本部
【幻灯】胡蝶の夢
- 形態
- シリーズEX(続編)
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,800
- 参加人数
-
- 能力者
- 10人 / 4~10人
- 英雄
- 10人 / 0~10人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2017/07/19 07:30
- 完成予定
- 2017/08/02 07:30
このシナリオは5日間納期が延長されています。
掲示板
-
相談卓。
最終発言2017/07/19 04:09:07 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/07/15 20:14:53
オープニング
●別離
人工呼吸器、バルーンパンピング、血液透析器――意志の宿らぬ命を肉に繋ぐための機械が、彼を今日まで生かしてきた。
いや、生かされてきただけなのだ。
置いて行かれたくない。ただそれだけを願った自分の我が儘のせいで。
「もういいから……もう、眠っていいから」
震える指でひとつひとつ、機器のスイッチを切った。
その度に少しずつ彼が死んでいくのを確かめながら――それによって自分の心が少しずつ壊れていくことこそが償いなのだと、そう信じて。
この日、H.O.P.E.東京海上支部の所属エージェントだった伊藤哲は、契約英雄ジュリア・イトウの手で殺された。
しかし彼女の罪を問う者はなかった。だから。
彼女は自らを幻想蝶に封じたのだ。
哲の残したライヴスがその体から消え失せる日まで。
●H.O.P.E.東京海上支部・ブランコ岬対策本部
対策本部では、ニューヨーク本部及びジョアンペソア本部と同時中継を繋いでの会議が行われていた。
「……以上、エージェントのしかけてくれた観測機器からのデータを検証した結果、鏡面体が一種のドロップゾーンであることは確定した」
本部長が取りまとめた言葉をニューヨークの幹部が継いで。
『ゾーンルールは内に引き込んだ者の心象世界を再現すること。まちがいはないね、Ms.礼元堂』
「はい。報告では、鏡面体の内側で自分の過去――命の危機に際した場面を再現されたとのことです。そして過去のその場面にいなかったはずの女の姿を見、声を聞いたと」
礼元堂深澪(az0016)の返答に一同はうなずき、資料に目を落とした。
「褐色の肌をした女。ゾーンルーラーか」
うそぶく本部長へジョアンペソア支部長が。
『現在この女についての調査を行っております。東京海上支部には引き続き鏡面体の調査をお願いしたく』
幹部は画面の向こうで眉をひそめたが、言い返さず。
『東京海上支部はどうだろう? 継続調査は実施できるかね?』
「やりますよ。古傷引っかかれて逃げ出すような奴、ウチにゃ一匹だっていませんぜ」
本性をちらりと剝き出した本部長に、深澪はひと言。
「押忍」
●引きこもりのおしるこ姫
「ってぇ~。あそこにもっかい行け? 言いづらすぎだぜぇ~」
深澪はため息をつき、事務机の隅のドール用座布団に据えられたファンシーシェイプカットのアクアマリン――銀鎖につながれたペンダントトップを見た。
対策本部が立ち上げられると同時に本部長から託されたそれは、ジョアンペソア支部長からの要望でもあったらしい。あの人もなんか企んでるよねぇ。
「元気ですかぁ~」
とりあえず声をかけてみると、コン。小さな音がしてアクアマリンが揺れる。
「中にいたらわかんないと思うけど、外はあっついよぉ」
そのアクアマリンは幻想蝶。内には、ひと月以上も引きこもったきりの女性英雄がいる。
「ちょっと出てきてみたりしない? ボク、下の自販機でなにか買ってきちゃうよぉ」
『……おしるこは嫌い』
幻想蝶から漏れ出した細いメゾソプラノ。頑なに契約主殺しの罪で自らを縛り続けるジュリア・イトウの声だ。
「おしるこ?」
首を傾げる深澪だったが、思い出した。託されたときに本部長から聞いた話。
ジュリアのパートナーだった伊藤哲は、缶ジュースの自販機のどのボタンを押しても缶おしるこを出す奇特な才能の持ち主だった。おかげでふたりは、冬はあたたかいおしるこを、それ以外の季節は冷たいおしるこを、実に渋い顔ですすっていたという。
が、とにかく。
「いっしょに行こうよ! ボクのゴールデンフィンガーでオレンジジュースとか出しちゃうよぉ!」
これまでまったく反応しなかったジュリアが返事をした。もしかすれば彼女の心の傷が癒え始めているのかも。深澪は願いを込めて立ち上がったが。
『あそこに行きたい』
あそこ? ロビー? ちがう。自販機へ行くなら「うん」と言えばいいだけだ。
「……あそこって、どこ?」
『ブランコ岬』
「ブラジルの?」
コン。幻想蝶がまた揺れた。これは肯定。
ブランコ岬は例の鏡面体の出現場所であり、3年前、海から攻め寄せた愚神と従魔群を相手に100人のエージェントが死闘を繰り広げた『ブランコ岬防衛戦』の舞台でもある。
哲が3年近くの昏睡状態を経て死亡する原因となった、あの防衛戦の……。
『黒い鏡が見たいの』
「え、なんでそんな情報知ってるのぉ!? って、だめだってば! 中に愚神がいるんだからね!?」
英雄はライヴスリンカーと契約することで超常の力を発揮する。しかし、契約者が残したライヴスを消費して存在を保っているばかりのジュリアには、愚神どころか従魔と対する力さえないのだ。
いや、それよりも。鏡面体をのぞきこんだ者は、否応なく過去の危機的状況へと引きずり込まれる。ジュリアはしているはずだ。なのにそこへ行きたいということは、つまり。
もしかしてジュリアちゃん、最期を思い出の中で――とか、考えてない?
言いかけた言葉を飲み下し、深澪は「うあ~」とうめいた。
正直、ジュリアを鏡面体に近づけたくない。
しかし、どんな理由であれ、彼女は外に出ようとしている。もしかしたら、これが彼女を苛み続ける過去を打ち払う唯一の機会になるかもしれない。エージェントがそれをしてみせたように。
『ジョアンペソア支部に連絡して。早く』
ジュリアが深澪を急かす。
悩む時間すら与えられず、深澪は「あ~も~!」とぐるぐるしながら内線1番をコールした。
『どこに電話してるの? ブラジルじゃないでしょ』
「上に許可取る! 報告・連絡・相談はサラリーマンの基本だから!」
●祈り
「ウチの支部でブランコ岬の鏡面体調査、続行することが決定しましたごめんなさい!」
わーっと手を叩いて頭を下げた深澪ががばーっと顔を上げ。
「で。もひとつごめんなさいなんだけど。ボクといっしょにこの子、いっしょに連れてって」
深澪が両掌に乗せたアクアマリンを示した。
「英雄のジュリアちゃん」
ここで深澪はアクアマリンを両手でぎゅうっと包み込み、音が中に聞こえないよう細工をして。
「いろいろあるってことで説明不可なのごめんなさい! 缶ジュースおごるからその、ひとつ……ごめんなさい」
ずずいとブリーフィングルームの卓上へ深澪が押し出したのは、人数分のつめた~い缶おしるこだった。
「今回もやばい過去に引きずり込まれるのは絶対だと思う。ボクは近くでオペレートするけど、多分通信は繋がんない。ごめんなさいばっかりでごめんなさいだけど、とにかく絶対帰ってきて。できればいっこでもゾーンルーラーの情報、増やしてきて」
幻想蝶を首にかけ、深澪がぐっと拳を突き出した。
「行こう!」
解説
●依頼
ブランコ岬の鏡面体(ドロップゾーン)を調査してください。
●ジュリア・イトウ(14歳/ソフィスビショップ)
・表情豊かで元気な少女でしたが、今は無表情で頑なです。
・あなたはジュリアや哲と「知り合い」であることも「見知らぬ同僚」であることもできます(知り合いの場合は関係や過去エピソードを自由に設定可)。
・哲との誓約は「楽しく生きる」。
●黒い鏡面体
・日曜日の22時、灯台のライトの表面がドロップゾーン化します。
●鏡に映る情景
・今回は「英雄がもっとも忘れがたい、あたたかな/哀しい情景」が映し出されます。どんな過去が見えるかを指定してください(本当の過去ではない、英雄の心が作りだした嘘の情景でも大丈夫)。
・情景(人物等)は英雄を内に引き留めようとします。この甘い罠をなんとか振り切ってください。
・共鳴はできません。よってAGWやスキルは使用不能。
・能力者は英雄の近くに幽霊的な存在となって存在します。が、その声が届くかどうか、定かではありません。
・状況をクリアすると現実世界へ戻ります。
・情景内ではすべての通信手段が使用不能。
●女
・どのような情景を指定しても、かならずその中に褐色の肌の女が登場します。
・女はあなたの情景に登場する人物に成り代わることもありますし、そのままの姿で唐突に割り込んでくることもあります(女がなにになるかは指定どおりに行かないものと考えてください)。
・会話は自由。
・攻撃に関しては、無手攻撃のほか、情景の中にある物品での攻撃およびトラップ等を仕様できます。
●備考
・ここで見た情景は、英雄と能力者、共に記憶しておくことはできません。記憶できるのは“女”のことだけです。
・過去の情景で他の能力者・英雄とからむことは不可能。
・心情メインでのプレイングをいただけましたら倖いです。
・情景内で受けたダメージは現実世界に戻れば全回復します。
マスターより
おつかれさまです。電気石八生と申します。
当シナリオは『【幻灯】引きこもりのおしるこ姫』の第二話となります。
今回は能力者に引き続き、英雄の過去の欠片を語る内容となっております。現実世界に持ち出すことはできませんが、一時の夢を全力で見ていただき、それを置き去りにして進んでいただけましたらば幸いです。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2017/07/25 15:02
参加者
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