本部

恋愛

聖夜に謳え ~愛は自分を救う~

一 一

形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
能力者
1人 / 4~10人
英雄
1人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/12/19 15:00
完成予定
2017/12/30 15:00

このシナリオは2日間納期が延長されています。

掲示板

オープニング

●恋は清浄 愛は戦争
「さとう、さん――」
「……う、すい、さっ!!」
 空には星々が、地上ではクリスマスのイルミネーションが、1組の男女を祝福するように光り輝く。
 今、この瞬間。
 世界の中心となって抱擁を交わす片割れ――碓氷 静香(az0081)の唇から、熱い吐息が漏れた。
 もう片方、静香の顎を肩で受けとめ、耳元を白い声でくすぐられた佐藤 信一(az0082)は、息をのんで固まる。
「――ん、ぅ」
 す、と離れた顔が真正面にくると、静香はまぶたをゆっくり下ろし、距離を縮めていく。
 ぷっくりと膨らみ、つやを帯びた唇が、信一の少し乾いた唇と重なる――寸前。
「……碓氷さんっ!!」
 信一は強引に身を寄せて、静香からの求めを躱して、逃げた。
「……イヤ、ですか――?」
 声音は、いつもと変わらず平淡で。
 しかし拒まれて平然とはしていられないのか、信一の背に回った腕は、震えていて。
 先ほどは熱いくらいだった声が、どこか悲しげに沈んで、冷たい。
「…………ゴメン、碓氷さん」
 声音は、いつもとは違い苦しげで。
 あまりにも切なく、すがりつく子どものような頼りない体を、いっそう引き寄せて。
 確かに痛み暴れる心臓ごと抑え込みながら、顔を苦渋でゆがめる。
「どうして、ですか?」
「本当に、ゴメン――」
 こんなにも近くで、触れ合っているのに。
 想いを通じあえる、ほんの少しの距離が。
 こんなにも遠くて、泣き出しそうになる。
「でも、僕は――」
 お互いの顔を見ないまま、ぎりっ! と奥歯をかみしめて、信一は答えを絞り出す。
「僕はっ! 大切な人とのファーストキスは、もっと雰囲気を大事にしたいんだっ!!」
 あふれ出す愛おしさを腕の中に閉じこめて、信一は悲痛な声を上げて『現実』と向かい合った。
『美人とハグゥ~ッ!!』
『美人とキッスゥ~ッ!!』
『オ゛レ゛ドガワ゛レ゛ェ~ッ!!!!』
 信一と静香が創り出した世界の中心――もとい、若干透けたピンク色のハート型特殊防護壁の周囲では、血の涙を流しながら両手で殴り続ける亡者の群れが、地獄の釜のフタを開けたような叫びを上げていた。
 最初は2人の周囲を囲むだけだった全身真っ黒の亡者は、信一と静香がイチャイチャすると加速度的にヒートアップ。今ではもう、立体的に形成された防護壁の天井部まで漆黒の人影に埋め尽くされ、妬み嫉み恨み羨みが全方位から突き刺さる。
 内と外の温度差が、本当に半端じゃなかった。
『よく言ったわ、信一! 静香も勢いでしちゃったら絶対後悔するはずだし、何より私も巻き添えでファーストキスを奪われたらたまったもんじゃないし!!』
 すると、シュン、と落ち込む静香の口からレティ(az0081hero001)の切実な叫びが飛び出した。
 焦れた恋愛に付き合わされたレティとしても、静香のことを思えばそろそろキスくらいしろとは思うし、ほぼ家族だと思っている信一のことも決して嫌いではない。
 だが、身内と身内の恋人が交わすキスを、自分も共有するとなると話は変わってくる。
 しかも、えげつない負のオーラを放つ愚神の群れに見られながらなど、罰ゲームでもタチが悪すぎる。
 意外とロマンチストらしい信一のヘタレ発言に、しかし今回ばかりはレティも全面的に同意していた。
「ですが、私たちの『愛』をもっと強く示さないと、防護壁がいつ崩されるかわかりませんよ?」
「『う……』」
 ガンゴンガンゴン!! とうるさい騒音の中でもはっきり聞こえる静香の言葉に、信一とレティも黙るしかない。
「それが、この空間の『ゾーンルール』なのですから――」

●場所は路上 敵は不浄
 時間は少しさかのぼる。
「クリスマスのイベント会場が、突如出現した愚神のドロップゾーンに飲み込まれました」
 通常の勤務を終えた帰り道、愚神と遭遇した信一と静香はすぐさまエージェントに連絡していた。
「一瞬の出来事だったので、敵の姿や能力は不明です。今、支部にも連絡を入れて増援を呼んでもらっているところです」
 ここに集まったのは、少しでも早くイベントに集まった人々を救出するため、信一たちが片っ端から声をかけてできた急造の先遣隊。危険な役回りではあるが、悠長に構えてもいられない。
「僕たちは後からくる増援に詳細を伝えるため、ここに残ろうと――っ!?」
 そして、信一が職員としてのサポートに徹すると伝えようとした瞬間、ドロップゾーンの範囲が一気に拡張。信一たちを丸ごと飲み込んでしまったのだ。

 ――現在。
「さあ! あたしのためにキリキリ働きな、ブタども!」
『あふぅん!? ――は、はい、女王様!!』
 エージェントたちはドロップゾーンの主らしい、うじゃうじゃとわいて出る亡者を鞭でしばくミニスカサンタと相対していた。
「おや? 新しい獲物が来たようだねぇ?」
 ドSサンタがエージェントに気づくと、鞭の音を合図に四つん這いにさせた亡者の背中に腰掛け足を組む。
「ここは『愛』が『力』になるあたしの世界。『愛』が強くなればなるほど『力』が増大し、脆弱な人間から奪うライヴス量も増やせる――素晴らしいだろぉ?」
『あひぃんっ!!』
 嗜虐的な笑みを浮かべ、無造作に亡者の尻へ鞭を入れるサンタ愚神。
 亡者は恍惚の吐息を漏らして震え、悦んでいる。
『愛』は『愛』でも、愚神のそれはアブノーマル寄りだった。
「察するに、あんたたちはあたしを止めに来たんだろう? なら、早く止めてみな。でないと、この世界は『愛』を吸ってどんどん大きくなるからねぇ?」
 登場からずっと呆気にとられていたエージェントも、その言葉で表情を引き締めた。
 つまり、『愛』で増大したライヴスは中にいる自分たちだけでなく、ドロップゾーンそのものも強化・拡大していくのだろう。自分たちを飲み込んだように。
 早くあのドSを倒さないと、街中に変態亡者があふれることになる。
「さあ、せいぜい足掻くんだねぇ!!」
 パシィンッ! と音が響くと同時に、エージェントたちは亡者愚神に囲まれた。

「こうしたら、手、温かいですよ。――ね?」
「ぅ、碓氷さんっ!?」
『ヂグジョオ゛ォ~ッ!!??』
 その頃、静香と信一は己の身を守るため、全力でイチャついていた。
 指と指をぎゅっと絡ませる恋人繋ぎで手を握る静香に、信一は赤面してうろたえる。
 それを見た外野は、耳や口からも血を流して2人だけの空間を壊そうと死に物狂いだ。
『まさか、静香の長いぼっち経験が、自然と自分の世界に浸る技術を卓越させていたの……!?』
 そして、自分も知らない妹分の意外な成長(?)に、レティは1人戦慄する。
 気づけば2人の『愛』が育んだ防護壁は、2桁の愚神の攻撃でも傷つかないほど、おっそろしい強度になっていた。
 爆ぜろ。

解説

●目標
 ボス愚神討伐
 一般人の救助

●登場
 サディンタ…ケントゥリオ級愚神。ボンテージの代わりにミニスカサンタコスを着用した女王様。鞭で飴を与えるドSタイプの『愛』。DZの拡張とライヴス強奪が目的だが、戦闘力はさほど高くない。

 能力…命中・特殊抵抗・イニシアチブ↑↑、生命力↓、攻撃・防御↓↓

 スキル
・愛の鞭音…射程0、範囲10、範囲魔法、ダメージ0、鞭の音で味方を鼓舞、DZ効果×1.2(3R)
・愛の鞭打…射程1~3、単体物理、命中+200、変幻自在の精確な鞭撃、敵→特殊抵抗判定[命中vs回避]勝利=BS衝撃(30)付与、味方→命中=DZ効果×1.5(1R)

 亡者×10~20…デクリオ級愚神。全身真っ黒で血涙を流す人型。非リア充の怨念が凝縮した悲嘆と怨恨をまき散らす。倒してもすぐに新しい個体が出現し、DZ内でほぼ無限に湧く。ドMだが短命。

 能力…攻撃↑↑↑、防御・特殊抵抗↓↓↓、生命力=30固定

●状況
 場所は都内某所のクリスマスイベント会場
 時間は夜で天気は快晴
 DZは広場の巨大クリスマスツリーを中心に、繁華街を巻き込んで現在も急速に拡大中
 地面は整地され、障害物は付近の建物以外ほぼなし

 PCはDZ中央部にてサディンタと接触(DZ侵入以降、自衛中のNPCとは別行動)
 戦場は広場が中心で、一般人の直接救出はDZ範囲が広大かつ少人数のため極めて困難
 開始時点の一般人はほぼカップルのため、NPC同様自衛は可能(長くは保たない)

●ゾーンルール
・『愛』を高める言動(メインアクション消費)でライヴス(各能力値)が一時的に強化+亡者の敵意上昇

・『愛』の種類・程度などで持続R数・強化対象能力・強化倍率が変動

・『愛』で強化されたライヴスは任意で形状変化可能(防護壁など)

・DZ内で失ったライヴス(生命力など)はDZ強化に転用→DZ拡大速度上昇

マスターより

 信一さんと静香さんが付き合いだして、もうすぐ1年。

 NPC登録の前から続いていた関係なのに、この2人キスもまだだったんですね。

 何してたんだよ、この1年……筋トレか。

 さて、今回のシナリオはコメディ寄りですが、DZの力もあってとても厄介です。しかし同時に、行動次第では能力値的に不安な方でも強敵と正面から殺り合えるゾーンルールでもあります。

 なので信一さんや静香さんみたいに、敵のSM的偏愛を覆す『愛』を示しましょう。恋愛でなくとも、親愛・敬愛・友愛・慈愛・博愛・恩愛など種類があるので、いろいろ試してみてください。

(あの2人のいちゃつきは書いていて殺意がわきました。……あ、これ、オフレコで)

関連NPC

  • 腕時計が繋ぐ誓約と絆
    佐藤 信一az0082
    人間|25才|男性|-
  • 腕時計が繋ぐ誓約と絆
    碓氷 静香az0081
    人間|21才|女性|攻撃適性

参加受付中 プレイング締切日時 2017/12/19 15:00


参加にはSC1,000が必要です。

掲示板

前に戻る
ページトップへ戻る