本部
疲れた人の理想郷
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/03/07 07:30
- 完成予定
- 2017/03/16 07:30
掲示板
-
相談卓
最終発言2017/03/06 21:07:35 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/03/07 02:06:57
オープニング
●
杏心(あこ)は部屋に閉じこもったまま顔を見せなくなってしまった。
「今回は僕に責任がある。最悪な父親だよな」
今年で九歳になる杏心は、漢字の小テストで満点を取った。ご褒美として、父の正司(せいじ)は有名な遊園地に連れていく約束をしていたのだ。あのキャラクターと写真を取りたい、前々から娘が呟いていた。
明後日が約束の日であった。ところが正司は仕事先の小さなミスで、その日の代えが聞かなくなってしまったのだ。
遊園地の日程をずらす相談を杏心にしてみるも、結果的に怒らせてしまった。
「私からあの子に言っておくわ」
「それも悪いよ。……本当に、どうしてこうなったんだろう」
疲れた顔をした正司は、食卓の椅子に座った。今は二十二時だ。この時間に食べる夕飯は日課だった。
「杏心は良い子でしょ? 今は感情的になってるけど、落ち着いたら話も聞いてくれる。行かなくなったっていう訳じゃないんだからね。私に任せて」
辛い状況も、人生のパートナーが見つかれば心も安らぐ。たまには妻に甘えても良いものだろうか。
「ありがとう。でも、ちゃんと僕からも謝るよ。家族からも嫌われたくはないから」
どうすれば今回の失敗を防げたのだろう。仕事先の癖で正司は反省していた。反省の成果はこうだ。仕事がなければ、こうはならなかった。
皆同じ悩みを抱えているだろう。
●
暫く杏心は、父が嫌いだ嫌いだと心の中は騒がしかった。椅子に座って足をバタバタさせて時折大きな溜息を吐いた。わざとらしく大きく。部屋のすぐ隣はリビングじゃないし、聞こえる訳もないが。
地面の一点しか見つめていなかった彼女は、周りを見渡した。机の上には指人形が集会を開いていて、箪笥には彼女の好きなキャラクターのシールが貼ってあった。
それらは父と母が買ってくれた物だった。
「はあ」
ベッドの柔らかい肌触り。
ドアの隙間から入ってくる風は、足に当たって冷えた。
「でも……」
複雑な心境を、彼女なりに受け止めようとしたのだろう。不格好だが杏心は、ベッドの布団に潜り込んで身体を丸めて、思い切り毛布にしがみついた。勢いよく抱いて、力が限界を感じた時に離す。
悪いのはお父さんじゃなくて、シゴトだ。シゴトが悪いんだ。
なんとなく心地よくてそれを何度も繰り返していくうちに、段々息が苦しくなってきた。杏心は酸素を求めて、布団から顔を出した。
女の子が自分を、ベッドの横から覗き込んでいた。可愛らしく笑っていた。
「だ、誰!」
「シー! 見つかってしまう。大丈夫、ウチは杏心ちゃんの友達なんだ」
「友達? でも、誰……?」
「落ち着いて」
杏心は起き上がった。彼女は本当に見知らぬ人物だ。英語の書かれたフード付きの服をきていて、中には白いシャツ。濃い茶色のズボン。自分と似たような短い黒髪の少女。本当に誰だろう?
「ウチが誰なのか知りたいのは分かる。でもまず、話を聞くの」
「うん……?」
「明後日、お父さんと一緒に遊園地に行きたいよね」
「うん行きたい」
「ウチなら、お父さんのお仕事を休みにすることができる」
もし明後日、本当に行くことができたら嬉しい。ところが杏心は、素直に喜べなかった。
「魔法使いなの、ウチは。杏心ちゃんがよくアニメとかで見るような魔法使い」
「……そんな訳ないでしょ」
「そう? 見せてあげる。今時の魔法使いはフードを被っているかもよ」
フードを被った少女は、杏心の手を取って右手を上に振り上げた。すると、杏心は驚いた。
今まではベッドの上にいたというのに、突然知らない場所に出たのだ。明るい場所で、心地よかった。布団で丸まっていた時よりも、何倍も。素敵な場所だ。
「すごい! 本当に魔女なんていたんだ!」
「フフフ」
暖かくて、地面には花がいっぱい咲いている。良い香りがして、小鳥の囀りが聞こえる。ふわりと身体が軽くて、どこからともなく音楽も聞こえてきて。
「これでウチを信じてくれたかな」
「本当に遊園地に行かせてくれるんだよね!」
「モチロン。約束する。でも、少しだけ杏心ちゃんにもやってもらいたい事があるんだ」
●
遊園地の帰り、正司は不思議な偶然に未だに心からの感謝をしていた。ミスをしたが、それは結果的に成功したのだ。失敗しなかったら大惨事になっていた。奇跡というのはあるものだと、正司は神様の存在を信じた。
家に戻って、母がお風呂に行っている間に杏心と正司は買ってきた本を読んでいた。
「お父さん、面白い場所を見つけたんだよ」
「本当かい? 杏心が面白いって言いそうな場所なんてあったかなあ」
「案内してあげる。お父さんも絶対気に入るから」
●
その日のニュースでは、行方不明者の数が十人を超えたと一つの話題が大きかった。H町で、いずれも大人が何者かに誘拐されているという事件だ。警察は関東の本部からも協力が加わるという。愚神による仕業だと考えた警察は、今後リンカーの協力も得る方向性だとニュースキャスターが伝えた。
更に民衆の興味を惹いたのは少女が関係しているという事だった。様々な目撃情報によると、人が連れ去られた時に毎回少女を見るのだという。少女は地元の小学校に通う一般的な小学生であり、今でも通っているが警察は偶然の一致だとして捜査を進めている。
――後のリンカーによる調査の結果では、プリセンサーは少女に反応していた。これはまともな事件ではない。警察はやはり、リンカーの協力は不可欠なものだと判断せざるを得なかった。
解説
●目的
魔女の作る世界の破壊。
●魔女
名前は「フエリー」と言う。ミーレス級の愚神。
力が弱く、従魔を従えることもできないフエリーは人間を使って獲物を集めることで、一度にたくさんのライヴス吸収を目論んだ。
彼女の使える能力は変装、ワープと本の速読、錬金術に似た物質の融合のみで攻撃的な能力は所持していない。リンカーに見つかれば逃げることを優先する。その時に使うワープは厄介だが、彼女の使うワープには条件があった。その条件を知る手がかりは杏心の部屋にある。
●世界
人間の快楽部分を刺激する要素が充満した世界で、中に入っただけで五感をくすぐる。リンカーも長時間滞在すれば世界に飲まれ、任務続行ができなくなるだろう。飲まれてしまうと悦楽以外に考えられなくなり、その世界を愛してしまうのだから。
中にいる人間は五十人くらいだが、人口密度は低い。中にいる市民達はリンカー達を攻撃はしないが、世界に飲み込まれるよう様々と誘惑する。
●対策
一時間以上の滞在で飲まれてしまうため、定期的に外に出る。
痛み等快楽とは違った刺激を自分に課すことで逃れる。
●世界での人々の暮らし
ユートピアのようで、誰もが苦しみから逃れた生活をしている。住んでいるのは大人のみで、子供は杏心のみ。そのため、大人は杏心を非常に大事にしている。彼女に危険が迫れば身を挺してでも守る程に。
●杏心の役割
「仕事で疲れている人を連れてきて」とフエリーから命令を受ける。ただその方法では常識的な大人は着いてこないので、フエリーが杏心を襲うシーンを演技して、騙されてついてきた大人達を世界に引き込むという作戦をしている。しかし成功例は少なく、大体の大人が警察を呼んでいた。
プリセンサーに反応があった人間であり。愚神のライヴスが微量ながら存在した。
マスターより
※当MSはアドリヴ成分が多めです。
余談ですが、フエリーの作った世界というのは彼女の能力によって作られたものではなく、長い月日をかけて人間の脳を勉強したフエリーの科学に基づいて完成した施設です。速読という地味な能力を使って作り上げたんですね。
建築に対しても彼女はしっかり本を読んで独学で勉強して施設を作っているので、勉強熱心な愚神なもんです。その間に戦闘能力を高めれば良いのですが。
それではリンカーの皆さん、よろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2017/03/14 19:09
参加者
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相談卓
最終発言2017/03/06 21:07:35 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/03/07 02:06:57