本部
【ドミネーター」サイドストーリー
- 形態
- ショートEX
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,500
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/05 12:00
- 完成予定
- 2017/10/14 12:00
掲示板
-
相談卓
最終発言2017/10/05 07:22:02 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/10/01 22:43:21
オープニング
●
独房の中は、一人になれば寒かった。毎日のように会いに来てくれるリンカーがいれば、少しは暖かさも思い出せるが。今は一人、真っ白な壁に情景を描くことで退屈を癒やすしかない。できればずっと一緒にいたいなんて、過ぎる我侭を思い浮かぶ。
彼女の名前はチャールズと言う。今も活動を続けている反社会組織のボス格を務めていた。正確には、脅迫じみたやり方で強引にボスを任せられてるだけの哀れな女性であったが、周りの人間からしてみれば関係のない話だ。テロ組織のボスを背負っていた。その情報だけで十分、永遠の孤独という罪はお似合いなのだと。
独房に住処が決まった時、チャールズは半ば孤独の運命を受け入れていた。今は少しだけ心変わりをしているが。出来るなら、自分を気にかけてくれたリンカーと一緒に暮らしたいと。夢の話。真っ白な壁には彼女の描くリンカーと英雄と、自分がお茶をしていた。
「ちょっといいかな」
チャールズに話しかけてきたのは独房の守衛だった。彼は長いことチャールズと一緒にいる。
「何だ」
「君が送ったお手紙の返事が一向に来ないんだ」
一週間前くらいに手紙を書いた。無性に書きたくなったのだ。宛先は自分の故郷。ロシアにある小さな村だ。
「あまり期待はしていなかった。忘れられていても仕方ない」
村に住んでいる家族に届けばいいと思ったが、今頃はクシャクシャに破り捨てられているだろうか。
チャールズは故郷を追い出されていた。リンカーがまだ普及してない頃、村では異端者として彼らを怖れる波風が立っていた。今は一般人になっているが、当時リンカーだったチャールズは村を追い出され、別の街にある孤児院に引き取られたのだ。
村の中で、唯一家族だけは命を賭けても守ってくれた。今はどうしているかと、家族に向けて他愛もない言葉で手紙は綴られていたが。
「君の住んでいる村について調べてみたんだが、最新版の地図には載っていない。ネットのマップにも。もしかしたら、村自体が街に合併されたのかも」
「待て、載っていないって?」
壁に描き途中の絵をそのままに、チャールズは守衛の方に顔を向けた。ドアに付いている小窓に守衛の顔が写っている。
「私の故郷が消失しただなんて」
「落ち着いて。合併されたんだよ、昨今ではよくある話さ」
「本当に合併されたのか? しっかり調べてくれたんだろうな」
「そこまでは……。大丈夫だよ、簡単に村が滅んでたら事件になってるさ。一応最近のロシアの事件も調べてみたけど、村が滅んだ! っていう記事は一つもなかったんだ」
「国が隠蔽したのかもしれない。何か事情があって」
「発想力が豊かだね。そんなに心配なら、僕が調べてくるよ」
「私も行く」
守衛は苦笑して首を横に振った。お菓子が食べたい、手紙を書きたいと様々な願いを叶えてきた守衛だったが、今回は叶えられそうにない。
「独房での生活を見る限り、君は外に出た所で問題を起こす人じゃないのは分かるけどさ。あくまでもテロのリーダー、そして重犯罪者なんだ。僕は下っ端も下っ端。上からの許可が出ない限り、扉は開けられない」
呼吸の合間に彼女は悔しげな表情を表に出したが、すぐに了承した。これまで積み重ねてきた信頼感に罅を入れさせたくない。
本当に村は街と合併し近代化が進んだだけに違いない。チャールズは自分に言い聞かせて守衛を見送った。
●
彼の名前はフォルトと言う。独房の守衛。警備員とも言うか。チャールズの良き暇潰し相手であり、使いっ走りでもある。
ロシアの昔の地図を頼りに村に訪れるため、車で道路を走っていた。だが、途中で閉鎖と書かれた看板とバリケードにぶち当たり、そこからは歩きを強いられた。
「閉鎖? ……こりゃ合併じゃなさそうだなあ」
不穏な風を感じながら歩いていると、ダヴィオルデと書かれた立て看板。古い地図では、ここが村の場所となっている。ダヴィオルデ、村の名前だろうか。
鉄製の門は重く、一ミリ動くたびに鈍い音を立てながらようやく開かれた。門の奥には豊かな村の様子があった。
フォルトは困惑する。元気な子供達が鬼ごっこか何かをしていて、買い物をする奥さん、鍬を持って農作業に励む農夫がいたからだ。閉鎖中、と書かれた意味はなんだろう。
「あのー、すみません」
フォルトは近くにいた男性に声をかけた。
「おおどうした? あんたこの村のもんじゃねえな。困りごとなら何でも聞いてくれ」
「チャールズって名前の人が住んでたと思うんですけど、心当たりはありませんか」
「人違いじゃねえの? ここはロシアだぜ。アメリカ人っぽい名前の奴なんか一人もいねえよ」
「あれ……。ああ、そうか。もしかしたら彼女は名前がどっかで変わったのかも。そうなると困ったな、どうやって――」
●
日本からロシアに渡った日は二十六日。捜索願いが出されたのは二日後ということになる。チャールズはいても立ってもいられず、独房の中をぐるぐる回っていた。座ったり、寝転んだりしたくない。身体を一秒でも制止させたくない。
「くそ、くそ……」
時々壁に拳や身体全身を打ち付けて、自分の精神状態を誤魔化そうとした。それは逆効果だとも知らずに。
フォルトではない別の守衛がチャールズの名前を呼んだ。彼女は扉の前まで歩いて、挨拶もなしにこう言った。
「村は? あの守衛はどうなった。皆無事なのか?」
「さっきリンカーの募集がかけられました。とりあえず落ち着いてください」
「落ち着けられるか! くそぅ……!」
また失うのか? 恩師と、親友は失い恋人はイカれてしまった。新たな人生を独房で歩み始めて、二番目に出来たトモダチを失うのか。
無慈悲過ぎる。あんまりにも。
解説
●目的
フォルトの救出。
村で起きた真実の究明。
●閉鎖された村
平和な村に従魔を連れた愚神の一向がやってきた。リンカーのいない村はすぐに愚神の支配下となり、残酷な経緯を経て今は人間の姿をした従魔が多く蔓延っている。人間だった者は全て村の地下に閉じ込められ、男は力仕事の奴隷に。女性は従魔の子を産む奴隷に。
人間は表に出る権利がなく、食べ物も与えられない。中で力果てた遺体には従魔のエネルギーを注ぎ込んで表で生活させられるが、人間の記憶や感情は一切失われる。
村長の家にある電子ロックを解除すれば地下までいけるが、番号のヒントはない。
●愚神
イヴァンという名前で、人間の姿をした女性の愚神。高校生くらいの華奢な身長に羽衣を羽織っており、自由自在に空を飛ぶことができるが、スピードと高さ上限には欠ける。
リンカーとの戦闘には積極的で、雷と水を使った魔法攻撃を得意とする。攻撃面のスキルも優秀だが、自分自身を守る防御も豊富に持っている。
彼女は村にドロップゾーンを形成していない。その理由は「ただの精神支配はつまらない。意識のある状態で支配するのが醍醐味でしょ?」
「所詮人間は餌。分かる? あんた達リンカーが守ってる物なんて餌でしかない。今ここで守っても、どっかで食べられる運命。そんな物を守ってなんの意味があるんだろうね?」
●従魔
見た目は一般人だが、強力な肉体を持っている。基本的に格闘の近接攻撃を挑んでくる。その時、必ず複数人で一人を相手するように指導されている。
何人かでリンカーを羽交い締めしてきて一方的な攻撃を狙うか、がむしゃらに攻撃を仕掛けてくるか。
●フォルトの行方
フォルトは地下で奴隷として働いている。地下はひどい有様で、食事を与えられていない奴隷達は様々な物を貪って食べている。
極限の状態になれば人間同士ですら争うことがある。救助に時間をかけすぎると……。
マスターより
※当MSはアドリヴ成分が多めです。
閉鎖された村。日本の秘境にもそういった村がいくつか眠っていそうです。ほとんどは廃墟になっているでしょうが……。恐怖を覚えると同時に、なんだかワクワクします。肝試し感覚でいったら大変なことになるんでしょうか。シナリオの取材という名目で行ってみたいなと思います。ロマンを求めに。
今回からサイド・ストーリーもちょくちょく書いていこうかなって考えてます。登場人物一人一人の過去や思想。本編では語られない色々な出来事……。
本編ではありませんが、よければご参加ください。お待ちしてます。
リプレイ公開中 納品日時 2017/10/12 19:27
参加者
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相談卓
最終発言2017/10/05 07:22:02 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/10/01 22:43:21