本部

調査

ヴィランサンタを探せ!?

和倉眞吹

形態
ショートEX
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加人数
能力者
0人 / 4~6人
英雄
0人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/12/21 12:00
完成予定
2018/01/04 12:00

このシナリオは5日間納期が延長されています。

掲示板

オープニング

 邸の大広間は、この時期恒例のクリスマスパーティで大いに盛り上がっている。
 それを遠くに聞きながら、サンタの格好をしたヴィランのティムは、足音を殺して二階への階段を登っていた。
 よい子の皆にあげるべきプレゼントは、背負った袋の中にはない。袋は、今から一杯になるのだ。
 これまで散々盗みを働いていながら、死傷者は一人も出していない自分に、今年も年末のご褒美である。サンタの格好をしているのは、見つかった時に言い訳がし易いからだ。
 二階は、仄かな明かりが灯ってはいるが、薄暗い。
 ティムは注意深く、二階のホール左手にある通路を進み、扉の向こうの気配を探った。
(誰もいないんじゃない?)
 共鳴状態になった相棒・ロナが、脳内で囁く。
 だな、と脳内で答えると、ティムは扉を押し開けた。
 大事な物は、大体邸の奥深くに隠してあると相場は決まっている。そっと扉を閉じると、室内は群青色の闇に沈んだ。その中を、懐中電灯の明かりで撫でるように照らす。どうやら、主の書斎らしい。
 ティムはひとまず執務机に歩み寄った。直後。
「駄目よ、デヴラ。あまり奥に行かない方がいいわ」
「だって、ここしか探す所残ってないもん」
 そんな話し声がしたかと思うと、パッと扉が開いた。逃げる隙もなく、室外からの明かりで、ティムの姿は露わになる。
 部屋の扉を開けたのは、二人の少女だ。一人は、五、六歳で、もう一人は十歳前後に見える。ティムと彼女らは、互いに瞬時硬直した。
「あれぇ、サンタさんだぁ」
 逆光に遮られて、少女達の表情はよく見えない。と思う間に、年嵩の少女が部屋の明かりのスイッチを入れた。
 薄暗がりに慣れた目を、一瞬輝きが刺す。
「ねぇ、どうしてここにいるの? さっき大広間にいたのに」
 駆け寄った小さい方の少女に言われて、瞬時ギクリと固まった。
(ちょっと、ティム。何の為のサンタの変装よ?)
 しかし、脳内で相棒にそう言われれば、硬直は解ける。
 不自然でないように微笑を浮かべ、身を屈めた。
「今移動して来たんだよ。こっちにもよい子の皆がいるかと思ってね」
「すごぉい。大広間にサンタさんが来たから、あたし友達を呼びに来たの」
「そうなのか」
「プレゼントは?」
 キラキラした目で催促され、ティムは再度固まった。プレゼントなんてない。仕事中に見つかったのも、実はこれが初めてだ。
「……ごめんよ。ついさっき、君の友達にあげたのが最後だったんだよ」
 強引に身体の主導権を奪い取ったロナが続け、白い袋を振って見せる。
(仕方ないわ、出直しましょ。近くのトイレで変装し直すの)
 そうだな、とティムが答えるのを確認して、ロナは「じゃあね」と小さい少女の頭を撫でる。
 その時、「俺、プレゼントなんて貰ってないぞ」と室内から声が掛かった。
 ロナが反射で振り向くと同時に、「あーっ! サム!」と小さい少女が声を上げる。
「やっぱりここに隠れてた!」
「まだかくれんぼ続けるつもりか?」
 サム、と呼ばれた、七歳くらいの少年は、呆れたように言いながら広い場所へ出て来る。
「そんな場合じゃなくなってるみたいだけど?」
 広い部屋の反対側の隅から、別の声がしたと思うとそちらからも少年が姿を現した。どうやら、パーティに退屈して、かくれんぼをして遊んでいたらしい。
 それにしても、まるで気配を感じなかった。
「それでおじさん、本当は誰?」
 サムが、大きな瞳で冷ややかにロナを見上げる。
「……もう連れて帰るしかないわね」
 ボソリと呟いたかと思うと、サンタの身体が光った。
 眩しさに四人が目を瞑り、次に目を開けた時には、サンタの姿はない。代わりに、そこには中年の男と少女がいた。
「ティム!」
「おう!」
 ティムは、素早くサムを小脇に抱え、もう一人の少年・シストに手を伸ばす。ロナの方は二人の少女・デヴラとイルダに向かって地を蹴った。
「デヴラ!」
 身を竦ませたデヴラをイルダは抱き寄せようとするが、タッチの差でデヴラはロナの小脇に抱えられ、イルダは伸ばした手を背後に捻られた。
「何するのよ!」
 何者かは、訊かなくとも分かった。リンカーだ。が、恐らくH.O.P.E.の人間ではない。
「大人しくしてくれる? あたし達、怪我人や死人を出さない主義なの」
 ロナは、イルダと外見は同い年くらいだ。その為、イルダの方は小脇に抱える事はできなかったのだろう。
 しかし、イルダとて大人しくしている気はない。
「知ったこっちゃないわよ!」
 思い切り相手の向こう臑に蹴りを入れる。
「いっ!」
 堪らずロナはイルダの手を離した。イルダは、緩んだロナの腕からデヴラを奪い返して共鳴する。
「なっ……まさか、あんた達も!」
 ロナは目を瞠り、状況を理解するやティムを振り返った。
「ティム! この子達リンカーよ!」
「何っ!? まさかH.O.P.E.か!?」
「判らないけど、早く! あたし達も」
「させないよ!」
 ティムが動揺した隙に、シストは取られていた腕を振り解き、サムに手を伸ばす。
 少年達が手を握ったと思った途端、彼らは一人の少年の姿に変じた。

 ドン! と何かが爆発するような音がして、ブレイクリー邸のパーティに参加していたH.O.P.E.のエージェントは音源を振り仰いだ。二階のようだ。
 個人宅のパーティで、警備の依頼が舞い込むのも珍しいが、邸の立地によるモノだろう。この辺りは人家はここだけで、街からはやや離れている。
 隣の家が、どれくらい先かは判らないが、豆粒位の大きさに見える事は確かだ。
 ともあれ、大部分パーティを楽しむつもりでいい、と上からは聞いていた。その筈なのに、明らかにこれは何かが起きている。
 他の一般客も、音のした方を見て、不安げに顔を見合わせた。
「今の音、聞こえたよね?」
 相棒の英雄に囁かれ、エージェントは吐息混じりに頷く。
「パーティは一時お預けってトコだな」
 他の仲間達と目配せして、エージェントは二階に向かって歩を踏み出した。

――――――――

登場
◆ブレイクリー(65)…パーティを主催する資産家。

◆一般招待客…子供も合わせて30人位。

◆ティム(45)…ヴィラン。こそ泥。人を殺傷しない、が信条。〔AGWなし。仕事時は変装の為、共鳴〕
◇ロナ(13)…悪戯好きの英雄。少女。こそ泥業も悪戯の延長。〔能力:特別な道具は用いずに誓約者を変装させられる。攻撃:スキル頼み〕

◆サム(7)…能力者。ワンパク盛りの少年。パーティには両親と参加。非エージェント。
◇シスト(11)…英雄。少年。正義感は強く、大切なモノを守る為なら身体を張るタイプ。〔攻撃:スキル頼り〕

◆デヴラ(6)…能力者。少女。非エージェント。両親とパーティに来た。内気で気弱。サムとは幼馴染み。イルダを姉のように慕っている。
◇イルダ(12)…英雄。少女。おっとりとして優しい性格だが、デヴラに危険が及ぶと黙ってない。〔攻撃:スキル頼り〕

解説

〔〕内は、PL情報。PCがこれを知るには、何らかの行動が必要。登場人物に関しても同様です。

▼目的
・ヴィランと相対するちびリンカーの援護
・ヴィランの確保
・招待客の安全の確保

▼備考
◆ティムは指名手配中。
但し、人相も名前も年齢も不明。警察の間では、『ファントム』というコードネームで呼ばれている。『被害だけが後に残り、死傷者が一切出ない』というのが由来。

◆邸情報
敷地面積:1350平方m。奥行き25m、横幅54m。
一階:部屋数10。
玄関ホールを入ってすぐ大広間があり、向こう側が庭へのバルコニー。
右手の扉を入ると宿泊客用エリアと、奥に厨房と使用人の部屋。左手はリビング、応接室とサンルームに通じる部屋がある。
二階への階段は大広間と客用寝室の傍。一階トイレは広間階段横。
二階:部屋数11。
階段を上がると広い空間があり、ホールとして使う事もできる。
正面に家族用の私室があり、その両脇を囲うように廊下がある。左手は書斎、右手は主の寝室に通じる。
左手も、家族の私室。他、浴室、使用人部屋、トイレなど。

〔◆その他
・邸周辺はだだっ広い野原。最悪、邸が半壊するような戦闘になっても、邸の主以外に迷惑は掛からない。
・ので、邸の外へ逃走したとしても隠れる場所もなく、ティムは邸内に潜んでいると見られる。また、英雄の能力により変装が可能なので、全くの別人に変じて一般客に紛れている可能性がある。
・本物の一般客は、招待状を持っている。
・ちび達に情報を提供して貰うのも可。英雄達の方が多分頼りになる。
・ちび達&ヴィラン共に戦闘経験はゼロ。〕

マスターより

こんにちは。お久し振りです、和倉です。
今年も何だかあっという間に一年過ぎた気がします(毎年言ってる←)。

今回はパーティに託けた(?)、なんちゃってミステリ&ドタバタコメディです。
目標が色々ありますが、纏めると、死傷者を出さずに泥棒を捕まえる事です。
ちび達の戦闘経験はゼロですので、早く助けてあげて下さい。そして、泥棒の方も戦闘経験はゼロです(え)。
あれれ、どっちを助ければいいかって? さあ、そこがコメディですね!(カオスになって来た)

それでは、プレイングはいつものようにMS自己紹介を参照の上、ご自由にお書き下さい。
皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
そして、かなり早いですが、よいお年を!

参加受付中 プレイング締切日時 2017/12/21 12:00


参加にはSC1,500が必要です。

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