本部

調査

青い鳥を捜して

和倉眞吹

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
1人 / 4~8人
英雄
0人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/02/20 12:00
完成予定
2017/03/04 12:00

このシナリオは3日間納期が延長されています。

掲示板

オープニング

「このブローチ、下さいな」
 アンティークショップ・ユハナの店内でそう言ったのは、一人の女性客だ。
 彼女はニコリと笑みを浮かべた。そうすると、元々丸みを帯びた頬が、益々膨らむが、それが彼女の愛らしさを引き立てる。
 年の頃は、二十歳前後だろうか。しかし東洋人は、そもそも実年齢よりも若く見える者が多いと聞いている。
 他愛もない事を考えながら、店主であるリュース=ユハナ夫人も微笑み返し、彼女の差し出したブローチを受け取った。
「ご旅行ですか?」
「ええ」
「どちらから?」
「日本です。小さい頃からロマンティック街道を旅するのが夢だったので」
「まあ、そう」
 相槌を打ちながら、ブローチを包もうとする夫人を、女性が止めた。
「あ、包まなくていいです。折角だから早速着けて行きます」
 彼女は本当に嬉しそうだ。
 それは或いは、このブローチのなせる業なのかも知れない。
「持っていると、幸せな気分になるでしょう」
「えっ?」
 首を傾げた彼女に、ブローチを渡しながら夫人は言葉を継いだ。
「このブローチですよ。ある方が持ち込んだんですけどね。何でも、幸せを運んでくれるブローチだっていう言い伝えもあるんだそうよ」
「へえー。凄い!」
 パッと顔を輝かせると、女性は勘定を済ませ、ブローチを上着に着ける。
 彼女の胸元で、ブローチに描かれた青い鳥が、今にも一声さえずりそうに見えた。

 夫人に、ちょっとした災難が降り懸かったのは、この直後の事だった。

〈――本当に申し訳ございません〉
 その電話の主は、心底からその言葉通り、謝罪の気持ちで一杯だと分かる声で言った。
 声質からすると、年輩の女性だ。彼女は、リュース=ユハナと名乗った。ドイツ・ミュンヘンのある町で、骨董品店を営んでいるという。
〈何か、普通ではない力を秘めているようだとは思いましたが、特に怪しい気配もありませんでしたので、その……買い入れた後、売ってしまいまして〉
「それで?」
 ドイツ某支部で電話を受けた男性オペレーターは、先を促す。
〈ですが、そのぅ……ついさっき、セラエノさんを名乗るお客様が団体でいらっしゃったんです。オーパーツを寄越せ、と言うのがご要望なのですが、形状などを訊くと、どうもその、売ったブローチに間違いないようなの〉
「……ミズ・ユハナ。念の為に伺いますが、今そこにセラエノさんはいらっしゃるんですか?」
 念の為、と言ったのは、夫人が余りにも落ち着いているように思えたからだ。
 彼女に釣られて、セラエノに『さん』付け・敬語で、オペレーターは問う。
〈ええ。お二人だけお店に残られてるわ。お手洗いに行かせて欲しいと頼んで何とか離れたけど、長話する時間はないと思います〉
 という事は、今彼女は携帯を使って話しているのか。
 何にせよ、おっとりと返されて、オペレーターは何だかよく判らない目眩を覚えた。
 が、のんびり突っ伏してもいられない。
 何しろ彼女は以前にも、従魔憑きの指輪の一件で、討伐に貢献した人物だ。老婦人の戯言と切って捨てたのが、前回の事件の解決を遅らせたとも聞いている。
「……判りました。至急エージェントを手配しますので、状況をもう少し詳しくお聞かせ頂けますか?」

「――という訳で、オーパーツと思われるブローチ、及びそれを購入した客を急ぎ捜索して下さい。それと、ユハナ夫人の救出を。オーパーツと思われるブローチですが、形状は楕円の陶器に青い鳥の絵が入っており、金属がフリルのように縁取っている意匠だそうです」
「具体的に大きさは?」
 ブローチというからには、さして大きくはないだろうが、確認を取りたいとエージェントの一人が手を挙げる。
 オペレーターは頷いて続けた。
「大きさは縦に四、五センチ、幅はその半分くらいだそうです。ブローチを持ち込んだバルテル夫人は勿論、ユハナ夫人、そして購入した客も、どうやらそれがオーパーツだとは知らなかったようですね」
 それはそうだろう。
 知っていたら、先の従魔指輪事件でも通報してきたユハナ夫人が、こともあろうに一般人に売るまで黙っていたとは思えない。
「オーパーツの効能は?」
「それがその……よく判らないとか」
「判らない?」
 何人かのエージェントの声が被る。
 オペレーターもここは歯切れ悪く言葉を継いだ。
「ええ。セラエノからもはっきりした情報は……まあ、漏らすと思えませんよね。ただ、バルテル夫人が口にしたらしいのですが、その意匠の通り、手にした者に幸運をもたらすと言う口伝がまことしやかに囁かれていた時期があったんだとか」
「時期があったって?」
「ええ。本当に幸運に恵まれた人もいれば、それなりの……まあ特別不幸も幸運もなく、ごく普通に生活した人もいたと……バルテル夫人は、単なる偶然と考えていたようです」
 その言い伝えをどこかで聞いたセラエノが、今回それを回収に来た、ということだろう。
 彼らが言い伝えを本気にしているのか、真偽を確かめようとしているのか、はたまた言い伝えが本当かも今は定かではない。
「とにかく、今確かなのは、ユハナ夫人と、購入して行った女性が危険だということだけです。二人の身の安全を第一に、宜しくお願いします」

解説

※〈〉内はPL情報。PCがこれを知るには、何らかの行動が必要。

▼目的
・オーパーツ『ブラウ・フォーゲル』共々購入者である女性を捜して保護(回収)
・ユハナ夫人の救出

▼登場
■リュース=ユハナ…アンティークショップ・ユハナを細々と運営する女主人。ある種の直感に優れる、ちょっと肝の据わった76歳。
シナリオ『紅き女王の侵蝕』に登場。

■バルテル夫人…『ブラウ・フォーゲル』をオーパーツと知らずに売却した女性。50歳。

▼ユハナ夫人からの聞き取り調書より
■〈安治 由奈〉…『ブラウ・フォーゲル』を購入していった女性。
年齢は二十歳前後。ふっくらした丸顔で、目はぱっちりと大きめ。背の高さは155センチ程。肩先に掛かるくらいの髪の毛で色は黒。
グレーのハーフコートに薄桃色のスカート。茶色いブーツにくすんだ赤のポーチ。
日本人。これからロマンティック街道を旅する予定。

■セラエノ構成員…男が五人。全員サングラスを掛けていた。
現在、内二人がアンティークショップ・ユハナに立てこもっている。恐らく、HOPEに通報されない為。
装備は各々拳銃。
尚、ユハナ夫人は彼らに由奈の詳しい特徴などは話していない。「売れた。客は今出て行った」とだけ。
また、夫人自身、由奈の名前までは知らない。

▼オーパーツについて
ブラウ・フォーゲル…ドイツ語で『青い鳥』の意。形状はブローチ。手にした者に降り懸かった災厄を三回だけ回避させてくれる。一度、三回の災厄を払ってしまうと、百年の間は普通のブローチになる。
今年が丁度その百年周期らしい。

▼備考
・女性が目指すロマンティック街道沿いの町で、店から一番近いのはヴュルツブルク。店からヴュルツブルクへ行く為の最寄り駅まで、車で三十分くらいの道のり。
店は都心からちょっと離れた場所にあるので、バス停も近くにはない。
一番近いバス停まで歩いて三十分くらい。
その道すがらには昔ながらの商店街がある。

マスターより

こんにちは。和倉眞吹です。
今回はオーパーツネタです。
目標が『紅き女王の侵蝕』と同じになっていますが、状況は違います。
また、当該シナリオへの参加・既読は問いません。
ともあれ、宜しくお願いします。

プレイングはいつもの通り、MS自己紹介欄をご一読の上でご自由にお書き頂ければ幸いです。
皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

参加受付中 プレイング締切日時 2017/02/20 12:00


参加にはSC1,000が必要です。

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