本部
失っちゃった記憶を求めて
- 形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 6~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/26 19:00
- 完成予定
- 2017/08/04 19:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/07/25 22:15:11
オープニング
●
「ふーんふっふっふふーん……ふふふーん……」
夏の暑さがいよいよ激しくなってきて、H.O.P.E.の空調もそれに対抗するように設定温度が下げられてきたころ、エアコンもつけずに鼻歌交じりで薄暗い部屋にこもる一人の女性がいた。
黒縁の丸い眼鏡をかけ、水着の上に裾の長い白衣に袖を通すという奇怪な出で立ちをしたその女性は、無菌状態に保たれた装置の中の試験官を見つめていた。
「仕上げはおかーあさーん、っと……」
無色の液体を一滴涙のように試験管の中に垂らすと、途端に中の液体がどぎつい桃色へと変色した。それを満足そうに眺めてから、女性はおもむろに立ち上がってこぶしを握り締める。
「っしゃああああああああッ!! とうとう完成したぞこの野郎ッ!! 苦節十年、やっとこの日が来たぞハッハー見たか学会の頭の固い学者連中が!! とうとう私は成し遂げたぞ泣いて許しを乞えやあッ!!」
そのとき、固く閉じられていたドアが開け放たれ、外から同じく白衣を着た青年が顔をのぞかせた。
「あっ、こんなところにいた! 探しましたよ先生って暑っ!? 何で窓閉め切ってエアコンもつけてないんですか熱中症でぶっ倒れますよ!?」
「おお来たか助手くん! ちょうどいい、とうとう例のアレが完成したぞ!」
「アレ?」
エアコンのリモコンを手に取った青年は、首をかしげながらも電源を入れた。
「なんですアレって」
「なっ、今まで散々言ってきたじゃないか! アレだよアレ!」
「そういわれましても、先生がアレっていう危険物は枚挙に暇がありませんから。先月の、なんていいましたっけ、『眠り薬』。飲んだ人間は一週間どんなことされても死なずに眠り続けるってやつ。あれのせいで僕がどれだけの始末書書かされたか分かってるんですか」
「知らんね。まあそれはそれとして、今回のはとびきりだぞ。もう最高だ。ついに私が望んでいた薬品を作り出す事が出来たのだからな」
子供のように自信満々に胸を張る女性に、青年はいよいよ不信感を募らせた。彼女がそんな物言いをするときはたいていとんでもないものが本当にできている――主に悪い方向に。蒸し暑いはずの室内で、青年の体温がわずかに下がった気さえした。
女性は装置の中から毒々しい桃色の液体が入った試験管を取り出し、天高く掲げて言った。
「見たまえ! これこそ私の研究の成果! 私の一つの夢の完成形! 『記憶封印薬』のプロトタイプだ!」
「記憶、封印薬?」
「うむ。これを呑むと、ある時点からの記憶が完全に消え失せる。たいていはその人間のターニングポイントだな。『ここで私の人生は明確に変じた』と無意識に感じている部分から現在までの記憶がすっぽり抜け落ちるのだよ」
「……それ、大丈夫なんですか? 主に安全性の面で」
女性は椅子に腰かけると、脚を組んで試験管を振ってみせる。
「そこだ。この研究は非常に有用だ――記憶を消せるというのはな。精神障害を負った人々の根本的な原因を取り除ける。簡単に、今までの治療より早く安価に。だが副作用の面はわからん。動物実験を行ってから、臨床実験をしなければならんだろう」
だが、と女性は目を輝かせる。本当に子供のようだ、と青年はどこか人ごとのように感じていた。
「この薬は間違いなく世界を変えられる。ギアナの連中にも負けない、リンカーを守る為の力に変わるはずだ。だから私はここまで研究し、とうとう完成させたのだから」
「……まあいいですけど。でも少しでも危険な結果が出たら僕のほうから止めますからね。それが僕の仕事なんで」
「うん。まあ期待しておいてくれよ。この若狭宮恵の手腕にね」
それから一か月後のこと、青年のもとに突如として着信が入った。
「もしもし」
『私だ! この前の薬だがな、動物実験をパスしたぞ!』
「ええっ、こんなに早くですか!? 普通もっとかかるでしょ!?」
『私に不可能はない! 一刻も早くこれを量産する必要があるからな!』
スピーカー越しの恵の声は荒々しく、一か月前よりもぎらぎらとした熱に満ちていた。この人寝てねえな、と直感的に青年が察して苦い顔になる。倒れられるとこちらが困るのに。
「それで? わざわざ連絡をよこしたってことは何かあるんでしょう」
『うむ。試験の結果だが、飲用による副作用はほとんどないことが判明した。これはかなり大きいな。それと、残念なことにあの薬はある一定の条件を満たすと記憶が戻るらしいんだ』
「条件とは?」
『記憶が消えるのはターニングポイントとなった時点以降だ、といっただろう? どうもそのターニングポイントが関係する状況に至ると記憶が復活するらしい。崖の近くでターニングポイントが起こったのなら、そこに行くと記憶が戻るという具合にね』
「あの薬は不完全ということですか」
『いやいや、解除方法があるのはいいんだ。望まない部分まで記憶が消えたら困る者もいるだろうし……そこで、実務担当の君にお願いしたい』
その言葉に青年が背筋を正す。この女性が明確に何かを頼むということは、それは自分では及ばない領域のこと。この青年にしかできないことだ。
そして、青年はそのような状況が大好きだ。
『リンカーを数名雇って、これの臨床試験を行いたい。人間に投与するとどのようなことが起こるのか、私の仮説は正しいのか、それを確かめたい。できるかい?』
「もちろん。ですが、どうしてリンカーを?」
『それのほうがわかりやすいからさ。時間も短く済む。まあとにかくちゃちゃっとやってくれ。報酬はそれなりに出す、とも付け加えて』
「了解です」
解説
目的:『記憶封印薬』の臨床試験を完遂する
状況
・皆さんはH.O.P.E.からの要請、または求人を見てこの臨床試験に応募したリンカーです。
・皆さんがするべきことは三つです。
一つ、薬を飲む。
二つ、どの時点からの記憶がないかを確認する。いつのことならわかる? と質問すること。
三つ、記憶がなくなった時点を特定できたらその記憶を回復させる。およびそれをレポートにまとめること。
『記憶がなくなった時点』
・服用者の記憶がなくなるのは、服用者がターニングポイントだと感じている部分です。そこで自分の人生は変わった、あれがなければ今の自分は存在しえない、というものです。
・リンカーであれば、多くの場合それは『英雄(能力者)と誓約を交わした時』であると思われます。全く違う誰かと運命的に引き寄せられ、人生を共に歩むと決断した時。そこがターニングポイントだと言っても差し支えないでしょう。
・もちろんそうでない場合もあります。大きな事故に巻き込まれ命以外のすべてを失った時、などでしょうか。とにかく服用者の最も強く記憶に残っている場所を起点にして、そこから現在までの記憶が抜け落ちると考えてください。
非服用者の心構え(能力者、英雄両名参加時のみ)
・服用者はあなたのことを全く初対面として扱う可能性が極めて高いと思われます。
・誓約を交わした時がターニングポイントであるならば、服用者にとってあなたのことはそこだけしか記憶がありません。それはもう当たり前のこととして早々に諦めることをお勧めします。
・あなたは服用者の記憶を戻すために質問を行い、ターニングポイントを象徴する場所へ連れていってください。そこで記憶が戻ります。
・能力者のみの参加の場合、研究者が補佐につくのでこの項目の心配はいりません。
・最初はH.O.P.E.東京海上支部からのスタートです。天候は晴れ、時刻は正午です。
マスターより
山川山名です。
記憶喪失になったことは、皆さんはありますか。私はないです。記憶がなくなるってどんな感覚がするんでしょうか。あまり経験したくはないですが、興味はあるのです。皆さんはどうでしょうか。
今回は、失われた記憶を取り戻す物語です。思い出の地で記憶を取り戻した時、彼は、彼女は、何を思うのか。そして傍らの相棒は何を思うのか。それを考えてみると楽しいかも知れません。
――友達同士で協力してもいいですよ
リプレイ公開中 納品日時 2017/08/02 12:14
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最終発言2017/07/25 22:15:11