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戦闘

【ドミネーター】選別と死

玲瓏

形態
シリーズEX(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,800
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/07/17 12:00
完成予定
2018/07/26 12:00

掲示板

オープニング


 二十段の、段差の小さい階段にはノボル以外誰も人がいなかった。留置所に用がある人間は非常に少ないのだ。誰も彼も今という時間が忙しい時に、わざわざ罪を犯した人間に会いに行くのは有効な使い方ではないのだろう。ただノボルは、時間使い方として最善だと思う一つの階段を降りることにしたのだ。
 狭い空間に閉じ込められていたテスは、不恰好な服を着せられて背筋を丸めていた。
「少年、ヌケヌケとなんの障壁もなく私と向かい合うとは勇気があるな」
 ノボルは管理人から、直接部屋の中に入る事を許された。快い表情ではなかったが。
「貴方の顔を見て、直接お話がしたかったんです」
「随分と大人びた考えだな」
「よく言われます」
 ドミネーターと関わり、飛行機の自爆テロまでも引き起こそうとしていた危険人物は、今や面影が薄れていた。体の中で燃え盛っていた炎が、蝋燭の火のように大人しくなってしまった。
 真っ白い部屋の中にノボルは椅子を見つけて深く腰を落ち着かせた。テスはベッドの上に座って、顔だけをノボルに向けていた。
「バグダン・ハウスを襲うよう計画したのは貴方です。しかし、なぜドミネーターと協力関係になったのでしょう」
「私が嘘をつかないという保証は」
 声には脈がなかった。雑草しかない平坦な道をゆっくり歩くような声だった。
「嘘をつくメリットがあるとすれば、自分の自尊心を傷つけないことくらいです。それくらいの嘘だったら、軽く調べればわかることです」
「そうだろうな。私は死ぬまで、ここにいる事になる」
 だがテスは、ここが自分の家だとは全く思っていなかった。
「私はドミネーターというテロ組織を操るつもりでいた。支配者を支配し、最終的にはフランメスを私の目下の存在に仕立てあげる予定だった。なるべく私がバグダン・ハウス事件の首謀者だと知られないように部下に手を回しながら武器売買や、金銭的扶助をしてきた。正体を隠しながら、更に彼らを支配下に置く準備はしてきた。私が贈っていた物には人間の脳に直接影響を与える物質が含まれていた。フランメスや、彼らのストレス値を活性化させる化学物質を仕込み、嗅覚や聴覚、味覚を使って支配していた。具体的にいえば、松果体と呼ばれる脳の一部を正常に機能させないよう少しずつ仕向けてきたんだ」
「詳しいのですね、やけに」
「こう見えて市長だ。市民をどう操るかを勉強するのは初歩的な事なんだよ。知るために人間の脳を理解する必要があった。人間はストレスに強く影響を受ける。そのストレスが、人間支配の根本といっても過言じゃない」
 薬物や、調教といった目に見える洗脳ではない。長い年月をかけて行われるものは洗脳ではなく、支配だ。テスは市民や、ドミネーター達を支配する計画だったのだ。強力なテロリストがバックについていれば、マフィアに目を付けられることはない。命の心配は杞憂となるのだ。
「残念なことに、フランメスもまた私と同じ考えだった。市長を支配下に置くことで、街を自由自在にコントロールするつもりでいたらしい。もしくは、私が首謀者だとどこからか情報が漏れた可能性もあるんだろうな」
「そうなんですか」
「フランメスの提示した協定条件の一つに、私の養子を預からせてもらうとあった」
 平坦だった雑草の道に、白い綿毛がふわりと浮いていた。誰かが息を吹きかけて飛ばしたのだ。
「条件を飲まなかった場合、私との協定は成立しない。半ば強制的な物だったが同意せざるを得なかった。ドミネーターは町の中でも上位なテロ組織だったからだ。私が支配下に置きたいと思っている、とはフランメスも分かっていた。そこまでは――いい。だが、私の養子とはバグダン・ハウスで生き残った一人の少女だったのだ。私は奇跡の子として自宅で育てていた。それを、預かりたいと申し出てきたのだよ。私は最初意味が分からなかったが、後に人質だと分かった。」
 以前奴隷船の制圧で、少女が目撃されていた。ノボルは真っ先にその報告書が思い浮かんだ。
「以上が、私から話せる全てだ。嘘も何もない、調べてくれればすぐに分かる」
 この空間に自尊心も何もない。テスは虚ろの目を見せた後、目の前の壁を真っすぐ見つめて、顔を両手で覆った。肘を膝の上に乗せ、背筋が更に丸まった。
「後悔してますか、彼らと手を組んだことを」
 ノボルがそう訊くと、彼は姿勢を変えずにただ呟いた。
「あの時、市民にもっとリンカーという存在の無害さを知らしめるために、あの事件を起こさなければ。私の後悔は十字架を背負った時からずっと始まっていた」
 終わらない道。償いの道はどこまでも暗く、広い。

解説

●目的
 制圧。

●ジェシー
 人間に対する失望感から来る怒りは、彼女の戦闘能力を狂わせる結果となる。痛覚を麻痺させ、防御力と俊敏性を高める。今までは華麗な戦い方をしていたジェシーは、今回はレイピアで残虐とも呼べる手法で戦う。美しい物には更なる優美さを。醜い物には、悪夢を。
 彼女の真なる目的は自分に相応しい、美しい人間を決めることであった。契約や殺戮といった物には興味がなく、若干支配欲はあるもののパートナーなる人間を見つけ、我が物にするといった野望。
 真なる愛を汚染させることは、ジェシーの美学ではない。彼女は正真正銘の愚神だが、目的は他の愚神と大きく異なっているだけであった。

●シュレイン
 彼はバグダン・ハウスの事件で婚約者を失っていた。それからアヴァダと呼ばれる愚神と誓約し、毎晩従魔や愚神の頭部を捧げることで婚約者と夢で会わせる約束を交わしている。夢と現実の区別は曖昧。夢を現実だと思えない限り、婚約者は死んだままだからだ。だから強引に夢と現実の線引きを曖昧にすることによって、自分の生きる気力を保っている。
 もし、シュレインが瀕死に追い込まれたらアヴァダが姿を現すだろう。アヴァダは長い鎌を持ち、黒い羽の生えた悪魔。3mもある体でエージェント達を襲う。

●隠れ家
 未だに謎は明かされていない存在だが、前回のシナリオで辿り着いた者がいた。今回の行動で調査をすることも可能。

マスターより

●当Msはアドリヴ成分が多めです。

 最近都市伝説系の動画や読み物にハマってしまいました。その中で面白かった説があるので一つ紹介……。
 皆さん音楽は好きですか。好きならば、特に面白いと思います。
 音楽には周波数があり、今現在一般的に使われているのは440Hzなのですが、440hzは左脳を活性化させると言われています。それに対し、もう一つ432Hzというのがあり、そちらは右脳を活性化させます。右脳は創造性や直感、閃き等を司ると言われています。(右脳左脳はないという説もありますが)
 試しに432Hzの音楽を聴きながら書いたのですが、いつもと変わりはあるでしょうか。無かったらどうしよう。

関連NPC

  • エージェント
    坂山 純子az0031
    人間|31才|女性|回避適性

リプレイ公開中 納品日時 2018/07/24 19:15

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • 解放の日
    ジスプ トゥルーパーaa0575hero002
    英雄|13才|男性|バト
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • 南氷洋の白鯨王
    オールギン・マルケスaa4969hero002
    英雄|72才|男性|バト
  • 鋼の心
    風代 美津香aa5145
    人間|21才|女性|命中
  • リベレーター
    アルティラ レイデンaa5145hero001
    英雄|18才|女性|ブレ

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