本部

今年よ、さようなら

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/01/10 22:41

掲示板

オープニング

 あなた達は悲しいことに雪山の天辺にいます。
「ここ、どこよ」
 『西大寺遙華 (az0026) 』さんは唖然とあたりを見渡しました。しかし何も見えません。専門用語でホワイトアウト。
 前後不覚で五里霧中の雪山絶賛遭難状態。
 あなた達は途方に暮れていました。
「と、とりあえずテントを張りましょう。このまま風に吹かれても体力を消耗するだけだから」
 そう『ロクト(az0026hero001)』はヘリから落とされた登山道具を回収し手早くテントを組み立てていきます。
 そんなあなた方の胸中は穏やかではなく、返りたいという思いでいっぱいでした。
 それもそのはず。
 今日は一年で最後の日。麓の町に降りていれば除夜の鐘がそろそろ聞こえてきそうな時間帯だというのに。
 いま耳に届くのは、ごうごうと唸る風の音と、あなた自身の胸に渦巻く怨嗟の声。

 さて、なぜこんな目にあってしまったのか事情を説明しましょう。
 あなた達は簡単な愚神討伐任務の帰りでした。
 ウサギ型愚神のもっふもふな毛皮を、残らずはぎ取るような勢いで速攻で愚神を討伐したあなた達はヘリで町まで帰投していました。
 しかし、途中でエアポケットにはまったのかなんなのかはよくわかりませんが、ヘリが揺れてあなた達は振り落されてしまいます。
 この吹雪の中ではヘリは着陸はできません、あとで迎えに来るからここで待機しているようにとヘリの操縦士さんはいい。遭難セットを一式おいて行ってくれましたが。
 それがいつになるのかは、このすごい吹雪です、わかりません。
「何でこんなところを通ろうと思ったの?」
 遙華さんは言いました。
「いえ、急にふぶき始めたのよ。それでいくも戻るもできなくなってしまったの」
 ロクトが答えました。
 そんなこんなであなた方は大きめのテントをたて終え中に入り救助を待つことになりました。
 幸いなことに食料と、カイロはあったので、ひもじい思いはせずに済みましたが、いかんせん暇です。
 なので続々と船をこぐリンカーが現れました。
「こ、これではいけないわね、寝たら死ぬわよ」
 はい、冬山定番『ネタラシヌワヨ』を頂戴したところで、今日はもうあきらめて寝ましょう、おやすみなさい。
 そう眠ろうとしたあなたの頭を叩いて遙華さんは言いました。
「寝たらだめだってば、朝になって冷たくなってたら私悲しいもの」
 かといって暇です、いかんともしがたいほど暇です。やることが何もない状態ではもう眠るくらいしかできることはありません。
 そんな不服の念が伝わったのかロクトが助け船を出しました。
「じゃあ、年おさめをしましょう、今年何があったのかみんなで発表し合うの」
「そして来年の抱負を語りあいましょう、うん、いいわねロクト、いいこと言った」
 そう輝くような笑顔で周囲を見て、そして遙華さんは言葉を続けました。
「みんなの今年の一年がどうだったか知りたいわ、そして来年どんな自分になりたいかも、教えてくれないかしら」
 そう遙華が手を叩くと、寝そべっていた他のリンカーも興味を持ったのか体を起こして、じっと遙華さんを見つめました。

解説

 眠るわけにはいきません(共鳴していれば寒さで死ぬことはないんですけどね)ので遙華さんはあなた達にたくさんの質問をして寝かせまいとしてきます。
 その質問に答えつつ、今年を振り返り来年の活力にしましょう。


今年に関する話題はこちら。
「今年一番印象に残った事件は?」
「今年一番の失敗と言えば?」
「今年の抱負ってなんだった? 達成できた?」
「今年の春にお花見を企画したらくる?(遙華さんが単純にききたいだけです)」
「遙華の最初の印象と今の印象(ロクトが遙華さんをいじって遊びたいだけです)」

来年に関する話題はこちら。
「来年の抱負 仕事編」
「来年の抱負 私生活編」
「来年の抱負 恋愛編」


 遙華さんはともかく、ロクトは軽くMCもこなせるクールビューティーなので話が困ったら彼女がうまくつなげてくれるでしょう。

*ここからはPLのみに伝わる情報

 そして話の終盤では除夜の鐘が鳴りだします。
 おっと吹雪がやんだのかな?
 そうテントから顔を出すと少し降りたところにお寺がありました。
 町のはずれではありますが帰っては来れたんですね。
 ついでなのでみんなで初もうでをして帰ります。
 あけましておめでとうで。しめくくりです。

リプレイ

 寒い。全員の頭の中をその言葉だけが支配していた
「もう、私インドア派なのに……」
『西大寺遙華 (az0026) 』は茫然とつぶやいた。
「やれやれ、最後の最後で遭難とは……ついてないな」
『麻生 遊夜(aa0452)』は吹雪で眉を凍らせながら、雪を掘る。地面が見えたところで杭を刺し、外せないように固定した。
「……寒い。私も沙羅ちゃんみたいに……眠れば、楽になるかな」
「いや、あれは気絶してるんだろ」
『卸 蘿蔔(aa0405)』の今にも風に飛ばされそうな小さな体を『レオンハルト(aa0405hero001)』ががっしり掴んでいる。時折強い風が吹けばその腕に蘿蔔はがっしり捕まるのだった。
「沙羅ちゃん、もう少しでテントが立ちますからね……。もう少しだけ耐えてください」
 レオンハルトのもう片方の手には『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』が抱えられていた。もはや彼女は寝る気満々で、閉じた目も明けず。
「はーい」
 そう可愛らしい声だけ出した。
「そう思うならお前も手伝えよ」
 レオンは茫然とつぶやく。
 そんな沙羅の保護者である『榊原・沙耶(aa1188)』は周囲を観察していた。
「年の瀬に、不運に巻き込まれてしまったわねぇ…」
「本当に……。ああ会社の忘年会に出席しなければいけなかったのに」
 『ロクト(az0026hero001)』も遊夜に並んで、雪をかいている。その肩には大型のバック、中にはテントの骨組みが入っている。
「雪山での眠気は、低体温症からの貧血に似た症状から意識の混濁に繋がるものねぇ」
 沙耶が言う。
「それで眠くなるのかしら。こんなところで冷凍保存は勘弁願いたいわ」
「冷凍保存か。仮死状態のまま保存するコールドスリープなんて近代科学では目指してたりするけど、解凍の時に失敗したり、よくても脳に障害が残ったりはするんでしょうねぇ」
 そんな雑談を繰り広げながらもテントは完成した。遊夜が先導し。中に全員を招き入れ。そして入り口のファスナーを占めた。
「ほら、これで大丈夫だ。入れ少年少女」
 体をさすりながら入っていくリンカーたち。これで大丈夫、そんな安堵のため息を誰もが漏らす。
「…ん、眠い」
 テントの隅に腰を下ろした遊夜にじゃれ付くように『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』が膝の上にダイブした、温かいのか気持ちよさそうな顔をしている。
「ガキ共の相手をしてやるつもりだったんだがなぁ」
 そんなユフォアリーヤの頭をなでながら遊夜はため息をつく。
「仕方あるまい、お年玉増額で許してもらうとしようかね」
 その姿を見てみてやってみたくなったのか沙羅も蘿蔔の膝枕で眠る。
「おやすみ」
「……おつかれさま、沙羅ちゃん」
 その瞼にはいつの間にかマジックペンで目が書かれていた。
「誰が……書いたの?」
 蘿蔔が首をひねり、どれどれと、その顔を覗き込んだ遙華。
「不覚にも、面白いわ、このこ」
「あー寒い、死ぬ」
 その隣に座っていた『楓(aa0273hero001)』の自慢の尻尾に顔をうずめる『会津 灯影(aa0273)』
 不服なのか、まんざらでもないのか、特に何も思わないのか楓は平常運転で灯影に抗議をする。
「我を湯たんぽにするのは構わんのが……。我が毛並みは常に最上の状態であるが故当然だが。頭から埋まるのはどうなのか」
「えーだってお前の尻尾もふもふで温かいし最高だし。仕方無いよな」
「貴様が気にしないのなら良い存分に埋まれ」
「あったかー」
「……風がないだけで確かにあったかいよな。智美。ちょっと肩かせ、少し寝る」
「な!」
 ランプと小さな携帯ストーブで暖を取る一向。厳しい寒さとの戦いが終わり、愚神討伐の疲れが襲ってくると次第に眠くなってきた。『中城 凱(aa0406)』は次第に船をこぎ始め。そのぐらつく頭を『礼野 智美(aa0406hero001)』の肩で固定しようとした。
「こ、これではいけないわね、あ、凱寝たら死ぬわよ」
 その時だった、唐突に遙華が身を乗り出して凱の膝を叩いて言う。
 凱は反射的に智美に耳打ちする。
「…リンカーって、寒さで死ぬのか?」
「さ、さぁ?」 
 耳元でささやかれた声に驚いたのか智美の声が少し裏返るも、すぐにいつもの調子を取り戻し、言う。
「まあ愚神討伐任務の帰りなんだし、何か不慮の事態になった時寝ていても困るから。この吹雪じゃ外に見張り置くなんて不可能だし。年末は起きてて2年参りとか言ってたろ?起きておくことにしよう」
「あやかも。寝たらだめだってば、朝になって冷たくなってたら私悲しいもの。みんな眠いと思うけど頑張って」
「あやかさん、大丈夫ですか?」
『離戸 薫(aa0416)』が問いかけた。『美森 あやか(aa0416hero001)』は穏やかな笑みでそれにこたえる。
「ええ、半日位は寝なくても大丈夫よ。でも半日何もしないでいるのはちょっと……」
 その発言に皆同意し始めた、見かねたロクトは話を切り出す。
「じゃあ、年おさめをしましょう、今年何があったのかみんなで発表し合うの」
「今年一年、か……」
 遊夜が言うそれにユフォアリーヤもうなづいた。
「ん、色々あった」
「おっ、今年の総括だな! いいぜーやろやろ!」
「まぁ我も雑談も歓迎だ。灯影と違い手持無沙汰だしな」
 この寒さでも普段の調子を崩さない灯影、その言葉に楓が同意する。
「そして来年の抱負を語りあいましょう、うん、いいわねロクト、いいこと言った。じゃあまず……今年一番思い出に残ったことと言えば?」
 全員が顔を見合わせる。
「今年一番印象に残った事件? 色々依頼にも参加したけど、智美に出会ってリンカーになった事が最大の事件のような気がする。夏休みの間はこんな事になるなんて思ってもみなかったし」
 凱が言う。
「僕も凱と一緒ですね。あやかさんと出会ってリンカーになった事が一番事件だなって……」
 薫が言葉を継いだ。
「そういえばあやかと智美は以前からの知り合いなのよね?」
 ロクトは二人のデータに一通り目を通している、その変わった特徴も記憶していた。
「あたしは親友の智ちゃんと一緒にこっちの世界に来て、智ちゃんは凱さんと、あたしは薫さんと契約しましたけど……。他の人は一人一人で出会ってるみたいですし」
 あやかの言葉に智美頷く。
「私も英雄との……小鳥遊ちゃんとの出会いかしら」
「あれ、みんな相棒との出会いなのね。確かに、英雄に出会うって、なかなかインパクトあるものね」
 遙華が納得したように頷く。
「いえ、どちらかというと。この子の体ね。英雄という異世界の人体の構造に驚かされたわぁ」
「え?」
 すやすやと眠る沙羅の頭をなでる蘿蔔、そしてそれを見守るレオンハルトの動きが止まる。
「……沙羅ちゃんがどうしたの?」
 蘿蔔が恐る恐る尋ねた。
「 似ているのは形だけで、中身はまったく異質で興味深いのよねぇ。でも、あまり見過ぎると頭がおかしくなりそうだしぃ、狂気に囚われそうな気がするのよねぇ。不思議だわぁ」
「怖いこと言わないでくれ」
 レオンハルトが身震いして答えた。それを見かねた遙華が苦笑いを浮かべながら話題を変える。
「今年の抱負ってなんだった? 達成できた?」
「抱負は。そうだな、達成できたんじゃないか?」
 その質問には遊夜が答えた。
「ん、子供たちはみんな元気」
「家内安全?」
 遙華が尋ねる。
「そうだな病気も特になかったしな、賑やかなもんだったぜ」
 遊夜は満足そうに頷いた。
「僕たちもそれだったっけ。神社家内安全と無病息災だけ祈ったかな?」
「薫さんの妹さん達……去年のお正月だったら0歳と2歳? 小さい子は風邪でも命に係わる事ありますからね」
 薫とあやかが顔を見合わせ笑う。きっと平和な一年を送ることができたからだろう。そんな薫の顔を覗き込むように凱が言う。
「そんなんたてたか? いや、特にそんなものなかった気がする。だよな、薫。あ、去年のお参りも此奴と行ったから」
「凱の抱負についてはわからないよ。でも確かに明言はしてなかったかな。智美は?」
「こっちに来たのが今年だし、そんなもの覚えてないな。生活基盤立てるので精一杯だったし……」
「俺たちも抱負? 特に決めてなかったかも?」
 それまで悩んでいた灯影があきらめたようにつぶやいた。
「計画性? そういや準備とか割りと抜かりまくってた気が」
「完璧な我が失敗など有り得んな」
「つーかそう言いつつ楓も行き当たりばったり楽しんでるだろ!」
 楓に意地悪そうな笑みを向ける灯影
「貴様はいつも行き当たりばったりだから。もう少し計画性を持つが良いだろうよ」
「そう言えば、今年の印象に残った事件だけど、俺は大作戦が印象に残ったな」
 智美が思い出したように手を叩いていった。
「ああ大規模か、あれはたしかに印象に残ったな」
「ん、おっきい腕の」
 遊夜もユフォアリーヤも嫌なことを思いだしたのか、苦い顔を見せ合った。
「あー、あれは厄介だったよな」
「そう言えば蘿蔔も大規模に参加していたわよね? たしか」
 遙華が蘿蔔に話を振る。
「……私?」
 すこしおどおどした様子でレオンハルトをちらりと見る、しかし少し顔を赤らめながら話し始めた。
「それも確かにそうですけど、印象に残ったのは……初めてケントゥリオ級と戦った時……ですかね」
「ああ。メナラノ……の件かしら? 確か討伐には至らなかったのよね?」
「はい……。倒せなくて悔しい思いをしました」
「俺はオネェバーで女装してバイトさせられたのは印象に残ったわ」
 灯影手を挙げて身を乗り出す。
「なんでそんなことに」
 沙耶が唖然とつぶやいた。
「おお、あのおねぇばーか。あれは客の金でタダ酒出来る良い場であったぞ」
 楓も、その時のことを思いだしたのか、したり顔でふふんと笑う。
「楓はノリノリで傾国の技とやらを披露するし。もう今度は楓だけで行ってこいよ。晩飯作って待ってるから」
 灯影は楓の見事な男ったらし? ぶりを思い出す。
 赤いマーメイドドレスか伸びるなまめかしい楓の美脚は、男であろうと女であろうと目が離せなくなる魔力があった。。
「貴様は不満がある様だが騙される方が悪いと古来より決まってる」
「なんだかよくわからないけど、楓さんの手にかかれば、男も女もいちころ無きがしてならないわ。気を付けないと」
 遙華がつぶやき、全員が頷く。
「異性関係で失敗をすると、お財布だけではなくて、心にまで傷をおうのよね」
 ロクトがため息をついてつぶやいた。
「もうそう言う失敗はこりごりよ。今年はそんなことはなかったけど」
「そう言えば、今年印象に残ったことは訊いたけど、印象に残った失敗なんかはあるかしら、来年に生かしましょ?」
「今の所は……そんな大失敗ってないかなって」
 薫が言う。
「あたし達が関るのって、日常依頼が多いですし」
 あやかが言葉を継いだ。
「俺たちも失敗はなかったよな。全部無事に終わったし俺たちも色々依頼で判断誤った事はあったけど……」
 凱が智美を見ていった。
「失敗で悔しい思いをする事はなかったな……本来の世界で依頼に失敗ってたまにあった気がするんだ。依頼の内容は覚えていないが、凄く悔やむ気持ちは覚えてるから」
「遙華は輸送ミスをして……。ぼろぼろ泣いてたわ」
「その話はやめましょう」
 険悪な空気が一瞬流れる、それを感じ取ったのか遊夜が言葉をつないだ。
「失敗はあれだな、ギャンブルに手を出したことか」
「ん、面白かったよ?」
 ユフォアリーヤが尻尾を揺らす。
「家計を預かる身としては、極端に増減する収支なんぞいらんよ」
「下手に減り続けたら皆で路頭に迷っちまうわ」
「ん、それはダメ」
「そう言えばレオンハルトさん。さっきから静かだけど、どうしたの?」
 そう遙華がレオンハルトの顔を覗き込む
「ああ、大丈夫だ。問題ない。今年の失敗の話だったな。実は俺には失敗らしい失敗は特にない」
「本当に?」
 何かを感じ取ったのか、遙華は引きつった顔で言葉を返した。
「ああ、失敗は特にない、けど」
 けど? そう全員が復唱し、彼の顔を覗き見る
「ただ。蘿蔔と誓約したことをひどく後悔させられた一年ではあった」
「なんだろう、あの人の気持ち、わかる気がする」
 灯影がいう。
「最初は最初は可愛かったんだ。儚げで、慎ましくて……それなのに、何で……何で」
「お、おい! この人泣いてるぞ!」
 灯影があわててハンカチを差し出した。
「だいの男を泣かせるとは、蘿蔔とやら、よほどの手練れのようだな」
 楓がにやりと笑って蘿蔔を見るも蘿蔔は反応しなかった、彼女は満面のスマイルで場をごまかすのに忙しい。
「嘘だろ、こんなにかわいいのに」
 凱が言う。
「この子、わりとすごい人のあつかいするのよ、ね、沙羅」
 沙耶が自分の英雄に同意を求めようとしたその時。
「あら、沙羅……」
 よく見ると小刻みにゆれてることに気が付いた。
「あの、さっきから何かをぼそぼそと」
 蘿蔔が困り顔で沙耶に訴える。
「むにゃむにゃ、”#$%&{*?+?$%。ウガ。イア」
 それ以上はダメ、そう沙耶が張り手でぱちりと沙羅を叩くと、沙羅は少しの間目をあけているがすぐに寝始めてしまった。
「…………は、話は変わるけど。今年の春にお花見を企画したらくる?」
「花見! 行きたい行きたい!」
 灯影が勢いよく手を挙げた。
「花見か、もちろん参加させてもらうぜ」
 遊夜も賛同する。
「うん、僕も都合が合えば行きたいかな?その場合良かったらお花見弁当作るから」
「そうですね。その場合大勢ならありきたりですけど、少人数だったら皆さんの好物聞いて作成するのもいいかもしれませんよね」
 薫とあやかも乗り気だった。
「弁当か、いいな。弁当作って皆で行けば楽しいだろうなぁ」
「花見か。そりゃ都合が合えば行きたいが」
 対して凱は渋い反応を見せた。
「依頼最優先だし」
 智美もその言葉に賛同する。
「いいじゃないか、凱も智美も、いこうよ」
「……ん、楽しみ」
「あー、ガキ共もつれてってもいいかね? 置いてったら今回の件で何を要求されるかわからん」
「もちろん。場所や食料は気にしなくていいわ」
「花見はまた風情があって良い。宴会も付き物だしな!」
 楓が言う。
「宴会ってお前いつもやってんじゃ……。あーでも花見なら楓の舞もより一層映えるんじゃね?」
「舞か……見てみたいです」
 蘿蔔がうっとりとつぶやいた。
「傾国の妖狐さんの舞、俺見たいなー」
「ふむ、我の舞は天上の蓮の花開くより優雅で繊細かつ
風雅である故宴会芸には勿体無いだろうが
観衆を魅了するも我が仕事よな!」
 そんな灯影の口上に楓は上機嫌に尾揺らし答えた。
「楓はザルだけど俺は弱いから他の楽しみが欲しいってのもあるけど」
「ビンゴするわよ」
 遙華が言う。
「まじで!」
「豪華景品(予定)」
「お前意外といい奴だな!」
「どういうことよ!」
「いや、無表情で冷たい奴なのかと」
 それに凱が同意する。
「鉄面皮の冷血女。リンカーのパック引き当ての悲喜交々に顔色一つ変えないし。無料アイテム受け取る傍らで良く顔色変えずにやれてるなって思ってた」
「む……」
「凱、そんな言い方無いでしょ。うーん。忙しいっぽいのにいつも会社にいるなぁって思ってたけど」
 薫がなぜか追い打ちをかけにいった。
「それは仕方ないのよ! これも顧客のニーズにこたえるために、どんなアイテムが出たらうれしいのかデータを……」
「仕事なんですよね、大丈夫です。それにあたしは、特には……」
 あやかになだめられながら、やっと落ち着いた遙華に、遊夜がフォローを入れる。
「ふむ。最初はクールビューティな高嶺の花、って感じだったな」
「そうか? 」
「今は、良い意味で残念美人かね? ちょっと抜けたとこが親しみ持てていいんじゃないか?」
「たしかに、依頼に一緒に参加してみると別な面も見れるがな。寝たらダメって辺り可愛かったし」
「…………。ありがとうと言っておくわ」
「やっぱりかわいくねぇ」
「グロリア社の顔ともいえる方ですし。もっと遠い人なのかって。でも……ずっと、話し易いというか、優しいと、いうか。出来れば来年は、も少し知れたら……良いな、って……あの、すみません」
そう言葉を口にする蘿蔔、だが言葉を重ねれば重ねるほどその顔は真っ赤になっていく。
「蘿蔔!」
 ひしっと遙華はその真っ赤な手を取った。
「遙華さん?」
「よければ遙華と呼んで」
 キラキラした視線を蘿蔔に向ける遙華。
「あれはどういうこと?」
 沙耶が首をかしげる。
「うれしかったのよ、単純に」
 ロクトが遙華に聞こえないように小声で答えた。
「まぁ、確かにそう言う冷たいイメージもあるが、必死で頑張ってるのは知ってるしな、『ネタラシヌワヨ』の定番も貰ったし」
「……ん、可愛い可愛い」
 くすくす、くつくつと笑う二人。それに対して遙華はふくれっ面で返す。
「ネタラシヌワヨ」
 沙羅がいつの間にか起きていて。遙華をからかった。
 沙耶寝かしつけようとその頭をなでる。
「そうね、みんな寝てしまったらあなたの召喚呪文を止められなくなるものね」
「召喚!」
 沙羅がそう叫んだ瞬間だった。
 突如、ゴーンとあたりに重たい音が響き渡る。しかも一定の間隔で何度も。
「何事?」
「愚神?」
 そう全員が首位を警戒するも。
 ユフォアリーヤは冷静に、その音の正体を探っていた。みみがぴょこぴょこ動く。
「……ん、鐘の音?」
 首かしげそう言う。
「む……こんな近くに寺があったのか、気づかなかったな」
 あわてて外に出る。遊夜。
 見れば自分たちがいるのは、山の麓近く。そして目の前に神社や寺、小さな町並みが見えた。
「あ、町はずれまでは帰ってこれてたんだな」
 なーんだ。そう灯影はつぶやいて、携帯電話を取り出す。
「やっぱ通じる。先に確認すればよかったな。えーと、本部に現在位置知らせて、帰り道判る人がいるから帰りますって連絡入れて」
 灯影は行わなければならないことをリストアップする。少し離れてH.O.P.E.に報告の連絡を入れた。
「早く行きましょう。初詣です」
「そうですね。お参りは早めに済ませておいた方が良いでしょう?」
 薫にひかれてあやかも歩き出す。
「妹達連れてお昼にもう一度別の所に参る事にはなるけどね。折角無事新年迎えられたんだし」
「では、神社にたどりつく前に、今年の抱負を決めましょう」
 そう遙華が二人に追いついてきていった。
「ん~」
 蘿蔔もレオンハルトにつれられるままに合流する。
「とくには……」
 蘿蔔が首をかしげていった。
「お前の場合課題が多すぎて、もはやどうしたらいいのか分からないもんな」
「そ、そんなことない……」
「来年は、そうだな…今年以上に稼ぐこと、かね?」
 遊夜も手早く施設への連絡を済ませ雑談に合流する。
「……ん、そろそろ」
「ガキ共の入学やら含めて出費が多くなる頃合いだからなぁ」
「ん、武装の更新も、したい」
「私たちはそうね、研究」
 沙耶はいつもの調子を崩さずそう言った。
 沙羅は相変わらずレオンハルトが抱きかかえている。
「来年はぁ、ライヴスの事とかをもっと研究していきたいわねぇ……。小鳥遊ちゃんとの誓約も、守っていかなきゃいけないしねぇ」
「よろしくね!」
 そう元気にあいさつをする沙羅にレオンハルトはうんざりした様子でため息をついた。
「起きてるなら、自分で歩いてくれないか」
「来年かぁ。学業とリンカーとしての仕事の両立が出来るか、が最善だけど」
 凱がそうつぶやく、それにロクトがからんでいった。
「つまらないわね、若いんだから。恋人の一人でも作るとか」
「中防に恋愛なんて無理だろ」
 そう頭を小突くと智美は足早に神社まで歩いて行ってしまう。
「どうしたんだあいつ?」
 隣の薫に凱は問いかけた。
「さぁ?」
「ところで、薫の抱負はなんだよ」
 その問いかけに薫は少し悩み、答えた。
「うん僕も、凱と一緒かなぁ。特に部活とか入ってなかったから時間の余裕はあると思うけど、学業疎かに出来ないし。普段の生活だと妹達の面倒かなぁ。3歳と4歳の3人って……動き回られると本当に追いつけないというか……。あと恋愛は特には」
 そう話している薫の隣に突如躍り出る影がいた。
「来年の抱負! は!」
「うわびっくりした」
 遙華が跳ね沙耶があらあらと微笑む。
「なんだろう……しっかりする?」 
 影の正体は灯影だった。すべての報告を終え合流したのだった。
「あ! あと脱犬! 家政婦でもねーからっ」
「それを俺も目標にしよう」
 レオンハルトもそれに便乗する。
「それは……、無理です」
 蘿蔔は笑う。
「今の笑い方、なんとなくぞっとしたね」
 薫が苦笑いしながら言う。
 やがて全員が神社までたどり着いた、一時期はどうなるのかと生存すら危ぶまれた状態だったため、全員が安堵のため息を漏らした。
 そして全員がそこにたどり着くころには、除夜の鐘も突き終わり。そして日付が変わった

「あけましておめでとうございます」
「今年もよろしくお願いします」

 全員が声をそろえて年末年始のあいさつをする。
 そんなちょっとした盛り上がりの中、蘿蔔がレオンハルトの袖を引きこっそり耳打ちする。
「レオン、私ね」
 まじめな顔をして蘿蔔が言うので、思わずレオンハルトは聞き入ってしまう。
「もっと……強く、なりたい……かな。どんな敵とも……戦えて、沢山の人……助けられるように。あと、絶対に逃がさないように」
 びくりと肩を震わせるレオンハルト。
「気の毒だわ」
 それを見ていた遙華が笑った。
 そんな蘿蔔は自分と皆の安全を祈願し。
 参拝を終えた遙華に声をかける。
「そういえば。おみくじとか……あるのかな。一緒、引きません……か?」
「ええ、喜んで」
「私も!」
 そう沙羅が騒ぎ、全員の注目を浴びた結果、ほとんど全員でおみくじを引くことになった。
「え~」
 沙羅は大凶を引いていた。
 そこには。健康面に注意。死んでもおかしくないとすら書かれている。
「蘿蔔は?」
 沙羅がその手のおみくじを眺める。遙華もつられて目をやった。
「大吉、失せ物、あってもすぐ見つかる……って」
 ロクトと沙耶。遊夜がお神酒を片手に。おみくじで盛り上がる少年少女たちを見守る。
 今回不幸なトラブルに見舞われたが。それでも無事に新しい年を迎えることができた。
 そのことに感謝しながら、リンカーたちは帰路につく。

 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 美食を捧げし主夫
    会津 灯影aa0273
    人間|24才|男性|回避
  • 極上もふもふ
    aa0273hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • エージェント
    中城 凱aa0406
    人間|14才|男性|命中
  • エージェント
    礼野 智美aa0406hero001
    英雄|14才|男性|ドレ
  • 癒やし系男子
    離戸 薫aa0416
    人間|13才|男性|防御
  • 保母さん
    美森 あやかaa0416hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
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