※本シナリオはプレ選択により難易度が変化します。

●嘆きの店主
「ちくしょおぉぉっ！！　愚神めぇぇっ！！」
「……はぁ」
　お昼時なのに閑散とした飲食店内で、店長の男性が涙混じりに絶叫した。
　カウンターではアルバイトであり店長の娘でもある少女が暇そうに座り、テレビを見ながらため息をつく。
「ウチが暇なのは愚神のせいじゃなくて、父さんたちの経営戦略の甘さが原因でしょ」
「うっせー！！　手厳しいな我が娘！！」
「うるさいのは父さんの方だから。テレビの音聞こえないから静かにしてよ」
「ぎゃふぅんっ！？！？」
　胸を押さえて崩れ落ちた男を無視して、少女はそっとテレビの音量を上げた。
　ニュースはH.O.P.E.と善性を名乗っていた愚神との決裂が大々的に報じられ、様々なコメンテーターが好き勝手に論評や持論を展開している。
「ってかさー、何でウチの商店街の人みんな『善性愚神』が次のトレンドだ、って思ったわけ？　あからさまにおかしかったじゃん、あんなの。一応、私反対したよね？」
「なんだよー、いいじゃんかよー、時代の最先端は最初誰にも見向きもされないモンじゃんかよー」
「その結果がコレじゃ、笑い話にもなんないし。ちゃんと時給はもらうからね」
「ふぎゃぁんっ！？！？」
　ふてくされて芋虫のようにうごうごと転がるおっさんに、少女は冷たい眼差しでとどめを刺す。
　経緯は単純だ。
　閑散とした商店街を盛り上げようとした飲食店の店主たちが、『善性愚神』の存在に乗っかってデカ盛りメニューを考案したのだ。安直である。
　当初はそれなりの話題になったものの、そう時間がたたずに『善性愚神』たちの陰謀が明らかとなり、『愚神擁護派』と勘違いされてお客さんが一気に減ってしまったのだ。自業自得感は否めない。
「でもさーでもさー、発注した食材の量スゴいじゃんかー。ほっといたら傷んじゃうし負債はかさむし、このままじゃウチ潰れちゃうじゃんかー。シャレになんないじゃんかー」
「いい年したおっさんがイジケないでよキモいから」
「見捨てないでおじょうさぁ～ん！！　何か妙案出してよ、娘だろぉ～！？」
「（ウザ）……じゃあH.O.P.E.に頼めば？　愚神のせいでお店が潰れそうだ～、ってさ」
　愉快な父と冷めた娘の会話は、完全に投げやりな娘の一言で一転する。
「――それだぁっ！！！！」
　まさに天啓を得たとばかりに復活した店主は、ドタバタと店の奥へ引っ込んでいった。
「…………え、マジで？」
　残された娘は、適当に言った自分の言葉を真に受けた父親に呆れるしかなかった。

●過疎商店街のCGW作戦？
「――あ、それとこれは依頼とは関係ないんですけど」
　エージェントへ依頼の説明をしていた佐藤　信一(az0082)は、1枚のチラシを取り出した。
　あの自爆した商店街のデカ盛り宣伝広告である。
「少し前に知り合いから『愚神のせいで店が潰れる！』と連絡がきまして、困ってるみたいなんですよ」
　おおよその概要を聞いたエージェントは大半が呆れた顔をして、信一も苦笑しか返せない。
「状況が状況ですので依頼料も用意できず、正式な依頼として扱われてはいません。が、さすがにちょっと可哀想なので僕の方から宣伝だけさせていただいてるんですよ。せめて余剰在庫は消費したいでしょうし」
　完全に見切り発車した店主たちが悪いのだが、チラシのメニューは普通においしそうだ。
「僕の紹介と言えば、今回だけ交通費を出してくれるそうですよ？　H.O.P.E.エージェントの来店で、間違った『愚神擁護派』のイメージを払拭できればひとまず安心らしいので。ただ、できれば売り上げは作りたいとも仰っていて、注文料金は普通に発生するそうです」
　売り上げが厳しい店側ができる、ギリギリの譲歩が交通費支給なのだろう。
　これもある意味で『善性愚神』の被害をかき消す『CGW作戦』なのかもしれない。
　……被害規模も被害内容もすっごいちっちゃいが。
「ちなみにデカ盛りメニューは制限時間内に完食すれば、広告通り無料（タダ）になるそうですよ。興味があれば挑戦してみてはいかがでしょうか？」
　最後にそう付け足し、信一がチラシを渡して話を終えた。

●目標
　各制限時間内にデカ盛りメニューを完食

●登場
　形落（かたおとし）商店街の有志…不思議とギリギリ潰れない経営状態を維持する商店街の飲食店店主たち。腕も味もいいが、宣伝力が残念なため繁盛した試しがない。善性愚神に乗っかり各店舗でデカ盛りメニューを考案したが、情勢の変化により在庫と絶望だけが残った。

●メニュー
　ミーレス級パフェ（易しい）…そびえ立つアイスに大量のフルーツが刺さるスイーツの巨塔。総重量約1kg（器を除く）。制限時間20分。3,000G。

　デクリオ級海鮮丼（やや易しい）…マグロの赤身やトロなどを山のように盛った海鮮丼。お味噌汁・おしんこ付き。総重量約2kg（器を除く）。制限時間30分。5,000G。

　ケントゥリオ級ハンバーグ（普通）…鉄板に悠々と寝そべる大判ハンバーグ五枚敷き。ソースはデミグラス・照り焼き・おろしポン酢の3種類。総重量約3kg（器を除く）。制限時間40分。8,000G。

　トリブヌス級揚げ物定食（やや難しい）…大量の千切りキャベツを唐揚げ、トンカツ、牛カツで皿を覆い隠すキツネ色の暴力。ライス・キャベツのお代わり無料。総重量約4kg（器を除く）。制限時間50分。10,000G。

　レガトゥス級カレー（難しい）…船体がごとき器の中央にご飯のダムがそそり立ち、辛口と甘口2種のカレーが湖を形成。トッピングは別料金。総重量約5kg（器を除く）。制限時間60分。15,000G。

●状況
　大量に仕入れた食材の処分に困った店主の1人が信一に相談
　依頼斡旋のついでに行われた宣伝で一部PCが名乗りを上げた

　制限時間超過orギブアップor生命力0以下で料金分の所持金減少
　挑戦中、一定時間で通常判定（難易度変動）が発生し食事速度に影響（生命力減少あり）
　プレ行動記載の戦術（※咀嚼法、食事順、水を飲むタイミング等）により判定に修正が入る
　胃袋の容量は修正値に影響なし

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  腕時計が繋ぐ誓約と絆
  佐藤　信一（az0082）
  人間|25才｜男性｜-