本部

予言

ふーもん

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/01/21 20:28

掲示板

オープニング

 ――場所は埼玉県某所。
 1人のエージェントが時を急いていた。
「くそ! 何だってこんな年の初めに従魔が!?」

 従魔はその男の言う通り年始早々、埼玉県の郊外にある街中。大胆にもドロップゾーンを形成していた。しかも既にゾーンルーラーになる気配すらある。
「これ以上、ドロップゾーンを拡大されたら、ゾーンルーラーだな」
 思わず皮肉に込めた苦笑をしてしまうのも無理はない。

 最早それは以前から都市伝説と化していた。この埼玉県の県内のどこかで年の初めに従魔が現れ、ゾーンルーラーとなり被害は飛躍的に拡大する。つまり、己の心情に化したルールを作り、そこにいる人々を蝕み侵食していく。やがてそれは迷路の様に入り組んだ構造物を勝手気儘に形成し、いらない物は破壊する。最終的にはレガトゥス級の愚神及び従魔を呼び寄せる……。

 しかしこれはあくまで都市伝説の類だった。全てはある占い師の予言。埼玉県の某所に位置する駅前のロータリーでひっそりと営業している老け込んだ老婆。
 いつの間にかその老婆が齎した予言は県内で有名になるほど広まっていった。

「くそ! 嫌な予感ほどよく当たるってか!?」
 その時、男の携帯電話が鳴った。どうやら新たに最大6人の精鋭部隊がそちらへ派遣されるとの事。事態は急に深刻な様相を呈していた。
「そいつはありがたい。出来ればあの占いバーさんの素性も調べてもらいたい所だが……」
 ――そうだな。出来得る限りの事は聞き出して貰った方が良いかもしれない。念の為にだが……。
 相手のH.O.P.E.職員は冷静にくぐもった声でそう応じた。もちろん、彼の言いたい事は痛いほど身に染みた。

 所詮、占いの類だ。その予言とやらが当たるはずもない。だからこその少数精鋭。約6人と言う数がそれを物語っていた。実際、従魔も今現在では大した事のないレベル……らしい。

「出来得る限り優秀なエージェント達でいてくれよ」
 その男はまたも苦笑したのだった。

解説

 今回のバトルは従魔が住宅街でたむろしている事が発覚し、1人のエージェントが現場へ急ぐところから始まります。
 どうやらそれには都市伝説ならぬ占いバーさんの予言が関係している様でそれが脳裏をかすめ、少しだけ不安が残りつつも約6名の支援が来ると言う手はずになっています。そこで今回は二手に分かれてもらう事になるかもしれません。

 ・占いバーさんの真相究明。今回の事件がどう絡んでいるのか?
 ・敵の従魔の殲滅。

 従魔はそれほど強敵ではありませんが、物語の進行次第ではドロップゾーンの形成により街中を迷路に仕立て上げる位はやりそうな気配です。早々に倒すのが先決ですが、占いバーさんの話も気になります。

 それでは皆さんの参加を心待ちにしております。

リプレイ

 従魔は既にゾーンルーラーになる気配すらある。

 だが、この事件に関する配属されたメンバー達は敢えて二手に分かれた。例の駅前にいる占いバーさんの正体をつかむ為だ。
 その為、占いバーさんへの調査は黄昏ひりょ(aa0118)・フローラ メルクリィ(aa0118hero001)、穂村 御園(aa1362)・ST-00342(aa1362hero001)、煤原 燃衣(aa2271)・ネイ=カースド(aa2271hero001)がそれぞれ行くことになり、従魔殲滅組は笹山平介(aa0342)・柳京香(aa0342hero001)、大宮 朝霞(aa0476)・ニクノイーサ(aa0476hero001)、ギシャ(aa3141)・どらごん(aa3141hero001)が現場へ急ぐ形となった。

「市外に従魔……! は、早く……潰さないと……ッ!」
「……妙、だな……愚神の気配……が、無い……? 騒ぎの規模も、デカい……気はする……が……」
 燃衣は焦っていたが、その英雄のネイはどうやら事の真相に早くも気づき始めていた。冷静に分析し、燃衣に耳打ちをする。
「……スズ……」
 ボソリと一言。
「……えッ!? そんな……で、でも消去法なら……確かに……」
「皆さん、ライヴス通信機は持ってますよね? 通信機を持っていない方は先程、携帯電話の連絡先を常に所持しておいて下さい。何か緊急事態があった場合、お互いの連絡交換を取る様にする為」
 ひりょは今回の任務の最終調整に入っていた。作戦の手はずは整った。
 占いの真相究明に急ぐ者達と従魔殲滅に急ぐ者達。どちらも何が待っているかは分からないが、自分達の仕事を遂行する為なら手段は択ばない。
「……あ、ひりょさん! ボクもそっちに行きます……!」
 因みにひりょと燃衣は以前からの知り合い。友人だった。

「埼玉の都市伝説か。聞いた事がある様なない様な……。とにかく、埼玉のピンチは放っておけないわ! ニック、出勤するわよ!」
『占い師の調査ってのも依頼に含まれてるらしいが……、まずは従魔を倒すのが先決だな』
 従魔殲滅組である朝霞とニック事、ニクノイーサ。朝霞は大学1年生。英雄と共鳴する事で聖霊紫帝闘士ウラワンダー(自称)に変身する。
 変身時の掛け声をどうするかで英雄と揉めている。考えるより先に身体が動くタイプ。朝霞はニクノイーサを愛称でニックと呼び、ニクノイーサは朝霞と呼ぶ。
 彼等は現場へと急行する。もちろんそれに続いて従魔殲滅組は行動を開始する。
「初依頼なのでがんばるよ。敵を殺せばいいんだよね。うん、大丈夫」
「お前はやれる事だけをやれ。正義の味方という仲間に頼っておけ」
 そう話し合っていたのは従魔殲滅組。ギシャとどらごん。
 ギシャは竜娘タイプの獣人。頭に二本の小さな角。背中に爬虫類系の小さな翼。お尻に尻尾。瞳は爬虫類の縦長の瞳孔。小柄ながら元気一杯な少女。赤髪のショートカット。赤褐色の肌。出身国や国籍は不明。
 どらごんはずんぐりむっくりした可愛らしい緑色のドラゴン。トレンチコートにソフト帽、火の付いていない葉巻。ハードボイルド。見た目は三頭身の着ぐるみだが、中の人などいないらしい。
 因みに彼等の目的は敵の撃破及び生活する為の依頼の報酬だ。
「笹山平介と申します。今日はどうぞよろしくお願いします」
 仕事時には度入りの青いサングラスをかけているいつもニコニコしていて優しそう。
 彼、笹山平介は清潔感あふれる服装を好みサングラスの角度によっては目が見えないが普段は目は透けて見える。
 その英雄の女性。ドレッドノートの柳京香は172センチと言う長身に、少し男勝りな性格。だが、女らしさも捨てていない。
 常にピアスを嵌めていて、右腕にタトゥーがある。目の色は青よりのエメラルド色。
 若い子に怪我をさせたくない心情から平介はニコニコとこう言った。
「大丈夫。こちらはお任せください」
 そして占いバーさんの調査する側に対しては例の通信機を持ちつつ取り繕った様な優しい声音で――
「では後ほど合流しましょう」
 それは全てが終了した後の状況報告目的だった。

 一方、難無く占いバーさんがいる駅前のロータリーに到着したひりょ・フローラ、御園・エスティ、燃衣・ネイは既に作戦を練っていた。準備は万端。
「い……良いですか? み、皆さん。……今回僕達……は戦闘で……は無く、あ、あくまで占いバーさんの調査……で、ですから」
 気弱なビビリーで基本的にビクビク、キョドキョドして言葉を噛みがちな燃衣はそう言うと早速、メモ帳を取り出して仲間と内緒話に。
 占い自体にはちょっと興味があるお年頃のひりょはというと。
「素敵な出会いがあればなぁ……なんて」
 等と苦笑していた。そこですかさず英雄のフローラが面白がってちゃかす。
「ふ~ん……やっぱり彼女さんとか欲しいんだ?」
「ま、まあそれはともかく。半分冗談として……噂の占い師は何者なのか……面倒な事にならないといいけれど。二手に分かれる今回の仕事、無理は出来ないな」
 ムキになって話題の転換を図ったひりょは少し不安も残っていた。事実、占いバーさんの予言の正体は未だ掴めていない。
「へえ……有名な占い師さんかあ? ついでに占って貰おうかな?」
 出勤時はH.O.P.E.課員の制服だが、出来るだけファンシーさを取り入れる為、もふもふ系小物を要所に配備している青色の瞳を持った御園。
 だが、今は占い師との対面時に不審に思われない様に私服へと着替えている。
「御園、彼女はドロップゾーン拡大の噂を垂れ流している張本人だぞ? ヴィランか愚神である可能性は否定出来ない」
 無口で基本的には御園についていくエスティも楽観的な主張をする彼女につい言葉を発してしまう。
「親切なリンカーだったり、超能力者かも? ……占って貰えばどれか分からないかなあ?」
「……分かった。どうせ情報収集にも名目が必要だ。客として接触する事にしよう」
「やったあ!」
「……み、皆さん。……う、浮かれてるところ……申し訳ないのですが、……こ、このメモ帳に書いてある……さ、作戦通りに……お、お願しますよ……」
 そんな様子を見兼ねてか、かなり心配になる燃衣だった。英雄のネイは思わず溜め息1つ。

 そんな折、従魔殲滅組は早くも敵と遭遇していた。
『朝霞、アレじゃないか?』
「よし、ニック、変身(共鳴)よ!」
『もうちょっと恥ずかしくない掛け声とポーズにしてくれると、嬉しいんだがな……』
「ごちゃごちゃ言わないの。変身! ミラクルトランスフォーム!!」
 ビシィッ!! と、決めポーズ。
 英雄と共鳴状態になり聖霊紫帝闘士ウラワンダー(自称)に変身。
 その格好は幻想蝶からAGWを装備してヒーローに憧れる朝霞が己の理想を具現化させたヒロインである。
 白とピンク基調の衣装。某宝塚の様な衣装。下はスカート。目はバイザーで隠れている感じ。背中にはマントが翻る。
「おお! 待っていた援軍か! 頼むぞ!」
 最初に現場に向かっていたエージェントと合流を果たすと果敢に敵の従魔へと接近した。
「お待たせしました! 加勢します!!」
 敵の従魔は街中をドロップゾーンで支配する巨大なスライムだった。どす黒く変色したそいつは波の様に街路樹や路面、建物や住居を飲み込んでいく。
 しかしよく見るとその中身は透き通っていて目や鼻などの輪郭がぼやけて見える。恐らくそこが急所だろう。しかも大小既に複数いた。
「よーし! あのスライムが記念すべき今回の初仕事! 全力で行くよ! どらごん!」
「良いか? 相手と自分の力量が分かったら、あんまり無茶するなよ?」
 敵の従魔を発見した際、その撃破を目的としたギシャとどらごんはすぐさまドロップゾーンへと侵入した。
 ギシャは初手から全力。獣人の高い移動とイニシアチブで敵に接近。
 敵のやりたい事を潰せばいつかは殺せると言う思考の元、ジェミニストライクを使用。ライヴスで作られた分身と共に敵の目に向けて何の躊躇いもなくサーベルを突き刺した。
 それは自分の力は弱いと理解しているからこその目潰し。急所狙いだった。しかし相手はスライムとは言え大小様々。すぐに周囲を取り囲まれる。
 ジェミニストライクも残り2回しか使えない。
「あぁ、やっぱり簡単にはいかないか。援護行動に徹するね」
 接近戦は好きではない――痛いのがダメ。いざとなれば拳で――平介は射撃が得意なので英雄の京香の為に援護射撃をしながら自身の周りにいた従魔達を殲滅していく。
 一方、その京香はと言うと銃を持ってはいるが、接近戦が得意なので略不使用。いざとなったら平介にパスし使わせる。敵の位置を平介に伝える為、既に先陣をきっていた。
「平介!」
 平介からは見えない位置の従魔を教え正確に移動して殲滅させる為に指差し。
 移動しつつ京香の指示――赤いマニキュアを頼りに援護――を次々に受けて従魔の殲滅に急いていた平介は自分の周囲にそれ程従魔がいない事を確認。怪我人等がいないかを探す為に京香に伝える。もちろんチャンスは逃さない。
 フェイルノートによる物理攻撃を基本とし、敵の攻撃を回避しながら接近戦へと持ち込んだ聖霊紫帝闘士ウラワンダー(自称)事、朝霞とニックは武器をドラゴンスレイヤーに切り替えた。
 敵が間合いまで侵入してきたので、容赦なくブラッドオペレートを使用。ライヴスのメスで敵をギタギタに切り裂いた。
 初の従魔戦。彼我の力量を理解したギシャはどらごんの指示の元、無理に攻め込まずに縫止でライヴスの針を発射。敵の動きを止めたり、ロケットパンチやグレートボウを用いて遠距離攻撃で敵の動きを阻害し、味方の戦闘のサポートに徹した。
 それは感情や状況に流されての無理や無謀は、どらごんのハードボイルドの教えに反する為だった。
 そしてその援護が効いたのか、リンクしていた朝霞とニックに更なる戦闘機会を与えた。それを読んだのか、ニックが忠告する。
『朝霞、味方の動きと連携して攻撃するんだ』
「了解、ニック! 命中には自信あるんだ。任せといて!」
 すぐに武器をフェイルノートに切り替えて朝霞の意思は主に味方の攻撃を受けて敵が体勢を崩した所や、敵が味方を攻撃しようとした所を狙ってフォローする。
「いくわよ! ウラワンダーアロー!!」
 戦闘は新たに送り込まれたエージェント達の活躍により徐々に優勢。従魔の数は劇的に減っていった。

 そして占いバーさん方面のメンバーはというと。
 早速、例の占い師に占って貰っていた。最初はひりょで、友人の燃衣が示したメモ帳から事の真相を汲み取る様に探る。
 ひりょの思惑は2つあった。
 ・『占い師の登場した時期』と『一連の騒動の発生した時期』が同じかどうか? この2つの点だ。
 それを確認する為、ひりょはよく当たると噂の占い師と聞いて占って貰おうと思ってきたと接触してみる。
「そこのあなた、良くない相が出ているね」
 まず第一歩。予想通りの手応え。相手から話し掛けられれば後は慎重に用件を聞き出す。
 もちろん相手が愚神だった場合、エージェントだと極力バレ無い様に心掛ける。
 予言は占い希望者の占い内容の中に盛り込まれる様な感じで予言されていたのではないかと予測していたひりょ。果たしてどうか。
「……そうですか。じゃ、じゃあ恋愛運でも占って貰おうかな?」
 横でフローラがクスクス笑っている。
「だ、だってそう言うのが気になるお年頃なのさっ」
 他の皆が自分と占い師に注目している中、ひりょはちょっと気恥ずかしそうになっていた。
「す、煤原さんや、穂村さんも占い見て貰おうよ? ね?」
 私服姿の御園はひょっこりと訪れた普通の客として接する。因みにエスティは駅の出口で御園の連絡を待っていた。
「あのお……ここ、雑誌に載ってた占いのところですか?」
「……」
 占いバーさんは無言。
「あたしちょっと最近悩んでることがあってえ……あ、分かっちゃいます? そうなんです……先輩に戻って来た幼馴染が出現してぇ」
 占いバーさんは何気なく御園の顔を覗き込んだ。
「でも、それもそうだけど今ヤバいのは仕事の悩みなんです……えー? そうなんですよ!」
 占いバーさんは手相を見る。虫眼鏡の様な代物を使って。
「上司に嫌な仕事を押し付けられて……あ、何だか分かります? ……せーかいです! やっぱり凄いんですね。占い当たるんだ……でもちょっと違くてセ……あ、やっぱり良いです! ……ええ? 何で分かるんですか?!」
 この時点で占いバーさんの正体は少しずつ解き明かされていった。あと一押し。
 因みに御園が本当に占って欲しいのは今年の金運。
 話は既に仲間と合わせて最初は自重していた燃衣が最後に占って貰う事に。
「ぼ、ボクも……占って欲しいなぁ、なんて……そだなぁ……ボクの未来、で……」
「未来は……必ずしも誰しもに当て嵌まるとは限らない」
 占いバーさんはやっと口を開いた。だが、燃衣は更に質問する。
「今、ちょっと騒ぎが起きてる……んです、何か知りませんか……か?」
「従魔じゃろ?」
「……す、すす……凄いです! な、何者な……んですか? あの……従魔は? ……な、なぜ……わ、分かったんですか?」
「私の予言をバカにするんじゃないよ」
「他の事を、教えて下さい。この先、この先の先……何が起こる……のか……」

 因みに最初にネイが耳打ちしたのはこの占いバーさんこそが愚神と言う結論だった。

 さり気無くライヴスゴーグルでライヴスの流れを見る。味方にも探り合図。

 ――そしてその答えは……どうやらビンゴだった――

 一方、従魔殲滅組は――既に戦いを終えていた。幸い怪我人も死者も出なかった。
 だが――その時だった。ライヴス通信機が反応を示し、それと同時に持っていた携帯電話が鳴り出した。それに応答したのは平介。
「……分かりました。すぐ、そちらに向かいます」
 皆が呆然と見守る中――
「……大変な事になりましたよ」
 平介は言った。

「何の……電話じゃ?」
 電話の応答を終えた燃衣は遂に答える。
「……ケンタウロス型従魔、ヤッたみたいです……よ、良かった……」
「――何じゃと……!? それは……嘘じゃ。従魔はスライムのはず……」
 初めてその顔に狼狽の色を見せる占いバーさん。
「何故……貴方がそれを知っている……んですか……?」
 今、ここにテレビやラジオ。新聞等の情報類は一切ない。つまりケンタウロス型従魔と言ったのはわざと間違えたのだ。つまりカマを掛けたと言い換えても良い。
「も、もう止しましょう……既に調べはついてます。……貴方が……テメェが、愚神……だろうがよ? 詰み、だ」
 その瞬間、隠し持っていた武器を大きく振りかぶって相手の占いバーさんへと向けた直後――!
 遂に占いバーさんの化けの皮が剥がれた。

「ヒッヒッヒ! ――どうやら正体がバレてしまった様じゃのう。これは予想外じゃ」
 不気味に嘲笑する愚神。
「……そうかよ。なら……予言は外れる。今ここで……死ねよ……ッ」
「いや、予言は当たる。なぜなら死ぬのは貴様等だからだ!」
 愚神は醜悪で、悪鬼の如く凶暴な鱗。口は裂けて半漁人の様な姿だった。
「私の可愛い従魔たちを殺してくれたお詫びじゃ。貴様等に真の姿を見せたのは……」
 その愚神のライヴスの総量は伊達じゃなかった。
 強敵と判断した占いバーさん組一行は一旦、引いて迎撃態勢。何とかして加勢を待つ準備。もちろんその間にも敵は容赦なくライヴスの攻撃の手を緩める気配はない。
 強烈なライヴスの弾。ライヴス弾とでも言えば良いのか? それを幾つも口から吐き出してくる。
 さすがにヤバイと思った占いバーさん組一行は遂に本領発揮する。
「殺してやる」
 殺意を剥き出しにした修羅と化したのは他でもない。さっきまでの不安はどこへやら。燃衣だった。
 ライトブラスターを手に容赦なく発砲。レーザーが相手に向かって飛んでいく。しかしそれはあくまで牽制。動きを抑える為だ。
 その瞬間を見逃さず、彼は英雄ネイとリンクした。
 その間にも敵はすぐに攻撃を仕掛けてきたが、ひりょがライヴスフィールドの結界で相手を弱体化。
 そして全長180センチ。自分の身の丈よりも大きいグレートボウをフローラは器用に引いて敵を迎撃。強力な矢を放つ。
 その後にも戦いは続く。タイミングを逃さずに後方支援したのは御園とエスティだ。持っていたスナイパーライフルでファストショット。高速射撃により相手は怯んだ。
 いつの間にかエスティも危機を察知してやって来ていた。さすがはジャックポットのサイボーグ。その通常攻撃の所作は全く乱れずに相手の急所を次々に抉る。
 しかし相手も一瞬の隙を衝いて、その鋭い牙や角。先程のライヴス弾を吐いて連続攻撃。手強い。
 着実にダメージは溜まっていたが、ひりょとフローラが盾で仲間を援護防御してくれた上にケアレイやリジェネーションで味方を回復してくれたお蔭で無事に済んだ。
 そうこうしている内に英雄ネイとリンクした燃衣は肉体と精神はそのままに全身の皮膚が赤褐色に染まり右腕を中心に、炎の様に光る鱗の様な何かが現れ、右半身や顔を点々と覆った。
 また、髪の毛が紅く輝き黒白目の、輪の様な白い虹彩も紅く輝く。だが、最大の変化はその精神で生来の燃衣の臆病さは消え冷静になり、それと同時に冷酷なキラーマシンへと変化した。
「裁きの時間だ」
 リンクした燃衣は至極淡々とそう言うと、いきなり正面に牽制し、味方の援護攻撃と同時に背後に回りさらに攻撃を仕掛ける。
 一気呵成で追撃、そして2段目部位の足。言ってみれば愚神と化した半漁人の下半身の一番脆い部分を中心に攻撃。細い両脚や尻尾等を容赦なく叩きのめす。
 味方にアイコンタクトで連携。合図を送った後、3歩ほど下がり、リンク状態の彼もしくは彼女は相手を威嚇挑発。自分へと注意を引かせる。
「ホラ、来いよ。このクソッタレ愚神」
 その言葉によってキレた愚神は一気に間合いを詰めてきた。蛇の様にその動きは素早くしなやかだ。
 しかしその隙を見逃すほど今の燃衣は甘くはない。相手の懐に入り、疾風怒濤を連続で2回。相手の顎をアッパーブローの様な形で手にしていた斧。ザグナルで攻撃し、止めは首筋から急所にかけてそのまま一気に強靭な鱗ごと斬り裂いた。
 占いバーさんであった愚神は強烈な悲鳴を上げて、遂にその場に突っ伏した。こうして戦いの幕はやっと下りたのである。

 先程のアイコンタクトの合図によって味方は既に安全な場所へと非難していた。リンクした燃衣は冷静だが、その暴走は時折歯止めが効かない。
 友人であるひりょがいたからこそ御園にもエスティにも通じた奇策だ。

 ――戦闘終了後、燃衣は英雄ネイとリンクして散々暴れたせいか後は任せたと言わんばかりにひりょとハイタッチ。既に従魔殲滅組も駅前ロータリーに到着していた。
「そちら側も怪我人が出なくて良かったですね。こちらも大変でしたけど」

 何気なく言うひりょに従魔殲滅組の状況報告を無事終えた平介は年下の子が怪我をするのはみたくないのでニコニコしながらこう言って皆の頭を撫でて褒めつつ飴を配った。
「またどこかでお会いした時にはよろしくお願いいたします」
 他の皆は照れ臭そうにそれを受け取った。もうそんな齢ではないのだが、一緒に戦ってくれた彼に敬意を表して。

『やっぱりガセだったか』
「占い師でもなくプリセンサーでもなく……まさかこっちが本体のそれも愚神だったなんて……。気になる所の騒ぎじゃなかったですね」
 戦闘終了後、ライヴス通信機を使って一通り状況を把握した朝霞は少し驚いてる様だったが、ニック事、ニクノイーサはこれ以上戦闘に巻き込まれてあの決め台詞とポーズを取るのは御免被りたいといった感じだった。
 そう言った意味では今ここにいる占いバーさん調査組に感謝して、ホッと一息。溜め息を吐く。

 一方、新人エージェント。ギシャとどらごんはその事には触れず、どらごんとの反省会をやっていた。
「うん。やりたい事もやったし、先輩エージェント達とも仲良くなれたし。初仕事としては上出来だよね?」
「まあ、今回は無傷だったから良かったが……仲間の援護も取れたとは言え、お前は無謀な行動が多過ぎる。無茶するなと言っただろ?」
「……うん。でも報酬ももらえるし。これも生活の為だよ」
「それは……そうだが。まあ、良い。今回は合格だ」

「ネイ……見事だったね」
「……何が?」
「……ほ、ほら……例の占い師が愚神……は、犯人だっ……て。……あ、当てただろう?」
「……フ。俺も占い師にでもなろうかな……」
「……じょ、冗談止してくれ! あ、あー。……つ、疲れた」
 慌てて前言撤回しようとする燃衣にネイはただ微笑をくれてやるだけだった。

「結局、占い聞けなかった……ちょっと今年はチョコ強化しようかな……」
「よく分からないが、結局努力はしなくてはならないのだったら占いを聞く意味はあまりないのではないか」
「エスティ……私は今年の金運が知りたかったよ」
「それなら大丈夫。今回の依頼で報酬とやらが入るではないか」
「それも……そうだよね! 結局努力に勝るものはないよね!」
 ガッシ! と、御園とエスティの2人は腕を組んでガッツポーズ。
 これはこれでまあ、良かったと言えば良いのか奇異な光景だが……サイボーグのエスティに心はあるのか?

「ひりょ。彼女さん出来なくて残念だったね」
 未だにその件を思い出してはクスクス笑うフローラに対してひりょはと言うと。
「こんな時に冗談止してよ。何せ相手は占いの『う』の字も知らない様なそれも愚神だったじゃないか」
 顔を真っ赤にして怒るひりょはどこかむず痒い思いをして口を尖らせる。やはり恥ずかしいのだろう。フローラはそれを見るとなお一層笑みを深めるのだった。
「そりゃそうさっ。僕だってそういうのが気になるお年頃なのさっ!」
 前に聞いた様な台詞をもう一度、声に出して言うひりょに果たして本当に春は訪れるのか?

 ――こうして戦いは終わった。

 錯綜した皆の想いはまるで本当に占い師の予言に頼っているみたいだった。(了)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 分かち合う幸せ
    笹山平介aa0342
    人間|25才|男性|命中
  • 薫風ゆらめく花の色
    柳京香aa0342hero001
    英雄|24才|女性|ドレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
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