本部
狼少女と白き影
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~6人
- 英雄
- 4人 / 0~6人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/21 19:00
- 完成予定
- 2016/12/30 19:00
掲示板
-
【相談卓】
最終発言2016/12/21 12:51:12 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/12/21 08:05:07
オープニング
●狼少女は月に吠える
薄っすらと積もった雪の上に、どさりと少女が突き飛ばされる。
「嘘つき!」
「嘘じゃないもの!」
尻もちをついた少女を取り囲みながら、数人の少年たちがばかにしたような笑みを浮かべている。
「父さんが言ってたんだ。エリナ、お前の家はみんな嘘つきだって!」
「本当よ! 本当に……まっしろな狼が、山羊たちを……!」
「嘘つきエリナ!」
「嘘つきマルク!」
囃し立てる少年たちを睨みつけながら、エリナと呼ばれた少女が声を荒げる。
「兄さんをバカにしないで!」
地面に積もっている雪を掴むと、力いっぱい投げつける。
「うわっ!」
思わぬ反撃に少年がたじろいだ。そこへ血相を変えてやってきたのは兄のマルクだった。
「――お前たち、何してるんだ!」
年の頃で言えば二十にも満たない青年だが、少年たちからすれば彼は十分に大人だった。蜘蛛の子を散らすように少年たちは逃げていく。
「……兄さん」
イタズラしているところを見つかってしまった子どものように、エリナが気まずそうな顔でうつむいた。
そんなエリナをよいせと抱き上げて、マルクが困ったように笑う。
「また喧嘩してたのか? まったく、お前ってやつは……」
「だって、あいつらが私のこと嘘つきだって……それに兄さんのことまで!」
「嘘? ……狼の話か。もうその話はやめなさいと言っただろ」
「だって本当のことだもの!」
マルクは腕の中で拗ねる妹を見ながら、どうしたものかと思う。
ここ最近、村で飼われている家畜の山羊たちが何者かに襲われるという事件が何度も起きていた。
村の周辺には野生の獣たちも生息しているので、犯人は大方そのあたりだろうと目星をつけ、人目のなくなる夜の間は厳重に戸締まりをした小屋の中に避難させるなどして村の皆で対策を講じていた。
だが、残念なことにそれも徒労に終わってしまった。
ある朝、家畜たちを放牧しようと小屋を見に行くと、その鍵はあっさりと破壊されていて、貴重な資産である山羊たちはすべて血を抜かれていたのだ。
そう――血を抜かれていた。
鍵を破壊するというだけでなく、その犯人は奇妙なことに山羊たちの肉に見向きもせず血だけを吸い取っていっているようなのだ。
そんな不気味なことが続くものだから、村人たちはすっかり弱っていた。中には犯人を獣ではなく人間ではないかと考えるものたちまで現れる始末で、その矛先は貧乏なマルク一家に向けられていた。
「私、ほんとに見たのよ。がんばって夜まで起きててね、お家の窓からずっと小屋の方を見ていたんだから」
エリナはこう思ったのだ。
山羊たちを狙う悪い犯人を自分が捕まえれば、兄も辛い思いをしなくてすむ。それどころか、きっと村の皆から感謝されて自分たちが貧乏だからと馬鹿にされることもなくなるはずだ、と。
「犯人は……まっしろな狼たちだったの。雪みたいにまっしろな。あんなに綺麗な狼……私、見たことなかった」
その日以来、エリナは事あるごとに奇妙な狼について話すようになった。まるで夢の中で見た、美しい景色を語るように。
もちろん、信じる者はいなかった。当然の話だ。肉ではなく血だけを啜る狼の話など。
「兄さん……。兄さんまで、私のこと、信じてくれないの」
エリナは唇をぎゅっと噛み締めて、その幼い表情を歪ませる。
「わかったよ、エリナ」
マルクの答えは決まっていた。
「――兄さんに任せておきなさい」
●白き夜に這い寄る影
肌を刺すような冷たい風が吹き荒ぶ。月光を反射して夜の底が白銀に染まっている。
家畜小屋の陰に隠れながら、マルクは猟銃を握りしめた指を温めるようにこすりあわせた。
天に月が輝きだしてから、もう二時間ほどが経っただろうか。
いまだ狼は現れず、マルクはちょっとした疲れを感じ始めていた。
この極寒の夜にたった一人。実在するかどうかも解らない獣を旧式の猟銃だけで待ち構えるなんて。
(我ながら、無謀というかなんというか……)
それでも、マルクはまだ帰る気にならなかった。
村を覆っている不安の影を振り払いたいという想いはもちろん、それ以上に可愛い妹を孤独にさせたくないという気持ちがあった。
せめて、自分だけは。そう思い、マルクはひたすら待ち続けた。
――そして。それはやって来た。
(……雪が、動いている?)
そう表現するしかなかった。もぞもぞと、雪の塊が動いているのだ。
マルクは慌てて立ち上がり、その方向へ猟銃を向ける。
ぴたり、と。狙いを定めて――
「おお、かみ……!」
雪の中から、ゆったりと姿を現したのは――真っ白な狼だった。
それも一頭や二頭ではない。それなりの数だ。
「本当に、いたのか」
戸惑いと喜びの混じった呟きを漏らしながら、マルクは小屋へと侵入していく狼の一頭に忍び寄る。
静かに銃口を向けて。夜の闇に炸裂するような銃声が響き――
「なっ!?」
銃弾は狼の腹部に命中した。だが狼に反応は見られない。
確かに当たったはずだ。どうして。
困惑するマルクはそれでも二度、三度、と引き金を絞る。
結果は同じだった。狼は倒れるどころか、鬱陶しそうに首を振っていた。
「……化け物、なのか?」
ただの獣ではない。そう悟ったマルクと狼の視線が合った。
金色に輝く瞳。ちらりとのぞく牙は――赤く光っていた。
その瞬間、マルクは背中を向けて走り出した。
背後から狼たちの雪を跳ね飛ばすような足音が近づいてくる。
「……はっ……はっ、はっ……!」
息が上がる。心臓が口から飛び出そうだ。
狼たちがすぐそこまで迫ってきている。
目の前には民家の灯り。どの家も戸は固く閉められている。
「だ、だれか……っ!」
助けを求めようとした――次の瞬間。
「うわあっ!」
飛びかかってきた狼に驚いて、マルクは勢い良く転倒する。
そのまま軒先に激突し、その衝撃で柵がバキリと折れる音が響いた。
柵に掛けられていたランタンが転がり、夜闇に狼の影を映し出す。
(すまん、エリナ……!)
遺される妹の姿が頭をよぎり、マルクが歯を食いしばっていると――狼たちは、まるで光を嫌がるかのように、後ずさりを始めた。
「……な、なんだ……?」
そして、狼は恨めしそうに一吠えすると、あっさりとまた雪の中に姿を消した。
呆然とするマルク。
物騒な物音を聞きつけて、民家から出てきたのはマルクの友人だった。
「おい! 誰かいるのか!」
「……いたんだ」
「マルク!?」
「エリナの言っていた狼は……本当にいたんだ!」
「……あぁ? お前、何を――」
「俺たちでは、どうにもできない。助けが――助けが、必要だ!」
解説
●目標
・ミーレス級従魔『ブラッディウルフ』の討伐
・村の家畜を従魔から守る
●登場
・ミーレス級従魔『ブラッディウルフ』
サイズ:中型
知能:獣
戦域:陸(雪原)
特殊能力:
《吸血》射程 1スクウェア。物理単体。BS【減退 1d6】付与。傷口から血を啜り飲む。
《疾走》全力移動ペナルティ無視 回数3。
解説:
凶暴な狼たち。最下級ではあるが吸血鬼の特性を受け継ぎ、獲物の肉よりも血液を好む。
生物の血を吸うことによってライヴスを奪い、それを自らの力としている。
白銀の体毛を利用して雪の中に紛れ込み、集団で狩りを行う。逆に雪原以外ではひどく目立つ姿とも言える。
総数は不明だが、常に群れを大切にするため、一定数の個体を撃退すれば村を危険な場所と判断して二度と近づかないだろう。
ステータス:
物攻D 物防E 魔攻F
魔防E 命中D 回避C
移動C 生命E 抵抗F
INT D
●状況
・民家が三十軒程度の小さな村。周囲には雪原が広がり、少し離れた場所には森があります。
・住民たちは夜になると外出しません。基本的には全員が家の中に居ます。今までに人が襲われた例はありませんが、従魔たちは鍵を破壊できるので安全は保証されません。
・従魔たちは夜にしか姿を見せないので『夜』から行動を開始しますが、罠の設置や誘導の為の仕掛けを日中に施すことは可能です。
・討伐さえしてくれるのであれば、多少は小屋を破壊するなどの損傷は見逃してくれます。とはいえやりすぎると可哀想なのでやめてあげてください。
マスターより
皆様、はじめまして。大江幸平です。
なんだかチュパカブラみたいな奴らですが、一応ちゃんとした従魔です。
もし狼たちが『血』よりも美味しいものを知ってしまったら……? 少し不安ですね。
リプレイ公開中 納品日時 2016/12/27 21:17
参加者
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最終発言2016/12/21 12:51:12 -
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最終発言2016/12/21 08:05:07