本部
払うは煤か煩悩か
- 形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~10人
- 英雄
- 3人 / 0~10人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/20 12:00
- 完成予定
- 2016/12/29 12:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言
オープニング
●煤を払って煩悩爆発
夜も明け切らぬ早朝。
とある寺では僧侶たちがすでに起きだし、日々の修行をこなしていた。
「本日は煤払いの日ですね。御仏や仏具につもった煤を取り除き、新たな年へ穢れを持ち込まぬようにしましょう」
『はい』
老年の住職による言葉を皮切りに、数十名程の僧侶たちが粛々と寺の掃除を開始した。
この日は12月13日。日本の神社仏閣では『煤払い』が行われる日である。『煤払い』とは、1年でたまりにたまった汚れを落とし綺麗にすることで、その年の穢れや厄を落とそうという『大掃除』のこと。
とはいえ、民家と比べると単純に大きい寺の煤払いはなかなかに重労働だ。ここも有名な寺ではないが、それでも数十名の僧が生活するくらいには広さがある。隅々まで行うのは相当時間がかかるだろう。
僧たちは黙々と、布やはたきや箒を手に敷地内を掃除していく。数年前に傘寿を迎えた住職もまた、修行僧に混じって掃除を行っていた。
昼頃になると檀家の人々も寺を訪れ、煤払いは順調に進んでいた。
「……ん?」
寺の半分ほどの掃除が終わった後、1人の若い僧侶が首を傾げる。
「カビ……、か?」
廊下の床を水拭きしていたとき、黒い斑点のような物が視界に入ってきたのだ。一見するとカビのようなそれは、しかし昨日までは確かになかった汚れ。不思議に思いつつも、僧侶は雑巾でカビをゴシゴシと強めにこすってみる。
「なかなか取れないな」
しかし、いくら拭いても黒点は消えない。仕方なく、僧侶はカビに効果的な薬剤でも借りようと立ち上がった。
「…………ぁ?」
瞬間、僧侶をめまいのような症状が襲い、立ちくらみを起こす。
「だ、大丈夫ですか?」
近くで見ていた中年の僧侶が彼に近づき、心配の声をかけた。
「…………せぇ」
「は?」
「うっせぇんだよハゲ!」
「…………え?」
すると、若い僧侶から返ってきたのは、予想外に汚い言葉。
「っつか、修行とかもうやってらんねぇわ! 毎日毎日クソみたいな飯食って、辛気くせぇ仏像の面見ながらクソ眠ぃお経を唱えて、むさ苦しい坊主頭に囲まれて! その上、女との出会いなんて檀家のババアくらいしかねぇしよぉ!」
続く言葉に、中年僧侶ポカーン。
無理もない。この若い僧侶、10代の頃は相当やんちゃだったようだが、今はとても大人しく勤勉な生活態度の好青年であり、他の僧侶からも慕われる人物だったからだ。
「清貧が美徳だかなんだかしらねぇが、どうせみんな最後は死ぬんだ! 1度きりの人生、やりたいことやって死ぬ方がいいだろ!」
「ちょ、ちょっと…………っ?」
中年僧侶が我に返り、若い僧侶を止めようとしたところ、同じようなめまいに襲われる。
「……あぁ、そうだ! 自分がやりたいことして何が悪い!? ちょっと負けたくらいで家出て行きやがってあのクソ女! 酒もたばこもギャンブルもやめられるわけねぇだろうが! 俺は今日から、禁欲をやめるぞ!」
そしてこちらもまた、一気に豹変。この中年僧侶は、諸事情で奥さんに逃げられたことをきっかけに出家したのだが、急にはっちゃけだした。
「何事ですか!?」
異変を感じ、2人の元に僧侶たちが集まるも、事態が飲み込めず困惑を顔に浮かべる。住職が注意を促すが、おかしくなった僧侶たちは聞く耳を持たない。
「誰か、彼らを取り押さえてください! それと、檀家の方々にも避難するようお伝えして!」
『は、はい!』
やむを得ず、住職は2人の拘束と檀家の避難を指示した。程なく、この異常により寺は一時封鎖され、警察からH.O.P.E.へと伝わることとなる。
●厄落としならぬ欲落とし
「えー、従魔の仕業と思われる事件が発生しました」
職員によると、警察からは原因不明の無差別錯乱事件とされ、状況的に従魔や愚神に関連する事案である可能性が高い、と連絡が入ったらしい。
「えー、お寺の煤払いの最中に僧侶2名が騒ぎ出してから事件が発覚し、自主参加していた檀家の数名も被害に遭っているようです。現在は正気を保った僧侶や警察が押さえ込んでいるようですが、改善の兆しは見られないようですね」
被害者は全部で10名ほど。それぞれ寺の掃除中に突然様子が一変したとのこと。
「えー、症状は共通していて、口々に自身の願望を叫んでいるようですね。一例を言いますと、肉が食いたい、酒が飲みたい、恋人が欲しい、結婚したい、金が欲しい、権力者になりたい、他には何も求めないから暴力を振るわない嫁が欲しい、アイドルにはまって子供の養育費に手を出した旦那マジ殺したいなど、実に様々です」
なんか最後、切実なのと物騒なの入ってなかったか?
「気のせいです。えー、皆さんへの依頼は、彼らが変貌した原因を調査し、排除してもらうことになります。現状、関係者からは不審な人や動物などを目撃したという情報はないので、状況からして一目で怪しいとは判断できず、かつお寺全体に分布する『何か』に従魔が憑依し、人々をおかしくした可能性が高いですね」
資料の中には寺の見取り図があり、いつどこで被害者が騒ぎ出したのかが記されていた。それを見ると、時間はともかく場所がバラバラ。被害者がおかしくなってから事件に気づいた点から見ても、職員の意見は的を射ている。
「えー、ちなみに、被害者の1人が奥さんに公開処刑されて意識不明、1人の男性がご近所から白い目を向けられて針のむしろという、二次被害も発生しています。皆さんなら大事にはならないでしょうが、一応注意してくださいね」
こうして、結婚生活の厳しさを知ったエージェントたちは現場へ急行した。
解説
●目標
集団錯乱の原因特定・排除
●登場(PL情報)
カビ従魔…イマーゴ級。主に寺の建材や仏像などに付着し、ゆっくり増殖中。AGWで触れるだけで消滅するほど弱いが、あらゆる刺激を受けると特殊な菌を広範囲にぶちまけ、吸引した人の欲望を表へ引き出す。放出された菌は少量ながらライヴスを含んでおり、元のカビを消滅させてもしばらく効果は残る。
欲望の内容によっては凶暴化し、攻撃的になる。一般人への影響は従魔消滅まで残り続け、エージェントへの影響は長くとも十数秒程度。共鳴中の英雄にも効果あり。豹変した時の記憶はばっちり残っているので、内容や発言によっては精神的ダメージが大きい。中には肉体的ダメージを負う者も。
●状況
都内某所、都心から離れた地域にある寺。時刻は午後1時頃で、閑静な住宅街の中に立地。掃除は庭や墓地など半分ほどが終了し、仏像を安置する仏殿、説法を行う法堂、寺院内を繋ぐ回廊など、未着手である建物内部が主な調査箇所。現状、外から見た寺の門扉や塀などに異常はない。
従魔被害から逃れた人々は寺の門前に集まり、被害者たちを拘束中(内1名が重傷・他1名が傷害の現行犯で逮捕)。被害者はそれぞれのしたいことや願望などが口からダダ漏れ状態。中には拘束を抜け出そうと暴れる者もいるが、間接接触による他者への影響は確認されていない。
マスターより
要するに、掃除ついでに煩悩も綺麗に吐き出しちゃおう! というシナリオです。能力者と英雄は運命共同体ですが、日々の生活の中で抱く欲望はそれぞれでしょう。すぐ近くにいて知らなかったお互いの一面を知り、新たな気持ちで新年を迎えたい方はどうぞ。
参加の際は、プレイングに能力者・英雄に吐き出させたい欲望を記載してください。些細なことからマジなこと、個人の願望から他者への嘆願まで、『~したい(して欲しい)』というものなら内容は問いません。記載がない場合は勝手にこちらで捏造(アドリブ挿入)しますので、その点だけご注意ください。
リプレイ公開中 納品日時 2016/12/25 18:25
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最終発言