本部
寂寥家
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 4人 / 4~10人
- 英雄
- 4人 / 0~10人
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/08 07:30
- 完成予定
- 2017/04/17 07:30
掲示板
-
ホラー&スプラッター
最終発言2017/04/07 21:41:13 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/07 11:40:36
オープニング
●
今更になって後に引き返せない。
後ろを振り返って足を歩かせるのは簡単だ。その場合、最悪の結果が待っているのは明らかだから引き返せない。後ろのゴールは先輩からの叱責。加藤(かとう)は前を向くしかなかった。
まだ昼間だというのに家の周りは薄暗かった。家の前には庭園がある。噴水や花壇はあるが、どれも空っぽだ。水気もなければ、花の色もない。
本題の家は横に広い二階建てで、西洋風だった。
今日ばかりは刑事という職についた自分を呪う。この地の住民から不思議な通報があったのだ。
「この家に誘拐されている人を見た」
「中から悲鳴が聞こえた」
「この家だけ、何かおかしい」
最初は人間の間違いだと警察は考えていたが、三日間も毎日連絡が絶えないからと加藤が派遣されたのだ。本当は斎行(さいぎょう)という同期も一緒に来ているが、彼はビビって車の中に閉じこもっている。
極度の怖がりといった性格を加藤は持ち合わせていないが、家から感じる不浄な風に足を竦ませていた。向こう側から来る風が、何事かを言っていたからだ。何事か、それは分からない。大地の声は人間には分からない。
直感で翻訳するならば――
――帰った方がいい。一秒もここにいてはならない。
加藤は声に逆らって表玄関の扉を開いた。銅製の扉は静かに開いた。
心臓があり得ない程のスピードで脈を打っている。まずい、まずい。入ってはいけない所に入ってきてしまった。いや、それは何か見たから、聞いたからといった物理的な理由は一切ない。加藤は玄関扉を開けて入っただけだ。
敷地内に一歩足を踏み入れた途端に感じた悪寒が、加藤を家から遠ざけたのだ。一歩一歩、歩く度に反抗心は高まる。風は「帰れ」と言う。
庭園の半分くらい来たところで、風の音が変わった。今度ははっきり、人の声として聞こえた。
「もう遅い」
加藤は腰を抜かした。
「だれ、誰だ」
声はあまり、はっきりとした音にならなかった。
「こんにちは。あなたは僕の芸術を理解してくれる人?」
「何、何の話だ。誰だよ、どこにいるんだ! くそ、勘弁してくれよ!」
震える足は立つことさえ困難にさせる。加藤は何度もよろめきながら、出口へと走った。
「もう遅い。こんにちは、あなたは僕の芸術を理解してくれる人?」
扉は開かなかった。どこからともなく聞こえる声は、姿は見えないのに近づいて来ているように感じた。
現実は、近づいてきているのではない。その少年の声が大きくなっているだけなのだ。加藤は扉を蹴り飛ばして、何度も何度も開けようとしたがビクともしない。しかし、青ざめた顔で何度も足を扉に叩きつけた。痛い、痛さを我慢して。
肩を叩かれた。
「もう遅い」
汗が滴るのだ。頬に、首筋に。
加藤は目を瞑った。今度は耳元で、少年の囁き声が聞こえた。
「芸術を――」
「見ないと分からない! 理解できるかもしれないけど、分からない! お願いだよ勝手に入った僕が悪かった。ああ、頼む。だから、だからさ! 俺が悪かった、僕が……!」
「こっちにおいで」
すると、恐ろしい。うなじを手で掴まれたかと思えば、尋常ではない力とスピードで家の中に引き込まれた。後ろ向きに走るジェットコースターに乗っているようで、加藤は叫び声を上げた。
恐ろしいのは止まらなかった。家の中に連れ込まれて、数秒は目を開けられなかった。だが目を開けるだけなら簡単だ。勇気を振り絞って少しずつ瞼を上げると、そこには芸術が広がっていた。
玄関ホールは広い。
この家の床と壁は最悪だった。赤く、粘液が溢れ出てくる天井。赤く、人間の大きな眼球が加藤を見てくる壁。赤く、人間の手や足が無造作に取り込まれている床。赤い壁は人間の心臓のように鼓動を放っていた。
「う……」
声がでるはずもない。一体、この状況でどんな言葉が出てくるというのか。
後ろから気持ちの悪い足音が聞こえた。加藤は叫びながら振り返った。
両手がなく、目と口と鼻のない肉塊が近づいてきていた。加藤は声が枯れるまで叫んだ。足が動かせないのは、床に散りばめられていた手が彼の足を掴んでいたからだ。
「あなたは僕の芸術を理解してくれる人?」
その声は、目の前の肉塊から発せられた物ではない。また、家のどこからか聞こえてきた。
「ああ、ああ……、だめだ……。こんなの、無理。助けて」
靴底を擦り減らしたスーツ姿の刑事とは思えないほどに、か細い声が鳴った。
「理解してくれないの。ああ、そう」
「理解してないなんて言ってない! 僕は、いや違うんだ。無理とか、助けてっていうのはそういう意味じゃなくて、じゃなくて!」
「もう遅いもう遅いもう遅いもう遅い」
最高の後悔は既に遅かった。
●
加藤は一時間経っても戻ってこなかった。斎行の恐怖具合はいよいよ大変だ。一時間も誰とも話していない。斎行はH.O.P.Eに連絡を取ることにした。
まだ原因が人間か愚神か判断が曖昧な時、斎行はH.O.P.Eに電話するようにと言われている。
「もしもし! 大変なことになった。これは事故じゃなくて事件なんですが、ああもう、なんて言えばいいのか……。同僚がですね帰ってこないんです」
自分が警察であることを忘れ、同僚が帰ってこないという事実を三回も復唱した。相手が混乱状態だと判断した通信士は、場所だけを聞き出して現地にリンカーを送った。
解説
●目的
家の破壊。人民救助。
●家と少年と愚神
この家は四人家族だったが、父親が狂人であった。とある不幸に見舞われて生き残ったのは弟だけとなる。孤児院が見つかるまで少年は使用人と二人で暮らす。その間に芸術を極めるようになったが、少年の描く絵はどれも狂気に満ちていた。少年は自信満々にかつての友人や使用人に見せるも、全員から拒絶反応をされる。
愚神に出会ったのは引き篭もってからのことだった。使用人は買い物に出掛けていた。愚神は少年に「憎悪」の力を与えた。人を憎めば憎むほどに、少年は強くなる。
家の気持ちの悪い装飾は全て少年の妄想が具現化した姿だ。床や壁にある人体の一部は本物ではなく、具現化したもの。
憎悪の力が増せば、攻略は困難となる。
●クリーチャー
誘拐された人間が少年によって変身させられた姿。記憶や意識はあるが、愚神の命令には逆らえない。少年が命令しているのではなく愚神が命令しているのは、少年には命令の権利が与えられていないからである。
容姿は少年の妄想によって全て異なる。同じ形をしたクリーチャーは一人もいない。憎悪によってクリーチャーは強くなるが、リンカー以上の力を身につけることはない。
クリーチャーに与えられた命令は人を逃がさない事である。攻撃はしないが人を拘束する。
クリーチャーだけでなく、この家には人やリンカーを拘束する要素があちこちに置かれている。
●源
愚神から与えられた力には形がある。水晶のような玉で、家のどこかに隠されている。それは愚神の生命源となる。
これを破壊すれば人民は開放され、家も元に戻る。
●具現化の制限
何でも思い通りにはならず、具現化には時間がかかる。人間以上の大きさの物は創れない、命令はできない、実際に見たことのない物は創れないなど様々な制限が設けられている。
●愚神
生命源を守る場所にいる。デクリオ級であり、クリーチャーを武具に変形させて戦う。
マスターより
※当MSはアドリヴ成分が多めです。
ホラーを描こうと挑戦したのは今回で二度目になります。以前は叫ぶ島ですね。
私自身ホラー映画やゲームは好きなのですが、自分が作るとなると実は苦手なのであります。日常生活でワッ! て友人を驚かすのは得意なのですが、その方法は文章じゃ中々手厳しい。試行錯誤しながらの執筆になります。
話はちょっと変わって洒落怖ってご存知でしょうか。ネットで読める怖い話の数々です。今回はその数々を参考にしています。実際に読んでみると本当に怖いものです。ホラー映画などにない怖さがあるんですよね。
それではよろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2017/04/15 20:09
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ホラー&スプラッター
最終発言2017/04/07 21:41:13 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/07 11:40:36