本部

戦闘

便利な従魔

岩岡志摩

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/09/25 19:00
完成予定
2015/10/04 19:00

掲示板

オープニング

●黒い労働
 とある場所で行われるイベントの設営作業。
 作業員は、指示に従いひたすら動く。ほとんどがこの日限りの短期雇用だ。
 暑さと作業の中、疲労が蓄積し、息が荒い。
「立ってんじゃねーよ!」
 チーフの肩書を持つ社員からの叱責が飛ぶ。
 謝罪し、重い発電機を両手で抱えて運ぶが一瞬意識が寸断。
「見てんじゃねーよ!」
 これは熱中症の前兆では。水分補給をしようと動くが、チーフが阻止。
「勝手に動くんじゃねーよ!」
 喚くチーフの声が聞こえづらい。
「ちんたらしてんじゃねーよ!」
 既に声は遠く、意識は霞み、体は勝手に震えてきた。
「何ガタついてんだよ!」
 チーフに胸ぐらを掴まれたところで、作業員は意識を手放した。
「大変だ! 救急車を!」
 別の作業員達が慌てだす。チーフが周囲を見渡すと、他にも数名倒れていた。
 チーフは舌打ちすると作業員から手を離し、会社に連絡を入れる。
「また数名倒れました。代わりを至急よこして下さい」
『体調管理は自己責任。倒れた連中の名前を報告しろ。解雇だ』
 チーフの持つ機器から会社からの非情な指示が他の作業員達にもはっきりと聞こえ、震え上がる作業員達を尻目にチーフは淡々と倒れた者達の名を報告。
『倒れた連中は放り出せ。代わりに奴らを使う』
 会社から続く話にチーフは耳を疑った。
「飼いならした従魔?」

●便利な従魔
 解雇した者達を放逐し、会社から4体の『それ』が搬送され数時間後。チーフは上機嫌だった。
「なるほど。これは便利だ」
 数人がかりで運ぶ資材も、1体で軽々と運び、口うるさく指示を飛ばしても文句ひとつ言わず淡々とこなしていく。
 他の作業員達は内心の恐怖を押し殺し、それらから距離を置き働いていた。
 率先して重い機材や大きな資材を運んでくれるのはありがたかった。……連中の頭に角が生えてなければ。
 ファンタジーの世界に通じる人がいれば、ゴブリンと呼ばれる存在に近い姿だとわかるだろう。
 会社の話では売り込みに来た男がいたらしい。
『捕えて飼いならす事に成功した従魔です。便利ですよ』
 会社も半信半疑だったが、自分達の指示に従い、危害を加えようとしない状態が続いたので購入。
 そしてチーフもその仕事ぶりに、話が本当だと確信する。
 やがて全ての作業が締切よりも早く終わり、チーフは満足し、会社へ報告を入れた。
「従魔を飼いならせる筈がありません。大参事になる前に、イベントを中止して、退治の依頼を……」
 意を決した作業員がそう進言するが、チーフは取り合わない。
「馬鹿を言え。中止したら大損だぞ。誰も気づいちゃいない。このまま黙ってろ。喋ったら……今あの連中を動かしているのは誰か、わかるよな?」
 口止めの脅しだったが作業員達には逆効果だった。
 もう限界だ。
「おい、何職場放棄してやがる! てめえら全員クビだ!」
 イベント会場から逃げ出していく作業員達にチーフは怒鳴り声を上げるが、その声は背後の破壊音と悲鳴で掻き消された。

●便利の報い
「警察から緊急の依頼が入りました。あるイベント会場で暴れている従魔退治です」
 担当官の説明と共に、目の前に現場となる場所の地図が映し出された。
「場所はこの地域にある公民館の大型駐車場。この地域では毎年特定の時期にイベントを催すとの事で、今回のイベントもその一つです。従魔が暴れたのは、そのイベントの最中でした。その従魔達ですが、全部で4体。寄せられた情報を調べた限りでは、恐らく全てミーレス級。見た目はゴブリン、と言えばわかるでしょうか。異論がなければこのままゴブリンで通します」
 目の前の地図が現場となる大型駐車場の見取り図に切り替わる。
「イベント開催中、駐車場中央にステージが置かれ、それを囲むように屋台が設営され、人々で賑わっていました。ゴブリン達は逃げ惑う人々の中から1人の男だけを捕まえ、ステージ上に連行した後、交代で男の監視と周囲の設営物の破壊に動いているとの事です。その為負傷者こそ出ましたが、今のところ死者は出ておりません」
 現場に駆け付けた警察によると、ゴブリン達は捕まえた1名を除き、人々には見向きもせずイベント会社の資材の破壊に専念していた為、避難誘導は容易だったらしい。
「その捕まった1名ですが、このイベントの設営や運営、撤去を請け負った会社の社員との事で、現場では『チーフ』と呼ばれていたようです」
 画面が捕まっている男の写真に変わる。警察が現場で撮影したらしく、男の両脇には、先程ゴブリンと形容した姿そのままの従魔2体が写っている。
「警察が会場の現場作業員達から話を聞いた結果、この従魔達も同じ作業に従事していました」
 騒動が起きる前に逃げ出し、無事だった作業員達の証言によると、チーフが作業中に倒れた人を放逐後、会社からあの従魔達が搬送され、そしてチーフは従魔達を『便利な労働力』として作業に従事させた。
 たまたま自衛の為、懐に録音装置を忍ばせていた作業員が提出したその装置からも、一連のやり取りが確認できた。
「明らかにこのチーフは事情を知っています。今はゴブリン達も破壊活動だけに留まっていますが、このまま被害が会場だけに留まり、チーフが無事である保証はありません。これ以上の被害拡大防止もありますが、詳細を明らかにする為にも、チーフの身柄を確保し、ゴブリン達の退治をお願いします」
 担当官は頭を下げた。

解説

●目標
 従魔達の被害を減らし、チーフを確保。

●登場
 ミーレス級従魔『ゴブリン』(略称:小鬼)4体
 2m弱ほどの屈強な肉体と醜悪な顔つき、角を持つ外見をした従魔。設営作業に従事していたことから、命令を聞き分ける程度の知能はある模様。武器はなく、殴る、噛む、破壊した資材を振り回す、投げつける、などの攻撃を行う。
 現在4体は交代でステージ上にいる男の逃走阻止と会場の破壊を行っている。

 チーフ
 イベント会社社員。現在ステージ上で助けを求めている。これまでの証言などから従魔達が現れた『事情』を知っている模様。
 
 イベント会社
 チーフの所属先。警察の追及に対し『チーフの独断』と主張し懲戒解雇したと説明。できるだけ資材を傷つけないよう訴えている。なお警察はチーフの身柄を確保し自供が得られれば、会社を検挙する予定。

●状況
 とある地方公民館前の大型駐車場。幅70m、奥行き50mの平面。イベントの為、中央にステージが設置され、ステージ前の観客席を囲む形で、テントや出店が立ち並んでいた。警察からは公民館への被害がなければ問題ないとの事。
 警察により、周辺道路の封鎖と参加者達の避難はチーフ以外は完了済み。
(PL情報:現場到着時には、ステージを除く設営物は全て破壊されており、障害物はありません)

マスターより

 岩岡志摩と申します。
 従魔退治と人質救出の二本立てですが、人命救助よりも資材が大事というところにこの会社の素が見えます。
 会社の主張や警察への説明などの情報はPC様たちの知るところと扱って下さって構いません。
 今回チーフの身柄が確保できれば、従魔を売り込みに来た男の追跡と会社の検挙は警察が行います。
 よろしくお願いいたします。

リプレイ公開中 納品日時 2015/09/28 15:20

参加者

  • 魔王の救い手
    填島 真次aa0047
    人間|32才|男性|命中
  • シャドウラン
    カペラaa0157
    人間|15才|女性|攻撃
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
    機械|27才|女性|生命
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • エージェント
    金鞍 馬頭鬼aa0309
    人間|23才|男性|生命

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避
  • 真仮のリンカー
    都呂々 俊介aa1364
    人間|16才|男性|攻撃
  • エージェント
    メリッサaa1401
    機械|22才|女性|攻撃

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