子に取られる前に覚えたカードをゲット。
「覚えるってのも、中々大変だしねー」
グラディスは相棒の仁希が大学に行っている間、幻想蝶の中では武器を振り回す鍛錬やドリルで文字の勉強をし覚えているそうだ。
「そろそろ本読めるかなぁ」
「本は読めるようになると、楽しいものね」
N・Kがグラディスへそう話しながら、カードを捲ると、「いいよねー本」とグラディスはうんうん頷く。
本は知識の塊だからこそ、その中に浸りたい……それには頑張って文字を覚える必要があるから、とグラディスは読めない漢字を見つけては周囲に聞く旺盛さを見せる。
「エコーもいつも、本や新聞を読んだり、テレビを見て過ごしてる」
エコーもこの世界に来る前は戦うこと以外殆ど知らなかったらしく、それ故にここには興味深く、面白そうなことが多いとか。
「私も……高音の家で、ご本を……読んでるわ」
「そうなんだ! 僕も早く読めるようになりたいなー」
十架がそう言うと、グラディスもドリルの勉強を頑張らないと、と意気込む。
「昔のエコーは、命令を遂行するだけの存在。でも、今は違う。毎日がとても楽しい」
「それはあるかもしれませんね」
アリスもエコーに同意するように切り出す。
休日は、というより、日常になっているが、両親がいない咲雪にとって母であり姉であるアリスは彼女達の自宅で家事雑用をして過ごしている。
N・Kも大体家事で鈴音の家にいることが多い、と話すと、この辺りは個人差があるのだろうという話になった。
「あたしはバイトしたり、薫さんの家のお手伝いしたり、といった所ですけど、お2人のように家事に専念されている方もいますし、幻想蝶から必要がない限り出ないという方もいますし」
「以前の世界による部分もあるかもな。俺とあやかの場合、この世界と文明のレベルがほぼ同一だったみたいで、特に戸惑いはないが……」
あやかと智美は、凱の家族の厚意で彼の家の離れに住ませて貰っているらしい。
それでも何もかもして貰う訳にはいかないし、着たきり雀という訳にもいかないということで、2人共己の適性に合い、かつ、英雄に理解がある職場か、それらを考慮する必要がない短期のバイトをして、稼いでいるとか。
「学力的に問題なくとも、外見で引っかかることはありそうよね」
櫻子は2人の見た目が中学生程度であり、如何にも英雄という外見ではない苦労を察して言う。
すると、ゼノビアが『レティシアもそれで苦労しているみたいです』という苦笑と共にメモを見せた。
『休日、戦闘訓練がない時は、レティシアと買い物したりするんですが……よく声を掛けられます』
ゼノビアは声を失っていることもあり、メモ帳は生活必需品だ。
その為、休日はレティシアと買い足しに行くことも多いが、レティシアも如何にも英雄という外見ではなく、親子や兄妹というにも厳しい為、警官から職質を受けてしまうこともあるらしい。
英雄と言っても信じて貰えない時は幻想蝶へ逃げてしまうレティシアを思うと、ホワイトボードの方がいいのかと思うものの、紙の暖かさを好むレティシアはメモ帳での筆談がいいそうだ。
「そういえば、能力者サイドはどう? 皆仕事ない時って何してんの。やっぱ学校とか行ってる?」
『あ、学校ってどんな感じ、ですか? 楽しい、です?』
鈴音が能力者の面々を見つめる。
研修で同室になったとは言え、仕事で会うことが多いから、名前と顔しか分からない人もいる。そうでなくとも私生活はよく判らない。見た所同年代は、メモ帳にそう質問してきたゼノビアは別として、咲雪と高音は学校に通う立場ではないかと思うのだが。
「学べるって楽しいよーねー」
学校が沢山あると聞いたグラディスも学校に通う能力者達の話が聞きたいのか、わくわくした表情だ。
「私は大学に通ってますね」
「……お仕事……ない、時は……ん、学校、行ってる」
高音に続いた咲雪は言いながら、適当にカードを捲った。
一応現役中学生の咲雪には、学校に行かないという選択肢は基本的に存在しない。不登校はアリスが許さない。エージェントとしての活動で出席日数が拙いので、行ける日は半分叩き出されているらしい。
「……授業とか、めんどくさい……教科書、読めば、分かるのに」
「赤点取らないから頭の出来は悪くないのよね。頑張ればもっといい成績取れるのに」
「……めんどくさい」
その一言で、授業中は多分ほぼ寝ていると推察可能である。
が、日本の学校に通っていないらしいゼノビアは、気になるのか、メモに質問を書き記す。
『屋上で告白したりするんです、よね?!』
「お姉さま、可愛いコの告白は即OKしちゃう」
ゼノビアへの櫻子の答えを聞いたシンシアが「ロリコン」とぼそっと呟いたので、櫻子がそちらへ顔を向ける。
「あんたも言いなさいよ」
「私は平民のように手に職をつけて、などということはせんぞ」
どうやら元の世界では高貴な女性に仕えるに足る家柄だったらしく、そうした考えではないらしい。
「英雄のコはこの世界への適応しようとしてる感じよねー。働いたりするのはその後なのかもだけど、でも、きゃわいい子が健気に頑張ってると思うと、お姉さま、応援したくなっちゃう。能力者の皆もかっ飛んだことはしてなさそうね。戦闘訓練とか通学って感じだし」
なのに、と櫻子がシンシアを見る。
「サクラの店を空けた分の収入を完全に補って余りある程、私の力でH.O.P.E.で稼がせているのだから文句……サクラ、また私のカードを取ったな!」
シンシアが抗議するが、櫻子は知ったこっちゃない。
と、ここで、櫻子の仕事が話題になった。
「師匠を受け継いで、スイス料理の店やってんの。エージェントの仕事すると店空けることになるから、その日の収入がなくなるし、大変よ。だから、超働いてる」
「コック……」
「スイス料理ってあまり聞いたことないわね」
エコーに続いて、N・Kも興味を示す。
真次がご飯を食べに連れて行ってくれるのが楽しみなエコーにとっては重要な情報だし、料理のレパートリーを増やしたいN・Kにも興味深い話題だ。
「芸術家じゃないかー、お料理人さんって、下手な戦士や司祭より強いし、人を笑顔に出来て凄いよねー」
グラディスが目を輝かせ、お勧めのレシピや本について質問する。
櫻子もジャガイモやチーズといった食材で素朴な料理が多いと話し、幾つか料理を紹介した。
「兼業出来るって結構凄いよね。学校とかだと、疲れてたら最悪寝ちゃえとかあるし」
「……いつも、寝てる……」
鈴音に咲雪が言うと、N・Kとアリスが声を揃え、「学校は寝る所じゃないから」と窘める。
「解ってるよ。高校卒業したら、私もそうなるかもだし。……あと、いつも寝てない」
櫻子の話は結構真面目に聞いていた鈴音は、咲雪へ「普段もっと動こう」と諭してみる。
「ん、めんどくさい」
咲雪を見、鈴音はふと思う。
(寝る子は育つって言うから、かな……)
具体的には言わないけど、年頃なので、咲雪の成長は羨ましいから、ちょっと睡眠時間は検討しよう。
●夜は楽しく更けて
トークは次第にコイバナへ移っていた。
事の発端は、鈴音が「華がまだないよねー」と言ったことだ。
誰か1人位、『仕事外はなるべく恋人と』という返答ないのか、という話からだ。
「鈴音はないの?」
互いも知った後だから振っているのだろうと思いつつ、N・Kが問うと、「皆のが聞きたい!」と鈴音。
「お、コイバナ! 聞くのは好きだよー!」
「誰かのコイバナ、大好き!」
グラディスが同調すると、鈴音と「だよねー」と盛り上がる。
「まずは咲雪! 年齢的にどうなの? 好みのタイプとか!」
「……ごろごろ……してても、怒らない……人?」
鈴音へ小首を傾げて答える咲雪は、疎い上にめんどくさいが優先された模様だ。
強いて言うなら、同年代だそうで。おっさんとショタは射程外らしい。
「咲雪は解っていないわね。年齢差には年齢差の良さがあるのよ。いい? 教師と生徒ものは同年代じゃないと出来ないのよ」
咲雪に説くアリスは感情はあっても子を成せない為に性愛に疎い筈だが、この世界に来て腐った為、男同士の関係の傍観者としての良さが優先されるらしい。
「僕も今の所武器が恋人かなー。刀身の輝きは最高のアクセサリーだよーいいよー。何より裏切らないからねー」
それもあって誰かの話を聞く側らしいグラディス、傍観者(BLでも)の楽しさには共感するらしい。
「私は高貴な女性の側仕えだったから、男の影があってはならん身だったのだが……サクラはなんなのだ。28にもなって独身など信じられん。」
シンシアからすれば色々信じられないと櫻子を見ると、「な、なによ」と櫻子が上擦った声を上げた。
「あ、あたしも昔は色々あったのよ」
任せろだし、から始まった櫻子のコイバナは具体性をあまり感じない、ちょっと胡散臭いものであったが、シンシアが突っ込まないから、よしとしよう。
「この中なら、十架ちゃんが1番タイプ」
「……あり、がとう?」
よく解ってない十架は小首を傾げて答え、櫻子からハグされる。
その十架の好みは高音に直結する要素がかなり多く、高音は重要な要素であることが伺えた。
「でも、私も解るわ。私も誠実な人がいいもの。ちゃんと鈴音を守ってくれる人」
「自分のじゃないじゃん、それ」
N・Kへ鈴音が言うと、彼女は「私はいいのよ」と微笑むだけ。
「あ、でも、ゼノビーとこの彼とか、かなり美形かなー。でも填島さんの大人な感じも割りと捨てがたい……」
「エコー、それは困る」
『鈴音さん……!?』
好みのタイプが真次なのか即却下のエコーに対し、ゼノビアは鈴音の言葉に目を白黒させている。
が、鈴音はちょっとからかうだけだったらしく、「だいじょぶ、取ったりはしないからー」なんて笑うだけ。
そのゼノビアは恋をしているらしく、自身の恋をこう話した。
『年上の人が好き、なんです。でもお子様扱い、されるのわかってるから……仲良くしてもらえる今を大事にしたい、です。今のまま、気づかれないまま、が丁度いい、です……』
ゼノビアは、メモ帳へ視線を落とす。
「年上の人かどうかは正確には解らないですが、あたし、本来の世界でいたかもしれない恋愛のパートナーが年上なんじゃないかって言われることがあります」
年上繋がりから、黙っていたあやかが切り出した。
その根拠は、料理を作る時といった、ふとした瞬間に沸き起こる何とも言えない感情から、らしい。
「薫さんや凱さんとはきっと違う人。……智ちゃんとも話してるんですが、2人は馴染みの知り合いによく似てるような感覚ですから……」
「俺もあやかもあいつらにそういうのは感じなくてな」
けれど、全ては失われた記憶の向こう、知ることが出来ない真実だ。
と、その時だ。
ゼノビアがいつの間にか寝ていることに皆気づいた。
神経衰弱も終わっていたし、疲れていたから眠ってしまったのだろう。
「そろそろ日付も変わりますし、灯りを落としましょうか」
「って、高音まだ話してない」
鈴音が話せと言うも、咲雪も布団の中に潜り込んでしまったし、他の面々も続こうとしている。
「それはまた今度ということで」
「今度は優先するからね」
高音が布団に潜り込むと、鈴音は最後ということで、猫耳フードを揺らしながら、灯りを消した。
楽しい時間はもう終わり、ゆっくりおやすみなさい。